ヘマトクリット(Hct)の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置
【課題】センサを用いて電気化学的に血液のヘマトクリット(Hct)値を測定する方法において、測定精度および信頼性に優れたHct値の測定方法およびそれに用いるセンサを提供する。
【解決手段】血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法において、作用極(11)および対極(12)を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極(11)上には、酸化還元物質を配置せず、対極(12)上には酸化還元物質を配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記作用極(11)と対極(12)との間に流れる電流を検出し、この電流値からHct値を測定する。
【解決手段】血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法において、作用極(11)および対極(12)を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極(11)上には、酸化還元物質を配置せず、対極(12)上には酸化還元物質を配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記作用極(11)と対極(12)との間に流れる電流を検出し、この電流値からHct値を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Hctの測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査等において、血液のHct値は、血液の性状(血液のさらさら度や貧血など)を知る指標の一つとして測定されている。また、血液中のグルコース濃度(血糖値)等の血液成分の測定において、Hct値により測定値が変動することがあるため、その補正のためにもHct値の測定が必要となることがある。用手法によるHct値の測定は、例えば、凝固阻止剤を加えた血液を毛細管に吸い上げ、片方をパテ等で封して高速遠心後、全体を100%として赤血球層の高さから比率を求める方法(ミクロヘマトクリット法)が一般的である。この他に、自動血球計数器の場合は、赤血球を電気的なパルスとして捉え、これらの大きさの和から算出するものと、赤血球の平均容積と赤血球の数から自動的に計算する方式がある。ちなみに、成人男子の標準的なHct値は、39〜50%であり、成人女子の標準的なHct値は、36〜45%であると言われている。
【0003】
しかし、従来のHct値の用手法による測定方法では、操作が煩雑で測定に時間がかかるという問題があり、他方、自動血球計数器による方法では、特別な装置を必要とするという問題がある。このため、Hct値をセンサによって電気化学的に、かつ簡便に測定する技術が検討されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来のセンサを用いたHct値の測定方法では、その精度および信頼性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3369183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、センサを用いて電気化学的にHct値を測定する方法において、測定精度および信頼性に優れたHct値の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法であって、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質を配置せず、対極上には酸化還元物質を配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記電極間に流れる酸化電流または還元電流を検出し、この電流値からHct値を測定するという方法である。
【0007】
また、本発明のセンサは、血液のヘマトクリット(Hct)値を電気化学的に測定するためのセンサであって、作用極および対極を含む電極系を有し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に前記血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより電極間に流れる酸化電流または還元電流の電流値を検出するセンサである。
【0008】
そして、本発明の測定装置は、Hct値の測定装置であって、前記本発明のセンサを保持する保持手段、前記センサの電極系に一定電圧を印加する印加手段および前記センサの電極系の酸化電流または還元電流を検出する検出手段を有する測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の測定方法およびセンサでは、作用極および対極を含む電極系のうち、作用極上には酸化還元物質を配置せず、対極上に酸化還元物質を配置するようにしたので、前記作用極上には酸化還元物質を含まない血液が存在することになる。このため本発明では、前記作用極により、血液のHct値に依存した信頼性ある電流値が得られ、また前記対極上にある酸化還元物質によって前記電流値を高感度で検出することができ、その結果、測定精度に優れ、しかもその測定は簡単に行うことができる。また、本発明によれば、センサによるHct値の電気化学的測定が可能となるので、従来の測定方法のような特別な大型測定器具若しくは装置を用いた測定方法が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のセンサの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、前記センサの断面図である。
【図3】図3は、前記センサの平面図である。
【図4】図4は、本発明のセンサのその他の例を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、前記センサの断面図である。
【図6】図6は、前記センサの平面図である。
【図7】図7Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図7Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図8】図8Aは、比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図8Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図8Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図9】図9Aは、その他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図9Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図9Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図10】図10Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図10Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図10Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図11】図11Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図11Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図11Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図12】図12Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図12Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図12Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図13】図13Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図13Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図13Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図14】図14Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図14Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図14Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図15】図15Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図15Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図15Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図16】図16Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図16Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図16Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図17】図17Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図17Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図17Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図18】図18Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図18Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図18Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図19】図19Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(0.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図19Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図20】図20Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図20Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図21】図21Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図21Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図22】図22Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図22Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図23】図23Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図23Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図24】図24Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図24Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図25】図25Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図25Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図26】図26Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図26Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図27】図27Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図27Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図28】図28Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図28Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図29】図29Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図29Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図30】図30Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図30Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図31】図31Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図31Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図32】図32Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図32Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図33】図33は、本発明の測定装置の一例を示す斜視図である。
【図34】図34は、前記例の測定装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0012】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記酸化還元物質は、特に制限されず、還元状態であっても酸化状態であってもよく、例えば、フェリシアン化物、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体があげられる。この中で、フェリシアン化物が好ましく、より好ましくはフェリシアン化カリウムである。なお、フェリシアン化物の還元状態はフェロシアン化物であり、フェリシアン化カリウムの還元状態は、フェロシアン化カリウムである。前記酸化還元物質の配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。また、銀、銅、あるいは塩化銀等の、比較的電解酸化あるいは還元が容易な物質を電極材料として用いた場合においても、本発明の目的とする効果が得られる。
【0013】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、不純物の付着防止および酸化防止等の目的で、前記酸化還元物質が配置されない作用極は、高分子材料により被覆されていることが好ましい。前記高分子材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリジン等のポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体などがあげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。高分子材料による電極の被覆方法は、特に制限されず、例えば、高分子材料溶液を準備し、これを電極表面に塗布し、ついで乾燥させて前記塗膜中の溶媒を除去すればよい。
