説明

ヘマグルチニンを含むキメラインフルエンザウイルス様粒子

植物内または植物の一部内においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を合成する方法を提供する。本方法は植物または植物の一部におけるキメラインフルエンザHAの発現を伴う。本発明は、キメラインフルエンザHAタンパク質と植物脂質とを含むVLPにも向けられる。本発明は、キメラインフルエンザHAをコードする核酸およびベクターにも向けられる。本VLPは、インフルエンザワクチンを製剤するために使用するか、既存のワクチンを強化するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本願は、2009年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/220,161号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明はウイルス様粒子に関する。より具体的には、本発明は、キメラインフルエンザヘマグルチニンを含むウイルス様粒子、およびキメラインフルエンザウイルス様粒子を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
インフルエンザは、呼吸器ウイルスによるヒトの死の主因であり、「インフルエンザ流行期(flu season)」中は、世界中で人口の10〜20%が感染して、毎年25〜50万人の死亡をもたらしうると推定されている。
【0004】
現在、ヒトのインフルエンザと戦う方法は、毎年のワクチン接種によるものである。ワクチンは通常、来るべきインフルエンザ流行期に優勢株になると予想される数株の組合せであるが、毎年生産されるワクチンのドーズ数は、世界人口にワクチン接種するには足りない。例えば、現在の生産量では、カナダと米国ではその人口の約三分の一を免疫するのに足りるワクチンドーズが得られ、ヨーロッパでは、ワクチン接種を受けることができるのは、約17%に過ぎない。世界的なインフルエンザパンデミックに直面すれば、この生産量では不十分であるだろう。たとえ、必要な年間生産量をある年にある程度満たすことができたとしても、優勢株は毎年変化するので、低需要時の備蓄は実用的でない。有効なインフルエンザワクチンの経済的な大規模生産は、政府にとっても民間産業にとっても重大な関心事である。
【0005】
インフルエンザヘマグルチニン(HA)表面糖タンパク質は、受容体結合性かつ膜融合性のタンパク質である。これは同一サブユニットの三量体であり、各サブユニットは、ジスルフィドで連結された2つのポリペプチドHA1およびHA2を含有する。HA1およびHA2は前駆体HA0のタンパク質分解的切断によって誘導され、この前駆体は、N末端にシグナルペプチド配列を有し、C末端には膜アンカー配列を有する。HA1とHA2が形成される切断では、C末端に膜アンカー配列を有する小さい方のポリペプチドHA2のN末端が生成する。膜融合活性には切断が必要であるが、免疫原性には切断は必要でない。HA2 N末端配列は、類似する疎水性配列における切断が他のウイルス融合タンパク質の活性にも必要であることと、この配列の20残基合成ペプチド類似体がインビトロで膜を融合することから、「融合ペプチド」と呼ばれる。
【0006】
一般に、球状「頭部」の表面は、部位A、B、C、DおよびEと呼ばれる詳細に特徴づけられた可変抗原性領域を有する数個のフレキシブルなループを含んでいる(Wileyら, 1987. Annu. Rev Biochem 56:365-394に概説されている)。免疫研究のためのいくつかの部位(例えばBおよびE)における短いペプチド配列の挿入または置き換えが記載されている(Garcia-Sastreら 1995. Biologicals 23:171-178)。サイズが53アミノ酸〜246アミノ酸の範囲にある上皮増殖因子(EGF)、単鎖抗体(scFV)およびIgGのFcドメインがH7のN端に挿入され、キメラがうまく発現している(Hatziioannouら, 1999. Human Gene Therapy 10:1533-1544)。さらに最近になって、Bacillus anthracis防御抗原の90アミノ酸および140アミノ酸ドメインが、H3のアミノ末端に融合されている(Liら, 2005. J. Virol 79:10003-1002)。Copeland(Copelandら, 2005. J. Virol 79:6459-6471)は、H3ストーク(stalk)上のgp120 Env HIV表面糖タンパク質の発現を記載しており、ここでは、HAの球状頭部全体がgp120ドメインで置き換えられた。
【0007】
いくつかの組換え産物が組換えインフルエンザワクチン候補として開発されている。これらのアプローチでは、インフルエンザA型HAおよびNAタンパク質の発現、生産および精製、例えばバキュロウイルス感染昆虫細胞(Crawfordら, 1999 Vaccine 17:2265-74;Johansson, 1999 Vaccine 17:2073-80)、ウイルスベクター、およびDNAワクチンコンストラクト(Olsenら, 1997 Vaccine 15:1149-56)を使ったこれらのタンパク質の発現などに的が絞られた。
【0008】
ワクチン用の非感染性インフルエンザウイルス株の作出は、意図せぬ感染を回避するための一方法である。あるいは、培養ウイルスの代用物として、ウイルス様粒子(VLP)も研究されてきた。VLPはウイルスキャプシドの構造を模倣するが、ゲノムを欠くので、複製したり、二次感染の手段を提供したりすることはできない。現在のインフルエンザVLP生産技術は複数のウイルスタンパク質の共発現に依拠しており、この依存が、これらの技術の短所になっている。というのも、パンデミックや年ごとの流行が起こった場合、ワクチン接種には、応答時間が極めて重要だからである。ワクチンの開発を加速するには、より簡単なVLP生産系、例えば、非構造ウイルスタンパク質の発現が必要なく、1個だけまたはほんの数個のウイルスタンパク質の発現に依拠するものが望ましい。
【0009】
エンベロープウイルスは、感染細胞から「出芽」する時に、その脂質エンベロープを獲得し、形質膜から膜を獲得するか、細胞内オルガネラの膜から膜を獲得することができる。例えば、哺乳類細胞系またはバキュロウイルス細胞系では、インフルエンザが形質膜から出芽する(Quanら 2007 J. Virol 81:3514-3524)。植物に感染することが知られているエンベロープウイルスはわずかしかない(例えばトスポウイルスおよびラブドウイルスのメンバー)。既知の植物エンベロープウイルスのうち、それらは、形質膜からではなく宿主細胞の細胞内膜から出芽することを特徴とする。少数の組換えVLPが植物宿主において生産されたが、形質膜に由来するものはなかったことから、インフルエンザVLPを含む形質膜由来のVLPを植物において生産することができるかどうかという疑問が生じる。
【0010】
VLPの形成は、どの系においても、タンパク質の構造にかなりの要求を突きつける。球状構造の選択された表面ループに対応する短い配列ストレッチを改変しても、ポリペプチドそのものの発現にはあまり影響がないかもしれないが、VLPの形成に対するそのような改変の効果を示す構造研究は不足している。HAのさまざまな領域および構造(例えば膜アンカー配列、球状頭部を膜から引き離す三量体のストークまたはステム(stem)領域)の協同はウイルスと共に進化しており、HA三量体の完全性およびVLP形成を喪失させずに同様の改変を加えることは容易ではないかもしれない。
【0011】
インフルエンザHA VLPの生産は、以前に、本発明者らがWO 2009/009876に記載している。
【発明の概要】
【0012】
[発明の概要]
本発明はウイルス様粒子に関する。より具体的には、本発明は、キメラインフルエンザヘマグルチニンを含むウイルス様粒子、およびキメラインフルエンザヘマグルチニンウイルス様粒子を生産する方法に関する。
【0013】
本発明の目的は、改良されたキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を提供することである。
【0014】
本発明は、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(stem domain cluster;SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(head domain cluster;HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(transmembrane domain cluster;TDC)とを含むキメラインフルエンザHAを含むポリペプチドであって、少なくとも一つのサブドメインが第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインが1つ以上の第2インフルエンザHAのものであるポリペプチドを提供する。第1および第2インフルエンザHAは、H1、H3、H5およびBを含む群から独立して選択することができる。さらにまた、ポリペプチドは、シグナルペプチドを含むことができる。
【0015】
本発明は、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(TDC)とを含むキメラインフルエンザHAを含むポリペプチドをコードする核酸であって、少なくとも一つのサブドメインが第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインが1つ以上の第2インフルエンザHAのものである核酸も提供する。核酸は、上記のSDC、HDCおよびTDCに加えて、シグナルペプチドを含むポリペプチドをコードすることもできる。
【0016】
植物においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法であって、
a)シグナルペプチドと、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(TDC)とを含むキメラインフルエンザHAをコードする核酸であって、少なくとも一つのサブドメインが第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインが1つ以上の第2インフルエンザHAのものである核酸を、植物またはその一部に導入すること、および
b)植物またはその一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産すること、
を含む方法も提供する。
【0017】
本発明は、導入ステップ(ステップa)において核酸が植物に一過性に導入される、上記の方法を包含する。あるいは、導入ステップ(ステップa)において、核酸は植物に導入されて、安定に組み込まれる。本方法はさらに、c)宿主を収穫し、VLPを精製するステップを含んでもよい。
【0018】
本発明は、キメラインフルエンザHAまたはキメラインフルエンザHAをコードするヌクレオチド配列を含む植物またはその一部であって、キメラインフルエンザHAが、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(TDC)とを含み、少なくとも一つのサブドメインは第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインは1つ以上の第2インフルエンザHAのものである、植物またはその一部を提供する。
【0019】
植物またはその一部は、植物において活性な調節領域に作動的に連結された1つまたはそれ以上のシャペロンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、さらに含んでもよい。1つまたはそれ以上のシャペロンタンパク質は、Hsp40およびHsp70を含む群から選択することができる。
【0020】
本発明は、キメラインフルエンザHAを含むウイルス様粒子(VLP)であって、キメラインフルエンザHAが、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(TDC)とを含み、少なくとも1つのサブドメインは第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインは1つ以上の第2インフルエンザHAのものである、VLPに関係する。VLPは植物特異的N-グリカンまたは修飾N-グリカンをさらに含んでもよい。
【0021】
上述したVLPの有効量と医薬上許容される担体とを含む組成物も提供する。
【0022】
本発明のもう一つの態様では、対象においてインフルエンザウイルス感染に対する免疫を誘導する方法であって、対象に前記VLPを投与することを含む方法が提供される。VLPは、対象に、経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、または皮下投与することができる。
【0023】
キメラHAタンパク質をコードする配列に作動的に連結することができる調節領域には、植物細胞、昆虫細胞または酵母細胞において作動可能であるものが含まれる。そのような調節領域として、プラストシアニン調節領域、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)、クロロフィルa/b結合タンパク質(CAB)またはST-LS1の調節領域などを挙げることができる。他の調節領域には、5'UTR、3'UTRまたはターミネーター配列が含まれる。プラストシアニン調節領域は、アルファルファプラストシアニン調節領域であることができ、5'UTR、3'UTRまたはターミネーター配列も、アルファルファ配列であることができる。
【0024】
本発明は、第1インフルエンザと第2インフルエンザとから構成されるキメラインフルエンザHAポリペプチドを提供し、第1インフルエンザおよび第2インフルエンザは、B、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16を含む群から独立して選択することができるが、第1インフルエンザと第2インフルエンザは同じインフルエンザ型(type)、亜型(subtype)ではなく、同じ起源ののものでもないものとする。
【0025】
本発明のいくつかの態様によれば、キメラインフルエンザHAポリペプチドはシグナルペプチド配列を含み、そのシグナルペプチド配列は、ネイティブシグナルペプチド配列、アルファルファPDIシグナルペプチド配列、インフルエンザH5シグナルペプチド配列およびインフルエンザH1シグナルペプチド配列を含む群から選択することができる。
【0026】
本発明は、VLPを生産する能力を有する宿主(植物、昆虫、または酵母を含む)内において、キメラインフルエンザヘマグルチニン(HA)を含有するVLPを生産するための方法であって、F'1、F'2およびFサブドメインを含むステムドメインクラスター(SDC)と、RB、E1およびE2サブドメインを含む頭部ドメインクラスター(HDC)と、TmDおよびCtailサブドメインを含む膜貫通ドメインクラスター(TDC)とを含むキメラインフルエンザHAをコードする核酸(ここで、少なくとも1つのサブドメインは第1インフルエンザHAのものであり、かつ他のサブドメインは1つ以上の第2インフルエンザHAのものである)を、宿主中に導入すること、および核酸の発現を許す条件下で宿主をインキュベートし、それによってVLPを生産することを含む方法を提供する。
【0027】
植物におけるVLPの生産には、昆虫細胞培養におけるこれらの粒子の生産と比較して、いくつかの利点がある。植物脂質は、特異的免疫細胞を刺激し、誘導される免疫応答を強化することができる。植物膜は脂質、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)でできており、植物と一部の細菌および原生動物に特有なグリコスフィンゴリピドも含有する。スフィンゴリピドは、PCやPEのようなグリセロールのエステルではなく、18個を越える炭素を含有する脂肪酸鎖へのアミド結合を形成する長鎖アミノアルコールからなる点で、珍しい。PCおよびPEはグリコスフィンゴリピドと共に、哺乳類免疫細胞、例えば樹状細胞やマクロファージのような抗原提示細胞(APC)ならびに胸腺および肝臓におけるBリンパ球およびTリンパ球を含む他の細胞が発現する、CD1分子に結合することができる。さらにまた、植物脂質が存在することの潜在的アジュバント効果に加えて、抗原提示細胞による糖タンパク質抗原の捕捉を容易にするという植物N-グリカンの能力は、植物におけるキメラVLPの生産の利点になりうる。理論に束縛されることは望まないが、植物が作ったキメラVLPは、他の製造系で作られたキメラVLPよりも強い免疫反応を誘導すると予想され、これら植物が作ったキメラVLPによって誘導される免疫反応は、生または弱毒全ウイルスワクチンによって誘導される免疫反応と比較して強いと予想される。
【0028】
全ウイルスでできたワクチンとは対照的に、キメラVLPは非感染性であり、したがって制限的な生物学的封じ込めは、全感染性ウイルスを扱う場合ほど重大な問題でなく、生産には必要でないことから、キメラVLPには利点がある。また、植物が作るキメラVLPには、発現系を温室または圃場で栽培することが可能になり、したがって経済性がかなり高まり、スケールアップにも適しているという、さらなる利点もある。
【0029】
また、植物は、シアル酸残基の合成およびタンパク質への付加に関与する酵素を含まない。VLPは、ノイラミニダーゼ(NA)の非存在下で生産することができ、植物におけるVLP生産を保証するためにNAを共発現させる必要はなく、生産細胞または抽出物をシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)で処理する必要もない。
【0030】
本発明のこの概要は、必ずしも、本発明の特徴の全てを記述するものではない。
【0031】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面に関する以下の説明から、より明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1AはHAサブドメインの概略図である。SP:シグナルペプチド、F'1、F'2、およびF:融合サブドメイン;RB:受容体結合サブドメイン、E1およびE2:エステラーゼサブドメイン、TMD/CT:膜貫通サブドメインおよび細胞質テールサブドメイン。図1Bは、ネイティブ形およびキメラ形のヘマグルチニンH1 A/Brisbane/59/2007(H1/Bri)、ヘマグルチニンH1 A/New Caledonia/20/99(H1/NC)およびヘマグルチニンH5 A/Indonesia/5/05(H5/Indo)を発現させるための、プラストシアニンベースの発現カセット(コンストラクト番号:774、540、660、690、691、696)の略図である。Plasto pro:アルファルファ・プラストシアニンプロモーター、Plasto ter:アルファルファ・プラストシアニンターミネーター、SP:シグナルペプチド、RB:受容体結合サブドメイン、E1-RB-E2:エステラーゼサブドメインおよび受容体結合サブドメイン、TMD/CT:膜貫通サブドメインおよび細胞質テールサブドメイン、PDI:アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ。図1Cは、いくつかのインフルエンザHAについて、構造アラインメントと重ね合わせた、アミノ酸配列アラインメントを表す:B/Florida/4/2006(BFlorida)、配列番号94(GenBankアクセッション番号ACA33493.1);B/Malaysia/2506/2004(B-Malaysia)、配列番号95(GenBankアクセッション番号ABU99194.1);H1/Bri(A-Brisbane)、配列番号96(GenBankアクセッション番号ADE28750.1);H1 A/Solomon Islands/3/2006(A-Sol.Isl)、配列番号97(GenBankアクセッション番号ABU99109.1);H1/NC(A-NewCal)、配列番号98(GenBankアクセッション番号AAP34324.1);H2 A/Singapore/1/1957(A-Singapore)、配列番号99(GenBankアクセッション番号AAA64366.1);H3 A/Brisbane/10/2007(A-Brisbane)、配列番号100(GenBankアクセッション番号ACI26318.1);H3 A/Wisconsin/67/2005(A-WCN)、配列番号101(GenBankアクセッション番号ABO37599.1);H5 A/Anhui/1/2005(A-Anhui)、配列番号102(GenBankアクセッション番号ABD28180.1);H5 A/Vietnam/1194/2004(A-Vietnam)、配列番号103(GenBankアクセッション番号ACR48874.1);H5-Indo、配列番号104(GenBankアクセッション番号ABW06108.1)。F'1、エステラーゼ1、受容体結合、エステラーゼ2、F'2、融合ペプチド、TMD/CTサブドメイン間の境界と、ジスルフィド橋が示されている。
【図2】上側のコンストラクト690、734(配列番号11)、696(配列番号112)、および下側の691(配列番号113)によって発現されるキメラHAの、表示したサブドメインのアミノ酸配列を表す。配列番号111のアミノ酸1〜92はH5/IndoのF'1+E1ドメインであり;アミノ酸93〜263はH1/BrisbaneのRB頭部ドメインであり、アミノ酸264〜552はH5/IndoのE2+F'2ドメインである。配列番号112のアミノ酸1〜92はH5/NCのF'1+E1ドメインであり;アミノ酸93〜301はH5/IndoのRB頭部ドメインであり、アミノ酸302〜586はH1/NCのE2+F'2ドメインである。配列番号113のアミノ酸1〜42はH5/IndoのF'1ドメインであり;アミノ酸43〜273はH1/BrisbaneのE1-RB-E2頭部ドメインであり、アミノ酸274〜552はH5/IndoのF'2ドメインである。
【図3】H1/BriのRBサブドメインと、H5/Indoシグナルペプチドと、H5/Indo F'1、E1、E2、F'2およびFサブドメインを含むステムドメイン複合体(SDC)とを含む、コンストラクト690および734のコード領域のアミノ酸配列(配列番号80)を表す。
【図4】E1、RB、E2を含むH1/Bri頭部ドメイン複合体(HDC)と、H5/Indoシグナルペプチドと、H5/Indo F'1、F'2およびFサブドメインを含むH5/Indoステムドメイン複合体(SDC)とを含む、コンストラクト691のコード領域のアミノ酸配列(配列番号81)を表す。
【図5】H5/IndoのRBサブドメインと、PDIシグナルペプチドと、F'1、E1、E2およびF'2を含むH1/NCステムドメイン複合体とを含む、コンストラクト696のコード領域のアミノ酸配列(配列番号82)を表す。
【図6】植物における、ネイティブ形のH1/Bri、コンストラクト774(H1/Briを含む)、コンストラクト692(H1/Briの頭部ドメイン複合体(HDC)を含む)、およびコンストラクト690(H5/Indoステムドメイン複合体(SDC)と融合されたH1/BriのRBサブドメインを含む)の発現のイムノブロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、20μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗HAモノクローナル抗体(抗H1-Brisbane;FII 10-I50)で可視化した。コンストラクト774は、H1/Briのネイティブシグナルペプチドを伴うH1/Briを発現し、コンストラクト690、691は、H5/Indoのネイティブシグナルペプチドを伴うHAを発現する。
【図7】ネイティブ形のH5/Indo、コンストラクト660(H5/Indoを含む)、またはコンストラクト696(H1/NC SDC、E1およびE2サブドメインと融合されたH1/Indo RBサブドメインを含む)の発現のイムノブロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、20μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗H5 Indonesiaポリクローナル抗体(ITC IT-003-005V)で可視化した。コンストラクト660は、そのネイティブシグナルペプチドを伴うH5/Indoを発現し、コンストラクト696は、PDIシグナルペプチドを伴うキメラHAを発現する。
【図8】ネイティブ形(コンストラクト732)およびキメラ形(コンストラクト733および734)のH1/Briを発現させるための35SCPMV/HTベースの発現カセットの略図である。コンストラクト733はPDIシグナルペプチドと、H1/BriのHDC、SDCおよび膜貫通ドメイン複合体(TDC)とを含み、コンストラクト734は、H5/Indoシグナルペプチド、F'1、E1、E2、F'2、Fと、H1/Bri由来のRBとを含む。35S pro:CaMV 35Sプロモーター、NOS ter:ノパリンシンターゼターミネーター、SP:シグナルペプチド、RB:受容体結合サブドメイン、E1-RB-E2:エステラーゼサブドメインおよび受容体結合サブドメイン、TMD/CT:膜貫通サブドメインおよび細胞質テールサブドメイン、PDI:アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ;CPMV-HT:高翻訳性(hyper translatable)ササゲモザイクウイルス発現系の5'および3'要素。
【図9】ネイティブ形のH1/Bri、コンストラクト732(35SCPMV/HTベースの発現カセットの制御下にあるH1/Briを含む)、コンストラクト733(H1/Briと融合されたPDIシグナルペプチドを含む;35SCPMV/HTベースの発現カセットの制御下にある)、またはコンストラクト734(H5/Indo SDC、E1およびE2サブドメインと融合されたH1/Bri RBサブドメインを含む;35SCPMV/HTベースの発現カセットの制御下にある)の発現のイムノロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、5μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗HAモノクローナル抗体(FII 10-I50)で可視化した。
