説明

ヘッダー型カードコネクタ

【課題】安定した実装状態を確保し、設計の自由度が高いカードコネクタの提供。
【解決手段】メモリーカード等のカードの先端部分が挿入される深さのカード挿入部が前面に開口されたモールドケース1を有するハウジングを備え、モールドケース1の一方の側部に、前後に向けた操作側スイッチコンタクト11と、被操作側スイッチコンタクト12とからなるタイミングスイッチ10が備えられ、操作側スイッチコンタクト11及び被操作側スイッチコンタクト12は、上下配置にモールドケースの前後方向に向く長板状をした上片部と下片部と、該上片部と下片部との前端部間を連続させる縦向き片部とをもって構成し、下片部の後端側に各コンタクトを基盤に接続させるための基盤接続用端子部を備え、これをモールドケース1の裏面後部に露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、SDカード、メモリーカード等に用いるカードコネクタであって、カードの先端部分のみを挿入することによって接続できるようにしたヘッダー型カードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッダー型カードコネクタとしては、信号伝達用端子部が露出しているカードの先端部分のみをハウジング内に挿入することによって、カードを保持し、信号伝達端子部に対するコンタクトの電気的接続がなされるようにしているものが提供されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
この種のヘッダー型カードコネクタは、図14〜図16に示すように、モールドケース51とその上面及び左右側面を包み込むようにしたシールドカバー52とをもってハウジングが形成され、モールドケース51の上面に凹溝状にカード挿入部53が形成され、その上側をシールドカバー52によって覆っている。
【0004】
このシールドカバー52の両側縁部をモールドケース51の下側に折り曲げて基盤に半田付けする耐基盤固定部54が形成され、これを基盤Cの表面のパターンに半田付けすることによってアースさせるとともに、これによってヘッダー型カードコネクタ全体を基盤Cに固定している。
【0005】
また、このヘッダー型カードコネクタは、メモリーカードBの挿抜時に、カード挿入部53内に露出している信号伝達用の接触子55を非活線状態とするために、カード挿入部53の奥側に、メモリーカードBの信号伝達端子に対する接触子55の接触タイミングに合わせてオン・オフ動作するするタイミングスイッチ56が備えられている。
【0006】
このスイッチ56は、奥行きの小さいヘッダー型カードコネクタでは、カード挿入部53の側部に設けられており、カード挿入部の開口部から奥側に向けて配置した操作側接触バネ57と、その外側に配置した固定側接触バネ58とから構成された常開式となっており、メモリーカードBの挿入によって操作側接触バネ57が押され、接点部57aが固定側接触バネ58に接触することによってオン状態となるようにしている。
【0007】
この従来のヘッダー型カードコネクタは、タイミングスイッチの接点部をカード挿入部の奥側に設ける必要から、操作側及び固定側の各接触バネの固定部は、カード挿入部開口側に配置していた。そして各固定部から下側に延長して端子部57b,58bが形成され、これが図16に示すように、モールドケース51の底面前縁側の隅部に露出され、各端子部57b,58bを基盤Cのパターンに半田付けしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−77565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来のヘッダー型カードコネクタにおいては、タイミングスイッチ56の端子部57b,58bが前方側隅部にあることから、モールドケース底面における基板接続端子部の配置が制限され、設計の自由度が低いことに加えて、操作側接触バネ57の寸法制約上、必要なバネ長を得られず、十分な弾性特性を得られないという問題があった。
【0010】
また、従来のヘッダー型カードコネクタにおいては、タイミングスイッチ56の両接触バネ57,58の端子部57b,58bが、モールドケース51の底面前縁側の隅部に露出されているため、この部分にはシールドカバー52の耐基盤固定部54を設けることができず、このため従来は図16に示すように隅部を避けた2点又は図には示してないが、1隅部を除いた位置に設けざるを得なかった。
