説明

ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンリアーゼおよびその使用

【課題】組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドを提供する。
【解決手段】組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド。そのようなポリペプチドをコードする核酸分子、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子を含む組換え発現ベクター、および発現ベクターが導入された宿主細胞。組成物を利用する特性決定、診断、および治療の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年11月3日に提出された米国出願第11/265,908号の一部継続出願であり、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、ヘキスロン酸と結合したD-グルコサミンの直鎖多糖を特徴とするグリコサミノグリカンの一部類である(Linhardt, R. J. (1991) Chem. Ind. 2, 45-50(非特許文献1);Casu, B. (1985) Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 43, 51-134(非特許文献2))。ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、哺乳動物の細胞外マトリックスにおいて重要な役割を果たす複合糖質である。これらの多糖は、細胞および組織の形態形成、細胞間相互作用ならびに成長および分化といった正常な生理的プロセスに影響を及ぼす決定的な生化学的シグナル伝達経路を調整および調節する。これらの多糖はまた、いくつか例を挙げると創傷治癒、腫瘍の成長および転移、ある種の神経変性疾患ならびに微生物疾患を含む、種々の病態においても決定的な役割を果たす。
【0003】
ヘパリンおよびヘパラン硫酸の配列に関する現在の知識の大部分は、それらの生合成の研究に依拠している(Linhardt, R. J., Wang, H. M., Loganathan, D., and Bae, J. H. (1992) Biol. Chem. 267, 2380-2387(非特許文献3);Lindahi, U., Feingold, D., and Roden, L. (1986) Trends Biochem. Sci. 11, 221-225(非特許文献4);Jacobson, I., and Lindahl U. (1980) J. Biol. Chem. 255, 5094-5100(非特許文献5);Lindahl, U., and Kjellen, L. (1987) in The Biology of Extracellular Matrix Proteoglycans (Wight, T. N., and Mecham R., eds) pp. 59-104, Academic Press, New York(非特許文献6))。
【0004】
ヘパラン硫酸は、ヘパリンと化学的に類縁であり、事実上すべての哺乳動物細胞種の細胞表面上および細胞外マトリックス(ECM)内部に存在する。これらのヘパリン様グリコサミノグリカン(HLGAG)は、この細胞外環境内でプロテオグリカンとして知られるタンパク質-多糖結合物として存在する。HLGAGは、ラミニン、フィブロネクチン、インテグリンおよびコラーゲンといった細胞外マトリックスの数多くのタンパク質と機能的な様式で相互作用することから、単なる構造的な役割をはるかに上回る役割を果たすことがますます認知されてきている。このため、HLGAGは(プロテオグリカンの一部として)、マトリックスの生物学的性質を規定する一助となっている。これらのHLGAGはまた、細胞外マトリックス内部に存在する一連のサイトカイン様増殖因子およびモルフォゲンとも、受容体とのそれらの生化学的相互作用を促進することにより、およびそれらをタンパク質分解から防御することにより、相互作用する。例えば、ヘパリンは、Thornton, et al., Science 222, 623-625 (1983)(非特許文献7)によって報告されているように、aFGFの生物活性を増強するが、これはおそらく、Schreiber, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6138-6142 (1985)(非特許文献8)によって報告されているように、その細胞表面受容体に対するaFGFの親和性を増強することによる。Gospodarowicz and Cheng, J. Cell Physiol. 128, 475-484 (1986)(非特許文献9);Rosengart, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 152, 432-440 (1988)(非特許文献10);およびLobb Biochem. 27, 2572-2578 (1988)(非特許文献11)によって報告されているように、ヘパリンはaFGFおよびbFGFを熱、酸およびプロテアーゼによる分解から防御する。Vlodavsky, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 2292-2296 (1987)(非特許文献12)、およびFolkman, et al., Am. J. Pathol. 130, 393-400 (1988)(非特許文献13)およびEmerson et. at. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(14): 4833-8 (2004)(非特許文献14)によって報告されているように、bFGFは細胞外マトリックス内に貯蔵され、ヘパラナーゼなどの酵素の加水分解活性によって生物活性のある形態で動員されうる。
【0005】
Yayon, et al., Cell 64, 841-848 (1991)(非特許文献15)およびPapraeger, et al., Science 252, 1705-1708 (1991)(非特許文献16)によって報告されているように、FGFのヘパラン硫酸との結合は、FGFの、細胞表面上にあるその高親和性受容体との結合のための前提条件である。Kiefer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6985-6989 (1990)(非特許文献17)によって報告されているように、特定のヘパラン硫酸プロテオグリカンは、bFGFの細胞表面との結合を媒介することが見いだされている。
【0006】
ヘパリナーゼなどのヘパリンリアーゼは、ヘパリンおよびヘパラン硫酸における主要なグリコシド結合を特異的に切断しうる一般的な部類の酵素である。3種のヘパリナーゼが、エキソグリクロニダーゼ、グリコシダーゼ、スルホエステラーゼおよびスルファミダーゼ、ならびにリアーゼにより生成されるオリゴ糖産物に対してさらに作用する他の酵素も産生する、GAGを利用する微生物であるフラボバクテリウム-ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)で同定されている(Yang, et al. J. Biol. Chem. 260, 1849-1857 (1987)(非特許文献18);Galliher, et al. Eur. J. Appl. Microbiol. Biotechnol. 15, 252-257 (1982)(非特許文献19)。これらのリアーゼは、ヘパリナーゼI(ヘパリナーゼ、EC 4.2.2.7)、ヘパリナーゼII(ヘパリナーゼII、EC番号なし)およびヘパリナーゼIII(ヘパリナーゼ EC 4.2.2.8)と呼ばれている。この3種の精製ヘパリナーゼは、ヘパリンおよびヘパラン硫酸を切断する能力の点で異なる:ヘパリナーゼIは主としてヘパリンを切断し、ヘパリナーゼIIIはヘパラン硫酸を特異的に切断し、ヘパリナーゼIIはヘパリンおよびヘパラン硫酸の両方に対して作用する。いくつかのバクテロイド属種(Saylers, et al. Appl. Environ. Microbiol. 33, 319-322 (1977)(非特許文献20);Nakamura, et al. J. Clin. Microbiol. 26, 1070-1071 (1988)(非特許文献21))もヘパリンリアーゼを産生する。ヘパリンリアーゼは、Bohmer, et al. J. Biol. Chem. 265, 13609-13617 (1990)(非特許文献22)により、未同定の土壌細菌からも見かけ上均一な状態で精製されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Linhardt, R. J. (1991) Chem. Ind. 2, 45-50
【非特許文献2】Casu, B. (1985) Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 43, 51-134
【非特許文献3】Linhardt, R. J., Wang, H. M., Loganathan, D., and Bae, J. H. (1992) Biol. Chem. 267, 2380-2387
【非特許文献4】Lindahi, U., Feingold, D., and Roden, L. (1986) Trends Biochem. Sci. 11, 221-225
【非特許文献5】Jacobson, I., and Lindahl U. (1980) J. Biol. Chem. 255, 5094-5100
【非特許文献6】Lindahl, U., and Kjellen, L. (1987) in The Biology of Extracellular Matrix Proteoglycans (Wight, T. N., and Mecham R., eds) pp. 59-104, Academic Press, New York
【非特許文献7】Thornton, et al., Science 222, 623-625 (1983)
【非特許文献8】Schreiber, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6138-6142 (1985)
【非特許文献9】Gospodarowicz and Cheng, J. Cell Physiol. 128, 475-484 (1986)
【非特許文献10】Rosengart, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 152, 432-440 (1988)
【非特許文献11】Lobb Biochem. 27, 2572-2578 (1988)
【非特許文献12】Vlodavsky, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 2292-2296 (1987)
【非特許文献13】Folkman, et al., Am. J. Pathol. 130, 393-400 (1988)
【非特許文献14】Emerson et. at. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(14): 4833-8 (2004)
【非特許文献15】Yayon, et al., Cell 64, 841-848 (1991)
【非特許文献16】Papraeger, et al., Science 252, 1705-1708 (1991)
【非特許文献17】Kiefer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6985-6989 (1990)
【非特許文献18】Yang, et al. J. Biol. Chem. 260, 1849-1857 (1987)
【非特許文献19】Galliher, et al. Eur. J. Appl. Microbiol. Biotechnol. 15, 252-257 (1982)
【非特許文献20】Saylers, et al. Appl. Environ. Microbiol. 33, 319-322 (1977)
【非特許文献21】Nakamura, et al. J. Clin. Microbiol. 26, 1070-1071 (1988)
【非特許文献22】Bohmer, et al. J. Biol. Chem. 265, 13609-13617 (1990)
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は一部には、とりわけヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の、場合によってはコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸の、構造特異的な切断に有用な、本明細書で以下「B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ」、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼII、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII、およびB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVと称する、バクテロイデス-シータイオタオーミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)由来のグルコサミノグリカン(GAG)リアーゼの発見および組換え発現に基づく。したがって、本発明は、例えば、ヘパリン様グリコサミノグリカン(HLGAG)などのグリコサミノグリカン(GAG)、例えばヘパリンおよびヘパラン硫酸の特性決定もしくは修飾のための、または例えば、ヘパリン/ヘパラン硫酸でないGAG、例えばコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸の特性決定もしくは修飾のための、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼまたはその機能的断片および複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼまたはその機能的断片の組み合わせを用いる方法、組成物およびキットを含む。例えば、本方法、組成物およびキットは、GAG、例えばHLGAGの異種混交的な集団を分析およびモニタリングするために用いることができる。他の局面において、本方法、組成物およびキットは、GAG、例えばHLGAGの構造および/または活性を修飾するために用いることができる。
【0009】
したがって、1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片、例えば、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37もしくは39に示されたアミノ酸配列を有するB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドもしくはその機能的断片;SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37もしくは39に示されたアミノ酸配列と実質的に同一なアミノ酸;または、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36もしくは38の核酸配列を含む核酸分子とストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸であって、核酸が完全長B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質もしくはその機能的断片をコードするもの、を特徴とする。
【0010】
もう1つの局面において、本発明は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片を含む組成物を特徴とする。1つの態様において、本組成物はさらに、1つまたは複数のHLGAG分解酵素、例えば、1つもしくは複数のヘパリナーゼ、および/または、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド以外の1つもしくは複数のGAGリアーゼポリペプチドを含む。例えば、本組成物は次のうち1つまたは複数をさらに含みうる:不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナムΔ4,5グルクロニダーゼ;B.シータイオタオーミクロンΔ4,5グルクロニダーゼ);グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、哺乳動物α-イズロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ);スルホヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナム2-O-スルファターゼ、6-O-スルファターゼ、3-O-スルファターゼ:B.シータイオタオーミクロン6-O-スルファターゼ;ムチン脱硫酸酵素;哺乳動物N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ;哺乳動物イズロン酸-2-スルファターゼ);N-スルファミダーゼ(例えば、F.ヘパリナムN-スルファミダーゼ;哺乳動物ヘパラン-N-スルファターゼ);アリールスルファターゼ;ヘキソサミニダーゼ;グリコシルヒドロラーゼ(例えば、エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼ);ヘパリナーゼ(例えば、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼI、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIV、別名サイトファーガ-ヘパリナ(Cytophaga heparina)またはペドバクター-ヘパリナム(Pedobacter heparinum)由来のヘパリナーゼ)、哺乳動物ヘパラナーゼ、バクテリオファージK5ヘパランリアーゼ、ならびにそれらの機能的断片および変異体。このような組成物は、例えば、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸などのHLGAGを、例えばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸などのHLGAGの調製物の特性決定を行う目的で切断するために用いることができる。
【0011】
もう1つの局面において、本発明は、HLGAG、例えばヘパリンまたはヘパラン硫酸を特異的に切断する方法であって、HLGAGを、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させる段階を含む方法を特徴とする。1つの態様において、HLGAGは二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖および/または十糖へと切断され、例えば、本方法はさらに、HLGAGの二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖、十糖および/またはより長い糖類の配列を決定する段階をさらに含む。1つの態様において、本方法はさらに、HLGAGを、1つまたは複数のHLGAG分解酵素、例えば、ヘパリナーゼポリペプチド、またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド以外のGAGリアーゼポリペプチドと接触させる段階を含む。例えば、HLGAG分解酵素は、次のうち1つまたは複数でありうる:不飽和 グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナムΔ4,5グルクロニダーゼ;B.シータイオタオーミクロンΔ4,5グルクロニダーゼ);グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、哺乳動物α-イズロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ);スルホヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナム2-O-スルファターゼ、6-O-スルファターゼ、3-O-スルファターゼ:B.シータイオタオーミクロン6-O-スルファターゼ;ムチン脱硫酸酵素;哺乳動物N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ;哺乳動物イズロン酸-2-スルファターゼ);N-スルファミダーゼ(例えば、F.ヘパリナムN-スルファミダーゼ;哺乳動物ヘパラン-N-スルファターゼ);アリールスルファターゼ;ヘキソサミニダーゼ;グリコシルヒドロラーゼ(例えば、エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼ);ヘパリナーゼ(例えば、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼI、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIV、別名サイトファーガ-ヘパリナまたはペドバクター-ヘパリナム由来のヘパリナーゼ)、哺乳動物ヘパラナーゼ、バクテリオファージK5ヘパランリアーゼ、ならびにそれらの機能的断片および変異体。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、HLGAG、例えばヘパリン(例えば、UFH、LMWHおよび合成ヘパリン)およびヘパラン硫酸の異種混交的な集団を分析するための方法であって、集団を、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させる段階を含む方法を特徴とする。したがって、いくつかの局面において、本発明は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片を用いて、HLGAGの異種混交的な集団を分析およびモニタリングし、例えばそうしてHLGAGの異種混交的な集団の構造的特徴(structural signature)および活性を規定することに関連のある方法および製品に関する。
【0013】
いくつかの態様において、本方法は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させた、HLGAG製品の1つまたは複数のバッチの構造的特徴を決定する段階を含む。いくつかの態様において、本方法はさらに、決定の結果としてバッチを選択する段階を含む。いくつかの態様において、本方法はさらに、決定の結果を、あらかじめ選択した値、例えば参照標準と比較する段階を含む。あらかじめ選択した値は、例えば、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片によるHLGAGの切断に伴う1つまたは複数の二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖および/または十糖の有無または設定値(例えば、モル(%)または曲線下面積)でありうる。
【0014】
本明細書に記載した方法の任意のものに関して、完全または部分的に消化された1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド(または複数のポリペプチド)試料を、例えば、質量分析(例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS))、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、1D NMRまたは2D NMR)、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動(CE)、逆相カラムクロマトグラフィー(例えば、HPLC、例えば第4級アンモニウム塩によって動的にコーティングされた固定相を有するHPLC)、イオン対HPLC、例えば強陰イオン交換HPLC(SAX-HPLC)の1つまたは複数によって構造的特徴を決定するために分析することができる。本明細書に記載した方法は、さらに、試料を、1つまたは複数のHLGAG分解酵素、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド以外のヘパリナーゼまたはヘパリンリアーゼポリペプチドで消化する段階を含みうる。例えば、HLGAG分解酵素は、次の1つまたは複数でありうる:不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナムΔ4,5グルクロニダーゼ;B.シータイオタオーミクロンΔ4,5グルクロニダーゼ);グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、哺乳動物α-イズロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ);スルホヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナム2-O-スルファターゼ、6-O-スルファターゼ、3-O-スルファターゼ:B.シータイオタオーミクロン6-O-スルファターゼ;ムチン脱硫酸酵素;哺乳動物N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ;哺乳動物イズロン酸-2-スルファターゼ;N-スルファミダーゼ(例えば、F.ヘパリナムN-スルファミダーゼ;哺乳動物ヘパラン-N-スルファターゼ);アリールスルファターゼ;ヘキソサミニダーゼ;グリコシルヒドロラーゼ(例えば、エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼ);ヘパリナーゼ(例えば、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼI、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIV、別名サイトファーガ-ヘパリナまたはペドバクター-ヘパリナム由来のヘパリナーゼ)、哺乳動物ヘパラナーゼ、バクテリオファージK5ヘパランリアーゼ、ならびに機能的断片および変異体。
【0015】
もう1つの局面において、本発明は、HLGAG調製物を、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させることによって生産されるHLGAG調製物(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物)を特徴とする。1つの態様において、HLGAG調製物(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物)は、例えば、参照標準と比較して、例えば、市販のヘパリンまたはヘパラン硫酸と比較して、またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前のヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物と比較して、低下した抗Xa活性および抗IIa活性のうち1つまたは複数を有する。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持されるか上昇する。他の態様においては、抗IIa活性が低下し、一方、抗Xa活性は維持されるか上昇する。
【0016】
他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。このような調製物は、例えば、別の薬剤、例えば治療薬、予防用または診断用薬剤に対する担体としてのヘパリンまたはヘパラン硫酸の使用というように、低下した抗Xa活性および/または抗IIIa活性が望ましい用途に対して有用でありうる。したがって、いくつかの態様において、HLGAG調製物はさらに、HLGAG以外の第2の薬剤を含むことができ、例えば、調製物はさらに1つまたは複数の治療用、予防用または診断用の薬剤を含むことができる。もう1つの態様において、HLGAG調製物(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物)は、例えば、参照標準、例えば市販のヘパリンまたはヘパラン硫酸と比較して、またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前のヘパリンまたはヘパラン硫酸調製物と比較して、上昇した抗Xa活性および抗IIa活性のうち1つまたは複数を有する。このような調製物は、例えば、上昇した抗Xa活性および/または抗IIa活性が望ましい用途に対して、例えば抗凝固薬および/または抗血栓薬として有用でありうる。
【0017】
もう1つの局面において、本発明は、HLGAG(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸)の1つまたは複数の活性を中和する方法を特徴とする。本方法は、HLGAGを、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドおよび/またはその機能的断片と接触させる段階を含む。HLGAGがヘパリンまたはヘパラン硫酸である場合、中和しようとする活性は、抗Xa活性および抗IIa活性のうち1つまたは複数でありうる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持されるか上昇する。他の態様においては、抗IIa活性が低下し、一方、抗Xa活性は維持されるか増大する。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が維持される。HLGAGは、例えば、エクスビボまたはインビボで接触させることができる。したがって、いくつかの態様において、本方法は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片を、対象、例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸などのHLGAGを投与された対象、例えば、凝固および/または血栓症を抑制するためにヘパリンまたはヘパラン硫酸が投与された対象に対して、対象における抗Xa活性および/または抗IIa活性を中和するために有効な量で投与する段階を含みうる。
【0018】
もう1つの局面において、本発明は、対象における血管新生を抑制する方法を特徴とする。本方法は、血管新生を抑制するために、対象に対して、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチド、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片の有効量を投与する段階を含む。1つの態様において、対象は、望ましくない血管新生を伴う疾患または障害を有する。そのような障害には、関節炎(例えば、関節リウマチ)、種々の眼球障害(例えば、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症性障害、眼球腫瘍(例えば、網膜芽腫)、水晶体後線維増殖症、ブドウ膜炎、ならびに脈絡膜新生血管および虹彩新生血管を伴う障害)および癌(例えば、腫瘍成長および転移)が非限定的に含まれる。
【0019】
もう1つの局面において、本発明は、対象における望ましくない細胞増殖および/または分化を抑制する方法を特徴とする。本方法は、細胞増殖および/または分化を抑制するために、対象に対して、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片の有効量を投与する段階を含む。1つの態様において、対象は癌を有する。
【0020】
もう1つの局面において、本発明は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片、例えば、本明細書に記載した1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を特徴とする。1つの態様において、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片は、HLGAGの1つまたは複数の活性を中和するのに有効な量で存在する。好ましくは、HLGAGはヘパリンまたはヘパラン硫酸であり、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片は、抗Xa活性および抗IIa活性のうち1つまたは複数を中和するのに有効な量で存在する。いくつかの態様において、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持されるか上昇する。他の態様においては、抗IIa活性が低下し、一方、抗Xa活性は維持されるか増大する。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。もう1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片は、血管新生を抑制するのに有効な量で存在する。
【0021】
もう1つの局面において、本発明は、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片の組成物を含むキットを特徴とする。1つの態様において、キットはさらに、1つまたは複数のHLGAG分解酵素、例えば、1つもしくは複数のヘパリナーゼポリペプチド、および/または、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド以外の1つもしくは複数のGAGリアーゼポリペプチドを含む。例えば、キットはさらに、次のうち1つまたは複数を含みうる:不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナムΔ4,5グルクロニダーゼ;B.シータイオタオーミクロンΔ4,5グルクロニダーゼ);グルクロニルヒドロラーゼ(例えば、哺乳動物α-イズロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ);スルホヒドロラーゼ(例えば、F.ヘパリナム2-O-スルファターゼ、6-O-スルファターゼ、3-O-スルファターゼ:B.シータイオタオーミクロン6-O-スルファターゼ;ムチン脱硫酸酵素;哺乳動物N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ;哺乳動物イズロン酸-2-スルファターゼ);N-スルファミダーゼ(例えば、F.ヘパリナムN-スルファミダーゼ;哺乳動物ヘパランN-スルファターゼ);アリールスルファターゼ;ヘキソサミニダーゼ;グリコシルヒドロラーゼ(例えば、エンド-N-アセチルグルコサミニダーゼ);ヘパリナーゼ(例えば、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼI、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIV、別名サイトファーガ-ヘパリナまたはペドバクター-ヘパリナム由来のヘパリナーゼ)、哺乳動物ヘパラナーゼ、バクテリオファージK5ヘパランリアーゼ、ならびにそれらの機能的断片および変異体のうち1つまたは複数。1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片、および他のHLGAG分解酵素の1つまたは複数は、同一の組成物中にある。もう1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片、および他のHLGAG分解酵素は、異なる組成物中にある。もう1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片は、薬学的に効果のある担体とともに薬学的組成物中にある。キットはさらに、HLGAG、例えばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸を含みうる。1つの態様において、キットがB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片の薬学的組成物である場合には、HLGAG、例えばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸も薬学的組成物中にあり、例えば、キットはさらに、HLGAGの1つまたは複数の活性を中和するための説明用材料を含む。
【0022】
もう1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片をコードする核酸分子を特徴とする。1つの態様において、単離された核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。他の態様において、本発明は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36または38に示されたヌクレオチド配列を有する、単離されたB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子を提供する。もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1、5、28または36に示されたヌクレオチド配列と実質的に同一な核酸分子(例えば、天然のアレル変異体)、および、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36または38のヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子であって、核酸が完全長B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質またはその機能的断片をコードするものを提供する。
