説明

ヘテロシクロアルキル−ベンジル置換ヒドロキシエチルアミン

本発明は、本明細書で定義されている式I(I)の化合物を対象とする。式Iの化合物は、例えば、β−セクレターゼを阻害することにより治療することができる障害または状態を治療するために使用することができる。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載の式Iの化合物、このような化合物を含有する医薬組成物ならびにこのような化合物を使用して、アルツハイマー病を含む本明細書に記載の障害または状態を治療する方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、主に加齢に伴う脳の進行性変性疾患である。ADは、記憶、認識、推理、判断および方向の喪失により特徴づけられる。疾患が進行するにつれて、運動、感覚および言語能力も影響を受け、複数認識機能の完全な障害が生ずるまでになる。これらの認識喪失は徐々に生じるが、典型的には、4から12年の間に重度の障害および最終的な死をもたらす。
【0003】
アルツハイマー病は、脳における2つの主な病理学的観察:神経原線維変化と、AベータペプチドまたはAベータとして知られていて、本明細書ではAベータペプチドまたはAβと称されるペプチド断片の凝集体から主になるベータアミロイド(または神経炎)プラークにより特徴づけられる。ADを伴う個人は、脳(ベータ−アミロイドプラーク)および脳血管(ベータアミロイド血管障害)、さらに神経原線維変化に特徴的なAベータ堆積を示す。神経原線維変化は、アルツハイマー病においてのみ生じるのではなく、他の認知症誘発障害においても生じる。解剖すると、多数のこれらの病変が一般には、記憶および認識に関して重要なヒトの脳領域で見られる。より限られた解剖学的分布においては、少数のこれらの病変が、臨床的ADを示さない高齢のヒトの大部分の脳で見られる。アミロイド原性プラークおよび血管アミロイド障害も、三染色体性(ダウン症)、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血および他の神経変性障害を伴う個人の脳を特徴づけている。ベータ−アミロイドは、ADの発生において原因となる前駆体または因子であると考えられる。認識活性を担う脳の領域におけるベータ−アミロイドの堆積は、ADの発生において重要な因子であると考えられる。ベータアミロイドプラークは、Aベータ(時にはベータAとも称される)から主になり、これは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解に由来し、39〜42個のアミノ酸を含む。セクレターゼと称される複数のプロテアーゼが、APPのプロセッシングに関与している。
【0004】
ベータ−セクレターゼによるAベータのN末端ならびに1種または複数のガンマセクレターゼによるC末端でのAPPの分解が、ベータ−アミロイド原性経路を構成しており、すなわち、この経路によって、Aベータは形成される。アルファ−セクレターゼによるAPPの分解は、ベータ−アミロイドプラーク形成をもたらさない、分泌形態のAPPIであるアルファ−sAPPを生成する。この別の経路は、Aベータの形成を妨げる。APPのタンパク質分解プロセッシング断片の記載は、例えば米国特許第5441870号明細書、同第255721130号明細書および同第5942400号明細書に見られる。
【0005】
アスパルチルプロテアーゼは、ベータ−セクレターゼ分解部位でのAPPのプロセッシングを担う酵素として同定されている。ベータ−セクレターゼ酵素は、BACE、Aspおよびメマプシンを含む様々な名称を使用して開示されている。例えば、Sinhaら、1999年、Nature402:537〜554ページ(p501)およびPCT国際出願公開第00/17369号パンフレット参照。
【0006】
いくつかの系列の証拠により、Aベータの進行性脳堆積が、ADの病因において根本的な役割を果たし、認識症状の数年または数十年前に生じうる。例えば、Selkoe、1991年、Neuron6:487参照。培養で成長させた神経細胞からのAベータの放出ならびに正常な個人およびAD患者の脳脊髄液(CSF)中のAベータの存在が実証されている。例えば、Seubertおよび他5名、1992年、Nature 359:325〜327ページ参照。Aベータは、ベータ−セクレターゼによるAPPプロセッシングの結果として蓄積するので、この酵素の活性を阻害することが、ADの治療には望ましいことが提案されている。
【0007】
ベータ−セクレターゼ分解部位でのAPPのインビボプロセッシングは、Aベータ産生における律速段階であると考えられるので、ADを治療するための治療ターゲットである。例えば、Sabbagh,M.ら、1997年、Alz.Dis.Rev.3、1 19ページ参照。BACE1ノックアウトマウスは、Aベータを産生することができず、正常な表現型を示す。APPを過剰発現する遺伝子導入マウスと交配させると、子孫は、対照動物と比較して低量のAベータを脳抽出物中に示す(Luoら、2001年、Nature Neuroscience 4:231〜232ページ)。さらにこの証拠により、ベータ−セクレターゼ活性の阻害および脳内でのAベータの低減はADおよび他のベータアミロイド障害の治療法をもたらすという提案が支持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、アルツハイマー病の進行を停止、予防または逆転するために有効な治療は存在しない。したがって、まず第1に、アルツハイマー病の進行を遅延させおよび/またはこれを予防しうる医薬品が、緊急に必要とされている。例えば、ベータ−セクレターゼの有効な阻害剤であるか、APPのベータ−セクレターゼを介した分解を阻害するか、Aベータ産生の有効な阻害剤であるか、および/またはアミロイドベータ堆積またはプラークを低減するために有効である化合物が、ADなどのアミロイドベータ堆積またはプラークを特徴とする疾患を治療および予防するために必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を対象としている:
【0010】
【化1】

[式中、
Wは、(i)H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cアルキルからそれぞれ独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいC〜C10アリールならびに(ii)H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cアルキルからそれぞれ独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいC〜C10ヘテロアリールからなる群から選択され、
は、例えば−CH、CHFまたは−CFなどの3個までのフッ素原子で置換されていてもよいC〜Cアルキルであり、
およびRはそれぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、5員から10員のヘテロアリールおよびC〜C14アリールからなる群から選択され、
は、H、SO−C〜Cアルキル、C(=O)−C〜Cアルキル、C(=O)CHO−C〜Cアルキル、C(=O)NH、C(=O)NHC〜Cアルキル、C(=O)N(C〜Cアルキル)、C(=O)O−C〜Cアルキル、C〜C10ヘテロアリールおよびC〜C10アリールからなる群から選択され、
nは、1〜4であり、
mは、1〜4である]。
【0011】
さらに本発明は、
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩ならびに薬学的に許容できる担体を含む、例えばβ−セクレターゼを阻害することにより治療されうる障害または状態を治療するための医薬組成物;
治療を必要とする哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む、β−セクレターゼを阻害することにより治療されうる障害または状態を治療する方法;
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩ならびに薬学的に許容できる担体を含む、例えば、アルツハイマー病(AD)、軽度認識障害、ダウン症、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管障害、血管性および変性性混合型認知症、パーキンソン病に伴う認知症、進行性核上麻痺に伴う認知症、皮質基底変性に伴う認知症、多発梗塞性認知症、アルコール性認知症もしくは他の薬物関連認知症、頭蓋内腫瘍もしくは脳損傷に伴う認知症、ハンチントン病に伴う認知症またはAIDS関連認知症、広汎性レビ体型アルツハイマー病、パーキンソン症候群を伴う前頭側頭骨認知症(FTDP)、封入体筋細胞腫、核上白内障、加齢性黄斑変性(AMD)、ハンチントン病、パーキンソン病、不穏下肢症候群、脳卒中、頭外傷、脊髄損傷、神経系の脱随疾患、末梢神経障害、ピン、脳アミロイド血管障害、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ドーパミンアゴニスト治療に伴う運動障害、精神発達遅滞、読書障害、数学障害もしくは筆記表現の障害を含む学習障害、加齢性認識低下、健忘性障害、神経弛緩薬誘発パーキンソン症候群、遅発性運動障害、トゥーレット症候群、多発性硬化症ならびに急性および慢性神経変性障害からなる群から選択される障害または状態を治療するための医薬組成物;
治療を必要とする哺乳動物に、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む、前記で列挙された障害または状態からなる群から選択される障害または状態の治療法;
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩ならびに薬学的に許容できる担体を含む、軽度認識障害(MCI)からADへと進行することが予測される患者においてADの発症を予防するまたは遅延させる、ADの発症を予防するまたは遅延させるか、単発性および再発性大葉出血などの脳アミロイド血管障害の起こりうる結果を予防するための医薬組成物;ならびに
治療を必要とする患者に式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む、MCIからADへと進行することが予測される患者においてADの発症を予防するまたは遅延させる、ADの発症を予防するまたは遅延させるか、単発性および再発性大葉出血などの脳アミロイド血管障害の起こりうる結果を予防する方法
を対象とする。
【0012】
さらに本発明は、医薬品を製造するための式Iの化合物または塩の使用を提供する。
【0013】
さらに本発明は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)タンパク質のベータ−セクレターゼを介した分解を阻害する化合物、医薬組成物、キットおよび方法を提供し、ここで、この方法は、治療を必要とする患者に式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む。詳細には、本発明の化合物、組成物および方法は、A−ベータの産生を阻害するために、A−ベータの病理形態を伴うヒトまたは動物の疾患または状態を治療または予防するために有効である。
【0014】
本発明の化合物は、ベータ−セクレターゼ阻害活性を有する。本発明の化合物の阻害活性は、例えば本明細書に記載されているか、当分野で知られている1種または複数のアッセイを使用することにより容易に証明される。
【0015】
さらに本発明は、本発明の化合物を調製する方法およびその方法で使用される中間体を提供する。
【0016】
さらに本発明は、1個または複数の容器を含み、その各容器が式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩の1個または複数の単位用量を含む容器キットを包含する。
【0017】
本発明の医薬組成物および方法は、本明細書に記載の任意の障害または状態の再発を予防するために使用することもできる。このような再発の予防は、予防を必要とする哺乳動物に式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することにより達成され、治療方法として企図される。
【0018】
本発明の化合物は、光学中心を有し、したがって、様々な鏡像異性体配置で生じうる。前記の式Iには、構造式Iに示されている化合物の鏡像異性体、ジアステレオ異性体および他の立体異性体すべて、さらにそれらのラセミ混合物および他の混合物が含まれる。個々の異性体は、最終生成物またはその中間体を調製する際の光学分割、光学的選択反応またはクロマトグラフィーによる分離などの知られている方法により得ることができる。
【0019】
PETまたはSPECTにより検出可能であるように同位体標識されている式Iの化合物を含む、式Iの同位体標識化合物またはその薬学的に許容できる塩も、本発明の範囲内である。
【0020】
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩のシスおよびトランス異性体も、本発明の範囲内である。
【0021】
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩の互変異性体も、本発明の範囲内である。
【0022】
第1の基または置換基が2個またはそれ以上の基または置換基で置換されている場合、本発明は、限定することなく、このような基または置換基の組合せが存在する実施形態を含む。
【0023】
第1の基または置換基が2個またはそれ以上の基または置換基で置換されている場合、このような置換基の数は、置換のために利用することができる第1の基または置換基における位置の数を上回ることはできないと理解される。
【0024】
「アルキル」との用語は、直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基を指している。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが含まれる。「アルケニル」との用語は、ビニル、アリル、ブテニルなどの1個または複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を示すために使用されている。「アルキニル」との用語は、エチニル、プロパルギル、1−ブチニル、2−ブチニルなどの1個または複数の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を示すために使用されている。
【0025】
「アリール」とは、芳香族環上の炭素からの水素の除去により、芳香族炭化水素に由来する有機基を意味する。「芳香族炭化水素」とは、1個または複数の環を有し、そのうちの少なくとも1個が芳香族である炭化水素(例えばフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル)を表す。本発明の好ましいアリール基は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、フルオレニル、テトラリニルまたは6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[a]シクロヘプテニルである。本明細書に記載のアリール基は、非置換であるか、様々な置換基で1、2、3または4個の置換可能な位置で置換されていてよい。このような置換基には、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルまたはジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルが含まれる。
【0026】
「アルコキシ」および「アリールオキシ」との用語はそれぞれ、「O−アルキル」および「O−アリール」を示している。
【0027】
「シクロアルキル」との用語は、環炭素からの水素の除去により、飽和炭素環から形成される基を示している。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが含まれる。本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」との用語は、アダマンタニル、デカヒドロナフタリニル、ノルボルナニルなどの、少なくとも2個の縮合環を含む飽和炭素環から形成される基も示すこととする。
【0028】
「ハロ」との用語は、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを表す。
【0029】
「ヘテロアリール」との用語は、芳香族環上の炭素からの水素の除去により、複素芳香族炭化水素に由来する有機基を示しており、ここで、「複素芳香族炭化水素」は、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択される1個または複数の環ヘテロ原子を含む芳香族炭化水素である。ヘテロアリール基が1個よりも多いヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は、同じでも異なっていてもよい。好ましいヘテロアリール基には、酸素、窒素およびイオウから独立に選択される1から4個のヘテロ原子を含む5員および6員の環が含まれる。好ましい5員および6員のヘテロアリール基の例には、ベンゾ[b]チエニル、クロメニル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、オキサジニル、オキサゾリル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キノリジニル、キノリル、キノキサリニル、チアゾリル、チエニル、トリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキサンテニルが含まれる。本発明の好ましいヘテロアリール基にはさらに、インドリニル、キナゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、フラニル、チエニル、チアジアゾリル、オキサゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、ナフチリジニル、シノリニル、カルバゾリル、ベータ−カルボリニル、イソクロマニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ピリドピリジニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、ベンゾジオキソリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンズイソオキサジニル、ベンズイソオキサジニル、ベンゾオキサジニル、ジヒドロベンズイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロモニル、クロマノニル、ピリジニル−N−オキシド、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリノニル、ピロリルN−オキシド、ピリミジニルN−オキシド、ピリダジニルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド、キノリニルN−オキシド、インドリルN−オキシド、インドリニルN−オキシド、イソキノリルN−オキシド、キナゾリニルN−オキシド、キノキサリニルN−オキシド、フタラジニルN−オキシド、イミダゾリルN−オキシド、イソオキサゾリルN−オキシド、オキサゾリルN−オキシド、チアゾリルN−オキシド、インドリジニルN−オキシド、インダゾリルN−オキシド、ベンゾチアゾリルN−オキシド、ベンズイミダゾリルN−オキシド、ピロリルN−オキシド、オキサジアゾリルN−オキシド、チアジアゾリルN−オキシド、トリアゾリルN−オキシド、テトラゾリルN−オキシド、ベンゾチオピラニルS−オキシド、ベンゾチオピラニルS,S−ジオキシド、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロベータカルボリンが含まれる。本明細書に記載のヘテロアリール基は、非置換であるか、前記のように、様々な基で、1個または複数の置換可能な位置で置換されている。例えば、このようなヘテロアリール基は、例えばC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルまたはジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルで置換されていてもよい。
【0030】
「ヘテロシクロアルキル」との用語は、「シクロアルキル」が前記のように定義され、その環炭素原子のうちの1個または複数が、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択されるヘテロ原子で置換されているシクロアルキル系を示している。ヘテロシクロアルキル基が1個よりも多いヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は同じでも異なっていてもよい。このようなヘテロシクロアルキル基の例には、アザビシクロヘプタニル、アゼチジニル、ベンザゼピニル、1,3−ジヒドロイソインドリル、インドリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル、ピロリジニルおよびテトラヒドロ−2H−1,4−チアジニルが含まれる。
【0031】
環式基は、1種を上回る方法で他の基に結合することができる。結合配置が特に記載されていない場合、可能な配置すべてが意図されている。例えば、「ピリジル」との用語には、2−、3−または4−ピリジルが含まれ、「チエニル」との用語には、2−または3−チエニルが含まれる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「哺乳動物」は、哺乳類の任意のメンバーである。例として、治療または予防を必要とする哺乳動物は、ヒトであってよい。他の例として、治療または予防を必要とする哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であってよい。
【0033】
APP、アミロイド前駆体タンパク質は、例えば米国特許第5766846号明細書に開示されているようなAPP変異体、突然変異体およびアイソホームを含む任意のAPPポリペプチドと定義される。
【0034】
Aベータ、アミロイドベータペプチドは、39、40、41、42および43アミノ酸のペプチドを含み、ベータ−セクレターゼ分解部位からアミノ酸39、40、41、42または43まで延びている、APPのベータ−セクレターゼを介した分解から生じる任意のペプチドと定義される。
【0035】
ベータ−セクレターゼ(BACE1、Asp2、メマプシン2)は、Aベータのアミノ末端でAPPの分解を媒介するアスパルチルプロテアーゼである。ヒトベータ−セクレターゼは、例えば国際公開第00/17369号パンフレットに記載されている。
【0036】
好ましくは、本発明の組成物および方法は、治療有効量の式Iの化合物を使用する。
【0037】
そのままでは塩基性である式Iの化合物は、様々な無機酸および有機酸と共に、幅広い種々の塩を形成することができる。塩基化合物を、実質的に等量の選択された無機酸または有機酸で、水性溶媒媒体中またはメタノールもしくはエタノールなどの適切な有機溶媒中で処理することにより、酸付加塩は容易に調製される。溶媒を慎重に蒸発させると、所望の固体塩が得られる。
【0038】
本発明の医薬組成物を製剤する際に使用されるそのままでは塩基性である活性化合物の薬学的に許容できる酸塩を調製するために使用される酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、薬学的に許容できるアニオンを含む塩を形成するものである。塩の非限定的例には、酢酸塩、安息香酸塩、ベータ−ヒドロキシ酪酸塩、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、ブチン−1,4−ジオン酸塩、カプロン酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、二水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキシン−1,6−ジオン酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタスルホン酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、シュウ酸塩、フェニル酪酸塩、フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、フェニル酢酸塩、プロパンスルホン酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、キシレンスルホン酸塩、酸性リン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、サッカリン酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、パモ酸塩[すなわち1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)]ならびに次の酸:CH−(CH−COOH(ここでnは、0から4である)およびHOOC−(CH)n−COOH(ここでnは前記と同様に定義される)の塩が含まれる。
【0039】
実施形態の例では、式Iの化合物は、式Iaの化合物である:
【0040】
【化2】

