説明

ヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム

【課題】信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンを形成することができるヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム等を提供する。
【解決手段】ヘッドライト装置110は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、光変調装置としてのLCDパネル116とを備えている。ヘッドライト112は、前方に光の照射が可能に構成される。LCDパネル116は、ヘッドライト112の照射光の光路上に配置され、該照射光の照射位置に応じて光変調率の制御が可能に構成される。LCD制御部114は、LCDパネル116の画素単位に駆動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム等に関し、例えば車両用のヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のヘッドライトは、光源の照射光を用いて、ハイビーム又はロービームの切り替えが可能に構成される。ヘッドライトのハイビーム又はロービームの切り替えは、車両の運転者による手動操作によって行われたり、カメラによって撮像された画像に基づいて自動で行われたりする。このようなヘッドライトに関する技術については、種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、光源の光軸方向に対し進退可能に構成され、光源の一部を遮って配光パターンを生成する移動シェードと、回転駆動することにより配光パターンを生成する回転シェードとを備えたヘッドライト装置が開示されている。このヘッドライト装置によれば、回転シェードを含む構成であっても、ハイビームとロービームとを高速に切り替えることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたヘッドライト装置では、機械的なシェードにより配光パターンを生成するため、生成可能な配光パターン数が少ないという問題がある。多くの種類の配光パターンを生成するためには、機械的なシェードを複数設け、各々をソレノイドやモーター等で複雑な制御を行う必要がある上に、運転者の視界をそれほど広げることができない。
【0006】
また、特許文献1に開示されたヘッドライト装置では、機械的なシェードにより配光パターンを切り替えるため、故障が発生しやすく、信頼性の低下を招くという問題がある。
【0007】
更に、特許文献1に開示されたヘッドライト装置では、ヘッドライトの照射範囲において、前走車や対向車のみならず人や動物等がいる場合、対象物のいる場所だけ遮光することは難しい。そのため、被照射物である人や動物等からは、ヘッドライトが非常に眩しくなって視界を失い、人や動物等が運転者にとって予想が困難な動作を行う危険性もある。従って、ヘッドライト装置は、前走車や対向車のみならず、人や動物等にも配慮し、より多くの配光パターンの生成が可能であることが望ましい。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、ヘッドライト装置が、前方に光の照射が可能に構成されるヘッドライトと、光変調面の少なくとも一部に前記ヘッドライトの照射光が照射されるように前記照射光の光路上に配置され、前記光変調面における該照射光の照射位置に応じて光変調率の制御が可能に構成される光変調装置とを含む。
【0010】
本態様によれば、光変調装置にヘッドライトの照射光を照射することにより配光パターンを生成するようにしたので、機械的な機構を採用することなく配光パターンを切り替えることができ、故障が発生しにくくなり、信頼性を向上させることが可能となる。また、非常に簡素な光変調装置の制御により、生成可能な配光パターン数をより多くすることができるようになり、運転者の視野を狭めてしまうことがなくなる。更に、被照射物が存在するエリアにハイビームを照射しないようにすることができるため、前走車、対向車、人、動物等に対して眩しさを防ぐと共に、良好な視界を得ることができ、事故防止に大きく寄与することができるようになる。
【0011】
(2)本発明の第2の態様に係るヘッドライト装置では、第1の態様において、前記光変調装置は、第1の照射方向に照射された前記照射光を第2の照射方向に反射する反射型の液晶表示パネルである。
【0012】
本態様によれば、反射型の液晶表示パネルを用いることで、非常に簡素な構成及び制御により、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置を提供することができるようになる。
【0013】
(3)本発明の第3の態様に係るヘッドライト装置では、第1の態様において、前記光変調装置は、透過型の液晶表示パネルである。
【0014】
本態様によれば、透過型の液晶表示パネルを用いることで、非常に簡素な構成及び制御により、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置を提供することができるようになる。
【0015】
(4)本発明の第4の態様に係るヘッドライト装置では、第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、前記ヘッドライトは、各光源の光量が制御される複数の光源を含む。
【0016】
本態様によれば、上記の光変調装置と組み合わせることにより、ヘッドライト側でも光量を制御することができるようになるため、より一層きめ細かい制御が可能となる。
【0017】
(5)本発明の第5の態様に係るヘッドライト装置は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかにおいて、前記ヘッドライトのハイビーム照射エリアを複数の照射エリアに分割して、各照射エリアに対応する前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、透過又は反射する光量を制御する光変調制御装置を含む。
【0018】
本態様によれば、ハイビーム照射エリアを分割した照射エリア毎に、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となり、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができる。
【0019】
(6)本発明の第6の態様に係るヘッドライト装置では、第5の態様において、前記複数の照射エリアは、前記ハイビーム照射エリアを垂直方向に分割されたエリアである。
【0020】
本態様によれば、ハイビーム照射エリアを垂直方向に分割した照射エリア毎に、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となり、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができる。
【0021】
(7)本発明の第7の態様に係るヘッドライト装置では、第5の態様において、前記複数の照射エリアは、前記ハイビーム照射エリアを水平方向に分割されたエリアである。
【0022】
本態様によれば、ハイビーム照射エリアを水平方向に分割した照射エリア毎に、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となり、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができる。
【0023】
(8)本発明の第8の態様に係るヘッドライト装置では、第5の態様において、前記複数の照射エリアは、前記ハイビーム照射エリアを垂直方向及び水平方向に分割されたエリアである。
【0024】
本態様によれば、ハイビーム照射エリアを垂直方向及び水平方向に分割した照射エリア毎に、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となり、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができる。
【0025】
(9)本発明の第9の態様は、ヘッドライトシステムが、前記ヘッドライトの照射範囲を撮像する可視光カメラと、前記可視光カメラの撮像結果に基づいて、被検出物を検出する検出部と、第5の態様乃至第8の態様のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、前記光変調制御装置は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、前記光変調装置を透過又は反射する光量を制御して前記ヘッドライトの照射範囲を切り替える制御を行う。
【0026】
本態様によれば、可視光カメラを用いて、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置を備えるヘッドライトシステムを提供することができるようになる。
【0027】
(10)本発明の第10の態様は、ヘッドライトシステムが、前記ヘッドライトの照射範囲を撮像する赤外線カメラと、前記赤外線カメラの撮像結果に基づいて、熱源を検出する検出部と、第5の態様乃至第8の態様のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、前記光変調制御装置は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、前記光変調装置を透過又は反射する光量を制御して前記ヘッドライトの照射範囲を切り替える制御を行う。
【0028】
本態様によれば、赤外線カメラを用いて熱源を検知するため、信頼性を損なうことなく、前走車や対向車、人や動物等にも配慮して、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置を有するヘッドライトシステムを提供することができるようになる。これにより、人や動物等の眩しさを防ぐと共に、運転者にとっても良好な視界を得ることができ、事故防止に大きく寄与するヘッドライトシステムを提供することができるようになる。