【図10】H3 A/Brisbane/10/2007 HA(H3/Bri)およびB/Florida/4/2006 HA(B/Flo)ヘマグルチニンを発現させるための35SCPMV/HTベースの発現カセットの略図である。コンストラクト736は、PDIシグナルペプチドに融合されたH3/Briを含む。コンストラクト737は、PDIシグナルペプチドに融合されたH3/Briと、H5/Indo TMD/CTとを含む。コンストラクト739は、PDIシグナルペプチドに融合されたB/Floを含む。コンストラクト745は、PDIシグナルペプチドに融合されたB/Floと、H5/Indo TMD/CTとを含む。35S pro:CaMV 35Sプロモーター、NOS ter:ノパリンシンターゼターミネーター、SP:シグナルペプチド、RB:受容体結合サブドメイン、E1-RB-E2:エステラーゼサブドメインおよび受容体結合サブドメイン、TMD/CT:膜貫通サブドメインおよび細胞質テールサブドメイン、PDI:アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ;CPMV-HT:高翻訳性ササゲモザイクウイルス発現系の5'および3'要素。
【図11】コンストラクト番号745および737の融合境界を表す。HA配列の起源を黒丸付きの線分(bullet-ended arrow)で示す。膜貫通ドメインのアミノ酸はQILSIYSTVAであり、その前方に、外部ドメインの一部であるアミノ酸が存在する。
【図12】PDIシグナルペプチドと、H3 A/Brisbane/10/2007の外部ドメインと、H5 A/Indonesia/5/2005のTMD/CTとを含む、キメラH5/H3ヘマグルチニンのアミノ酸配列(配列番号83;コンストラクト737)を表す。
【図13】コンストラクト番号745中のオープンリーディングフレームによってコードされる、B/Florida/4/2006の外部ドメインと、H5 A/Indonesia/5/2005のTMD/CTとを含む、キメラH5/Bヘマグルチニンのアミノ酸配列(配列番号84)を表す。
【図14】ネイティブ形のB/Flo、コンストラクト739(PDI-B/Floを含む)、またはコンストラクト745(H5/Indo TDCと融合されたB/Flo HDCおよびSDCを含む)の発現のイムノブロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、20μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗HA B/Floridaポリクローナル抗体(NIBSC 07/356)で可視化した。
【図15】ネイティブ形のH3/Bri、コンストラクト736(PDI sp−H3/Briを含む)、またはコンストラクト737(H5/Indo TDCと融合されたH3/Bri HDCおよびSCDを含む)の発現のイムノブロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、20μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗H3 Brisbaneポリクローナル抗体(NIBSC 08/124)で可視化した。
【図16】コンストラクト番号745を浸潤させた植物からの葉タンパク質抽出物のサイズ排除クロマトグラフィーを表す。各フラクションについて溶出フラクションの相対的タンパク質含有量を示す。第7〜15フラクションにおける抗HA B/Florida ポリクローナル抗体(NIBSC 07/356)を使ったヘマグルチニンの免疫検出(ウェスタンブロット)をグラフの下に示す。Blue Dextran 2000の溶出ピークを矢印で示す(第8フラクション)。
【図17】5'側にHindIII部位が隣接し、3'側にSacI部位が隣接している、全H5(A/Indonesia/5/05(H5N1))コード領域(シグナルペプチドおよび停止コドンを含む)を含む、合成フラグメントの核酸配列(配列番号52)を示す。
【図18】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、A/Indonesia/5/05(H5N1)由来のH5のヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むHA発現カセットである、コンストラクト660の核酸配列(配列番号53)を表す。
【図19】TmDおよびCtailを伴わない野生型H1(A/New Caledonia/20/99(H1N1))(GenBankアクセッション番号AY289929)コード配列の核酸配列(配列番号54)を表す。
【図20】TmDおよびCtailを欠くH1(A/New Caledonia/20/99(H1N1)コード配列を含む合成フラグメントの核酸配列(配列番号55)を表す。5'領域において、最後のヌクレオチド群はPDI SPに由来するものであってBglII制限部位を含み、3'側には、二重SacI/StuI部位が、停止コドンのすぐ下流に見いだされる。
【図21】KpnI部位から停止コドン(3'側に二重SacI/StuI部位が隣接している)までの、TmDおよびCtailを含むC-ter H1(A/New Caledonia/20/99(H1N1))コード配列を含む、合成フラグメントの核酸配列(配列番号56)を表す。
【図22】Medicago sativaのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼmRNAのヌクレオチド配列。GenBankアクセッション番号Z11499(配列番号57)。ヌクレオチド32〜103はPDIシグナルペプチドをコードする。
【図23】PromPlasto-PDISP-Plasto 3'UTRプラスミドのヌクレオチド配列を表す。図23Aは、PromPlasto-PDISPのヌクレオチド配列(配列番号58)を表す。図23Bは、Plasto 3'UTR由来のヌクレオチド配列(配列番号85)を表す。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)シグナルペプチドに下線が引かれている。クローニングに使用したBglII制限部位(AGATCT)とSacI制限部位(GAGCTC)はボールド体で示されている。
【図24】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列と、A/New Caledonia/20/99(H1N1)由来のH1のコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号59;コンストラクト540)を表す。A/New Caledonia/20/1999由来のH1のコード配列に下線が引かれている。
【図25】開始ATGの上流にある最初の84ヌクレオチドに相当してDraIII部位で始まるアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が5'側に隣接し、SacI部位が3'側に隣接している、全H1(A/Brisbane/59/07(H1N1))コード領域(シグナルペプチドおよび停止コドンを含む)を含む合成フラグメントの核酸配列(配列番号60)を表す。
【図26】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、A/Brisbane/59/07(H1N1)由来のH1のヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号61;コンストラクト774)を表す。
【図27】PacI(プロモーターの上流)からAscI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの発現カセット番号828の核酸配列(配列番号62)を表す。CPMV HT 3'UTR 配列に下線が引かれ、突然変異させたATGはボールド体で示されている。Apa1制限部位は下線付きイタリック体で示されている。
【図28】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH5/H1発現カセットの核酸配列(配列番号63;コンストラクト690)を表す。キメラHAコード配列に下線が引かれている。
【図29】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH5/H1発現カセットの核酸配列(配列番号64;コンストラクト691)を表す。キメラHAコード配列に下線が引かれている。
【図30】アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH1/H5発現カセットの核酸配列(配列番号65;コンストラクト696)を表す。キメラHAコード配列に下線が引かれている。
【図31】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、A/Brisbane/59/07(H1N1)由来のH1のヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列をを含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号66;コンストラクト732)を表す。H1/Briのコード配列に下線が引かれている。
【図32】中間コンストラクト番号787のコード配列(ATGから停止コドンまで)の核酸配列(配列番号67)を表す。
【図33】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、A/Brisbane/59/07(H1N1)由来のH1のヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むSpPDI H1/Bri発現カセットの核酸配列(配列番号68;コンストラクト番号733)を表す。SpPDI H1/Briのコード配列に下線が引かれている。
【図34】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/H1発現カセットの核酸配列(配列番号69;コンストラクト734)を表す。キメラHAのコード配列に下線が引かれている。
【図35】開始ATGの上流にある最初の84ヌクレオチドに相当してDraIII部位から始まるアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が5'側に隣接し、SacI部位が3'側に隣接している、全H3(A/Brisbane/10/07(H3N2))コード領域(シグナルペプチドおよび停止コドンを含む)を含む合成フラグメントの核酸配列(配列番号70)を表す。
【図36】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、A/Brisbane/10/07(H2N3)由来のH3のヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号71;コンストラクト736)を表す。Sp PDI H3/Brisのコード配列に下線が引かれている。
【図37】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/H3発現カセットの核酸配列(配列番号72;コンストラクト番号737)を表す。キメラHAのコード配列に下線が引かれている。
【図38】開始ATGの上流にある最初の84ヌクレオチドに相当してDraIII部位から始まるアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が5'側に隣接し、SacI部位が3'側に隣接している、全HA(B/Florida/4/06)コード領域(シグナルペプチドおよび停止コドンを含む)を含む合成フラグメントの核酸配列(配列番号73)を表す。
【図39】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、B/Florida/4/06由来のHAのヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号74;コンストラクト739)を表す。Sp PDI B/Floのコード配列に下線が引かれている。
【図40】CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/B発現カセットの核酸配列(配列番号75;コンストラクト745)を表す。キメラHAのコード配列に下線が引かれている。
【図41】Msj1をコードする核酸配列(配列番号76)を表す。
【図42】コンストラクト番号R850の一部、HindIII(プロモーターの上流にあるマルチクローニング部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列(配列番号77)を表す。HSP40コード配列に下線が引かれている。
【図43】コンストラクト番号R860の一部、HindIII(プロモーターの上流にあるマルチクローニグ部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列(配列番号78)を表す。HSP70コード配列に下線が引かれている。
【図44】コンストラクト番号R870の一部、HindIII(プロモーターの5'側上流にあるマルチクローニング部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列(配列番号79)を表す。HSP40コード配列を下線付きイタリック体で示し、HSP70コード配列に下線が引かれている。A)ヌクレオチド1〜4946;B)ヌクレオチド4947〜9493。
【図45】コンストラクト番号R472の略図である。
【図46】インフルエンザA型のジスルフィド架橋パターンを表す。架橋ナンバリング:1)Cys4HA1-Cys137HA2、2)Cys60HA1-Cys72HA1、3)Cys94HA1-Cys143HA1、4)Cys292HA1-Cys318HA1、5)Cys144HA2-Cys148HA2、および6)Cys52HA1-Cys277HA1。A亜型とB亜型(図47)の間で異なっているジスルフィド架橋を矢印で示す。成熟H3タンパク質からのナンバリングを使用した。
【図47】インフルエンザB型HAのジスルフィド架橋パターンを表す。架橋ナンバリング:1)Cys4HA1-Cys137HA2、2)Cys60HA1-Cys72HA1、3)Cys94HA1-Cys143HA1、4)Cys292HA1-Cys318HA1、5)Cys144HA2-Cys148HA2、6)Cys52HA1-Cys277HA1、7)Cys54HA1-Cys57HA1、および8)Cys178HA1-Cys272HA1。A亜型(図46)とB亜型の間で異なっているジスルフィド架橋を矢印で示す。成熟H3タンパク質からのナンバリングを使用した。
【図48】ドメイン交換融合接合部の概略図である。図48Aは、H1/Bri、H3/Bri、およびB/Flo由来のRBサブドメインとH5/Indo SDCとの融合物、およびH5/IndoのRBサブドメインとH1/NCステムドメインとの融合物を表す。図48Bは、H1/Bri、H3/BriまたはB/Flo由来のE1-RB-E2サブドメイン(HDC)とH5/Indo SDCとの融合物、およびH5/Indo HDCとH1/NC SDCとの融合物を表す。
【図49】図49AはH1 A/California/04/09のヌクレオチド配列(配列番号86)を表す。アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ・シグナルペプチドコード配列に下線が引かれ、成熟H1コード配列がボールド体で強調されている。図49Bは、H1 A/California/04/09のアミノ酸配列(配列番号87)を表す。アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ・シグナルペプチドに下線が引かれている。
【図50】無希釈AGL1/747の浸潤後、AGL1/443(空ベクター)との共浸潤後、およびAGL1/R870(HSP40/HSP70)との共浸潤後の、H5/Bキメラヘマグルチニン(コンストラクト番号747;H5/Indo TDCに融合されたB/Flo HDCおよびSDCを含む)の発現のイムノブロット分析を表す。各コンストラクトについて、3本の別々の植物からの全タンパク質抽出物を分析した。分析した各植物につき、20μgのタンパク質をローディングした。ウェスタンブロットは抗B Floridaポリクローナル抗体(NIBSC)で可視化した。
【図51】図51Aは、2X35Sプロモーター配列のヌクレオチド配列(配列番号88)を表す。図51Bは、PacI(上流35Sプロモーター)からAscI(NOSターミネーターのすぐ下流)までのコンストラクト747のヌクレオチド配列(配列番号93)を表す。キメラHAのコード配列に下線が引かれている。2X35Sプロモーター配列はイタリック体で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[詳細な説明]
本発明はウイルス様粒子に関する。より具体的には、本発明は、キメラインフルエンザヘマグルチニンを含むウイルス様粒子、およびキメラインフルエンザウイルス様粒子を生産する方法に関する。
【0034】
以下の説明は好ましい実施形態の説明である。
【0035】
本発明は、植物において活性な調節領域に作動的に連結されたキメラインフルエンザヘマグルチニン(HA)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0036】
さらにまた本発明は、植物においてウイルス様粒子(VLP)を生産する方法を提供する。本方法には、植物において活性な調節領域に作動的に連結されたキメラインフルエンザHAをコードする核酸を、植物または植物の一部に導入すること、および植物または植物の一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産することが含まれる。
【0037】
さらに本発明は、キメラインフルエンザHAを含むVLPを提供する。本VLPは、本発明が提供する方法によって製造することができる。
【0038】
「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」とは、2つ以上の供給源、例えば限定するわけではないが、2つ以上のインフルエンザ型もしくはインフルエンザ亜型または起源の異なるインフルエンザに由来するアミノ酸配列であって、単一のポリペプチドとして融合されているものを含むタンパク質またはポリペプチドを意味する。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、そのポリペプチドまたはタンパク質の残りの部分と同じまたは異種のシグナルペプチドを含みうる。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドはキメラヌクレオチド配列から転写産物として生産することができ、合成後にキメラタンパク質またはキメラポリペプチドを切断し、必要に応じてそれらを会合させて、多量体タンパク質を形成させることができる。したがってキメラタンパク質またはキメラポリペプチドには、ジスルフィド架橋を介して会合したサブユニットを含むタンパク質またはポリペプチド(すなわち多量体タンパク質)も包含される。例えば、2つまたはそれ以上の供給源に由来するアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドをサブユニットにプロセシングし、それらのサブユニットをジスルフィド架橋を介して会合させて、キメラタンパク質またはキメラポリペプチドを生産することができる(図46および47参照)。ポリペプチドはヘマグルチニン(HA)であることができ、キメラHAまたはキメラインフルエンザHAを生産するために、ポリペプチドを構成する2つまたはそれ以上のアミノ酸配列のそれぞれを、異なるHAから取得することができる。キメラHAには、タンパク質合成後またはタンパク質合成中に切除される異種シグナルペプチドを含むアミノ酸配列(キメラHAプレタンパク質)も含まれうる。好ましくはキメラポリペプチドまたはキメラインフルエンザHAは自然には存在しない。キメラポリペプチドをコードする核酸は「キメラ核酸」または「キメラヌクレオチド配列」と呼ぶことができる。キメラHAから構成されるウイルス様粒子は「キメラVLP」と呼ぶことができる。
【0039】
本発明のさまざまな実施形態によるキメラインフルエンザHAは、ステムドメイン複合体(SDC)、頭部ドメイン複合体(HDC)および膜貫通ドメイン複合体(TDC)を含むことができ、ここで、SDC、HDCまたはTDCの1つまたはそれ以上のサブドメインは、第1インフルエンザHA型もしくは亜型のものであるか、ある起源に由来し、SDC、HDCまたはTDCの1つまたはそれ以上のサブドメインは、第2インフルエンザHA型または亜型に由来するか、第2の起源または異なる起源に由来する。本明細書にいう「SDC」はF'1、F'2およびFサブドメインを含み、「HDC」はRB、E1およびE2サブドメインを含み、「TDC」はTmDおよびCtailサブドメイン(TMD/CT)を含む(図1A、46および47参照)。
【0040】
用語「ウイルス様粒子」(VLP)または「ウイルス様粒子群」もしくは「VLPs」は、自己集合する構造物であって、インフルエンザHAタンパク質またはキメラインフルエンザHAタンパク質などの構造タンパク質を含むものを指す。VLPおよびキメラVLPは、感染時に産生されるウイルス粒子と形態的および抗原的におおむね類似してるが、複製するのに足りる遺伝情報を欠き、それゆえに非感染性である。VLPおよびキメラVLPは、植物宿主細胞を含む適切な宿主細胞において生産することができる。宿主細胞からの抽出に続いて、適切な条件下で単離とさらなる精製を行えば、VLPおよびキメラVLPをインタクトな構造物として精製することができる。
【0041】
本発明に従ってインフルエンザ由来タンパク質から生産されたキメラVLPまたはVLPは、M1タンパク質を含まない。M1タンパク質は、VLP調製物の夾雑物であるRNAに結合することが知られている(WakefieldおよびBrownlee, 1989)。RNAの存在は、キメラVLP製品について規制上の承認を取得する際に望ましくないので、RNAを欠くキメラVLP調製物は有利であるだろう。
【0042】
本発明のキメラVLPは、タンパク質をシアリル化する能力を欠くことを特徴とする宿主細胞、例えば植物細胞、昆虫細胞、真菌、および他の生物、例えば海綿、腔腸動物(coelenterara)、環形動物、節足動物(arthoropoda)、軟体動物、線形動物(nemathelminthea)、輪形動物、扁形動物、毛顎動物、半索動物、クラミジア、スピロヘータ、グラム陽性細菌、シアノバクテリア、古細菌などにおいて生産することができる。例えばGuptaら, 1999. Nucleic Acids Research 27:370-372;Toukachら, 2007. Nucleic Acids Research 35:D280-D286;Nakaharaら, 2008. Nucleic Acids Research 36:D368-D371を参照されたい。本明細書に記載するように生産されたキメラVLPは、典型的には、ノイラミニダーゼ(NA)を含まない。ただし、HAとNAを含むVLPが望ましいのであれば、NAをHAと共発現させてもよい。
【0043】
本発明は、キメラHAを含むVLPであって、そのキメラHAを発現する細胞の形質膜から脂質エンベロープを取得するVLPも提供する。例えば、キメラHAが植物ベースの系において発現する場合、結果として生じるVLPは、その植物細胞の形質膜から脂質エンベロープを取得しうる。
【0044】
一般に、用語「脂質」は脂溶性(親油性)の天然分子を指す。本発明のいくつかの態様に従って植物において生産されるキメラVLPは、植物由来脂質との複合体を形成しうる。植物由来脂質は脂質二重層の形態をとることができ、さらに、VLPを取り囲むエンベロープを含みうる。植物由来脂質は、VLPが生産される植物の形質膜の脂質構成要素、例えばリン脂質、トリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリド、ならびに脂溶性ステロールまたはステロール類を含む代謝産物などを含みうる。例として、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、グリコスフィンゴリピド、フィトステロール、またはそれらの組合せが挙げられる。植物由来脂質は「植物脂質」ということもできる。フィトステロールの例には、カンペステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、Δ7-スチグマステロール、Δ7-アベナステロール、ダウコステロール(daunosterol)、シトステロール、24-メチルコレステロール、コレステロールまたはβ-シトステロールなどがある。例えばMongrandら, 2004を参照されたい。当業者には理解されるであろうように、細胞の形質膜の脂質組成は、その細胞または生物の培養条件または成長条件、あるいはその細胞が得られる種によって変動しうる。一般的には、β-シトステロールがもっとも豊富なフィトステロールである。
【0045】
細胞膜は、一般に、脂質二重層と、さまざまな機能のためのタンパク質とを含む。脂質二重層には「脂質ラフト」と呼ばれる特定脂質の局所的濃縮が見られる場合がある。これらの脂質ラフト微小領域はスフィンゴリピドおよびステロールに富むだろう。理論に束縛されることは望まないが、脂質ラフトは、エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシス、ウイルスまたは他の感染性因子の侵入または放出、細胞間シグナル伝達、その細胞または生物の他の構造構成要素(例えば細胞内および細胞外マトリックス)との相互作用に重要な役割を持ちうる。
【0046】