【0023】
1つの関連した関連した局面において、本発明はさらに、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子を含む核酸構築物を提供する。ある態様において、本発明の核酸分子は、本来の調節配列または異種調節配列と機能的に連結される。本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの核酸分子およびポリペプチドの産生のために適したベクターおよび宿主細胞も同じく含まれる。
【0024】
もう1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと反応する、またはより好ましくは特異的に結合する、抗体およびその抗原結合断片を特徴とする。
【0025】
もう1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調整する化合物に関するスクリーニングの方法を提供する。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIをコードするDNA配列(SEQ ID NO;1)を示している。開始メチオニンコドン(ATG)には下線が施されており、第2の内部メチオニンコドンには二重下線が施されている。
【図1B】図1AのDNA配列の予想されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示しており、さらに、M17変異体(SEQ ID NO:4)およびQ26変異体(SEQ ID NO:23)と呼ばれる、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIの2種類の変異体のN末端アミノ酸残基も示している。
【図2】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI(SEQ ID NO:2)と、フラボバクテリウム-ヘパリナム由来のヘパリナーゼI(SEQ ID NO:24)およびコンセンサス配列(SEQ ID NO:26)とのBLASTアラインメントを示している。
【図3A】メチオニン17(M17)に関するATGコドンに網掛けがされている、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIのM17変異体のDNA配列(SEQ ID NO:3)を示している。
【図3B】図3AのDNA配列の予想されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を示している。
【図4A】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIのQ26変異体をコードするDNA配列(SEQ ID NO:22)を示している。
【図4B】図4AのDNA配列の予想されるアミノ酸配列(SEQ 1D NO:23)を示している。
【図5A】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIをコードするDNA配列(SEQ ID NO:5)を示している。図5Aはまた、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIの2種類の変異体、すなわち、欠失部分が下線を施すことによって示されている「Q23変異体」(SEQ ID NO:7)および欠失部分が網掛けを施すことによって示されている「K169変異体」(SEQ ID NO:9)には存在しない、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIをコードするヌクレオチド配列の部分も示している。
【図5B】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼII(SEQ ID NO:6)の予想されるアミノ酸配列を示すとともに、Q23変異体(SEQ ID NO;8)およびK169変異体(SEQ ID NO:10)のアミノ酸配列から欠失している部分も示している。
【図6】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼII(SEQ 1D NO:6)と、フラボバクテリウム-ヘパリナム由来のヘパリナーゼIII(SEQ ID NO:25)およびコンセンサス配列(SEQ ID NO:27)とのBLASTアラインメントを示している。
【図7】MALDI-MS質量スペクトルの表示である。パネルAは、非処理ATIII五糖ARIXTRA(登録商標)のピークを示しており、その構造も示されている。パネルBは、ARIXTRA(登録商標)を組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIで消化した後に生じたピークを示している。その構造が示されている五硫酸化三糖産物が、消化の後に生じた。
【図8】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンからクローニングしたGAGリアーゼIII遺伝子のコード配列に関するDNA配列(SEQ ID NO:28)を示している。開始メチオニン(ATG)および終止(TAA)のコドンは太字で表されている。グルタミン23(Q23)に対応するコドン(CAG)には下線が施されている。
【図9】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンからクローニングされたGAGリアーゼIIIのアミノ酸配列(SEQ ID NO:29)を示している。予想される輸出シグナル配列には下線が施されている。アミノ末端変異体の開始部を定めるグルタミン23(Q23)にはグレーで網掛けが施されている。
【図10】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIのアミノ酸配列(SEQ ID NO:29)‐上から3番目に列記‐と、関連するヘパリン/ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンリアーゼとのアラインメントを示している。同一の残基は濃いグレーで示されている;類似の残基は薄いグレーで示されている。BTはバクテロイデス-シータイオタオーミクロンを表す;FHはフラボバクテリウム-ヘパリナムを表す。
【図11】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンから単離されたGAGリアーゼIII(BT GAGリアーゼ)、フラボバクテリウム-ヘパリナムから単離されたヘパリナーゼII(FHヘパリナーゼII)、およびフラボバクテリウム-ヘパリナムから単離されたヘパリナーゼIII(FHヘパリナーゼIII)の酵素活性を示している。酵素活性は、3種類の被験酵素の基質特異性を表している。試験した4種類の「ヘパリン様」基質は以下であった:ブタ腸ヘパリン、2種類のヘパラン硫酸(「HI」および「HO」と命名、それぞれ硫酸化の度合いが異なる)および低分子量ヘパリン製剤であるエノキサパリン。示された酵素活性は、232nmでの吸光度によって評価した、徹底的な消化における、これらの基質に対する総切断活性を表している。
【図12】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンから単離されたGAGリアーゼIII(BT GAGリアーゼ)およびフラボバクテリウム-ヘパリナムから単離されたヘパリナーゼII(FH Hep II)の切断活性を示している。切断活性は、被験酵素の基質特異性を表している。実際の切断産物をキャピラリー電気泳動によって分画し、232nmでの吸光度(Y軸)によってモニタリングする。実線はBT GAGリアーゼを示し、点線はFH Hep IIを示す。
【図13】B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVをコードするDNA配列(SEQ ID NO:36)を示している。開始メチオニンコドン(ATG)および終止コドンは太字になっており、アスパラギン酸20に対応する第2のコドン(GAC)には線が引かれていない。
【図14】その予想されるアミノ酸配列(SEQ ID NO:37)を、下線が施されたシグナル配列とともに示している。加えて、D20変異体(SEQ ID NO:38)と呼ばれるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVの変異体のN末端アミノ酸残基には網掛けが施されている。
【図15】バクテロイデス-シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVの核酸配列(SEQ ID NO:36)‐上から3番目に列記‐と、関連するヘパリン/ヘパラン硫酸リアーゼとのアラインメントを示している。同一の残基は濃いグレーで示されている;類似の残基は薄いグレーで示されている。BTはバクテロイデス-シータイオタオーミクロンを表す;FHはフラボバクテリウム-ヘパリナムを表す。
【図16】3種類の基質、すなわち未分画ヘパリン(ヘパリン)ならびに「HO-HS」および「HI-HS」と呼ばれるヘパリン硫酸(HS)の2つの画分に対するバクテロイデス-シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVの基質特異性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
概要
本開示は、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸グリコサミノグリカンなどのGAG、ならびにそれらの誘導体の修飾および特性決定においてとりわけ有用である、B.シータイオタオーミクロンからの活性B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの組換え発現について記載する。
【0029】
例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼは、ヘパリンおよびヘパラン硫酸多糖などのGAG(ならびに、場合によっては、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸などの他のGAG)を構造特異的な様式で切断するための、既存の化学的-酵素的な方法に対する補完的なツールとなりうる。GAG、例えばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の構造特異的切断は、例えば、異種混交的なGAG調製物中のGAGの構造を決定するために用いることができる。加えて、切断を例えば、より低分子量のオリゴ糖をGAGから生産するために用いることもできる。したがって、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼは、例えば、ヘパリン由来およびヘパラン硫酸由来のオリゴ糖を作製するために用いることができる。このようなヘパリン由来およびヘパラン硫酸由来のオリゴ糖は、診断的、予防的および治療的な潜在能力を有する可能性がある。
【0030】
加えて、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼは、例えば、血管新生を伴う障害における、予防的および治療的な潜在能力を有する可能性もある。
【0031】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼはさらに、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗凝固および/または抗血栓活性を中和するために、インビトロ、エクスビボおよび/またはインビボで用いることができる。
【0032】
非翻訳領域の可能性のあるものを含めておよそ1251ヌクレオチド長であるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI配列(図1;SEQ ID NO:1)は、メチオニンにより開始される、終止コドンを含めて約1179ヌクレオチドと予想されるコード配列を含む(図1にSEQ ID NO:1をコードするとして示されているヌクレオチド)。推定されるコード配列は、392アミノ酸のタンパク質をコードする(SEQ ID NO:2)。
【0033】
アミノ末端が残基17のメチオニン(M17)で始まる変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIのM17変異体をコードするアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、それぞれ図3B(SEQ ID NO:4)および3A(SEQ ID NO:3)に示されている。加えて、精製を容易にするために6×ヒスチジン融合タンパク質も作製されている。この酵素を入手するために、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどの種々の精製タグの包含を用いることもできる。
【0034】
アミノ末端が残基Q26のグルタミンで始まるもう1つの変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIのQ26変異体をコードするアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、それぞれ図4B(SEQ ID NO:23)および4A(SEQ ID NO:22)に示されている。加えて、精製を容易にするために6×ヒスチジン融合タンパク質も作製されている。この酵素を入手するために、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどの種々の精製タグを用いることもできる。
【0035】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIタンパク質は、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼIと、少なくとも一次アミノ酸配列レベルで共通の構造的特徴を有する(図2)。
【0036】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIの遺伝子配列(図5;SEQ ID NO:5)は終止コドンを含めておよそ2001ヌクレオチド長である(図5AにSEQ ID NO:5をコードするとして示されているヌクレオチド)。このコード配列は666アミノ酸のタンパク質をコードする(SEQ ID NO:5B)。
【0037】
アミノ末端が残基23のグルタミン(Q23)で始まる変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIのQ23変異体をコードするアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、それぞれ図5B(SEQ ID NO:8)および5A(SEQ ID NO:7)に示されている。加えて、精製を容易にするために、6×ヒスチジン融合タンパク質も作製されている。この酵素を入手するために、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどの種々の精製タグの包含を用いることもできる。
【0038】
残基169のリジン(K169)で始まって残基186のグルタミン酸で終わる欠失体であるもう1つの変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIのK169変異体をコードするアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、それぞれ図5B(SEQ ID NO:10)および5A(SEQ ID NO:9)に示されている。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIタンパク質は、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られたヘパリナーゼIIIと、少なくともそれらの各々の一次アミノ酸配列のレベルで、数多くの共通した構造的特徴を有する。
【0039】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII配列(図8;SEQ ID NO:28)はおよそ2690ヌクレオチド長(非翻訳配列を含む)であり、メチオニンにより開始される、終止コドンを含めて約2622ヌクレオチドと予想されるコード配列を含む。開始コドンおよび終止コドンは図8に太字で示されている。このコード配列は873アミノ酸のタンパク質をコードする(図9中のSEQ ID NO:29)。
【0040】
アミノ末端がグルタミン残基23(Q23)で始まる変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。この変異体のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:33に示されており、一方、この変異体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34に示されている。グルタミン23残基は図9では下線が施されており、図10ではグレーの網掛けが施されている。加えて、精製を容易にするために6×ヒスチジン融合タンパク質も作製されている。この酵素を入手するために、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAおよびビオチンなどの種々の精製タグの含めることを用いることもできる。
【0041】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIタンパク質は、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼIIと共通したいくつかの構造的特徴および基質特異性を有する。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIタンパク質は、ヘパリンおよびヘパラン硫酸の両方に対する基質特異性を有する。加えて、これはコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を切断することもできる。
【0042】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIV配列(図13;SEQ ID NO:36)はおよそ2109ヌクレオチド長である。開始コドンおよび終止コドンは図15では太字になっている。このコード配列は702アミノ酸のタンパク質をコードする(図14中のSEQ ID NO:37)。
【0043】
アミノ末端がアミノ酸残基20のアスパラギン酸(D20)で始まる変異体を、組換えタンパク質を生産するために用いることもできる。この変異体のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:38に示されており、一方、この変異体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39に示されている。アスパラギン酸20の残基に関するコドンは図13では下線が施されており、図14ではアスパラギン酸20はグレーの網掛けが施されている。加えて、精製を容易にするために、6×ヒスチジン融合タンパク質も作製されている。この酵素を入手するために、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどの種々の精製タグの包含を用いることもできる。
【0044】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVタンパク質は、B.シータイオタオーミクロンから得られる他のGAGリアーゼ、またはフラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼに対して、限定的な配列類似性を有する。加えて、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVタンパク質は、B.シータイオタオーミクロンから得られる他のGAGリアーゼ、またはフラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼとは異なる基質特異性を有する。例えば、これは、科学文献に報告されている、天然の大部分のヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸中では典型的には少ない、二糖または四糖を切断することができる。
【0045】
本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドは、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸により媒介される活性を調整しうるため、それらはさまざまな予防的および治療的な用途に、ならびにヘパリンまたはヘパラン硫酸媒介性または関連性の障害に対する新規の予防用および診断用薬剤を開発するために有用な可能性がある。
【0046】
本明細書で用いる場合、「GAGリアーゼ活性」、「GAGリアーゼの生物活性」または「GAGリアーゼの機能的活性」とは、生理的環境において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのタンパク質、ポリペプチドまたは核酸分子によって及ぼされる活性のことを指す。例えば、GAGリアーゼ活性は、例えば、GAGリアーゼ基質に対して、例えばヘパリンまたはヘパラン硫酸におけるグリコシド結合に対して、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼによって及ぼされる活性でありうる。GAGリアーゼ活性は、インビボまたはインビトロで決定することができる。
【0047】
本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子は、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られる種々のさまざまなヘパリナーゼと同程度の生物活性を有することが予想される。例えば、本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、次の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を、例えば、位置C4とC5との間に不飽和結合(すなわち、Δ4,5)を有するウロン酸が切断部位に生じるような様式で、切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を調整する、例えば上昇または低下させる;ならびに(4)血管新生を低下または消失させる。
【0048】
いくつかの局面において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIは、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼIと類似しているが同一ではない生物活性を有する。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIは、以下の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化ウロン酸、例えば2-Oウロン酸にかかわる1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;硫酸化ヘキソサミン、例えば6-O-スルフェートおよび/またはN-スルファミドにかかわる1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断の前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、低下させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持される。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。
【0049】
いくつかの局面において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIは、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼIIと類似しているが同一ではない生物活性を有する。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIは、次の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸および/またはデルマチン硫酸(dermatin sulfate)と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化ヘキソサミン(例えば、N硫酸化および/または6-O硫酸化)または硫酸化されていないがアセチル化されているヘキソサミン(例えば、HNAc)と硫酸化ウロン酸、例えば、2-O硫酸化ウロン酸または非硫酸化ウロン酸との間の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断の前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、低下させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性はことによると維持される。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が両方とも低下する。
【0050】
したがって、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIおよび/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、ヘパリン関連障害を抑えるための新規治療薬として作用しうる。そのような障害の例には、ヘパリンにより誘導される抗凝固および/または血管新生が含まれる。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIおよび/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、例えば手術中または手術後の、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数の抗凝固特性を低下または消失させる(例えば、中和する)ために用いることができる。他の態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIおよび/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIは、例えば、バイオリアクター、例えば、心肺および/または腎透析に用いられるバイオリアクター内の、血液のヘパリン除去を行うために用いることができる。
【0051】
いくつかの局面において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIは、フラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼIIIと類似しているが同一ではない生物活性を有する。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIは、次の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化および低硫酸化ウロン酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、上昇させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性は維持され、またはことによると上昇し、一方、抗IIa活性は低下する。他の態様において、抗IIa活性は上昇し、一方、抗Xa活性は維持される。
【0052】
いくつかの局面において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVは、B.シータイオタオーミクロンから得られる他の公知のGAGリアーゼ、およびフラボバクテリウム-ヘパリナムから得られるヘパリナーゼとは異なる生物活性、例えば基質特異性を有する。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVは、次の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化の密度が低い〜中等度である1つまたは複数のグリコシド結合、特に2-O-硫酸化ウロン酸にかかわり、アセチル化グルコサミン(ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の天然の大部分の調製物中には一般にみられない)を結び付ける結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、上昇させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が上昇し、一方、抗IIa活性は維持されるか低下する。他の態様においては、抗IIa活性が上昇し、一方、抗Xa活性は維持される。
【0053】
したがって、このようなB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIおよびB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIV分子は、凝固および/または血栓症の治療のために有用なヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸調製物を調製するために用いることができる。そのような障害の例には、血栓を溶解することまたはその形成を抑制すること、心臓および中枢神経系の血管の梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、心筋梗塞、不整脈、心房細動、狭心症、不安定狭心症、難治性狭心症、うっ血性心不全、播種性血管内凝固、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス移植手術(CABG)、再灌流された冠動脈の再閉塞または再狭窄、リウマチ熱、脳卒中、一過性虚血発作、血栓性脳卒中、塞栓性脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓、片頭痛、アレルギー、喘息、気腫、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症、眼球空間の新生血管、骨粗鬆症、乾癬、関節炎(リウマチ性または骨原性)、アルツハイマー病、骨折、大手術/外傷、熱傷、外科処置、骨髄移植などの移植、股関節置換術、膝関節置換術、敗血症、敗血性ショック、妊娠、血友病などの遺伝性障害に起因する病状の治療および予防が含まれる。
【0054】
他の態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIおよび/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIV分子は、望ましくない増殖および/または分化を呈する、または他の様式でそれを伴う、細胞の血管新生を予防または抑制することによって、細胞増殖性または分化性障害を処置または予防するために用いることができる。細胞増殖性および/または分化性障害の例には、糖尿病;関節炎、例えば、関節リウマチ;眼球障害、例えば、眼球新生血管、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、後水晶体線維増殖症、ウエビティス(uevitis)、眼球疾患、脈絡膜新生血管、虹彩新生血管を伴う眼障害;癌、例えば、癌腫、肉腫、転移性障害または造血新生物障害、例えば、白血病が含まれる。
【0055】
他の態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、コンドロイチン硫酸および/またはデルマタン硫酸調製物を調製するために用いることができる。
【0056】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質、その断片、ならびに、そのSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:29またはSEQ ID NO:37における配列の誘導体および他の変異体は、「本発明のポリペプチドまたはタンパク質」または「B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはタンパク質」と総称される。そのようなポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸分子は、「本発明の核酸」または「B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸」と総称される。「B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子」とは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの核酸、ポリペプチドおよび抗体のことを指す。
【0057】
本明細書で用いる場合、「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)およびDNAまたはRNAの類似体を含む。DNAまたはRNA類似体は、ヌクレオチド類似体から合成することができる。DNA分子は一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0058】
「単離された核酸分子」または「精製された核酸分子」という用語は、核酸の天然の源の中に存在する他の核酸分子から分離された核酸分子を含む。例えば、ゲノムDNAに関して、「単離された」という用語は、そのゲノムDNAに自然下で付随する染色体から分離された核酸分子のことを指す。好ましくは、「単離された」核酸は、その核酸の由来である生物体のゲノムDNA中でその核酸と自然下で隣接する配列(すなわち、核酸の5'および/または3'末端に位置する配列)を含まない。例えば、さまざまな態様において、単離された核酸分子は、その核酸の由来である細胞のゲノムDNA中でその核酸と自然下で隣接する5'および/または3'ヌクレオチド配列を、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満しか含まないことが可能である。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え手法によって生産された場合には他の細胞材料もしくは培地を実質的に含まないこと、または化学合成された場合には前駆化学物質もしくは他の化学物質を実質的に含まないことが可能である。
【0059】
本明細書で用いる場合、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記載している。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションに続く、0.2×SSC、0.1% SDS中、65℃での2回の洗浄である。ハイブリダイゼーション条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載がある。その文献中には水性および非水性の方法が記載されており、いずれを用いることもできる。ハイブリダイゼーション条件のそのほかの例は、次の通りである:(1)低ストリンジェンシー、6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションに続く、0.2×SSC、0.1% SDS中、55℃での1回または複数回の洗浄;(2)中程度のストリンジェンシー、6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションに続く、0.2×SSC、0.1% SDS中、60℃での1回または複数回の洗浄;および、好ましくは、(3)高ストリンジェンシー、6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションに続く、0.2×SSC、0.1% SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄。特に好ましいストリンジェンシー条件(および、分子がハイブリダイゼーション限界の範囲内にあるか否かを判定するためにどの条件を適用すべきかに関して実行者に確信がない場合に用いるべき条件)は、0.5Mリン酸ナトリウム、7% SDS中、65℃に続く、0.2×SSC、1% SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄である。好ましくは、SEQ ID NO:1、5、28または36の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然の核酸分子に対応する。
【0060】