【0029】
(11)本発明の第11の態様は、ヘッドライトシステムが、前記ヘッドライトの照射方向の傾きを検出する傾き検出部と、第1の態様乃至第4の態様のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、前記傾き検出部の検出結果に応じて、前記ヘッドライトの照射範囲を切り替える。
【0030】
本態様によれば、上記の光変調装置を備え、ヘッドライトの照射方向の傾きに応じて照射範囲の切替制御を行うようにしたので、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能な上に、車体の状態に応じた的確な照射を行うことができるようになる。
【0031】
(12)本発明の第12の態様に係るヘッドライトシステムは、第11の態様において、前記ヘッドライトのロービーム照射エリア、又は、前記ロービーム照射エリア及び前記ハイビーム照射エリアの少なくとも一部を、水平方向に複数の照射エリアに分割し、前記傾き検出部の検出結果に応じて、各照射エリアに対応する前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、透過又は反射する光量を制御する。
【0032】
本態様によれば、ロービーム照射エリア及びハイビーム照射エリアのうちヘッドライトの照射方向の傾きに対応したエリアについて照射の切替制御を行うようにしたので、車体の状態に応じた的確な照射を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図2】図1のヘッドライトシステムの動作例のフロー図。
【図3】第1の実施形態の比較例におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図5】図4のヘッドライトシステムの動作例のフロー図。
【図6】第3の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図。
【図7】本発明の第4の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図8】図7のヘッドライトシステムの動作例のフロー図。
【図9】本発明の第5の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図10】本発明の第6の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図11】本発明の第7の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図。
【図12】本発明の第8の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図。
【図13】本発明の第9の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図。
【図14】本発明の第10の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図。
【図15】図14のヘッドライトシステムの動作例のフロー図。
【図16】車体の傾きが前上がりのときのヘッドライトの照射範囲の説明図。
【図17】車体の傾きが前下がりのときのヘッドライトの照射範囲の説明図。
【図18】図15のステップS42の説明図。
【図19】図15のステップS43の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
【0035】
〔第1の実施形態〕
図1に、本発明の第1の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図1は、可視光カメラを用いた車両用のヘッドライトシステムの構成例を表す。
【0036】
第1の実施形態におけるヘッドライトシステム100は、ヘッドライト装置110と、ヘッドライト制御装置120とを備えている。ヘッドライト装置110は、ヘッドライト112と、液晶表示(Liquid Crystal Display:以下、LCD)制御部114と、光変調装置としてのLCDパネル116とを備えている。ヘッドライト制御装置120は、可視光カメラ122と、検出部として機能する車検知部124と、点灯切替部126と、ビーム方向制御部128とを備えている。車検知部124及びビーム方向制御部128は、照射範囲切替部としても機能する。LCD制御部114は、光変調制御装置として機能する。
【0037】
ヘッドライト112は、ヘッドライトシステム100を搭載する車両の前方に光の照射が可能に構成される公知のヘッドライトである。LCDパネル116は、光変調面としてのパネル面にヘッドライト112の照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置され、光変調面におけるヘッドライト112の照射光の照射位置に応じて反射率(広義には、光変調率)の制御が可能に構成される反射型のLCDパネルである。LCDパネル116は、第1の光路方向の入射光を第2の光路方向に反射するように配置される。LCDパネル116では、各画素がオン又はオフに制御されることにより、ヘッドライト112の照射光を反射するか否かが決定される。
【0038】
LCD制御部114は、ビーム方向制御部128から通知された画素単位のオン又はオフの情報に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行う。即ち、LCD制御部114は、ビーム方向制御部128からの制御信号に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行うことで、ヘッドライト112の照射光の遮断制御を行って、ハイビーム又はロービームを生成する。
【0039】
点灯切替部126には、運転者による点灯操作及び非点灯操作に対応した点灯操作信号TK1が入力される。点灯切替部126は、点灯操作信号TK1に対応した点灯切替信号TC1を生成し、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯及び非点灯を制御する。点灯切替信号TC1は、ビーム方向制御部128にも供給される。
【0040】
ビーム方向制御部128には、運転者によるビーム方向の切替操作に対応した切替操作信号BH1が入力される。ビーム方向制御部128は、点灯切替信号TC1及び切替操作信号BH1に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部128は、切替操作信号BH1に基づいて、LCDパネル316の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部314に通知する。更に、ビーム方向制御部128には、車検知部124から切替制御信号BC1が入力される。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部128は、切替制御信号BC1に基づいて、LCDパネル116の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部114に通知する。
【0041】
可視光カメラ122は、ヘッドライトシステム100を搭載する車両の前方を撮像して前方画像を取得する。車検知部124は、可視光カメラ122によって撮像された前方画像において、前走車や対向車が存在するエリアがあるか否かを判定する。車検知部124は、前走車や対向車が存在するエリアがあると判定したときには、前走車等が存在するエリアに対応した切替制御信号BC1を生成する。ここで、前走車や対向車が存在するか否かを判定する方法として、前走車のテールランプのストップランプの色や明るさ、対向車のヘッドライトを検出する方法がある。
【0042】
点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部128は、切替制御信号BC1に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、ビーム方向制御部128は、LCD制御部114により、前方画像において前走車等が存在するエリアに対応する照射領域にハイビームが照射されないように、LCDパネル116の駆動制御を行う。このように、LCD制御部114は、車検知部124の検知結果に基づいて、LCDパネル116の光変調面のエリア毎に、LCDパネル116を反射する光量を制御してヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行うことができる。
【0043】
なお、図1において、ヘッドライト112として、各光源の光量が独立して制御可能な複数の光源により構成されるものを採用してもよい。このとき、画素毎に光量の制御が可能なLCDパネル116と組み合わせることにより、ヘッドライト側でも光量を制御することができるようになるため、より一層きめ細かい制御が可能となる。
【0044】
図2に、図1のヘッドライトシステム100の動作例のフロー図を示す。
【0045】
まず、可視光カメラ122は、ヘッドライト112の照射範囲を撮像して車両の前方画像を取得する(ステップS10)。
【0046】
次に、車検知部124は、可視光カメラ122によって撮像された前方画像において、前走車や対向車等の被照射物(被検出物)が存在するエリアの有無と、存在するエリアとを判定する(ステップS11)。車検知部124は、ステップS11における判定結果に対応した切替制御信号BC1を生成する。
【0047】
点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているものとすると、ビーム方向制御部128は、切替制御信号BC1に基づいてLCD制御部114を介してLCDパネル116の駆動制御を行う。具体的には、ビーム方向制御部128は、LCD制御部114を介して、ステップS11において判定された被照射物が存在するエリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリアのハイビームがオフとなるように制御する(ステップS12)。これ以降、ステップS10に戻る(リターン)。