【0014】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記両電極間の印加電圧が、水が電気分解する電圧以上であるのが好ましく、より好ましくは1〜10Vの範囲、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。水が電気分解する電圧以上の電圧を印加することで、ヘマトクリットに依存した電流をさらに高感度で測定することができ、血液中に存在する他の酸化還元物質の影響を受けず、個体差(個人差)に依存しない安定した電流が得られる。また、前記対極を基準として作用極にマイナスの電圧を印加してもよい。また、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。
【0015】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記作用極と対極との間の最近接距離は、0.05mm以上であるのが好ましい。このように0.05mm以上の電極間距離があれば、測定値の信頼性が向上する。より好ましい電極間距離は、0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。
【0016】
本発明のHct値測定用センサは、絶縁基板を有し、前記絶縁基板において、前記電極系およびここに前記血液を導入するための流路が形成され、前記流路の一端は前記電極系に連通し、前記流路の他端はセンサの外部に向かって開口され、この部分が血液供給口となっているという構成であることが好ましい。この場合、さらに、スペーサーとカバーとを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている構成であってもよい。
【0017】
本発明のHct値測定センサにおいて、前記電極系に、さらに、結晶均質化剤が配置されていてもよい。
【0018】
前記結晶均質化剤は、試薬部の結晶状態を均質にするためのものであり、例えば、アミノ酸があげられる。前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、サルコシン、ベタイン、タウリン、これらの塩、置換体および誘導体があげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。これらのなかで、グリシン、セリン、プロリン、トレオニン、リシン、タウリンが好ましく、より好ましくは、タウリンである。前記結晶均質化剤の配合量は、1回の測定当り若しくは1センサ当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは、10〜500mMであり、より好ましくは10〜300mMである。
【0019】
つぎに、本発明の測定装置において、前記印加手段により印加される電圧が、水が電気分解する値以上の電圧であり、前記検出手段により検出された電流値からHct値を算出する算出手段を有することが好ましい。なお、前述と同様の理由により、前記印加される電圧は、好ましくは、1〜10Vの範囲であり、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。
【0020】
つぎに、本発明のHct測定用センサの例について、図面に基づき説明する。
【0021】
図1、図2および図3に、本発明のHct値測定用センサの一例を示す。図1は、前記センサの分解斜視図であり、図2は断面図であり、図3は平面図であり、前記3図において、同一部分には同一符号を付している。
【0022】
図示のように、このセンサは、絶縁基板101の上に、直列状に作用極11および対極12が形成されている。前述のように、作用極11の表面上は、高分子材料により被覆されていることが好ましい。また、このセンサの例では、対極12上に酸化還元物質13が配置されている。前記絶縁基板101の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサー102を介しカバー103が配置されている。このセンサには、前記作用極11および対極12に血液を導入するための流路14が形成されている。この流路の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延びており、外部に対し開口して、血液供給口となっている。前記作用極11および対極12は、それぞれリードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側(図において右側)に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー103の流路14の端に対応する部分には、毛細管現象を発生するための空気抜孔15が形成されている。
【0023】
本発明において、前記絶縁基板の材質は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラス等が使用でき、このなかで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)が好ましく、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。絶縁基板の大きさは、特に制限されず、例えば、図示のような板状の場合、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.05〜2mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.1〜1mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.1〜0.6mmである。
【0024】
絶縁基板上の電極およびリードは、例えば、金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法あるいは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザーにより特定の電極パターンに加工することで形成できる。レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー等が使用できる。
【0025】
前記高分子材料による電極表面の被覆は、前述のように、例えば、所定の高分子材料を水若しくは緩衝液に溶解し、これを乾燥させることにより形成することができる。例えば、0.01〜2.0wt%CMC水溶液を、前記基板上の作用極11の上に0.01〜100mg滴下し、乾燥させればよい。前記乾燥の方法は、特に制限されず、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよい。
【0026】
前記対極12上への酸化還元物質13の配置は、例えば、酸化還元物質を水若しくは緩衝液に溶解し、これを対極表面に滴下若しくは塗布し、これを乾燥させればよい。酸化還元物質に加え、他の試薬を配置する場合には、前述のように試薬液を調製し、これを対極表面に滴下若しくは塗布し、これを乾燥させればよい。例えば、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、前記基板上の対極12の上に0.01〜100mg滴下し、乾燥させる。前記乾燥の方法は、特に制限されず、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよい。
【0027】
つぎに、本発明において、スペーサーの材質は、特に制限されず、例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。また、スペーサーの大きさは、特に制限されず、図示のような形状の場合、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜1mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.5mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.05〜0.25mmである。スペーサーには、血液導入のための流路となる切り欠き部が形成されているが、その大きさは、例えば、血液供給口から端までの長さ0.5〜50mm、幅0.1〜10mm、好ましくは、血液供給口から端までの長さ1〜10mm、幅0.5〜5mm、より好ましくは、血液供給口から端までの長さ1〜5mm、幅0.5〜2mmである。この切り欠き部は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、スペーサーの形成時に、切り欠き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。