本明細書で用いる場合、「天然の」核酸分子とは、自然界に存在するヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子のことを指す。例えば、天然の核酸分子は、天然タンパク質をコードすることができる。
【0061】
本明細書で用いる場合、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを少なくとも含む核酸分子のことを指す。遺伝子は任意で、非コード性配列、例えば、調節配列およびイントロンさらに含むことができる。
【0062】
「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはタンパク質は、タンパク質の由来である細胞源または組織源からの細胞材料および他の混入性タンパク質を実質的に含まない、または化学合成された場合には前駆化学物質および他の化学物質を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の調製物が少なくとも10%の純度であることを意味する。1つの好ましい態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の調製物は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼでないタンパク質(本明細書では「混入性タンパク質」とも称する)、または前駆化学物質、もしくはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼでない化学物質を、約30%、20%、10%未満、より好ましくは5%(乾燥重量比で)未満しか有しない。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質またはその生物活性部分が組換え生産される場合には、それはまた、培地も実質的に含まないことが好ましく、すなわち、培地はタンパク質調製物の容積比で約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である。本発明は、乾燥重量で少なくとも0.01、0.1、1.0および10ミリグラムである、単離または精製された調製物を含む。
【0063】
「非必須」アミノ酸残基とは、GAGリアーゼ活性を消失させることも実質的に変化させることもなく、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの野生型配列から改変することが可能な残基のことである。好ましくは、この改変はGAGリアーゼ活性を実質的に変化させず、例えば、活性は野生型の少なくとも20%、40%、60%、70%または80%である。「必須」アミノ酸残基とは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの野生型配列から改変された場合に、野生型活性の20%未満しか存在しないようにGAGリアーゼ活性の消失をもたらす残基のことである。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼにおける保存されたアミノ酸残基は、改変を特に受け入れないと予想される。
【0064】
「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ残残基によって置換されているものをいう。類似したアミノ酸残基を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質における非必須と予想されるアミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基によって置き換えられる。または、もう1つの態様において、飽和突然変異誘発法(saturation mutagenesis)などにより、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのコード配列の全体または一部にわたってランダムに突然変異を導入することもでき、その結果得られた変異体を、GAGリアーゼ生物活性を保っている突然変異体を同定するために生物活性に関してスクリーニングすることもできる。SEQ ID NO:1、SEQ 1D NO:5、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:36の突然変異誘発の後に、コードされるタンパク質を組換え法によって発現させ、タンパク質の活性を決定することができる。
【0065】
本明細書で用いる場合、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の「生物活性部分」には、相互作用、例えば分子間相互作用に関与する、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の断片が含まれる。分子間相互作用は、結合相互作用または酵素相互作用でありうる(例えば、相互作用は一過性であることができ、共有結合が形成または破壊される)。分子間相互作用は、GAGリアーゼB.シータイオタオーミクロン分子と、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼでない分子、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸およびそれらの断片との間でありうる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の生物活性部分には、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質のアミノ酸配列と十分に相同な、またはそれに由来するアミノ酸配列、例えば、SEQ ID NO:2、SEQ ED NO:6、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:37に示されたアミノ酸配列を含むペプチドであって、完全長B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、かつGAGリアーゼタンパク質の少なくとも1つの活性を呈するペプチドが含まれる。典型的には、生物活性部分は、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸およびそれらの断片の脱重合(例えば、部位特異的な様式での);ヘパリン、ヘパラン硫酸およびそれらの断片のグリコシド結合の切断;抗凝固活性、例えばヘパリン、ヘパラン硫酸およびそれらの断片の抗凝固活性を低下または除去させるといった、GAGリアーゼタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の生物活性部分は、例えば、長さが10、25、50、100、200、300、400、500アミノ酸またはそれ以上であるポリペプチドでありうる。
【0066】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書中で互換的に用いられる)の算出は、以下のように行われる。
【0067】
2つのアミノ酸配列の、または2つの核酸配列の同一性(%)を決定するためには、最適な比較を目的として配列のアラインメントを行う(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。2つの配列間の一致度は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた上での、配列が共有する同一な位置の数の関数である。ある分子が本明細書における配列同一性または相同性の限界の範囲内にあるか否かを決定する目的には、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているNeedleman and Wunsch((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)の数学的アルゴリズムにより、次のパラメーターを用いて、一致度を決定する:Blossum 62スコアリング行列を用い、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5とする。
【0068】
1つの好ましい態様において、比較の目的でアラインメントを行う参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。続いて、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列のある位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合には、分子はその位置で同一である(本明細書で用いる場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同義である)。
【0069】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子を基準として生物配列を分析する目的には、前述のNeedleman and Wunschのアルゴリズムに加えて、以下のアラインメント手順を用いることができる。2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の間の一致度は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Millerのアルゴリズム((1989) CABIOS, 4:11-17)を用い、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて決定することができる。
【0070】
本明細書に記載した核酸およびタンパク質の配列は、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために公開データベースに対する検索を行うための、「クエリー配列(query sequence)」として用いることができる。この種の検索は、Altschul, et al. (1990) J. Moi. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行することができる。本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るためには、BLASTヌクレオチド検索を、スコア=100、ワード長=12としたNBLASTプログラムを用いて実行するとよい。本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るためには、BLASTタンパク質検索を、スコア=50、ワード長=3としたXBLASTプログラムを用いて実行するとよい。比較のためのギャップ入りのアライメントを得るためには、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されたギャップ付きBLAST(Gapped BLAST)を用いるとよい。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する時には、各々のプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメーターを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照。
【0071】
本発明の個々のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドは、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39のアミノ酸配列と十分に同一なアミノ酸配列を有する。アミノ酸配列の文脈において、「十分に同一な」または「実質的に同一な」という用語は、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造フォールドおよび/または共通の機能的活性を持つように、第2のアミノ酸配列中のアラインメントがなされたアミノ酸残基と(i)同一である、または(ii)その保存的置換物である、十分な数または最小限の数のアミノ酸残基を含む、第1のアミノ酸のことを指して本明細書で用いられる。例えば、少なくとも約60%または65%の同一性、適切には75%の同一性、より適切には85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造ドメインを含むアミノ酸配列は、十分にまたは実質的に同一であると呼ばれる。ヌクレオチド配列の文脈において、「十分に同一な」または「実質的に同一な」という用語は、第1および第2のヌクレオチド配列が共通のポリペプチドフォールドまたは共通の機能的ポリペプチド活性を持つように、第2のヌクレオチド配列中のアラインメントがなされたヌクレオチドと同一である、十分な数または最小限の数のヌクレオチドを含む、第1のヌクレオチドのことを指す。
【0072】
本明細書で教示する方法は、時にはヘパリン様グリコサミノグリカン(HLGAG)に関して記載されるが、本明細書で教示する特性は他の多糖に敷延することができる。本明細書で用いる場合、「HLGAG」および「グリコサミノグリカン」(GAG)という用語は、ヘパリン様の構造および特性を有する分子のファミリーを指して互換的に用いられ、本明細書中では全般的に「ヘパリン」と呼ばれる。これらの分子には、低分子量ヘパリン(LMWH)、未分画ヘパリン、バイオテクノロジー的に調製されたヘパリン、化学修飾ヘパリン、五糖(例えば、ARIXTRA(商標))などの合成ヘパリン、ヘパリン模倣物およびヘパラン硫酸が非限定的に含まれる。「バイオテクノロジー的なヘパリン」には、化学修飾された多糖の天然の源から調製されたヘパリンが含まれ、これはRazi et al., Bioche. J. 1995 Jul 15;309 (Pt 2): 465-72に記載されている。化学修飾ヘパリンはYates et al., Carbohydrate Res (1996) Nov 20;294:15-27に記載されており、当業者に周知である。合成ヘパリンは当業者に周知であり、Petitou, M. et al., Bioorg Med Chem Lett. (1999) Apr 19;9(8):1161-6およびVlodavsky et al., Int. J. Cancer, 1999, 83:424-431に記載されている。合成ヘパリンの一例はフォンダパリヌクスである。フォンダパリヌクス(ARIXTRA)は、AT-III結合部位に対応する5単位の合成グリコサミノグリカンである。ヘパラン硫酸は、ヘパリンに類似した二糖反復単位を含むが、より多くのN-アセチル基ならびにより少ないN-およびO-硫酸基を有する、グリコサミノグリカンのことを指す。ヘパリン模倣物は、ヘパリンの少なくとも1つの生物活性(すなわち、抗凝固、癌の抑制、肺障害の治療、その他)を有する、単糖(例えば、スクラルファート)、オリゴ糖または多糖のことを指す。好ましくは、これらの分子は高度に硫酸化されている。ヘパリン模倣物は天然性、合成性または化学修飾性のいずれでもよい(Barchi, J.J., Curr. Pharm. Des., 2000, Mar, 6(4):485-501)。「HLGAG」という用語はまた、上記のHLGAG分子の機能的突然変異体も含む。これらの機能的突然変異体は類似した構造を有するが、分子にその生物活性の大部分を保持させる、または増大した生物活性を持たせる、構造に対するわずかな修飾を含む。
【0073】
本明細書で用いる「LMWH」とは、8000Da未満の平均分子量を有し、LMWH調製物のオリゴ糖鎖の少なくとも約60%が8000Da未満の分子量を有する、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の調製物のことを指す。いくつかのLMWH調製物が販売されているが、例えばHLGAG分解酵素を用いて、LMWHをヘパリンから調製することもできる。HLGAG分解酵素には、ヘパリナーゼ-I、ヘパリナーゼ-II、ヘパリナーゼ-III、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼおよびL-イズロニダーゼが非限定的に含まれる。フラボバクテリウム-ヘパリナム由来の3種類のヘパリナーゼは、LMWH(5,000〜8,000Da)および超低分子量ヘパリン(ほぼ3,000Da)の生成のために用いられている酵素的ツールである。加えて、LMWHを、例えば、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドを用いて調製することもできる。販売されているLMWHには、エノキサパリン(商標名Lovenox;Aventis Pharmaceuticals)、ダルテパリン(Fragmin、Pharmacia and Upjohn)、セルトパリン(Sandobarin、Novartis)、アルデパリン(Normiflo、Wyeth Lederle)、ナドロパリン(Fraxiparine、Sanofi-Winthrop)、パルナパリン(Fluxum、Wassermann)、レビパリン(Clivarin、Knoll AG)およびチンザパリン(Innohep、Leo Laboratories、Logiparin、Novo Nordisk)が非限定的に含まれる。LMWHのいくつかの好ましい形態には、エノキサパリン(Lovenox)およびダルテパン(Fragmin)が含まれる。本明細書で用いる「Arixtra」という用語は、メチルO-2-デオキシ-6-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-2-デオキシ-3,6-ジ-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-O-2-O-スルホ-α-L-イドピラヌロノシル-(1→4)-2-デオキシ-6-O-スルホ-2-(スルホアミノ)-α-D-グルコピラノシドという合成五糖、そのデカナトリウム塩および誘導体を含む組成物のことを指す。本明細書で用いる「合成ヘパリン」または「合成HLGAG」とは、HLGAGが合成化合物であって、ヘパリンの断片化に由来するのではないことを指す。合成ヘパリンを調製する方法は、例えば、Petitou et al. (1999) Nature 398:417に提示されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
「誤発現または異常発現」とは、本明細書で用いる場合、RNAまたはタンパク質のレベルでの、非野生型パターンの遺伝子発現のことを指す。これは次を含む:非野生型レベルでの発現、すなわち過剰発現または過少発現;遺伝子が発現される時および段階の点で野生型とは異なる発現のパターン、例えば、所定の発生時期または段階での(野生型と比較して)増加または減少した発現;所定の種類の細胞または組織における(野生型と比較して)変化した発現の点で野生型とは異なる発現のパターン;スプライシングのサイズ、翻訳されるアミノ酸配列、移行後修飾または発現されるポリペプチドの生物活性の点で野生型とは異なる発現のパターン;遺伝子の発現に対する環境刺激または細胞外刺激の影響の点で野生型とは異なる発現のパターン、例えば、刺激の強度の増加または減少の存在下における(野生型と比較して)増加または低下したパターン。
【0075】
「対象」とは、本明細書で用いる場合、哺乳動物のことを指す。1つの好ましい態様において、対象はヒトである。もう1つの態様において、対象は実験動物または疾患モデルとして適した動物である。そのような対象の非限定的な例には、マウス、ラットおよびウサギが含まれる。対象が非ヒト動物、例えば、ウマ、ウシ、ヤギまたは他の家畜であってもよい。
【0076】
本発明のさまざまな局面を以下にさらに詳細に記載する。
【0077】
単離された核酸分子
1つの局面において、本発明は、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、例えば、完全長B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質またはその断片、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の生物活性部分をコードする、単離または精製された核酸分子を提供する。例えば本発明のポリペプチドをコードする核酸分子、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼmRNAを同定するために用いうる、ハイブリダイゼーションプローブとして用いるのに適した核酸断片、および、プライマーとして、例えば、核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとして用いるのに適した断片も同じく含まれる。
【0078】
1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:37に示されたヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列の任意のものの一部分を含む。1つの態様において、核酸分子は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質をコードする配列(すなわち、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:36の「コード領域」)ならびに5'非翻訳配列を含む。または、核酸分子が、対象配列に通常付随する隣接配列を含まなくてもよい。もう1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28もしくはSEQ ID NO:36に示されたヌクレオチド配列の、またはこれらのヌクレオチド配列の任意のものの一部分の相補物である核酸分子を含む。他の態様において、本発明の核酸分子は、それがSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:36に示されたヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができ、それによって安定な二重鎖を形成するように、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:36に示されたヌクレオチド配列に対して十分に相補的である。
【0079】
1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28もしくはSEQ ID NO:36に示されたヌクレオチド配列の全長、またはこれらのヌクレオチド配列の任意のものの一部分、好ましくは同じ長さのものに対して、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含む。
【0080】
本発明の核酸分子は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:36の核酸配列の一部分のみを含むことができる。核酸は、コード領域の部分またはすべてを含み、しかも5'または3'非コード領域のいずれか(または両方)に伸びたヌクレオチド配列を含む。他の態様は、本明細書に記載したアミノ酸断片、特に長さが少なくとも100アミノ酸であるその断片をコードするヌクレオチド配列を含む断片を含む。断片にはまた、上記の特定のアミノ酸配列またはそれらの断片に対応する核酸配列も含まれる。核酸断片には本発明の前に開示された可能性のある断片が含まれるとはみなされるべきではない。
【0081】
「B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドの生物活性部分」をコードする核酸断片は、GAGリアーゼ生物活性(例えば、GAGリアーゼタンパク質の生物活性は本明細書に記載されている)を有するポリペプチドをコードするSEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36または38のヌクレオチド配列の一部分を単離し、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質のコードされる部分を発現させて(例えば、インビトロでの組換え発現による)、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質のコードされる部分の活性を評価することによって調製することができる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドの生物活性部分をコードする核酸断片は、長さが300ヌクレオチドまたはそれ以上であるヌクレオチド配列を含みうる。
【0082】
好ましい態様において、核酸は、長さが約300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900ヌクレオチドまたはそれ以上であって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でSEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36または38の核酸分子とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0083】
本発明は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、22、28、33、36または38に示されたヌクレオチド配列とは異なる核酸分子を包含する。そのような差異は、遺伝暗号の縮重性に起因しうる(そして、本明細書に開示したヌクレオチド配列によってコードされるものと同じB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質をコードする核酸をもたらす)。もう1つの態様において、本発明の単離された核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39に示されたものとのアミノ酸残基の違いが少なくとも1個だが5個、10個、20個、50個または100個未満であるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。この比較のためにアラインメントが必要な場合には、最大の相同性が得られるように配列のアラインメントを行うべきである。欠失もしくは挿入による「ループ」アウト配列またはミスマッチは差異とみなされる。
【0084】
本発明者の核酸は、特定の発現系にとって選好的である、または選好的でないコドンを有することに関して選択することができる。例えば、核酸は、配列が大腸菌(E. coli)、酵母、ヒト、昆虫またはCHO細胞における発現に関して最適化されるように、少なくとも1つのコドンで改変されたもの、好ましくは少なくとも10%または20%のコドンで改変されたものでありうる。
【0085】
核酸変異体は、アレル変異体(同じ遺伝子座)および相同体(異なる遺伝子座)などのように天然のものでもよく、または非天然性のものでもよい。非天然性の変異体は、ポリヌクレオチド、細胞または生物体に対して適用されるものを含む、突然変異誘発法によって作製可能である。変異体はヌクレオチドの置換、欠失、逆位および挿入を含みうる。変異はコード領域および非コード領域の一方にあってもよく、または両方にあってもよい。変異は(コードされる産物と比較して)保存的および非保存的なアミノ酸置換の両方を生じさせることができる。
【0086】
1つの好ましい態様において、核酸は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、23、28、33、36または38の核酸とは、例えば次のものが異なる:対象核酸中の、少なくとも1個だが10個、20個、30個または40個未満のヌクレオチド;少なくとも1個だが1%、5%、10%または20%未満のヌクレオチド。この比較のためにアラインメントが必要な場合には、最大の相同性が得られるように配列のアラインメントを行うべきである。欠失もしくは挿入による「ループ」アウト配列またはミスマッチは差異とみなされる。
【0087】
相同体およびアレル変異体は、当技術分野で公知の方法を用いて同定することができる。これらの変異体は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37もしくは39に示されたアミノ酸配列またはこれらの配列の断片と50%、少なくとも約55%、典型的には少なくとも約70〜75%、より典型的には少なくとも約80〜85%、最も典型的には少なくとも約90〜95%またはそれ以上同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。そのような核酸分子は、SEQ ID NO 2、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:29もしくはSEQ ID NO:37に示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列またはその配列の断片と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるものとして容易に同定することができる。本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼDNAの相同体およびアレル変異体に対応する核酸分子を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ遺伝子と同じ染色体または遺伝子座に対するマッピングを行うことによってさらに単離することができる。
【0088】
好ましい変異体には、本明細書に記載したGAGリアーゼ活性と関連づけられるものが含まれる。
【0089】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのアレル変異体には、機能的タンパク質および非機能的タンパク質の両方が含まれる。機能的アレル変異体とは、1つまたは複数のGAGリアーゼ活性を維持している集団内にある、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の天然のアミノ酸配列変異体のことである。機能的アレル変異体は、典型的には、SEQ ID NO:2、6、29もしくは37の1つもしくは複数のアミノ酸の保存的置換、またはタンパク質の重大でない領域における重大でない残基の置換、欠失もしくは挿入のみを含むと考えられる。機能的変異体の例には、本明細書に記載したM17、Q26、Q23、K169およびD20変異体(すなわち、それぞれSEQ ID NO:4、23、8 10および39)、ならびにGAGリアーゼIIIのQ23変異体(SEQ ID NO:34)が含まれる。非機能的アレル変異体とは、本明細書に記載したGAGリアーゼ活性のうち1つまたは複数を有しない集団内にある、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の天然のアミノ酸配列突然変異体のことである。非機能的アレル変異体は、典型的には、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:29もしくはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列の非保存的な置換、欠失もしくは挿入もしくは早期切断、またはタンパク質の重大残基もしくは重大領域における置換、挿入もしくは欠失を含むと考えられる。
【0090】
さらに、他のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼファミリーの他のメンバーをコードし、したがってSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:36のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子も、本発明の範囲内にあるものとする。
【0091】
単離されたB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド
もう1つの局面において、本発明は、単離されたB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質、およびそれらの断片、例えばそれらの生物活性部分を特徴とする。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、細胞源または組織源から、標準的なタンパク質精製法を用いて単離することができる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質またはそれらの断片は、組換えDNAの手法によって生産すること、または化学合成することができる。
【0092】
本発明のポリペプチドには、多数の遺伝子、選択的転写事象、選択的RNAスプライシング事象、ならびに選択的な翻訳および翻訳後事象の存在の結果として生じるものが含まれる。ポリペプチドは、ポリペプチドをネイティブ細胞で発現させた場合に存在するのと実質的に同じ翻訳後修飾をもたらす系、例えば培養細胞において、または、ネイティブ細胞で発現させた場合に存在する翻訳後修飾、例えばグリコシル化もしくは切断の変化もしくは除外をもたらす系において、発現させることができる。
【0093】
1つの好ましい態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドは、次の特徴のうち1つまたは複数を有する:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)抗ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸のXa活性および/または抗IIa活性を調整する、例えば、上昇または低下させる;ならびに(4)血管新生を低下または消失させる。
【0094】
いくつかの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIであり、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIは、次の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化ウロン酸、例えば2-Oウロン酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;硫酸化ヘキソサミン、例えば6-Oスルフェートおよび/またはN-スルファミドに関わる1つまたは複数のグリコシル結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断の前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、低下させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持される。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。
【0095】
いくつかの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIであり、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIは、以下の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化および低硫酸化ウロン酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断の前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、上昇させる。いくつかの態様において、抗Xa活性は維持されるか上昇し、一方、抗IIa活性は低下する。他の態様においては、抗IIa活性が上昇し、一方、抗Xa活性は維持される。
【0096】
いくつかの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIであり、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIは、以下の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸および/またはデルマチン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化ヘキソサミン(例えば、N硫酸化および/または6-O硫酸化)または硫酸化されていないがアセチル化されているヘキソサミン(例えば、HNAc)と硫酸化ウロン酸、例えば、2-O硫酸化ウロン酸または非硫酸化ウロン酸との間の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断の前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、低下させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持される。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。
【0097】
