説明

ヘキサン酸エステルから誘導された新規なキラル化合物、その製造方法および中間体、キラル2−(ブロモメチル)−2−エチルヘキサン酸の合成における使用

本発明は、式(I)
【化1】


のキラル化合物に関する。式中、R1はヒドロキシルまたはカルボキシ活性化基であり、R2はハロゲンまたはベンジルによって最終的に置換されるアルキルである。また、キラル2−ブロモメチル−2−エチルヘキサン酸および新規な中間体化学物質の製造およびそれらを合成するための本発明の化合物の使用が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサン酸エステルから誘導された新規なキラル化合物、その製造方法および中間体、およびキラル2−(ブロモメチル)−2−エチルヘキサン酸の合成におけるその使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明の主題は、式(I)
【化1】

(式中、R1は水酸基またはR'1を表し、R'1は、酸性官能基を活性化する基を表し、そしてR2は1個またはそれ以上のハロゲン原子によって場合により置換された1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはベンジル基を表す)に相当する(R)または(S)キラル化合物である。
【0003】
用語「1〜8個の炭素原子を含むアルキル基」は、すべてのタイプの直鎖または分枝鎖アルキル、そして好ましくはメチル、エチル、または直鎖もしくは分枝鎖のプロピルまたはブチル基を意味するものとして理解される。用語「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味するものとして理解される。
【0004】
用語「ハロゲンによって置換されたアルキル基」は、メチル基または、好ましくは1個またはそれ以上の塩素もしくはフッ素原子によって置換されたエチル基を意味するものとして理解される。用語「酸性官能基を活性化する基」は、当業者に知られているなんらかの基、例えば塩素または臭素原子またはエステル残基、例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾールから誘導されたもの、チオエステル残基、例えば2−メルカプトベンゾチアゾールから誘導されたもの、アミド残基、例えばベンゾトリアゾール3−オキシドから誘導されたものまたは混合無水物残基、例えばスルホネートまたはホスフェートから誘導されたものを意味するものとして理解される。
【0005】
このような基は、特にアシル化方法で知られている。
【0006】
本発明の主題は、特に、上記定義された式(I)(式中、R1は水酸基、塩素または臭素原子、混合無水物残基、活性化されたチオエステル残基、活性化されたエステル残基および活性化されたアミド残基からなる群より選ばれる)の化合物、および上記定義された式(I)(式中、R2は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基およびベンジル基からなる群より選ばれる)の化合物である。
【0007】
本発明の別の主題は、式(II):
【化2】

(式中、R2は上記定義された通りである)の化合物を、式
【化3】

(式中、AおよびBは水素原子を表し、そしてCは臭素原子を表すか、またはAおよびBは第二の炭素−炭素結合を形成し、そしてCは水素原子を表すか、またはAおよびCは水素原子を表し、そしてBはケトン官能基を表す)の鎖を結合することができる反応体で処理して、式(III):
【0008】
【化4】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)の化合物を得、Bのケトン官能基を、必要に応じて保護して、式(III'):
【化5】

(式中、R2は上記の意味を有し、そしてB'は保護されたケトン官能基を表す)の化合物を得、次いで式(III)または(III')の化合物を、加水分解活性を有する酵素で処理して、式(IV):
【0009】
【化6】

のキラル化合物または式(IV1):
【化7】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)のキラル化合物、または式(IV')または(IV'1)
【化8】

(式中、B'およびR2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を得、この式(IV)または(IV1)または(IV')または(IV'1)の化合物を、R1が水酸基である式(I)の化合物に相当する式(IA):
【0010】
【化9】

(式中、R2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を生成することができる条件下で処理し、この化合物を必要に応じて酸性官能基を活性化する試薬で処理して、R'1が上記の意味を有する式(I)の化合物に相当する式(IB)
【化10】

