説明

ヘキサメチレンジアミンが200PPM未満のテトラヒドロアゼピンを含有するヘキサメチレンジアミンおよびアミノカプロニトリルのアジポニトリルからの生成方法

単蒸留によって容易に分離できるHMDとHMIとの混合物を生成するために水素化することができるHMDとTHAとの混合物の形成をもたらす蒸留の組み合わせを用いることによるADNの部分水素化からのACNおよびHMDの両方の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
完全に水素化された生成物、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、または部分水素化された生成物、イプシロン−アミノカプロニトリル(ACN)を生成するためにアジポニトリル(ADN)の水素化を実施する時、ある種のイミンを含む、幾つかの副生物を必然的に生成する。イミンは望ましくない色をナイロンに与え、かつ、イミンはナイロンポリマーが達成し得る分子量を制限する可能性があるので、イミンは、HMDおよびACNをそれぞれナイロン6,6およびナイロン6にさらに処理する際に問題になる。(一般に、高分子量がナイロンにとって好ましい。)ADN水素化で最も一般的な問題のあるイミンはテトラヒドロアゼピン(THA)である。THAを測定するためにガスクロマトグラフを、または測定されるサンプル中のいわゆるポーラログラフ還元性不純物(PRI)のすべてを測定するためにポーラログラフを用いることができ、PRIの主成分がTHAである。ポーラログラフはTHA以外のポーラログラフ還元性不純物を測定するので、ポーラログラフ測定値は一般にクロマトグラフ測定値より幾分高い。
【0002】
概念上は、ADN分子を低い空間速度で水素化反応器を通してゆっくり移動させ、水素がADNと反応してADNニトリル基の両方をアミン基に変換するのに十分な時間を提供することによってHMDの製造を想定してもよい。対照的に、ADNがより高い空間速度で水素化反応器を通して速く移動するようにされ、それによって水素がADNと反応し得る時間を短縮する場合、粗反応生成物は未反応のADNだけでなく、完全水素化生成物HMD、部分水素化生成物ACNを含有する。一般に「部分水素化」と言われる、この後者の方法で操作すると、1つの水素化反応器が2タイプのナイロン用の中間体(ナイロン6用のACNおよびナイロン6,6用のHMD)を製造するために用いられることを可能にする。部分水素化を行う時、PRI(主にTHA)レベルが完全水素化を行う場合より高いことは公知である。完全水素化に固有の増加した反応時間で、THAは水素と反応してTHAの炭素−窒素二重結合を炭素−窒素単結合へ変換することができ、その分子構造がイミンの一定義、すなわち炭素−窒素二重結合の存在に適合しないので、おそらく紛らわしく命名された、ヘキサメチレンイミン(HMI)と呼ばれる生成物の形成につながる。
【0003】
部分水素化法の必要部分は、重合前の粗ADN水素化生成物からのPRI(主にTHA)の除去である。これを成し遂げるための異なるアプローチは、未反応のADN、ACNおよびHMDを別々に回収することが可能な様々な蒸留をはじめとして、当該技術で開示されてきた。しかしながら、これらの蒸留は、蒸留の結果生じるPRI(主にTHA)をACN留分に残す傾向がある。ある研究者たちは、ACN留分中のPRIの水素化を提案した(米国特許公報(特許文献1)を参照されたい)が、このアプローチは、ACNをHMDにさらに水素化し、こうして望ましいACNの収率を下げ、かつ、ACNをHMDから分離するためにさらなる蒸留を必要とするという可能性を生み出す。他の研究者は電気化学的還元による分離を提案した。
【0004】
商業的に実行可能な部分水素化法は、低レベル、一般に200ppm未満の、好ましくは100ppm未満のTHAを含有するHMDを生成できなければならない。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,153,748号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、ADNからHMDおよびACNを併産するための方法であって、該HMDは200ppm未満のTHAを含有し、該方法は、