[式中、
、R、Rはそれぞれ独立に、H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cからなる群から選択される]。
【0041】
本発明の実施形態の例には、
式中、
(A)Rがフルオロであり、
(B)Rがフルオロであり、
(C)RがHであり、
(D)RがCHであり、
(E)Rがネオペンチルまたはt−ブチルであり、
(F)RがHであり、
(G)Rが、CHS(O)(メチルスルホニル)、CHCOおよびCHOCOからなる群から選択され、
(H)mが1または2であり、
および/または
(I)nが1または2である
式Iaの化合物が含まれる。
【0042】
さらに本発明の実施形態の例には、前記実施形態(A)〜(I)の任意の組合せも含まれる。例えば、本発明の一実施形態例では、Rがフルオロであり、Rがフルオロであり、RがHであり、RがCHであり、Rがネオペンチルまたはt−ブチルであり、RがHであり、Rが、CHS(O)(メチルスルホニル)、CHCOおよびCHOCOからなる群から選択され、mが1または2であり、nが1または2である。
【0043】
さらに本発明の実施形態の例には、次の式Iaaの化合物の光学異性体およびその鏡像異性体が含まれる:
【0044】
【化3】

【0045】
式Iの化合物は、式IIの化合物:
【0046】
【化4】

[式中、Eは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはハロで置換されていてもよい(C〜C12アルキル)もしくは(C〜C10アリール)であり、R、R、R、Rは、前記と同様に定義される]と、式IIIの化合物:
【0047】
【化5】

[式中、m、n、R、RおよびRは、前記と同様に定義される]とを反応させるステップと、
(ii)(i)の生成物を、ホウ素−水素結合を含む還元剤で処理するステップとを含む方法により調製することができる。
【0048】
還元剤は例えば、ホウ水素化物であってよい。
【0049】
この方法はさらに、
(iii)水、C〜Cアルキルアルコールまたは水とC〜Cアルキルアルコールとの混合物中で、(ii)の生成物を酸で処理するステップを含んでもよい。
【0050】
一実施形態での方法を、式Iaaの化合物例の調製に関して下記で詳述するが、これは、(i)式IIaaの化合物:
【0051】
【化6】

[式中、Eは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはハロで置換されていてもよい(C〜C12アルキル)もしくは(C〜C10アリール)であり、R、R、R、Rは、前記と同様に定義される]と、式IIIの化合物:
【0052】
【化7】

[式中、m、n、R、RおよびRは、前記と同様に定義される]とを反応させるステップと、
(ii)(i)の生成物を、ホウ素−水素結合を含む還元剤で処理するステップとを含む方法により調製することができる。
【0053】
還元剤は例えば、ホウ水素化物であってよい。
【0054】
この方法はさらに、
(iii)水、C〜Cアルキルアルコールまたは水とC〜Cアルキルアルコールとの混合物中で、(ii)の生成物を酸で処理するステップを含んでもよい。
【0055】
方法の他の実施形態の例では、下記に示されている式IIaの化合物の任意の光学異性体または式IIaの化合物の異性体の任意の混合物もしくはラセミ混合物を使用することができる:
【0056】
【化8】

【0057】
例えば、本発明の化合物は、本発明の化合物の亜属例に関するスキームIの実施形態に示されているように調製することもできる:
【0058】
【化9】

【0059】
スキームIでは、BOC(t−ブチルオキシカルボニル)に加えて、例えば(C〜C12アルキル)−O−C(O)基または(C〜C10アリール)−O−C(O)基を含む当業者に知られている基などの任意の適切な保護基Pを使用することができる。保護基がt−ブトキシカルボニル(BOC)および/またはベンジルオキシカルボニル(CBZ)であることが好ましく、保護基がt−ブトキシカルボニルであることがさらに好ましい。当業者であれば、t−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニル保護基を導入する適切な方法が分かるであろうし、補足的に、T.W.GreenおよびP.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Chemistry」、John Wiley and Sons、1991をガイダンスのために参照することもできる。
【0060】
同様に、PBM(p−メトキシフェニル)に加えて、ハロ、C〜CアルコキシまたはC〜Cアルキルで置換されていてもよい任意のC〜C10アリール基を使用することもできるし、任意の(C〜C12アルキル)−基を使用することもできる。
【0061】
方法の一実施形態では、(i)および(ii)をワンポットで行う。他の実施形態では、式VIの化合物:
【0062】
【化10】

を、(i)の後、(ii)の前に単離することもできる。この実施形態では、次いで、式VIの化合物を、別の反応で、ホウ素−水素結合を含む還元剤で処理する。還元剤は例えば、ホウ水素化物であってよい。
【0063】
さらに本発明の化合物を、式Iaの化合物例の調製に関して下記で詳述する方法により調製することができ、これは、(i)式IVの化合物:
【0064】
【化11】

[式中、Pは、C〜C12アルキル−COまたはC〜C12アルキル−O−COである]と、式Vの化合物:
【0065】
【化12】

[式中、R、R、R、nおよびmは、前記と同様に定義される]とを反応させるステップを含む方法により調製することができる。
【0066】
方法はさらに、
(ii)水、C〜Cアルキルアルコールまたは水とC〜Cアルキルアルコールとの混合物中で、(i)の生成物を、酸で処理するステップと、
(iii)(i)の生成物をRCO−X(ここでXはハロである)で処理するステップとを含んでもよい。
【0067】
例えば、本発明の化合物は、本発明の化合物の亜属例に関するスキームIIの実施形態に示されているように調製することができる:
【0068】
【化13】