(式中、R2は上記の意味を有する)のキラル化合物を得ることからなる、上記定義された式(I)の化合物の製造方法である。
【0011】
式−CH2−CHA−CHB−CH2Cの鎖を結合することができる反応体は、前記鎖のハロゲン化誘導体または鎖末端が不飽和の誘導体である。例は下の実験部分に記載した。
【0012】
Bとして表しうるケトン官能基の保護は、当業者に知られているなんらかの保護、例えばケタールまたはチオケタールであることができる。
【0013】
非対称をもたらす加水分解活性を有する酵素は、特にエステラーゼ、プロテアーゼまたはリパーゼ、例えばブタ肝臓エステラーゼ、キモトリプシンまたはブタ膵臓リパーゼであることができる。好ましい酵素の中では、商品名chirazyme E1の下で知られている半精製されたブタ肝臓酵素を特に記載することができる。
【0014】
キラル化合物(IA)を生成することができる条件は、当然のことながら、使用する化合物の性質に左右される。 AおよびBが第2の結合を形成する化合物またはCが臭素原子を表す化合物である場合、例えばテトラヒドロフラン中、パラジウムの存在下で水素により還元を実施する。Bがケトン官能基を表す化合物である場合、例えばWolff-Kishner型の還元を実施する。ケタールである場合、液体アンモニア中のナトリウムを用いて還元を実施することができる。 チオケタールである場合、金属触媒、特にニッケルの存在下で水素を用いて還元を実施することができる。
【0015】
酸性官能基を活性化する試薬は、酸塩化物または臭化物、またはエステル、またはチオエステルまたはアミドまたは混合無水物のいずれかを形成することができる試薬である。このような試薬は、例えばアシル化反応の実施において慣用であり、当業者に知られている。
【0016】
本発明のさらなる主題は、式(I)の化合物を還元剤の作用にかけて式(V):
【化11】

