説明

ヘッドレスト及び車両用シート

【課題】乗員保護性能を向上しつつ、簡易な構成によって乗員の快適性を向上することができるヘッドレスト及び車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートのヘッドレスト10は、乗員の頭部を支持するヘッドレストパッド16と、ヘッドレストパッド16をシート後方側から支持するとともに、ヘッドレストパッド16をシートバック前面の少なくともシート下方側に移動可能とするヘッドレスト保持部12と、ヘッドレストパッド16を移動した後の位置にヘッドレスト保持部12に固定する固定部材18A、18B、20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト及びこのヘッドレストが装着された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び下記特許文献2にはヘッドレスト付き車両用シートが開示されている。この車両用シートのヘッドレストは、シートバックの上方側に配設されて乗員の頭部を後方から支持するヘッドレスト本体と、乗員の頸部を後方から支持するネックサポート部とを備えている。ヘッドレスト本体内には横軸がシート幅方向に延設されており、ネックサポート部のシート幅方向端部には上方側に延設された端部延設部が形成されている。横軸には端部延設部が回動可能に軸支されており、この横軸を中心としてネックサポート部が端部延設部と一体に回動可能とされている。
【0003】
上記ヘッドレストは、車両の走行時において、乗員の頭部を拘束して乗員保護性能を高められる。また、上記ヘッドレストは、非走行時において、必要に応じてネックサポート部をシート前方側に回動して乗員の頸部を支持することによって、乗員の快適性を高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4523853号公報
【特許文献2】特許第4647331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に開示されたヘッドレスト付き車両用シートでは、シート後方側からシート前方側にネックサポート部を回動する構造になっており、乗員が寄り掛かったときにネックサポート部がシート後方側に戻ってしまう。このため、乗員の頸部をネックサポート部を用いて支持することが難しいので、十分な快適性を得ることが難しい。
【0006】
また、上記ヘッドレスト付き車両用シートでは、ヘッドレスト本体内の横軸、この横軸に軸支されてネックサポート部のシート幅方向端部に形成された端部延設部等の機械的な部品が必要であり、構造が複雑である。また、これらの部品には剛性が高い金属材料や樹脂材料が使用されているので、ヘッドレストの重量が重くなり、更に製作コストが高くなる。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、乗員保護性能を向上しつつ、簡易な構成によって非走行時に快適性を向上することができるヘッドレストを得ることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記ヘッドレストがシートバックに装着された車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレストは、乗員の頭部を支持するヘッドレストパッドと、ヘッドレストパッドをシート後方側から支持するとともに、ヘッドレストパッドをシートバック前面の少なくともシート下方側に移動可能とするヘッドレスト保持部と、ヘッドレストパッドを移動した位置においてこのヘッドレストパッドをヘッドレスト保持部に固定する固定部材とを備える。
【0010】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレストでは、ヘッドレストパッドが乗員の頭部を支持しており、ヘッドレスト保持部がヘッドレストパッドをシート後方側から支持するとともにシートバック前面の少なくともシート下方側に移動可能としている。ヘッドレストパッドは移動した位置において固定部材を用いてヘッドレスト保持部に固定される。これにより、走行時には、ヘッドレストパッド及びヘッドレスト保持部によって乗員の頭部をシート後方側から拘束して頭部の後傾を抑制又は防止することができる。また、ヘッドレストパッド、ヘッドレスト保持部及び固定部材を持つ簡易な構成によって、非走行時には、必要に応じて、ヘッドレスト保持部からシートバック前面の少なくともシート下方側にヘッドレストパッドを移動し、固定部材を用いて適切な位置、例えば乗員の頸部とシートバックとの間にヘッドレストパッドを固定することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1に記載の発明に係るヘッドレストにおいて、ヘッドレスト保持部に一端部を接続し、ヘッドレストパッドに他端部を接続してヘッドレストパッドの移動範囲を規制するベルトを備える。