【0011】
このため、ハウジングにメモリーカードのハウジング外側端部に掛る上下方向の外力によるモーメントが、タイミングスイッチ56の端子部57b,58bに集中することとなり、それにより半田剥離等の懸念が生ずること、シールドカバー52の耐基盤固定部54の配置に偏りが生じるため、信号伝達用の接触子と基盤のパターンとの半田付け部分にもメモリーカードからの外力が作用することとなり、耐久性が低いものとなること等の問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、設計の自由度が高く、且つ基板に対して強固な取り付け可能なヘッダー型カードコネクタの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、メモリーカード等のカードの先端部分が挿入される深さのカード挿入部が前面に開口されたモールドケースを有するハウジングを備え、前記モールドケースの一方の側部に、前後に向けた操作側スイッチコンタクトと、被操作側スイッチコンタクトとからなるタイミングスイッチが備えられ、前記操作側スイッチコンタクトには、カード挿入部内に挿入されたカードによって横方向に押し出し動作される操作用凸部と、該操作用凸部と一体の可動接点部とを有し、カード挿入によって前記操作用凸部が側方に押し出されることによって前記可動接点部が被操作用コンタクトの固定接点部に接触されるようにしてなるヘッダー型カードコネクタにおいて、前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトは、上下配置にモールドケースの前後方向に向く長板状をした上片部と下片部と、該上片部と下片部との前端部間を連続させる縦向き片部とをもって構成し、前記下片部の後端側に各コンタクトを基盤に接続させるための基盤接続用端子部を備え、該基盤接続用端子部を前記モールドケースの裏面後部に露出させたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ハウジングは、上面にカード挿入部を有するモールドケースと、該モールドケースのカード挿入部の上面部を覆うとともに該モールドケースの両側部下面に係止される半田付け用端子部を一体に有する導電性金属製のシールドカバーとをもって構成され、前記半田付け用端子を基盤に半田付けすることによって実装するようにしたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の何れか1の請求項の構成に加え、前記下片部には、その後端側にモールドケース左右間の中央側部に向けた水平折り曲げ部を設け、該水平折り曲げ部又はその延長部の下縁より下向きに突出させた端子片部を備え、該端子片部の下端に前記基盤接続用端子部を一体に備えたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1の請求項の構成、前記モールドケースの底面に、操作側スイッチコンタクト及び被操作側スイッチコンタクトの各々の下片部が挿入される操作側スイッチコンタクト収容溝及び被操作側スイッチコンタクト挿入溝を備え、該各コンタクト挿入溝内にて前記各コンタクトに備えた圧入片部を該溝の底部の圧入穴に圧入することによって固定し、前記両コンタクトの上片部をモールドケースの底面上にてその後端側が左右方向に弾性変形できるようにしたことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトの下片部が嵌り合うスイッチコンタクト挿入溝の幅をコンタクト厚さより大きくすることにより、該コンタクトの下片部先端側が厚さ方向に弾性変形可能なバネ部としたことにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4又は5の何れか1の請求項の構成に加え、前記コンタクト挿入溝と該溝内のコンタクト下片部との間に、下片部の先端側の浮き上がりを防止する係止機構を備えたことにある。
【0019】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記係止機構は、スイッチコンタクト挿入溝の端部を覆う抜け止め部を備え、該抜け止め部下において幅方向側の一方に前記下片部を片寄せて配置することによって構成されたことにある。