【0048】
以上のように、第1の実施形態におけるヘッドライトシステム100は、ヘッドライト112の照射光の光路上にLCDパネル116を配置し、車検知部124の検知結果に応じてLCDパネル116の画素単位にオン又はオフを制御する。これにより、前方画像内で被照射物が存在するエリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリアに照射されるヘッドライト112の照射光の光変調率を制御して、ハイビームをオフすることができるようになる。
【0049】
〔比較例〕
ここで、第1の実施形態の比較例におけるヘッドライトシステムと対比することで、第1の実施形態におけるヘッドライトシステム100について説明する。
【0050】
図3に、第1の実施形態の比較例におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。
【0051】
本比較例におけるヘッドライトシステム1は、ヘッドライト12と、点灯切替部14と、ビーム方向制御部16と、ビーム方向切替部18と、可視光カメラ20と、車検知部22とを備えている。
【0052】
ヘッドライト12は、車両の前方に光の照射が可能に構成される公知のヘッドライトである。点灯切替部14には、運転者による点灯操作及び非点灯操作に対応した点灯操作信号TK0が入力される。点灯切替部14は、点灯操作信号TK0に対応した点灯切替信号TC0を生成し、点灯切替信号TC0によりヘッドライト12の点灯及び非点灯を制御する。点灯切替信号TC0は、ビーム方向制御部16にも供給される。
【0053】
ビーム方向制御部16には、運転者によるビーム方向の切替操作に対応した切替操作信号BH0が入力される。ビーム方向制御部16は、点灯切替信号TC0及び切替操作信号BH0に基づいて、ハイビーム又はロービームをヘッドライト12の照射範囲に向けて照射する制御を行う。具体的には、点灯切替信号TC0によりヘッドライト12の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部16は、切替操作信号BH0に基づいて、ハイビーム又はロービームをヘッドライト12の照射範囲に向けて照射する制御を行う。更に、ビーム方向制御部16には、車検知部22から切替制御信号BC0が入力される。
【0054】
ビーム方向切替部18は、ビーム方向制御部16からの制御に基づいて、ヘッドライト12の照射光の遮断制御を行うことで、ハイビーム又はロービームを生成する。ビーム方向切替部18は、ビーム方向制御部16によって制御される例えばソレノイドやモーター等を有し、ヘッドライト12の照射光の遮断制御を行う。点灯切替信号TC0によりヘッドライト12の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部16は、切替制御信号BC0に基づいて、ハイビーム又はロービームをヘッドライト12の照射範囲に向けて照射する制御を行うことができる。
【0055】
可視光カメラ20は、車両の前方を撮像して前方画像を取得する。車検知部22は、可視光カメラ20によって撮像された前方画像から、前走車や対向車が存在するか否かを判定する。車検知部22は、前走車や対向車がいると判定したときには、ヘッドライト12をロービームで照射するように切替制御信号BC0を生成する。車検知部22は、前走車や対向車がないと判定したときには、ヘッドライト12をハイビームで照射するように切替制御信号BC0を生成する。
【0056】
以上のような構成を有する本比較例において、ビーム方向切替部18では機械的な機構により配光パターンを切り替えるため、故障が発生しやすくなり、信頼性の低下を招く。これに対して、第1の実施形態によれば、機械的な機構を採用することなく配光パターンを切り替えることができるので、故障が発生しにくくなり、信頼性を向上させることが可能となる。
【0057】
また、本比較例では、ビーム方向切替部18において機械的な機構により配光パターンを切り替えるため、生成可能な配光パターン数が少なくなる。より多くの種類の配光パターンを生成しようとすると、複数の機械的なシェード等を設けることによりビーム方向切替部18での制御が複雑化してしまう上に、運転者の視野を狭めてしまうことになる。これに対して、第1の実施形態によれば、非常に簡素なLCDパネル116の駆動制御により、生成可能な配光パターン数をより多くすることができるようになり、運転者の視野を狭めてしまうことがない。
【0058】
更に、本比較例では、前走車や対向車のみならず、被照射物として人や動物等がいる場合においても、対象物のいる場所だけ遮光することは難しい。そのため、被照射物である人や動物等からは、ヘッドライトが非常に眩しくなって視界を失い、人や動物等が運転者にとって予想が困難な動作を行う危険性もある。これに対して、第1の実施形態によれば、被照射物が存在するエリアにハイビームを照射しないようにすることができる。そのため、前走車、対向車、人、動物等に対して眩しさを防ぐと共に、良好な視界を得ることができ、事故防止に大きく寄与することができるようになる。
【0059】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、LCDパネル116によりハイビームの照射光を遮ることで、非常に詳細なビーム制御が可能となる。これにより、ハイビーム又はロービームの切り替えや、遮光板による遮光によりヘッドライトの照射範囲を決める場合に比べて、非常に多くの種類の配光パターンを生成することができる上に、運転者にクリアな視界を確保することができるようになる。従って、第1の実施形態によれば、信頼性を損なうことなく、前走車や対向車、人や動物等を配慮して、より多くの種類の配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置、及びヘッドライトシステムを提供することができるようになる。
【0060】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態では、可視光カメラにより撮像された前方画像に基づいてヘッドライトの照射範囲を切り替えていたが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0061】
図4に、本発明の第2の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図4は、熱撮像型の赤外線カメラを用いたヘッドライトシステムの構成例を表す。図4において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
第2の実施形態におけるヘッドライトシステム200は、ヘッドライト装置210と、ヘッドライト制御装置220とを備えている。ヘッドライト装置210は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、LCDパネル116とを備えている。ヘッドライト制御装置220は、赤外線カメラ222と、検出部として機能する熱判定部224と、点灯切替部126と、ビーム方向制御部226とを備えている。熱判定部224及びビーム方向制御部226は、照射範囲切替部としても機能する。
【0063】
ヘッドライト装置210は、ヘッドライト装置110と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0064】
ビーム方向制御部226には、運転者によるビーム方向の切替操作に対応した切替操作信号BH1が入力される。ビーム方向制御部226は、点灯切替信号TC1及び切替操作信号BH1に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部226は、切替操作信号BH1に基づいて、LCDパネル116の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部114に通知する。更に、ビーム方向制御部226には、熱判定部224から切替制御信号BC2が入力される。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部226は、切替制御信号BC2に基づいて、LCDパネル116の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部114に通知する。
【0065】
LCD制御部114は、ビーム方向制御部226から通知された画素単位のオン又はオフの情報に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行う。即ち、LCD制御部114は、ビーム方向制御部226からの制御信号に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行うことで、ヘッドライト112の照射光の遮断制御を行って、多様な配光パターンのビームを生成する。
【0066】
赤外線カメラ222は、ヘッドライトシステム200を搭載する車両の前方のヘッドライト112の照射範囲を撮像して熱画像を取得し、該照射範囲の熱源を検知する。熱判定部224は、赤外線カメラ222により撮像された熱画像に基づいて、熱源の有無を判定し、熱画像内において熱源が存在するエリアに対応した切替制御信号BC2を生成する。第2の実施形態では、ヘッドライトのハイビーム照射エリアが複数の照射エリアに分割される。熱判定部224及びビーム方向制御部226は、切替制御信号BC2により特定される照射範囲内の熱源が存在する照射エリアに基づいて、LCDパネル116のパネル面(光変調面)のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行う。LCD制御部114は、ビーム方向制御部226による制御に基づき、各照射エリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリア毎に、反射する光量を制御する。