いくつかの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVであり、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVは、以下の活性のうち1つまたは複数を有しうる:(1)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸と結合する;(2)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数のグリコシド結合を切断する、例えば、硫酸化の密度が低い〜中等度である1つまたは複数のグリコシド結合、特に2-O-硫酸化ウロン酸にかかわり、アセチル化グルコサミン(ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の天然の大部分の調製物中には一般にみられない)を結び付ける結合を切断する;(3)ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性を、例えば、参照標準、例えば、市販のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の、または切断前のヘパリンもしくはヘパラン硫酸の抗Xa活性および/または抗IIa活性と比較して、上昇させる。いくつかの態様においては、抗Xa活性が上昇し、一方、抗IIa活性は維持されるか低下する。他の態様においては、抗IIa活性が上昇し、一方、抗Xa活性は維持される。
【0098】
1つの好ましい態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質またはその断片は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39における対応する配列とは異なる。1つの態様において、それは少なくとも1個だが15個、10個または5個未満のアミノ酸残基に違いがある。もう1つのものにおいて、それはSEQ ID NO:2、4,6、8、10、23、29、34、37または39における対応する配列とは少なくとも1個の残基に違いがあるが、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39における対応する配列と異なるのはその中の残基の20%、15%、10%または5%未満である。(この比較がアラインメントを必要とする場合には、最大の相同性が得られるように配列のアラインメントを行うべきである。欠失もしくは挿入による「ループ」アウト配列またはミスマッチは差異とみなされる)。差異は、好ましくは、非必須残基での差異もしくは変化、または保存的置換である。
【0099】
その他の態様には、アミノ酸配列に1つまたは複数の変化、例えば、活性にとって必須ではないアミノ酸残基の変化を含むタンパク質が含まれる。そのようなB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39とはアミノ酸配列が異なるが、それでも生物活性を保っている。
【0100】
1つの態様において、タンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を含む。
【0101】
タンパク質の領域が欠失している生物活性部分は、組換え手法によって調製して、ネイティブなB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の機能的活性の1つまたは複数に関して評価することができる。
【0102】
1つの好ましい態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39に示されたアミノ酸配列を有する。他の態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39と実質的に同一である。さらにもう1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質はSEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39と実質的に同一であって、上記のサブセクションで詳述したような、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、23、29、34、37または39のタンパク質の機能的活性を保っている。
【0103】
もう1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのキメラタンパク質または融合タンパク質を提供する。本明細書で用いる場合、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」には、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが非B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと結合したものが含まれる。「非B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド」とは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質と実質的に相同でないタンパク質、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質と異なっていて、同じまたは異なる生物体に由来するタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドのことを指す。融合タンパク質のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼアミノ酸配列の全体または部分、例えば、本明細書に記載した断片に対応しうる。1つの好ましい態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ融合タンパク質は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の少なくとも1つ(または2つ)の生物活性部分を含む。非B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドを、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドのN末端またはC末端と融合させることができる。
【0104】
融合タンパク質は、リガンドに対して高い親和性を有する部分を含むことができる。例えば、融合タンパク質は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ配列がGST配列のC末端と融合したGST-B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ融合タンパク質でありうる。そのような融合タンパク質は、組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの精製を容易にすることができる。または、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含むB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質でありうる。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)においては、異種シグナル配列の使用を通じて、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの発現および/または分泌を増加させることができる。さらに、本発明のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ融合タンパク質は、対象において抗B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ抗体を産生させるための免疫源として、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのリガンドを精製するために、および、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼとB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ基質との相互作用を抑制する分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて、用いることができる。
【0105】
融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をすでにコードしている発現ベクターが販売されている。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼをコードする核酸を、融合部分がB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質とインフレームに連結されるように、そのような発現ベクターにクローニングすることができる。
【0106】
もう1つの局面において、本発明はまた、例えばアゴニスト(模倣物)として機能する、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドの変異体も特徴とする。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の変異体は突然変異誘発法によって作製することができ、これには例えば、離散的点突然変異、配列の挿入もしくは欠失、またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の短縮がある。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質のアゴニストは、天然の形態のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の生物活性と実質的に同じもの、またはそのサブセットを保ちうる。
【0107】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の変異体は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の突然変異体、例えば短縮突然変異体のコンビナトリアルライブラリーを、アゴニスト活性に関してスクリーニングすることによって同定することができる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIの変異体には、SEQ ID NO:4に示されたM17変異体およびSEQ ID NO:23に示されたQ26変異体が含まれる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIの変異体には、SEQ ID NO:8に示されたQ23変異体およびSEQ ID NO:10に示されたK169変異体が含まれる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIの変異体には、SEQ ID:34に示されたQ23変異体が含まれる。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIの変異体には、SEQ ID:39に示されたD20変異体が含まれる。
【0108】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質コード配列の断片、例えばN末端、C末端または内部断片のライブラリーは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の変異体のスクリーニングおよびその後の選択のための、断片の多様な集団を作製するために用いることができる。システイン残基が付加もしくは除去された、またはグリコシル化された残基が付加もしくは除去された変異体が特に好ましい。
【0109】
点突然変異または短縮によって作られたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための方法は、当技術分野で公知である。そのような方法は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質のコンビナトリアル突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適合させうる。ライブラリー中の機能的変異体の頻度を高める新たな手法である再帰的集合変異誘発法(recursive ensemble mutagenesis:REM)を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ変異体を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて用いることもできる(Arkin and Yourvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7811-7815;Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6: 327-331)。
【0110】
多様なB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼライブラリーを分析するために、細胞系アッセイを利用することができる。例えば、発現ベクターのライブラリーを、細胞株、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼに対して基質依存的な様式で通常は応答する細胞株にトランスフェクトすることができる。続いて、トランスフェクトされた細胞をB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼと接触させ、例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の切断を測定することによって、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ基質の活性に対する突然変異体の発現の影響を検出することができる。続いて、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ基質によるシグナル伝達の抑制または増強が得られた細胞からプラスミドDNAを回収して、個々のクローンの特性決定をさらに行うことができる。
【0111】
もう1つの局面において、本発明は、天然のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドの断片または類似体を作る方法を特徴とする。本方法は次を含む:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドの、例えば1つまたは複数の残基の置換または除去によって、配列を改変する段階、例えば、本明細書に記載した非保存的な領域またはドメインまたは残基を改変する段階、および改変されたポリペプチドを、例えば上記のような、所望の活性に関して試験する段階。
【0112】
組換え発現ベクター、宿主細胞および遺伝子操作細胞
もう1つの局面において、本発明は、本明細書に記載したポリペプチドをコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターを含む。本明細書で用いる場合、「ベクター」という用語は、それと連結された別の核酸を輸送する能力を持つ核酸分子のことを指し、これにはプラスミド、コスミドまたはウイルスベクターが含まれうる。ベクターは自律複製を行うことができる、またはそれは宿主DNAに組み込まれうる。ウイルスベクターには、例えば、複製能欠損レトロレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが含まれる。
【0113】
ベクターは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸を、宿主細胞における核酸の発現のために適した形態で含むことができる。好ましくは、組換え発現ベクターは、発現させようとする核酸配列と機能的に連結された1つまたは複数の調節配列を含む。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの、ならびに組織特異的な調節配列および/または誘導配列が含まれる。発現ベクターのデザインは、形質転換させようとする宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベルなどの要因に依存しうる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入されて、それによって、本明細書に記載した核酸によってコードされる、融合タンパク質またはポリペプチドを含むタンパク質またはポリペプチド(例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質、突然変異型のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質、融合タンパク質など)を産生させることができる。
【0114】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞におけるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質の発現のために設計することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、大腸菌、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクター)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現させることができる。適した宿主細胞は、Goeddel, (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CAにさらに考察されている。または、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで組換え発現ベクターの転写および翻訳を行わせることもできる。
【0115】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を導く構成性または誘導性のプロモーターを含むベクターを用いて大腸菌で行わせることが最も多い。融合ベクターは、その内部にコードされるタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは典型的には3つの目的に役立つ:(1)組換えタンパク質の発現を増加させる、(2)組換えタンパク質の溶解性を高める;および(3)アフィニティ精製におけるリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を助ける。しばしば、融合タンパク質の精製後に融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能となるように、融合部分と組換えタンパク質との接合部にタンパク質分解性切断部位が導入される。このような酵素およびそれらのコグネート認識配列には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith, D.B. and Johnson, K.S. (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)が含まれ、これらはそれぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質と融合させる。
【0116】
精製された融合タンパク質は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ活性アッセイに(例えば、以下に詳述する直接アッセイまたは競合アッセイ)、またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質に対して特異的な抗体を作製するために用いることができる。1つの好ましい態様において、本発明のレトロウイルス発現ベクターにおいて発現された融合タンパク質は、放射線を照射されたレシピエントに後に移植される骨髄細胞を感染させるために用いることができる。続いて、対象レシピエントの病態を、十分な時間(例えば、6週間)が経過した後に調べる。
【0117】
大腸菌における組換えタンパク質の発現を最大限にすることは、タンパク質分解によって組換えタンパク質を切断する能力に障害のある宿主細菌内でタンパク質を発現させることである(Gottesman, S., (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California 119-128)。もう1つの戦略は、各アミノ酸に対する個々のコドンが大腸菌で選好的に用いられるように、発現ベクターに挿入しようとする核酸の核酸配列を改変することである(Wada et al., (1992) Nucleic Acids Res. 20:2111-2118)。本発明の核酸配列のこのような改変は、標準的なDNA合成法によって行いうる。
【0118】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ発現ベクターは、酵母発現ベクター、昆虫細胞における発現のためのベクター、例えば、バキュロウイルス発現ベクター、または哺乳動物細胞における発現のために適したベクターでありうる。
【0119】
哺乳動物細胞に用いられる場合、発現ベクターの制御機能はウイルス調節エレメントによって提供することができる。例えば、よく用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。
【0120】
もう1つの態様において、プロモーターは誘導プロモーター、例えば、ステロイドホルモンによって、ポリペプチドホルモンによって(例えば、シグナル伝達経路により)、または異種ポリペプチド(例えば、テトラサイクリン誘導系、「Tet-On」および「Tet-Off」;例えば、Clontech Inc., CA, Gossen and Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547, and Paillard (1989) Human Gene Therapy 9:983を参照)によって調節されるプロモーターである。
【0121】
さらにもう1つの態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞種において選好的に核酸の発現を導くことができる(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸を発現させるために用いられる)。適した組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝特異的;Pinkert et al. (1987) Genes Dev. 1:268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame and Eaton (1988) Adv. Immunol. 43:235-275)、特にT細胞受容体(Winoto and Baltimore (1989) EMBO J. 8:729-733)および免疫グロブリン(Banerji et al. (1983) Cell 33:729-740;Queen and Baltimore (1983) Cell 33:741-748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477)、膵特異的プロモーター(Edlund et al. (1985) Science 230:912-916)および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公報第264,166号)が含まれる。発生的に調節されるプロモーター、例えば、マウスhoプロモーター(Kessel and Gruss (1990) Science 249:374-379)およびα-フェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman (1989) Genes Dev. 3:537-546)も含まれる。
【0122】
本発明はさらに、発現ベクター中にアンチセンスの向きにクローニングされた本発明のDNA分子を含む、組換え発現ベクターを提供する。さまざまな細胞種でアンチセンスRNA分子の構成的、組織特異的または細胞種特異的な発現を導く、アンチセンスの向きにクローニングされた核酸と機能的に連結された調節配列(例えば、ウイルス性プロモーターおよび/もしくはエンハンサー)を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態をとりうる。
【0123】
もう1つの局面において本発明は、本明細書に記載した核酸分子、例えば、組換え発現ベクター内にあるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子、または宿主細胞のゲノムの特定の部位へのその相同組換えを可能にする配列を含むB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ核酸分子を含む宿主細胞を提供する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は本明細書において互換的に用いられる。この種の用語は、特定の対象細胞のみではなく、このような細胞の子孫または潜在的な子孫のことも指す。突然変異または環境的影響のためにその後の世代で何らかの変化が生じる可能性があるため、このような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも本明細書で用いるこの用語の範囲には含まれる。
【0124】
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞でありうる。例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質は、細菌細胞(大腸菌など)、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)で発現させることができる。他の適した宿主細胞は当業者に公知である。
【0125】
ベクターDNAは、従来の形質転換法またはトランスフェクション法によって宿主細胞に導入しうる。本明細書で用いる場合、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈法、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、リポフェクションまたは電気穿孔法を含む、外来性核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための当技術分野で認知されている種々の手法を指すことを意図している。
【0126】
本発明の宿主細胞は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質を生産(すなわち、発現)させるために用いることができる。したがって、本発明はさらに、本発明の宿主細胞を用いてB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質を生産するための方法を提供する。1つの態様において、本方法は、本発明の宿主細胞(B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質をコードする組換え発現ベクターが導入されたもの)を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質が生産されるように、適した培地中で培養する段階を含む。もう1つの態様において、本方法はさらに、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼタンパク質を培地または宿主細胞から単離する段階を含む。
【0127】
もう1つの局面において、本発明は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ導入遺伝子を含む、または他の様式でB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼを誤発現する、細胞または細胞の精製調製物を特徴とする。細胞調製物は、ヒト細胞または非ヒト細胞、例えば、齧歯動物細胞、例えば、マウスまたはラットの細胞、ウサギ細胞またはブタ細胞からなることができる。好ましい態様において、1つまたは複数の細胞は、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ導入遺伝子、例えば、異種型のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ、例えば、ヒトに由来する遺伝子(非ヒト細胞の場合)を含む。B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ導入遺伝子は誤発現されうる、例えば、過剰発現または過少発現されうる。他の好ましい態様において、1つまたは複数の細胞は、内因性B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼを誤発現する遺伝子、例えば、その発現が破壊されている遺伝子、例えばノックアウトを含む。このような細胞は、突然変異もしくは誤発現したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼアレルと関連のある障害を研究するためのモデルとして、または薬物スクリーニングに用いるために役立てることができる。
【0128】
もう1つの局面において、本発明は、本B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドをコードする核酸によって形質転換されたヒト細胞、例えば、造血幹細胞を特徴とする。
【0129】
同じく提供されるのは、その内部で、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼが、内因性B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ遺伝子の発現を通常は制御しない調節配列の制御下にある細胞である。細胞、例えば細胞株または微生物の内部での内因性遺伝子の発現特性は、挿入された調節エレメントが内因性B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ遺伝子と機能的に連結されるように、異種DNA調節エレメントを細胞のゲノム中に挿入することによって変更することができる。例えば、「転写的にサイレント」である、例えば通常は発現されない、または低レベルでしか発現されない、内因性B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ遺伝子を、その細胞で通常発現される遺伝子産物の発現を促進させうる調節エレメントを挿入することによって活性化することができる。例えば、Chappel, US 5,272,071号;1991年5月16日に公開されたWO 91/06667号に記載されたように、標的指向的な相同組換えなどの手法を、異種DNAを挿入するために用いることができる。
【0130】
使用法
本明細書に記載したように、本明細書のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子は、次のものを非限定的に含む多くの用途に有用である:(1)ヘパリンおよびヘパラン硫酸(ならびにある程度は、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸)などのGAGの化学組成(二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖および/または十糖のオリゴ糖)に関する特性決定;(2)GAGの医薬製剤、例えばヘパリンまたはヘパラン硫酸(ならびにある程度は、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸)の製剤などの特性決定;(3)ヘパリンおよびヘパラン硫酸(ならびにある程度は、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸)などのGAGの、その化学成分、ならびに規定された長さ、配列および潜在的な生物活性を持つより小さな断片の双方への分画;(4)ヘパリンまたはヘパラン硫酸の抗凝固活性(抗Xa)のインビトロ中和;(5)抗血栓活性(抗IIa)のインビトロモジュレーション;(6)試料中のヘパリンまたはヘパラン硫酸などの特定のGAGの存在および純度の同定;(7)試料中のGAGの組成の決定;(8)特定のヘパリンまたはヘパラン硫酸における二糖、四糖、六糖、八糖および/または十糖単位の配列の決定;(9)質量分析、NMR分光法、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、HPLCおよびイオン対HPLCなどの手法を用いる化学分析のための追加的な分析ツールとしての使用;(10)少なくとも2つの二糖単位を含むヘパリンまたはヘパラン硫酸などの特定のGAGを切断するため;(11)例えば、それを必要とする対象に対するB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)の有効量の投与によって、血管新生を抑制するため;(12)対象に対するB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)の投与によって癌を治療するため;(13)それを必要とする対象に対する、細胞増殖を抑制するためのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子を含む組成物(例えば、薬学的組成物)の有効量の投与によって細胞増殖を抑制するため;(14)凝固の抑制のために対象に以前に投与されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物(例えば、薬学的調製物)の抗Xa活性のエクスビボ中和のため;(15)そのような中和を必要とする対象(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の薬学的調製物が以前に投与された対象)に対する投与による、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物(例えば、薬学的調製物)の抗Xa活性のインビボ中和のため;(16)血栓症の抑制のために対象に以前に投与されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物(例えば、薬学的調製物)の抗IIa活性のエクスビボ中和のため;または(17)そのような中和を必要とする対象(例えば、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の薬学的調製物が以前に投与された対象)に対する投与による、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物(例えば、薬学的調製物)の抗IIa活性のインビボ中和のため。
【0131】
GAGの特性決定およびシークエンシング
本明細書に記載した方法は、例えば、多糖(例えば、多糖の混在集団)の構造的特徴および/または活性を規定する目的で、多糖をB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子と接触させることによって、例えば、GAGなどの多糖(例えば、多糖の混在集団)を分析するために用いることができる。構造的特徴とは、本明細書で用いる場合、例えば、多糖の実体ならびに単糖および二糖構成単位に関する情報、全体的電荷(「実効電荷」または「総電荷」とも呼ばれる)、電荷密度、分子サイズ、電荷と質量との比、ならびにイズロン酸および/またはグルクロン酸の含有量、ならびに単糖および二糖構成単位間の関係、およびこれらの構成単位に随伴する活性部位などをはじめとする物理化学的特性に関する情報のことを指す。構造的特徴は、次を含む1つまたは複数の一次アウトプットを決定することによって提供することができる:1つまたは複数の構成糖類または二糖の存在または量;本明細書で用いる場合、「構成糖類」とは、多糖を構成する糖類のことを指す。構成糖類には単糖、二糖、三糖が含まれうるほか、自然界に通常認められる糖、ならびに非天然糖および修飾糖、例えば、生産、加工処理および/または精製によって生じたものも含まれうる;1つまたは複数のブロック成分(block component)の存在または量、ここで「ブロック成分」は複数の糖類または多糖を構成する;ならびに、1つまたは複数の修飾糖の存在または量、ここで修飾糖とは調製物を作るために用いられる出発材料中に存在するが調製物の生産に際して改変されたもの、例えば、切断によって修飾された糖類のことである。多糖に関する「配列」とは、共有結合した構成糖類の直線的配置のことを指し、当技術分野で公知の方法、例えば、本明細書ならびにPCT公報第WO 00/65521号、第WO 02/23190号および第WO 04/055491号;米国公報第20030191587号および第20040197933号;Venkataraman(1999);Shriver et al.(2000a);Shriver et al.(2000b);およびKeiser et al.(2001)に開示された方法によって決定することができる;これらのすべての教示は参照により本明細書に組み入れられる。「活性部位の位置決定(positioning of the active site)」とは、特定の構成多糖と所定の活性との間の相関のことを指す。
【0132】
1つの態様において、本発明は、本明細書に記載した構造的特徴種と関連づけられた1つまたは複数のパラメーターを評価することによって、多糖混合物、例えば、HLGAGの異種混交的な集団を評価する方法を提供する。このようなパラメーターには、本明細書で開示した構造的特徴の存在、サイズ分布または質が含まれうる。構造的特徴は以下のうち1つまたは複数でありうる。




