説明

ヘッドエンドのフェイルソフト運用システム及び方法

【課題】ヘッドエンドのフェイルソフト運用をサポートするITを実現する次世代ケーブルネットワークといった消費者ネットワークの改良された運用システム及び方法を提供する。
【解決手段】複合的で、複数の場所での消費者通信およびコンテンツデリバリーシステムは、複数のヘッドエンド施設と、データベースを備える中央の施設とを具える。分散型の情報技術(IT)構成は、中央の施設に配備されたバックオフィスIT設備と、各ヘッドエンド施設に配備されたヘッドエンドIT設備とを具える。ヘッドエンドIT設備には、通常は中央データベースへのリアルタイムアクセスが必要なトランザクションの限界を設定したポリシーが提供される。このヘッドエンドは、設定された制限ポリシーに従って、中央データベースへのリアルタイムアクセスを行うことなく、リアルタイムのトランザクションを処理するようプログラムされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年1月29日に出願された米国仮出願番号60/540,161の利益を主張するものであり、その開示は参照のためここに記載されている。本出願は、2004年8月3日に出願された米国仮出願番号60/598,241の利益を主張するものであり、その開示は参照のためここに記載されている。
【0002】
発明の技術分野
本発明は消費者ネットワークの管理および、次世代ケーブルネットワークの運用に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のケーブルシステムでは、情報技術(IT)は単に初期の供給時と加入者への情報発信でのみその役割を果たしている。次世代のケーブルシステムでは、ITのレベルはビデオオンデマンド(VOD)、電子コンテンツの取得、ビデオコマース、コール/セッションのセットアップ、及びセキュリティ維持をサポートする必要があり、現在のITの要求とは大きく異なっている。
【0004】
次世代ケーブルシステムでは、すべての、単純な一方通行の映像放送サービスにもITインタラクションの強く継続的な要求が課されている。
【0005】
上記理由により、次世代ケーブルネットワークにはより進んだITサポートが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヘッドエンドのフェイルソフト運用をサポートするITを実現する次世代ケーブルネットワークといった消費者ネットワークの改良された運用システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、次世代ケーブルネットワークの運用をサポートするためにインフォメーションテクノロジー(IT)機能を必要とする構成が、ヘッドエンドITシステムとバックオフィスITシステムとの通信が不能になった場合にも、利用者がサービスの低下を殆ど気づくことなく運用を継続できるようにすることを含んでいる。
【0008】
より詳しいレベルでは、本発明は、ケーブルネットワークに用いる分散型のIT構成を具えている。このIT構成は、中央のマスタデータベースと、分散型のIT設備とに分かれている。中央のマスタデータベースは、ケーブルシステムにおいて複数の異なる場所にある遠隔ヘッドエンドに配備された分散型IT設備と通信可能である。
【0009】
ヘッドエンドにあるローカルのIT設備は、このヘッドエンドITとバックオフィスIT間の通信が機能している間は、運用され、アップデートされる。この通信が遮断あるいは遅延した場合、ローカルのヘッドエンドIT設備は、ケーブルシステム用のリアルタイムITサポートを提供する。
【0010】
本発明の別の態様は、ケーブルネットワーク以外の別の消費者ネットワークで実現されてもよい。このような構成では、分散型IT構成は、中央マスタデータベースと分散型IT設備間のIT基盤が分けられた場合に用いられる。中央データベースは、消費者ネットワークにおける複数の異なる場所の遠隔ヘッドエンドに配置された分散型IT設備と通信可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には、次世代ケーブルネットワークにおけるヘッドエンドのフェイルソフト運用のための分散型IT構成が、全体を符号10として示されている。図に示すように、構成10は、請求と精算のための、マスタレコードとカスタマー/サービスデータベースを有するバックオフィスIT設備を具えている。このマスタデータベースは符号12で示され、ミラーのマスタバックアップデータベースが符号14で示されている。実際のサービス供給施設は、データベースのマスタコピーから遠く離れた複数の地理的ロケーションに広く分散している。
【0012】
図に示すように、それぞれ遠隔のヘッドエンドにおいて、構成10は全体を符号16で示すヘッドエンドIT設備を具える。ケーブルネットワーク全体の各ヘッドエンドにおいて、ヘッドエンドIT設備16は、カスタマーケアサポート30と、クロスサービスセキュリティマネージャ32と、クロスサービススペクトルマネージャ34と、ビデオサービスサポート36と、ボイスサービスサポート38と、データサービスサポート40と、請求記録コレクタ42とを具えている。この請求記録コレクタ42は、例えば、ペイパービュー(PPV)のインパルスを集めてバックオフィスの請求システムにアップロードする条件付映像アクセスシステムや、コール詳細レコード(CDRs)を集めてバックオフィスの請求システムにアップロードする音声ソフトスイッチである。顧客資格といった他の請求エンジンのデータはヘッドエンドのビデオサービスサポート36、ボイスサービスサポート38、あるいはデータサービスサポート40で管理される。