【0067】
図5に、図4のヘッドライトシステム200の動作例のフロー図を示す。
【0068】
まず、赤外線カメラ222は、ヘッドライト112の照射範囲を撮像して熱画像を取得し、該照射範囲の熱源を検知する(ステップS20)。
【0069】
熱判定部224は、ステップS20の検知結果に基づいて、熱画像内の熱源の有無を判定する。熱判定部224において熱源の有無を判定する方法としては、例えば恒温動物の体温のような絶対温度に基づいて判定したり、熱源の温度と照射範囲内の道路の温度(基準温度)との温度差(相対温度)に基づいて判定したりすることができる。また、前走車は、エンジンからの排気やタイヤの接地面の温度が高く、これらに基づいて熱源として判定することができる。更に、対向車は、エンジンの温度が高く、これに基づいて熱源として判定することができる。
【0070】
このような熱判定部224により熱画像内に熱源があると判定されたとき(ステップS21:Y)、熱判定部224は、熱源が存在するエリアが照射されないように上記の切替制御信号BC2を生成する。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置210は、この切替制御信号BC2により、被検出物が照射されないようにヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う(ステップS22)。これ以降、ステップS20に戻る(リターン)。
【0071】
ステップS21において、熱判定部224により熱画像内に熱源がないと判定されたとき(ステップS21:N)、熱判定部224は、ハイビームを照射するように上記の切替制御信号BC2を生成する。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置210は、この切替制御信号BC2により、ハイビームをヘッドライト112の照射範囲に向けて照射する(ステップS23)。これ以降、ステップS20に戻る(リターン)。
【0072】
以上のように、第2の実施形態におけるヘッドライトシステム200は、赤外線カメラ222を用いて、ヘッドライト112の照射範囲内の熱源を検知し、検知結果に応じて、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。具体的には、ヘッドライトシステム200は、ヘッドライト112の照射範囲に熱源があるときは該熱源が照射されないように照射範囲を切り替え、ヘッドライト112の照射範囲に熱源がないときはハイビームに切り替える。
【0073】
図3を用いて説明した本比較例では、可視光カメラ20により前方画像を撮像するため、ヘッドライト12の照射光を被検出物に照射することなく検出可能なものは、可視光を直接発光している対向車、及び前走車のみである。従って、本比較例では、例えば夜間の走行中において、ヘッドライト12の照射範囲又は自発光している物体のみ認識することができる。
【0074】
これに対して、第2の実施形態では、赤外線カメラ222により照射範囲内で赤外線を放射する熱源を検知するようにしたため、ヘッドライト112の照射光を照射することなく、次のものを検出することができるようになる。ヘッドライトシステム200は、例えば、排気管やタイヤ等を熱源として検知することができるので、車(前走車、対向車)を検出することができる。また、ヘッドライトシステム200は、例えばエンジン、タイヤ、運転者(体温)等を熱源として検知することができるので、前方を走行する自動二輪車や、対向する自動二輪車を検出することができる。更に、ヘッドライトシステム200は、例えば、体温等を熱源として検知することができるので、歩行者、自転車に乗る人、動物(猫、犬、鹿等の哺乳類)等を検出することができる。なお、上記のものを、夜間の走行中であっても検出することができる。
【0075】
また、本比較例では、可視光カメラ20により撮像された前方画像を解析して、物体の形や色等の情報から、当該物体の種別等を識別する必要がある。従って、本比較例において、無数に存在する形状の車の認識、四季おりおり服装が変化する人等を確実に認識して識別することは実質的に不可能であると考えられる。
【0076】
これに対して、第2の実施形態では、赤外線を用いた熱撮像型の赤外線カメラ222により、熱源の形状等の情報を一切必要とせず、熱情報により判定するため、熱源を確実に検知することができる。
【0077】
更に、本比較例では、可視光カメラ20により撮像された前方画像に対する高度な画像処理や検知処理、認識処理が必要となり、これらを実行するハードウェアやソフトウェアの規模が大きくなり、処理の複雑化、高コスト化、処理速度の低下を招く。
【0078】
これに対して、第2の実施形態では、熱情報だけで判定しているため、熱源の有無の判定にかかるコストを抑えることができ、熱画像を撮像してから高速に熱源を検知することができる。即ち、第2の実施形態では、形(人、動物、車、自動二輪車等)の種別を識別する必要がないため、複雑な画像処理や検知処理、認識処理は不要であり、熱源の有無の判定に要する時間は非常に短くすることができる。従って、遮蔽物に隠れたところから、人や動物等が突然現われたとしても、瞬時にハイビームからロービームに切り替えることができる。
【0079】
更に、本比較例では、可視光カメラ20により撮像された前方画像に基づいて物体の形状を認識する必要があるため、可視光カメラ20の高画素化が必要となる。また、ヘッドライト12の照射範囲外の物体をより多く捕捉するためには、可視光カメラ20の暗時感度を上げる必要がある。高画素化と暗時感度は、可視光カメラ20においては相反する特性であるため、両方の特性を向上することは非常に難しい。
【0080】
これに対して、第2の実施形態では、熱源の大きさにかかわらず検知できればよく、赤外線カメラ222を用いた詳細な熱分布の取得も不要であるため、赤外線カメラ222には、非常に精細な画像を撮像するための画素数が必要とされない。従って、第2の実施形態では、赤外線カメラの低コスト化により、システム全体の低コスト化を図ることができる。
【0081】
更に、第2の実施形態では、既存のヘッドライト装置にそのまま適用することができる。そのため、非常に低コストで車両に搭載することができ、車両の運転者が前走車や対向車等を気にすることなく、運転者に明るい視界を提供し、事故防止に大きく起用することができるようになる。
【0082】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、前方車や対向車のみならず、人や動物等にも配慮したハイビームの照射が可能となる。従って、第2の実施形態によれば、人や動物等の眩しさを防ぐと共に、運転者にとっても良好な視界を得ることができ、事故防止に大きく寄与することができるようになる。
【0083】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態では、第2の実施形態の構成において、ハイビーム照射エリアを分割した照射エリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。
【0084】
第3の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成は、第2の実施形態におけるヘッドライトシステム200の構成と同様である。ここで、LCDパネル116の入射光を反射する状態の画素をオン、入射光を反射しない状態の画素をオフとする。熱判定部224は、熱画像内において熱源が存在するエリアの画素単位でオフを指定する切替制御信号BC2を生成する。ビーム方向制御部226は、切替制御信号BC2に基づいて制御信号を生成し、LCD制御部114は、切替制御信号BC2により指定されるエリアの画素が入射光を反射しないように制御する。
【0085】
図6に、第3の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図を示す。図6は、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像の一例を表す。
【0086】
赤外線カメラ222によって撮像された熱画像HIMG1内に、人P1,P2,P3、対向車C1、道路標識D1、信号機E1が存在するものとする。ヘッドライト装置210は、予め決められたハイビーム照射エリアHB1にハイビームを照射し、或いは、予め決められたロービーム照射エリアLB1にロービームを照射することができるようになっている。ロービーム照射エリアLB1は、自車からおよそ40メートル前方までの範囲を照射するように設定される。ハイビーム照射エリアHB1は、40メートル前方より遠くまで見渡せるように照射するように設定される。
【0087】
ハイビーム照射エリアHB1は、垂直方向に分割され16エリアを有し、自車から見て、左からエリアAR0〜AR15により構成される。ここで、赤外線カメラ222で撮像した熱画像から、ヘッドライトを点灯させて走行する対向車C1が検出されたものとする。このとき、熱判定部224は、対向車C1が位置する赤外線カメラ222における画素位置(X,Y)と対向車のヘッドライトの横幅Wと含む切替制御信号BC2をビーム方向制御部226に送る。ビーム方向制御部226は、この切替制御信号BC2に基づいて、エリアAR0〜AR15のうち対向車C1が存在するエリアを特定する。
【0088】
同様に、熱判定部224は、人P1,P3、信号機E1が位置する赤外線カメラ222における画素位置(X,Y)を含む切替制御信号BC2をビーム方向制御部226に送る。ビーム方向制御部226は、切替制御信号BC2に基づいて、エリアAR0〜AR15のうち人P1,P3、信号機E1が存在するエリアを特定する。図6では、エリアAR9,AR10に対向車C1のエンジンの熱がボンネットを通じて熱源として撮像されている。また、図6では、エリアAR6にいる人(男性)P3、エリアAR3にいる人(女性)P1も熱源として検出される。なお、エリアAR7の信号機E1については、旧型のバルブを使ったものであれば熱源として検出され、LEDのものであれば熱源として検出されないこともある。
