説明

ヘテロ元素を有する脂環式アミノ酸誘導体およびその製造方法

【課題】所望の機能性ペプチドを構成し得る、キラルかつヘテロ元素を有するα,α−二置換環状アミノ酸に変換可能な当該脂環式アミノ酸誘導体を製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法によれば、以下の式(I):
【化1】


で表される光学活性な複素脂環式アミノ酸誘導体が、より簡便にかつ効率良く製造され得る。本発明のアミノ酸誘導体は、機能性ポリペプチドのコンフォメーションの自由度を制限し、その薬理活性や生理活性を増強させるための、所望のα,α−二置換環状アミノ酸に容易に変換して用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ元素を有する脂環式アミノ酸誘導体およびその製造方法に関し、より詳細には、キラルかつヘテロ元素を有する環状α,α−二置換アミノ酸に変換可能な当該複素脂環式α,α−二置換アミノ酸誘導体をより簡便にかつ効率良く製造し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペプチドとは、同種または異種の少なくとも2種のα−アミノ酸が互いに一方のカルボキシル基と他方のアミノ基とのアミド結合(ペプチド結合)を形成することにより得られた化合物を総称していう。このようなペプチドは、生体機能と深く関係し、その種類によっては様々な薬理活性や生理活性があることが知られている。
【0003】
他方、ペプチドまたはその一部を構成するα−アミノ酸の代わりに、α,α−二置換アミノ酸を導入すると、ペプチド全体の三次元的立体構造が変化するため、当該ペプチドの薬理活性や生理活性が変動(好ましくは増強)すると考えられている。特に、α,α−二置換アミノ酸内のα位の二つの置換基が互いに結合して環を形成すると、側鎖の立体構造(コンフォメーション)が固定される結果、もとのペプチドに内在する活性が増幅すると期待され得る。
【0004】
従来から、非天然の機能性タンパク質や生理活性ペプチドアナログを有機化学的に構築しようとする試みが種々検討されている。これらの試みにおいて、非特許文献1によれば、過去、構成単位となるべきα,α−二置換環状アミノ酸として、以下の式:
【0005】
【化1】

【0006】
で表されるα,α−二置換環状アミノ酸、ならびに以下の式:
【0007】
【化2】

【0008】
で表されるキラルな環状α,α−二置換アミノ酸が合成されたことが開示されている。このような環状α,α−二置換アミノ酸およびそれらの合成方法は、それを含むペプチドのコンフォメーションの自由度を制限し、ペプチドの立体構造を、活性発現時の実際の立体構造に固定する可能性を提供することから、発現機能性ペプチドのde novo設計、生理活性ペプチドの分子設計あるいはタンパク質工学に関連する分野において、今後も重要な役割を果たすと考えられている。
【0009】
他方、環状α,α−二置換アミノ酸の環構造の非対称位置にヘテロ元素を導入することができれば、その近傍に存在する官能基との相互作用を変化させることができる。さらにα−炭素が不斉になれば、導入されたヘテロ元素の位置を、三次元の立体空間の中で固定することができる。その結果、環状α,α−二置換アミノ酸を使えば、生理活性ペプチドの構造活性相関に関する研究を強力に展開することができる。そのため、環状α,α−二置換アミノ酸の環内部の非対称な位置にヘテロ元素を導入した、まったく新規なキラル(非対称)環状α,α−二置換アミノ酸を立体選択的に合成することが検討されている。
【0010】
しかし、このようなヘテロ元素を有する、キラル環状α,α−二置換アミノ酸は、4級不斉炭素を立体選択的に構築すること自体がきわめて困難である上、ヘテロ元素を位置選択的に環の中に導入しなくてはならないため、その合成は極めて困難である。
【非特許文献1】田中正一,有機合成化学協会誌,2002年,第60巻,第2号,p.35−46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、所望の機能性ペプチドを構成し得る、キラルかつヘテロ元素を有する環状α,α−二置換アミノ酸に変換可能な当該複素脂環式アミノ酸誘導体をより簡便にかつ効率良く製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の式(I)で表される化合物を提供する:
【0013】
【化3】