(式中、R2は前記の意味を有する)のキラル化合物を得、この化合物をけん化して式(VI):
【化12】

のキラル酸を得、この化合物を臭素化剤の作用にかけて式(A)のキラル化合物を得ることからなる、式(A):
【化13】

のキラル化合物の製造における上記定義された式(I)の化合物の適用である。
【0017】
化合物(I)に作用させる還元剤は、例えばアルカリ性ボロヒドリド、例えば水素化ホウ素ナトリウムである。また、それはアルコキシボランまたはアシルボランであってもよい。
【0018】
使用する化合物(I)は、R1がR'1を表す化合物であることが好ましい。
式(V)の化合物のけん化は、当業者に知られている慣用の条件下で実施することができる。
臭素化剤は、好ましくは臭化水素酸である。
【0019】
式(II)のマロネート誘導体は、知られており、記載されているかまたは記載された方法によって製造することができる。
【0020】
本発明の最後の主題は、式(III)および(III')(式中、AおよびBはいずれも第二のC−C結合を形成し、そしてCは水素原子を表すか、またはAおよびCは水素を表し、そしてBはケトン官能基を表し、そしてB'およびR2は上記定義された通りである)の化合物および式(IV)および(IV1)、(IV')および(IV'1)のキラル化合物、および式(V)、(IV)および(A)のキラル化合物である。
【0021】
式(A)の化合物は、特に治療活性化合物の合成に有用である。
【0022】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明を制限するものではない。
【0023】
実施例1:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階A:ジメチル2−(4−ブロモブチル)−2−エチルマロネート
ジメチルエチルマロネート10.6g、1,4−ジブロモブタン57.4gおよびテトラヒドロフラン30cm3を不活性ガス下で混合した。混合物を+3℃に冷却し、テトラヒドロフラン55cm3中のカリウムtert−ブトキシド8.5gをゆっくりと入れた。1/4時間後、温度をゆっくりと上昇させてから、混合物を25℃で撹拌しながら3時間維持した。それを水150cm3、塩化メチレン50cm3および2N塩酸5cm3の混合物へ注ぎ、沈降により分離し、そして有機相を水で洗浄した。水性相を塩化メチレンで再抽出し、合わせた有機相を乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にした。油62gを得、そしてこの油を1mmHgの圧力下で蒸留した。所望の生成物16.2gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3):250MHz 3.71 ppm OCH3 (6H, s), 3.42 ppm CH2Br (2H,
t), 1.9 ppm CH2 (6H, m), 1.2 ppm CH2 (2H, m), 0.8 ppm CH3 (3H, t).
【0024】
段階B:(2R)−6−ブロモ−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
水565cm3、段階Aで得た生成物16.1gおよびジメチルスルホキシド28.5cm3を混合し、混合物を30℃に加熱し、1N水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを7に調整した。chirazyme E1 5.4gを添加した。 pH6.75に維持しながら、混合物を約30℃で30時間撹拌し、次いで酵素を濾過した。水170cm3を徐々に添加することによって酵素をフィルタ上で洗浄した。このようにして得た水性相に、炭酸水素ナトリウム0.92gを添加して塩基性にした。続いて、酵素および水性相を塩化メチレンで洗
浄した。合わせた水性相の組み合わせに、2N塩酸30cm3を添加してpH2.7に酸性化した。イソプロピルエーテルを用いて抽出を行い、有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物12.9gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 3.40 ppm CH2Br (2H,
t), 2 ppm CH2 (6H, m), 1.4 ppm CH2 (2H, m),0.8 ppm CH3 (3H, t).
(R)−メチルベンジルアミンの存在下でEe=95% NMRCDCl3
【0025】
段階C:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階Bで得た生成物12.44g、テトラヒドロフラン125cm3、木炭上の10%パラジウム2.5gおよびトリエチルアミン12.5cm3を混合した。混合物を水素雰囲気下に置き、約26℃で20時間撹拌を続けた。触媒は濾過してテトラヒドロフランで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して乾燥状態にし、残留物をイソプロピルエーテル50cm3および水50cm3中に取った。混合物に2N塩酸15cm3を添加して酸性化し、沈降により分離を行い、水性相をイソプロピルエーテル50cm3で再抽出した。合わせた有機
相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にした。所望の生成物8.91gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0026】
実施例2:メチル(2S)−2 ― {[(ジエトキシホスホリル)オキシ]カルボニル}−2−エチルヘキサノエート
実施例1で得た生成物8.5g、塩化メチレン42.5cm3およびジエチルクロロホスフェート8.5cm3を不活性ガス下で混合した。塩化メチレン8.5cm3中の2,6−ルチジン6.3gを約25℃でゆっくりと入れた。約25℃で18時間した撹拌した後、塩化メチレン35cm3および水42.5cm3を添加した。添加を5分間で実施し、沈降により層を分離してから、有機相を水で洗浄した。有機相を乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物16.96gを得、この生成物を塩化メチレン10cm3の溶液中に保存した。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 4.3 ppm CH2 (4H, q), 3.8 ppm OCH3 (3H, s),
2 ppm CH2 (4H, m), 1.4 ppm CH2 + CH3 (10H, q), 0.8 ppm CH3 (6H, t).
【0027】
実施例3:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階A:ジメチル2−エチル−2−(3−オキソブチル)マロネート
ジメチル2−エチルマロネート10cm3、メタノール20cm3およびメチルビニルケトン2.5cm3を不活性ガス下で混合した。メチルビニルケトン7.5cm3およびメタノール中10%ナトリウムメトキシド1cm3を1時間かけて入れた。続いて混合物を26〜27℃で撹拌を続け、約15℃に冷却してから1N塩酸2cm3、次に水10cm3を添加した。混合物をその半分の体積に濃縮し、水90cm3を添加し、イソプロピルエーテルを用いて抽出を行った。有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物13.45gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.8 ppm OCH3 (6H, s), 2.4 ppm CH2 (2H, t), 2.2 ppm CH2 + CH3 (5H, t+s), 2 ppm CH2 (4H, q), 0.8 ppm CH3 (3H, t).
【0028】
段階B:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)−5−オキソヘキサン酸