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るヘッドレストでは、ヘッドレスト保持部とヘッドレストパッドとがベルトによって接続されており、このベルトの長さによってヘッドレスト保持部に対するヘッドレストパッドの移動範囲が規制されている。これにより、ヘッドレスト保持部からのシート下方側への脱落を防止することができるとともに、ベルトの長さを適正に設定しておくことによってヘッドレストパッドを適切な位置に即座に移動することができる。加えて、ベルトが単純でかつ安価な構成部品であるので、簡易な構成でかつ製作コストが安価なヘッドレストを実現することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1又は請求項2に記載の発明に係るヘッドレストにおいて、ヘッドレストパッドの一面に乗員の頭部を支持する第1造形面を有し、ヘッドレストパッドの一面に対向する他面に乗員の頸部を支持する第2造形面を有する。
【0014】
請求項3に記載の発明に係るヘッドレストでは、一面に乗員の頭部を支持する第1造形面を有し、他面に乗員の頸部を支持する第2造形面を有するヘッドレストパッドが備えられている。これにより、走行時には、ヘッドレストパッドの第1造形面において乗員の頭部を支持することができるとともに、非走行時には、ヘッドレストパッドを回転移動するだけで第2造形面をシート前方側に配置して乗員の頸部を支持することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明に係るヘッドレストにおいて、ヘッドレスト保持部に、ヘッドレストパッドのシート幅方向の両側面を覆うとともに、ヘッドレストパッドよりもシート前方側に突出したサイドサポート部を備える。
【0016】
請求項4に記載の発明に係るヘッドレストでは、ヘッドレスト保持部に、ヘッドレストパッドの両側面を覆い、ヘッドレストパッドよりもシート前方側に突出したサイドサポート部が備えられている。これにより、ヘッドレスト保持部に対するヘッドレストパッドのシート幅方向のずれをサイドサポート部によって防止することができ、かつ走行時並びに非走行時の乗員の頭部の両側を支持することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のヘッドレストをシートバック上方側に取り付けている。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のヘッドレストがシートバック上方側に取り付けている。これにより、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のヘッドレストによって得られる作用効果を有する車両用シートを実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、乗員保護性能を向上しつつ、簡易な構成によって非走行時に快適性を向上することができるヘッドレストを得ることができる。
【0020】
また、本発明によれば、上記ヘッドレストがシートバックに装着された車両用シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るヘッドレストを車両用シートの前方側から見た斜視図であり、(B)は(A)に示すヘッドレストを車両用シートの左側面から見た側面図である。
【図2】(A)は図1に示すヘッドレストにおいてヘッドレストパッドを回転(反転)した状態を示す斜視図であり、(B)は(A)に示すヘッドレストを車両用シートの左側面から見た一部を断面とする側面図である。
【図3】図1及び図2に示すヘッドレストにおいて非走行時の第1使用状態を示す模式的側面図である。
【図4】図1及び図2に示すヘッドレストにおいて非走行時の第2使用状態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図4を参照して、本発明の実施の形態に係るヘッドレスト及び車両用シートについて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれ車両用シートの前方向、上方向、幅方向を示している。また、本実施の形態では、車両用シートの前方向、上方向、幅方向は、各々、車両用シートが搭載された車両の前方向、上方向、幅方向に略一致している。
【0023】
[車両用シートの構成]
図3及び図4に示す本実施の形態に係る車両用シート30は車両室内に装着されている。車両用シート30は、運転席か助手席かを問わず、又フロントか、リアかを問わない。また、車両用シート30は、シートバックの角度調整を行える可動式か、シートバックの角度調整を行えない固定式かを問わない。車両用シート30は、乗員が着座するシートクッション(図示省略)と、シートクッションのシート後方側に連接されて乗員がシート後方側に寄り掛かれるシートバック(上方側の一部を図示)とを備えている。シートバックの上方側にはヘッドレスト10が装着されている。
【0024】
[ヘッドレストの構成]
図1(A)及び図1(B)に示すように、ヘッドレスト10は、ヘッドレストパッド16と、ヘッドレスト保持部12と、ヘッドレストステー14と、固定部材18A及び18Bとを備えている。