【0013】
バックオフィスIT設備12、14と遠隔のヘッドエンドIT設備16間の通信は、通信パス18で示されている。通信は、特定の状況で遮断される。
【0014】
例えば、ネットワークの混雑によるアクセスの遅延や、高負荷のトランザクションにより、バックオフィスIT設備12,14とヘッドエンドIT設備16間の通信が遮断する場合がある。さらに、例えば、バックオフィスIT設備12,14とヘッドエンドIT設備16間のネットワーク接続が消失することもある。本発明によれば、パス18を介した通信が遅延または遮断された場合にも、利用者がサービスの低下を殆ど感じることなく、基本動作が継続されるようにした分散型のITシステムが実現する。
【0015】
図1を続けて参照すると、このIT構成は、中央マスタデーターベス12,14と、ケーブルシステムにおいて複数の離れた異なる場所のヘッドエンドに配置された分散型IT設備16とに分かれている。ローカルのIT設備16において、ヘッドエンドIT16とバックオフィスIT12,14間の通信が機能している場合は、各ヘッドエンドは運用され、アップデートされる。通信が遅延あるいは遮断した場合、ローカルのヘッドエンドIT16はリアルタイムITサポートをシステムに提供する。
【0016】
マスタデータベース12は、ローカルのヘッドエンドIT16にポリシーをダウンロードし、これにより、通信パス18が十分に機能しなくなった場合に、通常はマスタデータベース12へのリアルタイムアクセスが要求される処理を、予め定めた特定のクレジットまたはヘッドエンドIT16の他のポリシーの制限内で承認することができる。例えば、中央のバックオフィスITシステム12,14でデータベースのクレジットリミットが確認不能な場合にも、$10までの映画の購入を承認するようにすることができる。
【0017】
図1は、次世代ケーブルネットワークにおける本発明のヘッドエンドのフェイルソフト運用を示すものであり、本発明の実施例はさらに別の、次世代の複合的で多様な消費者通信やコンテンツデリバリシステムのフェイルソフト構成を提供する。さらに、本発明は、システムがリアルタイム対非リアルタイムのITサポートに分けられているトランザクションベースのシステムに用いられる分散型データベースと分散型IT技術とを含む。
【0018】
別の方法では、ヘッドエンドIT設備は、予め定められた及び/又はダウンロードしたポリシーに従いリアルタイムITサポートを提供し、当該システムのその他のITサポートはバックオフィスIT設備から提供される。これにより、ヘッドエンドからバックオフィスまでの通信路の障害が、ヘッドエンドのIT設備がトランザクションのリアルタイムITサポートを継続的に提供しうる程度の軽度の障害である場合に、前記ポリシーの制限内で、ヘッドエンドのフェイルソフト運用が実現する。
【0019】
図2は、フェイルソフト運用方法を示す図である。ブロック60において、ヘッドエンドIT設備用の、通常は中央の施設にある中央データベースへのリアルタイムアクセスを必要とする処理のポリシー制限(policy limits)が設定される。ブロック62において、中央データベースへのアクセスが可能か否かが判定される。
【0020】
ブロック64に記載の好適な実施例によると、中央データベースが利用不能の場合、ヘッドエンドIT設備はこのヘッドエンドをフェイルソフトモードで運用する。フェイルソフトモードでは、ヘッドエンドにてポリシーの制限に従いトランザクションがハンドリングされる。
【0021】
図3では、ヘッドエンドのフェイルソフト運用のための分散型IT設備を具えるケーブルネットワークの構成例が全体として符号80で示されている。中央の施設82は、バックオフィスIT設備84と、中央データベース86とを具えている。ネットワーク80は多数のヘッドエンド90を具えている。ヘッドエンド90はそれぞれ、ヘッドエンドIT設備92を具えている。これにより、ネットワーク80は、異なる場所にバックオフィスIT設備84と分散型ヘッドエンドIT設備92とからなる分散型の情報技術(IT)構成を具えることとなる。
【0022】
本発明にかかるヘッドエンドのフェイルソフト運用システムと方法は、様々な異なる構成とすることができる。あるアプローチでは、ヘッドエンドIT設備で、ローカルの制限ポリシーに従い、中央データベースにリアルタイムのアクセスを行うことなくリアルタイムのトランザクションをハンドリングしてもよい。バックオフィスIT設備において、非リアルタイムのトランザクションが少なくとも部分的に実行される。同様に、制限ポリシーの範囲外であるリアルタイムのトランザクションが、少なくとも部分的にバックオフィスIT設備で処理される。フェイルソフト構成として、中央データベース86が使用不能であっても、ヘッドエンドIT設備が制限ポリシーに従い、トランザクション用のリアルタイムのITサポートを継続的に実現することができる。