水20cm3、段階Bで得た生成物0.504gおよびジメチルスルホキシド2cm3を混合した。混合物を約33〜35℃で撹拌したままにし、次いで0.5N水酸化ナトリウム溶液を添加することによってpHを7〜7.3で維持しながら、chirazyme E1 0.25gをゆっくりと添加した。2時間後、塩化メチレン10cm3を添加し、1N塩酸3cm3を添加することによってpH2に酸性化し、さらに塩化メチレン10cm3を添加し、沈降により分離を行った。有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にした。所望の生成物0.491gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.8 ppm OCH3 (3H, s), 2.4 ppm CH2 (2H, t), 2.2 ppm CH2 + CH3 (5H, t+s), 1.9 ppm CH2 (4H, q), 0.8 ppm CH3 (3H, t).
(R)メチルベンジルアミンの存在下でEe=96% NMR CDCl3
【0029】
段階C:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階Bで得た生成物0.25gを、NH2−NH−SO2−C64−CH3 0.23gおよびDMF2.5mlと混合した。混合物を2時間撹拌し、DMF(2ml)中の溶液のNaBH3CNを1時間かけて加えた。24時間撹拌した後、10%水性炭酸水素ナトリウム溶液中に注ぐことによって生成物を単離し、酢酸エチルの存在下で抽出を行い、濃縮した後、所望の生成物0.2gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s) , 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0030】
実施例4:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階A:ジメチル2−エチル−2−[2−(2−メチル−1,3−ジチオラン−2−イル)エチル]マロネート
実施例3の段階Aで得た生成物4.65gおよびトルエン23cm3を不活性ガス下、20〜22℃で混合した。エタンジチオール3.7gおよび三フッ化ホウ素エーテラート4.25gを約23℃で10分かけて添加した。周囲温度で17時間撹拌した後、反応混合物をイソプロピルエーテル50cm3および水/氷混合物50cm3の混合物へ注いだ。5分間撹拌し、沈降により分離を行い、水性相をイソプロピルエーテルで再抽出し、合わせた有機相を水および1%水性炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。それを乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物6.64gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.8 ppm OCH3 (6H, s), 3.3 ppm S-CH2-CH2-S (4H, m), 2.2 ppm CH2-S (2H, m), 2 ppm CH2 (2H, q) , 1.8 ppm CH2+CH3 (5H, m+s), 0.9 ppm (3H, t).
【0031】
段階B:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル) −4−(2−メチル−1,3−ジチオラン−2−イル)ブタン酸
水6cm3、段階Aで得た生成物0.124gおよびジメチルスルホキシド0.6cm3を混合した。温度を33〜34℃、そして0.2N水酸化ナトリウム溶液を添加することによってpHを7.5〜8.5に維持しながらchirazyme E1 0.125gをゆっくりと添加した。反応混合物を26時間撹拌し続け、次いで塩化メチレン6cm3および1N塩酸0.6cm3を添加した。混合物を沈降により分離し、水性相を塩化メチレンで再抽出し、有機相を合わせて水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物0.107gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.8 ppm OCH3 (3H, s), 3.3 ppm S-CH2-CH2-S (4H, m), 2.2 ppm CH2-S (2H, m) , 2 ppm CH2 (2H,q) , 1.8 ppm CH2+CH3 (5H, m+s), 0.9 ppm (3H, t).
(R)−メチルベンジルアミンの存在下でEe=95% NMR CDCl3
【0032】
段階C:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階Bで得た生成物0.107g、テトラヒドロフラン1cm3およびニッケル25mgを混合した。混合物を水素雰囲気下に置き、約26℃で20時間撹拌を続けた。触媒を濾過し、そしてテトラヒドロフランで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して乾燥状態にし、残留物をイソプロピルエーテル10cm3および水10cm3中に取った。沈降により分離を行い、水性相をイソプロピルエーテル10cm3で再抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物0.5gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0033】
実施例5:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階A:ジメチル2−エチル−2−[2−(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)エチル]マロネート
エチレングリコール0.45cm3、パラ−トルエンスルホン酸10mgおよびメチルオルトギ酸エステル0.88cm3を混合し、次いで実施例3の段階Aで得た生成物0.92gを添加した。混合物を周囲温度で24時間撹拌して保持し、次いで水性炭酸水素ナトリウム溶液20cm3に注いだ。塩化メチレンを用いて抽出し、有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物1.6gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 4 ppm O-CH2-CH2-O- (4H, s) , 3.75 ppm OCH3 (6H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.5 ppm CH2 (2H, m), 1.4 ppm CH3 (3H, s), 0.9 ppm (3H, t).
【0034】
段階B:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)−4−(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ブタン酸
水20cm3、段階Aで得た生成物0.55gおよびジメチルスルホキシド2cm3を混合し、混合物を30〜32℃で撹拌し続け、次いで温度を約33℃、そして0.5N水酸化ナトリウム溶液を添加することによってpHを7.2〜7.5に維持しながらchirazyme E1 0.266gをゆっくりと添加した。24時間後、温度を20℃に戻してから、塩化メチレン10cm3を添加した。1N塩酸2.3cm3を添加することによって混合物を酸性化し、沈降により分離し、有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の粗生成物0.452gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 4 ppm O-CH2-CH2-O- (4H, s) , 3.8 ppm OCH3 (6H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.6 ppm CH2 (2H, m), 1.4 ppm CH3 (3H, s), 0.9 ppm CH3
(3H, t).
(R)−メチルベンジルアミンの存在下でEe=99% NMR CDCl3
【0035】