【0133】
1つの好ましい態様において、構造的特徴は、MALDI-MS、ESI-MS、CE、HPLC、FPLC、蛍光光度法、ELISA、発色アッセイ、例えば逆相カラムクロマトグラフィー(例えば、HPLC)、比色アッセイ、NMRおよび他の分光光学的手法からなる群より選択される1つまたは複数の方法によって決定される。
【0134】
多糖組成物は1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子によって消化され、不完全または完全に消化される。組成物をさらに、1つまたは複数のHLGAG分解酵素によって消化することもできる。他のHLGAG分解酵素の例には次が含まれる:ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼ、Lイズロニダーゼ、ならびにそれらの機能的活性のある変異体および断片。さまざまなHLGAG分解酵素ならびにそれらの変異体および断片が公知であり、例えば、米国特許第5,569,600号;第5,389,539号;第5,830,726号;第5,714376号;第5,919,693号;第5,681,733号および第6,869,789号;ならびに米国特許公報第20030099628号;第20030303301号;および第20010565375号に記載されており、それらの内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0135】
本明細書に記載した方法は次をさらに含みうる:多糖のバッチ(例えば、多糖の異種混交的な集団)を1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子と接触させることによって第1の構造的特徴を提供または決定する段階;多糖の異なるバッチ(例えば、多糖の異種混交的な集団)の第2の構造的特徴を、そのバッチを1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子と接触させることによって提供または決定する段階;ならびに、バッチの1つまたは複数が特定の特性と関連のある構造決定を有するか否かを決定するために、第1および第2の構造的決定物を比較する段階。本方法はさらに、多糖のバッチをその構造的決定物に応じて選択または廃棄する段階を含みうる。
【0136】
他の態様においては、多糖のバッチ(例えば、多糖の異種混交的な集団)を、多糖を1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子と接触させることによって得られた多糖の1つまたは複数の構造的特徴を参照標準と比較することによって分析することができる。参照標準は、例えば、1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子によって消化された、多糖の混在集団、例えば、エノキサパリン(Lovenox(商標));ダルテパリン(Fragmin(商標));セルトパリン(Sandobarin(商標));アルデパリン(Normiflo(商標));ナドロパリン(Fraxiparin(商標));パルナパリン(Fluxum(商標));レビパリン(Clivarin(商標));チンザパリン(Innohep(商標)またはLogiparin(商標))またはフォンダパリヌクス(Arixtra(商標))といった市販の多糖の集団に存在する構造的特徴の、あらかじめ選択された範囲またはレベルおよび/または有無でありうる。
【0137】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子をまた、1つまたは複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子と接触させた組成物を分析すること、および混合物中の成分のうち1つまたは複数の生物学的同等性および/または生物学的利用能を決定することにより、参照標準を薬物に関して決定するために用いることもできる。本明細書で用いる場合、「生物学的同等性」とは「薬学的同等物または薬学的代替物中の有効成分または活性部分が、同様の条件下で同じモル用量で投与された時に薬物作用部位で利用可能になる速度および程度に有意差がないこと」を意味する。
【0138】
分画HLGAG調製物の生産
本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子は、例えば、所望の特性、例えば所望の活性を有する、および/または望ましくない特性、例えば望ましくない副作用が低下している、多糖(例えば、分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸)を生産するために用いることができる。本明細書で用いる場合、「所望の活性」とは、所定の適応症、例えば、本明細書で定義したような陽性患者反応をはじめとするものに対して有益な活性のことを指す。「望ましくない活性」には、所定の適応症、例えば、本明細書で定義した陰性患者反応をはじめとするものに対して有益でない活性のことを指す。所定の活性が1つの適応症に対しては所望の活性であって別のものに対しては望ましくない活性であることもあり、例えば抗IIa活性は、ある種の適応症に対しては望ましくないが、他のもの、特に急性または外傷性の状況では望ましい。したがって、本発明は、高い活性、例えば、高い抗Xa活性および/または抗IIa活性、低下した活性、例えば、低下した抗Xa活性および/または抗IIa活性、特性が十分に調べられている、中和しうる、低下したHITを含むより軽度の副作用、魅力的な薬物動態、および/または低下したPF4結合性といった特徴を非限定的に含む、理想的な製品プロフィールを備えたヘパリン、LMWHまたは合成ヘパリンを設計するための方法に関する。
【0139】
分画ヘパリンは、例えば、グリコサミノグリカン(GAG)、HLGAG、UFH、FH、LMWH、またはエノキサパリン(Lovenox(商標));ダルテパリン(Fragmin(商標));セルトパリン(Sandobarin(商標));アルデパリン(Normiflo(商標));ナドロパリン(Fraxiparin(商標));パルナパリン(Fluxum(商標));レビパリン(Clivarin(商標));チンザパリン(Innohep(商標)またはLogiparin(商標))もしくはフォンダパリヌクス(Arixtra(商標))を非限定的に含む合成ヘパリンといった多糖の混在集団を含む組成物を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼと接触させることによって設計することができる。
【0140】
いくつかの態様においては、ヘパリンをB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI分子および/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子と接触させることによって、低下した抗Xa活性および/または抗体IIa活性を有する分画ヘパリン調製物が調製される。いくつかの態様においては、抗Xa活性が低下し、一方、抗IIa活性は維持される。他の態様においては、抗Xa活性および抗IIa活性が低下する。低下した抗Xa活性および/または抗IIa活性を有するヘパリンは、例えば、薬剤、例えば診断用、予防用または治療用の薬剤を送達するための担体として用いることができる。ヘパリン分子は薬剤と結合させることができる。活性薬剤には、治療用または予防用ポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質などが含まれうる。1つの態様において、活性薬剤は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害薬、アルカリホスファターゼ、アンジオゲニン、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性タンパク質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、リゾチーム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アンチトロンビンIII、プロラクチンおよびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。治療用または予防用ポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性誘導体または断片でありうる。活性薬剤はまた、非限定的ではあるが、次のうち1つまたは複数でもありうる:副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、第二世代EPO、新規赤血球産生刺激タンパク質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリン類似体、カルシトニン、テラクチン(Theraccine)、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来増殖因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼ-β、ドルナーゼα、アガルシダーゼ-α、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、第IX因子(ヒト)、第IX因子(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアミシン結合物、エドレコロマブ(Edrecolomab)、リツキシマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン(alfacon)-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、pegインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、サルグラモスチム、レノグラスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、ナトログラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポタンパク質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリン。1つの態様において、活性薬剤は活性ポリペプチド、例えば治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドの分子量は150kDa未満、より好ましくは100kDa未満、より好ましくは50kDa未満である。1つの態様において、活性薬剤は活性ポリペプチド、例えば治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドの分子量は約500Da〜5kDa、5〜10kDa、10〜30kDa、18〜35kDa、30〜50kDa、50〜100kDa、100〜150kDaである。1つの態様において、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。もう1つの態様において、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらにもう1つの態様において、活性ポリペプチドはインターフェロンである。他の態様において、ヘパリン分子は不活性薬剤と結合される。不活性薬剤には、画像化のための生体プローブまたは造影剤が含まれる。もう1つの態様において、活性薬剤は低分子薬、例えば、治療、診断または予防の用途のために現在利用可能な低分子薬、または開発中の薬物でありうる。いくつかの態様において、活性薬剤は製剤中で1つまたは複数のヘパリン分子と結合させることができる。一例として、低分子薬、およびタンパク質を基にした薬物を、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸その他などの公知の化学物質を介した送達のために、ヘパリン分子と結合させることができる。
【0141】
本発明はまた、ヘパリンをB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼII分子および/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIV分子と接触させることによって調製される、上昇した抗Xa活性および/または抗IIa活性を有する分画ヘパリン調製物にも関する。このような調製物は、例えば、凝固と関連のある疾患、例えば、血栓症、心血管疾患、血管病状または心房細動;片頭痛、アテローム性動脈硬化;自己免疫疾患またはアトピー性疾患などの炎症性疾患;肥満または脂肪過多、アレルギー;呼吸器疾患、喘息、気腫、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症または肺再灌流傷害;癌または転移性疾患、例えば、脂肪腫;糖尿病;血管原性障害、例えば眼の新生血管性障害、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、アルツハイマー病、外科処置、臓器移植、整形外科手術、骨折、例えば股関節部骨折に対する治療、股関節置換術、膝関節置換術、経皮冠動脈インターベンション(PCI)、ステント留置、血管形成術、冠動脈バイパス手術(CABG)を受けようとする、受けているまたは受けた対象などを処置または予防するために用いることができる。
【0142】
薬学的組成物
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、ならびにB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子による切断によって調製されたヘパリン分子は、薬学的組成物に組み入れることができる。そのような組成物は典型的には、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容される担体」という用語には、医薬品投与との適合性がある溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。補足的な活性化合物を組成物に組み入れることもできる。
【0143】
薬学的組成物は、その意図する投与経路と適合しうるように製剤化される。投与の経路の例には、非経口的、例えば静脈内、皮内、皮下など、経口的(例えば、吸入)、経皮的(局所的)、経粘膜的および直腸内投与が含まれる。非経口的、皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は次の成分を含みうる:注射用の水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸鉛、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整しうる。非経口的製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製もしくはプラスチック製の多回投与用バイアル中に封入することができる。
【0144】
または、薬学的組成物を、試料(例えば、バイオリアクター内の血液、例えば血液のヘパリン除去を行うために)を、試料を対象に導入する前に処理するために用いることもできる。
【0145】
注射用に適した薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の要時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために適した担体には、生理食塩水、滅菌精製水、Cremophor EL(商標)(BASF;Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に行える程度に流動的であるべきである。それは製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適した混合物などを含む、溶媒または分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、および表面活性剤の使用によって維持しうる。微生物作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌薬および抗真菌薬によって行いうる。多くの場合には、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムといった等張剤を組成物に含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含めることによって達成しうる。
【0146】
滅菌注射液は、適切な溶媒中に、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、その後に滅菌濾過を行うことによって調製しうる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したもののうち必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合には、好ましい調製の方法は、有効成分に加えて、あらかじめ滅菌濾過した溶液からの任意の所望の付加的成分が粉末として得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0147】
経口用組成物は一般に、不活性希釈液または可食担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入すること、または圧縮して錠剤にすることができる。経口治療的投与の目的には、活性化合物を賦形剤とともに組み入れ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で用いることができる。液体担体中の化合物が経口的に適用されて咀嚼および喀出または嚥下を受ける口内洗浄剤として用いるために、液体担体を用いて経口用組成物を調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤および/または補助材料を組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、トローチ剤などは次の成分、または同様の性状をもつ化合物のうち任意のものを含みうる:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド二酸化ケイ素などのグライダント;ショ糖またはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香料などの着香料。
【0148】
吸入による投与のためには、化合物は、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0149】
全身投与が経粘膜的または経皮的な手段によるものであってもよい。経粘膜的または経皮的投与のためには、透過させようとする障壁に適した浸透剤が製剤中に用いられる。このような浸透剤は当技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜的投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜的投与は鼻スプレーまたは坐薬の使用によって行いうる。経皮的投与のためには、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られた軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム剤中に配合される。
【0150】
また、化合物を、直腸内送達のための坐薬(例えば、カカオ脂およびその他のグリセリド類などの従来の坐薬用基材)または停留浣腸の形態として調製することもできる。
【0151】
1つの態様において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含む制御放出型製剤などの、化合物を身体からの迅速排出から保護すると思われる担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、重合無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性の重合体を用いることもできる。このような製剤の調製のための方法は当業者には明らかであると考えられる。材料をAlza社(Alza Corporation)およびNova Pharmaceuticals社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から購入することもできる。リポソーム懸濁液(感染細胞を標的とするリポソームをウイルス抗原に対するモノクローン抗体とともに含む)を薬学的に許容される担体として用いることも可能である。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されたような、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0152】
投与の簡便性および用量の均一性のためには、経口用または非経口用の組成物を単位用量剤形として製剤化することが特に有利である。本明細書で用いる単位用量剤形とは、治療しようとする対象に対する単位用量として適した物理的に離散的な単位のことを指す;各単位は必要な薬学的担体とともに望ましい治療効果を生じるように計算された規定量の活性化合物を含む。
【0153】
このような化合物の毒性および治療的有効性は、培養された細胞または実験動物のいずれかを用いる標準的な製薬学的手順によってLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を求めることによって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量の比が治療係数であり、それはLD50/ED50の比として表現することができる。高い治療係数を示す化合物が好ましい。有害な副作用を示す化合物を用いてもよいが、このような化合物を罹患組織に指向させる送達系を設計するためには、非罹患細胞に対する障害をできるだけ少なくし、それによって副作用を軽減するように注意する必要がある。
【0154】
細胞培養アッセイおよび動物試験によって得られたデータを、ヒトで使用するための用量の範囲を設定するために用いることができる。このような化合物の用量は、ほとんどまたは全く毒性がなく、ED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。採用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で用量を変更することができる。本発明の方法に用いる任意の化合物に関して、治療的有効量を細胞培養アッセイによってまず推定することができる。細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半値抑制が得られる被験化合物の濃度)を含む流血中血漿中濃度が達成される用量を動物モデルで設定することができる。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0155】
当業者は、疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の全般的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を非限定的に含むある種の要因が、対象を有効に治療するために必要な投与量および時期に影響を及ぼす可能性があることを理解すると考えられる。
【0156】
薬学的組成物は、投与に関する指示とともに容器、包みまたはディスペンサー中に含めることができる。
【0157】
治療的用途
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子は、さもなければ望ましくない増殖および/または分化を呈する、または他の様式でそれを伴う、細胞の血管新生を予防または抑制することによって、1つまたは複数の細胞増殖性および/または分化性障害を抑えるための、新規な診断用および治療用の薬剤として作用しうる。細胞性および/または分化性障害の例には、次が含まれる:糖尿病;関節炎、例えば、関節リウマチ;眼球障害、例えば、眼球新生血管、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、網膜線維増殖症、硝子体炎(uevitis)、虹彩新生血管を伴う眼障害;および癌、例えば、癌腫、肉腫、転移性障害または造血新生物障害、例えば、白血病。