【0023】
本発明において、フェイルセーフデータは2つの明らかな場合に流れる:バックオフィスからヘッドエンドへの既存の申し込み/承認の通信と、ヘッドエンドからバックオフィスへ新たな申し込み/承認のアップロードである。マスタ情報はバックオフィスマスタデータベースにあり、定期的にヘッドエンドシステムのデータベースに複製される。
【0024】
例えば、第1のケースでは、ヘッドエンドの映像サービスサポートが、利用者が特定の有料プログラム(放送あるいはオンデマンドによる供給)を試聴する権利を有するか否かを知る必要がある場合、バックオフィスのマスタデータベースよりもまずローカルのヘッドエンドデータベースに問い合わせる。
【0025】
例えば、第2のケースとして、利用者が(セットトップボックスを介して)ある特定の有料サービスを申し込もうとした場合を考える。このデータはヘッドエンドシステムのデータベースに記録され、これが(ネットワーク状況が許す場合に)バックオフィスのマスタデータベースに複製される。ここで、ヘッドエンドの映像サービスサポートは、バックオフィスのマスタデータベースが更新される前であっても、この利用者に申し込みサービスを提供可能である。
【0026】
ヘッドエンドのデータベースとマスタデータベースは、例えばリレーショナルデータベースとLDAP/X.500ディレクトリといった異なるデータ格納技術で実現されることが望ましい。
【0027】
本発明の実施例を図示するとともに説明したが、これらの実施例により本発明のすべての可能な形態が図示し説明されたと解すべきではない。むしろ、本明細書中の語句は説明するものであって限定するものではなく、本発明の意図と範囲を超えることなく様々な変更を施すことができると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の好適な実施例によるフェイルソフト動作を行う分散型IT設備を示す図である。
【図2】図2は、本発明の好適な実施例によるフェイルソフト動作方法を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明にかかるフェイルソフトヘッドエンド動作を行う分散型IT設備を用いたケーブルネットワークの構成例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイルソフト運用方法において、
コンテンツ供給システムの構成要素がポリシーを受信するステップであって、前記ポリシーは、前記コンテンツ供給システムにおける映像または音声コンテンツを特定して当該映像または音声コンテンツへのアクセスを要求するユーザ装置のコンテンツのリクエストがあったときのトランザクション承認の運用ルールの2つのセットを規定するものであり、第1のセットのルールはデータベースとの通信が良好な場合の通常運用を規定し、フェイルソフトルールは前記構成要素と前記データベース間の通信に障害がある場合の制限付きトランザクション承認を規定し、前記制限付きトランザクション承認はビデオオンデマンドサービスに1またはそれ以上の新規な視聴資格を購入するための購入費用に制限があるステップと、
前記コンテンツ供給システムのユーザ装置から、映像または音声コンテンツを特定して当該映像または音声コンテンツへのアクセスを要求するリクエストを受信したときに、前記構成要素と前記データベース間に通信障害があるかを判定するステップと、
前記リクエストの際に前記構成要素と前記データベース間の通信障害があると判定された場合に、前記構成要素の演算装置が、前記フェイルソフトルールを用いて、前記リクエストにかかる要求コンテンツへの制限されたアクセスを前記ユーザ装置に提供するプロセスにかかるトランザクションを実行するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法がさらに:
前記通信障害が解消したら、新たなサービスのアクセス権があれば前記データベースに通知することにより、前記データベースを更新するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記構成要素がヘッドエンドであり、前記コンテンツ供給システムがケーブルテレビ供給システムであることを特徴とする方法。
【請求項4】
フェイルソフト運用方法であって、
コンテンツ供給システムの演算装置において、前記コンテンツ供給システムの構成要素とデータベース間の通信不良が生じた場合における1またはそれ以上のトランザクションの承認を規定するフェイルソフトルールのセットを受信するステップであって、前記フェイルソフトルールのセットはビデオオンデマンドサービスに1またはそれ以上の新規な視聴資格を購入するための購入費用に制限があり、前記演算装置は前記構成要素の一部であるステップと、
前記構成要素が前記コンテンツ供給システムのユーザ装置から、映像または音声コンテンツを特定して当該映像または音声コンテンツへのアクセスを要求するコンテンツリクエストを受信するステップと、
前記コンテンツリクエストの承認を得るプロセスの少なくとも一部として、中央データベースに前記コンテンツリクエストの承認の要求の通信を試みるステップと、