【0025】
ヘッドレストパッド16はシート幅方向Wに延設された枕状のクッションである。同図1(A)及び図1(B)に示すように、ヘッドレストパッド16は、その一面にシート前方向に突出する緩やかな曲面を持ち乗員の頭部(後頭部)を支持する第1造形面16Aを有する。また、図2(A)及び図2(B)に示すように、ヘッドレストパッド16の第1造形面16Aに対向する他面は、ヘッドレストパッド16の上方をシート前方向に下方をシート後方向に回転移動(図2(B)中、矢印R方向に回転移動)させたときに、上方よりも下方がシート前方向に突出する緩やかな曲面を持ち、乗員の頸部を支持する第2造形面16Bを有する。ヘッドレストパッド16はヘッドレスト保持部12に対して独立した別部品として製作されている。ヘッドレストパッド16は、例えばポリウレタンフォーム等のクッション性を有する発泡体を心材として、その周囲を表皮により覆うことによって形成されている。表皮には、布、ビニール、革等が使用されている。
【0026】
ヘッドレスト保持部12は、図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)に示すように、バックサポート部12Cと、サイドサポート部12A及び12Bとを備えている。バックサポート部12Cは、ヘッドレストパッド16のシート後方側にヘッドレストパッド16の第2造形面16B又は第1造形面16Aに対向して配設されている。バックサポート部12Cは、ヘッドレストパッド16のシート幅方向Wの寸法よりも若干長めの幅寸法を有し、ヘッドレストパッド16のシート上下方向の寸法と略同等の寸法を有しており、第2造形面16B又は第1造形面16Aの大半を覆っている。バックサポート部12Cは各辺に曲面を有する略直方体形状により形成されている。
【0027】
図2(B)に示すように、バックサポート部12Cのシート前方側であってシート下方側には、シート後方側に凹みを有する第3造形面12Dが構成されている。図2(A)及び図2(B)に示すように、第3造形面12Dは、ヘッドレストパッド16の第2造形面16Bをシート前方側に配置し第1造形面16Aをシート後方側に配置したときに、第1造形面16Aのシート上方側のシート後方側の突出部分に嵌り合う形状とされている。つまり、ヘッドレスト保持部12に対するヘッドレストパッド16の位置決めとして第3造形面12Dが使用されている。
【0028】
サイドサポート部12Aは、車両用シート30に着座した乗員から見てバックサポート12Cの右端からシート前方側に突出して配設されている。サイドサポート部12Bは、車両用シート30に着座した乗員から見てバックサポート12Cの左端からシート前方側に突出して配設されている。サイドサポート部12A及び12Bは、ヘッドレストパッド16のシート幅方向の両側面を覆うとともに、ヘッドレストパッド16の第1造形面16Aから第2造形面16Bまでの厚さよりもシート前方側に突出されている。
【0029】
サイドサポート部12A及び12Bは本実施の形態においてバックサポート12Cに一体に構成されており、ヘッドレスト保持部12は平面視においてシート前方側に開口された凹形形状により構成されている。ヘッドレスト保持部12は、例えばヘッドレストパッド16と同様に、例えばポリウレタンフォーム等のクッション性を有する発泡体を心材として、その周囲を表皮により覆うことによって形成されている。表皮には、布、ビニール、革等が使用されている。
【0030】
ヘッドレスト保持部12は、バックサポート12Cを備えているので、ヘッドレストパッド16の第2造形面16B又は第1造形面16Aをシート後方側から支持している。また、ヘッドレスト保持部12は、バックサポート12C、サイドサポート部12A及び12Bを備えてこれらにガイドされ、ヘッドレストパッド16をシートバック前面の少なくともシート下方側に移動可能としている。そして、ヘッドレスト保持部12は、ヘッドレストパッド16よりもシート前方側に突出したサイドサポート部12A及び12Bを備えているので、乗員の頭部をシート幅方向の外側から内側に向かって支持している。
【0031】
図1(A)及び図1(B)に示すように、ヘッドレスト保持部12の上方側中央部には、少なくともヘッドレストパッド16の第1造形面16Aをシート前方側にしてヘッドレスト保持部12に固定可能(保持可能)とする固定部材(第1固定部材)20が取付けられている。固定部材20には、例えば面ファスナが使用される。面ファスナは、一方の面に鉤状の多数の突出部を有し、他方の面に輪状の多数の突出部を有する1組のナイロンテープである。鉤状の突出部と輪状の突出部との双方の係合によりナイロンテープ同士が適度な強さで容易に接合され、双方の係合の解除により接合されたナイロンテープを容易に離脱することができる。また、固定部材20には、ヘッドレスト保持部12及びヘッドレストパッド16のいずれか一方に取付けられた保持部材としてのボタンと、いずれか他方に取付けられた非保持部材としてのボタンが掛けられるベルトとの組合わせであってもよい。特に自在に取付け取外しが可能であれば、固定部材20の構成は限定されるものではない。