【0020】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記係止機構は、前記コンタクト挿入溝の開口前端部内面に、掛止用張り出し部を形成し、該張り出し部下に前記下片部の先端に突設した浮き上がり防止突起を挿入することによって構成されたことにある。
【発明の効果】
【0021】
前述した本発明のヘッダー型カードコネクタにおいては、ハウジングを構成しているモールドケースの一方の側部に、前後に向けた操作側スイッチコンタクトと、被操作側スイッチコンタクトとからなるタイミングスイッチが備えられているヘッダー型カードコネクタにおいて、前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトは、上下配置にモールドケースの前後方向に向く長板状をした上片部と下片部と、該上片部と下片部との前端部間を連続させる縦向き片部とをもって構成し、前記下片部の後端側に各コンタクトを基盤に接続させるための基盤接続用端子部を備え、該基盤接続用端子部を前記モールドケースの裏面後部に露出させたことにより、操作側スイッチコンタクトと被操作側スイッチコンタクトとの接点部をハウジングのカード挿入部奥側とした状態で、それぞれの基盤接続用端子部をモールドケース底面の後部側に位置させることができ、該基盤接続端子部の露出位置をハウジングの左右方向中央寄りの適宜の位置を選定することができて、設計の自由度が増す。
【0022】
また、ハウジングが、上面にカード挿入部を有するモールドケースと、該モールドケースのカード挿入部の上面部を覆うとともに該モールドケースの両側部下面係止される半田付け用端子部を一体に有する導電性金属製のシールドカバーとをもって構成され、その半田付け用端子部を基盤に半田付けすることによって実装されるヘッダー型カードコネクタに実施することにより、シールドカバーのアース兼用の半田付け用端子をハウジング底面の4隅に置く設計とすることが容易となり、ハウジング内に先端部のみが挿入されたカードを通じて作用する上下方向のモーメントを全てこの半田付け用端子と基盤との半田付けによって受け持たせることができ、各コンタクトの基盤接続用端子部にモーメントが作用せず、耐久性が高く、安全で信頼性の高い実装状態が得られる。
【0023】
本発明において、前記下片部には、その後端側にモールドケース左右間の中央側部に向けた水平折り曲げ部を設け、該水平折り曲げ部又はその延長部の下縁より下向きに突出させた端子片部を備え、該端子片部の下端に前記基盤接続用端子部を一体に備えることにより、各スイッチコンタクトの基盤接続用端子部をモールドケース底面の左右方向中央側の任意の位置に設置することができる。
【0024】
本発明において、前記モールドケースの底面に、操作側スイッチコンタクト及び操作側スイッチコンタクトの各々の下片部が挿入される操作側スイッチコンタクト収容溝及び被操作側スイッチコンタクト挿入溝を備え、該各コンタクト挿入溝内にて前記各コンタクトに備えた圧入片部を該溝の底部の圧入穴に圧入することによって固定し、前記両コンタクトの上片部をモールドケースの底面上にてその後端側が左右方向に弾性変形できるようにすることにより、両コンタクトのモールドケースに対する組み込みが容易となり、両コンタクト間的確な相対位置関係が維持できる。
【0025】
本発明において、前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトの下片部が嵌り合うコンタクト挿入溝の幅をコンタクト厚さより大きくすることにより、該コンタクトの下片部先端側が厚さ方向に弾性変形可能なバネ部とすることにより、上片部全体と下片部の一部を、スイッチを構成する弾性接触バネとすることができ、前後寸法の小さいヘッダー型カードコレクタにおいてもスイッチの弾性接触バネ長を長くすることができる。
【0026】
本発明において 前記コンタクト挿入溝と該溝内のコンタクト下片部との間に、下片部の先端側の浮き上がりを防止する係止機構を備えることにより、長い弾性接触バネ長のコンタクトが、ハウジングに対する衝撃等の振動によるシールドカバー側への変異が阻止される。
【0027】
