説明

ヘテロ環式発色団の構造

【課題】ヘテロ環式発色団の構造の提供。
【解決手段】本発明は、式(I)の形態のNLO発色団、並びに、その許容され得る塩、溶媒和物及び水和物に関し、式中、Z1−4、X1−4、π1−2、D及びAは明細書中に定義されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ環式発色団の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電子光学(EO)材料は、位相段列レーダー(phased array radar)、人工衛星及びファイバー電気通信、ケーブルテレビ(CATV)、航空機及びミサイル誘導用の光学ジャイロスコープ、電子妨害手段システム(ECM)システム、高速演算用のバックプレーン相互接続、超高速アナログ−デジタル変換、地雷探知、高周波フォトニクス、空間光モジュレーション及びあらゆる光学的(光−スイッチング−光)シグナル処理を含む、広範なシステム及びデバイスにおいて、中核的な用途に使用できる可能性が非常に高い。
【0003】
非線形光学的材料は、電場又は入射光(2光子吸収)が外部から印加されると、これらの一次、二次、三次及び高次分極率を変動させることができる。電気通信の用途においては、二次分極率(超分極率又はβ)及び三次分極率(二次超分極率又はγ)には、現在大きな関心が寄せられている。過分極率は、電場の印加に応答するNLO材料の屈折率変化に関連している。二次超分極率は、光子の吸光度に応じる屈折率の変化に関連しており、従って全光学的なシグナルの処理に適切である。非線形光学材料については、非特許文献1及び2中により詳細に議論されている。
【0004】
高い分子電子光学的特性を有する多くのNLO分子(発色団)が合成されてきた。分子双極子モーメント(μ)及び過分極率(β)の生成物は、双極子の材料加工への関与による分子の電子光学的性能の尺度として用いられることが多い。Disperse Red(DR)は、Bell Labsが1960年代に、並外れたNLO特性を有するとして最初に評価した発色団の1つであり、これは、580×10−48esuの電子光学係数μβを示す。FTC、CLD及びGLDを含む現在の分子設計は、10,000×10−48esuを超えるμβ値を示す。非特許文献3、特許文献1を参照。
【0005】
しかし、微視的な分子の過分極率(β)を巨視的な材料の過分極率(χ(2))に翻訳するのは非常に困難であった。というのは、分子の補助的な成分(発色団)を、(i)高度な巨視的非線形性、及び、(ii)十分な一時的、温度的、化学的及び光化学的安定性を示すNLO材料に組みこまなければならないからである。これら両方の問題を同時に解決することは、多くの政府機関並びに市販のデバイス及びシステムにおいてEOポリマーを広範に工業化する際に、最終的に推進力になると考えられる。
【0006】
NLO発色団は凝集性が乏しいため、高過分極率材料(X(2))の製造は制限される。工業的に使用できる材料は、単一の材料軸の周囲に統計的に配向した所望の分子モーメントを有する発色団を含んでいなければならない。このような機構とするために、NLO発色団の電荷移動(双極子)の性質は、通常、材料加工中に外部電場を印加して、非中心対称性次元に有利な低エネルギー状態の局在化を生じさせることによって開発される。残念ながら、発色団密度が中程度である場合においても、分子は、実際の電場エネルギーを介して除去できない多分子双極性結合(中心対称性)凝集体を形成する。その結果、NLO材料の性能は、約20〜30%の重量負荷の後に顕著に減少する傾向がある。この状況を解決する方法の一つは、非常に低いモル濃度において所望の過分極を生じ得る、性能の高い発色団の製造である。
【0007】
科学界全体にわたって用いられている分子構造の性質が原因で、性能の高いNLO発色団の製造はほとんど失敗している。現在のところ、性能の高い発色団(例えば、CLD、FTC、GLD等)は全て、一重と二重が交互になったπ共役共有結合の長い「裸の」鎖を含む。Dr.Seth Marderらの研究者がこのような「結合交互」システムの量子力学的機能に関して深くかつ詳細に研究したが、この研究は本発明者らにとってNLO現象の起源を現在理解するのに欠かせないほど重要であり、これによって現在の化学工学的な成果が導かれた。これらの鎖が長くなると、通常はNLOの性質が改善されるが、この鎖が約2nmより長くなると材料性能の改善はほとんど又は全く記録されない。これはおそらく、主に以下に起因する:(i)共役原子鎖の屈曲及び回転によってシステムのπ導電が妨げられ、これにより、得られるNLOの性質が劣化すること、及び、(ii)極性調整過程において周囲の立体障害により、この大きな分子システムが材料マトリックスの中で配向できないこと。従って、発色団構造物は今後、以下の2つの重要な性質を有していなければならない:(i)大きな剛直度、及び、(ii)NLO活性を小さな分子空間内に集めるための小さな共役システム。