(1)水素化触媒の存在下においてADNと水素とを接触させて、HMD、ACN、THA、および未反応のADNを含む反応生成物を生成する工程と、
(2)該反応生成物を蒸留して、HMDおよびTHAを含む留出物を提供する工程と、
(3)水素化触媒の存在下において該留出物を水素化触媒の存在下に水素と接触させ、それによってHMDおよびHMIを含む水素化生成物を提供する工程であって、前記水素化生成物が200ppm未満のTHAを含有する工程と、
(4)該水素化生成物を蒸留して、HMIを含む最終留出物と、200ppm未満のTHAを含有しかつ実質的にHMIがないHMDを含む残留物とを提供する工程と
を含む方法と定義することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1についてここで言及すると、本発明の実施形態を実施するための装置10が概略図で示されている。ADNの部分水素化の生成物であるADN、ACN、HMD、およびTHAを含む流れ12は、約100トル(13.3kPa)未満のヘッド圧を有する蒸留塔14へ導入される。蒸留塔は好ましくは構造化充填材を含有する。
【0008】
部分水素化はアンモニア溶媒の存在下に実施されてもよい。かかる溶媒が使用された場合、溶媒は、部分水素化生成物を蒸留塔14へ導入する前にかかる生成物から除去されるべきである。アンモニア溶媒の除去は、ストリッパー(図示せず)を用いて成し遂げられてもよく、そのケースではアンモニアはオーバーヘッドとして除去され、残留物が蒸留塔14に供給される。
【0009】
蒸留塔14は、ADNを含む残留物16と、ACN、HMD、およびTHAを含む留出物とを生成する。
【0010】
留出物18は、約400トル(53.2kPa)未満、好ましくは約300トル(39.9kPa)未満の、最も好ましくは約200トル(26.6kPa)未満のヘッド圧を有する第2蒸留塔20へ導入される。蒸留塔は好ましくは構造化充填材を含有する。蒸留塔20は、ACNを含む残留物22とTHAおよびHMDを含む留出物24とを生成する。
【0011】
留出物24は、水素化触媒(図示せず)が存在する水素化反応器28中へ水素26と共に導入される。THAと水素とは反応器28で反応してTHAをHMIへ変換する。
【0012】
反応器28の反応生成物30は、大気ヘッド圧の第3蒸留塔32へ導入されてHMIを含む留出物34とHMDを含む残留物36とを生成する。
【0013】
水素化触媒は、Ni、Co、Rh、Pd、およびPtのような、周期表の遷移金属群の元素をベースにすることができる。鉄触媒は同様にうまく機能するはずである。しかしながら、ルテニウムはそれほどうまくは機能しなかった。好ましい触媒はラネーニッケルおよびラネーコバルトである。触媒に添加された助触媒元素は性能を改善し得る。好適な助触媒の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、モリブデン、クロム、鉄、パラジウム、白金、銅、アルミニウム、およびケイ素である。触媒を調製するために当該技術では公知の様々な方法があり、多くの触媒が商業的に入手可能である。触媒は炭素、アルミナもしくはシリカのような担体材料上にあることができるし、またはそれらは、例えばいわゆるラネー型触媒もしくは中身で名目上すべて金属である還元された金属酸化物の形で、担体材料なしで提供され得る。
【0014】
水素化反応は50〜180℃の異なる温度で実施されてもよい。温度の選択は触媒に依存する。非常に良好な結果はラネー型ニッケル触媒を使って80〜90℃で得られた。経済性では400〜1000psig(2.86MPa〜7.0MPa)のような低圧の使用が好ましいが、水素化反応は250psig(1.825MPa)〜5000psig(34.5MPa)の異なる圧力で実施されてもよい。反応は溶媒なしで実施されてもよい。様々な反応器構造が可能であり、バッチ式撹拌タンク反応器および充填床反応器が含まれる。
【実施例】
【0015】
次の実施例は、低いTHA含量のHMDとHMIとの混合物を生成するために水素化を受けるHMDとTHAとの混合物を生成するために2つの蒸留塔を用いなかった点で、図面に示す本発明の実施形態とは異なる。むしろ、本発明の代わりの実施形態を表すと見なされてもよい本実施例では、単蒸留塔を(アンモニア・ストリッピング塔の後に)用いてHMDとTHAとの混合物を含有する留出物を生成し、ACNに富むACNとHMDとの混合物を主として含有するサイドドローを取り出した。この混合物中のACNおよびHMDは、単蒸留によって分離して実質的に純粋なACN物質を回収することができる。