【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の例示的化合物には、
N−[3−{[(3−t−ブチル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−アゼチジン−3−イル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−{[[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−(1−メタンスルホニル−アゼチジン−3−イル)−メチル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−アセトアミド;
N−[3−{[(1−アセチル−アゼチジン−3−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−アゼチジン−3−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アゼチジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アゼチジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピロリジン−1−スルホン酸;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピロリジン−1−スルホン酸;
N−[3−{[(1−アセチル−ピロリジン−3−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−ピロリジン−3−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピロリジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピロリジン−1−カルボン酸メチルエステル;
4−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピペリジン−1−スルホン酸;
4−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピペリジン−1−スルホン酸;
N−[3−{[(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
4−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸メチルエステル;
4−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸メチルエステル
が含まれる。
【0070】
本発明の医薬組成物は、式Iの化合物および薬学的に許容できる担体を含有する組成物であってよい。慣用の方法で、1種または複数の薬学的に許容できる担体を使用して、医薬組成物を製剤することができる。組成物を、経口、頬、鼻腔内、非経口(例えば静脈内、筋肉内、腹腔内もしくは皮下で、またはインプラントを介して)、鼻、膣、舌下、直腸または局所投与のために、または吸入または注入による投与に適した形態で製剤することができる。本発明の組成物では、式Iの化合物は好ましくは、前記状態を治療するために有効な量で存在する。同様に、本明細書に記載されている状態を治療する方法では、投与される式Iの化合物の量は好ましくは、状態を治療する際に有効な量である。
【0071】
本発明には、本明細書に記載の疾患または状態を有する患者を治療するか、それらを患者が得ることを予防する方法が含まれる。
【0072】
一実施形態では、本発明の治療方法を、アルツハイマー病を治療するために使用する。
【0073】
一実施形態では、この治療方法により、アルツハイマー病の発症を予防するまたは遅延させることができる。
【0074】
一実施形態では、この治療方法を、疾患が軽度認識障害である場合に使用することができる。
【0075】
一実施形態では、この治療方法を、疾患がダウン症である場合に使用することができる。
【0076】
一実施形態では、この治療方法を、疾患がオランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血である場合に使用することができる。
【0077】
一実施形態では、この治療方法を、疾患が脳アミロイド血管障害である場合に使用することができる。
【0078】
一実施形態では、この治療方法を、疾患が変性認知症または認知症である場合に使用することができる。
【0079】
一実施形態では、この治療方法を、疾患が広汎性レビ体型アルツハイマー病である場合に使用することができる。
【0080】
一実施形態では、この治療方法により、既存の疾患を治療することができる。
【0081】
一実施形態では、この治療方法により、疾患が発生することを予防することができる。
【0082】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与では約0.1mg/日から約1000mg/日;非経口、舌下、鼻腔内、クモ膜下投与では約0.5から約100mg/日;デポー投与およびインプラントでは約0.5mg/日から約50mg/日;局所投与では約0.5mg/日から約200mg/日;直腸投与では約0.5mgから約500mgの治療有効量を使用しうる。
【0083】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与では約1mg/日から約100mg/日;および非経口投与では1日約5から約50mgの治療有効量を使用しうる。
【0084】
一実施形態では、この治療方法は、経口投与で約5mg/日から約50mg/日の治療有効量を使用しうる。
【0085】
さらに本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を含む。
【0086】
本発明は、本明細書に記載の疾患または状態を有する患者を治療するか、それらを患者が得ることを予防する際に使用するための医薬品を製造するための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0087】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患がアルツハイマー病である場合に使用することができる。
【0088】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用により、アルツハイマー病の発症を予防するまたは遅延させることができる。
【0089】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患が軽度認識障害である場合に使用することができる。
【0090】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患がダウン症である場合に使用することができる。
【0091】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患がオランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血である場合に使用することができる。
【0092】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患が脳アミロイド血管障害である場合に使用することができる。
【0093】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患が変性認知症または認知症である場合に使用することができる。
【0094】
一実施形態では、式(I)の化合物のこの使用は、疾患が広汎性レビ体型アルツハイマー病である場合に使用することができる。
【0095】
一実施形態では、化合物のこの使用は、次の酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、CH−(CH−COOH(ここでnは0から4である)、HOOC−(CH)nCOOH(ここでnは前記と同様に定義される)、HOOC−CH=CH−COOHおよびフェニル−COOH、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、d−ショウノウスルホン酸、炭酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストル酸、エシル、エシル酸、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘクサミン酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸(hydrabamic)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフト酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、粘液酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p−ニトロメタンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、フタル酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸およびトルエンスルホン酸の塩からなる群から選択される薬学的に許容できる塩を使用する。他の許容可能な塩に関しては、Int.J.Pharm.、33、201〜217ページ(1986年)およびJ.Pharm.Sci.、66(1)、1(1977年)参照。
【0096】
これらの方法はそれぞれ、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩の投与を含む。
【0097】
さらに本発明は、ベータ−セクレターゼ活性を阻害する方法を含み、これは、前記ベータ−セクレターゼを有効阻害量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩にさらすことを含む。
【0098】
一実施形態では、この方法は、50マイクロモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0099】
一実施形態では、この方法は、10マイクロモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0100】
一実施形態では、この方法は、1マイクロモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0101】
一実施形態では、この方法は、100ナノモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0102】
一実施形態では、この方法は、10ナノモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0103】
一実施形態では、この方法は、前記ベータ−セクレターゼを前記化合物にインビトロでさらすことを含む。
【0104】
一実施形態では、この方法は、前記ベータ−セクレターゼを前記化合物に細胞中でさらすことを含む。
【0105】
一実施形態では、この方法は、前記ベータ−セクレターゼを前記化合物に、動物内の細胞中でさらすことを含む。
【0106】
一実施形態では、この方法は、前記ベータ−セクレターゼを前記化合物にヒト内でさらすことを含む。
【0107】
さらに本発明は、ベータ−セクレターゼ活性を阻害するための方法、反応混合物中、APP−695アミノ酸アイソタイプでナンバリングされるMet596とAsp597との間の位置での、またはそのアイソタイプまたは突然変異体の対応する位置でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)の分解を阻害するための方法、細胞中でのアミロイドベータペプチド(Aベータ)の産生を阻害するための方法、動物でのベータ−アミロイドプラークの生成を阻害するための方法および脳内でのベータ−アミロイド堆積を特徴とする疾患を治療または予防するための方法を含み、これは、前記反応混合物を有効阻害量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩にさらすことを含む。
【0108】
一実施形態では、この方法は、APP−751アイソタイプでナンバリングされるMet652とAsp653との間;APP−770アイソタイプでナンバリングされるMet671とAsp672との間;APP−695スウェーデン突然変異のLeu596とAsp597との間;APP−751スウェーデン突然変異のLeu652とAsp653との間;またはAPP−770スウェーデン突然変異のLeu671とAsp672との間の分解部位を使用する。
【0109】
一実施形態では、この方法は、前記反応混合物をインビトロでさらす。
【0110】
一実施形態では、この方法は、前記反応混合物を細胞中でさらす。
【0111】
一実施形態では、この方法は、前記反応混合物を動物細胞中でさらす。
【0112】
一実施形態では、この方法は、前記反応混合物をヒト細胞中でさらす。
【0113】
さらに本発明は、細胞中でのアミロイドベータペプチド(Aベータ)の産生を阻害する方法を含み、これは、前記細胞に有効阻害量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む。
【0114】
一実施形態では、この方法は、動物に投与することを含む。
【0115】
一実施形態では、この方法は、ヒトに投与することを含む。
【0116】
さらに本発明は、動物中でのベータ−アミロイドプラークの産生を阻害する方法を含み、これは、前記動物に有効阻害量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む。
【0117】
一実施形態では、この方法は、ヒトに投与することを含む。
【0118】
さらに本発明は、脳内でのベータ−アミロイド堆積を特徴とする疾患を治療または予防する方法を含み、これは、患者に、有効治療量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む。
【0119】
一実施形態では、この方法は、50マイクロモル未満の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0120】
一実施形態では、この方法は、10マイクロモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0121】
一実施形態では、この方法は、1マイクロモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0122】
一実施形態では、この方法は、10ナノモル以下の濃度で酵素活性の50%を阻害する化合物を使用する。
【0123】
一実施形態では、この方法は、化合物を約0.1から約1000mg/日の範囲の治療量で使用する。
【0124】
一実施形態では、この方法は、化合物を約15から約1500mg/日の範囲の治療量で使用する。
【0125】
一実施形態では、この方法は、化合物を約1から約100mg/日の範囲の治療量で使用する。
【0126】
一実施形態では、この方法は、化合物を約5から約50mg/日の範囲の治療量で使用する。
【0127】
さらに本発明は、ベータ−セクレターゼ複合体を製造する方法を含み、これは、ベータ−セクレターゼを式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩に、反応混合物中、前記複合体を製造するために適した条件下でさらすことを含む。
【0128】
一実施形態では、この方法は、インビトロでさらすことを使用する。
【0129】
一実施形態では、この方法は、細胞である反応混合物を使用する。
【0130】
さらに本発明は、組み立てることができるコンポーネント部品を含むコンポーネントキットを含み、ここで、少なくとも1個のコンポーネント部品が、容器に封入されている式Iの化合物を含んでいる。
【0131】
一実施形態では、このコンポーネントキットは、凍結乾燥した化合物を含み、少なくとも1個の他のコンポーネント部品が希釈剤を含んでいる。
【0132】
さらに本発明は、1個または複数の容器を含み、その各容器が、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩の1個または複数の単位用量を含む容器キットを包含する。
【0133】
一実施形態では、この容器キットは、経口送達に適した各容器を含み、錠剤、ゲルまたはカプセルを含んでいる。
【0134】
一実施形態では、この容器キットは、非経口送達に適した各容器を含み、デポー製品、シリンジ、アンプルまたはバイアルを含んでいる。
【0135】
一実施形態では、この容器キットは、局所送達に適した各容器を含み、パッチ、メディパッド、軟膏またはクリームを含んでいる。
【0136】
さらに本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩;ならびに抗酸化剤、抗炎症剤、ガンマセクレターゼ阻害剤、向精神剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、スタチン、Aベータおよび抗Aベータ抗体からなる群から選択される1種または複数の治療剤を含む薬剤キットを包含する。
【0137】
さらに本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩ならびに不活性希釈剤または可食担体を含む組成物を含む。
【0138】
一実施形態では、この組成物は、オイルである担体を含む。
【0139】
さらに本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩ならびに結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤または流動促進剤を含む組成物を含む。
【0140】
さらに本発明は、クリーム、軟膏またはパッチに分配されている式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む組成物を含む。
【0141】
本発明は、アルツハイマー病を治療および予防する際に有用な式(I)および本明細書に含まれる他の式の化合物を提供する。スキームIに示されている方法に加えて、本発明の化合物を調製するために適用することができる当分野における調製方法の例は、J.Org.Chem.1998年、63、4898〜4906;J.Org.Chem.1997年、62、9348〜9353ページ;J.Org.Chem.1996、61、5528〜5531ページ;J.Med.Chem.1993年、36、320〜330ページ;J.Am.Chem.Soc.1999年、121、1145〜1155ページおよびそれらに挙げられている参照文献で見られる。さらに、米国特許第6150530号明細書、同第5892052号明細書、同第5696270号明細書および同第5362912号明細書ならびにそれらに挙げられている参照文献を参照のこと。
【0142】
本発明の化合物は、幾何異性体または光学異性体を互変異性体として含みうる。したがって本発明は、すべての互変異性体ならびにEおよびZ幾何異性体などの純粋な幾何異性体をその混合物として含む。さらに、本発明は、純粋な鏡像異性体およびジアステレオ異性体を、ラセミ混合物を含むその混合物として含む。個々の幾何異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体は、これらに限られないが、キラルクロマトグラフィー;ジアステレオ異性体を調製し、ジアステレオ異性体を分離し、次いで、当分野でよく知られている方法を介してジアステレオ異性体を鏡像異性体に変換することを含む当業者に知られている方法により調製または単離することができる。
【0143】
示された立体化学を有する本発明の化合物が、他の鏡像異性体、ジアステレオ異性体、幾何異性体または互変異性体と共に、ラセミ混合物を含む混合物中に含まれていてもよい。好ましい態様では、本発明の化合物は典型的には、少なくとも50%のジアステレオ異性体および/または鏡像異性体過剰率でこれらの混合物中に存在する。好ましくは、本発明の化合物は、少なくとも80%のジアステレオ異性体および/または鏡像異性体過剰率でこれらの混合物中に存在する。さらに好ましくは、望ましい立体化学を伴う本発明の化合物は、少なくとも90%のジアステレオ異性体および/または鏡像異性体過剰率でこれらの混合物中に存在する。さらにいっそう好ましくは、望ましい立体化学を伴う本発明の化合物は、少なくとも99%のジアステレオ異性体および/または鏡像異性体過剰率でこれらの混合物中に存在する。
【0144】
本発明の化合物は、本明細書に開示されている疾患または状態を治療または予防するために使用することができる。これらの疾患を治療または予防する場合、本発明の化合物を患者に最良であるように、個別に、または組み合わせて使用することができる。
【0145】
「予防する」との用語は、患者が投与の時点では疾患を有するとは診断されていないが、疾患を発生すると通常は予測されるか、疾患のリスクが高い場合に、疾患症状の発生を減速させるか、疾患の発症を遅延させるか、患者が疾患を発生することを完全に予防することを指している。さらに予防は、年齢、家族歴、遺伝または染色体異常により、および/または脳組織または液体中でのAPPまたはAPP分解産物の知られている遺伝的突然変異などの疾患に関する1つまたは複数の生物学的マーカーの存在により、疾患にかかりやすいと考えられる個人に、本発明の化合物を投与することを含む。
【0146】
前記疾患を治療または予防する際に、本発明の化合物を好ましくは、治療有効量で投与する。治療有効量は当業者に知られているように、使用される特定の化合物および投与経路に応じて変動する。
【0147】
前記診断状態のいずれかを示す患者を治療する場合、医師は、本発明の化合物を直ちに投与し、必要に応じて無期限に投与を継続することができる。アルツハイマー病を有するとは診断されていないが、アルツハイマー病のリスクを実質的に有すると考えられる患者を治療する際には、医師は好ましくは、加齢に伴う記憶または認識問題などの初期の前アルツハイマー症状を患者が初めて経験したときに、治療を開始すべきである。加えて、APOE4などの遺伝子マーカーまたはアルツハイマー病を予言する他の生物学的インジケータの検出を介して、アルツハイマーを発生するリスクを有すると決定することができる患者がいる。これらの状況では、患者が疾患の症状を示さなくても、本発明の化合物の投与を、症状が現れる前に開始し、治療を無期限に継続して、疾患の発症を予防するまたは遅延させることができる。
【0148】