【0028】
つぎに、本発明において、カバーの材質は、特に制限されず、例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。カバーの試料供給路の天井部に相当する部分は、親水性処理することが、さらに好ましい。親水性処理としては、例えば、界面活性剤を塗布する方法、プラズマ処理などによりカバー表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入する方法がある。カバーの大きさは、特に制限されず、図示のような形状の場合、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜0.5mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.25mmであり、より好ましくは、全長15〜30mm、幅5〜10mm、厚み0.05〜0.2mmである。カバーには、空気抜孔が形成されていることが好ましく、形状は、例えば、円形、楕円形、多角形などであり、その大きさは、例えば、最大直径0.01〜10mm、好ましくは、最大直径0.025〜5mm、より好ましくは、最大直径0.025〜2mmである。また、空気抜孔を複数個設けてもかまわない。この空気抜孔は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、カバーの形成時に、空気抜き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。
【0029】
つぎに、このセンサは、絶縁基板、スペーサーおよびカバーをこの順序で積層し、一体化することにより製造できる。一体化には、前記3つの部材を接着剤で貼り付けたり、若しくは熱融着してもよい。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、また熱硬化性接着剤(ホットメルト接着剤等)、UV硬化性接着剤等が使用できる。
【0030】
このセンサを用いたHct値測定は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により、血液をセンサ内部に導入させる。そして、作用極11および対極12の間に一定の電圧を印加することにより、作用極11においては、血液成分の酸化が起こり、対極12では酸化状態の還元物質の還元が起こる。ここで流れる電流は、Hct値に依存するものであり、この電流を検出してHctを求める。検出した電流からHct値を求めるには、予め電流とHct値との検量線若しくは検量線テーブルを準備し、電流の検出の都度、換算すればよい。印加電圧は、前述のように、例えば、水が電気分解する電圧以上であり、好ましくは1〜10V、より好ましくは1〜6.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。この工程において、作用極11と対極12との間は一定の間隙があり、かつ、前記作用極11上には酸化還元物質が存在していないので、血液のHct値のみ依存する電流が流れ、かつ前記対極12上に存在する酸化還元物質によって、対極12での反応が律速過程となることを抑制できる。
【0031】
つぎに、図4、図5および図6に、本発明のHct値測定用センサのその他の例を示す。図4は、前記センサの分解斜視図であり、図5は断面図であり、図6は平面図であり、前記3図において、同一部分には同一符号を付している。
【0032】
図示のように、このセンサでは、基板201上に、作用極21および対極22が並列に形成され、対極22上に酸化還元物質23が配置されている。これに伴い、血液を電極に導入するための流路24は、センサ先端部の血液導入口からセンサ中心に向かって延びているが、途中に2つの流路に分岐し、全体的にT字状となっており、分岐した流路のそれぞれの端部に、作用極21若しくは対極22が位置している。またスペーサー202の切り欠き形状もT字状であり、カバー203の、前記2つの分岐流路の端部に該当する部分に、毛細管現象を発生するための空気抜孔25がそれぞれ形成されている。これ以外の構成、形成材料、形成方法、Hct値の測定手法および測定条件等は、前述の例と同様である。
【0033】
以上、本発明のセンサを2例あげたが、本発明における電極パターンは、これらに限定されない。また、本発明のセンサは、血液成分測定用のセンサに組み込まれた状態であってもよい。
【0034】
つぎに、本発明の測定装置の一例について、図33および図34に基づき説明する。前記両図において、図1〜図6と同一部分には、同一符号を付している。
【0035】
図33の斜視図に、センサを装着した状態の本発明の測定装置の一例を示す。図示のように、この測定装置123は、その一端にセンサの装着口125を有し、ここにセンサ121を装着して保持する。なお、122は、センサ121の検体供給口である。また、この測定装置123の略中央には表示部124を有し、ここに測定結果を表示する。
【0036】
つぎに、図34に、本発明の測定装置の構成の一例を示す。図示のように、この測定装置110は、2つのコネクタ111a、111b、電流/電圧変換回路112、A/D変換回路113、CPU114、液晶表示装置(LCD)115および基準電圧源116を主要構成要素としている。なお、基準電圧源116は、グランドとすることもできる。センサの対極12は、コネクタ111aを介して基準電圧源116に接続されている。センサの作用極11は、コネクタ111b、電流/電圧変換回路112およびA/D変換回路113を介しCPU114に接続されている。また、液晶表示装置115は、CPUに接続されている。この測定装置において、ヘマトクリットの測定は、例えば、つぎのようにして実施される。すなわち、まず、センサの電極系に血液が導入されると、CPU114の指令により電流/電圧変換回路112および基準電圧源116から作用極11および対電極12間に一定の電圧が一定時間印加される。この印加電圧の好ましい範囲は、前述のとおりである。この電圧印加により、前記両電極間に酸化電流若しくは還元電流が流れる。この電流は、血液のヘマトクリット値に基づくものである。そして、この電流は、電流/電圧変換回路112によって電圧に変換され、その電圧値は、A/D変換回路113によってデジタル値に変換されてCPU114に出力される。CPU114は、そのデジタル値をもとにして応答値を算出し、これをヘマトクリット値に換算し、その結果を、液晶表示部115に表示する。
【0037】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0038】
図1、2および3に示す構成のセンサを作製した。なお、前記センサにおいて、前記作用極11は、CMCにより被覆した。一方、フェリシアン化カリウム(量:60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を前記対極12上に滴下した後、乾燥させた。前記両電極間の最近接距離は1.0mm以上とした。他方、Hct値を、25、45および65に調整した、3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料について、前記センサにより、印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件で、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図7Aおよび図7Bのグラフに示す。図7Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図7Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。感度差のグラフは、Hct値が25%または65%の血液応答値の経時変化を、Hct値45%の血液応答値を基準にして示したものである。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。なお、両電極上にCMCのような高分子材料が無い場合においても、検出は可能であった。
【0039】
(比較例1)