また、前記係止機構を、スイッチコンタクト挿入溝の端部を覆う抜け止め部を備え、該抜け止め部下において幅方向側の一方に前記下片部を片寄せて配置することによって構成すること、或いは、前記コンタクト挿入溝の開口前端部内面に、係止用張り出し部を形成し、該張り出し部下に前記下片部の先端に突設した浮き上がり防止突起を挿入することによって構成することにより、部品数を増やすことなく、係止機構が設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るカードコネクタの実施の一例を示す斜視図である。
【図2】同上のカードコネクタのカード挿入状態を示す左側面図である。
【図3】同上の底面側から見た斜視図である。
【図4】同上のカードコネクタのシールドカバーを取り除いたモールドケース部分の平面図である。
【図5】図4中のスイッチコンタクトの配置を示す斜視図である。
【図6】(a)は同上の操作側スイッチコンタクトを示す正面図、(b)は同平面、(c)は同左側面図である。
【図7】同上の斜視図である。
【図8】図4中のモールドケースの一部拡大平面図である。
【図9】図8中のa−a線断面図である。
【図10】図4中の操作側スイッチコンタクトの取り付け状態を示す断面図である。
【図11】(a)は図4中の被操作側スイッチコンタクトを示す正面図、(b)は同平面、(c)は同左側面図である。
【図12】同上の斜視図である。
【図13】図4中の非操作側スイッチコンタクトの取り付け状態を示す断面図である。
【図14】従来のヘッダー型カードコネクタの一例を示す斜視図である。
【図15】同上の部分破断平面図である。
【図16】同上の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の態様を、図面に示した実施例に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明に係るカードコネクタの一例を示し、図中符号Aはハウジング、Bはメモリーカード等のカードである。
ハウジングAは、絶縁性樹脂部材により形成されたモールドケース1と、モールドケース1を覆うシールドカバー2とを組み合わせて形成されている。
【0030】
モールドケース1は、図4に示すように、上面部を凹ませた形状にカード挿入部3を形成し、カード挿入部3の底面には、カードの先端下面に配置された情報伝達端子と弾性的に接触する接触バネ部4を一体に有する多数のコンタクト5,5...が支持されている。この各コンタクト5の基盤接続用端子部6がモールドケース1の底面中央部分にほぼ横1列配置に露出されている。
【0031】
シールドカバー2は、モールドケース1の上面を覆う天板部2aとその両側縁を下向きに折り曲げた形状の一対の側壁部2b,2bと、両側壁部2b,2bの下縁の前後両端部をモールドケース1の底面4隅部を下に折り曲げた形状のモールドケース掴み込み兼用の半田付け用端子部2c,2c......と、天板部後縁を下向きに折り曲げた形状のカードストッパー部2dとを備え、全体が導電性金属板材を打ち抜き・曲げ加工することによって形成されている。
このカードストッパー2dがカード挿入部の奥壁を構成しており、カード挿入部3はハウジングAの前面に開口されている。
尚、本明細書においては、「前」はカード挿入部開口側をいい、「後」はカード挿入部奥側をいうものとする。
【0032】
このモールドケース1の側部には、タイミングスイッチ10が備えられている。このスイッチ10は、カード挿入部3内にカードBが挿入されることによってON動作がなされるものであり、カードBが挿入されてその信号伝達用端子がカード挿入部3内の接触バネ4に接触した後にON動作がなされるようにしている。
【0033】
このタイミングスイッチ10は、それぞれカード挿抜方向に向けて配置された操作側スイッチコンタクト11と被操作側スイッチコンタクト12とから構成されており、両コンタクト11,12の内、被操作側スイッチコンタクト12が外側、即ちモールドケース1の一方の側面側にあり、その内側、即ちカード挿入部3側に操作側スイッチコンタクト11が配置されている。
【0034】
操作側スイッチコンタクト11には、図5に示すように、カード挿入部3内に挿入されるカードBによって側方に押し出される操作用凸部13が湾曲形成され、その先端に被操作側スイッチコンタクト12側に向いて突出した可動接点部14を有している。被操作側スイッチコンタクト12には、前記可動接点部14の先端に対向する位置に板状の固定接点部15が備えられ、カードBの挿入によって操作用凸部13が側方に押し出されることにより、可動接点部14が固定接点部15に接触し、スイッチがON状態となるようになっている。