【0032】
図2(A)及び図2(B)に示すように、ヘッドレスト保持部12に一端部を接続してヘッドレストパッド16に他端部を接続したベルト22が配設されている。ベルト22の一端部は、ここではヘッドレスト保持部12のバックサポート部12Cのシート前方側であって、バックサポート部12Cのシート上下方向の上端と中央との間に接続されている。ベルト22の他端部は、ここではヘッドレストパッド16の第2造形面16Bであって、ヘッドレストパッド16を矢印R方向に回転移動したときのシート上下方向の上端と中央との間に接続されている。また、この状態において、本実施の形態では、ヘッドレストパッド16がヘッドレスト保持部12のシート上下方向の下端からシート下方側に外れない長さにベルト22長さが設定されている。また、ベルト22は、ここではヘッドレストパッド16のシート幅方向の長さと略同一の幅寸法に設定されるとともに、サイドサポート部12Aと12Bとの離間寸法よりも短い寸法に設定されている。ベルト22は、ヘッドレスト保持部12に対するヘッドレストパッド16の移動範囲を規制している。
【0033】
ベルト22は本実施の形態においてヘッドレストパッド16の表皮と同一材料によって製作されており、ヘッドレスト10の全体の意匠性が高められている。また、表皮と同一材料により製作されているので、ベルト22は非常に単純な構成部品であり、ヘッドレスト10の全体構造を簡素化することができる。更に、ベルト22は柔軟性に優れているので、ヘッドレスト保持部12に対してヘッドレストパッド16の取回しの自由度が高められる。
【0034】
なお、ベルト22の長さ寸法、幅寸法及び材料は、特に限定されるものではなく、意匠性や利便性を考慮して適宜変更可能である。
【0035】
図1(B)、図2(A)及び図2(B)に示すように、車両用シート30に着座した乗員から見て右側のサイドサポート部12Aのシート幅方向内側及びそれに対向するヘッドレストパッド16のシート幅方向右側端部には固定部材(第2固定部材)18Aが配設されている。一方、車両用シート30に着座した乗員から見て左側のサイドサポート部12Bのシート幅方向内側及びそれに対向するヘッドレストパッド16のシート幅方向左側端部には固定部材(第2固定部材)18Bが配設されている。ヘッドレスト保持部12に対してヘッドレストパッド16を移動した場合、この移動した位置において固定部材18A及び18Bを用いてヘッドレスト保持部12にヘッドレストパッド16が固定される。本実施の形態において、固定部材18A及び18Bには前述の固定部材20と同様の面ファスナが使用される。従って、固定部材18A及び18Bには金属材料や複雑な構成を必要とせず、固定部材18A及び18Bは非常に単純な構成部品であるので、ヘッドレスト10の全体構造を簡素化することができる。
【0036】
図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)に示すように、ヘッドレスト保持部12の下部にはそこからシート下側方向に延設されるヘットレストフレーム14が配設されている。ヘットレストフレーム14は、ここでは金属性の棒状部材を略逆U字状に曲げ加工されて製作されている。ヘットレストフレーム14の曲げ加工がなされた部分は、ヘッドレスト保持部12内部に埋設されており、ヘッドレスト保持部12を取付けている。ヘットレストフレーム14のシート下方側に延設された部分は、図3及び図4に示すように、車両用シート30のシートバック内に配設されたサポート部32に差し込まれており、これによってシートバック上方側にヘッドレスト10が装着される。
【0037】
[実施の形態の作用]
次に、本実施の形態に係るヘッドレスト10及びそれを装着した車両用シート30の作用は以下の通りである。
【0038】
本実施の形態に係るヘッドレスト10では、ヘッドレストパッド16が図3に示す乗員40の頭部(後頭部)を支持しており、ヘッドレスト保持部12がヘッドレストパッド16をシート後方側から支持するとともにシートバック前面の少なくともシート下方側に移動可能としている。ヘッドレストパッド16は移動した位置において固定部材20又は18A及び18Bを用いてヘッドレスト保持部12に固定される。これにより、走行時には、ヘッドレストパッド16及びヘッドレスト保持部12によって乗員40の頭部をシート後方側から拘束して頭部の後傾を抑制又は防止することができる。また、ヘッドレストパッド16、ヘッドレスト保持部12及び固定部材20、18A及び18Bを持つ簡易な構成によって、非走行時には、必要に応じて、ヘッドレスト保持部12からシートバック前面の少なくともシート下方側にヘッドレストパッド16を移動し、固定部材18A及び18Bを用いて適切な位置、例えば乗員40の頸部とシートバックとの間にヘッドレストパッドを固定することができる。
【0039】
図3には、シートバックをシート上方側に比較的立てた状態において、乗員40の頸部とヘッドレスト保持部12及びシートバックとの間に、第2造形面16Bをシート前方側としてヘッドレストパッド16が挟み込まれている状態が示されている。ヘッドレストパッド16の第1造形面16Aの上方側はヘッドレスト保持部12の第3造形面12Dに位置決めされ、ヘッドレストパッド16のシート下方側への移動位置が決められている。