本発明は、例えばB、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16型または亜型を含む、ヒトに感染しうる任意の型、亜型のインフルエンザウイルスから得ることができるサブドメインを有するキメラHAを含むVLPを包含する。いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルスは、H1、H3、H5またはB型または亜型のものであることができる。H1、H3、H5またはB型または亜型の限定でない例には、A/New Caledonia/20/99亜型(H1N1)(「H1/NC」;配列番号56)、H1 A/California 04/09亜型(H1N1)(「H1/Cal」;配列番号86)、A/Indonesia/5/05亜型(H5N1)(「H5/Indo」)、A/Brisbane/59/2007(「H1/Bri」)、およびB/Florida/4/2006(「B/Flo」)およびH3 A/Brisbane/10/2007(「H3/Bri」)などがある。さらにまた、キメラHAは、1つ以上の新興インフルエンザウイルスまたは新しく同定されたインフルエンザウイルスから単離されるヘマグルチニンの1つ以上のサブドメインを含みうる。
【0047】
本発明は、他の哺乳動物または宿主動物、例えばヒト、霊長類、ウマ、ブタ、鳥(bird)、水鳥(avian water fowl)、渡り鳥、ウズラ、カモ、ガチョウ、家禽、ニワトリ、ラクダ、イヌ科動物(canine)、イヌ、ネコ科動物(feline)、ネコ、トラ、ヒョウ、ジャコウネコ、ミンク、ムナジロテン、フェレット、家庭用ペット、家畜、マウス、ラット、アザラシ(seal)、クジラなどに感染するインフルエンザウイルスにも関係する。一部のインフルエンザウイルスは、2種類以上の宿主動物に感染しうる。
【0048】
インフルエンザウイルスに関して、本明細書において使用する用語「ヘマグルチニン」または「HA」は、インフルエンザウイルス粒子の構造糖タンパク質を指す。インフルエンザヘマグルチニンの構造は詳しく研究されており、二次構造、三次構造および四次構造に高度の保存を示す。この構造保存は、アミノ酸配列が変動しうるにもかかわらず観察される(例えば、引用により本明細書に組み込まれるSkehelおよびWiley, 2000 Ann Rev Biochem 69:531-69;Vaccaroら 2005を参照されたい)。HAをコードするヌクレオチド配列はよく知られており、例えばBioDefense and Public Health Database(例えばURL:biohealthbase.org/GSearch/home.do?decorator=Influenza)や、国立バイオテクノロジー情報センターによって維持されているデータベース(NCBI;例えばURL:ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=nuccore&cmd=search&term=influenza)から入手することができ、これらはどちらも引用により本明細書に組み込まれる。
【0049】
HA単量体は、3つの機能ドメイン−ステムドメインまたはステムドメインクラスター(SDC)、球状頭部ドメインまたは頭部ドメインクラスター(HDC)、および膜貫通ドメインクラスター(TDC)に細分することができる。SDCは4つのサブドメイン、融合ペプチドF、F'1およびF'2(このサブドメインを一般に「バックボーン」と呼ぶ場合がある)を含む。TDCは2つのサブドメイン、膜貫通(TmD)とC末端テール(CT)を含む。HDCは、3つのサブドメイン、痕跡(vestigial)エステラーゼドメインE1およびE2と、受容体結合ドメインRBとを含む。SDCとHDCは合わせて「外部ドメイン(ectodomain)」と呼ぶ場合がある。Haらによる刊行物(2002)(EMBO J. 21:865-875;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)には、いくつかのインフルエンザ亜型におけるSDCおよびHDCのさまざまなサブドメインの相対的配向が、X線結晶構造に基づいて図解されている。HA1およびHA2ポリペプチドのN末端およびC末端と対比したサブドメインの概略図を図1Aに示す。さまざまなインフルエンザ亜型の注釈付き構造アラインメントを図1Cに記載する。
【0050】
インフルエンザウイルスのヘマグルチニンではアミノ酸変異が許容される。この変異が、絶え間なく同定され続ける新しい株をもたらす。感染性は新しい株の間でさまざまでありうる。しかし、引き続いてVLPを形成するヘマグルチニン三量体の形成は、維持される。したがって本発明は、キメラHAを含むヘマグルチニンアミノ酸配列、またはキメラヘマグルチニンアミノ酸配列をコードする核酸であって、植物においてVLPを形成し、既知の配列および発生しうる変異HA配列を含むものを提供する。本発明は、TDC、SDCおよびHDCを含むキメラHAポリペプチドの使用にも関係する。例えばキメラHAタンパク質は、2つ以上のインフルエンザ型に由来するHA1およびHA2のサブドメインを含む、HA0または切断されたキメラHAであることができる。キメラHAタンパク質は、植物発現系または植物細胞発現系を使ったVLPの生産または形成に使用することができる。
【0051】
HA0は発現されフォールディングされて三量体を形成することができ、次にそれらはVLPに集合することができる。HA0の切断は、ジスルフィド架橋によって連結されたHA1およびHA2ポリペプチドを与える(ジスルフィド架橋パターンの図解については図1C、46および47を参照されたい)。感染性ウイルス粒子の場合、融合ペプチドを(HA2ポリペプチドのN末端に)遊離させ、それを細胞膜とウイルス膜の融合に利用できるようにするHA2のコンフォメーション変化を誘発するには、前駆体HA0の切断が必要である。しかし、VLPは非感染性であり、HAをHA1とHA2に切断することは、例えばワクチン生産には必要ない。切断されていないHA0前駆体も三量体に集合し、形質膜から出芽して、VLPナノ粒子を形成する。
【0052】
HA0ポリペプチドは数個のドメインを含む。HDCのRBサブドメインは、部位A〜Eと名付けられた抗原性領域中に数個のループを含む。感染性インフルエンザウイルスを中和する抗体は、これらの部位の1つ以上を標的にすることが多い。痕跡エステラーゼサブドメイン(E1およびE2)は融合に関与し、Ca++に結合しうる。F、F'1およびF'2ドメインは互いに相互作用し協調してステムを形成し、HA三量体の頭部を膜の上に持ち上げる。TmDおよびCTは、フォールディングされたHAの膜への固定に関与しうる。TmDは脂質ラフトに対するHAの親和性に関与し、CTはHAの分泌に関与し、CTサブドメイン中に見いだされるシステイン残基の一部はパルミトイル化されうる。HA0ポリペプチドのN末端にはシグナルペプチド(SP)も見いだしうる。図2ならびに表4および表5に、いくつかのインフルエンザウイルス亜型のSP、F'1、F'2、E1、RB、E2およびFドメインのアミノ酸配列の例を記載する。
【0053】
インフルエンザヘマグルチニンの発現および/または分泌時に起こるN末端シグナルペプチド(SP)配列のプロセシングは、HAのフォールディングに関与しうる。一般に、用語「シグナルペプチド」は、ヘマグルチニンポリペプチドのN末端に通例見いだされるアミノ酸の短い(約5〜30アミノ酸の)配列であって、新たに翻訳されたポリペプチドの特定細胞内小器官へのトランスロケーションを指示しうるもの、またはポリペプチド鎖の特定ドメインを他のドメインに対して位置決めするのを助けうるものを指す。ヘマグルチニンのシグナルペプチドは、タンパク質の小胞体へのトランスロケーションを方向付け、成熟ヘマグルチニンの切断とフォールディングが促進されるように、新生ヘマグルチニンポリペプチドのN末端近位ドメインを膜アンカードメインに対して位置決めするのを助けると提唱されている。
【0054】
宿主細胞の小胞体(ER)膜内へのHAの挿入、シグナルペプチド切断およびタンパク質糖鎖付加は、翻訳時事象である。HAの正しいフォールディングは、タンパク質の糖鎖付加と、少なくとも6つの鎖内ジスルフィド結合(図46および47参照)の形成とを必要とする。図46において、亜型A由来のHAは、単量体1つあたり6個の保存されたジスルフィド架橋を有することが示されている。これに対し、B HAの単量体(図47)は7個のジスルフィド架橋を有し、これらのジスルフィド架橋のうちの5個は、対応するものがAにも存在する(SkehelおよびWiley, 2000. Ann Rev Biochem. 69:531-569に総説がある;分子内および分子間ジスルフィド架橋ならびに他の保存されたアミノ酸とそれらの相対的位置を図解した構造の例は、例えばGamblinら 2004, Science 303:1838-1842に記載されている;これらの文献はどちらも引用により本明細書に組み込まれる)。当業者には理解されるであろうように、キメラHAを作成する際には、ジスルフィド架橋の類似する配置が確実に得られるようにすることが重要である。
【0055】
シグナルペプチドはヘマグルチニンにとってネイティブであってもよいし、シグナルペプチドは発現するヘマグルチニンの一次配列に対して異種であってもよい。キメラHAは、第1インフルエンザ型、亜型または株に由来するシグナルペプチドを含み、そのHAの残りの部分は、1つまたはそれ以上の異なるインフルエンザ型、亜型または株に由来することができる。例えば、植物系においてHAを発現させるために、HA亜型B H1、H2、H3、H5、H6、H7、H9またはインフルエンザB型のネイティブSPを使用することができる。本発明のいくつかの実施形態において、SPは、インフルエンザB型、H1、H3またはH5のものであるか、亜型H1/Bri、H1/NC、H5/Indo、H3/BriまたはB/Floのものであることができる。
【0056】
SPは、非ネイティブ、例えばインフルエンザ以外のウイルスの構造タンパク質またはヘマグルチニンに由来するもの、または植物、動物もしくは細菌ポリペプチドに由来するものであってもよい。使用することができるシグナルペプチドの限定でない一例は、アミノ酸配列:
MAKNVAIFGLLFSLLLLVPSQIFAEE(ヌクレオチド32-103;配列番号34)
を有するアルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのもの(PDI SP;アクセッション番号Z11499のヌクレオチド32〜103;配列番号34;図17)である。したがって本発明は、ネイティブシグナルペプチドまたは非ネイティブシグナルペプチドを含むキメラインフルエンザヘマグルチニン、およびそのようなキメラヘマグルチニンをコードする核酸を提供する。
【0057】
ヘマグルチニンの正しいフォールディングは、インフルエンザヘマグルチニンの特徴の中でもとりわけ、タンパク質の安定性、多量体の形成、VLPの形成およびHAの機能(血球凝集能)にとって重要でありうる。タンパク質のフォールディングは、タンパク質の配列、タンパク質の相対的存在量、細胞内密集度(degree of intracellular crowding)、フォールディングされたタンパク質、部分的にフォールディングされたタンパク質またはフォールディングされていないタンパク質に結合するか、それらと一過性に会合しうる補因子の利用可能性、1つ以上のシャペロンタンパク質の存在を含む(ただしこれらに限るわけではない)1つ以上の因子による影響を受けうる。
【0058】
熱ショックタンパク質(Hsp)またはストレスタンパク質は、タンパク質合成、細胞内輸送、ミスフォールディングの防止、タンパク質凝集の防止、タンパク質複合体の集合(assembly)および解体(disassembly)、タンパク質フォールディング、およびタンパク質解離(disaggregation)を含むさまざまな細胞プロセスに参加しうるシャペロンタンパク質の例である。そのようなシャペロンタンパク質の例には、Hsp60、Hsp65、Hsp70、Hsp90、Hsp100、Hsp20-30、Hsp10、Hsp100-200、Hsp100、Hsp90、Lon、TF55、FKBP、シクロフィリン、ClpP、GrpE、ユビキチン、カルネキシン、およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどがあるが、これらに限るわけではない(例えばMacario, A.J.L., Cold Spring Harbor Laboratory Res. 25:59-70. 1995;Parsell, D.A.およびLindquist, S. Ann. Rev. Genet. 27:437-496 (1993);米国特許第5,232,833号を参照されたい)。本明細書において説明するとおり、キメラHAのフォールディングを保証するために、シャペロンタンパク質、例えば限定するわけではないが、Hsp40およびHsp70などを使用することができる。
【0059】
Hsp70の例には、哺乳動物細胞由来のHsp72およびHsc73、細菌由来のDnaK、特にMycobacterium lepraeMycobacterium tubeculosis、およびMycobacterium bovis(例えばカルメット・ゲラン桿菌)などのマイコバクテリアに由来するもの(本明細書ではHsp71という)が含まれる。Escherichia coli、酵母および他の原核生物由来のDnaK、A. thaliana(Linら. 2001, Cell Stress and Chaperones 6:201-208)などの真核生物に由来するBiPおよびGrp78。Hsp70の一具体例は、A. thaliana Hsp70(Genbank ref:AY120747.1によってコードされるもの)である。Hsp70は、ATPにもフォールディングされていないポリペプチドおよびペプチドにも特異的に結合し、それによってタンパク質のフォールディングおよびアンフォールディング、ならびにタンパク質複合体の集合および解体に参加する能力を有する。
【0060】
Hsp40の例には、E. coliおよびマイコバクテリアなどの原核生物に由来するDnaJ、
およびアルファルファなどの真核生物に由来するHSJ1、HDJlおよびHsp40がある(Frugisら, 1999. Plant Molecular Biology 40:397-408)。Hsp40の一具体例は、M. sativa MsJ1(AJ000995.1または配列番号76)である。Hsp40は、細胞活動の中でもとりわけ、タンパク質フォールディング、熱耐性およびDNA複製において、分子シャペロンとしての役割を果たす。図41にMsj1をコードする核酸配列(配列番号76)を示す。
【0061】
Hspのうち、Hsp70とそのコシャペロンHsp40は、合成が完了する前の翻訳途上の新しく合成されたポリペプチドの安定化に関与する。理論に束縛されることは望まないが、Hsp40は、フォールディングされていない(新生または輸送されたばかりの)ポリペプチドの疎水性パッチに結合することで、Hsp70-ATP複合体とポリペプチドとの相互作用を容易にする。ATP加水分解は、ポリペプチド、Hsp70およびADP間の安定な複合体の形成と、Hsp40の放出をもたらす。Hsp70-ADP複合体とポリペプチドの疎水性パッチとの会合は、それらが他の疎水性パットと相互作用するのを妨げ、正しくないフォールディングおよび他のタンパク質との凝集体の形成を防止する(Hartl, FU. 1996. Nature 381:571-579に総説がある)。
【0062】
ネイティブなシャペロンタンパク質は、低レベルの組換えタンパク質の正しいフォールディングを助長する能力を有しうるが、発現レベルが増加するにつれて、ネイティブなシャペロンの存在量が、制限因子になりうる。アグロインフィルトレーションを行った(agroinfiltrated)葉におけるヘマグルチニンの高い発現レベルは、細胞質ゾルにおけるヘマグルチニンポリペプチドの蓄積をもたらしうるが、1つまたはそれ以上のシャペロンタンパク質(例えばHsp70、Hsp40またはHsp70とHsp40の両方)の共発現は、ミスフォールディングされたヘマグルチニンポリペプチドまたは凝集したヘマグルチニンポリペプチドのレベルを低下させ、血球凝集および/またはウイルス様粒子の形成を可能にする三次元構造特徴および四次元構造特徴を示すポリペプチドの数を増加させうる。配列番号77は、HSP40(下線部)をコードするコンストラクト番号R850の一部、HindIII(プロモーターの上流にあるマルチクローニング部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列である。配列番号78は、HSP70(下線部)をコードするコンストラクト番号R860の一部、HindIII(プロモーターの上流にあるマルチクローニグ部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列である。配列番号79は、HSP40(下線付きイタリック体の部分)とHSP70(下線部)とをコードするコンストラクト番号R870の一部、HindIII(プロモーターの5'側上流にあるマルチクローニング部位中)からEcoRI(NOSターミネーターのすぐ下流)までの核酸配列である。
【0063】
したがって本発明は、キメラインフルエンザHAをコードする第1核酸を、シャペロンをコードする第2核酸と共発現させる、植物においてキメラインフルエンザVLPを生産する方法も提供する。第1核酸と第2核酸は同じステップで植物に導入してもよいし、逐次的に植物に導入してもよい。
【0064】
VLPは、構造およびサイズについて、例えば血球凝集アッセイ、電子顕微鏡法、またはサイズ排除クロマトグラフィーによって評価することができる。
【0065】
サイズ排除クロマトグラフィーを行うには、凍結破砕植物材料の試料を抽出バッファー中でホモジナイズ(ポリトロン)することによって植物組織から全可溶性タンパク質を抽出し、不溶物を遠心分離によって除去することができる。PEGによる沈殿も有益な場合がある。可溶性タンパク質を定量し、抽出物をSephacryl(商標)カラムに通す。Blue Dextran 2000を較正用標準として使用することができる。クロマトグラフィー後に、そのフラクションのタンパク質コンプリメント(protein complement)を決定するために、イムノブロットによってフラクションをさらに分析してもよい。
【0066】
本発明は、1つまたはそれ以上のキメラインフルエンザヘマグルチニンをコードする核酸と、1つまたはそれ以上のシャペロンをコードする核酸とを含む植物も提供する。
【0067】
本発明は、以下に挙げるヌクレオチド配列を包含する:
【0068】
配列番号63(コンストラクト690;アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH5/H1発現カセット)、およびH5/IndoのSP、F'1、E1−H1/BriのRB−H5/IndoのE2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号63の下線部;
【0069】
配列番号64(コンストラクト691;アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH5/H1発現カセット)、およびH5/IndoのSP、F'1−H1/BriのE1、RB、E2−H5/IndoのF'2、F、TMD/CTをコードする配列番号64の下線部;
【0070】
配列番号65(コンストラクト696;アルファルファ・プラストシアニンプロモーターおよび5'UTRと、キメラヘマグルチニンコード配列と、アルファルファ・プラストシアニン3'UTRおよびターミネーター配列とを含むキメラH1/H5発現カセット)、およびPDI SP−H1/NCのF'1、E1−H5/IndoのRB−H1/NCのE2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号65の下線部;
【0071】
配列番号68(コンストラクト733;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、A/Brisbane/59/07(H1N1)由来のH1のヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むSpPDI H1/Bri発現カセット)、およびPDI SP−H1/BRIのF'1、E1、RB、E2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号68の下線部;
【0072】
配列番号69(コンストラクト734;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/H1発現カセット)。キメラHAのコード配列に下線が引かれており、これは配列番号63と同じキメラHAをコードする;
【0073】
配列番号71(コンストラクト736;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、A/Brisbane/10/07(H2N3)由来のH3のヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むHA発現カセット)、およびPDI SP−H3/BriのF'1、E1、RB、E2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号71の下線部;
【0074】
配列番号72(コンストラクト737;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/H3発現カセット)、およびPDI SP−H5/IndoのF'1、E1、RB、E2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号72の下線部;
【0075】
配列番号74(コンストラクト739;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、PDI由来のシグナルペプチドのコード配列、B/Florida/4/06由来のHAのヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むHA発現カセット)、およびPDI SP−B/FloのF'1、E1、RB、E2、F'2、F、TMD/CTをコードする配列番号74の下線部;
【0076】
配列番号75(コンストラクト734;CaMV 35Sプロモーター、CPMV-HT 5'UTR、キメラヘマグルチニンコード配列、CPMV-HT 3'UTRおよびNOSターミネーター配列を含むキメラH5/B発現カセット)、およびPDI SP−B/FloのF'1、E1、RB、E2、F'2、F−H5/IndoのTND/CTをコードする配列番号75の下線部。
【0077】
本発明は、配列番号63〜65、68、69、および71〜75のいずれか一つの下線部にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も包含する。本発明は、配列番号63〜65、68、69、および71〜75のいずれか一つの下線部の相補鎖(complement)にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も包含する。配列番号63〜65、68、69、および71〜75の下線部にハイブリダイズするか、配列番号63〜65、68、69、および71〜75の下線部の相補鎖にハイブリダイズする、これらのヌクレオチド配列は、発現した時にキメラVLPを形成するキメラヘマグルチニンタンパク質をコードし、そのキメラVLPは、対象に投与されると、抗体の産生を誘導する。例えば、植物細胞内における上記ヌクレオチド配列の発現はキメラVLPを形成し、そのキメラVLPは、HAに(例えば1つ以上のインフルエンザ型または亜型の成熟HA、HA0、HA1、またはHA2に)結合する能力を有する抗体を生産するために使用することができる。キメラVLPは、対象に投与されると、免疫応答を誘導する。
【0078】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションは当技術分野では知られている(例えばAusubelら編「Current Protocols in Molecular Biology」1995および補遺;Maniatisら「Molecular Cloning (A Laboratory Manual)」Cold Spring Harbor Laboratory, 1982;SambrookおよびRussell「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第3版, 2001を参照されたい;これらの文献はそれぞれ引用により本明細書に組み込まれる)。そのようなストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例として、4×SSC中、65℃で、約16〜20時間のハイブリダイゼーション後、0.1×SSC中、65℃で1時間の洗浄、または0.1×SSC中、65℃で2回、各回20分または30分の洗浄を挙げることができる。あるいは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の典型例として、50%ホルムアミド、4×SSC中、42℃で終夜(16〜20時間)の後、0.1×SSC中、65℃で1時間の洗浄、または0.1×SSC中、65℃で2回、各回20分または30分の洗浄、あるいはChurch水性リン酸緩衝液(7%SDS;0.5M NaPO4バッファーpH7.2;10mM EDTA)中、65℃での終夜(16〜20時間)ハイブリダイゼーションと、0.1×SSC、0.1%SDS中、50℃で2回、各回20分または30分の洗浄、または2×SSC、0.1%SDS中、65℃で2回、各回20分または30分の洗浄を挙げることができる。
【0079】
さらに本発明は、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号69、配列番号71、配列番号72、配列番号74、配列番号75のいずれか一つの下線部に示すキメラHAをコードするヌクレオチド配列と、約70、75、80、85、87、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%またはその間の任意の量の配列同一性または配列類似性を有することを特徴とするヌクレオチド配列を包含し、ここで、そのヌクレオチド配列は、発現した時に、キメラVLPを形成するヘマグルチニンタンパク質をコードし、そのキメラVLPは、抗体の産生を誘導する。例えば、植物細胞内における前記ヌクレオチド配列の発現はキメラVLPを形成し、そのキメラVLPは、HA(成熟HA、HA0、HA1、またはHA2など)に結合する能力を有する抗体を産生させるために使用することができる。VLPは、対象に投与されると、免疫応答を誘導する。
【0080】