図8Aに示す構成のセンサを作製した。図示のように、このセンサでは、作用極31と対極32とが、流路34上で接するように形成され、カバー(図示せず)の流路34の端に対応する部分には、毛細管現象を発生するための空気抜孔35が形成されている。このセンサにおいて、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、フェリシアン化カリウムの約7分の1の濃度のフェロシアン化カリウム、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、基板の作用極31および対極32の両電極からはみ出るように滴下し、乾燥させた。また、前記印加電圧を0.2Vとした。これら以外は、実施例1と同じ条件で、3つのHct値の前記試料について、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図8Bおよび図8Cのグラフに示す。図8Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図8Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。図示のように、この比較例では、その感度差が電圧印加時間の影響を大きく受けており、Hctの定量に適した応答電流を得るに至らなかった。
【0040】
(比較例2)
前記比較例1のセンサにおいて、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、基板の作用極31および対極32の両電極からはみ出るように滴下し、乾燥させた。これ以外は、実施例1と同じ条件で(印加電圧2.5V等)、3つのHct値の前記試料について、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図9Bおよび図9Cのグラフに示す。図9Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図9Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。図示のように、この比較例においても、その感度差が電圧印加時間の影響を大きく受けており、Hctの定量に適した応答電流を得るに至らなかった。
【実施例2】
【0041】
本実施例では、6種類のセンサ(2−1〜2−6)を作製し、それぞれのセンサにおいて、作用極もしくは対極に対する酸化還元物質(フェリシアン化カリウム)の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。また、併せて、比較例3として、3種類のセンサ(2−7〜2−9)を作製し、それぞれのセンサにおいて、作用極もしくは対極に対する酸化還元物質(フェリシアン化カリウム)の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。前記各センサは、酸化還元物質の配置および電極間距離(1.15mm)以外は、実施例1と同様にして作製した。また、応答電流値および感度差の測定も、実施例1と同様にして行った。以下、各センサの酸化還元物質の配置パターンと、前記測定結果を示す。なお、図10〜図18において、図Aは、酸化還元物質の配置パターンを示す図であり、図Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【0042】
(2−1)
図10Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面上と、前記両電極間の対極側の一部とに、酸化還元物質13が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図10Bおよび図10Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0043】
(2−2)
図11Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12の表面上のみに配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図11Bおよび図11Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0044】
(2−3)
図12Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面上と、前記両電極間とに、酸化還元物質が存在している。なお、作用極11上には酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図12Bおよび図12Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0045】
(2−4)
図13Aに示すように、この例のセンサでは、作用極11と対極12との配置を入れ替え、導入される血液の流れの上流側に酸化還元物質13の配置された対極12を形成し、下流側に酸化還元物質13が配置されていない作用極11を形成している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図13Bおよび図13Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができたが、上記(2−1)、(2−2)および(2−3)の例に比べると、感度差が若干小さかった。
【0046】
(2−5)
図14Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面の一部上と、前記両電極間の一部とに、酸化還元物質が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図14Bおよび図14Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0047】
(2−6)
図15Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面の一部に、酸化還元物質が存在している。なお、前記両電極間には、酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図15Bおよび図15Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0048】
(2−7)
図16Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質13を、作用極11、対極12および前記両電極の全てに配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図16Bおよび図16Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0049】
(2−8)
図17Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質13を、作用極11、対極12および前記両電極の一部に配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図17Bおよび図17Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0050】
(2−9)
図18Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質を配置していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図18Bおよび図18Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を検出できなかった。
【実施例3】
【0051】
本実施例では、印加電圧を0.5〜6.5Vの範囲で変化させて、センサにおける応答電流および感度差を測定した。前記センサは、実施例1と同様にして作製した。また、応答電流値および感度差の測定も、実施例1と同様にして行った。この測定結果を、図19〜図31の各グラフに示す。なお、図19〜図31において、図Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【0052】
