説明

ヘチマサポニン含有画分を含む清涼用組成物および該組成物を含む清涼食品

【課題】ヘチマの果実を除く乾燥地上部抽出物の新規用途を開発する。
【解決手段】ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物を有効成分として含有する清涼用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物を有効成分として含有する清涼用組成物に関する。
より詳細には、本発明は、ヘチマ抽出物の精製処理物、とりわけヘチマサポニン含有画分を有効成分とする清涼用組成物に関する。
また、本発明は、上記の組成物を含む清涼食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘチマ(Luffa cylindrica L.)は、ウリ科ヘチマ属に属する熱帯アジアを原産とする1年生のつる性植物であり、日本への渡来は1600年代と考えられている。
また、ヘチマのつるから採取されるヘチマ水は、別名「美人水」と称され民間では化粧水として使用されるが、他に肌荒れ、あせも、ヒビ、あかぎれおよび火傷にも効果があるとして使用され、また痰きりおよび咳止めにも使用されることが古くから知られている。
【0003】
また、ヘチマの新鮮で若く柔らかい果実またはよく熟したのち乾かした果実には、清熱する、痰を化すおよび解毒する効能があることが知られている(非特許文献1)。
さらに、中医方ではヘチマの若い果実や霜にあって枯れた果実を、熱病、咳や痰に対して用いることも知られている(非特許文献2)。
しかしながら、ヘチマの果実を除く地上部が薬用に用いられることは、上記の非特許文献1および2にも記載もされておらず、また、民間療法として伝承もされていない。
【0004】
また、ヘチマの果実を除く乾燥地上部のメタノールエキスをアンバーライト XAD−2、次いでエーテルで処理して得られた配糖体画分を、さらに各種クロマトグラフィーによる精製を繰り返すことにより新規サポニンとしてルシオサイド(lucyosides)A、B、C、D、E、F、GおよびHと、2種の既知サポニンであるジンセノサイド(ginsenoside)ReおよびRg1が得られている(非特許文献3)。
【0005】
さらに、上記の非特許文献3に記載の操作と同様にして、ヘチマの果実を除く乾燥地上部から新規サポニンとしてルシオサイドIおよび生ヘチマ果実から新規サポニンとして、ルシオサイドI、J、K、LおよびMが得られている(非特許文献4)。
また、特許文献1には、ヘチマの乾燥地上部のメタノールエキスを水とn−ブタノールとの間で分配し、n−ブタノール層を濃縮しさらに各種クロマトグラフィーにより精製してルシオサイドA〜Iを単離したことも報告されている。
【0006】
しかしながら、ヘチマの果実を除く地上部の低級アルコール抽出物、とりわけヘチマサポニン含有画分が、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇抑制または予防に効果を有することは何ら知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許公報平4−71080
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中薬大辞典第二巻、第1013および1014頁、上海化学技術出版社 小学館編
【非特許文献2】世界有用植物辞典、第637頁、平凡社
【非特許文献3】竹本ら、薬学雑誌、Vol.l04、第3号、1984、第246〜255頁
【非特許文献4】竹本ら、薬学雑誌、Vol.105、第9号、1985、第834〜839頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、果実を除くヘチマの乾燥地上部の低級アルコール抽出物の新規利用方法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意努力研究を重ねた結果、驚くべきことに、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物、とりわけヘチマサポニン含有画分が、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防効果を有することを見出して本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明によれば、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物を有効成分として含有する清涼用組成物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記ヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物が、ルシオサイドA、B、C、D、E、F、G、HおよびIならびにジンセノサイドReおよびRg1からなる群から選択される1以上のヘチマサポニンを有効成分として含有する清涼用組成物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記ヘチマ抽出物の精製処理物が、水とn−ブタノールとの分配もしくはカラムクロマトグラフィーまたはこれらの組合わせによる精製処理物であり、かつヘチマサポニン含有画分である清涼用組成物が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、前記組成物が、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防に使用される清涼用組成物が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、前記の清涼用組成物を含む清涼食品が提供される。
また、本発明によれば、前記清涼食品が、ガム、キャンディーまたは飲料水である清涼食品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物、とりわけヘチマサポニン含有画分を有効成分として含有する清涼用組成物を、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防を目的として安全に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ヘチマサポニン含有画分の添加飼料(ヘチマ食)を給餌したラット群と、ヘチマサポニン含有画分の非添加飼料(コントロール食)を給餌したラット群との2群における運動負荷後のラットの直腸内の経時的温度変化を示す図である。
【図2】ヘチマサポニン含有画分の添加飼料(ヘチマ食)を給餌したラット群と、ヘチマサポニン含有画分の非添加飼料(コントロール食)を給餌したラット群との2群における運動負荷後のラットの直腸内温度の低下度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において用いられるヘチマの産地は、特に限定されるものではない。
また、本発明において用いられるヘチマの地上部の採集時期としては、特に限定されるものではないが、開花時期である5〜7月または結実時期である6〜10月のいずれに採集したものでもよい。
【0019】
なお、本発明に用いられるヘチマの果実を除く地上部とは、ヘチマの地上部であるつる(茎)、葉、花、花芽および芽の採取したばかりの新鮮なものまたは乾燥したもののいずれをも意味する。
また、本発明に用いられるヘチマの果実を除く地上部は、低級アルコールによる抽出の際には、細断したものを使用するのが、抽出効率の観点から好ましい。
【0020】
本発明のヘチマの果実を除く地上部の抽出に用いられる低級アルコールとしては、C1〜C4アルコール、すなわち、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールまたはtert−ブタノールが挙げられる。
【0021】
上記の低級アルコール類は、単独もしくは混液または50容量%程度までの水を含有する含水アルコールを用いてもよい。
上記の例示した低級アルコールの中でも、抽出効率および抽出後の溶媒の留去の容易性の観点からメタノールまたはエタノールが好適に用いられる。
これらの抽出溶媒は、抽出材料に対して、1〜50倍(容量)程度、好ましくは2〜10倍(容量)程度用いられる。
【0022】
抽出温度は、室温〜溶媒の沸点の間で任意に設定できるが、上記の抽出材料を上記の抽出溶媒に浸漬して、例えば50℃〜抽出溶媒の沸点の温度で、振盪下もしくは非振盪下または還流下に抽出するのが適当である。
抽出材料を振盪下に浸漬する場合には、30分間〜10時間程度行うのが適当であり、非振盪下に浸漬する場合には、1時間〜20日間程度行うのが適当である。
【0023】
また、抽出溶媒の還流下に抽出するときは、30分〜数時間加熱還流するのが好ましい。
なお、50℃より低い温度で浸漬して抽出することも可能であるが、その場合には、上記の時間よりも長時間浸漬するのが好ましい。
抽出操作は、同一材料について1回だけ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度繰り返すのが、抽出効率の観点から好ましい。
【0024】
抽出混合物から固形物を除去して得られる抽出液は、常法により減圧濃縮して抽出エキスとし、減圧濃縮の際に回収される溶媒は、再度抽出に利用できる。
濃縮は、減圧下に抽出エキスが乾固するまで行ってもよい。
抽出エキスは、そのまま本発明の組成物を調製するのに用いてもよいが、粉末状または凍結乾燥品等により固形化して用いてもよい。これらの固形物とする方法は、当該分野で公知の方法を採用することができる。
【0025】
さらに、上記の抽出液は、濃縮する前後に精製処理に付してもよい。
精製処理は、吸着クロマトグラフ法、イオン交換クロマトグラフ法、溶媒による分配抽出等を単独または組み合わせて採用することができる。