【0014】
ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す。
【0015】
1つの実施態様では、上記式(I)で表される化合物のRは、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基である。
【0016】
本発明は、以下の式(I)で表される化合物:
【0017】
【化4】

【0018】
の製造方法を提供し、該方法は、
以下の式(II):
【0019】
【化5】

【0020】
で表される化合物に、非プロトン性の極性溶媒中、アルカリ金属の水酸化物塩を作用させる工程を包含し、
ここで、
該式(I)および該式(II)において、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表し、そして
該式(II)において
Yは脱離能を有する置換基である。
【0021】
1つの実施態様では、上記式(I)で表される化合物および上記式(II)で表される化合物のRは、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基であり、そして上記式(II)で表される化合物のYは、ハロゲン原子である。
【0022】
1つの実施態様では、上記非プロトン性の極性溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、およびN,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である。
【0023】
1つの実施態様では、上記アルカリ金属の水酸化物塩は、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムである。
【0024】
1つの実施態様では、上記式(I)で表される化合物は、上記式(II)で表される化合物のキラリティーを保持した化合物である。
【0025】
本発明はまた、光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法を提供し、該方法は、
以下の式(I)で表される化合物:
【0026】
【化6】

【0027】
(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物のエステル基(−CO)を塩基性条件下で加水分解する工程;および
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程;を包含する。
【0028】
本発明はまた、光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法を提供し、該方法は、
以下の式(I)で表される化合物:
【0029】
【化7】

【0030】
(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程;および
該化合物のエステル基(−CO)を酸性または塩基性条件下で加水分解する工程;を包含する。
【0031】
本発明はさらに、光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法を提供し、該方法は、
以下の式(I)で表される化合物:
【0032】
【化8】

【0033】
(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させると同時に、該化合物のエステル基(−CO)を加水分解する工程;を包含する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、特別な製造設備を必要とすることなく、環内にヘテロ元素を含む所望の複素脂環式α,α−二置換アミノ酸誘導体を効率良くかつ簡易に製造することができる。特に、本発明によれば、反応後に光学分割などの追加の操作を必要とすることなく優れた光学純度で、ヘテロ元素を含む脂環式α,α−二置換アミノ酸誘導体を立体選択的に製造することができる。本発明で得られたヘテロ元素を含む脂環式α,α−二置換アミノ酸誘導体はまた、ヘテロ元素を含む脂環式α,α−二置換アミノ酸に、容易に変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を詳述する。
【0036】
本発明の化合物は、以下の式(I)で表される:
【0037】
【化9】

【0038】
ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す。
【0039】
用語「分岐していてもよいC〜Cのアルキル基」は、炭素数1〜nの任意の直鎖アルキル基および炭素数3〜nの任意の分岐鎖アルキル基を包含する。具体的には、炭素数1〜4の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびn−ブチル基が挙げられ、炭素数3〜4の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、およびtert−ブチル基が挙げられる。
【0040】
用語「アルコキシカルボキシル基を有する保護基」とは、アミノ基の保護基として公知のカーバメート系保護基をいう。例えば、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)などが挙げられる。例えば、Bocは、トリフルオロ酢酸または塩酸−酢酸エチル溶液などの強酸性条件下で脱保護することができ、Cbzは、パラジウムを触媒とした水素添加反応、バーチ還元などで脱離させることができ、そしてFmocは、ピペリジンなどの二級アミンを用いることによって脱保護できる。本発明においては、入手および取り扱いの容易性の点で、Boc、Cbz、およびFmocが好適に用いられる。
【0041】
上記式(I)で表される化合物は、後述する光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸を製造するための前駆体として有用である。
【0042】
上記式(I)で表される化合物は、以下の式(II):
【0043】
【化10】