本発明の化合物は、経口、非経口(IV、IM、デポーIM、SQおよびデポーSQ)、舌下、鼻腔内(吸入)、クモ膜下、局所または直腸で投与することができる。当業者に知られている投与形態が、本発明の化合物を送達するために適している。
【0149】
治療有効量の本発明の化合物を含む組成物を提供する。化合物を好ましくは、経口投与では錠剤、カプセルまたはエリキシルなどの適切な医薬製剤に、または非経口投与では無菌溶液または懸濁液に製剤する。典型的には、前記化合物を、当分野でよく知られている技術および手順を使用して、医薬組成物に製剤する。
【0150】
本発明の化合物または化合物の混合物もしくは生理学的に許容できる塩約1から500mgを、生理学的に許容できる媒体、担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香料などと共に、許容される医薬実施により要求される単位投与形態に配合する。これらの組成物または製剤中の活性物質の量は、記載の範囲の適切な用量が得られるような量である。組成物は好ましくは、単位投与形態で製剤されるが、各用量は、活性成分約2から約100mg、さらに好ましくは約10から約30mgを含有する。「単位投与形態」との用語は、ヒト対象および他の哺乳動物のための単位用量として適している物理的に別々の単位を指しており、各単位は、所望の治療効果を生じさせるために算出された予め決定された量の活性物質を適切な医薬賦形剤と共に含む。
【0151】
組成物を調製するために、本発明の1種または複数の化合物を、適切な薬学的に許容できる担体と混合する。化合物を混合または添加して生じる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであってよい。リポソーム懸濁液も、薬学的に許容できる担体として適している。これらは、当業者に知られている方法に従い調製することができる。生じる混合物の形態は、所定の投与方法ならびに選択された担体または媒体の化合物の溶解性を含むいくつかのファクターに左右される。有効な濃度は、治療される疾患、障害または状態のうちの少なくとも1つの症状を低減または緩和するために十分なものであり、経験的に決定することができる。
【0152】
本明細書で提供される化合物を投与するために適している薬学的担体または媒体には、特定の投与方法に適していると当業者に知られている任意の担体が含まれる。加えて、活性物質を、所望の作用を害さない他の活性物質と、または所望の作用を補足するか、他の作用を有する物質と混合することもできる。化合物を、組成物中で単独の薬学的に活性な成分として製剤することもできるし、他の活性成分と組み合わせることもできる。
【0153】
化合物が不十分な溶解性を示す場合には、可溶化のための方法を使用することができる。このような方法は知られていて、これらに限られないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの補助溶媒を使用すること、ツイーン(登録商標)などの界面活性剤を使用すること、および重炭酸ナトリウム水溶液に溶解することが含まれる。塩またはプロドラッグなどの化合物の誘導体も、有効な医薬組成物を製剤するために使用することができる。
【0154】
化合物の濃度は、化合物がそのために投与される障害の少なくとも1つの症状を低減または緩和する投与量を送達するために有効なものである。典型的には、組成物を、単回用量投与のために製剤する。
【0155】
本発明の化合物は、時間放出製剤またはコーティングなどの、体から迅速に排出されることを防ぐ担体を用いて調製することができる。このような担体には、これらに限られないが、マイクロカプセル封入送達系などの制御放出製剤が含まれる。活性化合物を、治療される患者に望ましくない副作用を伴わずに、治療的に有用な作用を発揮するために十分な量で、薬学的に許容できる担体に含ませる。治療有効濃度は、治療される障害に関して知られているインビトロおよびインビボモデル系において化合物を試験することにより、経験的に決定することができる。
【0156】
本発明の化合物および組成物は、複数または単一の用量容器に封入することができる。封入された化合物および組成物を、例えば使用のために組み立てることができるコンポーネント部品を含むキットの形態で提供することができる。例えば、凍結乾燥された形態の化合物阻害剤および適切な希釈剤を、使用前に組み合わせる別々のコンポーネントとして提供することができる。キットは、化合物阻害剤および同時投与のための第2の治療剤を含んでもよい。阻害剤および第2の治療剤を、別々のコンポーネント部品として提供することができる。キットは、複数の容器を含んでよく、各容器は、本発明の化合物の1個または複数の単位用量を保持する。容器を好ましくは、これらに限られないが、経口投与では錠剤、ゲル、カプセル、持続放出カプセルなど;非経口投与ではデポー製品、予備充填シリンジ、アンプル、バイアルなど;ならびに局所投与ではパッチ、メディパッド、クリームなどを含む望ましい投与方法に合わせる。
【0157】
薬物組成物中での活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、失活および排出率、投与スケジュールならびに投与量、さらに当業者に知られている他のファクターに左右される。
【0158】
活性成分を、1回で投与することもできるし、いくつかのより小さい用量に分けて、時間を空けて投与することもできる。治療の正確な用量および期間は、治療される疾患に関連しており、知られている試験プロトコルを使用して経験的に、またはインビボまたはインビトロ試験データからの外挿法により決定することができると理解されたい。濃度および用量値はさらに、緩和する状態の重度に伴って変動しうることを特記すべきである。さらに、任意の特定の対象では、特定の投与計画を、個々の必要性および組成物を投与するか、投与を監視する人の専門的判断に応じて時と共に調整すること、本明細書に記載の濃度範囲は、例に過ぎず、請求されている組成物の範囲または実施を限定する意図はないことを理解されたい。
【0159】
経口投与が望ましい場合、化合物を、胃の酸性環境から守る組成で提供すべきである。例えば、組成物を、胃においてはその完全性を保持し、腸において活性化合物を放出する腸溶コーティング中で製剤することができる。組成物をさらに、制酸薬または他のこのような成分と組み合わせて製剤することができる。
【0160】
経口組成物は通常、不活性希釈剤または可食担体を含み、錠剤に圧縮するか、ゼラチンカプセルに封入することができる。経口治療投与の目的では、1種または複数の活性化合物を、賦形剤と共に導入し、錠剤、カプセルまたはトローチ剤の形態で使用することができる。薬学的に相容性の結合剤および補助剤物質が、組成物の一部として含まれていてもよい。
【0161】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ剤などは、次の成分または同様の性質の化合物を含むことができる:これらに限られないが、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;微結晶性セルロース、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤;これらに限られないが、アルギン酸およびコーンスターチなどの崩壊剤;これらに限られないが、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;これらに限られないが、コロイド二酸化シリコンなどの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;ならびにペパーミント、サリチル酸メチルまたはフルーツ香料などの香料。
【0162】
投与単位形態がカプセルである場合、これは、前記タイプの物質に加えて、脂肪族油などの液体担体を含有してもよい。加えて、投与単位形態は、投与単位の物理的形態を変更する様々な他の物質、例えば、糖および他の腸溶媒のコーティングを含有してもよい。化合物はさらに、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェファ剤、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップ剤は、活性化合物に加えて、甘味剤および一定の防腐剤としてのスクロース、染料および着色剤ならびに香料を含有してもよい。
【0163】
活性物質を、所望の作用を害さない他の活性な物質と、または所望の作用を補足する物質と混合することもできる。
【0164】
非経口、真皮内、皮下または局所投与に使用される溶液または懸濁液は、次の成分のうちのいずれかを含んでもよい:注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、綿実油などの天然に生じる植物油またはオレイン酸エチルなどの合成脂肪媒体、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールおよびメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸および重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩などの緩衝剤;ならびに塩化ナトリウムおよびデキストロースなどの張度を調節するための薬剤。非経口製剤を、ガラス、プラスチックまたは他の適切な材料からなるアンプル、使い捨てシリンジまたは多人数用バイアルに封入することができる。緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤などを、必要に応じて導入することもできる。
【0165】
静脈内投与する場合、適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物などの増粘剤および可溶化剤を含む溶液が含まれる。組織をターゲットとするリポソームを含むリポソーム懸濁液も、薬学的に許容できる担体として適していることがある。これらは、例えば米国特許第4522811号明細書に記載の知られている方法に従い調製することができる。
【0166】
活性化合物は、化合物が体から迅速に排出されることを防ぐ時間放出製剤またはコーティングなどの担体と共に、調製することができる。このような担体には、これらに限られないが、インプラントおよびマイクロカプセル封入送達系などの制御放出製剤ならびにコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性生体親和性ポリマーが含まれる。このような製剤を調製する方法は、当業者に知られている。
【0167】
本発明の化合物は、経口で、非経口で(IV、IM、デポーIM、SQおよびデポーSQ)、舌下、鼻腔内(吸入)、クモ膜下、局所または直腸で投与することができる。当業者に知られている投与形態は、本発明の化合物を送達するために適している。
【0168】
経口で投与する場合、本発明の化合物は、当業者によく知られているような経口投与のための通常の投与形態で投与することができる。これらの投与形態には、錠剤およびカプセルの通常の固体単位投与形態、さらに溶液、懸濁液およびエリキシル剤などの液体投与形態が含まれる。固体投与形態を使用する場合、それらが、持続放出性を有し、本発明の化合物を1日1回または2回のみ投与すればよいことが好ましい。
【0169】
経口投与形態を、患者に1日1、2、3または4回投与する。本発明の化合物を1日3回以下、さらに好ましくは1日1回または2回投与することが好ましい。したがって、本発明の化合物を経口投与形態で投与することが好ましい。どのような経口投与形態を使用する場合でも、本発明の化合物を胃の酸性環境から守るように、設計されていることが好ましい。腸溶被覆されている錠剤は、当業者によく知られている。加えて、酸性の胃から保護するためにそれぞれコーティングされている小さい球体を充填されているカプセルも、当業者にはよく知られている。
【0170】
経口投与する場合、ベータ−セクレターゼ活性を阻害するか、Aベータ産生を阻害するか、Aベータ堆積を阻害するか、ADを治療または予防するために治療的に有効な投与量は、約0.1mg/日から約1000mg/日である。経口用量は、約1mg/日から約100mg/日であることが好ましい。経口用量は、約5mg/日から約50mg/日であることが、さらに好ましい。患者が1回用量で開始したとしても、その用量は、患者の状態変化に応じて時間と共に変化しうることは理解されたい。
【0171】
本発明の化合物を有利に、ナノ結晶分散製剤で送達することもできる。このような製剤の調製は例えば、米国特許第5145684号明細書に記載されている。HIVプロテアーゼ阻害剤のナノ結晶分散剤およびその使用法は、米国特許第6045829号明細書に記載されている。ナノ結晶製剤は典型的には、薬物化合物の比較的高い生物学的利用率をもたらす。
【0172】
本発明の化合物は、非経口で、例えばIV、IM、デポーIM、SCまたはデポーSCで投与することができる。非経口で投与する場合、約0.5から約100mg/日、好ましくは1日約5から約50mgの治療有効量を送達すべきである。デポー製剤を注射で1カ月に1回または2週間ごとに1回使用する場合、用量は、約0.5mg/日から約50mg/日または約15mgから約1500mgの1カ月用量であるべきである。一部では、アルツハイマー病を伴う患者の健忘性により、非経口投与形態はデポー製剤であることが好ましい。
【0173】
本発明の化合物は、舌下投与することができる。舌下投与する場合、本発明の化合物を、1日1から4回、IM投与に関して前記した量で投与すべきである。
【0174】
本発明の化合物は、鼻腔内投与することができる。この経路で投与する場合、適切な投与形態は、当業者に知られているような鼻スプレーまたは乾燥粉末である。鼻腔内投与のための本発明の化合物の用量は、IM投与に関して前記した量である。
【0175】
本発明の化合物は、クモ膜下投与することができる。この経路により投与する場合、適切な投与形態は、当業者に知られているような非経口投与形態であってよい。クモ膜下での本発明の化合物の用量は、IM投与に関して前記した量である。
【0176】
本発明の化合物は、局所投与することができる。この経路により投与する場合、適切な投与形態は、クリーム、軟膏またはパッチである。投与される本発明の化合物の量により、パッチが好ましい。局所投与する場合、用量は、約0.5mg/日から約200mg/日である。パッチにより送達することができる量は限られているので、2個またはそれ以上のパッチを使用してもよい。パッチの数およびサイズは、重要ではなく、重要なことは、当業者に知られているように、本発明の化合物の治療有効量を送達することである。本発明の化合物は、当業者に知られているように、座剤により直腸で投与することもできる。座剤により投与する場合、治療有効量は、約0.5mgから約500mgである。
【0177】
通常、1日約0.01から約100mg/体重kgの用量レベルを、ヒトまたは他の哺乳動物に投与する。ヒトにおける好ましい用量範囲は、1日約0.1から約50mg/体重kgであり、これを、単回用量として、または複数用量に分けて投与することができる。ヒト以外の哺乳動物における好ましい用量範囲は、1日約0.01から約10.0mg/体重kgであり、これを、単回用量として、または複数用量に分けて投与することができる。ヒト以外の哺乳動物におけるさらに好ましい用量範囲は、1日約0.1から約5.0mg/体重kgであり、これを、単回用量として、または複数用量に分けて投与することができる。
【0178】
本明細書で言及される状態を治療するためのエアロゾル製剤は、平均的な成人においては好ましくは、エアロゾルの各計測用量または「パフ」が式Iの化合物約20μgから約1000μgを含有するように準備されている。エアロゾルでの全1日用量は、約100μgから約10mgの範囲内である。投与は、1日複数回、例えば2、3、4または8回であってよく、例えば各回1、2または3用量を投与する。
【0179】
本発明の化合物は、当業者に知られているように、インプラントにより投与することもできる。インプラントにより本発明の化合物を投与する場合、治療有効量は、デポー投与に関して前記した量である。
【0180】
本発明の特定の化合物および望ましい投与形態を示されれば、当業者であれば、適切な投与形態を調製し、投与する方法が分かるであろう。
【0181】
本発明の化合物は、本明細書に開示されている疾患または状態を予防または治療するために、前記と同じ方法で、同じ投与経路により、同じ医薬投与形態を使用して、同じ投与スケジュールで使用される。
【0182】
本発明の化合物は、相互に、または前記で列挙された状態を治療または予防するために使用される他の治療剤または手法と組み合わせて使用することができる。このような薬剤または手法には:タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン、COGNEX(登録商標)として販売)、塩酸ドネペジル(アリセプト(登録商標)として販売)およびリバスチグミン(Exelon(登録商標)として販売)などのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;ガンマ−セクレターゼ阻害剤;シクロオキシゲナーゼII阻害剤などの抗炎症剤;ビタミンEおよびギンコリドなどの抗酸化剤;例えばAベータペプチドでの免疫化または抗Aベータペプチド抗体の投与などの免疫学的手法;スタチン;ならびにセレブロリシン(登録商標)、AIT−082(Emilieu、2000、Arch.Neurol.57:454)などの直接的または間接的な向神経剤および将来の他の向神経剤が含まれる。
【0183】
加えて、式(I)の化合物は、P−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤と共に使用することもできる。P−gp阻害剤およびこのような化合物の使用は、当業者に知られている。例えば、Cancer Research、53、4595〜4602ページ(1993年)、Clin.Cancer Res.、2、7〜12(1996年)、Cancer Research、56、4171〜4179ページ(1996年)、国際公開第99/64001号パンフレットおよび国際公開第01/10387号パンフレット参照。P−gp阻害剤の血中濃度は、P−gbによる式(A)の化合物の脳血中濃度の低減を阻害する効果を発揮するような濃度であることが重要である。この目的のために、P−gb阻害剤および式(A)の化合物を同時に、同じか異なる投与経路により、または別々の時に投与することができる。重要なことは、投与する時ではなく、P−gp阻害剤の有効な血中レベルを得ることである。
【0184】
適切なP−gp阻害剤には、シクロスポリンA、ベラパミル、タモキシフェン、キニジン、ビタミンE−TGPS、リトナビル、酢酸メゲストロール、プロゲステロン、ラパマイシン、10,11−メタノジベンゾスベラン、フェノチアジン、GF120918、FK506、VX−710、LY335979、PSC−833、GF−102918などのアクリジン誘導体および他のステロイドが含まれる。同じ機能を有し、したがって同じ結果を達成するさらなる薬剤も見つかるであろうし、このような化合物も、有用と考えられることを理解されたい。
【0185】
P−gp阻害剤は、経口、非経口(IV、IM、IMデポー、SQ、SQデポー)、局所、舌下、直腸、鼻腔内、クモ膜下およびインプラントにより投与することができる。
【0186】
P−gp阻害剤の治療有効量は、約0.1から約300mg/kg/日、好ましくは1日約0.1から約150mg/kgである。患者が1回用量から始めたとしても、その用量は、患者の状態変化に応じて時と共に変化させるべきであることを理解されたい。
【0187】
経口で投与する場合、P−gp阻害剤は、当業者によく知られているような経口投与のための通常の投与形態で投与することができる。これらの投与形態には、錠剤およびカプセルの通常の固体単位投与形態、さらに溶液、懸濁液およびエリキシル剤などの液体投与形態が含まれる。固体投与形態を使用する場合、それらが、持続放出性を有し、P−gp阻害剤を1日1回または2回のみ投与すればよいことが好ましい。経口投与形態を、患者に1日1から4回投与する。P−gp阻害剤を1日3回以下、さらに好ましくは1日1回または2回投与することが好ましい。したがって、P−gp阻害剤を固体投与形態で投与することが好ましく、さらに、その固体投与形態が、1日1回または2回投与を可能にする持続放出形態であることが好ましい。どのような投与形態を使用する場合でも、P−gp阻害剤を胃の酸性環境から守るように、設計されていることが好ましい。腸溶被覆されている錠剤は、当業者によく知られている。加えて、酸性の胃から保護するためにそれぞれコーティングされている小さい球体を充填されているカプセルも、当業者にはよく知られている。
【0188】
加えて、P−gp阻害剤は、非経口投与することができる。非経口で投与する場合、これらは、IV、IM、デポーIM、SQまたはデポーSQで投与することができる。
【0189】
P−gp阻害剤は、舌下投与することができる。舌下投与する場合、P−gp阻害剤は、IM投与に関してと同じ量で1日1から4回投与すべきである。
【0190】
P−gp阻害剤は、鼻腔内投与することができる。この投与経路で投与する場合、適切な投与形態は、当業者に知られている鼻スプレーまたは乾燥粉末である。鼻腔内投与のためのP−gp阻害剤の用量は、IM投与に関してと同じである。
【0191】
P−gp阻害剤は、クモ膜下投与することができる。この投与経路により投与する場合、適切な投与形態は、当業者に知られているような非経口投与形態であってよい。
【0192】
P−gp阻害剤は、局所投与することができる。この投与経路により投与する場合、適切な投与形態は、クリーム、軟膏またはパッチである。投与が必要とされるP−gp阻害剤の量により、パッチが好ましい。しかしながら、パッチにより送達することができる量は限られている。したがって、2個またはそれ以上のパッチが必要なこともある。パッチの数およびサイズは、重要ではなく、重要なことは、当業者に知られているように、P−gp阻害剤の治療有効量を送達することである。
【0193】
P−gp阻害剤は、当業者に知られているように、座剤により直腸で投与することもできる。
【0194】
P−gp阻害剤は、当業者に知られているように、インプラントにより投与することもできる。
【0195】
P−gp阻害剤を投与する投与経路についても、投与形態についても、新規なことはない。特定のP−gp阻害剤および望ましい投与形態を示されれば、当業者であれば、P−gp阻害剤に適した投与形態を調製する方法は分かるであろう。
【0196】
投与の正確な用量および回数は、投与される本発明の特定の化合物、治療される特定の状態、治療される状態の重度、特定の患者の年齢、体重、全身的な身体状態ならびに個人が摂取していてよい他の投薬に左右されることは、当分野に熟達している投薬医師によく知られているように、当業者であれば明らかなはずである。
【0197】
APP分解の阻害