「免疫応答」は、一般に、適応免疫系の応答を指す。適応免疫系は、一般に、体液性応答と細胞性応答を含む。体液性応答は、Bリンパ球系列の細胞(B細胞)において産生される分泌抗体によって媒介される免疫の態様である。分泌抗体は、侵入する微生物(ウイルスや細菌など)の表面にある抗原に結合し、それらに破壊のための目印を付ける。体液性免疫は、一般に、抗体産生とそれに付随するプロセス、および抗体のエフェクター機能、例えばTh2細胞活性化およびサイトカイン産生、メモリー細胞生成、食作用のオプソニン促進、病原体排除などを指すために使用される。「調整する(modulate)」または「調整(modulation)」などの用語は、一般に知られまたは使用されているいくつかのアッセイ(その一部を本明細書において例示する)のいずれかによって決定される、特定の応答またはパラメータの増加または減少を指す。
【0081】
細胞性応答は、抗体ではなく、抗原に応答して起こるマクロファージ、ナチュラルキラー細胞(NK)、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の活性化とさまざまなサイトカインの放出とが関与する免疫応答である。細胞性免疫は、一般に、一部のTh細胞活性化、Tc細胞活性化およびT細胞性応答を指すために用いられる。細胞性免疫は、ウイルス感染に対する応答においては、とりわけ重要である。
【0082】
例えば、抗原特異的CD8陽性Tリンパ球の誘導は、ELISPOTアッセイを使って測定することができ、CD4陽性Tリンパ球の刺激は増殖アッセイを使って測定することができる。抗インフルエンザ抗体価はELISAアッセイを使って定量することができ;抗原特異的抗体または交差反応性抗体のアイソタイプも、抗アイソタイプ抗体(例えば抗IgG、IgA、IgEまたはIgM)を使って測定することができる。そのようなアッセイを実施するための方法と技法は当技術分野においてよく知られている。
【0083】
キメラHAまたはキメラVLPを含むワクチンまたはワクチン組成物によって誘導される抗体の効力が、組換えHAによる赤血球(RBC)の凝集を阻害できることを、血球凝集阻害(HIまたはHAI)アッセイを使って証明することもできる。血清試料の血球凝集阻害抗体価は、マイクロタイターHAI(Aymardら 1973)によって評価することができる。例えばウマ、シチメンチョウ、ニワトリなど、いくつかの種のうちのどの種の赤血球でも使用することができる。このアッセイは、VLPの表面におけるHA三量体の集合に関して間接的な情報を与え、HA上での抗原性部位の適正な提示が確認される。
【0084】
交差反応性HAI価を使って、そのワクチン亜型に関連する他のウイルス株に対する免疫応答の効力を証明することもできる。例えば、第1インフルエンザ型または亜型のHDCを含むキメラヘマグルチニンを含むワクチン組成物で免疫された対象からの血清を、HAIアッセイにおいて、第2の全ウイルスまたはウイルス粒子株と共に使用して、HAI価を決定することができる。
【0085】
理論に束縛されることは望まないが、異なる動物からのRBCに結合するHAの能力は、α2,3またはα2,6結合で結合しているシアル酸に対するHAの親和性およびRBCの表面上にこれらのシアル酸が存在することによるものである。インフルエンザウイルス由来のウマ科および鳥類HAが、シチメンチョウ、ニワトリ、カモ、モルモット、ヒト、ヒツジ、ウマおよびウシを含むいくつかの種の全ての赤血球を凝集させるのに対して、ヒトHAは、シチメンチョウ、ニワトリ、カモ、モルモット、ヒトおよびヒツジの赤血球に結合するだろう(Ito T.ら, 1997, Virology, 227:493-499;Medeiros Rら, 2001. Virology 289:74-85)。
【0086】
サイトカインの存在またはレベルを定量することもできる。例えばTヘルパー細胞応答(Th1/Th2)は、ELISA(例えばBD Biosciences OptEIAキット)を用いるIFN-γおよびIL-4分泌細胞の測定によって特徴づけられるだろう。対象から得た末梢血単核球(PBMC)または脾細胞を培養し、上清を分析することができる。Tリンパ球は、当技術分野では知られているように、マーカー特異的な蛍光ラベルおよび方法を使って、蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって定量することもできる。
【0087】
対象における免疫応答を特徴づけるためにマイクロ中和アッセイを行うこともできる。例えばRoweら, 1973の方法を参照されたい。ウイルス中和価は、1)細胞のクリスタルバイオレット固定/着色後に溶解プラーク(lysis plaques)を数え上げること(プラークアッセイ);2)培養物における細胞溶解の顕微鏡観察;3)NPウイルスタンパク質(宿主細胞のウイルス感染と相関する)のELISAおよび分光測光法による検出など、数種類の方法で得ることができる。
【0088】
配列同一性または配列類似性は、配列比較プログラム、例えばDNASISに用意されているものなどを使って決定することができる(限定するわけではないが、例えば以下のパラメータを使用する:GAP penalty 5、number of top diagonals 5、fixed GAP penalty 10、k-tuple 2、floating gap 10、およびwindow size 5)。ただし、当技術分野では、比較のための配列アラインメント法は、例えばSmithおよびWatermanのアルゴリズム(1981, Adv. Appl. Math. 2:482)、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)、PearsonおよびLipmanのアルゴリズム(1988, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444)、ならびにこれらのアルゴリズムのコンピュータを利用した実行(例えばGAP、BESTFIT、FASTA、およびBLAST(Altschulら, 1990. J. Mol Biol 215:403-410))による方法、または手作業によるアラインメントと目視検査による方法など、他にもよく知られている。核酸配列またはアミノ酸配列は、例えばMULTALIN(Corpet F., 1988, Nucl. Acids Res., 16 (22), 10881-10890)、BLAST、CLUSTALなど、当技術分野において知られている数種類のソフトウェアパッケージのいずれかを使って、比較しアラインメントして、コンセンサス配列を決定することができ、あるいは、配列を手作業でアラインメントして、配列間の類似性および相違を決定することもできる。
【0089】
タンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドのフラグメントまたは一部には、そのフラグメントが発現時にキメラVLPを形成することができるという条件の下で、特定タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸コンプリメント(amino acid complement)のサブセットを含むペプチドまたはポリペプチドが包含される。フラグメントは、例えばそのタンパク質またはポリペプチドの抗原性領域、ストレス応答誘導性領域、または機能ドメインを含む領域を含みうる。フラグメントは、同じ一般ファミリーのタンパク質に共通する領域またはドメインを含むか、それが由来する完全長タンパク質を特異的に同定するのに十分なアミノ酸配列を含みうる。
【0090】
例えばフラグメントまたは一部は、そのフラグメントが発現時にキメラVLPを形成することができるという条件の下で、完全長タンパク質の長さの約60%〜約100%、またはその間の任意の量を含みうる。例えば、完全長タンパク質の長さの約60%〜約100%、約70%〜約100%、約80%〜約100%、約90%〜約100%、約95%〜約100%、またはその間の任意の量。あるいは、フラグメントまたは一部は、そのキメラHAに応じて、そのフラグメントが発現時にキメラVLPを形成することができるという条件の下に、約150〜約500アミノ酸、またはその間の任意の量であることもできる。例えばフラグメントは、そのキメラHAに応じて、そのフラグメントが発現時にキメラVLPを形成することができるという条件の下に、150〜約500アミノ酸またはその間の任意の量、約200〜約500アミノ酸またはその間の任意の量、約250〜約500アミノ酸、またはその間の任意の量、約300〜約500アミノ酸またはその間の任意の量、約350〜約500アミノ酸またはその間の任意の量、約400〜約500アミノ酸またはその間の任意の量、約450〜約500アミノ酸またはその間の任意の量であることができる。例えば、そのフラグメントが発現時にキメラVLPを形成することができるという条件の下に、約5、10、20、30、40もしくは50アミノ酸、またはその間の任意の量を、キメラHAタンパク質のC末端、N末端、またはN末端とC末端の両方から除去することができる。
【0091】
任意の所与の配列におけるアミノ酸のナンバリングは、その特定配列に関するものであるが、当業者は、ある配列中の特定アミノ酸の「等価性(equivalency)」を、構造および/または配列に基づいて容易に決定することができる。例えば6個のN末端アミノ酸を除去した場合、これは、アミノ酸を指定する番号(specific numerical identity)を(例えば完全長タンパク質と比較して)変化させることになるが、その構造におけるアミノ酸の相対的位置は変化させないだろう。
【0092】
本発明は、限定するわけではないが、ワクチン生産に適した、植物、植物の一部、または植物細胞におけるキメラHAをコードする核酸の発現と、キメラインフルエンザVLPの植物からの生産とを記載する。そのような核酸の例には、例えば配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号69、配列番号71、配列番号72、配列番号74、配列番号75などがあるが、これらに限るわけではない。
【0093】
本発明はさらに、植物、植物の一部、または植物細胞における、キメラHAをコードする核酸(例えば限定するわけではないが配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号69、配列番号71、配列番号72、配列番号74、配列番号75など)の発現と、形質転換植物細胞における、サブウイルス(subviral)インフルエンザ粒子およびキメラインフルエンザVLPなどの機能的な免疫原性ホモタイプ高分子タンパク質構造物へと自己集合する組換えインフルエンザ構造タンパク質から構成されるインフルエンザワクチン候補またはインフルエンザワクチン試薬の生産を提供する。
【0094】
したがって本発明は、キメラVLPと、単一のキメラエンベロープタンパク質の発現によって植物発現系においてキメラVLPを生産するための方法とを提供する。
【0095】
インフルエンザ亜型のキメラHAをコードする核酸、例えば配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号68、配列番号69、配列番号71、配列番号72、配列番号74、配列番号75は、HA RNAを使って、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成することができる。一例として、RNAは、H1/NC、H1/Bri、H3/Bri、B/FloまたはH5/Indoから単離するか、これらのまたは他のインフルエンザウイルス型または亜型に感染した細胞から単離することができる。逆転写およびPCRには、HA RNAに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用することができる。また、キメラHAをコードする核酸は、当業者には知られているであろう方法を使って化学合成することもできる。
【0096】
本発明はさらに、植物において作動可能な調節要素に作動的に連結された上述のキメラHAをコードする核酸を含む遺伝子コンストラクトに関する。植物細胞において作動可能であり、本発明に従って使用することができる、調節要素の例には、プラストシアニン調節領域(US7,125,978;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)、またはリブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO;US4,962,028;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)の調節領域、クロロフィルa/b結合タンパク質(CAB;Leutwilerら;1986;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)の調節領域、ST-LS1(光化学系IIの酸素発生複合体と関連し、引用により本明細書に組み込まれるStockhausら, 1987, 1989に記載されている)の調節領域などがあるが、これらに限るわけではない。
【0097】
本発明の遺伝子コンストラクトは、プロモーターに作動的に連結されている遺伝子の発現を植物のさまざまな部分の至るところで、植物発生のあらゆる段階において継続的に指示する構成的プロモーターも含みうる。構成的プロモーターの限定でない例は、CaMV 35S転写産物に関連するものである(例えば、引用により本明細書に組み込まれるOdellら, 1985, Nature, 313:810-812)。
【0098】
プラストシアニン調節領域を含む配列の一例は、配列番号58のPDIシグナルペプチドをコードする下線付き配列の5'側にある配列である。調節要素または調節領域は、それが作動的に連結しているヌクレオチド配列の翻訳を強化することができ、ここで、ヌクレオチド配列はタンパク質またはポリペプチドをコードしうる。調節領域のもう一つの例は、ササゲモザイクウイルス(CPMV)の非翻訳領域に由来するものであり、これは、それが作動的に連結しているヌクレオチド配列を優先的に翻訳するために使用することができる。このCPMV調節領域は、高翻訳性CMPV系に利用されている(CPMV-HT;例えばSainsburyら, 2008, Plant Physiology 148:1212-1218;Sainsburyら, 2008 Plant Biotechnology Journal 6:82-92参照;どちらの文献も引用により本明細書に組み込まれる)。
【0099】
したがって本発明の一態様は、キメラインフルエンザHAをコードする配列に作動的に連結された調節領域を含む核酸を提供する。調節領域はプラストシアニン調節要素であることができ、キメラインフルエンザHAは、H5/Indo、H1/Bri、H3/Bri、H1/NC、B/Floインフルエンザ型、亜型または株に由来するサブドメインを含むことができる。プラストシアニン調節要素とキメラインフルエンザHAとを含む核酸配列は、本明細書においては、配列番号63および64によって例示される。35S調節要素とキメラインフルエンザHAとを含む核酸配列は、本明細書においては、配列番号68、69および71〜75によって例示される。
【0100】
もう一つの態様において、本発明は、CPMV調節領域と、H5/Indo、H1/Bri、H3/Bri、H1/NC、B/Floインフルエンザ型、亜型または株由来のサブドメインを含むキメラインフルエンザHAとを含む核酸を提供する。CPMP調節要素とキメラHAとを含む核酸配列は、本明細書においては、配列番号66〜69および71〜75によって例示される。
【0101】
植物が生産したキメラインフルエンザVLPは形質膜から出芽し、キメラVLPの脂質組成は、それらが生産される植物細胞または植物組織タイプのそれを反映する。本発明に従って生産されるVLPは、植物由来脂質との複合体を形成した、2つまたはそれ以上のインフルエンザ型または亜型のキメラHAを含む。植物脂質は特異的免疫細胞を刺激し、誘導される免疫応答を強化することができる。
【0102】
PC(ホスファチジルコリン)およびPE(ホスファチジルエタノールアミン)などの植物脂質は、グリコスフィンゴリピドと同様に、哺乳動物免疫細胞、例えば樹状細胞やマクロファージのような抗原提示細胞(APC)ならびに胸腺および肝臓におけるBおよびTリンパ球を含む他の細胞が発現するCD1分子に結合することができる(Tsuji M, 2006 Cell Mol Life Sci 63:1889-98に総説がある)。CD1分子はクラスIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に構造が類似しており、それらの役割はNKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)に糖脂質抗原を提示することである。活性化されると、NKT細胞は、NK細胞や樹状細胞などの先天免疫細胞を活性化し、抗体産生B細胞およびT細胞のような適応免疫細胞も活性化する。
【0103】
形質膜由来エンベロープなどの脂質二重層との複合体を形成したインフルエンザVLPに提示されるフィトステロールは、有利なワクチン組成物になりうる。理論に束縛されることは望まないが、形質膜由来エンベロープなどの脂質二重層との複合体を形成した、植物が作ったVLPは、キメラHAを含むものを含めて、他の発現系において作られたVLPよりも強い免疫反応を誘導することができ、生または弱毒全ウイルスワクチンによって誘導される免疫反応と類似しうる。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、植物由来脂質二重層との複合体を形成したキメラHAを含むVLPを提供する。一部の実施形態において、植物由来脂質二重層は、VLPのエンベロープを含みうる。
【0105】
植物内において生産されたVLPは、植物特異的N-グリカンを含むキメラHAを含みうる。したがって本発明は、植物特異的Nグリカンを有するキメラHAを含むVLPも提供する。
【0106】
さらにまた、植物におけるN-グリカンの修飾は知られており(例えば引用により本明細書に組み込まれるWO2008/151440参照)、修飾されたN-グリカンを有するキメラHAを生産することもできる。修飾された糖鎖付加パターンを含むキメラHA、例えばフコシル化、キシロシル化、またはフコシル化とキシロシル化の両方が低下したN-グリカンを有するキメラHAを得るか、タンパク質がフコシル化、キシロシル化、またはその両方を欠き、かつ増加したガラクトシル化を含む、修飾された糖鎖付加パターンを有するキメラHAを得ることができる。さらにまた、翻訳後修飾の調整、例えば末端ガラクトースの付加は、野生型植物が発現するキメラHAと比較して、発現したキメラHAのフコシル化およびキシロキシル化の低下をもたらしうる。
【0107】
例えば、これを限定とみなしてはならないが、修飾された糖鎖付加パターンを有するキメラHAの合成は、目的のタンパク質を、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、例えば哺乳動物GalTまたはヒトGalT(ただし、これらに限るわけではなく、他の供給源に由来するGalTも使用することができる)をコードするヌクレオチド配列と一緒に共発現させることによって達成することができる。GalTの触媒ドメインを、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GNT1)のCTSドメイン(すなわち、細胞質テール、膜貫通ドメイン、ステム領域)に融合して、GNT1-GalTハイブリッド酵素を作製することもでき、そのハイブリッド酵素をHAと共発現させることができる。HAは、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)、例えば哺乳動物GnT-IIIまたはヒトGnT-III(ただし、これらに限るわけではなく、他の供給源に由来するGnT-IIIも使用することができる)をコードするヌクレオチド配列と一緒に共発現させることもできる。さらに、GnT-IIIに融合されたGNT1のCTSを含むGNT1-GnT-IIIハイブリッド酵素も使用することができる。
【0108】
したがって本発明は、修飾N-グリカンを有するキメラHAを含むキメラVLPも包含する。
【0109】
理論に束縛されることは望まないが、キメラHA上の植物N-グリカンの存在は、抗原提示細胞によるHAの結合を促進することによって、免疫応答を刺激しうる。植物Nグリカンを用いる免疫応答の刺激は、Saint-Jore-Dupasらによって提唱されている(Trends Biotechnol 25:317-23, 2007)。さらにまた、植物由来脂質層との複合体を形成すると、VLPのコンフォメーションは、抗原の提示にとって有利になり、VLPのアジュバント効果を強化しうる。
【0110】
「調節領域」、「調節要素」または「プロモーター」とは、典型的には(常にそうであるわけではないが)遺伝子のタンパク質コード領域の上流にある核酸の一部を意味し、DNAまたはRNAのどちらか一方、またはDNAとRNAの両方から構成されうる。調節領域が活性であり、目的の遺伝子と作動可能な関係にあるか、作動的に連結されている場合、これは、目的の遺伝子の発現をもたらしうる。調節要素は、器官特異性を媒介する能力または発生段階依存的もしくは一時的な遺伝子活性化(developmental or temporal gene activation)を制御する能力を有しうる。「調節領域」には、プロモーター要素、基礎プロモーター活性を示すコアプロモーター要素、外部からの刺激に応答する誘導性の要素、負の調節要素または転写エンハンサーなどのプロモーター活性を媒介する要素が含まれる。本明細書にいう「調節領域」には、転写後に活性である要素、例えば、翻訳および転写エンハンサー、翻訳および転写リプレッサー、上流活性化配列、およびmRNA不安定性決定因子(mRNA instability determinant)などといった、遺伝子発現を調整する調節要素も包含される。これら後者の要素のいくつかは、コード領域に対して近位に位置しうる。
【0111】
本明細書に関して、用語「調節要素」または「調節領域」は、典型的には、通常は(常にそうであるわけではないが)構造遺伝子のコード配列の上流(5'側)にあって、ある特定部位において転写が始まるように、必要なRNAポリメラーゼおよび/または他の因子の認識をもたらす、コード領域の発現を制御するDNAの配列を指す。しかし、イントロン内または配列の3'側に位置する他のヌクレオチド配列も、目的のコード配列の発現の調節に貢献しうることは理解すべきである。特定部位における開始が保証されるようにRNAポリメラーゼまたは他の転写因子の認識をもたらす調節要素の一例は、プロモーター要素である。全てではないがほとんどの真核生物プロモーター要素は、通常は転写開始部位の約25塩基対上流に位置するアデノシンおよびチミジンヌクレオチド塩基対から構成される保存された核酸配列であるTATAボックスを含有する。プロモーター要素は、転写の開始を担う基礎プロモーター要素と、遺伝子発現を調整する他の調節要素(上に列挙したもの)を含む。
【0112】
調節領域には、発生段階依存的に調節される(developmentally regulated)もの、誘導性であるもの、または構成的であるものを含む、いくつかのタイプがある。発生段階依存的に調節される、またはその制御下にある遺伝子の差次的発現を制御する、調節領域は、一定の器官内またはある器官の一定組織内において、その器官または組織の発生中の特別な時点で活性化される。しかし、発生段階依存的に調節される調節領域の一部は、特別な発生段階において一定器官または一定組織内で優先的に活性であり、その植物内の他の器官または組織においては、それらが同様に発生段階依存的に調節される形で活性であることも、基礎レベルであることもありうる。組織特異的調節領域の例、例えば種子特異的(see-specific)調節領域の例には、ナピン(napin)プロモーターおよびクルシフェリンプロモーターが含まれる(Raskら, 1998, J. Plant Physiol. 152:595-599;Bilodeauら, 1994, Plant Cell 14:125-130)。葉特異的プロモーターの例にはプラストシアニンプロモーターが含まれる(例えば配列番号58;引用により本明細書に組み込まれるUS7,125,978参照)。
【0113】
誘導性調節領域は、誘導物質に応答して、1つ以上のDNA配列または遺伝子の転写を、直接的または間接的に活性化する能力を有するものである。誘導物質が存在しなければ、そのDNA配列または遺伝子は転写されないであろう。典型的には、誘導性調節領域に特異的に結合して転写を活性化するタンパク質因子が、不活性型で存在し、それが次に誘導物質により、直接的または間接的に、活性型に変換される。しかしタンパク質因子が存在しない場合もある。誘導物質は、タンパク質、代謝産物、成長調節物質、除草剤またはフェノール系化合物などの化学的作用因子であるか、熱、寒さ、塩、または毒性元素によって直接的に課される生理学的ストレス、またはウイルスなどの病原体または病因物質の作用によって間接的に課せられる生理学的ストレスであることができる。誘導性調節領域を含有する植物細胞は、その細胞または植物に誘導物質を、例えば噴霧、散水、加熱などの方法で、外部から適用することによって、誘導物質にばく露することができる。誘導性調節要素は、植物遺伝子または非植物遺伝子に由来しうる(例えばGatz, C.およびLenk, I.R.P., 1998, Trends Plant Sci. 3, 352-358;この文献は引用により本明細書に組み込まれ)。考えうる誘導性プロモーターの例には、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatz, C.,1997, Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 48, 89-108;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)、ステロイド誘導性プロモーター(Aoyama, T.およびChua, N.H.,1997, Plant J. 2, 397-404;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)およびエタノール誘導性プロモーター(Salter, M.G.ら, 1998, Plant Journal 16, 127-132;Caddick, M.X.ら, 1998, Nature Biotech. 16, 177-180;これらの文献は引用により本明細書に組み込まれる)、サイトカイン誘導性IB6およびCKI1遺伝子(Brandstatter, I.およびKieber, J.J.,1998, Plant Cell 10, 1009-1019;Kakimoto, T., 1996, Science 274, 982-985;これらの文献は引用により本明細書に組み込まれる)およびオーキシン誘導性プロモーターDR5(Ulmasov, T.,ら, 1997, Plant Cell 9, 1963-1971;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)などがあるが、これらに限るわけではない。