例えば、クロマトグラフ法としては、順相もしくは逆相担体またはイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーまたは遠心液体クロマトグラフィー等のいずれか、またはそれらを組み合わせてヘチマサポニン含有画分を分取する方法が挙げられる。
この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。
【0026】
なかでも、抽出液を減圧濃縮して抽出エキスとし、この抽出エキスを水と非水和性有機溶媒を用いて分配し、有機溶媒可溶画分として得ることもできる。
非水和性有機溶媒としては、酢酸エチル、n−ブタノール、ヘキサン、クロロホルムなどが挙げられるが、中でもサポニン類の分画にはn−ブタノールが好適に用いられる。
【0027】
すなわち、得られた抽出エキスまたは減圧濃縮して得られた濃縮物を水に溶解し、n−ブタノールを用いて分配し、n−ブタノール可溶画分として分離して得ることもできる。
また、分離したn−ブタノール層をさらに減圧濃縮して得られた濃縮残渣を、メタノールまたはエタノールに溶解させ、この溶液にジエチルエーテルなどの脂溶性溶媒を添加して生成した析出物をろ取してヘチマサポニン含有画分として使用することもできる。
【0028】
分配抽出は、当該分野で通常行われる撹拌もしくは振盪分配法または液滴向流分配法などの常法に従って行うことができる。例えば、室温下、振盪下または非振盪下に、抽出エキスの水溶液に対して、n−ブタノールを1/5〜5倍(容量) (1:0.2〜1:5)程度加えて行うのが適当である。
【0029】
また、上記の低級アルコール抽出物または上記のn−ブタノール層の減圧濃縮物を、前記のような精製処理、すなわち、順相クロマトグラフィーもしくは順相高速液体クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーもしくは逆相高速液体クロマトグラフィーのいずれか単独で、またはこれらを組合わせてさらに精製することもできる。
【0030】
本発明のヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物は、ヘチマサポニン、すなわちヘチマが含有するサポニンとしてルシオサイドA、B、C、D、E、F、G、HおよびIならびにジンセノサイドReおよびRg1からなる群から選択される1以上のヘチマサポニンを含むことを特徴とする。
【0031】
したがって、本発明における用語「ヘチマ抽出物」とは、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出して得られる抽出液を意味する。
また、本発明における用語「濃縮物」とは、上記ヘチマ抽出物を減圧濃縮して得られる抽出エキスまたは乾固物のいずれをも意味する。
【0032】
また、本発明における用語「精製処理物」とは、上記ヘチマ抽出エキスまたは乾固物の水溶液を吸着クロマトグラフィーまたはイオンクロマトグラフィーに付して分画し減圧濃縮したヘチマサポニン含有画分;または該濃縮物のメタノール溶液にエチルエーテルを加え生成した析出物をろ取し乾燥して得られるヘチマサポニン含有画分;またはヘチマ抽出エキスまたは乾固物の水溶液をn−ブタノールを用いて分配し、n−ブタノール可溶画分として分離して、さらに減圧濃縮して得られた濃縮残渣を、メタノールまたはエタノールに溶解させ、この溶液にジエチルエーテルを添加して生成した析出物をろ取して得られるヘチマサポニン含有画分のいずれをも意味する。
【0033】
よって、本発明における用語「ヘチマサポニン含有画分」とは、ヘチマの果実を除く地上部が含むルシオサイドA、B、C、D、E、F、G、H、Iならびに、ジンセノサイドReおよびRg1などのサポニン化合物から選択される1以上のヘチマヘチマサポニンを含有する画分を意味する。
【0034】
本発明者らは、ヘチマの果実を除く地上部の抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物、とりわけヘチマサポニン含有画分を添加した飼育飼料で飼育したラット群と、ヘチマサポニン含有画分を添加していない標準飼料で飼育したラット群のラットを、1匹ずつトレッドミルで10分間強制運動させた。
運動後、各ラットの直腸温度変化を麻酔下に測定した結果、ヘチマサポニン含有画分を添加した飼育飼料で飼育したラット群では、標準飼料で飼育したラット群と比べて少なくとも0.5度の温度が低下することを見出し、本発明を完成した。
【0035】
したがって、本発明によれば、ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物から得られるサポニン含有画分を有効成分とするほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防に使用される清涼用組成物が提供される。