【0008】
長期の熱的、化学的及び光化学的安定性は、有効なNLO材料の構築において最も重要な点のひとつである。材料が不安定となるのは、主に以下の3つの要因によるものである:(i)高電場極性調整過程又は分子及び分子内共鳴エネルギーにおける光子吸収のいずれかに起因する分子及び/又は分子内(CT)電荷遷移又は(準)分極によって、NLO発色団が求核攻撃を受け易くなるため;(ii)光誘導シス−トランス異性体化によって分子が運動することにより、経時的に分子が再配向して、性能の劣る中心対称性配置になるため;かつ(iii)裸の交互結合発色団の構造に特有の反応性によって、NLO発色団が架橋ポリマーマトリックス全体に非常に組み込まれにくいため。従って、今後の発色団構造物は:(i)CT及び/又は準極性状態安定性が改善されなければならない;(ii)光誘導シス−トランス異性体化を受ける構造を含んではならない;かつ(iii)裸の交互結合を可能な限り全て排除することによって、重合に対する耐性が高くなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許WO00/09613号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D. S. Chemla and J. Zyss, Nonlinear optical properties of organic molecules and crystals, Academic Press, 1987
【非特許文献2】K.−S. Lee, Polymers for Photonics Applications I, Springer 2002
【非特許文献3】Daltonら, “New Class of High Hyperpolarizability Organic Chromophores and Process for Synthesizing the Same”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、全体的にヘテロ環式である非芳香族発色団の設計についての技術革新によって、上記の要求の充足を追求する。本明細書中に記載のヘテロ環式システムは、屈曲又は回転しやすい裸の結合交互鎖を含まない。中心の非芳香族導電体は、分子を準CT状態に「引く」; なぜなら、芳香族性および非CT状態は、いずれも好ましい低エネルギー条件であり、本明細書中に記載の分子システム内での電荷移動および芳香族性は、競合する場の内部で互いに対抗する状態に置かれているからである。この競合する状況は、CAPP工学または電荷−芳香族性プッシュ−プル(Push−Pull)として知られる。結果として、非芳香族システムを組み込むことにより、顕著に高いNLO特性を有するより短い分子長を提供する中心π共役架橋の導電特性が劇的に改善される。本明細書中に記載の全てのシステムは、それらの中間の準分極状態においてそれらのCT状態および準芳香族にある芳香族であるので、この構造は、分極状態の安定性を劇的に改善することが予想される。さらに、新規の電子受容システムが本明細書中に記載されているが、これらは励起状態及び準CT非局在化が顕著に改善されていて、システム全体が求核攻撃をより受けにくくすると予測される。本明細書中に記載のシステムは全てヘテロ環式であるため、材料及び分子の両方の分解の原因として疑われる光誘導シス−トランス異性体化があってはならない。最後に、本発明は、重合に対して活性のある裸の交互結合を有しない発色システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一次、二次、三次及び/又は高次分極率を生じさせるための、式Iの形態のNLO発色団又はその許容され得る塩に関する:
【0013】
【化1】