【0158】
本明細書で用いる場合、「癌」、「過剰増殖性」および「新生物性」という用語は、自律的増殖の能力を有する細胞のことを指す。このような細胞の例には、急速に増える細胞増殖を特徴とする異常な状況または状態を有する細胞が含まれる。過剰増殖性および新生物性の疾病状態は、病的である、すなわち疾病状態を特徴づけるもしくはそれを構成するものと分類されることもあれば、または非病的である、すなわち正常からは逸脱しているが疾病状態と関連づけられないものとして分類されることもある。この用語は、組織学的な型または浸潤段階にかかわらず、あらゆる種類の癌性増殖または発癌過程、転移性組織または悪性転換した細胞、組織または臓器を含むことを意味している。「病的な過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖を特徴とする疾病状態でみられる。非病的な過剰増殖性細胞の例には、創傷治癒に伴う細胞の増殖が含まれる。
【0159】
「癌」または「新生物」という用語には、肺、乳房、甲状腺、リンパ、胃腸および泌尿生殖路を冒す、さまざまな臓器系の悪性腫瘍、ならびに、ほとんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/または精巣腫瘍、非小細胞肺癌、小腸癌および食道癌などの悪性腫瘍を含む腺癌が含まれる。
【0160】
「癌腫」という用語は当技術分野で認知されており、呼吸器系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌および黒色腫を含む、上皮または内分泌組織の悪性腫瘍のことを指す。例示的な癌腫には、子宮頸部、肺、前立腺、乳房、頭頸部、結腸および卵巣の組織から形成されるものが含まれる。この用語にはまた、例えば、癌性組織および肉腫性組織から構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。「腺癌」とは、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が認識しうる腺構造を形成するもののことを指す。
【0161】
「肉腫」という用語は当技術分野で認知されており、間葉由来の悪性腫瘍のことを指す。
【0162】
増殖性障害のそのほかの例には、造血性新生物障害が含まれる。本明細書で用いる場合、「造血性新生物障害」という用語には、造血系起源の過形成性/新生物性細胞がかかわる疾患が含まれる。造血性新生物障害は、骨髄性、リンパ性もしくは赤血球性の系譜またはそれらの前駆細胞から生じうる。好ましくは、疾患は低分化急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。そのほかの例示的な骨髄性障害には、急性前骨髄球性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性脊髄性白血病(CML)が非限定的に含まれる(Vaickus, L. (1991) Grit Rev, in Oncol./Hemotol. 11:267-97に総説がなされている);リンパ性悪性腫瘍には、B細胞性ALLおよびT細胞性ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛細胞白血病(HLL)、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)が非限定的に含まれる。他の悪性リンパ腫には、非ホジキンリンパ腫およびその異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード-シュテルンベルク病が非限定的に含まれる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を設定するために用いることができる。このような化合物の用量は、ほとんどまたは全く毒性がなく、ED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、採用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で変更することができる。本発明の方法に用いる任意の化合物に関して、治療的有効量を細胞培養アッセイによってまず推定することができる。細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半値抑制が得られる被験化合物の濃度)を含む流血中血漿中濃度が達成される用量を動物モデルで設定することができる。このような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0163】
もう1つの態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI分子および/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、ヘパリン関連障害を抑えるための予防用または治療用の薬剤として作用しうる。このような障害の例には、ヘパリンにより誘発される抗凝固および/または血管新生が非限定的に含まれる。したがって、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI分子および/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、例えば、手術中または手術後の、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の1つまたは複数の抗凝固および/または抗血栓特性を低下または消失させる(例えば、中和する)ために用いることができる。他の態様において、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子、例えば、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI分子および/またはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIII分子は、例えば、バイオリアクター、例えば、心肺および/または腎透析に用いられるバイオリアクター内の、血液のヘパリン除去を行うために用いることができる。
【0164】
また、本明細書に記載したB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ分子は、分画GAG調製物、例えば、ヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸の調製物を設計するために用いることもできる。このような分画HLGAG調製物は、多くの治療上の有用性を有する可能性がある。例えば、HLGAG組成物は、アルツハイマー病などの痴呆、凝固、血管新生、血栓障害、心血管疾患、血管病状、アテローム性動脈硬化、呼吸器障害、循環性ショックおよび関連障害を予防および治療するため、ならびに癌細胞の増殖および転移を抑制するために有用であることが知られている。これらの障害のそれぞれは当技術分野で周知であり、例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine(McGraw Hill, Inc., New York)に記載されており、これは参照により組み入れられる。さまざまな治療方法におけるHLGAG組成物の使用が記載されており、Huang, J. and Shimamura, A., Coagulation Disorders, 12,1251-1281 (1998)にまとめられている。
【0165】
分画HLGAG調製物は、例えば、活性FGF、例えば、aFGFおよび/またはbFGFの存在の増加が望まれる障害を処置または予防するために用いることができる。
【0166】
HLGAG調製物は、凝固と関連のある障害を処置または予防するために有用である。凝固経路のアンバランスが過剰な凝固の方に向かう場合、その結果は血栓傾向の発生であり、これはしばしば心発作、脳卒中、深部静脈血栓症、不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)、および心筋梗塞として発現する。本明細書で用いる「凝固と関連のある疾患」とは、例えば、心筋梗塞もくくは脳梗塞もしくは末梢血管疾患などでみられるように組織に対する血液の供給を担う血管の遮断の結果として、または心房細動もしくは深部静脈血栓症などの病状に伴う塞栓形成の結果として起こりうる、組織に対する血液供給の途絶または減少に起因しうる局所炎症を特徴とする病状のことを指す。凝固障害には、心血管疾患、および脳虚血などの血管病状が非限定的に含まれる。心筋梗塞およびACSなどの障害を、例えば、肺送達によって多糖を用いて治療することは、この送達システムの迅速な吸収および作用のため、特に有用である。
【0167】
分画HLGAG調製物は、心血管疾患を治療するために有用である。心血管疾患には、急性心筋梗塞、ACS、例えば不安定狭心症、および心房細動が非限定的に含まれる。心筋梗塞は、冠血流が突然減少し、その後、アテローム性動脈硬化によって以前に狭小化した冠動脈の血栓性閉塞が生じた場合に時折起こる疾病である。この種の傷害は、喫煙、高血圧および脂質蓄積などの要因によって発生するか促される。急性狭心症は一過性心筋虚血に起因する。この障害は通常、胸骨の下方に、重苦しさ、圧迫、締めつけ、息苦しさまたは窒息の感覚を伴う。発作は通常、労作または情動によって引き起こされるが、安静時にも起こりうる。
【0168】
心房細動は、一般に情動ストレスの結果として、または手術、運動または急性アルコール中毒の後に生じる、頻度の高い不整脈の形態である。持続型の心房細動は一般に心血管疾患の患者で起こる。心房細動は、体表面ECG上で個別のP波がみられない乱れた心房活性を特徴とする。この乱れた活性は、心房における不適切な血流、および血栓形成につながりうる。これらの血栓は塞栓症を引き起こし、脳虚血および他の障害をもたらす恐れがある。
【0169】
手術、麻酔および長期にわたる臥床または他の不動状態を経験する人は、しばしば、下肢および/または骨盤における静脈血の凝固である、深部静脈血栓症またはDVTとして知られる病状を起こしやすくなる。この凝固は、静脈血を送り出すために必要な下肢における筋活動の欠如(うっ血)、局所的な血管傷害または過凝固状態のために起こる。この病状は、血餅が肺に移動して、「肺塞栓」を引き起こしたり、または別の様式で心血管循環を妨げたりすると命にかかわる恐れがある。1つの治療方法は抗凝固薬の投与を伴う。
【0170】
分画HLGAG調製物は、単独で、または心血管疾患のリスクを低下させるため、もしくは心血管疾患を治療するための他の治療薬と併用して、心血管障害の治療のために用いることができる。他の治療薬には、抗炎症薬、抗血栓薬、抗血小板薬、線維素溶解薬、脂質低下薬、直接トロンビン阻害薬、抗Xa阻害薬、抗IIa阻害薬、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害薬、およびヒルジン、ヒルゲン、アンジオマックス(Angiomax)、アガトロバン、PPACK、トロンビアプタマーなどの直接トロンビン阻害薬が非限定的に含まれる。
【0171】
HLGAG調製物はまた、血管病状を治療するためにも有用である。血管病状には、深部静脈血栓症、末梢血管疾患、脳卒中を含む脳虚血、および肺塞栓などの障害が非限定的に含まれる。脳虚血発作または脳虚血は、脳に対する血液供給が阻止される虚血性病状の形態である。脳に対するこの血液供給の途絶または減少は、血管それ自体の内因性の遮断または閉塞、遠隔性に生じた閉塞の源、不十分な脳血流をもたらす灌流圧の低下もしくは血液粘性の増大、またはクモ膜下腔もしくは大脳内組織における破裂血管を含む、さまざまな原因に起因しうる。
【0172】
HLGAG調製物は、脳虚血を治療するために有用である。脳虚血は一過性または永続的な障害をもたらす可能性があり、脳虚血を経験した患者における神経障害の重度は虚血事象の強度および持続時間に依存する。一過性虚血発作は、脳に対する血流が短時間のみ途絶して、一時的な神経障害を引き起こすものであるが、これは多くの場合、24時間以内に消失する。TIAの症状には、顔面または四肢の知覚麻痺または脱力感、はっきりと話す能力および/または他人の話を理解する能力の低下、視力低下または視野の不明瞭さ、およびめまいの感覚が含まれる。脳卒中とも呼ばれる永続的な脳虚血発作は、血栓または塞栓のいずれかに起因する、脳に対する血流のより長期にわたる途絶または減少によって引き起こされる。脳卒中はニューロンの損失を引き起こし、典型的には、改善はするものの完全には解消しない神経障害をもたらす。
【0173】
血栓塞栓性脳卒中は、血栓または塞栓による頭蓋外または頭蓋内の血管の閉塞に起因する。脳卒中が血栓または塞栓のいずれによって引き起こされているかを区別することはしばしば困難であるため、これらの機序のいずれかによって引き起こされる脳卒中を範囲に含めるために「血栓塞栓症」という用語が用いられる。
【0174】
吸収後のUFHまたはLMWHなどのHLGAGの急速な吸収性は、静脈血栓塞栓症の治療において極めて有意義である。UFHの静脈内投与は、経口ワルファリンとの併用で静脈血栓塞栓症の治療に広く用いられている。しかし、有効性の改善およびリスクの低下のため、LMWHは静脈血栓塞栓症の治療において静脈内UFHに代わる選択肢として使用されることが増えている。ヘパリン療法の有効性は、治療の最初の24時間以内に(例えば、抗第Xa因子または抗第IIa因子活性の値の)決定的な治療用レベルが達成されることに依存することが確立されている。血栓塞栓症の初期にヘパリンの迅速な治療レベルを達成するためのヘパリン粒子の肺内送達を、長期的な抗血栓/抗凝固効果のために、経口投与などの、LMWHまたはヘパリンの他の投与経路と組み合わせることも可能と思われる。
【0175】
また、HLGAG調製物を、急性血栓塞栓性脳卒中を治療するために用いることもできる。急性脳卒中は、脳に対する血液供給の途絶または減少である虚血事象に起因する神経学的傷害を伴う医学的症候群である。
【0176】
HLGAG調製物の、単独での、または脳卒中の治療のための別の治療薬との併用による有効量とは、脳卒中に起因するインビボ脳傷害を軽減するために有効な量のことである。脳傷害の軽減とは、本明細書に記載した治療がなされなければ、血栓塞栓性脳卒中を経験した対象に起こったであろう、脳に対する傷害の何らかの予防のことである。脳傷害の軽減を評価するためには、例えば、治療前の患者パラメーター、未治療の脳卒中患者、または血栓溶解薬のみによって治療された脳卒中患者と比較した、梗塞サイズの縮小、局所脳血流の改善および頭蓋内圧の低下を含む、いくつかの生理的パラメーターを用いることができる。
【0177】
薬学的HLGAG調製物は、単独で、または凝固と関連のある疾患を治療するための治療薬と併用して用いることができる。凝固と関連のある疾患の治療において有用な治療薬の例には、抗凝固薬、抗血小板薬および血栓溶解薬が含まれる。
【0178】
抗凝固薬は血液成分の凝固を防止し、それ故に血塊形成を防止する。抗凝固薬には、ワルファリン、クマジン、ジクマロール、フェンプロクモン、アセノクマロール、ビスクマ酢酸エチルおよびインダンジオン誘導体が非限定的に含まれる。「直接トロンビン阻害薬」には、ヒルジン、ヒルゲン、アンジオマックス(Angiomax)、アガトロバン、PPACK、トロンビンアプタマーが含まれる。抗血小板薬は血小板凝集を抑制し、一過性虚血発作または脳卒中を経験した患者における血栓塞栓性脳卒中を予防するために往々にして用いられる。血栓溶解薬は、血栓塞栓性脳卒中を引き起こす血塊を溶解させる。血栓溶解薬は急性静脈血栓塞栓症および肺塞栓を治療するために用いられており、当技術分野で周知である(例えば、Hennekens et al, J Am Coll Cardiol;v. 25 (7 supp), p. 18S-22S (1995);Holmes, et al, J Am Coll Cardiol;v.25 (7 suppl), p. 1OS-17S(1995)を参照)。
【0179】
本明細書で用いる肺塞栓とは、重症の呼吸機能不全を引き起こす、肺動脈の内腔への血餅の捕捉と関連のある障害のことを指す。肺塞栓はしばしば下肢の静脈に起源があり、深部下肢静脈内で血塊が形成され、続いて静脈循環を介して肺へと移行する。このため、肺塞栓はしばしば下肢静脈における深部静脈血栓症の合併症として起こる。肺塞栓の症状には、息切れの急性発症、胸痛(呼吸をすると悪化する)、ならびに頻脈および呼吸数増加が含まれる。個体によっては喀血を経験することもある。
【0180】
HLGAG調製物および方法はまた、アテローム性動脈硬化を処置または予防するためにも有用である。ヘパリンは、種々の実験モデルにおいてアテローム性動脈硬化の予防に有益であることが示されている。血管系の内皮に対するより直接的な到達のため、吸入されたヘパリンはアテローム性動脈硬化の予防に有用でありうる。アテローム性動脈硬化は動脈硬化の一形態であり、ほとんどの冠動脈疾患、大動脈瘤および下肢の動脈疾患の原因であるほか、脳血管疾患の一因でもあると考えられている。
【0181】
その急速な吸収および可変性の消失速度のために、HLGAGは、添加剤を伴ってまたは伴わずに、外科処置および透析処置に対して静脈内ヘパリンに代わる選択肢として用いることができる。例えば、HLGAG粒子を、手術の前に自発吸入によって吸入させること、または手術の前もしくは最中に気管チューブを介して受動吸入させることができる。手術患者、特に40歳以上の人は、深部静脈血栓症を発症するリスクが高い。このため、外科処置に伴う血栓症の発症を予防するためのHLGAG粒子の使用が考えられる。経皮的インターベンション(例えば、経皮冠動脈インターベンション(PCI)など)、PCTA、ステントおよび他の同様のアプローチ、股関節または膝関節置換術、心-肺バイパス手術、冠動脈血行再建術ならびに人工関節置換術などの一般的な外科処置に加えて、本方法はまた、組織もしくは臓器の移植処置、または股関節部骨折などの骨折に対する治療を受ける対象においても有用である。
【0182】
加えて、ヘパリンの肺吸入は、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー、気腫、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、肺再灌流傷害、ならびに肺、腎臓、心臓および胃の虚血-再灌流傷害、ならびに肺腫瘍の増殖および転移といった呼吸器疾患の治療にも有意義である。
【0183】
嚢胞性線維症は、呼吸器系を冒す慢性進行性疾患である。嚢胞性線維症の1つの重篤な帰結は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の肺感染であり、これは単独で嚢胞性線維症における病的状態および死亡のほぼ90%の原因となっている。嚢胞性線維症を治療するための治療薬には、病的感染症を治療するための抗菌薬が含まれる。
【0184】
ヘパリンはまた、エラスターゼならびに腫瘍の増殖および転移に対する十分に確立された阻害薬でもある。エアロゾル化されたヘパリン粒子は、急性肺気腫モデルにおいてエラスターゼにより誘発される肺傷害を抑制することができる。喘息は、炎症、気道の狭小化、および吸入物質に対する気道の反応性の増大を特徴とする、呼吸器系の障害である。喘息は、必ずというわけではないが高い頻度で、アトピー性またはアレルギー性の症状を伴う。喘息にはまた、運動誘発性喘息、気管支刺激物質に対する気管支収縮応答、遅延型過敏症、自己免疫性脳脊髄炎および関連障害も含まれうる。アレルギーは一般に、アレルゲンに対するIgE抗体の生成によって引き起こされる。気腫は、肺胞中隔の破壊を伴う、終末気管支の遠位の含気腔の拡張である。気腫はエラスターゼ誘発性肺傷害から生じる。ヘパリンはこのエラスターゼ誘発性傷害を抑制することができる。成人呼吸促迫症候群は、重篤な動脈低酸素症を伴う、多様な形態の、多くの急性びまん性(defuse)浸潤性肺病変を包含する用語である。ARDSの最も頻度の高い原因の1つは敗血症である。炎症性疾患には、自己免疫疾患およびアトピー障害が非限定的に含まれる。HLGAGによって治療しうる他の種類の炎症性疾患には、難治性潰瘍性大腸炎、クローン病、多発性硬化症、自己免疫疾患、非特異的潰瘍性大腸炎および間質性膀胱炎がある。
【0185】
1つの態様において、HLGAG調製物は血管新生を抑制するために用いられる。血管新生を抑制するためのHLGAG調製物の有効量を、その治療を必要とする対象に投与する。本明細書で用いる血管新生とは、新たな血管の不適切な形成のことである。「血管新生」は往々にして、内皮細胞が、内皮に対して分裂促進的であって新たな血管の生成をもたらす内皮細胞の伸長および増殖を引き起こす一群の増殖因子を分泌した時に、腫瘍内に生じる。血管新生性マイトジェンのいくつかは、内皮細胞増殖因子と関連のあるヘパリン結合ペプチドである。血管新生の抑制は、動物モデルにおいて腫瘍縮退を引き起こすことができ、これは治療用抗癌薬としての使用法を示唆する。血管新生を抑制するための有効量とは、腫瘍内に成長する血管の数を減少させるのに十分なHLGAG調製物の量である。この量は腫瘍および血管新生の動物モデルで評価することができ、その多くは当技術分野で公知である。血管新生性障害には、眼の新生血管性障害、骨粗鬆症、乾癬、関節炎、癌および心血管障害が非限定的に含まれる。
【0186】
HLGAG調製物はまた、眼疾患と関連のある新生血管を抑制するためにも有用である。もう1つの態様において、HLGAG調製物は乾癬を治療するために投与される。乾癬は、慢性炎症によって引き起こされる、頻度の高い皮膚疾患である。
【0187】
HLGAGを含む組成物は、癌細胞の増殖および転移を抑制する可能性もある。したがって、本方法は、対象における腫瘍細胞の増殖または転移を治療および/または予防するために有用である。癌は悪性癌であっても非悪性癌であってもよい。癌または腫瘍には、胆道癌;脳悪性腫瘍;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;白血病、リンパ腫;肝癌;肺癌(例えば、小細胞性および非小細胞性);黒色腫;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎癌、ならびに他の癌腫および肉腫が非限定的に含まれる。
【0188】
癌治療を必要とする対象は、癌を発症する確率が高い対象であってもよい。これらの対象には、例えば、その存在が癌を発症する尤度の高さと相関関係を有することが実証されている遺伝異常を有する対象、および癌を引き起こす作用物質、例えばタバコ、アスベストまたは他の化学毒に曝露された対象、または癌に対する治療を過去に受けていて見かけ上は寛解状態にある対象が含まれる。
【0189】
その他の態様
本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、それらは限定的であるとみなされるべきでない。本明細書の全体を通じて引用されるすべての参考文献、特許および公開特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0190】
実施例
実施例1:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIのクローニングおよび組換え発現
およそ1251ヌクレオチド長であるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI配列(図1;SEQ ID NO:1)は、メチオニンにより開始される、終止コドンを含めて約1179ヌクレオチドと予想されるコード配列を含む(図1A中のSEQ ID NO:1)。このコード配列は392アミノ酸のタンパク質(図1B中のSEQ ID NO:2)をコードする。
【0191】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのアミノ酸配列は、F.ヘパリナム-ヘパリナーゼI配列とある程度の構造上の相同性を有する。この2種のリアーゼのアミノ酸配列の比較は、図2に示されている。
【0192】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ遺伝子を、American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号29148Dから入手したB.シータイオタオーミクロン由来のゲノムDNAを用いるPCRによってクローニングした。M17変異体のためのDNAオリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA technologies, Inc.(IDT)により、以下のヌクレオチド配列に従って合成された。
(1)