【0044】
で表される化合物に、非プロトン性の極性溶媒中、アルカリ金属の水酸化物塩を作用させる工程を包含する方法により製造することができる。ここで、上記式(II)において、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、
*は不斉中心を表し、そして
Yは脱離能を有する置換基である。
【0045】
脱離能を有する置換基とは、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離性の高い基をいう。本発明においては、ハロゲン原子が好ましい。
【0046】
上記式(II)で表される化合物は、例えば、Xが酸素原子である場合にはセリンを出発物質として、セリンのキラリティーを保持したまま、すなわちラセミ化を伴うことなく、6工程の公知の方法により合成することができる。
【0047】
例えば、Xが酸素原子でありそしてnが2である場合、L−セリンを出発物質として、以下のスキームに示すような工程で合成され得る。代表的には、まず、L−セリンのカルボン酸基に対して保護基が導入され(エステル化)、その後アミノ基に対して保護基(例えば、Boc、Cbz)が導入される。あるいは、まず、L−セリンのアミノ基に対して保護基(例えば、Boc、Cbz)が導入され、その後カルボン酸基に対して保護基が導入される(エステル化)。これらの保護基の導入は、当該技術分野で周知の方法により行われる。次いで、例えば、以下の調製例に具体的に記載する方法によって、式(II)で表される化合物が合成される。
【0048】
【化11】

【0049】
このようにして、式(II)で表される化合物は、公知の方法を組み合わせることによって、当業者であれば合成することができる。
【0050】
本発明の方法において、アルカリ金属の水酸化物塩としては、水酸化カリウムおよび水酸化セシウムが挙げられる。
【0051】
本発明の方法において、非プロトン性の極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、およびN,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、混合して用いてもよい。本発明の方法においては、DMSOが好適に用いられる。
【0052】
上記反応において、アルカリ金属の水酸化物塩は、式(II)で表される化合物に対して好ましくは0.5当量〜5当量、より好ましくは1当量〜3.5当量で用いられる。アルカリ金属の水酸化物塩は、予め非プロトン性の極性溶媒に溶解されていることが好ましい。
【0053】
上記反応において、式(II)で表される化合物は、非プロトン性の極性溶媒中に、好ましくは3〜7%(w/v)、より好ましくは4〜6%(w/v)の濃度になるように溶解される。分子内のアルキル化反応では、基質濃度が高いと、分子間反応を誘発するため、通常、低い基質濃度、例えば2%(w/v)程度の濃度で反応を行う。しかし、本発明の方法においては、より高い基質濃度で反応を行うことができるため、目的の化合物(I)を効率よく得ることができる。
【0054】
反応温度は、好ましくは約10℃〜40℃であり、より好ましくは室温で反応が行われる。反応時間は、好ましくは5分間〜24時間、より好ましくは10分間〜6時間である。反応は、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行われる。反応終了後、反応混合物を、当業者が通常行う手順で、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチルなどにより抽出し、必要に応じてシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどによって単離・精製することにより、式(I)の化合物を得ることができる。
【0055】
このような本発明の方法においては、脱離能を有する置換基を有する式(II)で表される化合物がアルカリ金属の水酸化物塩により、α位炭素での不斉環化を生じる。そのため、この方法により得られた式(I)で表される化合物は、原料である上記式(II)で表される化合物のキラリティーを保持している。
【0056】
本発明の式(I)で表される化合物は、
(i)−CHORを脱離させる工程;
(ii)該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程;および
(iii)エステル基(−CO)を酸性または塩基性条件下で加水分解する工程;
により、光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸に変換することができる。上記工程(i)〜(iii)を行う順序は特に制限されない。
【0057】
例えば、式(I)で表される化合物から、(i)−CHORを脱離させる工程、(ii)保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程、および(iii)エステル基(−CO)を酸性または塩基性条件下で加水分解する工程、をこの順で行ってもよい。あるいは、式(I)で表される化合物から、(i)−CHORを脱離させる工程、(iii)エステル基(−CO)を塩基性条件下で加水分解する工程、および(ii)保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程、をこの順で行ってもよい。あるいは、(i)−CHORを脱離させる工程、次いで(ii)保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させると同時に、(iii)エステル基(−CO)を加水分解する工程を行ってもよい。
【0058】
本発明において、−CHORを脱離させる工程で採用される方法は、保護基である−CHORを脱離し得る方法であれば、特に限定されない。より詳細には、保護基を構成するRの種類によって、以下のような方法が採用され得る。例えば、メトキシメチル基(MOM基)のようにRが低級アルキル基(分岐していてもよいCからCのアルキル基)である場合、式(I)で表される化合物を、鉱酸またはルイス酸で処理することによって当該脱離を達成し得る。鉱酸の例としては、塩酸が挙げられる。ルイス酸の例としては、BF・O(C、(CHSiClなどが挙げられる。一方、例えば、Rがベンジル基である場合、当該脱離は、式(I)で表される化合物を、上記と同様の鉱酸またはルイス酸で処理すること、および式(I)で表される化合物の接触還元などの還元的方法を用いることによっても達成し得る。
【0059】
保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程においては、上述のように、例えば、Bocは、トリフルオロ酢酸または塩酸−酢酸エチル溶液などの強酸性条件下で脱保護することができ、Cbzは、パラジウムを触媒とした水素添加反応、バーチ還元などで脱離させることができ、そしてFmocは、ピペリジンなどの二級アミンを用いることによって脱保護できる。その他、溶媒は、反応を妨げないものであれば特に限定されない。
【0060】
エステル基(−CO)を酸性または塩基性条件下で加水分解する工程では、アミノ酸製造分野における通常用いられる酸性または塩基性のいずれかの条件下でのエステル加水分解方法を用いることができる。例えば、目的化合物を、含水アルコール(含水エタノールなど)中、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と反応させることにより、当該加水分解を行うことができる。
【0061】
このようにして、式(I)で表される複素脂環式α,α−二置換アミノ酸誘導体から、そのキラリティーを保持した光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸を容易に得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述するが、これらによって本発明は制限されるものではない。
【0063】
【化12】