段階C:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階Bで得た生成物0.4gを−70℃でNa0.22mgと共に液体NH3 8ml中で混合した。温度を−70℃で3時間維持した。NH4Cl溶液(2ml)を−30℃で1時間かけて添加し、酢酸エチルで抽出を実施した。有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物0.31gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0036】
実施例6:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階A:ジメチル(2E)−2−[ブタ−2−エニル]−2−エチルマロネート
ジメチル2−エチルマロネート10cm3、DMF20cm3およびNaH 1.27gを不活性ガス下、0℃で混合した。温度を0℃に維持しながら、4−クロロ−2−ブテン5.8gを1時間かけて入れた。0℃で2時間反応させた後、1N HCl 10mlを入れ、次いで混合物を濃縮し、水10mlを添加し、抽出物をイソプロピルエーテルで実施した。抽出物を乾燥させた後、油8.2g(E/Z 85/15)を回収した。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 4.6 ppm ビニル H (H, td), 4.2 ppm ビニル H (H, q), 3.75 ppm OCH3 (6H, s), 2.5 ppm CH2 (2H, dd), 2.4 ppm CH3 (3H, d), 1.4 ppm CH2 (2H, q), 0.9 ppm (3H, t).
【0037】
段階B:(2R,4E)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサ−4−エン酸
段階Aで得た生成物8gを混合した。温度を約33℃、そして1N水酸化ナトリウム溶液を添加することによってpHを6.88に維持しながらchirazyme E1 8gをゆっくりと添加した。24時間後、塩化メチレンで抽出を行い、有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の生成物6.8gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 4.6 ppm ビニル H (H, td), 4.2 ppm ビニル H (H, q), 3.70 ppm OCH3 (3H, s), 2.6 ppm CH2 (2H, dd), 2.5 ppm CH3 (3H, d), 1.5 ppm CH2 (2H, q), 0.9 ppm (3H, t).
(R)−メチルベンジルアミンの存在下でEe=26% NMR CDCl3
【0038】
段階C:(2R)−2−エチル−2−(メトキシカルボニル)ヘキサン酸
段階Bで得た生成物6g、テトラヒドロフラン60cm3、木炭上の10%パラジウム1.25gおよびトリエチルアミン6.25cm3を混合した。混合物を水素雰囲気下に置き、約26℃で20時間撹拌して保持した。触媒を濾過し、テトラヒドロフランで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して乾燥状態にし、残留物をイソプロピルエーテル25cm3および水25cm3中に取った。2N塩酸7cm3を添加することによって混合物を酸性化し、沈降により分離を行い、水性相をイソプロピルエーテル25cm3で再抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にした。生成物5.7gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0039】
実施例7:(2S)−2−(ブロモメチル)−2−エチルヘキサン酸
段階A:メチル(2R)−2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサノエート
実施例2で得た混合無水物溶液27.4gを濃縮して16gにし、次いで撹拌しながら不活性ガス下でジメチルホルムアミド53cm3をそれに添加した。混合物を約2℃に冷却してから水素化ホウ素ナトリウム1.75gをゆっくりと添加した。添加が終わって1時間45分後、さらに水素化ホウ素ナトリウム0.17gを添加し、次いで1時間後、さらに水素化ホウ素ナトリウム0.17gを再び添加した。続いてイソプロピルエーテル73cm3を添加し、次いで5%水性酒石酸溶液の35cm3を6〜10℃で15分かけて添加した。5分間撹拌した後、沈降により混合物を分離し、そして水性相をイソプロピルエーテルで再抽出し、次いで合わせた有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液、それから水で洗浄した。それを乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の粗生成物7.3gを得、この生成物をシリカ上でクロマトグラフ処理してヘプタン/酢酸エチル7/3の混合物で溶出を行った。精製された生成物7.2gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.79 ppm OCH3 (3H, s), 3.69 ppm CH2OH (2H, s), 2 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0040】
段階B:(2R)−2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)ヘキサン酸
段階Aで得た生成物7gをメタノール70ml中に溶解し、1N水酸化ナトリウム溶液37mlを0℃で添加した。混合物を0℃で1時間維持し、媒体を濃縮し、残留物を1NHCl 37ml中に取り、所望の生成物を酢酸エチル2×50mlで抽出した。所望の生成物5.6gを得た。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.69 ppm CH2OH (2H, s), 1.6 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).
【0041】
段階C:(2S)−2−(ブロモメチル)−2−エチルヘキサン酸
段階Bに記載の通り得た生成物5.6gおよび62%臭化水素酸34.8cm3を混合し、次いで混合物を92℃±2℃にして7時間撹拌し、それから20℃で16時間放置した。混合物を0℃に冷却し、水60cm3、次いで32%水酸化ナトリウム溶液9.8cm3を添加した。混合物を撹拌し続け、トルエン25cm3を入れ、次いで水50cm3およびトルエン50cm3を再び入れ、混合物を20℃で1時間撹拌した。沈降により混合物を分離し、水性相をトルエンで再抽出し、有機相を合わせ、乾燥させて減圧下で濃縮して乾燥状態にし、所望の粗生成物6.1gを得、この生成物を2mmHgで蒸留して精製した。所望の生成物3.17gを得た(Bp2=118〜124℃)。
NMRスペクトル(CDCl3) 250MHz 3.52 ppm CH2Br (2H, s), 1.6 ppm CH2 (4H, m), 1.2 ppm CH2 (4H, m), 0.8 ppm CH3 (6H, td).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は水酸基またはR'1を表し、R'1は酸性官能基を活性化する基を表し、そしてR2は1個またはそれ以上のハロゲン原子によって場合により置換された1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはベンジル基を表す)に相当する(R)または(S)キラル化合物。
【請求項2】
1はヒドロキシル基、塩素または臭素原子、混合無水物残基、活性化されたチオエステル残基、活性化されたエステル残基および活性化されたアミド残基からなる群より選ばれる、請求項1に記載された式(I)の化合物。
【請求項3】
2は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基およびベンジル基からなる群より選ばれる、請求項1に記載された式(I)の化合物。
【請求項4】
式(II):
【化2】