(2)

プライマーは、それぞれ5'および3'末端にNdeIおよびXhoIエンドヌクレアーゼ制限部位を導入するように設計した。その結果得られた遺伝子配列を、配列

が、17位のメチオニン(M17)で始まるB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼのアミノ末端と融合されたものを含む人工的に作製された融合タンパク質としての、大腸菌株BL21(DE3)におけるその後の組換え発現のためのNdeI-XhoI断片として、pET28a細菌発現プラスミド(EMD Biosciences)中にクローニングした。
【0193】
SEQ ID NO:2に列記されたタンパク質配列のグルタミン26位(Q26)で始まる改変アミノ末端を有するB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ変異体を、融合タンパク質としての組換え発現のためにpET28a中にクローニングした。Q26変異体をコードするアミノ酸配列および核酸配列はそれぞれSEQ ID NO:4および3に提示されている。Q26変異体のためのDNAオリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA technologies, Inc.(IDT)により、以下のヌクレオチド配列に従って合成された。
(1)

および

【0194】
完全長、M17およびQ26型のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ融合タンパク質を、大腸菌において組換え発現させたところ、ヘパリンおよびヘパラン硫酸を切断する能力を十分に有する、可溶性で活性の高い酵素が生じた(以下の実施例2を参照)。[M17コード配列またはQ26コード配列のいずれかを含む、配列が検証されたプラスミドpET28をBL21(DE3)中に形質転換導入した。2リットルの培養物を、40μg/mLカナマイシンを加えたLB培地中にて、室温(ほぼ22〜25℃)で増殖させた。タンパク質発現は、A600が1.0の時点で500μM IPTGを添加して誘導した。誘導された培養物を室温で15〜18時間増殖させた。
【0195】
組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの精製.細菌細胞を6000×gでの15分間の遠心によって収集し、30mLの結合緩衝液(50mM Na2HPO4、pH 7.9、0.5M NaClおよび5mMイミダゾール)中に再懸濁させた。溶解は、0.1mg/mLリゾチームの添加(室温で20分間)によって開始させ、その後に、氷水を入れた水槽内でMisonex XL超音波処理器を出力40〜50%で用いる間欠的な超音波処理を行った。粗溶解物を低速遠心(20,000×g;4℃;30分間)によって分画し、上清を0.45μフィルターに通して濾過した。6X-His組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼを、200mM NiSO4をあらかじめ投入し、その後に結合緩衝液で平衡化した5mLのHi-Trapカラム(GE Healthcare)上でのNi+2キレートクロマトグラフィーによって精製した。カラムを流速およそ3mL/分で動作させ、50mMイミダゾールによる中間洗浄段階も含めた。リアーゼ酵素は、高イミダゾール溶出緩衝液(50mM Na2HPO4、pH 7.9、0.5M NaClおよび250mMイミダゾール)を用いて、カラムから5mlずつの画分に溶出させた。これらの酵素をまた、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどの精製タグを用いて精製することもできる。
【0196】
その結果得られたピークを、20mM Na2HPO4、pH 6.8、150mM NaClで平衡化したSephadex G-25カラム上での緩衝液交換にかけ、その後に、ソース(source)15S樹脂(GE healthcare)を用い、0.05M〜1M NaClの直線的な塩勾配を適用する陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。
【0197】
タンパク質濃度はBio-Radタンパク質アッセイによって決定し、UV分光法によって確かめた。タンパク質の純度は、SDS-PAGEに続いてクーマシーブリリアントブルー染色および/またはSypro Ruby Red(Invitrogen)によって評価した。
【0198】
実施例2:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIならびにF.ヘパリナムヘパリナーゼIおよびIIの異なるヘパラン硫酸基質特異性
組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIならびにF.ヘパリナムヘパリナーゼIおよびIIの切断パターンおよびそれによる基質特異性を、ヘパラン硫酸を基質として用いて比較した。ブタ腸粘膜由来のヘパラン硫酸の200μgの「HI」画分(Celsus Labs)を、完全な消化を確保するのに好都合な条件下で、組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIによって消化した。HSを約50μgのB-シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH 8.0と37℃で18時間接触させた。このリアーゼ消化産物を、強陰イオンクロマトグラフィーを用いるHPLC(SAX-HPLC)によって分析した。SAX-HPLC条件は以下の通りとした:50μgの試料を1mg/mlで4×250mm CarboPac PA1分析スケールカラム(Dionex Corporation)に注入した。流速は1ml/分とした。移動相は0.2M〜2MのNaCl水溶液、pH 3.5の120分間にわたる勾配とした。カラムは0.2M NaClにより10分間かけてあらじめ平衡化した。その結果を、ヘパラン硫酸を消化するためにF.ヘパリナムヘパリナーゼIを用いた点を除いて同じである実験の結果と比較した。手短に述べると、HSを約50μgのF.ヘパリナムヘパリナーゼI、25mM酢酸ナトリウム、1mM酢酸カルシウム、5%グリシン、pH 7.0と30℃で18時間接触させた。ヘパリナーゼIに関する消化プロフィールはB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIに関するプロフィールと極めて類似しているが、ただし、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIプロフィールにはヘパリナーゼIプロフィールに存在しない新規ピークが存在し、このことはこれらのリアーゼが同一でない基質特異性を有することを示している。さらに、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIを用いた痕跡プロフィールを、ヘパラン硫酸を消化するためにF.ヘパリナムヘパリナーゼIIを用いた点を除いて同じである実験の結果と比較した。手短に述べると、HIを約50μgのF.ヘパリナムヘパリナーゼII、25mM酢酸ナトリウム、1mM酢酸カルシウム、pH 7.0と37℃で18時間接触させた。この場合には、ヘパリナーゼIIを用いた消化プロフィールは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼおよびF.ヘパリナムヘパリナーゼIの消化プロフィールとは非常に異なる。これらのデータは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼの基質特異性は、F.ヘパリナムヘパリナーゼIおよびIIの特異性と異なるが、「ヘパラン硫酸様」(例えば、F.ヘパリナムヘパリナーゼIIの方にはあまり似ていない)であるよりも、より「ヘパリン様」(例えば、F.ヘパリナムヘパリナーゼIにより類似する)であることを示している。
【0199】
実施例3:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIによるARIXTRA(登録商標)の脱重合および中和
組換えB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIは、ATIII五糖であるARIXTRA(登録商標)を五硫酸化三糖および不飽和二硫酸化二糖へと切断し、それによって中和することができる。ARIXTRA(登録商標)は、凝固カスケードの一要素である第Xa因子の選択的阻害薬として作用する抗血栓薬である。ARIXTRA(登録商標)の脱重合は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)によって明確に示されている(図7)。パネルAは、リアーゼの非存在下におけるARIXTRA(登録商標)のスキャンを示している。ARIXTRA(登録商標)の構造も示されている。パネルBは、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼによるARIXTRA(登録商標)の切断後のスキャンを示している。手短に述べると、20μlの反応容積中にある1mg/mlのARIXTRA(登録商標)を5μgのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼI、25mM酢酸ナトリウム、1mM酢酸カルシウム、pH 7.0により37℃で2時間処理した。パネルAに存在する質量4723.7Da(正味質量=1506Da)がパネルBでは消失し、同時に質量4133.2Da(正味質量=915.6Da)が出現していることに注目されたい。後者の質量は五硫酸化三糖切断産物を表している。Arixtraを2つのより小さい断片に切断する際に、この薬物の抗Xa活性はB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼによって効果的に中和される。
【0200】
実施例4:BシータイオタオーミクロンGAGIIのクローニングおよび組換え発現
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIの全コード配列(本明細書では「完全長遺伝子」と記載する)ならびに本明細書に記載した2つの変異体を、American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号29148Dから入手したバクテロイデス-シータイオタオーミクロン由来のゲノムDNAを用いるPCRによってクローニングした。DNAオリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA technologies(IDT), Inc.により、以下のヌクレオチド配列に従って合成された。
(1)完全長遺伝子に関して

(順方向プライマー)(SEQ ID NO:14)、

(逆方向プライマー)(SEQ ID NO:15);
(2)変異体No.1(推定上のシグナル配列が除去されるアミノ末端短縮物)をコードする遺伝子:

(順方向プライマー)(SEQ ID NO;16)、

(注:完全長遺伝子に関して上に挙げたものと同じ逆方向プライマー)(SEQ ID NO:15)。
プライマーは、それぞれ5'および3'末端にNde1およびXho1エンドヌクレアーゼ制限部位を導入するように設計した。記載した遺伝子配列の、完全長遺伝子およびおよび変異体1(Q23変異体、SEQ ID NO:8)に関してそれぞれ配列

を含む、人工的に作製された融合タンパク質としての(B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼ配列は太字で表されている)、大腸菌株BL21(DE3)におけるその後の組換え発現のためのNde1-Xho1断片としての、pET28b細菌発現プラスミド(EMD Biosciences)中へのクローニング。全配列については図4を参照されたい。
【0201】
もう1つの変異体であるK169変異体(SEQ ID NO:10)は、タンパク質内部の内部領域の18個の連続したアミノ酸の人工的欠失および以下の線状配列のプロセシングに相当する。

遺伝子配列(図5A)および対応するタンパク質配列(図5B)におけるこの領域の欠失は、グレーの網掛けによって示されている。DNAレベルでのこの領域の欠失は、Quick-changeキット(Stratagene)を製造元の指示に従って用いる、PCRを基にした突然変異誘発法によって実現された。遺伝子(DNA)レベルでこの欠失を作るために用いた突然変異誘発プライマーは、それぞれセンス鎖およびアンチセンス鎖に対応する以下の配列のものであった。

同様に組換え発現のためのpETを基にした発現に基づく、この記載した遺伝子変異体の大腸菌における組換え発現も実現された。精製は、概ねB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIに関して記載した通りに行った。
【0202】
この変異体の予備的な生化学的特性決定により、記載したアミノ酸の欠失は、酵素の可溶性発現にとっても、ヘパリンおよびヘパラン硫酸の両方を切断するその能力にとっても有害でないことが示されている。しかし、完全長タンパク質と対比して、この酵素変異体の触媒効率および/または基質特異性に差がある可能性が示唆されている。
【0203】
実施例5:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIのクローニング組換え発現および精製
GAGリアーゼIII遺伝子は、American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号29148Dから入手したバクテロイデス-シータイオタオーミクロン由来のゲノムDNAを用いるPCRによってクローニングした。少なくとも2622塩基対である完全長遺伝子のヌクレオチド配列(SEQ ID NO:28)が図8に示されている。線状配列に存在する少なくとも873アミノ酸のポリペプチドをコードするアミノ酸配列(SEQ ID NO:29)が図9に示されている。
【0204】
DNAオリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA technologies(IDT), Inc.により、以下のヌクレオチド配列に従って合成された。
(1)

(2)

プライマーは、それぞれ5'および3'末端にNde1およびBamH1/Xho1エンドヌクレアーゼ制限部位を導入するように設計した。記載した遺伝子配列(SEQ ID NO:28)を、6×ヒスチジン融合タンパク質として人工的に作製された、大腸菌株BL21(DE3)におけるその後の組換え発現のためのNde1-Xho1断片として、pET28a細菌発現プラスミド(EMD Biosciences)中にクローニングした。
【0205】
同様に、列記されたタンパク質配列(SEQ ID NO:29)中のグルタミン23位(Q23)で始まる改変アミノ末端を有する、GAGリアーゼIIIの遺伝子変異体(SEQ ID NO:33および34)を、組換え発現のためにpET28a中にクローニングした。これを行うために、以下の順方向(5')プライマーを用いた。