【0114】
構成的調節領域は、植物のさまざまな部分の至るところにおいて、植物発生のあらゆる段階で継続的に遺伝子の発現を指示する。既知の構成的調節要素の例には、CaMV 35S転写産物(Odellら, 1985, Nature, 313:810-812)、イネのアクチン1(Zhangら, 1991, Plant Cell, 3:1155-1165)、アクチン2(Anら, 1996, Plant J., 10:107-121)またはtms2(U.S.5,428,147;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)、およびトリオースリン酸イソメラーゼ1(Xuら, 1994, Plant Physiol. 106:459-467)遺伝子、トウモロコシユビキチン1遺伝子(Cornejoら, 1993, Plant Mol. Biol. 29:637-646)、Arabidopsisユビキチン1および6遺伝子(Holtorfら, 1995, Plant Mol. Biol. 29:637-646)、およびタバコ翻訳開始因子4A遺伝子(Mandelら, 1995 Plant Mol. Biol. 29:995-1004)に関連するプロモーターなどがある。本明細書において使用する用語「構成的」は、必ずしも、構成的調節領域の制御下にある遺伝子が全ての細胞タイプにおいて同じレベルで発現することを示すわけではなく、たとえ存在量の変動がしばしば観察されるとしても、その遺伝子が幅広い範囲の細胞タイプにおいて発現することを意味する。構成的調節要素は、それらが作動的に連結されているヌクレオチド配列の転写および/または翻訳をさらに強化するために、他の配列と組み合わせることができる。例えばCPMV-HT系はササゲモザイクウイルス(CPMV)の非翻訳領域に由来し、関連するコード配列の強化された翻訳を示す。
【0115】
「ネイティブ」とは、その核酸またはアミノ酸配列が天然であること、または「野生型」であることを意味する。
【0116】
「作動的に連結された」とは、特定の配列、例えば調節要素と目的のコード配列とが直接的または間接的に相互作用して、遺伝子発現の媒介または調整などの意図した機能を果たすことを意味する。作動的に連結された配列の相互作用は、例えば、作動的に連結された配列と相互作用するタンパク質によって媒介されうる。
【0117】
本発明の1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列は、本発明のヌクレオチド配列またはコンストラクトまたはベクターによって形質転換された任意の適切な植物宿主において、発現することができる。適切な宿主の例として、アルファルファ、セイヨウアブラナ、Brassica属、トウモロコシ、Nicotiana属、アルファルファ、ジャガイモ、ニンジン(ginseng)、エンドウマメ、オートムギ、イネ、ダイズ、コムギ、オオムギ、ヒマワリ、ワタなどを含む農業作物が挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0118】
本発明の1つ以上のキメラ遺伝子コンストラクトはさらに3'非翻訳領域を含むことができる。3'非翻訳領域とは、遺伝子のうち、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を達成する能力を有する他の任意の調節シグナルを含有するDNAセグメントを含む部分を指す。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3'末端にポリアデニル酸トラックの付加を達成することを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは、通例、標準形(canonical form)5'AATAAA-3'に対する相同性の存在によって認識されるが、変異も珍しくはない。
【0119】
適切な3'領域の限定でない例は、ノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子などのAgrobacterium腫瘍誘導(Ti)プラスミド遺伝子や、ダイズ貯蔵タンパク質遺伝子およびリブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子(ssRUBisCO;US4,962,028;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)などの植物遺伝子の、ポリアデニル化シグナルを含有する3'転写非翻訳領域、US7,125,978(この文献は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているプラストシアニン発現を調節するために使用されるプロモーターである。
【0120】
本発明のキメラ遺伝子コンストラクトの1つ以上は、さらなるエンハンサー(必要に応じて翻訳エンハンサーまたは転写エンハンサー)を含むことができる。エンハンサーは、転写される配列に対して5'側または3'側に位置することができる。エンハンサー領域は当業者にはよく知られており、ATG開始コドン、隣接配列などを含みうる。開始コドンが存在する場合、それは、転写された配列の正しい翻訳に備えて、コード配列の読み枠と同じ位相(「インフレーム(in frame)」)でありううる。
【0121】
形質転換された植物細胞の同定を助けるために、本発明のコンストラクトは、植物選択可能マーカーを含むように、さらに操作することができる。有用な選択可能マーカーとして、抗生物質、例えばゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、または除草剤、例えばホスフィノトリシン(phosphinothrycin)、グリホサート、クロルスルフロン(chlorosulfuron)などといった、化学薬品に対する耐性を与える酵素が挙げられる。同様に、色の変化(例えばGUS(β-グルクロニダーゼ))または発光(例えばルシフェラーゼまたはGFP)によって同定することができる化合物の生成をもたらす酵素も使用することができる。
【0122】
本発明のキメラ遺伝子コンストラクトを含有するトランスジェニック植物、植物細胞、または種子も、本発明の一部と見なされる。植物細胞から全植物体を再生する方法も当技術分野では知られている。一般的には、形質転換植物細胞が、抗生物質などの選択剤を含有しうる適当な培地において培養され、ここでは、形質転換植物細胞の同定が容易になるように、選択可能マーカーが使用される。カルスが形成されたら、既知の方法に従って適当な植物ホルモンを使用することにより、シュート形成を促し、そのシュートを発根培地に移して植物を再生させることができる。次に、それらの植物を使って、種子から、または栄養繁殖技法を使って、反復的発生(repetitive generation)を樹立することができる。トランスジェニック植物は、組織培養物を使用せずに作製することもできる。
【0123】
本発明によるVLP生産のための組換えキメラHAまたはHA0をコードする核酸を含むキメラ遺伝子コンストラクトを含有するトランスジェニック植物、樹木、酵母、細菌、真菌、昆虫および動物細胞も、本発明の一部と見なされる。
【0124】
本発明の調節要素は、形質転換または一過性発現に適したある範囲の宿主生物内における発現のために、目的のコード領域と組み合わせることもできる。そのような生物には、植物、単子葉植物および双子葉植物の両方、例えば限定するわけではないが、トウモロコシ、穀物用植物、コムギ、オオムギ、オートムギ、Nicotiana属、Brassica属、ダイズ、マメ、エンドウ、アルファルファ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、およびArabidopsisなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0125】
これらの生物の安定形質転換および再生のための方法は当技術分野では確立されており、当業者には知られている。形質転換植物および再生植物を得る方法は、本発明にとっては決定的な問題ではない。
【0126】
「形質転換」とは、遺伝子型もしくは表現型またはその両方によって明示される遺伝情報(ヌクレオチド配列)の種間移動を意味する。キメラコンストラクトから宿主への遺伝情報の種間移動は、遺伝性であって遺伝情報の移動が安定であると見なされる場合も、移動が一過性であって遺伝情報の移動が遺伝性でない場合もある。
【0127】
「植物質(plant matter)」という用語は、植物に由来する任意の物質を意味する。植物質は、植物全体、組織、細胞、またはその任意の画分を含みうる。さらに、植物質は、細胞内植物構成要素、細胞外植物構成要素、植物の液状もしくは固形抽出物、またはそれらの組合せを含みうる。さらに、植物質は、植物の葉、茎、果実、根またはそれらの組合せから得られる植物、植物細胞、組織、液状抽出物、またはそれらの組合せを含みうる。植物質は、何の加工ステップにも付されていない植物またはその一部を含みうる。植物の一部は植物質を含みうる。しかし、植物材料を後述する最小限の加工ステップに付すか、より激しい加工、例えば当技術分野において広く知られている技法(例えば限定するわけではないが、クロマトグラフィー、電気泳動など)を使った部分的または実質的タンパク質精製などに付すこともできると考えられる。
【0128】
「最小限の加工」という用語は、目的のタンパク質を含む植物質、例えば植物またはその一部が部分精製されて、植物抽出物、ホモジネート、植物ホモジネートのフラクションなど(すなわち最小限に加工されたもの)を与えることを意味する。部分精製は、限定するわけではないが、植物細胞構造を破壊し、それによって可溶性植物構成要素と不溶性植物構成要素とを含む組成物を生成させることを含むことができ、それらの構成要素は、例えば限定するわけではないが遠心分離、濾過またはそれらの組合せなどによって分離することができる。これに関連して、葉または他の組織の細胞外間隙内に分泌されたタンパク質は、減圧抽出または遠心抽出を使って容易に取得するか、組織をローラーの通過または粉砕などにより加圧下で抽出して、細胞外間隙内からタンパク質を絞り出すまたは遊離させることができる。最小限の加工は可溶性タンパク質の粗抽出物の調製も含みうる。というのも、これらの調製物は、二次植物産物による汚染が無視できるほどわずかだからである。さらに、最小限の加工は、葉からの可溶性タンパク質の水性抽出と、それに続く任意の適切な塩による沈殿を含みうる。他の方法として、抽出物の直接使用が可能になるように、大規模解離(maceration)および果汁抽出を挙げることができる。
【0129】
植物材料または植物組織の形態にある植物質は対象に経口送達することができる。植物質は、栄養補助食品(dietary supplement)の一部として、他の食品と共に、またはカプセル化して投与することができる。植物質または植物組織は、必要に応じて、嗜好性を改善または向上させるために濃縮するか、または他の材料、成分もしくは医薬賦形剤と一緒に与えることもできる。
【0130】
本発明のVLPを投与することができる対象またはターゲット生物の例には、ヒト、霊長類、トリ、水鳥、渡り鳥、ウズラ、カモ、ガチョウ、家禽、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ウマ科動物(equine)、ウマ、ラクダ、イヌ科動物、イヌ、ネコ科動物、ネコ、トラ、ヒョウ、ジャコウネコ、ミンク、ムナジロテン、フェレット、家庭用ペット、家畜、ウサギ、マウス、ラット、モルモットまたは他の齧歯類動物、アザラシ、クジラなどが含まれるが、これらに限るわけではない。上述のターゲット生物は例示であり、本発明の応用および用途を限定するものとみなしてはならない。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態によるキメラHAを含む植物、または本発明のいくつかの実施形態によるキメラHAを含むVLPを発現する植物は、必要および状況に応じてさまざまな方法で、対象またはターゲット生物に投与することができると考えられる。例えば、植物から得られたキメラHAは、その使用に先だって、粗製物、部分精製物、または精製物の形で抽出することができる。キメラHAが少なくとも部分精製される場合は、それを食用植物または非食用植物において生産することができる。さらにまた、キメラHAが経口投与される場合は、植物組織を収穫し、対象に直接供給するか、収穫された組織を供給に先だって乾燥するか、前もって収穫を行うことなく、動物に植物を食ませることができる。収穫された植物組織を、動物飼料内の食品補助剤(food sapplement)として提供することも、本発明の範囲内にあるとみなされる。植物組織をほとんど加工せずにまたはさらなる加工を行わずに動物に供給する場合、投与される植物組織は食用であることが好ましい。
【0132】
植物における導入遺伝子の発現の制限には、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)が関与している場合があり、導入遺伝子mRNAの特異的分解に対抗するために、ジャガイモウイルスY由来のサイレンシングのサプレッサー(HcPro)の共発現を使用することができる(Brignetiら, 1998)。これに代わるサイレンシングのサプレッサーも当技術分野ではよく知られていて、本明細書において述べるように使用することができ(Chibaら, 2006, Virology 346:7-14;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)、例えば限定するわけではないが、TEV-p1/HC-Pro(タバコエッチ(etch)ウイルス-p1/HC-Pro)、BYV-p21、トマトブッシースタント(bushy stunt)ウイルスのp19(TBSV p19)、トマトクリンクル(crinkle)ウイルスのキャプシドタンパク質(TCV-CP)、キュウリモザイクウイルスの2b(CMV-2b)、ジャガイモXウイルスのp25(PVX-p25)、ジャガイモウイルスMのp11(PVM-p11)、ジャガイモウイルスSのp11(PVS-p11)、ブルーベリースコーチ(scorch)ウイルスのp16(BScV-p16)、柑橘トリステザウイルスのp23(CTV-p23)、ブドウリーフロール病関連ウイルス2のp24(GLRaV-2 p24)、ブドウウイルスAのp10(GVA-p10)、ブドウウイルスBのp14(GVB-p14)、ハナウド(Heracleum)潜在ウイルスのp10(HLV-p10)、またはニンニク普通潜在ウイルス(Garlic common latent virus)のp16(GCLV-p16)などがある。したがって、植物内における高レベルのタンパク質生産をさらに確実にするために、サイレンシングのサプレッサー、例えば限定するわけではないが、HcPro、TEV-p1/HC-Pro、BYV-p21、TBSV p19、TCV-CP、CMV-2b、PVX-p25、PVM-p11、PVS-p11、BScV-p16、CTV-p23、GLRaV-2 p24、GBV-p14、HLV-p10、GCLV-p16またはGVA-p10などを、目的のタンパク質をコードする核酸配列と一緒に共発現させることができる。
【0133】
さらにまた、本明細書に記載するように生産されたVLPは、ノイラミニダーゼ(NA)を含まない。しかし、HAとNAを含むVLPを所望するのであれば、NAをHAと共発現させることができる。
【0134】
したがって本発明はさらに、安定発現系または一過性発現系での使用に適したキメラHA配列を含む適切なベクターを包含する。遺伝情報は、1つまたはそれ以上のコンストラクトに入れて提供することもできる。例えば、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を一つのコンストラクトに入れて導入し、目的のタンパク質の糖鎖付加を修飾するタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を、別個のコンストラクトを使って導入することができる。次に、一つの植物内において、これらのヌクレオチド配列を共発現させることができる。しかし、目的のタンパク質と目的のタンパク質の糖鎖付加プロファイルを修飾するタンパク質との両方をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトを使用することもできる。この場合、ヌクレオチド配列は、プロモーターまたは調節領域に作動的に連結された目的のタンパク質をコードする第1核酸配列を含む第1配列と、目的のタンパク質の糖鎖付加プロファイルを修飾するタンパク質をコードする第2核酸配列を含む第2配列とを含み、第2配列はプロモーターまたは調節領域に作動可能に連結されているであろう。
【0135】
「共発現する」とは、2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列が、その植物内においてほぼ同時に、かつその植物の同じ組織内において発現することを意味する。ただしヌクレオチド配列は正確に同時に発現する必要はない。もっと正確に言えば、2つ以上のヌクレオチド配列は、コードされている産物が相互作用する機会を持つような形で発現する。例えば、目的のタンパク質の糖鎖付加を修飾するタンパク質は、目的のタンパク質が発現する期間の前またはその期間中に、目的のタンパク質の糖鎖付加の修飾が起こるように発現することができる。2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列は、両方の配列が発現する条件下でほぼ同時にそれら2つ以上の配列が植物内に導入される一過性発現系を使って、共発現させることができる。あるいは、ヌクレオチド配列の一つ(例えば目的のタンパク質の糖鎖付加プロファイルを修飾するタンパク質をコードする配列)を含むプラットフォーム植物を、目的のタンパク質をコードするさらなる配列で、一過性にまたは安定な形で形質転換することもできる。この場合、目的のタンパク質の糖鎖付加プロファイルを修飾するタンパク質をコードする配列を、所望の発生段階中に所望の組織内で発現させるか、その発現を、誘導性プロモーターを使って誘導することができ、ヌクレオチド配列が共発現することを保証するために、目的のタンパク質をコードするさらなる配列を、類似する条件下に、同じ組織において発現させることができる。
【0136】
本発明のコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、浸潤(infiltration)などを使って植物細胞中に導入することができる。そのような技法を概観するには、例えばWeissbachおよびWeissbach「Methods for Plant Molecular Biology」(Academy Press, ニューヨーク)VIII, pp.421-463(1988);GeiersonおよびCorey「Plant Molecular Biology」第2版(1988);ならびにMikiおよびIyer「Fundamentals of Gene Transfer in Plant」(DT. Dennis, DH Turpin, DD Lefebrve, DB Layzell編「Plant Metabolism」第2版(Addison-Wesley, Langmans Ltd.、ロンドン)のpp.561-579 (1997))を参照されたい。他の方法には、直接DNA取り込み、リポソームの使用、エレクトロポレーション、例えばプロトプラストを使用するもの、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル(microprojectile)またはウィスカー(whisker)、および減圧浸潤(vacuum infiltration)などがある。例えばBilangら(Gene 100:247-250 (1991))、Scheidら(Mol. Gen. Genet. 228:104-112, 1991)、Guercheら(Plant Science 52:111-116, 1987)、Neuhauseら(Theor. Appl Genet. 75:30-36, 1987)、Kleinら, Nature 327:70-73 (1987);Howellら(Science 208:1265, 1980)、Horschら(Science 227:1229-1231, 1985)、DeBlockら(Plant Physiology 91:694-701, 1989)、LiuおよびLomonossoff(J. Virol Meth, 105:343-348, 2002)、米国特許第4,945,050号;同第5,036,006号;同第5,100,792号;同第6,403,865号;同第5,625,136号を参照されたい(これらの文献は全て引用により本明細書に組み込まれる)。
【0137】
本発明のコンストラクトを発現させるために一過性発現法を使用することができる(LiuおよびLomonossoff, 2002, Journal of Virological Methods, 105:343-348参照;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)。あるいは、Kapilaら 1997 Plant Science 122:101-108(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているような減圧ベースの一過性発現法を使用することもできる。これらの方法として、例えばアグロイノキュレーション(Agro-inoculation)またはアグロインフィルトレーション(Agro-infiltration)の方法を挙げることができるが、これらに限るわけではなく、他の一過性の方法を上述のように使用することもできる。アグロイノキュレーションまたはアグロインフィルトレーションのいずれかにより、所望の核酸を含むアグロバクテリアは、組織、例えば葉、植物の地上部分(幹、葉および花を含む)、植物の他の部分(幹、根、花)、または植物全体の細胞間隙に侵入する。表皮を横切った後、アグロバクテリウムは感染し、細胞内にt-DNAコピーを導入する。t-DNAはエピソームとして転写され、mRNAが翻訳されて、感染細胞における目的のタンパク質の生産をもたらすが、核内へのt-DNAの通過は一過性である。
【0138】
本発明が提供するキメラHAを含むVLPは、既存のインフルエンザワクチンを補ってそれをより有効にするために、または必要な投与量を低減するために、既存のインフルエンザワクチンと併用することができる。当業者には知られているであろうように、ワクチンは1つまたはそれ以上のインフルエンザウイルスを対象とすることができる。適切なワクチンの例には、Sanofi-Pasteur、ID Biomedical、Merial、Sinovac、Chiron、Roche、MedImmune、GlaxoSmithKline、Novartis、Sanofi-Aventis、Serono、Shire Pharmaceuticalsなどから販売されているものがあるが、これらに限るわけではない。
【0139】
所望であれば、当業者には知られているであろうように、本発明のVLPを適切なアジュバントと混合してもよい。さらにまた、VLPは、上に記載したターゲット生物を処置するための有効量のVLPを含むワクチン組成物に入れて使用することもできる。さらにまた、本発明に従って生産されるVLPは、異なるインフルエンザタンパク質、例えばノイラミニダーゼ(NA)を使って得られるVLPと組み合わせることもできる。
【0140】
したがって本発明は、動物またはターゲット生物においてインフルエンザウイルス感染に対する免疫を誘導するための方法であって、1つまたはそれ以上のVLPを含む有効量のワクチンを投与することを含む方法を提供する。ワクチンは、経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、または皮下投与することができる。
【0141】
本発明のさまざまな実施形態による組成物は、2つ以上のインフルエンザ株または亜型のVLPを含みうる。「2つ以上」とは、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の株または亜型を指す。表現される株または亜型は、単一の亜型(例えば全てH1N1または全てH5N1)のものであるか、亜型の組合せであることができる。例示的亜型および株として、H5/Indo、H1/Bri、H1/NC、H3/Bri、B/Floが挙げられる。株および亜型の組合せの選択は、インフルエンザにばく露される可能性が高い対象の地理的地域、免疫されるヒト集団に対する動物種の近さ(例えば水鳥、ブタなどの農業動物の種など)およびそれらが保因するか、ばく露されるか、またはばく露される可能性が高い株、亜型または株内におかる抗原ドリフトの予測、またはこれらの因子の組合せに依存しうる。過去に使用された組合せの例は、世界保健機関(WHO)によって維持されているデータベースに見いだすことができる(URL:who.int/csr/dieease/influenza/vaccine recommendations1/en参照)。
【0142】
2つ以上のVLPを個別に発現させてから、精製または半精製VLPを組合せてもよい。あるいは、同じ宿主中、例えば植物、植物の一部、または植物細胞中で、VLPを共発現させてもよい。VLPは、所望の比で、例えばほぼ等価な比で、組合せまたは生産するか、ある亜型または株が組成物中のVLPの大半を構成するような形で組み合わせることができる。
【0143】
したがって本発明は、2つ以上の株または亜型のVLPを含む組成物を提供する。
【0144】
包装材料とキメラHAを含むVLPを含む組成物とを含む製造物も提供する。組成物は、生理学上または医薬上許容される賦形剤を含み、包装材料は組成物の活性成分(例えばVLP)を示すラベルを含みうる。
【0145】