(式中、R2は請求項1に定義された通りである)の化合物を、式
【化3】

(式中、AおよびBはいずれも水素原子を表し、そしてCは臭素原子を表すか、またはAおよびBは第二の炭素−炭素結合を形成し、そしてCは水素原子を表すか、またはAおよびCは水素原子を表し、そしてBはケトン官能基を表す)の鎖を結合することができる反応体で処理して、式(III):
【化4】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)の化合物を得、Bのケトン官能基を、必要に応じて保護して、式(III'):
【化5】

(式中、R2は上記の意味を有し、そしてB'は保護されたケトン官能基を表す)の化合物を得、次いで式(III)または(III')の化合物を、加水分解活性を有する酵素で処理して、式(IV):
【化6】

のキラル化合物または式(IV1):
【化7】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)のキラル化合物、または式(IV')または(IV'1)
【化8】

(式中、B'およびR2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を得、この式(IV)または(IV1)または(IV')または(IV'1)の化合物を、R1が水酸基である式(I)の化合物に相当する式(IA):
【化9】

(式中、R2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を生成することができる条件下で処理し、この化合物を必要に応じて酸性官能基を活性化する試薬で処理して、R'1が請求項1に定義された通りである式(I)の化合物に相当する式(IB)
【化10】

(式中、R2は上記の意味を有する)のキラル化合物を得ることからなる、請求項1に定義された式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
式(I)の化合物を還元剤の作用にかけて式(V):
【化11】