本発明の化合物は、APP695アイソホームまたはその突然変異体でナンバリングされるMet596とAsp597との間での、またはAPP751もしくはAPP770などの別のアイソホームまたはそれらの突然変異体での対応する部位(場合によっては「ベータセクレターゼ部位」と称される)でのAPPの分解を阻害する。特定の理論に結びつけられることは望まないが、ベータ−セクレターゼ活性の阻害は、ベータアミロイドペプチド(Aベータ)の産生を阻害することと考えられる。阻害活性は、様々な阻害アッセイのうちのいずれかで証明されるが、その際、ベータ−セクレターゼ酵素の存在下でのAPP基質の分解を、阻害化合物の存在下、ベータ−セクレターゼ分解部位で分解をもたらすために通常は十分な条件下で分析する。未処理または不活性対照と比較してのベータ−セクレターゼ分解部位でのAPP分解の低減を、阻害活性と相関させる。本発明の化合物阻害剤の効力を証明するために使用することができるアッセイ系は知られている。代表的なアッセイ系は例えば、米国特許第5942400号明細書、同第5744346号明細書に、さらに下記の実施例に記載されている。
【0198】
ベータ−セクレターゼの酵素活性およびAベータの産生は、天然、突然変異、短縮および/または合成APP基質、天然、突然変異、短縮および/または合成酵素ならびに試験化合物を使用してインビトロまたはインビボで分析することができる。分析は、天然、突然変異および/または合成APPおよび酵素を発現する一次または二次細胞ならびに天然APPおよび酵素を発現する動物モデルを必要とするか、基質および酵素を発現する遺伝子導入動物モデルを利用することができる。酵素活性の検出は、例えばイムノアッセイ、蛍光分析または色素産生アッセイ、HPLCまたは他の検出手段により、1種または複数の分解産物を分析することにより可能である。阻害化合物は、反応系でベータ−セクレターゼを介した分解が観察され、阻害化合物の不在下で測定される対照に比較して、産生されるベータ−セクレターゼ分解産物の量を低減する能力を有する化合物として決定される。
【0199】
ベータ−セクレターゼ
様々な形態のベータ−セクレターゼ酵素が知られており、酵素活性および酵素活性の阻害をアッセイするために利用可能で有用である。これらには、天然、組換えおよび合成形態の酵素が含まれる。ヒトベータ−セクレターゼは、ベータ部位APP分解酵素(BACE)、Asp2およびメマプシン2として知られており、例えば、米国特許第5744346号明細書ならびに国際公開WO98/22597号パンフレット、国際公開第00/03819号パンフレット、国際公開第01/23533号パンフレットおよび国際公開第00/17369号パンフレット、さらに文献刊行物(Hussainら、1999年、Mol.Cell.Neurosci.14:419〜427ページ;Vassarら、1999年、Science 286:735〜741ページ;Yanら、1999年、Nature 402:533〜537ページ;Sinhaら、1999年、Nature 40:537〜540ページ;およびLinら、2000年、PNAS USA 97:1456〜1460ページ)で特性決定されている。合成形態の酵素も、記載されている(国際公開第98/22597号パンフレットおよび国際公開第00/17369号パンフレット)。ベータ−セクレターゼを抽出し、ヒト脳組織から精製し、細胞、例えば組換え酵素を発現する哺乳動物細胞中で製造することができる。
【0200】
好ましい化合物は、50マイクロモル未満の濃度、好ましくは10マイクロモル以下の濃度、さらに好ましくは1マイクロモル以下、最も好ましくは10ナノモル以下の濃度でベータ−セクレターゼ酵素活性の50%を阻害するために有効である。
【0201】
APP基質
APPのベータ−セクレターゼを介した分解の阻害を証明するアッセイは、Kangら、1987年、Nature 325:733〜6ページに記載されている695アミノ酸「正常」アイソタイプ、キタグチら、1981年、Nature 331:530〜532ページに記載されている770アミノ酸アイソタイプおよびスウェーデン突然変異(KM670−1NL)(APP−SW)、ロンドン突然変異(V7176F)などの突然変異体を含む、知られている形態のAPPを利用することができる。知られている様々な突然変異体の総説に関しては例えば、米国特許第5766846号明細書、さらにHardy、1992年、Nature Genet.1:233〜234ページ参照。追加的な有用な基質には、二塩基性アミノ酸変異、例えば国際公開第00/17369号パンフレットに開示されているAPP−KK、APPの断片およびベータ−セクレターゼ分解部位を含む合成ペプチド、野生型(WT)または突然変異形態、例えば米国特許第5942400号明細書および国際公開第00/03819号パンフレットに記載されているSWが含まれる。
【0202】
APP基質は、APPのベータ−セクレターゼ分解部位(KM−DAまたはNL−DA)を含み、例えば、完全APPペプチドまたは突然変態、APP断片、組換えまたは合成APPまたは融合ペプチドを含む。好ましくは、融合ペプチドは、酵素アッセイで有用な成分を有する、例えば単離および/または検出特性を有するペプチドに融合しているベータ−セクレターゼ分解部位を含む。有用な成分は、抗体結合のための抗原性エピトープ、標識または他の検出成分、結合基質などであってよい。
【0203】
抗体
APP分解に特徴的な産物を、例えばPirttilaら、1999年、Neuro.Lett.249:21〜4および米国特許第5612486号明細書に記載されているように、様々な抗体を使用するイムノアッセイにより測定することができる。Aベータを検出するために有用な抗体には例えば、Aベータペプチドのアミノ酸1〜16上のエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体6E10(Senetek、St.Louis、MO);それぞれヒトAベータ1〜40および1〜42に特異的な抗体162および164(New York State Institute for Basic Research、Staten Island、NY);および米国特許第5593846号明細書に記載されているベータ−アミロイドペプチドの結合領域、残基16と17との間の部位を認識する抗体が含まれる。米国特許第5604102号明細書および第5721130号明細書に記載されているように、APPの残基591から596の合成ペプチドに対して生じる抗体およびスウェーデン突然変異の590〜596に対して生じるSW192抗体も、APPおよびその分解産物の免疫アッセイにおいて有用である。
【0204】
アッセイ系
ベータ−セクレターゼ分解部位でのAPP分解を決定するためのアッセイは、当分野でよく知られている。アッセイ例は、例えば米国特許第5744346号明細書および同第5942400号明細書に記載されており、下記の実施例にも記載されている。
【0205】
無細胞アッセイ
本発明の化合物の阻害活性を証明するために使用することができるアッセイ例は、例えば国際公開第00/17369号パンフレット、国際公開第00/03819号パンフレットならびに米国特許第5942400号明細書および同第5744346号明細書に記載されている。このようなアッセイは、無細胞インキュベーションまたは細胞インキュベーションで、ベータ−セクレターゼおよびベータ−セクレターゼ分解部位を有するAPP基質を発現する細胞を使用して行うことができる。
【0206】
APPのベータ−セクレターゼ分解部位を含むAPP基質、例えば完全APPまたは変異体、アミノ酸配列:KM−DAもしくはNL−DAを含むAPP断片または組換えもしくは合成APP基質を、ベータ−セクレターゼ酵素、ベータ−セクレターゼ活性を有し、APP−ベータ−セクレターゼ分解部位を分解しうるその断片または合成もしくは組換えポリペプチド変異体の存在下に、酵素の分解活性に適しているインキュベーション条件下にインキュベーションする。適切な基質には、ペプチドまたはそのベータ−セクレターゼ分解産物の精製または検出を容易にするために有用な基質ペプチドおよび修飾を含む融合タンパク質またはペプチドであってもよい誘導体も含まれうる。有用な修飾には、抗体結合に関して知られている抗原性エピトープの挿入;標識または検出可能な成分の連結、結合基質の連結などが含まれる。
【0207】
無細胞インビトロアッセイに適しているインキュベーション条件は例えば、約150ナノモルから10マイクロモルの基質、約10から200ピコモルの酵素および約0.1ナノモルから10マイクロモルの阻害剤化合物を水溶液中、約pH4〜7、約37℃で、約10分から3時間含む。これらのインキュベーション条件は、例に過ぎず、特定のアッセイ成分および/または所望の測定系のために必要に応じて変化しうる。特性のアッセイ成分のためのインキュベーション条件の最適化は、使用される特定のベータ−セクレターゼ酵素およびそのpH最適値、アッセイで使用されうる任意の追加的な酵素および/またはマーカーなどによるべきである。このような最適化は、常用的であり、過度の実験を必要としない。
【0208】
細胞アッセイ
数多くの細胞ベースのアッセイを、ベータ−セクレターゼ活性および/またはAベータを放出するAPPのプロセッシングを分析するために使用することができる。細胞内および本発明の化合物阻害剤の存在または不在下でのAPP基質とベータ−セクレターゼ酵素との接触を、化合物のベータ−セクレターゼ阻害活性を証明するために使用することができる。好ましくは、有用な阻害化合物の存在下でのアッセイは、非阻害対照と比較して少なくとも約30%、最も好ましくは少なくとも約50%の酵素活性の阻害をもたらす。
【0209】
一実施形態では、ベータ−セクレターゼを天然に発現する細胞を使用する。あるいは、細胞を、前記で検討した組換えベータ−セクレターゼまたは合成変異体酵素を発現するように修飾する。APP基質を培地に加えることもできるが、好ましくは細胞内で発現させる。APP、APPの変異体もしくは突然変異形体を天然に発現する細胞または、ベータ−セクレターゼAPP分解部位を含むAPPのアイソホーム、突然変異もしくは変異APP、組換えもしくは合成APP、APP断片または合成APPペプチドもしくは融合タンパク質を発現するように形質転換された細胞を使用することができるが、ただし、発現されるAPPは、酵素との接触が可能であり、酵素分解活性を分析することができる。
【0210】
APPからAベータを正常にプロセッシングするヒト細胞系は、本発明の化合物の阻害活性をアッセイするために有用な手段を提供する。培地中でのAベータおよび/または他の分解産物の生成および放出を、例えばウェスタンブロットまたはELISAなどによる酵素結合イムノアッセイ(EIA)などのイムノアッセイにより測定することができる。
【0211】
APP基質および活性なベータ−セクレターゼを発現する細胞を、化合物阻害剤の存在下にインキュベーションして、酵素活性の阻害を対照と比較して証明することができる。ベータ−セクレターゼの活性は、APP基質の1種または複数の分解産物を分析することにより測定することができる。例えば、基質APPに対するベータ−セクレターゼ活性の阻害は、Aベータなどの特定のベータ−セクレターゼ誘発APP分解産物の放出を低減すると予測される。
【0212】
神経および非神経細胞の両方がAベータをプロセッシングおよび放出するが、内生ベータ−セクレターゼ活性のレベルは低く、往々にして、EIAによる検出が難しい。したがって、高いベータ−セクレターゼ活性、APPからAベータへの高いプロセッシングおよび/またはAベータの高い産生を示すことが知られている細胞型を使用することが好ましい。例えば、APPのスウェーデン突然変異形態(APP−SW);APP−KK;またはAPP−SW−KKでの細胞のトランスフェクションは、容易に測定することができる高いベータ−セクレターゼ活性およびAベータ−産生量を示す細胞をもたらす。
【0213】
このようなアッセイでは例えば、APPおよびベータ−セクレターゼを発現する細胞を、培地中で、APP基質のその分解部位でのベータ−セクレターゼ酵素活性に適している条件下にインキュベーションする。化合物阻害剤に細胞を曝露すると、培地中に放出される細胞溶解産物中でのAベータの量および/またはAPPのCTF99断片の量が、対照と比較して低減される。APPの分解産物は例えば、前記で検討したような特定の抗体でのイムノアッセイにより分析することができる。
【0214】
ベータ−セクレターゼ活性を分析するために好ましい細胞には、一次ヒト神経細胞、一次モルモット細胞、導入遺伝子がAPPである一次遺伝子導入動物神経細胞およびAPPを発現する安定なH4神経芽細胞腫細胞系の細胞、例えばAPP−SWなどの他の細胞が含まれる。
【0215】
インビボアッセイ:動物モデル
様々な動物モデルを使用して、前記のようにベータ−セクレターゼ活性および/またはAベータを放出するAPPのプロセッシングを分析することができる。例えば、APP基質および/またはベータ−セクレターゼ酵素を発現する遺伝子導入動物を使用して、本発明の化合物の阻害活性を証明することができる。一定の遺伝子導入動物モデルが、例えば米国特許第5877399号明細書、同第5612486号明細書、同第5387742号明細書、同第5720936号明細書、同第5850003号明細書、同第5877015号明細書および同第5811633号明細書ならびにGanesら、1995年、Nature 373:523ページに記載されている。ADの病体生理に随伴する特徴を示す動物が好ましい。本発明の化合物阻害剤を本明細書に記載の遺伝子導入マウスに投与することにより、化合物の阻害活性を証明するための別の方法が得られる。さらに、薬学的に有効な担体中で、ターゲット組織に達する投与経路を介して、化合物を適切な治療量で投与することが好ましい。
【0216】
ベータ−セクレターゼ分解部位でのAPPのベータ−セクレターゼを介した分解およびAベータ放出の阻害を、これらの動物において、脳脊髄液、血漿または組織などの動物の体液中の分解断片を測定することにより分析することができる。さらに、Aベータ堆積またはプラークに関する脳組織の分析により、ベータ−セクレターゼ活性の阻害が示されうる。
【0217】
本発明の阻害化合物の存在下、APPの酵素媒介分解および/または基質からのAベータの放出を可能にするために十分な条件下に、APP基質とベータ−セクレターゼ酵素とが接触する際に、本発明の化合物は、ベータ−セクレターゼ分解部位でのAPPのベータ−セクレターゼを介した分解を低減するために有効であり、および/またはAベータの放出量を低減するために有効である。このような接触が、例えば前記のような動物モデルへの本発明の阻害化合物の投与である場合には、化合物は、動物の脳組織でのAベータ堆積を低減し、ベータアミロイドプラークの数および/またはサイズを低減するために有効である。このような投与が、ヒト対象に対してである場合には、化合物は、低い量のAベータにより特徴づけられる疾患の進行を阻害または遅延させ、ADの進行を遅延させ、および/または疾患のリスクを有する患者におけるADの発症または発生を予防するために有効である。
【0218】
他に定義されていない限り、本明細書で使用される科学的および技術的用語はすべて、本発明が属する分野の専門家に一般に理解されると同じ意味を有する。本明細書で言及されている特許および刊行物はすべて、あらゆる目的のために参照により援用される。
【0219】
次の実施例を参照すると、本発明を、さらによく理解することができる。これらの実施例は、本発明の具体的な実施形態を代表するものとして意図されており、本発明の範囲を限定するものとは意図されていない。
【実施例】
【0220】
調製例
一般的手順:
簡便化および収率の最大化のために、反応はすべて、窒素雰囲気下に運転した。融点は、修正されていない。クロマトグラフィーは、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを指している。NMRは、プロトン[H]NMRを指している。NMRスペクトルは、400MHzで得て、規定の溶媒の溶媒の重水素ロックシグナルに対するppm(δ)で報告されている。13C NMRスペクトルは、そのまま言及されている。減圧での蒸発または濃縮は、回転蒸発装置の使用を意味している。
【0221】
調製1
4−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル
CHCN(75mL)中の1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−カルボン酸(J.Med.Chem.、44(3)、328〜39ページ、2001年)(4.2g、18.30ミリモル)、塩酸N,O−ジメチルヒドロキシルアミン(1.8g、18.45ミリモル)、HOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)、ジイソプロピルエチルアミン(17.0mL、63.1ミリモル)およびEDC(塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド)を室温で2時間45分攪拌し、濃縮した。残留物をEtOAcと水との間に分配し、有機物を飽和NaHCOおよびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、再濃縮すると、4−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル4.16g(84%)が無色のオイルとして得られた。NMR(CDCl)δ 4.08(br s,1H)、3.68(s,3H)、3.16(s,3H)、2.84〜2.60(m,3H)、1.75〜1.57(m,5H)、1.43(3,9H)。
【0222】
調製2
4−(3−イソプロピル−ベンゾイル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
EtO(10mL)中の1−ブロモ−3−イソプロピルベンゼン(1.60g、8.04ミリモル)を、EtO(5mL)と積層されているマグネシウム削り屑(0.25g、10.3ミリモル)に加えた。1,2−ジブロモエタン1滴を加え、混合物を室温で45分間攪拌すると、橙色から黄色の混合物が得られた。THF(10mL)に溶解されている4−(N−メトキシ−N−メチルカルバモイル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチル(1.82g、6.68ミリモル)を加え、混合物を18時間攪拌し、飽和NHCl水溶液でクエンチした。水を加え、混合物をEtOAcに抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、黄色のオイル(2.57g)が得られた。5〜10%のEtOAc/ヘキサンでのクロマトグラフィー処理により、4−(3−イソプロピル−ベンゾイル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル10.4g(47%)が濃厚な無色のオイルとして得られた。NMR(CDCl)δ 7.78(s,1H)、7.71(d,J=7.5Hz,1H)、7.43〜7.34(m,2H)、4.13(br s,2H)、3.40〜3.33(m,1H)、3.00〜2.80(m,3H)、1.85〜1.60(m,6H)、1.44(s,9H)、1.25(d,J=7.1Hz,6H)。
【0223】
調製3
(3−イソプロピルフェニル)(ピペリジン−4−イル)メタノン
無水MeOH(50mL)中の4−(3−イソプロピル−ベンゾイル)−ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(1.00g、3.02ミリモル)をHClガスで飽和させ、室温で18時間放置した。混合物を濃縮し、EtOAc数mLを加え、オイルをスクラッチして、結晶化を誘発した。生じた固体をEtOと共に粉砕し、回収すると、塩酸(3−イソプロピルフェニル)(ピペリジン−4−イル)メタノン0.61g(75%)が得られた:NMR(CDCl)δ 9.68(br s,1H)、9.49(br s,1H)、7.73(s,1H)、7.66(d,J=7.5Hz,1H)、7.43(d,J=7.9Hz,1H)、7.37(t,J=7.7Hz,1H)、3.59(br s,1H)、3.47(br s,2H)、3.18(br s,2H)、2.94(七重線,J=6.8Hz,1H)、2.27〜2.10(m,4H)、1.23(d,J=7.1Hz,6H)。
【0224】
調製4
(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノン
メタンスルホン酸無水物(0.136g、0.78ミリモル)を塩酸(3−イソプロピルフェニル)(ピペリジン−4−イル)メタノン(0.200g、0.75ミリモル)およびトリエチルアミン(0.24mL、1.72ミリモル)の氷冷CHCl(10ml)溶液に加えた。1時間攪拌した後に、混合物を濃縮し、EtOAcに再溶解させ、水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノン0.23g(100%)が淡黄色のオイルとして得られ、これは、徐々に凝固して、ろう状の黄色の固体をもたらした:NMR(CDCl)δ 7.77(s,1H)、7.70(dd,J=7.5,1.3Hz,1H)、7.45〜7.36(m,2H)、3.78〜3.73(対称的多重線,2H)、3.42〜3.36(対称的多重線,1H)、2.99〜2.92(m,3H)、2.80(s,3H)、2.02〜1.85(m,4H)、1.25(d,J=7.1Hz,6H)。
【0225】
調製5
(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノンオキシム
EtOH(10mL)中の(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノン(0.20g、0.65ミリモル)、塩酸ヒドロキシルアミン(0.090g、1.30ミリモル)およびピリジン(0.11mL、1.36ミリモル)を6時間環流させ、濃縮した。残留物をEtOAcと水との間に分配し、有機物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノンオキシムのEおよびZ異性体の〜1:1混合物0.21g(100%)が無色のオイルとして得られ、これを、混合物として使用した。
【0226】
調製6
C−(3−イソプロピル−フェニル)−C−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチルアミン
方法A