図19に示すように、0.5Vの印加電圧であってもHct値を反映した応答電流を検出できたが、1〜6.5Vで印加すると、図20〜図31に示すように、さら明確に応答電流が検出可能であり、最も好ましいのは、図20〜図24に示すように、1〜3Vで印加した場合であった。なお、5V以上で印加すると、時間の経過により波形が乱れるが、印加直後から短い時間内であれば、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できる。なお、本実施例では、一定の条件下で印加電圧を変化させてHct値に基づく電流を検出したが、本発明は、これに限定されず、印加電圧が本実施例で示した範囲に無くても、電極間距離、酸化還元物質の種類や量等のその他の条件を適宜設定することで、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することが可能である。
【実施例4】
【0053】
図1、2および3に示す構成のセンサを作製した。なお、前記センサにおいて、前記作用極11は、CMCにより被覆した。一方、フェロシアン化カリウム(量:60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を前記対極12上に滴下した後、乾燥させた。前記両電極間の最近接距離は1.0mm以上とした。他方、Hct値を、25、45および65に調整した、3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料について、前記センサにより、印加電圧として作用極に−2.5Vを印加し、印加時間3秒の条件で、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図32Aおよび図32Bのグラフに示す。図32Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図32Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。なお、両電極上にCMCのような高分子材料が無い場合においても、検出は可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明のHct値の測定方法およびこれに用いるセンサならびに測定装置は、Hct値を電気化学的に高精度および高信頼度で、しかも簡単に測定することができる。したがって、本発明の測定方法およびセンサならびに測定装置は、血液のHct値の測定に有用であり、グルコース等の血液成分のセンサを用いた電気化学的測定におけるHct値による補正に適している。
【符号の説明】
【0055】
11、21、31 作用極
12、22、32 対極
13、23、33 試薬部
14、24、34 流路
15、25、35 空気抜孔
101、201 絶縁基板
102、202 スペーサー
103、203 カバー
110、123 測定装置
121 センサ
122 検体供給口
124 表示部
125 装着口
111a、111b コネクタ
112 電流/電圧変換回路
113 A/D変換回路
114 CPU
115 LCD
116 基準電圧源
【技術分野】
【0001】
本発明は、Hctの測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査等において、血液のHct値は、血液の性状(血液のさらさら度や貧血など)を知る指標の一つとして測定されている。また、血液中のグルコース濃度(血糖値)等の血液成分の測定において、Hct値により測定値が変動することがあるため、その補正のためにもHct値の測定が必要となることがある。用手法によるHct値の測定は、例えば、凝固阻止剤を加えた血液を毛細管に吸い上げ、片方をパテ等で封して高速遠心後、全体を100%として赤血球層の高さから比率を求める方法(ミクロヘマトクリット法)が一般的である。この他に、自動血球計数器の場合は、赤血球を電気的なパルスとして捉え、これらの大きさの和から算出するものと、赤血球の平均容積と赤血球の数から自動的に計算する方式がある。ちなみに、成人男子の標準的なHct値は、39〜50%であり、成人女子の標準的なHct値は、36〜45%であると言われている。
【0003】
しかし、従来のHct値の用手法による測定方法では、操作が煩雑で測定に時間がかかるという問題があり、他方、自動血球計数器による方法では、特別な装置を必要とするという問題がある。このため、Hct値をセンサによって電気化学的に、かつ簡便に測定する技術が検討されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来のセンサを用いたHct値の測定方法では、その精度および信頼性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3369183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、センサを用いて電気化学的にHct値を測定する方法において、測定精度および信頼性に優れたHct値の測定方法およびそれに用いるセンサならびに測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の測定方法は、血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法であって、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質を配置せず、対極上には酸化還元物質を配置し、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記電極間に流れる酸化電流または還元電流を検出し、この電流値からHct値を測定するという方法である。
【0007】
また、本発明のセンサは、血液のヘマトクリット(Hct)値を電気化学的に測定するためのセンサであって、作用極および対極を含む電極系を有し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に前記血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより電極間に流れる酸化電流または還元電流の電流値を検出するセンサである。
【0008】
そして、本発明の測定装置は、Hct値の測定装置であって、前記本発明のセンサを保持する保持手段、前記センサの電極系に一定電圧を印加する印加手段および前記センサの電極系の酸化電流または還元電流を検出する検出手段を有する測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の測定方法およびセンサでは、作用極および対極を含む電極系のうち、作用極上には酸化還元物質を配置せず、対極上に酸化還元物質を配置するようにしたので、前記作用極上には酸化還元物質を含まない血液が存在することになる。このため本発明では、前記作用極により、血液のHct値に依存した信頼性ある電流値が得られ、また前記対極上にある酸化還元物質によって前記電流値を高感度で検出することができ、その結果、測定精度に優れ、しかもその測定は簡単に行うことができる。また、本発明によれば、センサによるHct値の電気化学的測定が可能となるので、従来の測定方法のような特別な大型測定器具若しくは装置を用いた測定方法が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のセンサの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、前記センサの断面図である。
【図3】図3は、前記センサの平面図である。
【図4】図4は、本発明のセンサのその他の例を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、前記センサの断面図である。
【図6】図6は、前記センサの平面図である。