【0014】
式中、(p)は0〜6であり;
【0015】
【化2】

【0016】
はそれぞれ独立して共有化学結合であり;
【0017】
1−4はC、N、O又はSから独立して選択され;
【0018】
1−4は独立してN、CH又はCRであり、式中、Rは以下で定義するとおりであり;
【0019】
Dは、Aの電子親和性と等しい又はそれより低い電子親和性を有する有機電子供与基であり、πが存在する場合、Dは2つの原子位置X及びXで上記分子の残りに結合し、πが存在しない場合、Dは2つの原子位置Z及びCで上記分子の残りに結合していて;
【0020】
Aは、Dの電子親和性と等しい又はそれより高い電子親和性を有する有機電子受容基であり、πが存在する場合、Aは2つの原子位置X及びXで上記分子の残りに結合し、πが存在しない場合、Aは2つの原子位置Z及びCで上記分子の残りに結合していて;
【0021】
πは、X及びXを含む、かつ、存在しない、又は、原子対Z及びC
【0022】
【化3】

【0023】
に結合して電子共役をDとC、C、C、C、Z、Z、Z及びZを含む非芳香系との間に提供する架橋であり;
【0024】
πは、X及びXを含む、かつ、存在しない、又は、原子対C及びZ
【0025】
【化4】

【0026】
に結合して電子共役をAと上記非芳香系との間に提供する架橋であり;
【0027】
Rは、以下から独立して選択され:
【0028】
(i)式IIのスペーサーシステム又はその許容され得る塩:
【0029】
【化5】

【0030】
式中、Rは、C−C10アリール、C−C10ヘテロアリール、4〜10員環ヘテロ環状基又はC−C10飽和環状基であり;上記環状部位中の1又は2個の炭素原子はオキソ(=O)部位で任意に置換されていてもよく;かつ、上記R3基は1〜3個のR基で任意に置換されていてもよく;
【0031】
及びRは、Rの定義に列挙された置換基、(CH(C−C10アリール)又は(CH(4〜10員環ヘテロ環)から独立して選択され、tは0〜5の範囲の整数であり、かつ、上記R及びR基は1〜3個のR基で任意に置換されていてもよく;
【0032】
は、Rの定義に列挙された置換基、化学結合(−)又は水素から独立して選択され;
【0033】
、Q及びQは、水素、ハロ、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−OR、−NRC(O)OR、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−S(O)、−NR(CROR、−(CH(C−C10アリール)、−SO(CH(C−C10アリール)、−S(CH(C−C10アリール)、−O(CH(C−C10アリール)、−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)及び−(CRORからそれぞれ独立して選択され、式中、jは0〜2の範囲の整数であり、式中、mは1〜5の整数であり、かつ、tは0〜5の整数であり;ただし、Rが水素である場合、Qは使用できない;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含み、当該アリール及びヘテロ環状Q基は、C−C10アリール基、C−C飽和環状基又は4〜10員環ヘテロ環状基に任意に縮合していてもよく;上記ヘテロ環状部位の1又は2個の炭素原子はオキソ(=O)部位で任意に置換されていてもよく;かつ、上記Q基の当該アルキル、アリール及びヘテロ環状部位は、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−(CROR、−OR及びRの定義中に列挙した置換基から独立して選択される1〜3個の置換基で任意に置換されていてもよく、式中、mは1〜5の整数であり;
【0034】
各Rは、H、C−C10アルキル、−(CH(C−C10アリール)及び−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)から独立して選択され、式中、tは0〜5の整数であり;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含んでいてもよく、当該アリール及びヘテロ環状R基は、C−C10アリール基、C−C飽和環状基又は4〜10員環ヘテロ環状基に任意に縮合していてもよく;かつ、H以外の上記R置換基は、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、ヒドロキシ、C−Cアルキル及びC−Cアルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で任意に置換されていてもよく;
【0035】
各R及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルであり;
【0036】
T、U及びVは、それぞれ独立して、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)及びS(硫黄)から選択され、かつ、これらはR内に含まれ;
【0037】
T、U及びVは、互いに直接隣接しており;及び
【0038】
Wは、T、U又はVではないRにおいて任意の非水素原子であり;あるいは、
【0039】
(ii)水素、ハロ、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−OR、−NRC(O)OR、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−S(O)、−NR(CROR、−(CH(C−C10アリール)、−SO(CH(C−C10アリール)、−S(CH(C−C10アリール)、−O(CH(C−C10アリール)、−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)及び−(CRORからそれぞれ独立して選択され、式中、jは0〜2の範囲の整数であり、式中、mは1〜5の整数であり、かつ、tは0〜5の整数であり;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含み、R5、R6及びR7は上記で定義したとおりである。
【0040】
本発明の他の実施態様は、π共役架橋並びに非芳香系のC及びZが、以下からなる群より選択される様式で結合している、式Iの化合物を意味する:
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
式中、Rは上記で定義したとおりである。
【0044】
本発明の他の実施態様は、電子供与基(D)並びにπ共役架橋のX及びXが以下からなる群より選択される様式で結合している、式Iの化合物を意味する:
【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
また、式中、Rは上記で定義したとおりである。
【0048】
本発明の他の実施態様は、π共役架橋並びに非芳香系のC及びZが以下からなる群より選択される様式で結合している、式Iの化合物を意味する:
【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
式中、Rは上記で定義したとおりである。
【0052】
本発明の他の実施態様は、電子受容基(A)並びにπ共役架橋のX及びXが、以下からなる群より選択される様式で結合している、式Iの化合物を意味する:
【0053】
【化12】