(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノンオキシム(0.209g、0.64ミリモル)のEtOH(50mL)溶液をHClガスで飽和させた。炭素上20%のPd(OH)(0.100g)を加え、生じた混合物を50psiで3.5時間水素化した。この時点で、追加のPd(OH)300mgを加え、反応をさらに18時間続けた。濾過(セライト)し、濃縮した後に、残留物をNHOH水溶液で処理し、EtOAcに抽出した。この抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、C−(3−イソプロピル−フェニル)−C−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチルアミン200mg(100%)が濃厚な淡褐色オイルとして得られた:NMR(CDCl)δ 7.24〜7.20(m,1H)、7.11〜7.03(m,3H)、3.83(br d,J=12.0Hz,1H)、3.69(br d,J=11.6Hz,1H)、3.59(d,J=7.9Hz,1H)、2.86(七重線,J=6.9Hz,1H)、2.71(s,3H)、2.58(dt,J=12.0,2.5Hz,1H)、2.48(dt,J=12.0,2.9Hz,1H)、2.07〜2.03(m,1H)、1.60〜1.47(m,3H)、1.45〜1.30(m,2H)、1.27〜1.17(m(1H)重複と6H d @ 1.21ppm,J=6.6Hz,総計7H)。
【0227】
方法B
アルミニウムフォイル片(200mg)をHgClの2%水溶液に20〜30秒間浸し、水およびTHFですすぎ、(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メタノンオキシム(0.074g、0.228ミリモル)の攪拌されている10%THF(15mL)水溶液に入れた。30分後に、フォイルは、黒色の粉末に変化した。混合物を室温で18時間攪拌し、次いで、3時間環流した。混合物を冷却し、濾過(セライト)し、EtOAcですすぎ、濃縮した。75%EtOAc/ヘキサンを使用するクロマトグラフィーにより、未反応のオキシム出発原料の一部(24mg、33%)が得られた。EtOAcでカラムをすすぎ、次いで、20%および50%のMeOH/EtOAcで溶離すると、C−(3−イソプロピル−フェニル)−C−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチルアミン17mg(24%)が得られ、これは、方法Aを使用して調製された物質と同一であった。
【0228】
(実施例1)
(1S,2R)N−(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(3−イソプロピル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−プロピル)−アセトアミド
ステップ1
(1S)−2−(3,5−ジフルオロフェニル)−1−[(2S)−オキシラン−2−イル]エチルカルバミン酸t−ブチル(0.24g、0.80ミリモル)およびC−(3−イソプロピル−フェニル)−C−(1−メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチルアミン(0.189g、0.609ミリモル)をイソプロピルアルコール(3mL)中で5時間環流させた。混合物をSiO上で濃縮させ、EtOAcを使用するクロマトグラフィーにより精製すると、(1S,2R)(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(3−イソプロピル−フェニル)−1−(メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−プロピル)−カルバミン酸t−ブチルエステル347mg(94%)がジアステレオマーの〜1:1混合物として得られた:MS(APCI+)m/z610.5(MH+)、510.4(MH+−BOC)。
【0229】
ステップ2
4NのHCl/ジオキサン(1.4mL、5.6ミリモル)を、(1S,2R)(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(3−イソプロピル−フェニル)−1−(メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−プロピル)−カルバミン酸t−ブチルエステルジアステレオ異性体の室温のジオキサン(2ml)溶液に加え、次いで、18時間攪拌した。混合物を濃縮し、EtOAc(5ml)に再溶解し、EtOを加えると、(1S,2R)3−アミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−1−{[(3−イソプロピル−フェニル)−1−(メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−ブタン−2−オール塩酸塩228mg(71%)が白色の固体として得られ、これは、ジアステレオ異性体の〜1:1混合物として存在した:MS(APCI+)m/z510.4(MH+)。
【0230】
ステップ3
(1S,2R)3−アミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−1−{[(3−イソプロピル−フェニル)−1−(メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−ブタン−2−オールのジアステレオ異性体混合物(0.228g、0.392ミリモル)をCHCl(10mL)中に溶かした。N−メチルモルホリン(0.22mL、2.00ミリモル)を加え、混合物を氷中で冷却した。酢酸(0.024mL、0.419ミリモル)、HOBT(0.059g、0.437ミリモル)およびEDC(0.083g、0.43ミリモル)を加え、混合物を0℃で3時間攪拌した。反応を濃縮し、EtOAcと水との間に分配し、有機物をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濃縮すると、濃厚なわら色のオイル(0.256g)が得られた。EtOAcおよび5〜10%のMeOH/EtOAcでのクロマトグラフィーにより、(1S,2R)N−(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−3−{[(3−イソプロピル−フェニル)−1−(メタンスルホニル−ピペリジン−4−イル)−メチル]−アミノ}−プロピル)−アセトアミドのジアステレオ異性体138mg(64%)が淡黄色のオイルとして得られた。
【0231】
EtOAc/ヘキサン/CHClから再結晶化させ、次いで、EtOAcでパルプ化すると、ジアステレオ異性体1 25mgが白色の固体として得られた:融点186〜187℃:NMR(CDCl)δ 7.28〜7.23(m CHClに一部かぶり,1H)、7.13(d,J=7.9Hz,1H)、7.02〜6.99(m,2H)、6.71〜6.63(m,3H)、5.48(d,J=9.1Hz,1H)、4.15〜4.05(m,1H)、3.87(br d,J=11.2Hz,1H)、3.71(br d,J=11.2Hz,1H)、3.33〜3.25(m,2H)、3.00〜2.82(m,2H)、2.81〜2.77(m,1H)、2.74(s,3H)、2.63(br t,J=11.0Hz,1H)、2.53〜2.43(m,3H)、2.13(br d,J=12.0Hz,1H)、1.89(s,3H)、1.70〜1.50(m,2H)、1.50〜1.35(m,2H)、1.24(d,J=6.7Hz,6H)。
【0232】
再結晶化残留物を濃縮し、次いで、結晶化をスクラッチングにより、EtOと痕跡量のEtOAcおよびCHClとを用いて誘発すると、白色の固体が得られた。これを、2:1のEtO/EtOAcから再結晶化させると、ジアステレオ異性体2および1の〜9:1混合物が得られた。ジアステレオ異性体2:NMR(CDCl)δ 7.31〜7.21(m CHClに一部かぶり,1H)、7.11(d,J=7.5Hz,1H)、6.99〜6.94(m,2H)、6.68〜6.59(m,3H)、5.62(d,J=9.1Hz,1H)、4.17〜4.02(m,1H)、3.80(br d,J=12.0Hz,1H)、3.68(br d,J=11.6Hz,1H)、3.48〜3.38(m,1H)、3.32(d,J=7.5Hz,1H)、2.97(dd,J=14.5,4.6Hz,1H)、2.87(七重線,J=6.9Hz,1H)、2.70(s,3H)、2.60〜2.40(m,4H)、2.14(br d,J=13.3Hz,1H)、1.84(s,3H)、1.73〜1.58(m,1H)、1.43〜1.32(m,2H)、1.21(d,J=7.1Hz,6H)。
【0233】
生物学的実施例
(実施例A)
合成APP基質を利用する無細胞BACE1阻害アッセイ
ベータ−セクレターゼにより分解することができ、N−末端ビオチンを有し、Cys残基でのオレゴングリーンの共有結合により蛍光にされている合成APP基質を使用して、阻害化合物の存在または不在下でのベータ−セクレターゼ活性をアッセイする。基質は、ビオチン−GLTNIKTEEISEISY−EVEFRC[オレゴングリーン]KK[配列番号1]である。酵素(0.1ナノモル)および試験化合物(0.00002〜200マイクロモルを、予備ブロックされている低親和性黒色プレート(384ウェル)中、室温で30分間インキュベーションする。150ナノモルの基質を加えて、1ウェル当たり30マイクロリットルの最終容量にすることにより、反応を開始する。最終アッセイ条件は:0.00002〜200マイクロモルの化合物阻害剤;0.1モルの酢酸ナトリウム(pH4.5);150ナノモルの基質;0.1ナノモルの可溶性ベータ−セクレターゼ;0.001%のツイーン20および2%のDMSOである。アッセイ混合物を3時間37℃でインキュベーションし、飽和濃度の免疫純粋なストレプトアビジン(0.75マイクロモル)を加えることにより、反応を終了した。室温で15分間、ストレプトアビジンと共にインキュベーションした後に、蛍光偏光を、例えばPerkinElmer Envision(Ex485nm/Em530nm)を使用して測定する。ベータ−セクレターゼ酵素の活性は、基質が酵素により分解されると生じる蛍光偏光の変化により検出される。化合物阻害剤の存在下でのインキュベーションにより、その合成APP基質のベータ−セクレターゼ酵素分解の特異的阻害が証明される。このアッセイでは、本発明の好ましい化合物は、50マイクロモル未満のIC50を示す。本発明のさらに好ましい化合物は、10マイクロモル未満のIC50を示す。本発明のさらにいっそう好ましい化合物は、5マイクロモル未満のIC50を示す。本発明のさらにいっそう好ましい化合物は、100ナノモル未満のIC50を示す。本発明のさらにいっそう好ましい化合物は、10ナノモル未満のIC50を示す。
【0234】
(実施例B)
ベータ−セクレターゼ活性の阻害−細胞アッセイ
ベータ−セクレターゼ活性の阻害を分析するためのアッセイ例は、Lys651Met52からAsn651Leu652への天然に生じる二重突然変異(APP751でナンバリング)を含み、スウェーデン突然変異と一般に称され、Aベータを過剰産生することが判明している(Citronら、1992年、Nature 360:672〜674ページ)、米国特許第5604102号明細書に記載のH4ヒト神経芽細胞腫系(ATCC受託番号CRL−1573)を利用する。
【0235】
細胞を、通常は30μMまでの所望の濃度の阻害化合物(DMSOストックから施与)の存在/不在下に、<5%DMSOの最終濃度でインキュベーションする。処置期間の終了時に、調整培地を、ベータ−セクレターゼ活性に関して、例えば分解断片の分析により分析する。特異的検出抗体を使用して、Aベータをイムノアッセイにより分析することができる。酵素活性を、化合物阻害剤の存在および不在下に測定して、APP基質のベータ−セクレターゼを介した分解の特異的阻害を証明する。
【0236】
例えば、細胞を1日目の朝にプレーティングし(30000細胞/ウェルプレーティング密度、H4swe)、37℃で約6時間インキュベーションすることにより、アッセイを2日間で行うことができる。1日目の午後に、細胞を培地またはPBSで1回洗浄して、蓄積したABを除去する。新鮮な培地を加え、次いで、本発明の化合物を各ウェルに加える(培地95μl+10%DMSO中の20×化合物ストック5μl)。細胞を37℃、5%CO中で一晩インキュベーションする。
【0237】
96ウェルNunc ImmunosorpプレートセットにAβ捕獲抗体(6E10)をコーティングする;各ウェルに、炭酸塩/重炭酸塩コーティング緩衝液中で調製された1mg/mlの6E10 50μlをコーティングする。炭酸塩/重炭酸塩コーティング緩衝液は、pH9.5の精製水500ml、NaCO0.8gおよびNaHCO1.5gを含有した。プレートを密閉し、4℃で一晩インキュベーションする。
【0238】
2日目に、6E10コーティングされたプレートを15から30分室温にし、プレート洗浄機を使用して、0.05%のPBSTで3〜4回洗浄する。PBST中1%の牛乳200μl/ウェルを加えて、後で加えられる調整培地またはAβ標準の非特異的結合をブロックする。
【0239】
プレートをカバーし、室温で少なくとも1時間インキュベーションする。プレートをPBSTで3〜4回洗浄して、ブロックを除去する。H4細胞からの細胞調整培地(前記のように化合物で一晩予備処理)またはAβ標準をウェルに加える(50μl/ウェル、2時間、暗所、室温)。MTTアッセイを、細胞で行うこともできる(2時間インキュベーション、37℃)。
【0240】
ELISAプレートを、PBSTで3〜4回洗浄する。ビオチン化レポーターAβ抗体を加え(50μ/ウェル(4G8−ビオチン化、PBST中1:5000)、1〜2時間、室温)、暗所)、続いて、PBSTで3〜4回洗浄する。ストレプトアビジン−HRP(PBST中1:10000)を加え(50μl/ウェル)、プレートをインキュベーションする(30分から1時間、室温、暗所)。プレートをPBSTで3〜4回洗浄する。TMB−ペルオキシダーゼ基質50μl/ウェルを室温で加え、所望の青色が発色するまで、インキュベーションを室温で実施する。0.09MのHSO50μl/ウェルを加えることにより、反応を停止する。色は、黄色になる。Spectramaxで450nmで、読み取りを行う。
【0241】
(実施例C)
モルモットニューロン培養アッセイ
混合されている皮質および海馬ニューロンを、モルモット胎芽から単離し、インビトロで培養する。手順例では、ほぼ胎齢25日目に、モルモットにイソフルラン室で麻酔を掛け、断頭する。胎芽を伴う子宮を除去し、湿った氷上の50ml管中の冷Hibernate E25mlに入れる。解剖顕微鏡下にある、ちょうど十分なHibernate Eを含有する冷プレート(4℃)上のペトリ皿で、頭蓋を後方に外し、脳および小脳を除去する。半球体を分離した後に、中脳を除去する。髄膜を皮質から剥離する。皮質組織を、湿った氷上の15ml管中のHibernate E/B27に入れ、全胎芽からの組織を貯留する(Hib E/B2710mL中3〜6胎芽)。B27(50×溶液Gibco BRL*17504−044)を、Hibernate E培地に対して1:50の比で加える。
【0242】
すべてのHibernate E/B27を管から除去し、粉砕のために新たな15mL管に移す。2mg/mlのパパイン溶液5mlを管中の組織に37℃で25分加える。貯留された組織が6胎芽より多い場合、パパイン溶液10mlを使用する。10mg/mlのパパイン(Roche 0108014)1mlおよびB27を伴わないHibernate E4mlを37℃で5分間加温し、0.2μmシリンジフィルターで濾過する。
【0243】
Hibernate E/B27 2mlおよび1mg/mlのDNAアーゼ(Sigma D4263)20μLを用いて、第1の粉砕を行う。パパイン溶液を除去した後に、火炎研磨されたパスツールピペットを介して組織を10〜15回粉砕する。1〜2回の追加的な粉砕ステップを行うが、その際、各回Hibernate E/B27 2mLを用いて10〜15回粉砕を行い、ピペット開口部のサイズを各回、火炎で小さくしていく。上澄みを、100μmストレーナー(Falcon352350)で濾過し、250×gで5分間回転させる。0.1MのHCl50%/Neurobasal50%中、1:50の比のB27(50×溶液、Gibco BRL 17504−044)、1:400の比の0.5mMのグルタミン(200mMのGibco BRL 25030−081)、Invitrogen 15240062抗生−抗カビ剤(100×)および25mMストックからの1:1000の比の25μMのグルタメート(グルタメートは、当初平板培地で使用するのみ)を含む10ml平板培地で、ペレットを再懸濁する。ポリ−D−リシン24ウェルプレート(Biocoat 356414)で、1.5×10細胞/cm=6×10細胞/mlの濃度で、500μL/ウェルを加えて、細胞を平板培養する。
【0244】
培地中での培養の後4〜5日ごとに、Neurobasal/B27+グルタミン+P/S/FZ500μl/ウェルと共に、ただしグルタメートは伴わずに、ニューロンを再供給する。ベースライン試料(300μl)を、各ウェルからDIV15に採取し(最終再供給の3〜4日後)、96ウェルプレートに移し、アッセイするまで、−20℃で凍結する。
【0245】
本発明の化合物の希釈試料を、100%DMSO中10mMのストックから、12ウェルからなるその行に各薬物を含む96ウェルプレート中で調製するが、その際、ウェルで生じる濃度は、DMSO中10、3、1、.3、.1、.03、.01、.003、.001、.0003、.0001および.00003mMである。各ウェルを、再供給された培地で1:10に希釈する。残りの培地をすべての細胞から吸引し、新鮮な培地500μLに代える。化合物を加えて、1:100の希釈でウェルを重複させる(1ウェル当たり5μLを加えることにより)。最終化合物濃度範囲は、10μMから100pMである。3〜4日後に、試料を各ウェルから除去し(300μl)、96ウェルプレートに移す。試料を、アッセイするまで、−20℃で凍結処理に掛ける。
【0246】
MTSアッセイ(Promega G3581)を使用する細胞毒性に関するアッセイを、バックグラウンドの色を差し引くために培地のみを伴うプレートのウェルを含む、MTS1溶液試薬/ウェル(10μl)を伴う各ウェルで、37℃で2時間行った。各ウェルからの100μlを、新規の96ウェルプレートに移したが、2個の培地のみ/MTS試薬ウェルが、バックグラウンドを差し引くために含まれた。読み取りを、490nmで行った。試料アッセイのために、試料を室温で解凍し、ELISA試料/ブロック緩衝液PBST+1%BSAを使用して1:2に希釈した。
* 全体Aβ測定では、Aβを測定するために、24時間の短時間でも十分であるが、3日間の培養により、かなり強いシグナルが得られるであろう。
【0247】
C−末端特異的アッセイ(すなわちAβ1〜38/1〜40/1〜42)では、シグナル(特にAβ1〜42)がかなり低いので、培地を集める前に、全部で4日間が必要である。
【0248】
(実施例D)
ADの動物モデルでのベータ−セクレターゼの阻害
様々な動物モデルを使用して、ベータ−セクレターゼ活性の阻害に関してスクリーニングすることができる。本発明で有用な動物モデルの例には、これらに限られないが、マウス、モルモット、イヌなどが含まれる。使用する動物は、野生型、遺伝子導入またはノックアウトモデルであってよい。加えて、哺乳動物モデルは、本明細書に記載されているAPP695−SWなどのAPPにおける突然変異を発現してもよい。遺伝子導入非ヒト哺乳動物モデルの例は、米国特許第5604102号明細書、同第5912410号明細書および同第5811633号明細書に記載されている。
【0249】
Hsiaoら、1996年に記載されているように調製したTg2576マウスは、推定阻害化合物の存在下でのAベータ放出のインビボ抑制を分析するために有用である。Tg2576マウスに、20%DMSO:20%エタノール:60%ポリエチレングリコールなどの媒体中で製剤されている化合物を投与する。マウスに、化合物(100〜300mg/kg、好ましくは1〜100mg/kg)を投与する。例えば3〜10時間の後に、動物をと殺し、分析のために脳を取り出す。
【0250】
遺伝子導入動物に、選択された投与方法に適している担体中で製剤されている化合物阻害剤量を投与する。対照動物は、処理しないか、媒体で処理するか、不活性な化合物で処理する。投与は、急性、すなわち、1日単回投与または複数回投与であってもよいし、持続的であってもよく、すなわち、数日間、数週間または数カ月間、投与を毎日繰り返す。0時点で開始する際に、脳組織または脳脊髄液または血漿を選択された動物から得て、例えばAベータ検出のための特異的抗体を使用するイムノアッセイにより、Aベータを含むAPP分解ペプチドの存在に関して分析する。試験期間の終了時に、動物をと殺し、脳組織または脳脊髄液または血漿を、Aベータ、sAPPβおよび/またはベータ−アミロイドプラークの存在に関して分析する。さらに組織を、変性の兆候に関して分析する。
【0251】
本発明の化合物阻害剤を投与された動物は、非処置対照と比較して、脳組織または脳脊髄液または血漿中の低減されたAベータおよび/または脳組織中の低減されたベータアミロイドプラークを証明すると予測される。
【0252】
(実施例E)
ヒト患者でのAベータ産生の阻害
アルツハイマー病(AD)を患っている患者は、脳内での多量のAベータを実証する。AD患者に、選択された投与方法に適している担体中で製剤されている化合物阻害剤量を投与する。投与を、試験期間の間、毎日繰り返す。認識および記憶試験を、0日目から始めて、例えば1カ月に1回行う。
【0253】
化合物阻害剤を投与された患者は、次の疾患パラメーターのうちの1つまたは複数の変化により分析される疾患進行の遅延または安定化を証明すると予測される:対照、非治療患者と比較しての、CSFまたは血漿中に存在するAベータ;脳または海馬容量;脳でのAベータ堆積;脳でのアミロイドプラーク;ならびに認識および記憶機能に関するスコア。
【0254】
(実施例F)
ADのリスクを有する患者におけるAベータ産生の予防
ADを罹患しやすいか、発生するリスクを有する患者は、家族遺伝パターン、例えばスウェーデン突然変異の存在を認識することにより、および/または診断パラメーターをモニタリングすることにより、同定される。ADを罹患しやすいか、発生するリスクを有すると同定された患者に、選択された投与方法に適している担体中で製剤されている化合物阻害剤量を投与する。投与を、試験期間の間、毎日繰り返す。認識および記憶試験を、0日目から始めて、例えば1カ月に1回行う。
【0255】
化合物阻害剤を投与された患者は、次の疾患パラメーターのうちの1つまたは複数の変化により分析される疾患進行の遅延または安定化を証明すると予測される:対照、非治療患者と比較しての、CSFまたは血漿中に存在するAベータ;脳または海馬容量;脳でのアミロイドプラーク;ならびに認識および記憶機能に関するスコア。
【0256】
本発明を、様々な具体的で好ましい実施形態および技術を参照しつつ記載した。しかしながら、本発明の意図および範囲内でありつつ、多くの変化および変更を行うことができることは、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩:
【化1】