【0206】
クローニングされた酵素の一次アミノ酸配列を、バクテロイデス-シータイオタオーミクロンおよびフラボバクテリウム-ヘパリナムの両方に由来する4種の機能的に関連したリアーゼと直接比較した。多配列アラインメント(CLUSTALWプログラムを用いて作成)が図10に表されている。このアラインメントは、本明細書に開示したGAGリアーゼIIIが、それと比較した他の酵素と異なることを示している。
【0207】
この酵素を、図9に示されているように、Q23で始まる溶解性が高い活性アミノ末端変異体(SEQ ID NO:33および34)として、大腸菌において組換え発現させた。Q23変異体は溶解性の高い酵素として大腸菌において容易に発現された。アミノ末端6×ヒスチジン融合タンパク質としてのこの酵素の発現は、本質的には単一の精製段階での精製も容易にした。そのほかの精製には、0.05M〜1MのNaClの直線勾配を利用するSource 15Sカラム上での陽イオン交換クロマトグラフィーが含まれた。これらの酵素を入手するために用いうる他の精製方法には、GST、MBP、Trx、DsbC、NusAまたはビオチンなどのアフィニティ精製タグが含まれる。
【0208】
実施例6:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIの機能および酵素活性の分析
組換えGAGリアーゼIIIがヘパリン様グリコサミノグリカンを切断する能力を評価した。フラボバクテリウム-ヘパリナム由来のヘパリナーゼIIおよびヘパリナーゼIIIを比較のために含めた。以下の4種の「ヘパリン様」基質:ブタ腸ヘパリン、2種類のヘパラン硫酸(HIおよびHOと命名、それぞれ硫酸化の程度が異なる)およびエノキサパリン(低分子量ヘパリン製剤)の切断を分析した。生化学的酵素活性は、232nmでのUV吸光度によって測定した切断(産物形成)の程度、ならびに特異性の両方に関して評価した。後者のパラメーターは、キャピラリー電気泳動(CE)による二糖、四糖より高度のオリゴ糖産物の分画によって評価した。
【0209】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIの総酵素活性を図11にまとめている。これらのデータは、GAGリアーゼIIIが、高度に硫酸化された「ヘパリン様」GAGおよびそれらのより低分子量の誘導体に対する選好性を呈することを示している。同時に、この酵素は、硫酸化の程度がより軽度のGAG、すなわち、より「ヘパラン硫酸様」であるGAGを切断することができた。同時に、図11に表された基質プロフィールは、このリアーゼの特異性がF.ヘパリナム由来のヘパリナーゼIIおよびヘパリナーゼIIIのいずれとも異なることを示している。
【0210】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIとF.ヘパリナム由来のヘパリナーゼIIとの間の違いについてさらに分析し、図12に示した。以下の3種の基質:ヘパリンおよび2種類のヘパラン硫酸(HIおよびHOと命名、それぞれ硫酸化の程度が異なる)の切断を分析した。切断産物をキャピラリー電気泳動によって分画し、232nmでの吸光度(Y軸)によってモニタリングした。これらのデータは、2つの酵素は機能的に関連しているが、それらの基質特異性は同一でないことを示している。
【0211】
実施例7:B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVのクローニング組換え発現および精製
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIV配列(図13、SEQ ID NO:36)は、およそ2109ヌクレオチド長であり、少なくとも702アミノ酸のポリペプチド(図14、SEQ ID NO:37)をコードする。
【0212】
GAGリアーゼIV遺伝子を、American Type Culture Collection(ATCC)、カタログ番号29148)から入手したB.シータイオタオーミクロン由来のゲノムDNAを用いるPCRによってクローニングした。DNAオリゴヌクレオチドプライマーは、Integrated DNA technologies(IDT), Inc.により、以下のヌクレオチド配列に従って合成された。

【0213】
プライマーは、太字で示されるNde1およびXho1エンドヌクレアーゼ制限部位を導入するように設計した。増幅された3種の遺伝子を、組換え発現されたタンパク質を精製する手段としてアミノ末端に6×ヒスチジンタグが存在する人工的に作製された融合物としての、大腸菌における異種発現のために、T7を基にした発現ベクターpET28中にクローニングした。GST、MBP、Trx、DsbC、NusAおよびビオチン化の使用を含む他の方法を、この酵素を精製するために用いることができる。この遺伝子の変異体、すなわち細菌分泌シグナルと推定されるものに相当する最初の19アミノ酸が除去されたものも構築した。この変異体(D20として知られる)はアスパラギン酸20(asp 20)で始まる。
【0214】
クローニングされた酵素の一次アミノ酸配列を、B.シータイオタオーミクロンおよびフラボバクテリウム-ヘパリナムの両方に由来する4種の機能的に関連したリアーゼと直接比較した。多配列アラインメントは図15に表されている。B.シータイオタオーミクロンリアーゼIVに対応するアミノ酸配列は、F.ヘパリナム由来のヘパリンリアーゼIIIに対しておよそ30%の同一性を呈する。したがって、このアラインメントから、本開示に記載したGAGリアーゼが、それと比較した他の酵素とは異なることが明らかである。
【0215】
このリアーゼと推定されるものの機能についても検討した。具体的には、組換えB.シータイオタオーミクロンリアーゼIV酵素が、特に硫酸化密度に関して組成の異なるヘパリン様グリコサミノグリカンを切断する能力を評価した。この実験では、以下の3種のGAG基質をスクリーニングした:ブタ腸粘膜由来のヘパリン(PM)、ブタ腸粘膜から同様に単離したヘパラン硫酸の「HI」画分(HI-ITS)、および硫酸化密度が最も低いヘパラン硫酸のいわゆる「HO」画分。生化学的酵素活性は、232nmでのUV吸光度によって測定した切断の程度(産物形成)のほか、リアルタイムのUVを用いる動態アッセイで測定した切断速度の両方について評価した。データは図18にまとめられており、報告された最も高い活性に対して標準化された相対値を表している。これらのデータに基づくと、この組換え発現されたGAGリアーゼは、硫酸化密度が中等度であるGAGに対する選好性を呈する。この選好性は、ヘパリン様というよりはヘパラン硫酸様としてより広範囲に記載されうる。
【0216】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVはまた、F.ヘパリナム由来のヘパリナーゼIIIまたはさらにはバクテロイデス由来の他の「ヘパリナーゼIII様」酵素などの他のヘパラン硫酸リアーゼと比較した場合、独特な基質特異性を有する可能性がある。具体的には、この酵素はヘパリン中にもヘパラン硫酸のほとんどの画分中にも一般的には認められない二糖、例えば、I2sHNAcを切断しうる。また、この酵素は、少なくとも一部には、AT-III結合部位を保持するような様式でヘパリンを切断する可能性もある。
【0217】
等価物
当業者は、定型的な範囲にある実験により、本明細書に記載した特定の態様の等価物を認識する、または確認しうると考えられる。このような等価物は以下の請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸を特異的に切断する方法であって、以下の段階を含む方法:
ヘパリンまたはヘパラン硫酸を切断するために、ヘパリンまたはヘパラン硫酸を、1つのB.シータイオタオーミクロン(B. thetaiotaomicron)GAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させる段階。
【請求項2】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片、およびB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片のうち2つまたはそれ以上と接触する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片が、
a)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:2、4または23の少なくとも300個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが15個を上回らないアミノ酸配列、
を含む、請求項2または6記載の方法。
【請求項8】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項7記載の方法:
a)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:2、4または23の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:1、3もしくは22を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項9】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIがヘパリンを硫酸化ウロン酸の1つまたは複数のグリコシド結合の箇所で切断する、請求項2または6記載の方法。
【請求項10】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片が、
a)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:6、8、10の少なくとも600個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:6、8、10のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが30個を上回らないアミノ酸配列、
を含む、請求項3または6記載の方法。
【請求項11】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項10記載の方法:
a)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列の少なくとも1700ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:6、8または10の少なくとも600個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:5、7もしくは9を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項12】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIがヘパリンを非硫酸化ウロン酸の1つまたは複数のグリコシド結合の箇所で切断する、請求項3または6記載の方法。
【請求項13】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片が、
a)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:29または34の少なくとも600個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが30個を上回らないアミノ酸配列、
を含む、請求項4または6記載の方法。
【請求項14】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項13記載の方法:
a)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列の少なくとも1700ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:28または33のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:28または33のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:28または33の少なくとも600個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:28または33のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:28もしくは33を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項15】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片が、
a)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:37または39の少なくとも600個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが30個を上回らないアミノ酸配列、
を含む、請求項5または6記載の方法。
【請求項16】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項15記載の方法:
a)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列の少なくとも1700ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:36または38のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:36または38のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:36または38の少なくとも600個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:36または38のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:36もしくは38を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項17】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸が二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖および/または十糖へと切断される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
切断されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の配列を決定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド以外の1つまたは複数のHLGAG分解酵素と接触させる段階をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
HLGAG分解酵素が、フラボバクテリウム-ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)ヘパリナーゼI、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIII、フラボバクテリウム-ヘパリナムヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、スルファターゼ(例えば、2-Oスルファターゼ、6-Oスルファターゼ、N-スルファミド)、Δ4,5グルクロニダーゼ、ならびにそれらの機能的断片および変異体より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
HLGAGの異種混交的な集団を分析する方法であって、以下の段階を含む方法:
HLGAGの集団を、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させる段階、および
集団内のHLGAGの構造的特徴(structural signature)を決定し、それによってHLGAGの集団を分析する段階。
【請求項22】
集団の構造的特徴の有無または構造的特徴の量をあらかじめ選択した値と比較する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
あらかじめ選択した値が、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片によるHLGAGの切断に伴う、1つまたは複数の二糖、三糖、四糖、五糖、六糖、八糖および/または十糖の有無または量である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
あらかじめ選択した値が、市販のヘパリンまたはヘパラン硫酸に存在する構造的特徴の欠如、存在、または量でありうる、請求項22記載の方法。
【請求項25】
市販のヘパリンが以下より選択される、請求項24記載の方法:
エノキサパリン(Lovenox(商標));ダルテパリン(Fragmin(商標));セルトパリン(Sandobarin(商標));アルデパリン(Normiflo(商標));ナドロパリン(Fraxiparin(商標));パルナパリン(Fluxum(商標));レビパリン(Clivarin(商標));チンザパリン(Innohep(商標)またはLogiparin(商標))およびフォンダパリヌクス(Arixtra(商標))。
【請求項26】
HLGAGの集団がHLGAG製品のバッチであり、決定の結果としてバッチを選択または廃棄する段階をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
構造的特徴が、質量分析、NMR分光法、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、逆相カラムクロマトグラフィーおよびイオン対HPLCのうちの1つまたは複数によって決定される、請求項22記載の方法。
【請求項28】
分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物を調製する方法であって、
分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物を入手するために、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物を、1つのB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、複数のB.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチド、またはそれらの機能的断片と接触させる段階
を含む方法。
【請求項29】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、低下した抗Xa活性を有する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、低下した抗IIa活性を有する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、低下した抗Xa活性および抗IIa活性を有する、請求項29記載の方法。
【請求項33】
分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸以外の薬剤とともに製剤化される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
薬剤が診断用、予防用または治療用の薬剤である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドである、請求項28記載の方法。
【請求項36】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、上昇した抗Xa活性を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、上昇した抗IIa活性を有する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドと接触させる前の調製物と比較して、上昇した抗Xa活性および抗IIa活性を有する、請求項35記載の方法。
【請求項39】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の調製物が、分画されたヘパリンまたはヘパラン硫酸以外の薬剤とともに製剤化される、請求項35記載の方法。
【請求項40】
薬剤が診断用、予防用または治療用の薬剤である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
薬剤が、抗凝固薬、抗血小板薬、抗血管新生薬および血栓溶解薬からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項42】
凝固と関連のある障害を処置または予防する方法であって、請求項35〜41のいずれか一項記載の方法によって調製された分画HLGAG調製物を投与する段階を含む方法。
【請求項43】
障害が心血管疾患または血管病状である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
障害が急性冠症候群である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
障害が心筋梗塞または不安定狭心症である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
血管病状が、深部静脈血栓症(DVT)、末梢血管疾患、脳卒中を含む脳虚血、および肺塞栓である、請求項43記載の方法。
【請求項47】
障害が血管新生関連障害である、請求項39記載の方法。
【請求項48】
障害が望ましくない細胞増殖または分化を特徴とする、請求項39記載の方法。
【請求項49】
障害が癌である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
障害がFGF活性の低下と関連する、請求項39記載の方法。
【請求項51】
インビトロまたはエクスビボでのHLGAGの抗Xa活性を低下または消失させるための方法であって、以下の段階を含む方法:
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の抗Xa活性を中和するために、抗Xa活性を有するヘパリンまたはヘパラン硫酸を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片と、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片によるHLGAGの切断のために適した条件下で接触させる段階。
【請求項52】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項51記載の方法。
【請求項54】
HLGAGの抗Xa活性がエクスビボで低下または消失する、請求項51記載の方法。
【請求項55】
HLGAGが、バイオリアクター、例えば心-肺および/または腎透析に用いられるバイオリアクター内で接触する、請求項54記載の方法。
【請求項56】
インビトロまたはエクスビボでHLGAGの抗IIIa活性を低下または消失させるための方法であって、以下の段階を含む方法:
ヘパリンまたはヘパラン硫酸の抗IIIa活性を中和するために、抗IIa活性を有するヘパリンまたはヘパラン硫酸を、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片と、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片によるHLGAGの切断のために適した条件下で接触させる段階。
【請求項57】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
HLGAGの抗IIa活性がエクスビボで低下または消失する、請求項56記載の方法。
【請求項60】
HLGAGがバイオリアクター内で接触する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
対象におけるHLGAGの抗Xa活性を低下または消失させる方法であって、以下の段階を含む方法:
対象に対して、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片を、HLGAGの切断を可能にし、それによって抗Xa活性を低下または消失させるのに十分な条件下で投与する段階。
【請求項62】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項61記載の方法。
【請求項64】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片が、ヘパリンの抗Xa活性を低下または消失させる、請求項61記載の方法。
【請求項65】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片が、手術中または手術後に投与される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
対象におけるHLGAGの抗IIa活性を低下または消失させる方法であって、以下の段階を含む方法:
対象に対して、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片を、HLGAGの切断を可能にし、それによって抗IIa活性を低下または消失させるのに十分な条件下で投与する段階。
【請求項67】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片が、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片である、請求項66記載の方法。
【請求項69】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片が、ヘパリンの抗IIa活性を低下または消失させる、請求項66記載の方法。
【請求項70】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその断片が、手術中または手術後に投与される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
血管新生関連障害を処置または予防する方法であって、
障害を処置または予防するために、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片を、望ましくないまたは異常な血管新生を伴う障害を有する、またはそれに対するリスクのある対象に対して投与する段階
を含む方法。
【請求項72】
障害が、糖尿病;関節炎;眼障害;および癌からなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項71記載の方法。
【請求項74】
望ましくない細胞増殖または分化を特徴とする障害を処置または予防する方法であって、以下の段階を含む方法:
障害を処置または予防するために、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドまたはその機能的断片を、望ましくない細胞増殖または分化を伴う障害を有する、またはそれに対するリスクのある対象に対して投与する段階。
【請求項75】
障害が癌である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼポリペプチドが、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項74記載の方法。
【請求項77】
以下を含む、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片:
a)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:2、4または23の少なくとも300個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが15個を上回らないアミノ酸配列。
【請求項78】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項77記載のGAGリアーゼIポリペプチド:
a)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:2、4または23の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:1、3もしくは22を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項79】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIポリペプチドまたはその機能的断片が以下を含む、請求項77記載のGAGリアーゼIポリペプチド:
a)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であって、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基1〜17の少なくとも1個、最大で17個のアミノ酸を含まないアミノ酸配列;および
b)SEQ ID NO:23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であって、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基1〜26の少なくとも1個、最大で26個のアミノ酸を含まないアミノ酸配列。
【請求項80】
以下を含む、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片:
a)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:6、8、10の少なくとも600個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:6、8、10のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが30個を上回らないアミノ酸配列。
【請求項81】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項80記載のGAGリアーゼIIポリペプチド:
a)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列の少なくとも1700ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:6、8または10の少なくとも600個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:5、7もしくは9を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項82】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIポリペプチドまたはその機能的断片が以下を含む、請求項81記載のGAGリアーゼIIポリペプチド:
a)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であって、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基1〜23の少なくとも1個、最大で23個のアミノ酸を含まないアミノ酸配列;および
b)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であって、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基169〜186の少なくとも1個、最大で18個のアミノ酸を含まないアミノ酸配列。
【請求項83】
以下からなる群より選択される、単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:2、4または23の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:1、3もしくは22を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項84】
以下からなる群より選択される、請求項83記載の単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:1、3または22のヌクレオチド配列を含む核酸;および
b)SEQ ID NO:2、4または23のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項85】
以下からなる群より選択される、単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列の少なくとも1600ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:6、8または10の少なくとも600個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:5、7もしくは9を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項86】
以下からなる群より選択される、請求項85記載の単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:5、7または9のヌクレオチド配列を含む核酸;および
b)SEQ ID NO:6、8または10のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項87】
以下を含む、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片:
a)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:29または34の少なくとも300個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが15個を上回らないアミノ酸配列。
【請求項88】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項87記載のGAGリアーゼIIIポリペプチド:
a)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:29または34の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:28もしくは33を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項89】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片が、SEQ ID NO:34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であって、SEQ ID NO:29のアミノ酸残基1〜23の少なくとも1個、最大で23個のアミノ酸を含まないアミノ酸配列を含む、請求項87記載のGAGリアーゼIIIポリペプチド。
【請求項90】
以下からなる群より選択される、単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:28または33のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:29または34の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:29または34のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:28もしくは33を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項91】
以下からなる群より選択される、請求項90記載の単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:28または34のヌクレオチド配列を含む核酸;および
b)SEQ ID NO:29または33のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項92】
以下を含む、B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIVポリペプチドまたはその機能的断片:
a)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列;
b)SEQ ID NO:37または39の少なくとも300個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列;
c)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列;および
d)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列とのアミノ酸の違いが少なくとも1個だが15個を上回らないアミノ酸配列。
【請求項93】
B.シータイオタオーミクロンGAGリアーゼIIIポリペプチドまたはその機能的断片が、以下からなる群より選択されるヌクレオチド配列によってコードされる、請求項92記載のGAGリアーゼIVポリペプチド:
a)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:37または39の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:36もしくは38を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項94】
以下からなる群より選択される、単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む核酸分子;
b)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列の少なくとも800ヌクレオチドの断片を含む核酸分子;
c)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子;
d)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片がSEQ ID NO:37または39の少なくとも300個の連続したアミノ酸を含む、核酸分子;および
e)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然のアレル変異体をコードする核酸分子であって、SEQ ID NO:36もしくは38を含む核酸分子またはその相補物とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
【請求項95】
以下からなる群より選択される、請求項94記載の単離された核酸分子:
a)SEQ ID NO:36または38のヌクレオチド配列を含む核酸;および
b)SEQ ID NO:37または39のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項96】
ベクター核酸配列をさらに含む、請求項83〜86、90〜91および94〜95のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項97】
請求項83〜86、90〜91および94〜95のいずれか一項記載の核酸分子を含む宿主細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−213397(P2012−213397A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125675(P2012−125675)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2008−539088(P2008−539088)の分割
【原出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【出願人】(508134441)モメンタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】