【0054】
式中、Rはそれぞれ独立して上記で定義したとおりであり、Accは、CN、NO、SORから選択される電子受容基であり、0<n<5である。
【0055】
本発明の他の例は以下の発色団を含むが、これに限定されない:
【0056】
【化13】

【0057】
式中、Rはそれぞれ独立して上記で定義したとおりである。
【0058】
本発明の他の例は以下の発色団を含むが、これに限定されない:
【0059】
【化14】

【0060】
式中、Rはそれぞれ独立して上記で定義したとおりである。
【0061】
本発明において、用語「非線形光学的発色団」(NLOC)は、光を照射したときに非線形光学的効果を生じる分子又は分子の部分であると定義される。発色団は、光と相互作用することによって非線形光学的効果を生じる、任意の分子単位である。所望の効果は、共鳴波長又は非共鳴波長において生じ得る。特定の発色団の非線形光学的材料における活性は、その過分極率として示され、これは発色団の分子双極子モーメントに直接関連する。
【0062】
本発明において、用語「ハロ」は、他に示さない限り、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを含む。好ましいハロ基は、フルオロ、クロロ及びブロモである。
【0063】
本明細書中で用いる用語「アルキル」は、他に示さない限り、直鎖、環状又は分枝部位を有する飽和の一価の炭化水素基を含む。当該アルキル基において、環状部位には少なくとも3つの炭素原子が必要であることが理解される。
【0064】
本明細書中で用いる用語「アルケニル」は、他に示さない限り、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、かつ、「アルキル」の定義で上記に記載した直鎖、環状又は分枝部位も含む一価の炭化水素基を含む。
【0065】
本明細書中で用いる用語「アルキニル」は、他に示さない限り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有し、かつ、「アルキル」の定義で上記に記載した直鎖、環状又は分枝部位も含む一価の炭化水素基を含む。
【0066】
本明細書中で用いる用語「アルコキシ」は、他に示さない限り、O−アルキル基(式中、「アルキル」は上記で定義したとおりである)を含む。
【0067】
本明細書中で用いる用語「アリール」は、他に示さない限り、芳香族炭化水素から1つの水素を除いた有機基、例えば、フェニル又はナフチルを含む。
【0068】
本明細書中で用いる用語「ヘテロアリール」は、他に示さない限り、O、S及びNから独立して選択される1つ又はそれ以上のヘテロ原子を含むヘテロ芳香族炭化水素の環における炭素原子から1つの水素原子を除いた有機基を含む。ヘテロアリール基は、これらの環系に少なくとも5個の原子を有していなければならず、当該原子は、独立して、0〜2個のハロゲン、トリフルオロメチル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキル又はニトロ基で任意に置換されていてもよい。
【0069】
本明細書中で用いる用語「4〜10員環ヘテロ環」は、他に示さない限り、O、S及びNから独立して選択される1つ又はそれ以上のヘテロ原子を含む芳香族及び非芳香族ヘテロ環状基を含み、各ヘテロ環状基は、その環系に4〜10原子を含む。非芳香族ヘテロ環状基は、これらの環系に原子を4個だけ含むが、芳香族ヘテロ環状基は、これらの環系に少なくとも5個の原子を含んでいなければならない。4員環ヘテロ環状基の例はアゼチジニル(アゼチジンから誘導される)である。5員環ヘテロ環状基の例はチアゾリルであり、10員環ヘテロ環状基の例はキノリニルである。非芳香族ヘテロ環状基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、H−インドリル及びキノリジニルである。芳香族ヘテロ環状基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジニルである。上記に列挙した化合物から誘導される上記基は、可能である場合C−付着でもN−付着でもよい。例えば、ピロールから誘導される基は、ピロール−1−イル(N−付着)又はピロール−3−イル(C−付着)であってよい。
【0070】
本明細書中で用いる用語「飽和環状基」は、他に示さない限り、非芳香族の完全に飽和した環状部位(アルキルは上記で定義したとおりである)を含む。
【0071】
本明細書中で用いる句「許容され得る塩」は、他に示さない限り、本発明の化合物中に存在し得る酸性又は塩基性基の塩を含む。塩基性の性質を有する本発明の化合物は、種々の無機及び有機酸との種々の塩を形成し得る。このような本発明の塩基性化合物の薬学的に許容され得る酸付加塩を製造するのに用いることのできる酸は、非毒性酸付加塩を形成するもの、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸エステル塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸クエン酸エステル塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、二酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩[すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]塩のような、薬理学的に許容され得るアニオンを含む塩である。