本明細書に記載するキメラHAをコードする核酸を含む組成物を、キメラHAまたはキメラHAを含むVLPの生産にその核酸を使用するための指示書と一緒に含むキットも提供する。このキットは、キメラHAを含むVLPの生産に役立ち、指示書は、例えば植物または植物細胞における核酸の発現に関する情報、植物または植物組織からVLPを収穫し取得するための指示などを含みうる。
【0146】
もう一つの実施形態では、キメラHAを含むVLPをその使用に関する指示書と共に含む、医薬品を調製するためのキットが提供される。指示書は、投与対象において治療的または予防的免疫応答を誘導するのに有用な医薬品を調製するための一連のステップを含みうる。このキットはさらに、投薬濃度、投薬間隔、好ましい投与法などに関する指示書も含みうる。
【0147】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく例示する。ただし、これらの実施例は例示を目的とするに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するために使用されてはならないと理解すべきである。
【0148】
本明細書に記載する配列を以下に要約する。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【実施例】
【0149】
[方法と材料]
1.HA発現カセットのアセンブリ
A−pCAMBIAPlasto
全ての操作は、SambrookおよびRussell(2001;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)の一般的分子生物学プロトコールを使って行った。表1に、発現カセットのアセンブリに使用したオリゴヌクレオチドプライマーを示す。最初のクローニングステップは、アルファルファ・プラストシアニン遺伝子の上流および下流調節要素を含有するレセプタープラスミドをアセンブリすることであった。プラストシアニンプロモーターおよび5'UTR配列をアルファルファゲノムDNAからオリゴヌクレオチドプライマーXmaI-pPlas.c(配列番号1)およびSacI-ATG-pPlas.r(配列番号2)を使って増幅した。その結果生じた増幅産物をXmaIおよびSacIで消化し、先に同じ酵素で消化しておいたpCAMBIA2300(Cambia、オーストラリア・キャンベラ)中にライゲーションすることにより、pCAMBIApromoPlastoを作製した。同様に、プライマー:SacI-PlasTer.c(配列番号3)およびEcoRI-PlasTer.r(配列番号4)を使って、プラストシアニン遺伝子の3'UTR配列およびターミネーターをアルファルファゲノムDNAから増幅し、その産物をSacIおよびEcoRIで消化してから、pCAMBIApromoPlastoの同じ部位に挿入することにより、pCAMBIAPlastoを作製した。
【0150】
B−Plasto-ネイティブSP-H5 A/Indonesia/5/05(コンストラクト番号660)
インフルエンザ株A/Indonesia/5/05(H5N1;アクセッション番号LANL ISDN125873)由来のヘマグルチニンをコードするフラグメントは、Epoch Biolabs(米国テキサス州シュガーランド)によって合成された。作製されたフラグメントは、開始ATGのすぐ上流にHindIIIが隣接し、停止(TAA)コドンのすぐ下流にSacI部位が隣接する、ネイティブシグナルペプチドを含む全H5コード領域を含有しており、これを(配列番号52;図17)に示す。H5コード領域を、Darveauら(1995)に記載されているPCRベースのライゲーション法により、プラストシアニンベースの発現カセット中にクローニングした。簡単に述べると、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびSpHA(Ind)-Plasto.r(配列番号6)を使用し、pCAMBIApromoPlastoをテンプレートにして、第1PCR増幅産物を得た。並行して、プライマーPlasto-SpHA(配列番号7)およびHA(Ind)-Sac.r(配列番号8)を使用し、H5コードフラグメント(配列番号52;図17)をテンプレートにして、第2増幅を行った。両反応から得た増幅産物を一つに混合し、その混合物を、Plasto-443c(配列番号5)およびHA(Ind)-Sac.r(配列番号8)をプライマーとして使用する第3反応(アセンブリング反応)のテンプレートとした。その結果生じたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)およびSacI(フラグメントの3'末端)で消化し、先に同じ酵素で消化しておいたpCAMBIAPlasto中にクローニングした。その結果生じたプラスミドを660と名付け、図18(配列番号53)に示す。
【0151】
C−Plasto-PDI SP-H1 A/New Caledonia/20/99(コンストラクト番号540)
インフルエンザ株A/New Caledonia/20/99(H1N1)のH1遺伝子のオープンリーディングフレームは2つのフラグメントとして合成された(Plant Biotechnology Institute、National Research Council、カナダ・サスカトゥーン)。合成された第1フラグメントは、5'末端のシグナルペプチドコード配列と3'末端の膜貫通ドメインコード配列とを欠く野生型H1コード配列(GenBankアクセッション番号AY289929;配列番号54;図19)に相当する。フラグメントの5'末端は、PDISP(BglII制限部位を含む)をコードする最後のヌクレオチドから構成され、フラグメントの3'端にある停止コドンのすぐ下流に二重SacI/StuI部位を付加することで、配列番号55(図20)が得られた。KpnI部位から停止コドンまでのH1タンパク質のC端(膜貫通ドメインと細胞質テールを含む)をコードし、3'側にSacIおよびStuI制限部位が隣接している第2フラグメントも合成された(配列番号56;図21)。
【0152】
第1H1フラグメントをBglIIおよびSacIで消化し、アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)遺伝子のシグナルペプチド(ヌクレオチド32〜103;アクセッション番号Z11499;配列番号57;図22)に融合されたプラストシアニンプロモーターおよび5'UTRを含有するバイナリーベクター(pCAMBIAPlasto)の同じ部位中にクローニングすることにより、プラストシアニン調節要素の下流にあるPDI-H1キメラ遺伝子を得た。プロモーターおよびPDIシグナルペプチドをBglII制限部位まで含有し、SacI部位の下流にプラストシアニンターミネーターを含有するこのプラストシアニンベースのカセットの配列を、配列番号58(図23)に示す。H1コード領域のC端(膜貫通ドメインと細胞質テールをコードする)の付加は、先にKpnIおよびSacIで消化しておいた合成フラグメント(配列番号56;図21)を、H1発現プラスミド中に挿入することによって達成した。その結果生じたコンストラクトを540と名付け、配列番号59(図24)に示す。
【0153】
D−Plasto-ネイティブSP-H1 A/Brisbane/59/07(コンストラクト番号774)
A/Brisbane/59/07由来のH1の発現を駆動する発現カセット番号774を、次のようにアセンブルした。プラストシアニンATGの上流にある最初の84ヌクレオチドに相当してDraIII制限部位で始まるアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が3'側に隣接している全ヘマグルチニンコード配列(ATGから停止コドンまで)を含む合成フラグメントを合成した。この合成フラグメントは停止コドンのすぐ下流にSacI部位も含んだ。
【0154】
この合成フラグメントは、Top Gene Technologies(カナダ・ケベック州モントリオール)によって合成された。合成されたフラグメントを配列番号60(図25)に示す。完全な発現カセットをアセンブルするために、合成フラグメントをDraIIIおよびSacIで消化し、先に同じ酵素で消化しておいたpCAMBIAPlastoにクローニングすることにより、コンストラクト774(配列番号61;図26)を得た。
【0155】
E−CPMV HT-LC C51(コンストラクト番号828)
CPMV-HT発現カセットは、35Sプロモーターを使って、目的のコード配列(位置115および161のATGが突然変異しているササゲモザイクウイルス(CPMV)RNA2由来のヌクレオチド1〜512が5'側に隣接し、CPMV RNA2由来のヌクレオチド3330〜3481(3'UTRに相当)とそれに続くNOSターミネーターが3'側に隣接しているもの)を含むmRNAの発現を制御する。CPMV-HTベースのヘマグルチニン発現カセットのアセンブリにはプラスミドpBD-C5-1LC(Sainsburyら 2008;Plant Biotechnology Journal 6:82-92およびPCT公開WO2007/135480)を使用した。CPMV RNA2の位置115および161にあるATGの突然変異は、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85 (1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法を使って行った。pBD-C5-1LCをテンプレートにして、2つの別々のPCRを行った。第1増幅用のプライマーはpBinPlus.2613c(配列番号9)およびMut-ATG115.r(配列番号10)とした。第2増幅用のプライマーはMut-ATG161.c(配列番号11)およびLC-C5-1.110r(配列番号12)とした。得られた2つのフラグメントを混合し、pBinPlus.2613c(配列番号9)およびLC-C5-1.110r(配列番号12)をプライマーとして用いる第3増幅のためのテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをPacIとApaIで消化し、同じ酵素で消化したpBD-C5-1LCにクローニングした。生成したコンストラクトを828と名付け、図27(配列番号62)に示す。
【0156】
F−H5 A/Indonesia/5/05バックボーン中のH1 A/Brisbane/59/07受容体結合(RB)ドメイン(コンストラクト番号690)
H5 A/Indonesia/5/05中のRBドメインを、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載のPCRベースのライゲーション法を使って、H1 A/Brisbane/59/07のもので置き換えることにより、キメラHAを作製した。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびE1 H1B-E1 H5I.r(配列番号13)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53、図18)をテンプレートにして、H5 A/Indonesia/5/05の天然シグナルペプチド、F'1およびE1ドメインに融合されたプラストシアニンプロモーターのセグメントを増幅した。H1 A/Brisbane/59/07 RBドメインコード配列を含む第2のフラグメントは、プライマーE1 H5N-E1 H1B.c(配列番号14)およびE2 H5I-RB H1B.r(配列番号15)を使用し、コンストラクト番号774(配列番号61;図26)をテンプレートにして増幅した。H5 A/Indonesia/5/05のE2、F'2、F、膜貫通および細胞質ドメインを含む第3のフラグメントは、プライマーRB H1B-E2 H5I.c(配列番号16)およびHA(Ind)-SacI.r(配列番号8)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにして増幅した。次に、増幅産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHA(Ind)-SacI.r(配列番号8)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)のためのテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)およびSacI(停止コドン後)で消化し、先に同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号660(配列番号53;図18)中にクローニングして、コンストラクト番号690(配列番号63)を得た。そのコンストラクトを図28に示す。
【0157】
G−H5 A/Indonesia/5/05バックボーン中のH1 A/Brisbane/59/07エステラーゼおよび受容体結合ドメイン(E1-RB-E2)(コンストラクト番号691)
Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法を使って、H5 A/Indonesia/5/05中のE1-RB-E2ドメインをH1 A/Brisbane/59/07のもので置き換えることにより、キメラHAをアセンブルした。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびE1 H1B-F'1 H5I.r(配列番号17)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにして、H5 A/Indonesia/5/05の天然シグナルペプチドおよびF'1ドメインに融合されたプラストシアニンプロモーターのセグメントを増幅した。並行して、他の2つのフラグメントを増幅した。H1 A/Brisbane/59/07 E1-RB-E2ドメインコード配列を含む第2フラグメントは、プライマーF'1 H5N-E1 H1B.c(配列番号18)およびF'2 H5I-E2 H1B.r(配列番号19)を使用し、コンストラクト番号774(配列番号61;図26)をテンプレートにして増幅した。第3フラグメントについては、プライマーE2 H1B-F'2 H5I.c(配列番号20)およびHA(Ind)-SacI.r(配列番号8)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにして、H5 A/Indonesia/5/05由来のF'2、F、膜貫通および細胞質ドメインを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHA(Ind)-SacI.r(配列番号8)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)のためのテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)およびSacI(停止コドン後)で消化し、先に同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号660(配列番号53;図18)中にクローニングすることにより、コンストラクト番号691(配列番号64)を得た。そのコンストラクトを図29に示す。
【0158】
H−H1 A/New Caledonia/20/99バックボーン中のH5 A/Indonesia/5/05受容体結合(RB)(コンストラクト番号696)
Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法を使って、H1 A/New Caledonia/20/99中のRBドメインをH5 A/Indonesia/5/05のもので置き換えることにより、キメラHAを作製した。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびE1 H5I-E1 H1NC.r(配列番号21)を使用し、コンストラクト番号540(配列番号59;図24)をテンプレートにして、アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのシグナルペプチド(PDISP;アクセッション番号Z11499;配列番号57のヌクレオチド32〜103;図22)、H1 A/New Caledonia/20/99のF'1およびE1ドメインに融合されたプラストシアニンプロモーターのセグメントを増幅した。H5 A/Indonesia/5/05 RBドメインコード配列を含む第2フラグメントは、プライマーE1 H1NC-E1 H5I.c(配列番号22)およびE2 H1NC-RB H5I.r(配列番号23)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにして増幅した。H1 A/New Caledonia/20/99由来のE2、F'2、F、膜貫通および細胞質ドメインを含む第3フラグメントは、プライマーRB H5I-E2 H1NC.c(配列番号24)およびHA-SacI.r(配列番号25)を使用し、コンストラクト番号540(配列番号59;図24)をテンプレートにして増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHA-SacI.r(配列番号25)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)のためのテンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをBglIIおよびSacIで消化し、先に同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号540(配列番号59;図24)中にクローニングすることにより、コンストラクト番号696(配列番号65)を得た。そのコンストラクトを図30に示す。
【0159】
I−CPMV-HT発現カセットにおけるH1 A/Brisbane/59/2007のアセンブリ(コンストラクト番号732)
H1 A/Brisbane/59/2007由来のHAのコード配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。コンストラクト番号774(配列番号61;図26)をテンプレートにしてプライマーApaI-H1B.c(配列番号26)およびStuI-H1B.r(配列番号27)によるPCR増幅を行うことにより、ヘマグルチニンコード配列に制限部位ApaI(ATGのすぐ上流)およびStuI(停止コドンのすぐ下流)を付加した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号732(配列番号66;図31)と名付けた。
【0160】
J−CPMV-HT発現カセットにおけるSpPDI-H1 A/Brisbane/59/2007のアセンブリ(コンストラクト番号733)
次のようにして、アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのシグナルペプチド(PDISP;配列番号57のヌクレオチド32〜103、図22;アクセッション番号Z11499)をコードする配列を、A/Brisbane/59/2007に由来するH1のHA0コード配列に融合し、その結果生じたフラグメントをCPMV-HT中にクローニングした。プライマーSpPDI-H1B.c(配列番号28)およびSacI-H1B.r(配列番号29)を使用し、コンストラクト774(配列番号61;図26)をテンプレートにして、H1コード配列を増幅した。その結果生じたフラグメントは、PDISPをコードする最後のヌクレオチド(BglII制限部位を含む)が5'側に隣接し、SacI制限部位が3'側に隣接しているH1コード配列であった。フラグメントをBglIIおよびSacIで消化し、先に同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号540(配列番号59;図24)中にクローニングした。コンストラクト番号787(配列番号67)と名付けた中間体カセットのコード配列を図32に示す。コンストラクト番号787(配列番号67;図32)をテンプレートにしてプライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびStuI-H1B.r(配列番号27)によるPCR増幅を行うことにより、ヘマグルチニンコード配列に、制限部位ApaI(ATGのすぐ上流)およびStuI(停止コドンのすぐ下流)を付加した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号733(配列番号68;図33)と名付けた。
【0161】
K−CPMV-HT発現カセットにおけるH5 A/Indonesia/5/05バックボーン中のH1 A/Brisbane/59/07受容体結合(RB)ドメインのアセンブリ(コンストラクト番号734)
H5 A/Indonesia/5/05バックボーン中のH1 A/Brisbane/59/07由来のRBドメインからなるキメラHAのコード配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。コンストラクト番号690(配列番号63;図28)をテンプレートにしてプライマーApaI-H5 (A-Indo).1c(配列番号31)およびH5 (A-Indo)-StuI.1707r(配列番号32)によるPCR増幅を行うことにより、制限部位ApaI(ATGのすぐ上流)およびStuI(停止コドンのすぐ下流)を、キメラヘマグルチニンコード配列に付加した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号734(配列番号69;図34)と名付けた。
【0162】
L−CPMV-HT発現カセットにおけるSpPDI-H3 A/Brisbane/10/2007のアセンブリ(コンストラクト番号736)
H3 A/Brisbane/10/2007由来のHA0に融合されたアルファルファPDIシグナルペプチドをコードする配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。まず最初に、プラストシアニンATGの上流にある最初の84ヌクレオチド(DraIII制限部位から始まる)に相当するアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が3'側に隣接している全ヘマグルチニンコード配列(ATGから停止コドンまで)を含む合成フラグメントを合成した。この合成フラグメントは、停止コドンの直後にSacI部位も含んでいた。合成フラグメントは、Top Gene Technologies(カナダ・ケベック州モントリオール)によって合成された。合成されたフラグメントを配列番号70(図35)に示し、これをさらなるPCRベースのライゲーションにテンプレートとして使用した。
【0163】
第2に、アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのシグナルペプチド(PDISP)(ヌクレオチド32〜103;アクセッション番号Z11499;配列番号57;図22)を、ATGのすぐ上流にあるApaI制限部位および停止コドンの下流にあるStuI制限部位と共に、A/Brisbane/10/2007由来のH3のHA0コード配列に、次のようにして連結した。Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法でPDISPをH3コード配列に連結した。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびH3B-SpPDI.r(配列番号33)を使用し、コンストラクト番号540(配列番号59;図24)をテンプレートにして、PDISPシグナルペプチドを増幅した。並行して、プライマーSpPDI-H3B.c(配列番号34)およびStuI-H3B.r(配列番号35)を使用し、合成フラグメント(配列番号70;図35)をテンプレートにして、H3 A/Brisbane/10/2007のコード配列の一部(コドン17から停止コドンまで)を含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびStuI-H3B.r(配列番号35)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号736(配列番号71;図36)と名付けた。
【0164】
M−CPMV-HT発現カセットにおけるキメラSpPDI-H3 A/Brisbane/10/2007(外部ドメイン)+H5 A/Indonesia/5/2005(TmD+細胞質テール)のアセンブリ(コンストラクト番号737)
H3 A/Brisbane/10/2007の外部ドメインならびにH5 A/Indonesia/5/2005の膜貫通および細胞質ドメインに融合されたアルファルファPDIシグナルペプチドをコードする配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法により、PDISP-H3コード配列をH5膜貫通ドメインに融合した。第1ラウンドのPCRにおいては、コンストラクト番号736(配列番号71;図36)をテンプレートにして、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびTmD H5I-H3B.r(配列番号36)を使った増幅(PDISP開始ATGの上流にApaI制限部位を伴うもの)により、PDISPシグナルペプチドおよびH3 Brisbane由来の外部ドメインを含むフラグメントを作製した。並行して、プライマーH3B-TmD H5I.c(配列番号37)およびH5 (A-Indo)-StuI.1707r(配列番号32)を使用し、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにして、H5 Indonesiaの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびH5 (A-Indo)-StuI.1707r(配列番号32)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号737(配列番号72;図37)と名付けた。
【0165】
N−CPMV-HT発現カセットにおけるSpPDI-HA B/Florida/4/2006のアセンブリ(コンストラクト番号739)