【0035】
操作側スイッチコンタクト11は、図6、図7に示すように、導電性金属板材を打ち抜いて全体が一体に形成されており、それぞれ矩形状をした上下一対の上下片部11a,11bを有している。この上下片部11a,11bは、前側端部間が縦向き片部11cを介して一体となっており、縦向き片部11cは、下片部11bの前端上縁から上向きに立ち上げられ、その上縁に後方に向けた上片部11aの前端部下縁が連続された形状となっており、側面がコ字状となっている。
【0036】
上下片部11a,11bは、その側面側から見た状態が互いに平行となるようになっている。換言すれば、下片部11bがモールドケース1の後部側から前部側に延長され、その先端を上側に折り返してコ字状となるように形成されている。
【0037】
操作側スイッチコンタクト11の上片部11aは、前端部分が縦向き片部11cの上縁と一体となっており、前端部稍後方側にカード挿入部3側に向けて水平横方向に傾斜させた傾斜部16があり、その傾斜部16の後方に伸びる後方側延長部17が形成され、その後端に前述した操作用凸部13及び可動接点部14が一体に形成されている。
【0038】
操作側スイッチコンタクト11の下片部11bは、縦向き片部11c下に連続した外側前向き片部20を有し、該外側前向き片部20の後端をモールドケース中央側、即ち被操作側スイッチコンタクト12から離れる側にほぼ直角に折り曲げた形状の水平折り曲げ片部21を有し、更に水平折り曲げ片部の延長部を前方側に折り返した内側前向き片部22を一体に有し、平面図において前後に平行な2辺を有するコ字状に形成されている。
【0039】
この下片部11bの前記水平折り曲げ片部21の下縁より下側に向けて端子片部11dが垂下された形状に形成され、その先端を後方側に折り曲げて基盤接続用端子部11eが一体に形成されている。
【0040】
下片部11bの前記内側前向き片部22の下縁には、圧入片部11fが下向きに突設された形状に形成されている。この圧入片部11fを後述するモールドケース1の圧入穴内に圧入されるようになっている。
【0041】
下片部11bの外側前向き片部20の下面にはガイド突起11gが下向きに突設されており、これが後述するモールドケース1のガイド穴に挿入されるようになっている。
【0042】
モールドケース1の側部底面には、図8に示すように、下片部11aが収容される操作側スイッチコンタクト収容溝25が形成されている。この操作側スイッチコンタクト収容溝25は、外側前向き片部20、水平折り曲げ片部21及び内側前向き片部22によって形成されるコ字状と同形の平面形状をしている。
この操作側スイッチコンタクト収容溝25には、上片部11aの先端側の浮き上がりを防止する係止機構が備えられている。
【0043】
この係止機構は、図9、図10に示すように、操作側スイッチコンタクト収容溝25の外側前向き片対応部25aの前端部に操作側スイッチコンタクト収容溝25の前端部を覆うように抜け止め部26を形成し、この抜け止め部26には、縦向き片部11cが通過できる幅のスリット27に形成されており、このスリット27を通された縦向き片11cは、その弾性によって、抜け止め部26下においてモールドケース中央側に片寄せた状態で挿入されるようになっており、これによって操作側スイッチコンタクト11全体が上向きに移動するのを防止する構造となっている。
【0044】
尚、下片部11bが嵌り合う操作側コンタクト挿入溝25の幅を、該下片部11Bの厚さより大きくすることにより、下片部11bの先端側が上片部11aとともに厚さ方向に弾性変形可能なバネ部となっている。
【0045】
外側前向き片対応部25aの底面には、前述したガイド突起11gが嵌り合うガイド穴26が形成され、このガイド穴28にガイド突起11gが嵌り合うことによって、カード挿入時に、カードが操作用凸部13に当接した時、操作用凸部13を介して、操作側スイッチコンタクト11全体にカード挿入方向の力が作用するが、この力を、ガイド突起11gの挿入方向奥側の面と、対応するガイド穴28の壁面とで受け止めることで、操作側スイッチコンタクト11の無用な変形を抑止している。
【0046】
操作側スイッチコンタクト収容溝25の水平折り曲げ片対応部25bには、その底面と後部にかけて基盤接続用端子部挿通穴29が形成され、この穴29を通して端子片部11d及び基盤接続用端子部11eがモールドケース1の下面側に突出されている。