【0040】
また、本実施の形態にヘッドレスト10では、ヘッドレスト保持部12とヘッドレストパッド16とがベルト22によって接続されており、このベルト22の長さによってヘッドレスト保持部12に対するヘッドレストパッド16の移動範囲が規制されている。これにより、ヘッドレスト保持部12からのシート下方側へのヘッドレストパッド16の脱落を防止することができるとともに、ベルト22の長さを適正に設定しておくことによってヘッドレストパッド16を適切な位置に即座に移動することができる。
【0041】
図4には、シートバックをシート後方側に比較的大きく寝かせた状態において、乗員40の頸部とシートバックとの間に、第2造形面16Bをシート前方側としてヘッドレストパッド16が挟み込まれている状態が示されている。ヘッドレスト保持部12とヘッドレストパッド16とを接続するベルト22が比較的一杯に引き延ばされ、ベルト22の長さによって移動範囲が規制されたシート下方側の最も低い位置にヘッドレストパッド16が位置決めされ固定される。ベルト22が単純でかつ安価な構成部品であるので、簡易な構成でかつ製作コストが安価なヘッドレスト10を実現することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係るヘッドレスト10では、一面に乗員40の頭部を支持する第1造形面16Aを有し、他面に乗員40の頸部を支持する第2造形面16Bを有するヘッドレストパッド16が備えられている。これにより、走行時には、ヘッドレストパッド16の第1造形面16Aにおいて乗員40の頭部を支持することができるとともに、非走行時には、ヘッドレストパッド16を回転移動するだけで第2造形面16Bをシート前方側に配置して乗員40の頸部を支持することができる。
【0043】
また、本実施例の形態に係るヘッドレスト10では、ヘッドレスト保持部12に、ヘッドレストパッド16の両側面を覆い、ヘッドレストパッド16よりもシート前方側に突出したサイドサポート部12A及び12Bが備えられている。これにより、ヘッドレスト保持部12に対するヘッドレストパッド16のシート幅方向のずれをサイドサポート部12A及び12Bによって防止することができ、かつ走行時並びに非走行時の乗員40の頭部の両側を支持することができる。
【0044】
そして、本実施例に係る車両用シート30では、上記作用効果が得られるヘッドレスト10がシートバック上方側に取り付けている。これにより、上記ヘッドレスト10によって得られる作用効果を有する車両用シート30を実現することができる。
【0045】
[変形例]
上記実施の形態に係るヘッドレスト10及び車両用シート30は、車両前後方向に3列以上配置された中間のヘッドレスト及びそれを装着した車両用シートに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 ヘッドレスト
12 ヘッドレスト保持部
12A、12B サイドサポート部
12C バックサポート部
12D 第3造形面
14 ヘッドレストステー
16 ヘッドレストパッド
16A 第1造形面
16B 第2造形面
18A、18B、20 固定部材
22 ベルト
30 車両用シート
40 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の頭部を支持するヘッドレストパッドと、
当該ヘッドレストパッドをシート後方側から支持するとともに、前記ヘッドレストパッドをシートバック前面のシート下方側に移動可能とするヘッドレスト保持部と、
前記ヘッドレストパッドを移動した後の位置にこのヘッドレストパッドを前記ヘッドレスト保持部に固定する固定部材と、
を備えたヘッドレスト。
【請求項2】
前記ヘッドレスト保持部に一端部が接続され、前記ヘッドレストパッドに他端部が接続されて前記ヘッドレストパッドの移動範囲を規制するベルトを備えた請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記ヘッドレストパッドの一面に乗員の頭部を支持する第1造形面を有し、前記ヘッドレストパッドの前記一面に対する他面に乗員の頸部を支持する第2造形面を有する請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記ヘッドレスト保持部は、前記ヘッドレストパッドのシート幅方向の両側面を覆うとともに、前記ヘッドレストパッドよりもシート前方側に突出したサイドサポート部を備えた請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の前記ヘッドレストが、シートバック上方側に取付けられた車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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