【0064】
(調製例1:化合物2の合成)
【0065】
【化13】

【0066】
(S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−セリンエチルエステル(化合物1)(5.99g,25.7mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(297mg,0.257mmol)および炭酸アリルメチル(3.86mL,33.4mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)溶液(257mL)をアルゴン雰囲気下、60℃で12時間攪拌を行った。反応終了後、反応混合物を減圧濃縮し、酢酸エチルを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物2(5.39g,収率90%)を得た。得られた化合物2の物性データを表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(調製例2:化合物3の合成−1)
【0069】
【化14】

【0070】
上記調製例1で得た化合物2(1.0g,3.61mmol)のTHF(30mL)溶液を−78℃に冷却し、アルゴン雰囲気下、ヘキサメチルリン酸トリアミド(12.2mL,7.22mmol)のTHF(30mL)溶液およびリチウムヘキサメチルジシラジドのTHF溶液を滴下して攪拌した。なお、リチウムヘキサメチルジシラジドのTHF溶液は、ヘキサメチルジシラザン(0.72mL,3.43mmol)のTHF(6mL)溶液を0℃で攪拌し、n−ブチルリチウム(1.42Mヘキサン溶液,2.39mL,3.43mmol)を滴下し、10分間攪拌することより調製した。30分間攪拌した後、反応溶液にクロロメチルメチルエーテル(1.37mL,18.0mmol)を滴下した。4時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液に一気に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:1,4−ジオキサン=15:1→9:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物3(975mg,収率85%,87%ee)を得た。得られた化合物3の物性データを表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
(調製例3:化合物4の合成)
【0073】
【化15】

【0074】
上記調製例2で得た化合物3(975mg,307mmol)のジクロロメタン(8.9mL)とエタノール(8.9mL)の混合溶媒を−78℃に冷却し、オゾンガスを吹き込みながら攪拌した。30分間攪拌した後、アルゴン置換を行い水素化ホウ素ナトリウム(174mg,4.61mmol)を加え、0℃で3時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物4(706.7mg,収率72%)を得た。得られた化合物4の物性データを表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
(調製例4:化合物5の合成)
【0077】
【化16】

【0078】
上記調製例3で得た化合物4(707mg,2.20mmol)のピリジン(0.88mL)溶液を0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(0.187mL,2.42mmol)を加えて攪拌した。3時間攪拌後、水を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を10%(w/v)塩酸および10%(w/v)炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮した。得られた残渣をアセトン(7.3mL)に溶解し、ヨウ化ナトリウム(989mg,6.60mmol)を加えて50℃で攪拌した。4時間攪拌後、水を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を10%(w/v)チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物5(710.7mg,収率75%)を得た。得られた化合物5の物性データを表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
(実施例1:化合物6の合成−1)
【0081】
【化17】