【0047】
操作側スイッチコンタクト収容溝25の内側前向き片対応部25cには、その底面に圧入穴30が形成され、この圧入穴30内に圧入片部11fを圧入することによって操作側スイッチコンタクト11が抜け止めされている。
【0048】
操作側スイッチコンタクト11の上片部11aは、縦向き部11cを介してモールドケース1の底面上に突出され、その厚さ方向に弾性変形可能に設置されており、この操作側スイッチコンタクト11の上片部11a全体とこれに連続した下片部11bの外側前向き片部20が弾性変形できる板バネを構成している。
【0049】
尚、この操作側スイッチコンタクト11の装着に際しては、下縁に圧入片部11fがある内側前向き片部22が外側前向き片部20の真上からハウジング中央側にずれているため、上片部11aをフリーな状態とし、下片部11bの内側前向き片部22の上縁を直接、治具によって加圧することができるため、コンタクトを変形させずに確実な装着が可能となっている。
【0050】
被操作側スイッチコンタクト12は、図11、図12に示すように、導電性金属板材を打ち抜いて全体が一体に形成されており、それぞれ矩形状をした上下一対の上下片部12a,12bを有している。この上下片部12a,12bは、前側端部間が縦向き片部12cを介して一体となっており、縦向き片部12cは、下片部12bの前端上縁から上向きに立ち上げられ、その上縁に後方に向けた上片部12aの前端部下縁が連続された形状となっており、側面視がコ字状となっている。
【0051】
上下片部12a,12bは、その側面側から見た状態が互いに平行となるようになっている。換言すれば、下片部12bがモールドケース1の後部側から前部側に延長され、その先端を上側に折り返してコ字状となるように形成されている。
【0052】
被操作側スイッチコンタクト12の上片部12aは、前端部分が縦向き片部12cの上縁と一体となっており、前端部稍後方側にカード挿入部3側に向けて水平横方向に傾斜させた第一傾斜部35があり、その傾斜部35の後方に伸びる後方側延長部36が形成され、更にその後端部に、カード挿入部3側に向けて水平横方向に傾斜させた第二傾斜部37があり、その後端に前述した固定接点部15が備えられている。この固定接点部15は、カード挿入部3側に向けた縦向きの平板状となっている。
【0053】
被操作側スイッチコンタクト12の下片部12bは、縦向き片部12c下に先端部上縁が連続した前向き片部40を有し、該前向き片部40の後端をモールドケース中央側、即ち操作側スイッチコンタクト11側にほぼ直角に折り曲げた形状の水平折り曲げ片部41を有し、更に水平折り曲げ片部の後方側向けて折り返曲げた後方延長片部42を一体に有している。
【0054】
この下片部11bの前記後方側延長片部42の下縁より下側に向けて端子片部12dが垂下された形状に形成され、その先端を後方側に折り曲げて基盤接続用端子部12eが一体に形成されている。
【0055】
下片部12bの前記前向き片部40の下縁には、圧入片部12fが下向きに突設された形状に形成されている。この圧入片部12fが後述するモールドケース1の圧入穴内に圧入されるようになっている。
下片部12bの前端部分には、浮き上がり防止突起43が前向きに突設されている。
【0056】
モールドケース1の側部底面には、前述した操作側スイッチコンタクト収容溝25の外側に、被操作側スイッチコンタクト収容溝45が形成されている。この被操作側スイッチコンタクト収容溝45は、被操作側スイッチコンタクト12の下片部12bが挿入されるようになっており、該下片部12bの平面形状と同形の平面形状をしている。
【0057】
この被操作側スイッチコンタクト収容溝45の前向き片部対応部45aの底面には、圧入穴47が形成されており、この圧入穴に前述した圧入片部12fを圧入することによって被操作側スイッチコンタクト12の下片部12bが抜け止めされている。
【0058】
前向き片部対応部45aの前端部と被操作側スイッチコンタクト収容溝45間には、下片部12aの先端側の浮き上がりを防止する係止機構が備えられている、この係止機構は図9、図13に示すように、モールドケース1の底面に開口している前縁部に後方側に突出した張り出し部46が形成されており、その張り出し部46の下側に前述した浮き上がり防止突起43が挿入され、これによって下片部12bの前端側が浮き上がり方向に動作されるのを防止する構造となっている。