【0089】
LCD制御部114は、ビーム方向制御部226によって特定された熱源の情報に対応したLCDパネル116の画素位置をオフするように制御する。これにより、図6に示すように、エリアAR3,AR6,AR7,AR9,AR10にハイビームが照射されず、その他のエリアにハイビームが照射されたままとなる。このとき、熱源として検知されないエリアAR4,AR5に跨っている道路標識D1には、ハイビームが照射されるため、運転者は、道路標識D1をはっきりと認識できる。
【0090】
なお、赤外線カメラ222の画素数は、LCDパネル116の画素数以上とすることが望ましい。こうすることで、熱源の検知精度が向上し、きめ細かい照射範囲の切替制御を行うことができるようになる。
【0091】
以上説明したように、第3の実施形態では、ハイビーム照射エリアを複数の照射エリアに分割する。そして、赤外線カメラ222により撮像された熱画像から検知される熱源が存在する照射エリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。こうすることで、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができ、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となる。
【0092】
〔第4の実施形態〕
第2の実施形態又は第3の実施形態では、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像を元にヘッドライト112の照射範囲を切り替えるようにしていたが、ヘッドライトシステムの周囲の温度を考慮するようにしてもよい。
【0093】
図7に、本発明の第4の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図7は、図4の構成に温度センサーを追加した構成例を表す。図7において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0094】
第4の実施形態におけるヘッドライトシステム300は、ヘッドライト装置310と、ヘッドライト制御装置320とを備えている。ヘッドライト装置310は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、LCDパネル116とを備えている。ヘッドライト制御装置320は、赤外線カメラ222と、温度センサー322と、検出部として機能する熱判定部324と、点灯切替部126と、ビーム方向制御部226とを備えている。熱判定部324及びビーム方向制御部226は、照射範囲切替部としても機能する。
【0095】
ヘッドライト装置410は、ヘッドライト装置310と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0096】
熱判定部324は、温度センサー322により検出された環境温度と、赤外線カメラ222により撮像された熱画像内の熱源の温度との温度差に基づいて、熱源の有無を判定し、判定結果に対応した切替制御信号BC3を生成する。
【0097】
点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置310は、この切替制御信号BC3に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。
【0098】
第4の実施形態においても、第3の実施形態と同様に、熱判定部324は、熱画像内において熱源が存在するエリアの画素単位でオフを指定する切替制御信号BC3を生成する。ビーム方向制御部226は、切替制御信号BC3に基づいて制御信号を生成し、LCD制御部114は、切替制御信号BC3により指定されるエリアの画素が入射光を反射しないように制御する。
【0099】
図8に、図7のヘッドライトシステム300の動作例のフロー図を示す。
【0100】
まず、赤外線カメラ222は、ヘッドライト112の照射範囲を撮像して熱画像を取得し、該照射範囲の熱源を検知する(ステップS30)。
【0101】
続いて、温度センサー322は、ヘッドライトシステム200の環境温度を検出する(ステップS31)。
【0102】
熱判定部324は、ステップS30で撮像された熱画像内の熱源の温度と、ステップS31で検出された環境温度との温度差に基づいて、熱画像内の熱源の有無を判定する(ステップS32)。
【0103】
熱判定部324により熱画像内に熱源があると判定されたとき(ステップS33:Y)、熱判定部324は、被検出物が存在するエリアが照射されないように上記の切替制御信号BC3を生成する。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置210は、この切替制御信号BC3により、被検出物が照射されないようにヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う(ステップS34)。これ以降、ステップS30に戻る(リターン)。
【0104】
ステップS32において、熱判定部324により熱画像内に熱源がないと判定されたとき(ステップS33:N)、熱判定部324は、ハイビームを照射するように上記の切替制御信号BC3を生成する。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置210は、この切替制御信号BC3により、ハイビームをヘッドライト112の照射範囲に向けて照射する(ステップS35)。これ以降、ステップS30に戻る(リターン)。
【0105】
以上説明したように、第4の実施形態では、第2の実施形態又は第3の実施形態と同様に、熱画像から検知される熱源が存在する照射エリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。このとき、第4の実施形態では、赤外線カメラ222により撮像された熱画像内の熱源の温度と、温度センサー322により検出された環境温度との温度差に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。こうすることで、人や動物の体温と周囲の温度との差が小さい真夏においても、確実に対象物を検出することができるようになる。従って、第2の実施形態又は第3の実施形態と比較して、前方車や対向車のみならず、人や動物等にも配慮したハイビームの確実な照射が可能となる。そのため、人や動物等の眩しさを防ぐと共に、運転者にとっても良好な視界を得ることができ、事故防止に大きく寄与することができる。
【0106】
〔第5の実施形態〕
第2の実施形態又は第3の実施形態では、LCDパネル116として反射型のLCDパネルを採用する例を説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0107】
図9に、本発明の第5の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図9において、図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0108】
第5の実施形態におけるヘッドライトシステム400は、ヘッドライト装置410と、ヘッドライト制御装置420とを備えている。ヘッドライト装置410は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、LCDパネル412とを備えている。ヘッドライト制御装置420は、赤外線カメラ222と、熱判定部224と、点灯切替部126と、ビーム方向制御部226とを備えている。
【0109】
LCDパネル412は、光変調面としてのパネル面にヘッドライト112の照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置され、光変調面におけるヘッドライト112の照射光の照射位置に応じて透過率(広義には、光変調率)の制御が可能に構成される光変調装置としての透過型のLCDパネルである。LCDパネル412は、各画素がオン又はオフに制御されることにより、ヘッドライト112の照射光を透過するか否かが決定される。
【0110】
第5の実施形態では、第2の実施形態又は第3の実施形態と同様に、赤外線カメラ222により撮像された熱画像から検知される熱源が存在する照射エリアに対応するLCDパネル412のパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。即ち、第5の実施形態では、ヘッドライトのハイビーム照射エリアが複数の照射エリアに分割される。このとき、熱判定部224は、照射範囲内の熱源が存在する照射エリアに基づいて、LCDパネル412のパネル面(光変調面)のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行う。LCD制御部114は、ビーム方向制御部226による制御に基づき、各照射エリアに対応するLCDパネル412のパネル面のエリア毎に、透過する光量を制御する。こうすることで、ハイビーム照射エリア内であってもエリア単位でハイビームの照射光を照射しないようにすることができ、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となる。
【0111】
〔第6の実施形態〕
第4の実施形態では、LCDパネル116として反射型のLCDパネルを採用する例を説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0112】
図10に、本発明の第6の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図10において、図7と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0113】