【0082】
水酸化カリウム(78.7mg,1.40mmol)のDMSO(2mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、上記調製例4で得た化合物5(201.7mg,0.468mmol)のDMSO(2.7mL)溶液を室温で滴下した。3時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮した。得られた残渣を分取カラムクラマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物6(84.7mg,収率60%,66%ee)を得た。得られた化合物6の物性データを表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
(実施例2:化合物6の合成−2)
【0085】
【化18】

【0086】
水酸化セシウム(60.7mg,0.407mmol)のDMSO(1mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、上記調製例4で得た化合物5(117.0mg,0.271mmol)のDMSO(1.7mL)溶液を室温で滴下した。20分間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下濃縮した。得られた残渣を分取カラムクラマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物6(48.1mg,収率59%,74%ee)を得た。
【0087】
(調製例5:化合物3の合成−2)
【0088】
【化19】

【0089】
上記調製例1で得た化合物2(1.0g,3.61mmol)のTHF(30mL)溶液を−78℃に冷却し、アルゴン雰囲気下、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(8.77mL,7.22mmol)のTHF(30mL)溶液およびリチウムヘキサメチルジシラジドのTHF溶液を滴下して攪拌した。なお、リチウムヘキサメチルジシラジドのTHF溶液は、ヘキサメチルジシラザン(0.68mL,3.24mmol)のTHF(6mL)溶液を0℃で攪拌し、n−ブチルリチウム(1.42Mヘキサン溶液,2.28mL,3.24mmol)を滴下し、10分間攪拌することにより調製した。30分間攪拌後、反応溶液にクロロメチルメチルエーテル(1.37mL,18.0mmol)を滴下した。4時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液に一気に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:1,4−ジオキサン=15:1→9:1(v/v))で精製することにより、目的の化合物3(702.2mg,により、収率61%,99%ee)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、高価かつ複雑な製造設備を必要とすることなく、環内にヘテロ元素を含有する、α,α−二置換脂環式アミノ酸誘導体を、優れた光学純度および反応効率でかつ簡易に製造することができる。このようにして製造された光学活性なα,α−二置換脂環式アミノ酸誘導体は、例えば、機能性ペプチドの構成材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される化合物:
【化1】

ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す。
【請求項2】
が、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の式(I)で表される化合物:
【化2】

の製造方法であって、
以下の式(II):
【化3】

で表される化合物に、非プロトン性の極性溶媒中、アルカリ金属の水酸化物塩を作用させる工程を包含し、
ここで、
該式(I)および該式(II)において、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表し、そして
該式(II)において
Yは脱離能を有する置換基である、方法。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物および前記式(II)で表される化合物のRが、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基であり、そして前記式(II)で表される化合物のYが、ハロゲン原子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非プロトン性の極性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、およびN,N’−ジメチルプロピレンウレアからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属の水酸化物塩が、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムである、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)で表される化合物が、前記式(II)で表される化合物のキラリティーを保持した化合物である、請求項3から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法であって、
以下の式(I)で表される化合物:
【化4】

(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物のエステル基(−CO)を塩基性条件下で加水分解する工程;および
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程;を包含する、方法。
【請求項9】
光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法であって、
以下の式(I)で表される化合物:
【化5】

(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させる工程;および
該化合物のエステル基(−CO)を酸性または塩基性条件下で加水分解する工程;を包含する、方法。
【請求項10】
光学活性な複素脂環式α,α−二置換アミノ酸の製造方法であって、
以下の式(I)で表される化合物:
【化6】

(ここで、
は、分岐していてもよいCからCのアルキル基であり、
は、アルコキシカルボキシル基を有する保護基であり、
は、分岐してもよいCからCのアルキル基、またはベンジル基であり、
Xは、酸素原子または硫黄原子であり、
nは2から4の整数であり、そして
*は不斉中心を表す)
の−CHORを脱離させる工程;
該化合物から、該保護基Rに応じた条件下で該保護基Rを脱離させると同時に、該化合物のエステル基(−CO)を加水分解する工程;を包含する、方法。

【公開番号】特開2009−263272(P2009−263272A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114479(P2008−114479)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月1日 http://nenkai.pharm.or.jp/128/web/を通じて発表
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】