[式中、
Wは、(i)H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cアルキルからそれぞれ独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいC〜C10アリールならびに(ii)H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cアルキルからそれぞれ独立に選択される1から3個の置換基で置換されていてもよいC〜C10ヘテロアリールからなる群から選択され、
は、例えば−CH、CHFまたは−CFなどの3個までのフッ素原子で置換されていてもよいC〜Cアルキルであり、
およびRはそれぞれ独立に、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cシクロアルキル、5員から10員のヘテロアリールおよびC〜C14アリールからなる群から選択され、
は、H、SO−C〜Cアルキル、C(=O)−C〜Cアルキル、C(=O)CHO−C〜Cアルキル、C(=O)NH、C(=O)NHC〜Cアルキル、C(=O)N(C〜Cアルキル)、C(=O)O−C〜Cアルキル、C〜C10ヘテロアリールおよびC〜C10アリールからなる群から選択され、
nは、1〜4であり、
mは、1〜4である]。
【請求項2】
前記化合物が、式Iaの化合物である、請求項1に記載の化合物:
【化2】

[式中、
、R、Rはそれぞれ独立に、H、ハロゲン、CN、NO、OH、O−C〜Cアルキル、NH、NH−C〜Cアルキル、N(C〜Cアルキル)、NHCO−C〜CアルキルおよびCONH−C〜Cアルキルからなる群から選択される]。
【請求項3】
がフルオロである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がフルオロである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
がCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、ネオペンチルおよびt−ブチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、CHS(O)(メチルスルホニル)、CHCOおよびCHOCOからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
mが1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
nが1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
がフルオロであり、Rがフルオロであり、RがHであり、RがCHであり、Rが、ネオペンチルおよびt−ブチルからなる群から選択され、RがHであり、Rが、CHS(O)(メチルスルホニル)、CHCOおよびCHOCOからなる群から選択され、mが1または2であり、nが1または2である、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、光学異性体Iaaまたは該光学異性体Iaaの鏡像異性体:
【化3】