HA B/Florida/4/2006由来のHA0に融合されたアルファルファPDIシグナルペプチドをコードする配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。まず最初に、プラストシアニンATGの上流にある最初の84ヌクレオチド(DraIII制限酵素から始まるもの)に相当するアルファルファ・プラストシアニン遺伝子配列が3'側に隣接している全ヘマグルチニンコード配列(ATGから停止コドンまで)を含む合成フラグメントを合成した。この合成フラグメントは停止コドンの直後にSacI制限部位も含んだ。この合成フラグメントは、Epoch Biolabs(米国テキサス州シュガーランド)によって合成された。合成されたフラグメントを配列番号73(図38)に示し、これをさらなるPCRベースのライゲーションにテンプレートとして使用した。
【0166】
第2に、アルファルファ・タンパク質ジスルフィドイソメラーゼのシグナルペプチド(PDISP)(配列番号57のヌクレオチド32〜103;図22;アクセッション番号Z11499)を、ATGのすぐ上流にあるApaI制限部位および停止コドンの下流にあるStuI制限部位と共に、B/Florida/4/2006由来のHAのHA0コード配列に、次のようにして連結した。Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法でPDISPをHAコード配列に連結した。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびHBF-SpPDI.r(配列番号38)を使用し、コンストラクト番号540(配列番号59;図24)をテンプレートにして、PDISPシグナルペプチドを増幅した。並行して、プライマーSpPDI-HBF.c(配列番号39)およびStuI-HBF.r(配列番号40)を使用し、先に合成したフラグメント(配列番号73;図38)をテンプレートにして、B/Florida/4/2006由来のHAのコード配列の一部(コドン16から停止コドンまで)を含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびStuI-HBF.r(配列番号40)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号739(配列番号74;図39)と名付けた。
【0167】
O−CPMV-HT発現カセットにおけるキメラSpPDI-HA B/Florida/4/2006(外部ドメイン)+H5 A/Indonesia/5/2005(TmD+細胞質テール)のアセンブリ(コンストラクト番号745)
HA B/Florida/4/2006由来の外部ドメインならびにH5 A/Indonesia/5/2005の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合されたアルファルファPDIシグナルペプチドをコードする配列を、次のようにして、CPMV-HT中にクローニングした。Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法で、PDISP-B/Florida/4/2006外部ドメインコード配列を、H5膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合した。第1ラウンドのPCRにおいては、コンストラクト番号739(配列番号74;図39)をテンプレートにし、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびTmD H5I-B Flo.r(配列番号41)を用いる増幅によって、HA B/Florida/4/2006由来の外部ドメインに融合されたPDISPシグナルペプチドを含むフラグメントを作製した。並行して、コンストラクト番号660(配列番号53;図18)をテンプレートにし、プライマーB Flo-TmD H5I.c(配列番号42)およびH5 (A-Indo)-StuI.1707r(配列番号32)を使って、H5 Indonesiaの膜貫通ドメインと細胞質ドメインを含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーApaI-SpPDI.c(配列番号30)およびH5 (A-Indo)-StuI.1707r(配列番号32)による、第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをApaIおよびStuI制限酵素で消化し、同じ酵素で消化されたコンストラクト番号828(配列番号62;図27)中にクローニングした。その結果生じたカセットをコンストラクト番号745(配列番号75;図40)と名付けた。
【0168】
P−2X35S-CPMV-HT発現カセットにおけるキメラSpPDI-HA B/Florida/4/2006+H5 A/Indonesia/5/2005(TmD+細胞質テール)のアセンブリ(コンストラクト番号747)
HA B/Florida/4/2006由来のHA0およびH5 A/Indonesia/5/2005由来の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに融合されたアルファルファPDIシグナルペプチドをコードする配列を、次のようにして、2X35S-CPMV-HT中にクローニングした。Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85 (1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法を使って、プロモーター変更(promoter switch)を行った。2X35Sプロモーターを含有するプラスミドをテンプレートにして、プライマーPacI-MCS-2X35S.c(配列番号89)およびCPMV 5'UTR-2X35S.r(配列番号90):
PacI-MCS-2X35S.c(配列番号89)
【化1】

CPMV 5'UTR-2X35S.r(配列番号90)
【化2】

を用いるPCRにより、2X35Sプロモーター(配列番号88;図50A)を含有する第1フラグメントを増幅した。並行して、コンストラクト745(配列番号75;図40)をテンプレートとして使用し、プライマー2X35S-CPMV 5'UTR.c(配列番号91)およびApaI-M prot.r(配列番号92):
2X35S-CPMV 5'UTR.c(配列番号91)
【化3】

ApaI-M prot.r(配列番号92)
【化4】

を使って、第2のPCRを行った。次に、得られた2つのフラグメントを混合し、PacI-MCS-2X35S.c(配列番号89)およびApaI-M prot.r(配列番号92)をプライマーとする第2ラウンドのPCR(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをPacIおよびApaIで消化し、同じ制限酵素で消化されたコンストラクト745(配列番号75;図40)中にクローニングした。コンストラクト747(配列番号93)と名付けたこの発現カセットの配列を図50Bに示す。
【0169】
2.シャペロン発現カセットのアセンブリ
2つの熱ショックタンパク質(Hsp)発現カセットをアセンブルした。第1カセットでは、Arabidopsis thaliana(生態型Columbia)細胞質ゾルHSP70(Linら (2001) Cell Stress and Chaperones 6:201-208のAthsp70-1)の発現が、アルファルファ亜硝酸レダクターゼ(Nir)の要素とアルファルファ・プラストシアニンプロモーターとを併せ持つキメラプロモーター(Nir/Plasto)によって制御される。キメラNir/プラストプロモーターの制御下にあるアルファルファ細胞質ゾルHSP40(MsJ1;Frugisら (1999) Plant Molecular Biology 40:397-408)のコード領域を含む第2カセットもアセンブルした。
【0170】
まず最初に、植物バイナリーベクター中にアルファルファ亜硝酸レダクターゼプロモーター(Nir)、GUSレポーター遺伝子およびNOSターミネーターを含有するアクセプタープラスミドをアセンブルした。プラスミドpNir3K51(以前、米国特許第6,420,548号に記載されたもの)をHindIIIおよびEcoRIで消化した。その結果生じたフラグメントを同じ制限酵素で消化されたpCAMBIA2300(Cambia、オーストラリア・キャンベラ)中にクローニングすることにより、pCAMBIA-Nir3K51を得た。
【0171】
Hsp70およびHsp40のコード配列を、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85 (1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法により、アクセプタープラスミドpCAMBIANir3K51中に、別々にクローニングした。
【0172】
Hsp40については、RT-PCRにより、アルファルファ(生態型Rangelander)葉全RNAから、プライマーHsp40Luz.1c(配列番号43)およびHsp40Luz-SacI.1272r(配列番号44)を使って、Msj1コード配列(配列番号76;図41)を増幅した。第2の増幅は、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHsp40Luz-Plasto.r(配列番号45)を使用し、コンストラクト660(配列番号53;図18)をテンプレートにして行った。次にPCR産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHsp40Luz-SacI.1272r(配列番号44)による第3の増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをHpaI(プラストシアニンプロモーター中)で消化し、先にHpaI(Nirプロモーター中)およびSacIで消化してT4 DNAポリメラーゼで埋めることにより平滑末端にしておいたpCAMBIANir3K51中にクローニングした。得られたクローンを正しい向きについてスクリーニングし、配列を決定して配列の完全性を確かめた。その結果生じたプラスミドをR850と名付け、図42(配列番号77)に示す。Athsp70-1のコード領域は、Arabidopsis葉RNAから、プライマーHsp70Ara.1c(配列番号46)およびHsp70Ara-SacI.1956r(配列番号47)を使って、RT-PCRによって増幅した。第2の増幅は、コンストラクト660(配列番号53;図18)をテンプレートにして、プライマーPlato-443c(配列番号5)およびHsp70Ara-Plasto.r(配列番号48)を使って行った。次にPCR産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびHsp70ARA-SacI.1956r(配列番号47)による第3増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをHpaI(プラストシアニンプロモーター中)で消化し、HpaI(Nirプロモーター中)およびSacIで消化してT4 DNAポリメラーゼで埋めることにより平滑末端にしておいたpCAMBIANir3K51中にクローニングした。得られたクローンを正しい向きについてスクリーニングし、配列を決定して配列の完全性を確かめた。その結果生じたプラスミドをR860と名付け、図43(配列番号78)に示す。
【0173】
二重Hsp発現プラスミドを次のようにアセンブルした。R860(配列番号78;図43)をBsrBI(NOSターミネーターの下流)で消化し、T4 DNAポリメラーゼで処理して平滑末端を生成させ、SbfI(キメラNIR/プラストプロモーターの上流)で消化した。その結果生じたフラグメント(キメラNir/プラストプロモーター-HSP70コード配列-Nosターミネーター)を、先にSbfIおよびSmaI(どちらもキメラNir/プラストプロモーターの上流にあるマルチクローニング部位中に位置する)で消化しておいたR850(配列番号77;図42)中にクローニングした。その結果生じたプラスミドをR870と名付け、図44(配列番号79)に示す。
【0174】
3.他の発現カセットのアセンブリ
HcPro発現カセット
HcProコンストラクト(35HcPro)はHamiltonら(2002)に記述されているように作製した。全てのクローンを配列決定して、コンストラクトの完全性を確認した。これらのプラスミドを使って、Agrobacteium tumefaciens(AGL1;ATCC、米国バージニア州20108マナッサス)をエレクトロポレーション(Mattanovichら, 1989)によって形質転換した。全てのA. tumefaciens株の完全性を制限マッピングによって確認した。
【0175】
P19発現カセット
トマトブッシースタントウイルス(TBSV)のp19タンパク質のコード配列を、Darveauら(Methods in Neuroscience 26:77-85(1995))に記載されているPCRベースのライゲーション法で、アルファルファ・プラストシアニン発現カセットに連結した。第1ラウンドのPCRにおいては、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびsupP19-plasto.r(配列番号49)を使用し、コンストラクト660(配列番号53)をテンプレートにして、プラストシアニンプロモーターのセグメントを増幅した。並行して、プライマーsupP19-1c(配列番号50)およびSupP19-SacI.r(配列番号51)を使用し、Voinnetら(The Plant Journal 33:949-956 (2003))に記載のコンストラクト35S:p19をテンプレートにして、p19のコード配列を含有するもう一つのフラグメントを増幅した。次に増幅産物を混合し、プライマーPlasto-443c(配列番号5)およびSupP19-SacI.r(配列番号51)による第2ラウンドの増幅(アセンブリング反応)に、テンプレートとして使用した。その結果生じたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)およびSacI(p19コード配列の末端にある)で消化し、先に同じ制限酵素で消化しておいたコンストラクト番号660(配列番号53;図18)中にクローニングすることにより、コンストラクト番号R472を得た。プラスミドR472を図45に示す。
【0176】
コンストラクト番号443
コンストラクト番号443はpCAMBIA2300(空ベクター)に相当する。
[表1]発現カセットのアセンブリに使用したオリゴヌクレオチドプライマー
【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

[表2]ネイティブシグナルペプチドまたはPDIシグナルペプチドを有するインフルエンザヘマグルチニンの発現に使用したアグロバクテリウム株
【表2】

【0177】
4.植物バイオマスの調製、接種、アグロインフィルトレーション、および収穫
市販のピートモス培地で満たした平箱(flat)においてNicotiana benthamiana植物を種子から生育した。植物は16/8光周期および日中25℃/夜間20℃の温度レジーム(temperature regime)下で温室において生長させた。種まきの3週間後に、個々の小植物を選定し、鉢に移植して、温室中、同じ環境条件下でさらに3週間生長させた。形質転換に先だって、以下に示すさまざまな時点で、芽を植物から摘み取るか、植物を化学処理することによって、頂芽および腋芽を除去した。
【0178】
各コンストラクトをトランスフェクトしたアグロバクテリアを、10mM 2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、20μMアセトシリンゴン、50μg/mlカナマイシンおよび25μg/mlのカルベニシリンを補足したpH5.6のYEB培地で、OD600が0.6〜1.6に達するまで成長させた。使用前にAgrobacterium懸濁液を遠心分離し、浸潤培地(10mM MgCl2および10mM MES、pH5.6)に再懸濁した。シリンジ浸潤(syringe-infiltration)は、LiuおよびLomonossoffが記載しているように行った(2002, Journal of Virological Methods, 105:343-348)。減圧浸潤については、A. tumefaciens懸濁液を遠心分離し、浸潤培地に再懸濁し、4℃で終夜保存した。浸潤当日、使用前に、培養バッチを2.5培養体積に希釈して、温まらせた。気密ステンレス鋼タンク中の細菌懸濁液に20〜40Torrの減圧下で2分間、N. benthamianaまたはN. tabacumの全植物体を上下逆さまにして入れた。シリンジ浸潤または減圧浸潤後に、植物を温室に戻し、4〜5日間のインキュベーション期間(incubation period)を経てから、収穫した。別段の指定がない限り、浸潤は、比率1:1のAGL1/R472株と共浸潤させたCPMV-HTカセット保有株を除く全てを、比率1:1のAGL1/35S-HcProとの共浸潤として行った。
【0179】
5.葉サンプリングおよび全タンパク質抽出
インキュベーション後に、植物の地上部分を収穫し、−80℃で凍結し、破砕した。凍結破砕植物材料の各試料を3体積の冷50mM Tris(pH8)、0.15M NaCl、0.04%メタ重亜硫酸ナトリウムおよび1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド中でホモジナイズ(ポリトロン)することによって、全可溶性タンパク質を抽出した。ホモジナイズした後、スラリーを4℃、20,000gで20分間遠心分離し、これらの清澄化粗抽出物(上清)を分析のために取っておいた。清澄化粗抽出物の全タンパク質含有量は、ウシ血清アルブミンを標準品として使用するブラッドフォード法(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)で決定した。
【0180】
6.タンパク質分析およびイムノブロッティング
タンパク質濃度をBCAプロテインアッセイ(Pierce Biochemicals、イリノイ州ロックポート)で決定した。タンパク質を還元条件下にSDS-PAGEによって分離し、クーマシーブルーで染色した。染色されたゲルをスキャンし、ImageJ Software(NIH)を使ってデンシトメトリー分析を行った。
【0181】
SECからの溶出フラクションからタンパク質をアセトンで沈殿させ(Bollagら, 1996)、1/5体積の平衡化/溶出バッファーに再懸濁し、還元条件下にSDS-PAGEで分離し、免疫学的検出のためにポリビニレンジフルオリド(PVDF)膜(Roche Diagnostics Corporation、インディアナ州インディアナポリス)上に電気的に転写した。イムノブロッティングに先だって、膜を、Tris緩衝食塩水(TBS-T)中の5%脱脂乳および0.1% Tween-20により、4℃で16〜18時間ブロッキングした。
【0182】
TBS-Tween 20 0.1%中の2%脱脂乳において、2μg/mlの適切な抗体(表6)と共にインキュベートすることにより、イムノブロッティングを行った。化学発光検出に使用した二次抗体は表4に示すとおりであり、TBS-Tween 20 0.1%中の2%脱脂乳に表示のとおりに希釈した。ルミノールを基質として使用する化学発光(Roche Diagnostics Corporation)によって免疫反応性複合体を検出した。ヒトIgG抗体のセイヨウワサビペルオキシダーゼ酵素コンジュゲーションは、EZ-Link Plus(登録商標)活性化ペルオキシダーゼコンジュゲーションキット(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使って行った。H1、H3およびB亜型の検出の対照として使用した全不活化ウイルス(WIV)はNational Institute for Biological Standards and Control(NIBSC)から購入した。
[表3]発現したタンパク質のイムノブロッティングのための電気泳動条件、抗体、および希釈度
【表3】

FII:Fitzgerald Industries International(米国マサチューセッツ州コンコード);
NIBSC:National Institute for Biological Standards and Control;
JIR:Jackson ImmunoResearch(米国ペンシルバニア州ウエストグローブ);
ITC:Immune Technology Corporation(米国ニューヨーク州ウッドサイド)
【0183】
7.SEC前の清澄化および濃縮
分解能を向上させ、溶出フラクションにおけるシグナルを増加させるために、サイズ排除クロマトグラフィーにローディングされる抽出物、粗タンパク質抽出物を、以下の方法を使って清澄化し、濃縮した。抽出物を、70000g、4℃で20分間遠心分離し、ペレットを、1体積(初期抽出物体積との比較)の抽出バッファー(50mM Tris pH8、0.15M NaCl)に再懸濁し、70000g、4℃で20分間遠心分離することにより、2回洗浄した。その結果生じたペレットを1/3体積(初期抽出物体積との比較)に再懸濁し、20%(w/v)PEG3350を添加してから氷上で1時間インキュベートすることにより、タンパク質(VLPを含む)を沈殿させた。沈殿したタンパク質を、10000g、4℃、20分間の遠心分離によって回収し、1/15体積(初期抽出物体積との比較)の抽出バッファーに再懸濁した。タンパク質を完全に再懸濁した後、20000g、4℃、5分間の最終遠心分離を行って、不溶物をペレット化し、透明な上清を回収した。
【0184】
8.タンパク質抽出物のサイズ排除クロマトグラフィー
32ml Sephacryl(商標)S-500高分解能ビーズ(S-500 HR:GE Healthcare(スウェーデン・ウプサラ)、カタログ番号17-0613-10)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムをパッキングし、平衡化/溶出バッファー(50mM Tris pH8、150mM NaCl)で平衡化した。1.5ミリリットルの粗タンパク質抽出物をカラムにローディングした後、45mLの平衡化/溶出バッファーによる溶出ステップを実行した。溶出物を各1.5mLのフラクションに集め、10μLのフラクションを200μLの希釈Bio-Radタンパク質色素試薬(Bio-Rad、カリフォルニア州ハーキュリーズ)と混合することによって、溶出フラクションの相対的タンパク質含有量をモニタリングした。カラムを2カラム体積の0.2N NaOHで洗浄した後、10カラム体積の50mM Tris pH8、150mM NaCl、20%エタノールで洗浄した。各分離後に、Blue Dextran 2000(GE Healthcare Bio-Science Corp.、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)でカラムの較正を行った。Blue Dextran 2000および宿主可溶性タンパク質の溶出プロファイルを各分離間で比較して、使用したカラム間での溶出プロファイルの一様性を保証した。
【0185】
[実施例1]インフルエンザ亜型ステム上のRBおよび/またはエステラーゼドメインのドメイン交換戦略
H5/IndoのRBサブドメインを、H1、H3またはB HAのRBサブドメインで置き換えることができる。その結果生じたキメラHAは、SDC H5/Indoを与えてVLPを形成し、H1、H3またはBの免疫原性部位を含むRBサブドメインを提示する。H5/Indo RBサブドメインは、H1ステム(H1/NC)上に挿入することができる。図15Aおよび15Bに、表示したサブドメインの融合部のアミノ酸配列を示し、各サブドメインのアミノ酸配列を図2(コンストラクト690、734、696および691)ならびに表4(コンストラクト900および745)および表5(コンストラクト910、920および930)に示す。図2ならびに表4および表5に示すアミノ酸配列はシグナルペプチド配列を含まない。
[表4]サブドメインおよびキメラインフルエンザHA。異種RBサブドメインを含むキメラインフルエンザHA
【表4】

【0186】
配列番号105のアミノ酸1〜92はH5/IndoのF'1+E1ドメインであり、アミノ酸93〜259はH3/BrisbaneのRB頭部ドメインであり;アミノ酸260〜548はH5/IndoのE2+F'2ドメインである。
【0187】
配列番号106のアミノ酸1〜92はH5/IndoのF'1+E1ドメインであり;アミノ酸93〜276はB/FloridaのRB頭部ドメインであり;アミノ酸277〜565はH5/IndoのE2+F'2ドメインである。
[表5]サブドメインおよびキメラインフルエンザHA。異種RBサブドメインを含むキメラインフルエンザHA
【表5】

【0188】
配列番号107のアミノ酸1〜42はH5/IndoのN末端F'1ドメインであり;アミノ酸43〜228はH3/BrisbaneのE1-RB-E2頭部ドメインであり;アミノ酸229〜507はH5/IndoのF'2ドメインである。
【0189】
配列番号108のアミノ酸1〜42はH5/IndoのN末端F'1ドメインであり;アミノ酸43〜281はB/FloridaのE1-RB-E2頭部ドメインであり;アミノ酸282〜556はH5/IndoのF'2ドメインである。
【0190】
配列番号109のアミノ酸1〜42はH1/NCのN末端F'1ドメインであり;アミノ酸43〜273はH5/IndoのE1-RB-E2頭部ドメインであり;アミノ酸274〜548はH1/NCのF'2ドメインである。
【0191】