【0059】
尚、前向き片部対応部45aの溝幅は、下片部12bの厚さより大きく形成されており、下片部12bの前記圧入片部12fが厚さ方向に弾性変形できるようになっている。
【0060】
被操作側スイッチコンタクト収容溝45の後方延長片部対応部45bは後端側がモールドケース1後面に解放され、後方延長片部42の後端がモールドケース1の後端部の解放空間に突出され、その下縁に一体の端子片部12dが、該解放空間内にて下向きに垂下され、その下端の基盤接続用端子部12eが基盤のパターンに半田付けされるようになっている。
【0061】
被操作側スイッチコンタクト12の上片部12aは、縦向き部12cを介してモールドケース1の底面上に突出され、その厚さ方向に弾性変形可能に設置されており、この上片部12aの全長及び下片部12bの圧入片部12fより前方側が弾性変形されるようになっている。
【0062】
尚、この被操作側スイッチコンタクト12の装着に際しては、上片部12aの後方延長片部42が水平折り曲げ片部41の存在によって下片部11bの真上からハウジング中央側にずれているため、上片部12aをフリーな状態とし、下片部12bの圧入片部12f位置の上縁を直接、治具によって加圧することができるため、コンタクトを変形させずに確実な装着が可能となっている。
【0063】
このように装着される両コンタクト11,12のそれぞれの基盤接続用端子部11e,12eは、図3に示すように、モールドケース1の後端部底面にあって、被操作側スイッチコンタクトの前向き片部40より、水平折り曲げ片部41の水平長さ分だけモールドケース中央側にて、前後に並べた配置に露出されている。
【0064】
そして、シールドカバー2の半田付け用端子部2c,2c......は、この両端子部11e,12eの外側の位置にてモールドケース下面4隅部を抱え込むように係止している。
【0065】
上述した実施例において、コンタクトの浮き上がりを防止するための係止機構として、操作側スイッチコンタクト11には図10に示す構造のもの、被操作側スイッチコンタクト12には図13に示す構造のものが使用されているが、これとは逆に、操作側スイッチコンタクト11には図13に示す構造のもの、被操作側スイッチコンタクト12には図10に示す構造のものを使用してもよく、更に両コンタクトとも図10又は図13に示す何れかの構造としてもよい。
【0066】
このように構成されるヘッダー型カードコネクタは、操作側スイッチコンタクト11と被操作側スイッチコンタクト12との接点部をハウジングのカード挿入部奥側とした状態で、それぞれの基盤接続用端子部11e,12eをモールドケース底面の後部側に位置させるようにしたことによって、該基盤接続端子部11e,12eの露出位置をハウジングの左右方向中央寄りの適宜の位置を選定することができ、設計の自由度が増す。
【0067】
これによって、シールドカバー2のアース兼用の半田付け用端子2c,2c......をハウジング底面の4隅に置く設計とすることが容易となり、ハウジング内に先端部のみが挿入されたカードBを通じて作用する上下方向のモーメントを全てこの半田付け用端子2c,2c......と基盤との半田付けによって受け持たせることができ、各コンタクトの基盤接続用端子部にモーメントが作用せず、耐久性が高く、安全で信頼性の高い実装状態が得られる。
【符号の説明】
【0068】
A ハウジング
B メモリーカード
1 モールドケース
2 シールドカバー
2a 天板部
2b 側壁部
2c 半田付け用端子部
2d カードストッパー
3 カード挿入部
4 接触バネ部
5 コンタクト
6 基盤接続用端子部
10 タイミングスイッチ
11 操作側スイッチコンタクト
11a 上片部
11b 下片部
11c 縦向き片部
11d 端子片部
11e 基盤接続用端子部
11f 圧入片部
11g ガイド突起
12 被操作側スイッチコンタクト
12a 上片部
12b 下片部
12c 縦向き片部
12d 端子片部
12e 基盤接続用端子部
12f 圧入片部
13 操作用凸部
14 可動接点部
15 固定接点部
16 傾斜部
17 後方側延長部
20 外側前向き片部
21 水平折り曲げ片部
22 内側前向き片部
25 操作側スイッチコンタクト収容溝
25a 外側前向き片対応部
25b 水平折り曲げ片対応部
25c 内側前向き片対応部
26 抜け止め部
27 スリット