である、請求項2に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が光学異性体Iaaである、請求項14に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、
N−[3−{[(3−t−ブチル−フェニル)−(1−メタンスルホニル−アゼチジン−3−イル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−(1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−3−{[[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−(1−メタンスルホニル−アゼチジン−3−イル)−メチル]−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−アセトアミド;
N−[3−{[(1−アセチル−アゼチジン−3−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−アゼチジン−3−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アゼチジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アゼチジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピロリジン−1−スルホン酸;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピロリジン−1−スルホン酸;
N−[3−{[(1−アセチル−ピロリジン−3−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−ピロリジン−3−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
3−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピロリジン−1−カルボン酸メチルエステル;
3−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピロリジン−1−カルボン酸メチルエステル;
4−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピペリジン−1−スルホン酸;
4−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピペリジン−1−スルホン酸;
N−[3−{[(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−アミノ}−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−({(1−アセチル−ピペリジン−4−イル)−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−アミノ)−1−(3,5−ジフルオロ−ベンジル)−2−ヒドロキシ−プロピル]−アセトアミド;
4−[[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−(3−t−ブチル−フェニル)−メチル]−ピペリジン−1−カルボン酸メチルエステル;および
4−{[3−アセチルアミノ−4−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−ブチルアミノ]−[3−(2,2−ジメチル−プロピル)−フェニル]−メチル}−ピペリジン−1−カルボン酸メチルエステル
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できる担体を含有する医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が、アルツハイマー病(AD)、軽度認識障害、ダウン症、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管障害、血管性および変性性混合型認知症、パーキンソン病に伴う認知症、進行性核上麻痺に伴う認知症、皮質基底変性に伴う認知症、多発梗塞性認知症、アルコール性認知症もしくは他の薬物関連認知症、頭蓋内腫瘍もしくは脳損傷に伴う認知症、ハンチントン病に伴う認知症またはAIDS関連認知症、広汎性レビ体型アルツハイマー病、パーキンソン症候群を伴う前頭側頭骨認知症(FTDP)、封入体筋細胞腫、核上白内障、加齢性黄斑変性(AMD)、ハンチントン病、パーキンソン病、不穏下肢症候群、脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、神経系の脱随疾患、末梢神経障害、ピン、脳アミロイド血管障害、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ドーパミンアゴニスト治療に伴う運動障害、精神発達遅滞、学習障害、加齢性認識低下、健忘性障害、神経弛緩薬誘発パーキンソン症候群、遅発性運動障害、トゥーレット症候群、多発性硬化症ならびに急性および慢性神経変性障害からなる群から選択される障害または状態を治療するための組成物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
治療を必要とする哺乳動物に、請求項1に記載の化合物を投与することを含む、β−セクレターゼを阻害することにより治療されうる障害または状態の治療方法。
【請求項19】
治療を必要とする哺乳動物に、請求項1に記載の化合物を投与することを含む、アルツハイマー病(AD)、軽度認識障害、ダウン症、オランダ型のアミロイド症を伴う遺伝性脳出血、脳アミロイド血管障害、血管性および変性性混合型認知症、パーキンソン病に伴う認知症、進行性核上麻痺に伴う認知症、皮質基底変性に伴う認知症、多発梗塞性認知症、アルコール性認知症もしくは他の薬物関連認知症、頭蓋内腫瘍もしくは脳損傷に伴う認知症、ハンチントン病に伴う認知症またはAIDS関連認知症、広汎性レビ体型アルツハイマー病、パーキンソン症候群を伴う前頭側頭骨認知症(FTDP)、封入体筋細胞腫、核上白内障、加齢性黄斑変性(AMD)、ハンチントン病、パーキンソン病、不穏下肢症候群、脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、神経系の脱随疾患、末梢神経障害、ピン、脳アミロイド血管障害、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ドーパミンアゴニスト治療に伴う運動障害、精神発達遅滞、学習障害、加齢性認識低下、健忘性障害、神経弛緩薬誘発パーキンソン症候群、遅発性運動障害、トゥーレット症候群、多発性硬化症ならびに急性および慢性神経変性障害からなる群から選択される障害または状態を治療する方法。
【請求項20】
治療を必要とする患者に、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与することを含む、アルツハイマー病の発症を予防するまたは遅延させるか、軽度認識障害からアルツハイマー病へと進行することが予測される患者においてアルツハイマー病の発症を予防するまたは遅延させるか、あるいは、単発性および再発性大葉出血などの脳アミロイド血管障害の起こりうる結果を予防する方法。

【公表番号】特表2008−523135(P2008−523135A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546211(P2007−546211)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003687
【国際公開番号】WO2006/064324
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】