さまざまなキメラの融合点は、さまざまなサブドメインのN末端およびC末端にできるだけ近くなる(ただし必ずしも末端そのものでなくてもよい)ように選択した−理論に束縛されることは望まないが、これらの融合物は、キメラHAの安定性が最大になるように選択された。例えば、RBサブドメインのN末端には構造および配列の保存が認められる(Haら 2002, EMBO J. 21:865-875;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)。一次配列において、さらに可変性の低い領域が、約15アミノ酸前に位置するE1サブドメイン中のC-F/Y-P三残基(triad)に見いだされる。このシステインは、HA間で保存されているジスルフィド架橋#3に関与する(図46および47参照)。このCysにおける接合は、ネイティブ配列と比較して、キメラHAに最適なまたは優れた安定性をもたらしうる。アラインメント上で、RBのC端は保存された特徴、例えば-1位にある保存されたSer残基を与え、E2ドメインは、全てのHAに認められるβシートで始まっている(Haら 2002, EMBO J. 21:865-875;この文献は引用により本明細書に組み込まれる)。したがってこのRBのC末端を、E2サブドメインのこのβシート構造の開始アミノ酸に融合することができる。さらに、H5/Indo SDC上にH1/NC、H1Bri、H3/Bri、またはB/FloのRBサブドメインを含むキメラ、およびH1 SDC上のH5/Indo RBサブドメインの場合、ジスルフィド架橋パターンは変化しないか、実質的に変化しないが(合計6個)、H5ステム上のB RBのハイブリッドHAでは、ジスルフィド架橋が加わることになる(架橋#8)。このジスルフィド架橋の付加はHAのフォールディングを妨害しないはずであり(なぜなら、これはRBドメイン内に位置し、Cysは配列上で隣接しているからである)、より一層安定なハイブリッドHAをもたらしうる。
【0192】
第1インフルエンザ型のE1-RB-E2サブドメインを、第2インフルエンザ型のE1-RB-E2サブドメインで置き換えた。そのような配置は、H5-VLPの表面に、より多くの第2型のアミノ酸を提示しうる。この例では、H1、H3またはBのHDCをH5/Indo SDC上に置き、H5/IndoのHDCをH1/NC SDC上に置いた(表5)。
【0193】
HDCの接合部は、保存されたシステイン残基(A型HAのジスルフィド架橋#6およびB型HA中のジスルフィド架橋#7を構成するもの)で規定した。E2サブドメインのC末端にあるHDCの接合部は、H5/IndoのSDC上のインフルエンザ型H1もしくはH3、またはH1のSDC上のインフルエンザ型H5については、ジスルフィド架橋#6を構成するもう一つの保存されたシステイン残基(F2'サブドメインの第2アミノ酸)で規定した。インフルエンザBキメラについては、接合部が、ジスルフィド架橋#4を構成する最初のシステイン(F'2サブドメイ上で4アミノ酸離れた位置にあり、HA間で保存されている)における連結を確立した。その結果生じたキメラはジスルフィド架橋パターンに何の変化も示さず、H1/H3/H5ハイブリッドHAは6個のジスルフィド架橋を含有し、Bハイブリッドは7個のジスルフィド架橋を有することになる。
【0194】
[実施例2]H5 A/Indonesia/5/05の受容体結合(RB)サブドメインまたは受容体結合およびエステラーゼ(E1-RB-E2)サブドメインの、H1 A/Brisbane/59/2007の同サブドメインによる置き換え:キメラ形とネイティブ形に関する発現の比較
H5 A/Indonesia/5/05に由来するVLPの高い蓄積レベルをH1 A/Brisbane/59/2007の抗原性特徴と組み合わせるために、H5 A/Indonesia/5/05ステムドメインクラスターに融合されたH1 A/Brisbane/59/2007由来のドメインを含むキメラヘマグルチニンを設計した。H5/H1ヘマグルチニン融合物を発現させるための発現カセットを図1に示し、生産される成熟融合タンパク質のアミノ酸配列を図2に示す。
【0195】
H5/H1キメラヘマグルチニンの蓄積レベルをそれらのネイティブ形の蓄積レベルと比較するために、Nicotiana benthamiana植物に、AGL1/774、AGL1/691およびAGL1/690を浸潤させ、6日間のインキュベーション後に、葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉における各HA形の蓄積レベルを決定するために、浸潤葉組織からタンパク質を抽出し、抗HAモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0形とサイズが一致する約75kDaのユニークバンド(図3)が、AGL1/690を浸潤させた葉からの抽出物には検出されたが、AGL1/774またはAGL1/691では検出されず、H5 A/Indonesia/5/05バックボーンに融合されたH1 A/Brisbane/59/2007の受容体結合領域を含むキメラヘマグルチニンは、ネイティブ形のH1 A/Brisbane/59/2007(AGL1/774)と比較しても、H1 A/Brisbane/59/2007のエステラーゼ領域および受容体結合領域とH5 A/Indonesia/5/05バックボーンとを組み合わせたキメラヘマグルチニンと比較しても、より高レベルに蓄積することが示された。陽性対照として使用した全不活化ウイルス(WIV)(H1 A/Brisbane/59/2007)は、複数のバンドとして検出され、主要バンドはH1 A/Brisbane/59/2007の前駆体HA0の分子量に相当する約80kDaだった。これらの結果から、H5 A/Indonesia/5/05由来の受容体結合領域を、H1 A/Brisbane/59/2007のもので置き換えると、H1の抗原性領域を提示するキメラヘマグルチニンが生成し、それは植物中に、ネイティブH1 A/Brisbane/59/2007よりも高レベルに蓄積することが証明された。しかし、H5 A/Indonesia/5/05由来のエステラーゼ領域および受容体結合領域をH1 A/Brisbane/59/2007のもので置き換えたキメラヘマグルチニンは、植物において、検出しうるレベルまで蓄積しなかった。
【0196】
植物におけるH1抗原提示VLPの蓄積を増加させる方法としての、H1 A/Brisbane/59/2007由来の受容体結合領域の、H5 A/Indonesia/5/05バックボーンへの融合を、強いCPMV-HTベースの発現カセットの制御下で、再評価した。この融合戦略を、蓄積レベルを増加させる手段としてのシグナルペプチドの置き換えとも比較した。CPMV-HT下でH5/H1ヘマグルチニン融合物を発現させるための発現カセットを図8に示し、生産される成熟融合タンパク質のアミノ酸配列を図2に示す。
【0197】
Nicotiana benthamiana植物に、AGL1/732、AGL1/733またはAGL1/734を浸潤させ、6日間のインキュベーション期間後に、葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉における各HA形の蓄積レベルを決定するために、まず最初にタンパク質を浸潤葉組織から抽出し、抗H1(Brisbane)ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0形とサイズが一致する約75kDaのユニークバンド(図6)が、AGL1/732、AGL1/733およびAGL1/734を浸潤させた葉からの抽出物中に検出された。しかし、ヘマグルチニンは分析した全ての抽出物に検出されたものの、蓄積量には顕著な相違が認められた。H1 A/Brisbane/59/2007の発現は、その天然シグナルペプチドを使用した場合(732)には、これらの条件下で、かろうじて検出できるに過ぎなかったが、シグナルペプチドをPDIのもので置き換えると、より高レベルな成熟H1 A/Brisbane/59/2007の蓄積が起こり(733)、キメラH5/H1ヘマグルチニン(734)は最も高レベルに蓄積した。総合すると、これらの結果は、H5バックボーンへのH1由来の受容体結合ドメインの融合が、H1抗原提示ヘマグルチニンの高い蓄積量につながること、および植物においてはそのような融合物について得られる蓄積レベルが、シグナルペプチドの置き換えを伴うまたは伴わないネイティブ形で得られるものよりも高いことを示している。
【0198】
[実施例3]H1 A/New Caledonia/20/99の受容体結合(RB)サブドメインの、H5 A/Indonesia/5/05のものによる置き換え。キメラ形とネイティブ形についての発現の比較
H5抗原性領域を提示するためのH1バックボーン(A/New Caledonia/20/99由来のもの)の使用も評価した。このH1/H5ヘマグルチニン融合物を発現させるための発現カセットを図1に示し、生産される成熟融合タンパク質のアミノ酸配列を図2に示す。
【0199】
H1/H5キメラヘマグルチニンの蓄積レベルをそのネイティブ形のものと比較するために、Nicotiana benthamiana植物にAGL1/660およびAGL1/696を浸潤させ、6日間のインキュベーション期間後に、葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉における各HA形の蓄積レベルを決定するために、タンパク質を浸潤葉組織から抽出し、抗H5(Indonesia)ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0とサイズが一致する約75kDaのユニークバンド(図7)が、AGL1/660およびAGL1/696を浸潤させた葉からの抽出物に検出され、ネイティブH5 A/Indonesia/5/05とH1/H5キメラヘマグルチニンはどちらも植物中に高レベルに蓄積することが示された。
【0200】
[実施例4]H5 A/Indonesia/5/05の外部ドメインの、H3またはBのものによる置き換え。キメラ形とネイティブ形についての発現の比較
H3 A/Brisbane/10/2007またはB Florida/4/2006由来の外部ドメインの、H5 A/Indonesia/5/05由来の膜貫通サブドメインおよび細胞質サブドメインへの融合を、H3株およびB株由来のヘマグルチニン抗原性領域を提示すると同時に、植物におけるその蓄積レベルを増加させるための戦略として評価した。H5/H3およびH5/Bヘマグルチニン融合物を発現させるための発現カセットを図10に示し、それら融合物の境界部分にあるアミノ酸を図11に示す。
【0201】
Nicotiana benthamiana植物において、H5/Bキメラヘマグルチニン(745)の蓄積レベルを、ネイティブHA B(739)の蓄積レベルと比較した。植物にAGL1/739およびAGL1/745を浸潤させ、6日間のインキュベーション期間後に葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉における各HA形の蓄積レベルを決定するために、まず最初に浸潤葉組織からタンパク質を抽出し、抗B(Florida)ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0形とサイズが一致する約75kDのユニークバンド(図14)が、AGL1/739を浸潤させた1本の植物の葉からの抽出物に見いだされ、一方、AGL1/745を浸潤させた3本の植物がヘマグルチニンに対応する陽性シグナルを示したことから、ヘマグルチニンのH5/Bキメラ形は、Bヘマグルチニンのネイティブ形よりも規則正しく、高レベルに蓄積することが示された。
【0202】
同様に、Nicotiana benthamiana植物において、H5/H3キメラヘマグルチニン(737)の蓄積レベルを、そのネイティブ形(736)の蓄積レベルと比較した。植物にAGL1/736およびAGL1/737を浸潤させ、6日間のインキュベーション期間後に葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉における各HA形の蓄積レベルを決定するために、タンパク質を浸潤葉組織から抽出し、抗H3(Brisbane)ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0形とサイズが一致する約75kDaのユニークバンド(図15)が、AGL1/736およびAGL1/737を浸潤させた葉からの抽出物に検出された。この結果は、H5 A/Indonesia/5/05由来の膜貫通サブドメインおよび細胞質サブドメインを、H3 A/Brisbane/10/2007の外部ドメインに融合することで、ネイティブH3 A/Brisbane/10/2007と類似するレベルまで蓄積するキメラヘマグルチニンが生成することを示している。
【0203】
H5/Bキメラヘマグルチニン(コンストラクト番号745)の発現によるVLPの生産を、サイズ排除クロマトグラフィーを使って評価した。AGL1/745浸潤植物からの濃縮タンパク質抽出物(1.5mL)を、Sephacryl(商標)S-500 HRカラム(GE Healthcare Bio-Science Corp.、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分画した。図16に示すように、Blue Dextran(2MDa)溶出はフラクション8には早くもピークに達した。200μLの各SEC溶出フラクションからアセトン沈殿によってタンパク質を濃縮(5倍)し、抗B(Florida)ポリクローナル抗体(図16)を用いるウェスタンブロッティングによって分析したところ、キメラヘマグルチニンは主としてフラクション7に見いだされ、高分子量構造物へのHAの組み込みが示された。理論に束縛されることは望まないが、これはキメラHAタンパク質が大きな超構造物に集合していたことを示唆するか、高分子量構造物に結合していることを示唆している。得られた結果は、H5 A/Indonesia/5/05由来の膜貫通サブドメインおよび細胞質ゾルサブドメインに融合したHA B/Florida/4/2006由来の外部ドメインからなるキメラHAが高分子量粒子に集合すること、およびこれらの高分子量粒子の溶出プロファイルがインフルエンザVLPの溶出プロファイルと区別できないことを示している。
【0204】
[実施例5]シグナルペプチド修飾と組み合わせた、H5/Bキメラヘマグルチニン(コンストラクト番号747;H5/Indo TDCと融合されたB/Flo HDCおよびSDCを含む)とHsp70およびHsp40との共発現
植物におけるHsp40およびHsp70の発現ならびにインフルエンザヘマグルチニンとの共発現は、同時係属中の出願PCT/CA2009/000032に記載されている。植物由来の細胞質ゾルHsp70およびHsp40(コンストラクト番号R870)を、植物におけるキメラヘマグルチニンの蓄積レベルを増加させるために、キメラヘマグルチニンと共発現させることもできる。共発現は、所望のキメラHAを発現させるためのカセットを保有するAGL1とAGL1/R870およびAGL1/35SHcProとの混合物(比率1:1:1)を含有する細菌懸濁液によるN. benthamiana植物のアグロインフィルトレーションによって行うことができる。
【0205】
Nicotiana benthamiana植物においてHSP40およびHSP70と共発現した時のH5/Bキメラヘマグルチニン(H5/Indo TDCと融合したB/Flo HDCおよびSDC)の蓄積レベルを評価した。植物にAGL1/747、AGL1/747+AGL1/443(空ベクター)またはAGL1/747+AGL1/R870(HSP40/HSP70)を浸潤させ、6日間のインキュベーション期間後に葉を収穫した。アグロインフィルトレーションした葉におけるH5/BキメラHAの蓄積レベルを決定するために、まず最初に浸潤葉組織からタンパク質を抽出し、抗B(Florida)ポリクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。インフルエンザヘマグルチニンの未切断HA0形とサイズが一致する約75kDaのユニークバンド(図50)が、AGL1/747+AGL1/R870を浸潤させた3本の植物の葉からの抽出物中に検出され、一方、AGL1/747+対照ベクター(443)を浸潤させた3本の植物は(使用したばく露条件下では)シグナルを示さなかったことから、ヘマグルチニンのH5/Bキメラ形は、HSP40およびHSP70シャペロンと共発現させると、高レベルに蓄積することが示された。
【0206】
全ての引例は、個々の刊行物が引用により本明細書に組み込まれることを個別に明記したかのように、そして本明細書に完全に記載されているかのように、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の引用を、それらの参考文献が本発明に対する先行技術であるとの自認であると見なしてはならない。
【0207】
本明細書では、本発明のさまざまな態様の理解が容易になるように、いくつかの用語を広範囲に使用し、定義を記載している。明細書における実例(用語の例を含む)の使用は単なる例示に過ぎず、本発明の実施形態の範囲および意味を限定しようとするものではない。数値範囲はその範囲を定義する数値を含む。本明細書において「を含む(comprising)」という単語はオープンエンドな用語として使用され、「を含むが、それらに限定されない(including, but not limited to)」という表現と実質的に等価であり、「含む(comprises)」という単語は、対応する意味を有する。
【0208】
現時点において好ましい本発明の実施形態を、例示のために、いくつか説明した。本発明は、実施例および図面を参照して上に実質的に記載されている、全ての実施形態、変更形態および変形を包含する。特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなくいくつかの変形および変更を加えうることは、当業者には明白であるだろう。そのような変更の例には、実質的に同じ方法で同じ結果が達成されるように、本発明の任意の態様を既知の等価物で置き換えることが含まれる。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムドメインクラスター(SDC)、頭部ドメインクラスター(HDC)および膜貫通ドメインクラスター(TDC)を含むキメラインフルエンザHAポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結された、植物、昆虫または酵母細胞において作動可能な1つ以上の調節領域を含む核酸であって、1つ以上の調節領域が、植物、昆虫または酵母細胞において作動可能な5'UTR、3'UTRまたは5'UTRおよび3'UTRをさらに含み、
a)SDCは、F'1、F'2およびFサブドメインを含み;
b)HDCは、RB、E1およびE2サブドメインを含み;
c)TDCは、TmDおよびCtailサブドメインを含み;かつ
少なくともRBサブドメインは第1インフルエンザHAのものであり、SDC、TDCまたはその両方は1つ以上の第2インフルエンザHA由来のものであり、E1、E2または両サブドメインおよびF'1、F'2または両サブドメインは同じインフルエンザHAに由来するものである、核酸。
【請求項2】
キメラインフルエンザHAポリペプチドをコードする配列が、HAネイティブシグナルペプチド配列、アルファルファPDIシグナルペプチド配列、インフルエンザH5シグナルペプチド配列およびインフルエンザH1シグナルペプチド配列の群から選択されるシグナルペプチド配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
5'UTR、3'UTRまたは5'UTRおよび3'UTRが、プラストシアニンUTRまたはCPMV UTRから得られたものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
調節領域が、プラストシアニン調節領域、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)調節領域、クロロフィルa/b結合タンパク質(CAB)調節領域、CaMV35S調節領域、アクチン調節領域、ユビキチン調節領域、トリオースリン酸イソメラーゼ1調節領域、翻訳開始因子4A調節領域、およびST-LS1調節領域から得られたものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
第1および第2インフルエンザHAが、H1、H3、H5およびBを含む群から独立して選択されたものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
植物においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法であって、a)請求項1に記載の核酸を植物またはその一部に導入すること、および
b)植物またはその一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産すること
を含む方法。
【請求項7】
導入ステップ(ステップa)において、核酸が植物に一過性に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
導入ステップ(ステップa)において、核酸がゲノムに安定に組み込まれるように植物に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
c)宿主を収穫し、VLPを精製するステップ
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の核酸によってコードされるポリペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリペプチドを含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項12】
植物特異的N-グリカンまたは修飾N-グリカンをさらに含む、請求項11に記載のVLP。
【請求項13】
有効量の請求項12に記載のVLPと医薬上許容される担体とを含む組成物。
【請求項14】
対象においてインフルエンザウイルス感染に対する免疫を誘導する方法であって、請求項11に記載のウイルス様粒子を投与することを含む方法。
【請求項15】
ウイルス様粒子が、対象に、経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、または皮下投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の核酸によってコードされるポリペプチドを含む、植物、またはその一部。
【請求項17】
RBサブドメインが第1インフルエンザHAのものであり、E1、E2、SDC、TDCまたはそれらの組合せが、第2インフルエンザHAに由来するものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸によってコードされるポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドを含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項20】
植物においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法であって、
a)請求項17に記載の核酸を植物またはその一部に導入すること、および
b)植物またはその一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産すること、
を含む方法。
【請求項21】
SDCおよびHDCが第1インフルエンザHAに由来するものであり、TDCが第2インフルエンザHAに由来するものである、請求項1に記載の核酸。
【請求項22】
請求項21の核酸によってコードされるポリペプチド。
【請求項23】
請求項22に記載のポリペプチドを含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項24】
植物においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法であって、
a)請求項21に記載の核酸を植物またはその一部に導入すること、および
b)植物またはその一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産すること、
を含む方法。
【請求項25】
ステムドメインクラスター(SDC)、頭部ドメインクラスター(HDC)および膜貫通ドメインクラスター(TDC)を含むキメラインフルエンザHAポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結された1つ以上の調節領域を含む核酸であって、
a)SDCは、F'1、F'2およびFサブドメインを含み;
b)HDCは、RB、E1およびE2サブドメインを含み;
c)TDCは、TmDおよびCtailサブドメインを含み;かつ
RBサブドメインは第1インフルエンザHAのものであり、E1、E2、SDC、TDCまたはその組合せは、1つ以上の第2インフルエンザHAに由来するものである、核酸。
【請求項26】
E1、E2または両サブドメインおよびF'1、F'2または両サブドメインが同じインフルエンザHAに由来するものである、請求項25に記載の核酸。
【請求項27】
請求項25に記載の核酸によってコードされるポリペプチド。
【請求項28】
請求項27に記載のポリペプチドを含むウイルス様粒子(VLP)。
【請求項29】
植物においてキメラインフルエンザウイルス様粒子(VLP)を生産する方法であって、
a)請求項25に記載の核酸を植物またはその一部に導入すること、および
b)植物またはその一部を、核酸の発現を許す条件下でインキュベートし、それによってVLPを生産すること、
を含む方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44−1】
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【図44−2】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51−1】
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【図51−2】
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【公表番号】特表2012−530499(P2012−530499A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516452(P2012−516452)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000983
【国際公開番号】WO2010/148511
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(502121395)メディカゴ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】