第6の実施形態におけるヘッドライトシステム500は、ヘッドライト装置510と、ヘッドライト制御装置520とを備えている。ヘッドライト装置510は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、LCDパネル512とを備えている。ヘッドライト制御装置520は、赤外線カメラ222と、温度センサー322と、熱判定部324と、点灯切替部126と、ビーム方向制御部226とを備えている。
【0114】
LCDパネル512は、光変調面としてのパネル面にヘッドライト112の照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置され、LCD412と同様の透過型のLCDパネルである。LCDパネル512は、各画素がオン又はオフに制御されることにより、ヘッドライト112の照射光を透過するか否かが決定される。
【0115】
第6の実施形態では、第4の実施形態と同様に、環境温度との温度差に基づいて、赤外線カメラ222により撮像された熱画像から検知される熱源が存在する照射エリアに対応するLCDパネル512のパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える。こうすることで、ハイビーム照射エリア内であっても、エリア単位で、前方車や対向車のみならず、人や動物等にも配慮したハイビームの照射光を確実に照射しないようにすることができ、非常にきめ細やかな照射範囲の切替制御が可能となる。
【0116】
〔第7の実施形態〕
上記の実施形態では、ハイビーム照射エリアを垂直方向に分割して得られる各照射エリアに対応したLCDパネルのパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行う例を説明した。しかしながら、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0117】
図11に、本発明の第7の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図を示す。図11は、図6と同様に、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像の一例を表す。図11において、図6と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0118】
第7の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成は、第3の実施形態〜第6の実施形態のいずれかの実施形態におけるヘッドライトシステムの構成と同様である。このような第7の実施形態におけるヘッドライトシステムにおいて、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像HIMG2内に、人P1,P2,P3、対向車C1、道路標識D1、信号機E1が存在するものとする。ここで、LCDパネルの制御を、例えば図11に示すように垂直方向及び水平方向に細分化して得られる4×16のブロックのブロック毎に制御するものとする。
【0119】
このとき、対向車C1は、エリア(9,2),(9,3),(10,2),(10,3)に跨って検出される。そのため、LCD制御部は、ハイビーム照射エリアHB1内のエリア(9,2),(9,3),(10,2),(10,3)に対応したLCDパネルのパネル面のエリアのみハイビームの照射光が照射されないように制御する。同様に、人P1の頭部がエリア(3,3)、人P3の頭部がエリア(6,2)、信号機E1がエリア(7,2)において検出される。そのため、LCD制御部は、ハイビーム照射エリアHB1内のエリア(3,3),(6,2),(7,2)に対応したLCDパネルのパネル面のエリアのみハイビームの照射光が照射されないように制御する。
【0120】
以上説明したように、第7の実施形態では、熱源が検知されるブロック単位でLCDパネルを制御する。このように、ブロック単位でハイビームの照射光の照射を制御することができるため、第3の実施形態〜第6の実施形態の効果に加えて、運転者にとって、より一層クリアな視界を提供することができるようになる。
【0121】
〔第8の実施形態〕
上記の実施形態では、ハイビーム照射エリアを垂直方向及び水平方向に分割して得られる各照射エリアに対応したLCDパネルのパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112のハイビームの照射光をオン又はオフするものとして説明した。しかしながら、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0122】
図12に、本発明の第8の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図を示す。図12は、図11の人P3の部分の拡大図を表す。
【0123】
第8の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成は、第3の実施形態〜第6の実施形態のいずれかの実施形態におけるヘッドライトシステムの構成と同様である。このような第8の実施形態におけるヘッドライトシステムでは、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像内のハイビーム照射エリアをより高精細に細分化し、より細かく分割されたブロック毎に、LCDパネルの対応するエリアを階調制御する。具体的には、熱判定部は、予め設けられた複数の階調制御レベルのうち、熱画像内で検知された熱源の絶対温度、又は環境温度と熱源の温度との差に対応した階調制御レベルを決定する。この階調制御レベルを受けたビーム方向制御部は、LCD制御部に対して、該階調制御レベルに対応した階調を決定して通知する。LCD制御部は、決定した階調となるようにLCDパネルを駆動して階調制御を行う。
【0124】
以上説明したように、第8の実施形態によれば、LCDパネルの画素のオン又はオフの制御だけではなく、各画素の階調制御を行うことで、ハイビームの遮光度合いを変化させることができるようになる。即ち、完全遮蔽ではなく、サングラスを通したような弱い光を照射させることもできる。これにより、第3の実施形態〜第6の実施形態の効果に加えて、例えば、検知された熱源の周囲も多少明るく保つことができるようになり、運転者から見て、人が歩いていることが確実に認識できるようになる。また、熱源と、熱源ではない部分との間に、階調を持たせることが可能となる。従って、被検出物が急な動作を行っても、眩しさを感じさせることがなくなるヘッドライトシステムを提供することができるようになる。
【0125】
〔第9の実施形態〕
第8の実施形態では、ハイビーム照射エリアを垂直方向及び水平方向に分割して得られる各照射エリアに対応したLCDパネルのパネル面のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行うものとして説明した。しかしながら、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。
【0126】
図13に、本発明の第9の実施形態におけるヘッドライトシステムの動作説明図を示す。図13は、図6と同様に、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像の一例を表す。図13において、図6と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0127】
第9の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成は、第3の実施形態〜第6の実施形態のいずれかの実施形態におけるヘッドライトシステムの構成と同様である。このような第9の実施形態におけるヘッドライトシステムにおいて、赤外線カメラ222によって撮像された熱画像HIMG3内に、人P1,P2,P3、対向車C1、道路標識D1、信号機E1が存在するものとする。ここで、LCDパネルの制御を、例えば図13に示すように水平方向に4分割して得られるエリア毎に制御するものとする。
【0128】
このとき、対向車C1は、エリアAR0,AR1に跨って検出される。同様に、人P1,P3がエリアAR0,AR1、信号機E1がエリアAR1において検出される。そのため、LCD制御部は、ハイビーム照射エリアHB1内のエリアAR0,AR1に対応したLCDパネルのエリアのみハイビームの照射光が照射されないように制御する。
【0129】
以上説明したように、第9の実施形態では、熱源が検知される水平方向に分割されたエリア単位でLCDパネルを制御する。このように、エリア単位でハイビームの照射光の照射を制御することができるため、被検出物に照射光を照射することなく、運転者にとって、より一層クリアな視界を提供することができるようになる。
【0130】
〔第10の実施形態〕
第1の実施形態〜第9の実施形態では、可視光カメラ又は赤外線カメラを用いたヘッドライトシステムの例を説明したが、本発明に係る実施形態は、これらに限定されるものではない。
【0131】
図14に、本発明の第10の実施形態におけるヘッドライトシステムの構成例のブロック図を示す。図14において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0132】
第10の実施形態におけるヘッドライトシステム600は、ヘッドライト装置610と、ヘッドライト制御装置620とを備えている。ヘッドライト装置610は、ヘッドライト112と、LCD制御部114と、LCDパネル116とを備えている。ヘッドライト制御装置620は、点灯切替部126と、ビーム方向制御部622と、傾き検出部として機能する車体傾き検出部624とを備えている。車体傾き検出部624は、ヘッドライト制御装置620の外部に設けられていてもよい。ビーム方向制御部622及び車体傾き検出部624は、照射範囲切替部としても機能する。
【0133】