【0072】
酸性の性質を有する本発明のこれらの化合物は、種々の薬理学的に許容され得るカチオンと塩基性塩を形成し得る。このような塩の例には、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0073】
本明細書中で用いる用語「溶媒和物」は、非共有結合的分子間力で結合された化学量論的又は非化学量論的な量の溶媒をさらに含む本発明の化合物又はその塩を含む。
【0074】
本明細書中で用いる用語「水和物」は、非共有結合的分子間力で結合された化学量論的又は非化学量論的な量の水をさらに含む本発明の化合物又はその塩を意味する。
【0075】
本発明の特定の化合物は不斉中心を有していてもよく、そのため、異なるエナンチオマー形として存在する場合がある。本発明は、本発明の化合物の全ての光学異性体及び立体異性体並びにその混合物の使用に関する。本発明の化合物はまた、互変異性体として存在する場合もある。本発明は、全てのこのような互変異性体及びその混合物の使用に関する。
【0076】
本発明はまた、原子質量又は質量数が天然に通常みられる原子質量又は質量数とは異なるような原子で1つ又はそれ以上の原子が置き換えられている以外は式I及びIIに記載の化合物と同一の、同位体標識化合物及びその工業的に許容され得る塩を含む。本発明の化合物に組みこむことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えば、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F及び36Clがそれぞれ挙げられる。上記同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物及び当該化合物の工業的に許容され得る塩は、本発明の範囲内である。本発明の特定の同位体標識化合物、例えば、H及び14Cなどの放射性同位体が組みこまれた化合物は、薬物及び/又は基底組織分配アッセイに有用である。三重水素化、すなわち3H同位体、及び、炭素−14(すなわち14C)同位体は、製造及び検出が容易であるために特に好ましい。さらに、より重い同位体、例えば重水素(すなわちH)で置換すると、安定性がより高くなるため、必然的に有利である。本発明の式Iの同位体標識化合物は、通常、下記のスキーム及び/又は実施例及び製造例に開示される手段を実行し、容易に入手可能な同位体標識試薬で非同位体標識試薬を置き換えることによって製造することができる。
【0077】
本明細書で参照される特許、特許出願、公開国際出願及び科学的刊行物はそれぞれ、その全体が本明細書中に援用される。
【発明を実施するための形態】
【0078】
式Iの化合物は、NLO効果を生じさせるのに有用な構造である。
【0079】
一次超分極性(β)は、最も一般的でかつ有用なNLO特性のうちの1つである。高次超分極性は、あらゆる光学的(光−スイッチング−光)用途のような他の用途において有用である。以下の試験を実施することによって、化合物又はポリマーなどの材料が、一次超極性の性質を有する非線形光学的発色団を含むかどうかを決定することができる。最初に、薄膜状の材料を電場内に置いて、双極子を整列させる。これは、例えば酸化インジウムスズ(ITO)基板、金膜又は銀膜などの電極の間に材料の膜を挟むことによって実施することができる。
【0080】
次いで、材料をそのガラス転移(T)温度付近に加熱しながら、電気ポテンシャルを電極に印加して、極性調整電場を発生させる。適当な時間の経過後、極性調整電場を維持しながら、温度を次第に下げる。また、材料はコロナ極性調整法で分極することもでき、この方法では、材料フィルムから適当な距離離れた電荷を帯びた針によって、極性調整電場が提供される。いずれの例においても、材料中の双極子は電場と整列する傾向にある。
【0081】
次いで、分極した材料の非線形光学特性を、以下のように試験する。レーザー由来のものである場合が多い分極光を分極した材料に通し、次いで、分極フィルター及び光強度検出器に通す。電極に印加された電気ポテンシャルが変化した際に検出器で受光した光の強度が変化する場合、材料は非線形光学的発色団を含み、かつ、電子光学的に変動可能な屈折率を有する。非線形光学的発色団を含む分極膜の電子光学的定数を測定する技術について、Chia−Chi Teng, Measuring Electro−Optic Constants of a Poled Film, in Nonlinear Optics of Organic Molecules and Polymers, Chp. 7,447−49(Hari Singh Nalwa & Seizo Miyata eds., 1997)により詳細に議論されており、本明細書中でその全体が参照されるが、ただし、本願と整合しない開示又は定義がある場合には、本明細書中の開示又は定義が優先されるものとみなす。
【0082】
印加された電気ポテンシャルの変化と材料の屈折率の変化との関係は、そのEO係数r33で表され得る。この効果を、一般的に電子光学的効果、すなわちEO効果と呼ぶ。印加された電気ポテンシャルの変化に応じてその屈折率が変化する材料を含むデバイスを、電子光学(EO)デバイスと呼ぶ。
【0083】
式Iの化合物の一例は、以下の反応スキームに従って製造することができる。以下の反応スキーム及び考察中におけるRは、上記で定義したとおりである。
【0084】
【化15】