(式中、R2は請求項1に記載された意味を有する)のキラル化合物を得、この化合物をけん化して式(VI):
【化12】

のキラル酸を得、この化合物を臭素化剤の作用にかけて式(A)のキラル化合物を得ることからなる、式(A):
【化13】

のキラル化合物の製造における上記定義された式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
1はR'1を表す請求項1に定義された式(I)の化合物を使用する、請求項5に記載された使用。
【請求項7】
式:
【化14】

(式中、A、B、C、B'およびR2は請求項4に定義された通りである)の化合物。
【請求項8】
式:
【化15】

(式中、A、B、C、B'およびR2は請求項4に定義された通りである)のキラル化合物。
【請求項9】
式:
【化16】

(式中、R2は請求項5に定義された通りである)のキラル化合物。
【請求項10】
式(A):
【化17】

のキラル化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は水酸基またはR'1を表し、R'1は酸性官能基を活性化する基を表し、そしてR2は1個またはそれ以上のハロゲン原子によって場合により置換された1〜8個の炭素原子を含むアルキル基またはベンジル基を表す)に相当する(R)または(S)キラル化合物。
【請求項2】
1はヒドロキシル基、塩素または臭素原子、混合無水物残基、活性化されたチオエステル残基、活性化されたエステル残基および活性化されたアミド残基からなる群より選ばれる、請求項1に記載された式(I)の化合物。
【請求項3】
2は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基およびベンジル基からなる群より選ばれる、請求項1に記載された式(I)の化合物。
【請求項4】
式(II):
【化2】

(式中、R2は請求項1に定義された通りである)の化合物を、式
【化3】

(式中、AおよびBはいずれも水素原子を表し、そしてCは臭素原子を表すか、またはAおよびBは第二の炭素−炭素結合を形成し、そしてCは水素原子を表すか、またはAおよびCは水素原子を表し、そしてBはケトン官能基を表す)の鎖を結合することができる反応体で処理して、式(III):
【化4】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)の化合物を得、Bのケトン官能基を、必要に応じて保護して、式(III'):
【化5】

(式中、R2は上記の意味を有し、そしてB'は保護されたケトン官能基を表す)の化合物を得、次いで式(III)または(III')の化合物を、加水分解活性を有する酵素で処理して、式(IV):
【化6】

のキラル化合物または式(IV1):
【化7】

(式中、A、B、CおよびR2は上記の意味を有する)のキラル化合物、または式(IV')または(IV'1)
【化8】

(式中、B'およびR2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を得、この式(IV)または(IV1)または(IV')または(IV'1)の化合物を、R1が水酸基である式(I)の化合物に相当する式(IA):
【化9】

(式中、R2は上記の意味を有する)の対応するキラル化合物を生成することができる条件下で処理し、この化合物を必要に応じて酸性官能基を活性化する試薬で処理して、R'1が請求項1に定義された通りである式(I)の化合物に相当する式(IB)
【化10】

(式中、R2は上記の意味を有する)のキラル化合物を得ることからなる、請求項1に定義された式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
式(I)の化合物を還元剤の作用にかけて式(V):
【化11】

(式中、R2は請求項1に記載された意味を有する)のキラル化合物を得、この化合物をけん化して式(VI):
【化12】

のキラル酸を得、この化合物を臭素化剤の作用にかけて式(A)のキラル化合物を得ることからなる、式(A):
【化13】

のキラル化合物の製造における上記定義された式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
1はR'1を表す請求項1に定義された式(I)の化合物を使用する、請求項5に記載された使用。
【請求項7】
式:
【化14】

(式中、B'およびR2は請求項4に定義された通りである)の化合物。
【請求項8】
式:
【化15】

(式中、A、B、C、B'およびR2は請求項4に定義された通りである)のキラル化合物。
【請求項9】
式:
【化16】

(式中、R2は請求項5に定義された通りである)のキラル化合物。
【請求項10】
式(A):
【化17】

のキラル化合物。

【公表番号】特表2006−510715(P2006−510715A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563270(P2004−563270)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003812
【国際公開番号】WO2004/058678
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(598006222)アベンティス・ファーマ・ソシエテ・アノニム (30)
【Fターム(参考)】