ヘッドライト装置610は、ヘッドライト装置110と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0134】
ビーム方向制御部622には、運転者によるビーム方向の切替操作に対応した切替操作信号BH1が入力される。ビーム方向制御部622は、点灯切替信号TC1及び切替操作信号BH1に基づいて、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部622は、切替操作信号BH1に基づいて、LCDパネル116の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部114に通知する。更に、ビーム方向制御部622には、車体方向き検出部624から傾き検出信号DD1が入力される。点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ビーム方向制御部622は、傾き検出信号DD1に基づいて、LCDパネル116の画素単位にオン又はオフを決定し、LCD制御部114に通知する。
【0135】
LCD制御部114は、ビーム方向制御部622から通知された画素単位のオン又はオフの情報に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行う。具体的には、LCD制御部114は、ビーム方向制御部622からの制御信号に基づいて、LCDパネル116の画素単位で駆動制御を行うことで、ヘッドライト112の照射光の遮断制御を行って、ヘッドライトの照射範囲の切替制御を行う。
【0136】
傾き検出部624は、水平方向を基準に、ヘッドライトシステム600を搭載する車両の傾きを検出することで、ヘッドライト112の照射方向の傾きを検出し、検出した傾きに対応した傾き検出信号DD1を生成する。これにより、傾き検出部624は、当該車両が走行している道路が前下がりであるか、前上がりであるかを検出し、その検出結果をビーム方向制御部622に通知することができる。ビーム方向制御部622は、例えば水平方向を基準とした当該車両の傾き度合い(照射方向の傾き度合い)に応じて、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。
【0137】
第10の実施形態では、ヘッドライトのハイビーム照射エリア及びロービーム照射エリアが複数の照射エリアに水平方向に分割される。ビーム方向制御部622及び車体方向き検出部624は、傾き検出信号DD1に対応した照射エリアがオン又はオフとなるようにLCDパネル116のパネル面(光変調面)のエリア毎に、ヘッドライト112の照射範囲を切り替える制御を行う。LCD制御部114は、ビーム方向制御部226による制御に基づき、各照射エリアに対応するLCDパネル116のパネル面のエリア毎に、反射する光量を制御する。
【0138】
図15に、図14のヘッドライトシステム600の動作例のフロー図を示す。
【0139】
まず、車体方向き検出部624は、水平方向を基準として車両の傾きを検出することで、ヘッドライト112の照射方向の傾きを検出する(ステップS40)。車体方向き検出部624は、検出した傾きに対応した傾き検出信号DD1を生成する。
【0140】
ステップS40において車体の傾きが前上がりであると判定されたとき(ステップS41:Y)、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置610は、次のように照射範囲の切替制御を行う(ステップS42)。即ち、ステップS42では、ヘッドライト装置610は、ビーム方向制御部622により、前上がり度合いに応じてロービーム照射エリア内の一部がオフとなるように、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、ビーム方向制御部622は、前上がり度合いに対応したロービーム照射エリア内の照射エリアがオフとなるように照射範囲の切替制御を行う。これ以降、ステップS40に戻る(リターン)。
【0141】
ステップS40において車体の傾きが前下がりであると判定されたとき(ステップS41:N、ステップS43:Y)、点灯切替信号TC1によりヘッドライト112の点灯が指示されているとき、ヘッドライト装置610は、次のように照射範囲の切替制御を行う(ステップS43)。即ち、ステップS43では、ヘッドライト装置610は、ビーム方向制御部622により、ロービーム照射エリアと前下がり度合いに応じたハイビーム照射エリア内の一部がオンとなるように、ヘッドライト112の照射範囲の切替制御を行う。具体的には、ビーム方向制御部622は、ロービーム照射エリアの全領域と、前下がり度合いに対応したハイビーム照射エリア内の照射エリアとがオンとなるように照射範囲の切替制御を行う。これ以降、ステップS40に戻る(リターン)。
【0142】
ステップS40において車体の傾きが前上がりでも前下がりでもないと判定されたとき(ステップS41:N、ステップS43:N)、ヘッドライト装置610は、再び車体の傾きを検出する(リターン)。
【0143】
図16に、車体の傾きが前上がりのときのヘッドライトの照射範囲の説明図を示す。
【0144】
図16に示すように、一般的なヘッドライトを搭載する車両CA1が例えば上り坂を走行しているとき、当該車体の傾きが前上がりとなる。このとき、車両の前方の上り坂の終了地点である平坦地にいる人PA1に対して、例えロービームを照射していたとしても、ヘッドライトの照射光が直接目に入り、人PA1は、非常に眩しくなり、危険性が増加する可能性がある。
【0145】
図17に、車体の傾きが前下がりのときのヘッドライトの照射範囲の説明図を示す。
【0146】
図17に示すように、一般的なヘッドライトを搭載する車両CA2が例えば下り坂を走行しているとき、当該車体の傾きが前下がりとなる。このとき、車両の前方の下り坂の終了地点である平坦地にいる人PA2に対して、ロービームを照射していたのでは、ヘッドライトの照射光を照射することができない。従って、車両CA2から人PA2の発見が遅れ、危険性が増加する可能性がある。
【0147】
そこで、第10の実施形態では、図15に示すように照射範囲の切替制御を行うことで、人PA1,PA2、車両CA1,CA2の危険性を大幅に低下させることができるようになる。
【0148】
図18に、図15のステップS42の説明図を示す。図18は、車両の前方に歩行者H1がいるときのロービーム照射エリアの一例を表す。
【0149】
ヘッドライトシステム600を搭載する車両が、上り坂を走行している。ここで、ロービーム照射エリアLB1が水平方向に例えば8分割されて照射エリア(L,0)〜(L,7)が設けられているものとする。このとき、当該車両は、上り坂の度合い(前上がりの傾き度合い)によって、照射エリア(L,0)〜(L,7)における照射範囲の切替制御を行うことで、車両が平坦地を走行しているような照射範囲を確保することができる。
【0150】
例えば図18に示すように、エリア(L,0)〜(L,2)までの照射をオフにする。従来、図16に示すように、ロービーム照射エリアLB1内にいる歩行者は完全に照射されてしまうため、歩行者H1は眩しさを避けられない状態となる。これに対して、第10の実施形態では、エリア(L,0)〜(L,2)をオフするようにしたので、歩行者H1に直接照射されることなく、歩行者H1は、眩しくならず、危険性を大幅に低下させることができるようになる。
【0151】
図19に、図15のステップS43の説明図を示す。図19は、車両の前方に歩行者H2がいるときのハイビーム照射エリア及びロービーム照射エリアの一例を表す。
【0152】
ヘッドライトシステム600を搭載する車両が、下り坂を走行している。ここで、ロービーム照射エリアLB1が水平方向に例えば8分割されて照射エリア(L,0)〜(L,7)が設けられ、ハイビーム照射エリアHB1が水平方向に例えば8分割されて照射エリア(H,0)〜(H,7)が設けられているものとする。このとき、当該車両は、下り坂の度合い(前下がりの傾き度合い)によって、照射エリア(L,0)〜(L,7)、(H,0)〜(H,7)における照射範囲の切替制御を行うことで、車両が平坦地を走行しているような照射範囲を確保することができる。具体的には、ロービーム照射エリアLB1(エリア(L,0)〜(L,7))についてはオンにし、下り坂の度合いに応じたハイビーム照射エリアHB1の一部をオンにする。
【0153】
例えば図19に示すように、エリア(L,0)〜(L,7)、(H,4)〜(H,7)までをオンにする。従来、図17に示すように、ロービーム照射エリアLB1内にいる歩行者は完全に照射できず、ハイビーム照射エリアHB1内にいる歩行者は完全に照射されてしまうため、歩行者H2は眩しさを避けられない状態となる。これに対して、第10の実施形態では、ロービーム照射エリアLB1のみならず、ハイビーム照射エリアHB1内のエリア(H,0)〜(H,4)をオンする。こうすることで、運転者は、歩行者H2を発見することができ、危険性を大幅に低下させることができるようになる。
【0154】
以上のように、第10の実施形態では、ヘッドライト112のロービーム照射エリア、又は、ロービーム照射エリア及びハイビーム照射エリアの少なくとも一部が、水平方向に複数の照射エリアに分割される。そして、LCD制御部114(又はビーム方向制御部622)は、車体傾き検出部624の検出結果に応じて、各照射エリアに対応するLCDパネル116の光変調面のエリア毎に、透過又は反射する光量を制御することができる。具体的には、照射方向が水平方向に対して前上がりであることが検出されたとき、ロービーム照射エリアの一部に照射光が照射されないように制御される。また、照射方向が水平方向に対して前下がりであることが検出されたとき、ロービーム照射領域エリアの全部とハイビーム照射エリアの一部とに照射光が照射されるように制御される。
【0155】
以上説明したように、第10の実施形態によれば、ロービーム照射エリア及びハイビーム照射エリアのうち車体の傾きに対応したエリアの照射切替制御を行うようにしたので、車体の状態に応じた的確な照射を行うことができるようになる。なお、第10の実施形態において、LCDパネルとして透過型のLCDパネルを採用してもよい。