【0085】
式Iの化合物の他の例は、以下の反応スキームに従って製造することができる。以下の反応スキーム及び考察中におけるRは、上記で定義したとおりである。
【0086】
【化16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの形態のNLO発色団又はその許容され得る塩:
【化1】

式中、(p)は0〜6であり;
【化2】

はそれぞれ独立して共有化学結合であり;
1−4はC、N、O又はSから独立して選択され;
1−4は独立してN、CH又はCRであり;
Dは、Aの電子親和性と等しい又はそれより低い電子親和性を有する有機電子供与基であり、πが存在する場合、Dは2つの原子位置X及びXで結合し、πが存在しない場合、Dは2つの原子位置Z及びCで結合していて;
Aは、Dの電子親和性と等しい又はそれより高い電子親和性を有する有機電子受容基であり、πが存在する場合、Aは2つの原子位置X及びXで結合し、πが存在しない場合、Aは2つの原子位置Z及びCで結合していて;
πは、X及びXを含む、かつ、存在しない、又は、原子対Z及びC
【化3】

に結合して電子共役をDとC、C、C、C、Z、Z、Z及びZを含む非芳香系との間に提供する架橋であり;
πは、X及びXを含む、かつ、存在しない、又は、原子対C及びZ
【化4】

に結合して電子共役をAと前記非芳香系との間に提供する架橋であり;
Rは、以下から独立して選択され:
(i)式IIのスペーサーシステム又はその工業的に許容され得る塩:
【化5】