また本発明によれば、ヘチマ抽出物、とりわけヘチマサポニン含有画分を有効成分として含むほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防に使用される清涼食品が提供される。
【0036】
また、本発明によれば、前記ヘチマ抽出物、とりわけヘチマサポニン含有画分を有効成分として含む、ガム、キャンディーおよび清涼飲料水からなる群から選択される清涼食品が提供される。
なお、本発明による清涼用組成物は、該組成物がヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物であるのかによってその使用量は異なるが、例えば清涼用組成物がヘチマサポニン含有画分である場合、上記の清涼食品に、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.005重量%〜5重量%、より好ましくは0.1重量%〜2重量%の範囲で添加できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例および試験例により具体的に説明するが、以下の実施例および試験例は、本発明を説明するためのものであり、本発明をなんら限定するものではない。
また、特に記載がない溶媒および試薬は、和光純薬工業株式会社またはナカライテスク株式会社から購入して使用した。
【0038】
製造例1
ヘチマの乾燥地上部の抽出物の調製
9月に採取した果実を除くヘチマの乾燥地上部5kgを、市販のメタノール25Lで3回還流下に30分間抽出し、冷後ろ過したろ液を合わせて減圧下に溶媒留去し、濃縮物75gを得た。
この濃縮物に水300mLを加え、水不溶物をろ去して得られた水溶液を、常法に従ってアンバーライト(Amberlite:登録商標)XAD−2(オルガノ社)1Lを水に懸濁して調製したカラムクロマトグラフィーに付し、水3Lで水洗後、メタノール3Lで溶出し、溶出液を減圧濃縮後に乾燥して黄色粉末15gを得た。
【0039】
ここに得られた黄色粉末をメタノール50mLに溶解し、このメタノール溶液にエチルエーテル500mLを加え、生じた沈殿物をろ取し、乾燥してサポニン含有画分として淡黄色粉末10gを得た。
ここに得られたサポニン含有画分を、以下の動物試験におけるヘチマサポニン含有画分を添加した飼料の調製に使用した。
【0040】
実施例1
ヘチマサポニン含有画分の運動後の体温上昇抑制作用:
A. 実験動物
実験動物として、6週齢のWhister系雌雄ラット各5匹を1群として実験に用いた。
ラットを標準飼育飼料摂食群とヘチマ食摂食群との2群に分け、各ラットは、室温23±1℃、相対湿度60〜70%、12時間の明暗周期(点灯;2:00〜14:00)の条件下で、個別に飼育した。
【0041】
B. 標準飼育飼料およびヘチマサポニン含有画分を添加したヘチマ食の調製
標準飼育飼料およびヘチマ食の各成分の割合を、以下に示す。
【表1】

【0042】
C. 運動負荷後のラットの直腸温度の測定
標準飼育飼料摂食群とヘチマ食摂食群の2群に分けたラットを2日間上記の環境下で飼育した。その間、各飼料と水は自由摂取とした。
2日間の飼育終了後、各群のラットを1匹ずつラット/マウストレッドミル(NATSUME KN−73、株式会社 夏目製作所)を用いて10分間強制運動させた。
運動終了後の各群のラットをそれぞれ、直ちにペントバルビタールナトリウムにて麻酔し、室温23±1℃、相対湿度40〜50%の環境下で、安静時の直腸内温度の変化を、運動終了後3分後から1分30秒間隔で運動終了60分後迄、デジタル式サーミスター温度計(株式会社 夏目製作所)を用いて測定した。
【0043】
測定結果を、図1に示す。
図1より、ヘチマ食摂食群は、標準飼育飼料摂食群と比べ、運動終了後6分後から直腸内温度が明らかに低下し始め、運動終了10分後からは、0.6〜0.7度程度の温度低下が観測された。
すなわち、ヘチマ食摂食群のラットでは、標準飼育飼料摂食群と比べ、トレッドミルによる強制運動終了後の体温上昇が、明らかに抑制または予防されていることが判った。
【0044】
また、上記の強制運動後のラットの体温低下実験における、標準飼育飼料摂食群と、ヘチマ食摂食群との間のラットの直腸温度の測定時間内(1時間)の温度の低下率を図2に示す。
図2より、ヘチマ食摂食群のラットの運動後の直腸温度の低下率が、有意に高いことが判った。
すなわち、ヘチマ食摂食群のラットでは、トレッドミルによる強制運動後の直腸温度上昇が、有意(p<0.05)に抑制または予防されていることが判った。
なお、標準飼育飼料摂食群と、ヘチマ食摂食群のラットの直腸温度の測定値は、t検定を用いて、統計的有意性を分析した。両群における測定結果に基づき得られたラットの運動後の直腸温度の低下率は、二重検定し、p<0.05を統計的に有意とみなした。
【0045】
実施例2
キャンディーの製造
以下の処方:
【表2】

に記載の各成分を鍋に全部入れて中火で加熱しながら全体をよくかき回し、均一に溶解し、滑らかになったら、金属製の平たいバットに薄くサラダオイルを塗り、このバットに、溶けた上記の成分の混合物を入れ、室温に冷まし、完全に冷えないうちに食べ易い大きさにカットしてキャンディー200gを得た。