通信不良により前記コンテンツリクエストの承認を得るプロセスが遅延または中断したかを判定するステップと、
前記通信不良により前記コンテンツリクエストの承認を得るプロセスが遅延または中断したと判定された場合に、前記構成要素が、前記受信したフェイルソフトルールのセットに基づいて前記コンテンツリクエストを承認または拒否するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において:
前記通信障害が解消したら、新たなサービスのアクセス権があれば前記中央データベースに通知することにより、前記中央データベースを更新するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記構成要素がヘッドエンドであり、前記コンテンツ供給システムがケーブルテレビ供給システムであることを特徴とする方法。
【請求項7】
コンテンツ供給方法であって、
コンテンツ供給システムの演算装置が、前記コンテンツ供給システムのユーザからユーザリクエストを受信するステップであって、前記ユーザリクエストは有料サービスを特定して当該有料サービスへの申込がユーザの申込ラインナップに追加されるよう要求するものであり、前記ユーザリクエストの承認を許可するプロセスは、前記演算装置が前記コンテンツ供給システムの中央データベースの承認を要求することが必要であるステップと、
前記演算装置が前記ユーザリクエストの承認を許可するプロセスを実行するときに、前記演算装置と前記中央データベース間に通信障害があるかを判定するステップと、
前記ユーザリクエストの承認が、前記演算装置に保存された通信障害時のフェイルソフトルールにある予め設定された購入リミットを超えるものか判定するステップと、
前記ユーザリクエストの承認が前記予め設定された購入リミットを超えないと判定された場合に、前記ユーザリクエストに制限された承認を許可するとともに、前記ユーザ装置に前記ユーザリクエストに応じたデータを送信するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記演算装置はヘッドエンドの一部であり、前記コンテンツ供給システムがケーブルテレビ供給システムであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記中央データベースは、LDAP/X.500ディレクトリであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記リクエストは、ペイパービューテレビコンテンツの視聴リクエストであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記リクエストは、ユーザの加入プラン(subscription plan)に申し込みを追加するリクエストであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記サービスを追加するリクエストは、テレビジョン加入者の加入ラインナップに1またはそれ以上のテレビチャネルを追加するリクエストであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記通信障害があることの判定は、通信の遅延に基づくことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項4に記載の方法がさらに、前記演算装置が、前記フェイルソフトルールのセットの更新を定期的に受信するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法がさらに、前記コンテンツ供給システムは、複数のユーザ装置に映像サービスを提供する映像サービス供給システムであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記トランザクションを実行するステップは、通常は前記データベースと通信するステップを具えるが、前記通信障害があると判定された場合は、前記トランザクションは前記データベースと通信することなく前記構成要素により実行されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法がさらに、前記構成要素が、前記リクエストで要求された音声または映像コンテンツへの少なくとも限定的なアクセスを前記ユーザ装置に提供するステップを具えることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−157038(P2012−157038A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61551(P2012−61551)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【分割の表示】特願2006−551483(P2006−551483)の分割
【原出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(506259427)
【出願人】(506259416)
【出願人】(506259405)
【出願人】(506259391)
【Fターム(参考)】