式中、Rは、C−C10アリール、C−C10ヘテロアリール、4〜10員環ヘテロ環状基又はC−C10飽和環状基であり;前記環状部位中の1又は2個の炭素原子はオキソ(=O)部位で任意に置換されていてもよく;かつ、前記R基は1〜3個のR基で任意に置換されていてもよく;
及びRは、Rの定義に列挙された置換基、(CH(C−C10アリール)又は(CH(4〜10員環ヘテロ環)から独立して選択され、tは0〜5の範囲の整数であり、かつ、前記R及びR基は1〜3個のR基で任意に置換されていてもよく;
は、Rの定義に列挙された置換基、化学結合(−)又は水素から独立して選択され;
、Q及びQは、水素、ハロ、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−OR、−NRC(O)OR、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−S(O)、−NR(CROR、−(CH(C−C10アリール)、−SO(CH(C−C10アリール)、−S(CH(C−C10アリール)、−O(CH(C−C10アリール)、−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)及び−(CRORからそれぞれ独立して選択され、式中、jは0〜2の範囲の整数であり、式中、mは1〜5の整数であり、かつ、tは0〜5の整数であり;ただし、Rが水素である場合、Qは使用できない;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含み、当該アリール及びヘテロ環状Q基は、C−C10アリール基、C−C飽和環状基又は4〜10員環ヘテロ環状基に任意に縮合していてもよく;前記ヘテロ環状部位の1又は2個の炭素原子はオキソ(=O)部位で任意に置換されていてもよく;かつ、前記Q基の当該アルキル、アリール及びヘテロ環状部位は、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−(CROR、−OR及びRの定義中に列挙した置換基から独立して選択される1〜3個の置換基で任意に置換されていてもよく、式中、mは1〜5の整数であり;
各Rは、H、C−C10アルキル、−(CH(C−C10アリール)及び−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)から独立して選択され、式中、tは0〜5の整数であり;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含んでいてもよく、当該アリール及びヘテロ環状R基は、C−C10アリール基、C−C飽和環状基又は4〜10員環ヘテロ環状基に任意に縮合していてもよく;かつ、H以外の前記R置換基は、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、ヒドロキシ、C−Cアルキル及びC−Cアルコキシから独立して選択される1〜3個の置換基で任意に置換されていてもよく;
各R及びRは、独立して、H又はC−Cアルキルであり;
T、U及びVは、それぞれ独立して、C(炭素)、O(酸素)、N(窒素)及びS(硫黄)から選択され、かつ、これらはR内に含まれ;
T、U及びVは、互いに直接隣接しており;及び
Wは、T、U又はVではないRにおいて任意の非水素原子であり;あるいは、
(ii)水素、ハロ、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−OR、−NRC(O)OR、−NRSO、−SONR、−NRC(O)R、−C(O)NR、−NR、−S(O)、−NR(CROR、−(CH(C−C10アリール)、−SO(CH(C−C10アリール)、−S(CH(C−C10アリール)、−O(CH(C−C10アリール)、−(CH(4〜10員環ヘテロ環状)及び−(CRORからそれぞれ独立して選択され、式中、jは0〜2の範囲の整数であり、式中、mは1〜5の整数であり、かつ、tは0〜5の整数であり;当該アルキル基は、O、S及び−N(R)−から選択される1又は2個のヘテロ部位を任意に含み、R、R及びRは前記で定義したとおりである。
【請求項2】
π共役架橋並びに非芳香系のC及びZが、以下からなる群より選択される様式で結合している:
【化6】

【化7】

式中、Rは請求項1に定義したとおりである
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。
【請求項3】
電子供与基(D)並びにπ共役架橋のX及びXが以下からなる群より選択される様式で結合している:
【化8】

【化9】

また、式中、Rは請求項1に定義したとおりである
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。
【請求項4】
π共役架橋並びに非芳香系のC及びZが以下からなる群より選択される様式で結合している:
【化10】

【化11】

式中、Rは請求項1に定義したとおりであり、π共役架橋は、原子位置X−Xで電子受容システム(A)に結合している
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。
【請求項5】
電子受容基(A)並びにπ共役架橋のX及びXが、以下からなる群より選択される様式で結合している:
【化12】

式中、Rは請求項1に定義したとおりであり、Accは、CN、NO、SORから選択される電子受容基であり、0<n<5である
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。
【請求項6】
前記発色団は以下の構造で表される:
【化13】

式中、Rは請求項1に定義したとおりである
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。
【請求項7】
前記発色団は以下の構造で表される:
【化14】

式中、Rは請求項1に定義したとおりである
ことを特徴とする請求項1に記載のNLO発色団。

【公開番号】特開2013−67650(P2013−67650A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−276838(P2012−276838)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2007−539187(P2007−539187)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(507137058)ライトウェイブ ロジック, インク. (6)
【Fターム(参考)】