【0046】
実施例3〜6
上記の実施例2において、ヘチマサポニン含有画分を0.5、1.0、1.5および2.0重量%をそれぞれ用いたこと以外は、実施例2と全く同様にしてキャンディーをそれぞれ調製した。
【0047】
実施例7
キャラメルの製造
以下の処方:
【表3】

に記載の成分中、バター以外の各成分を全部鍋に入れて中火で溶解し、次いでバターを加え、弱火にして煮詰め、キャラメル色になり滑らかになったら、サラダオイルを薄く塗った金属際のバットに移し、室温に冷却する。
完全に冷却する前に、食べ易い大きさにカットしてキャラメル200gを得た。
【0048】
実施例8〜11
上記の実施例7において、ヘチマサポニン含有画分を0.5、1.0、1.5および2.0重量%をそれぞれ用いたこと以外は、実施例7と全く同様にしてキャラメルをそれぞれ製造した。
【0049】
実施例12
ガムの製造
以下の処方:
【表4】

に記載の塩を水(ぬるま湯)に加え溶解し、次いで強力粉を加え混合し、さらにこねて強力粉の混合物がつるつるになるまでこねることを繰り返す。必要に応じて手にぬるま湯をつけてこねることを繰り返し、つるつるになり手に付着しなくなるまでこねた後、ラップに包んで1時間程度放置熟成させる。
【0050】
1時間後に上記で得られたガム状の塊をボールにいれたぬるま湯に入れて、よく洗う。ぬるま湯を変えながら、お湯が白くならなくなるまで、何度も洗い、洗液が透明になるまでぬるま湯中での洗浄を繰り返す。
得られたガムに、上記の砂糖、香料およびヘチマサポニン含有画分を加えさらにこねた後、食べ易い大きさにカットしてガム200gを得た。
【0051】
実施例13〜16
上記の実施例12においてヘチマサポニン含有画分を0.8、1.6、2.4および3.2重量%をそれぞれ用いたこと以外は、実施例12と全く同様にしてガムをそれぞれ製造した。
【0052】
実施例17
清涼飲料水の調製
以下の処方:
【表5】

に記載の成分を混合し、清涼飲料水2kgを調製した。
【0053】
実施例18〜21
上記の実施例17において、ヘチマサポニン含有画分を0.5、1.0、1.5および2.0重量%をそれぞれ用いたこと以外は、実施例17と全く同様にして清涼飲料水をそれぞれ製造した。
【0054】
実施例22
炭酸清涼飲料水の調製
以下の処方:
【表6】

に記載の成分を混合し、清涼飲料水2kgを調製した。
【0055】
実施例23〜26
上記の実施例22において、ヘチマサポニン含有画分を0.5、1.0、1.5および2.0重量%をそれぞれ用いたこと以外は、実施例22と全く同様にして清涼飲料水をそれぞれ製造した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
ヘチマサポニン含有画分を含む食べ物、キャンディー、ガムまたは清涼飲料水を摂取することにより、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇を予防できることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘチマの果実を除く地上部を低級アルコールで抽出したヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物を有効成分として含有する清涼用組成物。
【請求項2】
前記ヘチマ抽出物またはその濃縮物もしくは精製処理物が、ルシオサイドA、B、C、D、E、F、G、HおよびIならびにジンセノサイドReおよびRg1からなる群から選択される1以上のヘチマサポニンを有効成分として含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヘチマ抽出物の精製処理物が、水とn−ブタノールとの分配もしくはカラムクロマトグラフィーまたはこれらの組合わせによる精製処理物であり、かつヘチマサポニン含有画分である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ほてり、暑気中り、熱中症、熱射病もしくは日射病による体温上昇または運動後の体温上昇の予防に使用される請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物を含む清涼食品。
【請求項6】
前記清涼食品が、ガム、キャンディーまたは飲料水である請求項5に記載の清涼食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32239(P2011−32239A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181600(P2009−181600)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(592175173)株式会社カネイ (1)
【Fターム(参考)】