【0156】
〔第11の実施形態〕
上記の実施形態では、LCDパネルは、光変調面としてのパネル面の全部にヘッドライトの照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置されるものとして説明したが、本発明に係る実施形態は、これらに限定されるものではない。
【0157】
第11の実施形態では、例えば第1の実施形態において、LCDパネルは、光変調面としてのパネル面の一部にヘッドライトの照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置される。即ち、本発明に係る光変調装置としてのLCDパネルは、光変調面としてのパネル面の少なくとも一部にヘッドライトの照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置されてもよい。第11の実施形態では、LCDパネルは、ハイビーム照射エリアに対応したLCDパネルのパネル面にのみヘッドライトの照射光が照射されるように該照射光の光路上に配置される。これにより、ハイビーム照射エリアについては上記の実施形態と同様に制御するのみで、ロービーム照射エリアには、LCDパネルを介在させることなく照射光を照射させることができ、ロービーム照射エリアの照度不足を容易に回避することができるようになる。
【0158】
以上説明したように、第11の実施形態によれば、ヘッドライトの照度を上げずに、信頼性を損なうことなく、より多くの配光パターンの生成が可能なヘッドライト装置、及びヘッドライトシステム等を提供することができるようになる。
【0159】
以上、本発明に係るヘッドライト制御装置、及びヘッドライトシステム等を上記のいずれかの実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記のいずれかの実施形態に限定されるものではない。例えば、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、次のような変形も可能である。
【0160】
(1)上記のいずれかの実施形態では、本発明に係る光変調装置として反射型又は透過型のLCDパネルを例に説明したが、本発明に係る光変調装置は、これらに限定されるものではない。本発明に係る光変調装置は、マイクロミラーを用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造のデバイスであってもよく、高画素化が必要とされないため、反射率や透過率の優れた光変調装置として本発明に寄与することができる。
【0161】
(2)上記のいずれかの実施形態において、本発明に係るヘッドライトとして、ハロゲンバルブやHID(High Intensity Discharge)バルブ等の通常のバルブの単一光源を用いたものを採用することができる。
【0162】
(3)上記のいずれかの実施形態において、ヘッドライト制御装置の構成要素の一部又は全部がヘッドライト装置に内蔵されたり、ヘッドライト装置の構成要素の一部がヘッドライト制御装置に内蔵されたりしてもよい。
【0163】
(4)上記のいずれかの実施形態において、ハイビーム照射領域を垂直方向のみや、垂直方向及び水平方向、水平方向のみに分割する例を説明したが、その分割数に本発明が限定されるものではない。
【0164】
(5)第10の実施形態では、車体の傾きを検出する例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、車体の傾きを検出すると共に、ナビゲーションシステムの地図情報から、走行している自車が現在どのような道路を走行しているのか、これからどのような道路を走行するのかの情報に基づいて、ヘッドライトの照射範囲の切替制御を行うようにしてもよい。
【0165】
(6)上記の実施形態のうち1つの実施形態を他の実施形態に適宜適用することができることは言うまでもない。
【0166】
(7)上記のいずれかの実施形態において、本発明をヘッドライト制御装置、及びヘッドライトシステム等として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係るヘッドライトシステムの制御方法の処理手順が記述されたプログラム、このプログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0167】
1,100,200,300,400,500,600…ヘッドライトシステム、
12,112…ヘッドライト、 14,126…点灯切替部、
16,128,226,622…ビーム方向制御部、 18…ビーム方向切替部、
20…可視光カメラ、 22,124…車検知部(検出部)、
110,210,310,410,510,610…ヘッドライト装置、
114…LCD制御部(光変調制御装置)、
116,412,512…LCDパネル(光変調装置)、
120,220,320,420,520…ヘッドライト制御装置、
122…可視光カメラ、 222…赤外線カメラ、
224,324…熱判定部(検出部)、 322…温度センサー、
624…車体傾き検出部、 BC0,BC1,BC2,BC3…切替制御信号、
BH0,BH1…切替操作信号、 C1…対向車、 CA1,CA2…車両、
D1…道路標識、 E1…信号機、 H1,H2…歩行者、
HB1…ハイビーム照射エリア、 HIMG1,HIMG2,HIMG3…熱画像、
LB1…ロービーム照射エリア、 P1,P2,P3,PA1,PA2…人、
TC0,TC1…点灯切替信号、 TK0,TK1…点灯操作信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に光の照射が可能に構成されるヘッドライトと、
光変調面の少なくとも一部に前記ヘッドライトの照射光が照射されるように前記照射光の光路上に配置され、前記光変調面における該照射光の照射位置に応じて光変調率の制御が可能に構成される光変調装置とを含むことを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光変調装置は、
第1の照射方向に照射された前記照射光を第2の照射方向に反射する反射型の液晶表示パネルであることを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記光変調装置は、
透過型の液晶表示パネルであることを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記ヘッドライトは、
各光源の光量が制御される複数の光源を含むことを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記ヘッドライトのハイビーム照射エリアを複数の照射エリアに分割して、各照射エリアに対応する前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、透過又は反射する光量を制御する光変調制御装置を含むことを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の照射エリアは、
前記ハイビーム照射エリアを垂直方向に分割されたエリアであることを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記複数の照射エリアは、
前記ハイビーム照射エリアを水平方向に分割されたエリアであることを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記複数の照射エリアは、
前記ハイビーム照射エリアを垂直方向及び水平方向に分割されたエリアであることを特徴とするヘッドライト装置。
【請求項9】
前記ヘッドライトの照射範囲を撮像する可視光カメラと、
前記可視光カメラの撮像結果に基づいて、被検出物を検出する検出部と、
請求項5乃至8のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、
前記光変調制御装置は、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、前記光変調装置を透過又は反射する光量を制御して前記ヘッドライトの照射範囲を切り替える制御を行うことを特徴とするヘッドライトシステム。
【請求項10】
前記ヘッドライトの照射範囲を撮像する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラの撮像結果に基づいて、熱源を検出する検出部と、
請求項5乃至8のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、
前記光変調制御装置は、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、前記光変調装置を透過又は反射する光量を制御して前記ヘッドライトの照射範囲を切り替える制御を行うことを特徴とするヘッドライトシステム。
【請求項11】
前記ヘッドライトの照射方向の傾きを検出する傾き検出部と、
請求項1乃至4のいずれか記載のヘッドライト装置とを含み、
前記傾き検出部の検出結果に応じて、前記ヘッドライトの照射範囲を切り替えることを特徴とするヘッドライトシステム。
【請求項12】
請求項11において、
前記ヘッドライトのロービーム照射エリア、又は、前記ロービーム照射エリア及び前記ハイビーム照射エリアの少なくとも一部を、水平方向に複数の照射エリアに分割し、前記傾き検出部の検出結果に応じて、各照射エリアに対応する前記光変調装置の前記光変調面のエリア毎に、透過又は反射する光量を制御することを特徴とするヘッドライトシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−97885(P2013−97885A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236942(P2011−236942)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】