【0016】
ADNを水素化触媒の存在下に部分水素化して1000ppmのTHA、39.3%HMD、24.2%ACNおよび24.4%未反応のADNを含有する反応生成物を生成する。反応生成物をストリッパー塔に供給して溶解したアンモニアを除去した。ストリッパー塔は、リボイラーの真上に10フィートのコッホ/グリッチ(Koch/Glitch)BX充填材およびBX充填材の上方に25オルダーショー(Oldershaw)トレーを含有した。オルダーショー・トレー上方の塔の上に凝縮器があった。ストリッパー塔からの残留物は反応生成物を含有した。ストリッパー・オーバーヘッドはアンモニアを含有した。
【0017】
ストリッパー塔からの残留物を、ストリッパー塔と同じように配置構成された蒸留塔の塔底に供給した。塔ヘッド圧を50トルに維持し、残留物温度は204℃であった。84%ACNと15%HMDとの混合物を、BX充填材とオルダーショー・セクションとの間でサイドドローとして取り去った。残留物は4.5%ACNおよび約0.65%高沸点物と共に93.5%ADNであった。留出物は98%HMD、1150ppmのTHA、0.15%ACN、および1.15%HMI(ガスクロマトグラムの面積パーセント分析)を含有した。この留出物を次の水素化反応に使用した。
【0018】
留出物は較正法を用いてガスクロマトグラフィーで分析し、0.73%HMI(上記のものとは異なる分析方法)および1300ppmのTHAを含有することが示された。この留出物(50g)を、2gのラネー(Raney)(登録商標)Ni 2400スラリー(ダブリュ.アール.グレイス(W.R.Grace)社)と共に100cc圧力容器に装入した。反応器を窒素でパージし、漏洩について試験し、次に水素をおおよそ621kPa(90psig)圧力まで装入し、90℃まで加熱し、その時点で圧力を3447kPa(500psig)まで上げた。180分後に、サンプルを反応器から回収し、ガスクロマトグラフィーで分析した。サンプルは0.86%HMI、84ppmのTHAを含有した。
【0019】
サンプルを次に大気圧で動作する標準蒸留塔へ導入してHMIを留出物として除去し、低いTHA含量のHMDを残留物として取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図面は本発明の方法を例示するブロック図を示す1つの図よりなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADNからHMDおよびACNを併産するための方法であって、該HMDは200ppm未満のTHAを含有し、前記方法は、
(1)水素化触媒の存在下においてADNと水素とを接触させて、HMD、ACN、THA、および未反応のADNを含む反応生成物を生成する工程と、
(2)該反応生成物を蒸留して、HMDおよびTHAを含む留出物を提供する工程と、
(3)水素化触媒の存在下において該留出物を水素と接触させ、それによってHMDおよびHMIを含む水素化生成物を提供する工程であって、前記水素化生成物が200ppm未満のTHAを含有する工程と、
(4)該水素化生成物を蒸留して、HMIを含む最終留出物と、200ppm未満のTHAを含有しかつ実質的にHMIがないHMDを含む残留物とを提供する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(3)の水素化触媒がラネーニッケルまたはラネーコバルトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−505912(P2007−505912A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527009(P2006−527009)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030257
【国際公開番号】WO2005/028418
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】