28 ガイド穴
29 基盤接続用端子部挿通穴
30 圧入穴
35 第一傾斜部
36 後方側延長部
37 第二傾斜部
40 前向き片部
41 水平折り曲げ片部
42 後方延長片部
43 浮き上がり防止突起
45 被操作側スイッチコンタクト収容溝
45a 前向き片部対応部
45b 後方延長片部対応部
46 張り出し部
47 圧入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリーカード等のカードの先端部分が挿入される深さのカード挿入部が前面に開口されたモールドケースを有するハウジングを備え、
前記モールドケースの一方の側部に、前後に向けた操作側スイッチコンタクトと、被操作側スイッチコンタクトとからなるタイミングスイッチが備えられ、
前記操作側スイッチコンタクトには、カード挿入部内に挿入されたカードによって横方向に押し出し動作される操作用凸部と、該操作用凸部と一体の可動接点部とを有し、
カード挿入によって前記操作用凸部が側方に押し出されることによって前記可動接点部が被操作用コンタクトの固定接点部に接触されるようにしてなるヘッダー型カードコネクタにおいて、
前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトは、上下配置にモールドケースの前後方向に向く長板状をした上片部と下片部と、該上片部と下片部との前端部間を連続させる縦向き片部とをもって構成し、
前記下片部の後端側に各コンタクトを基盤に接続させるための基盤接続用端子部を備え、
該基盤接続用端子部を前記モールドケースの裏面後部に露出させたことを特徴としてなるヘッダー型カードコネクタ
【請求項2】
前記ハウジングは、上面にカード挿入部を有するモールドケースと、該モールドケースのカード挿入部の上面部を覆うとともに該モールドケースの両側部下面に係止される半田付け用端子部を一体に有する導電性金属製のシールドカバーとをもって構成され、前記半田付け用端子を基盤に半田付けすることによって実装するようにしてなる請求項1に記載のヘッダー型カードコネクタ
【請求項3】
前記下片部には、その後端側にモールドケース左右間の中央側部に向けた水平折り曲げ部を設け、該水平折り曲げ部又はその延長部の下縁より下向きに突出させた端子片部を備え、該端子片部の下端に前記基盤接続用端子部を一体に備えてなる請求項1又は2に記載のヘッダー型カードコネクタ。
【請求項4】
前記モールドケースの底面に、操作側スイッチコンタクト及び被操作側スイッチコンタクトの各々の下片部が挿入される操作側スイッチコンタクト収容溝及び被操作側スイッチコンタクト挿入溝を備え、該各コンタクト挿入溝内にて前記各コンタクトに備えた圧入片部を該溝の底部の圧入穴に圧入することによって固定し、前記両コンタクトの上片部をモールドケースの底面上にてその後端側が左右方向に弾性変形できるようにしてなる請求項1〜3の何れか1に記載のヘッダー型コネクタ。
【請求項5】
前記操作側スイッチコンタクト及び/又は被操作側スイッチコンタクトの下片部が嵌り合うスイッチコンタクト挿入溝の幅をコンタクト厚さより大きくすることにより、該コンタクトの下片部先端側が厚さ方向に弾性変形可能なバネ部としてなる請求項4に記載のヘッダー型コネクタ。
【請求項6】
前記コンタクト挿入溝と該溝内のコンタクト下片部との間に、下片部の先端側の浮き上がりを防止する係止機構を備えてなる請求項4又は5に記載のヘッダー型カードコネクタ。
【請求項7】
前記係止機構は、スイッチコンタクト挿入溝の端部を覆う抜け止め部を備え、該抜け止め部下において幅方向側の一方に前記下片部を片寄せて配置することによって構成される請求項6に記載のヘッダー型カードコネクタ。
【請求項8】
前記係止機構は、前記コンタクト挿入溝の開口前端部内面に、掛止用張り出し部を形成し、該張り出し部下に前記下片部の先端に突設した浮き上がり防止突起を挿入することによって構成される請求項6に記載のヘッダー型カードコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−48877(P2012−48877A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187890(P2010−187890)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】