【図7】図7Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図7Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図8】図8Aは、比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図8Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図8Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図9】図9Aは、その他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図9Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図9Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図10】図10Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図10Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図10Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図11】図11Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図11Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図11Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図12】図12Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図12Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図12Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図13】図13Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図13Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図13Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図14】図14Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図14Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図14Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図15】図15Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図15Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図15Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図16】図16Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図16Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図16Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図17】図17Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図17Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図17Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図18】図18Aは、さらにその他の比較例のセンサにおける酸化還元物質の配置状態を示す図であり、図18Bは、前記例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図18Cは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図19】図19Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(0.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図19Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図20】図20Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図20Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図21】図21Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(1.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図21Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図22】図22Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図22Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図23】図23Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(2.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図23Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図24】図24Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図24Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図25】図25Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(3.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図25Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図26】図26Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図26Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図27】図27Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(4.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図27Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図28】図28Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図28Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図29】図29Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(5.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図29Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図30】図30Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.0V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図30Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図31】図31Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧(6.5V)の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図31Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図32】図32Aは、本発明のセンサのさらにその他の例における電圧の印加に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図32Bは、前記例における電圧の印加に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【図33】図33は、本発明の測定装置の一例を示す斜視図である。
【図34】図34は、前記例の測定装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0012】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記酸化還元物質は、特に制限されず、還元状態であっても酸化状態であってもよく、例えば、フェリシアン化物、p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン、フェロセン誘導体があげられる。この中で、フェリシアン化物が好ましく、より好ましくはフェリシアン化カリウムである。なお、フェリシアン化物の還元状態はフェロシアン化物であり、フェリシアン化カリウムの還元状態は、フェロシアン化カリウムである。前記酸化還元物質の配合量は、特に制限されず、1回の測定当り若しくはセンサ1個当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは1〜500mMであり、より好ましくは、10〜200mMである。また、銀、銅、あるいは塩化銀等の、比較的電解酸化あるいは還元が容易な物質を電極材料として用いた場合においても、本発明の目的とする効果が得られる。
【0013】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、不純物の付着防止および酸化防止等の目的で、前記酸化還元物質が配置されない作用極は、高分子材料により被覆されていることが好ましい。前記高分子材料としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリジン等のポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、スターチおよびその誘導体、無水マレイン酸重合体およびその塩、アガロースゲルおよびその誘導体などがあげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。高分子材料による電極の被覆方法は、特に制限されず、例えば、高分子材料溶液を準備し、これを電極表面に塗布し、ついで乾燥させて前記塗膜中の溶媒を除去すればよい。
【0014】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記両電極間の印加電圧が、水が電気分解する電圧以上であるのが好ましく、より好ましくは1〜10Vの範囲、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。水が電気分解する電圧以上の電圧を印加することで、ヘマトクリットに依存した電流をさらに高感度で測定することができ、血液中に存在する他の酸化還元物質の影響を受けず、個体差(個人差)に依存しない安定した電流が得られる。また、前記対極を基準として作用極にマイナスの電圧を印加してもよい。また、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。
【0015】
本発明のHct値の測定方法およびセンサにおいて、前記作用極と対極との間の最近接距離は、0.05mm以上であるのが好ましい。このように0.05mm以上の電極間距離があれば、測定値の信頼性が向上する。より好ましい電極間距離は、0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。
【0016】
本発明のHct値測定用センサは、絶縁基板を有し、前記絶縁基板において、前記電極系およびここに前記血液を導入するための流路が形成され、前記流路の一端は前記電極系に連通し、前記流路の他端はセンサの外部に向かって開口され、この部分が血液供給口となっているという構成であることが好ましい。この場合、さらに、スペーサーとカバーとを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている構成であってもよい。
【0017】
本発明のHct値測定センサにおいて、前記電極系に、さらに、結晶均質化剤が配置されていてもよい。
【0018】
前記結晶均質化剤は、試薬部の結晶状態を均質にするためのものであり、例えば、アミノ酸があげられる。前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、サルコシン、ベタイン、タウリン、これらの塩、置換体および誘導体があげられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上で併用してもよい。これらのなかで、グリシン、セリン、プロリン、トレオニン、リシン、タウリンが好ましく、より好ましくは、タウリンである。前記結晶均質化剤の配合量は、1回の測定当り若しくは1センサ当り、例えば、0.1〜1000mMであり、好ましくは、10〜500mMであり、より好ましくは10〜300mMである。
【0019】
つぎに、本発明の測定装置において、前記印加手段により印加される電圧が、水が電気分解する値以上の電圧であり、前記検出手段により検出された電流値からHct値を算出する算出手段を有することが好ましい。なお、前述と同様の理由により、前記印加される電圧は、好ましくは、1〜10Vの範囲であり、さらに好ましくは1〜6.5Vの範囲である。
【0020】
つぎに、本発明のHct測定用センサの例について、図面に基づき説明する。
【0021】
図1、図2および図3に、本発明のHct値測定用センサの一例を示す。図1は、前記センサの分解斜視図であり、図2は断面図であり、図3は平面図であり、前記3図において、同一部分には同一符号を付している。
【0022】
図示のように、このセンサは、絶縁基板101の上に、直列状に作用極11および対極12が形成されている。前述のように、作用極11の表面上は、高分子材料により被覆されていることが好ましい。また、このセンサの例では、対極12上に酸化還元物質13が配置されている。前記絶縁基板101の上には、一方の端部(図において右側端部)を残してスペーサー102を介しカバー103が配置されている。このセンサには、前記作用極11および対極12に血液を導入するための流路14が形成されている。この流路の先端は、センサの他方の端部(図において左側端部)まで延びており、外部に対し開口して、血液供給口となっている。前記作用極11および対極12は、それぞれリードと連結し、これらのリードは、前記一方の端部側(図において右側)に延びており、リードの先端はカバーに覆われずに露出している。前記カバー103の流路14の端に対応する部分には、毛細管現象を発生するための空気抜孔15が形成されている。
【0023】
本発明において、前記絶縁基板の材質は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、モノマーキャストナイロン(MC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、メタクリル樹脂(PMMA)、ABS樹脂(ABS)、ガラス等が使用でき、このなかで、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)が好ましく、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。絶縁基板の大きさは、特に制限されず、例えば、図示のような板状の場合、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.05〜2mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.1〜1mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.1〜0.6mmである。
【0024】
絶縁基板上の電極およびリードは、例えば、金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法あるいは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザーにより特定の電極パターンに加工することで形成できる。レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー等が使用できる。
【0025】
前記高分子材料による電極表面の被覆は、前述のように、例えば、所定の高分子材料を水若しくは緩衝液に溶解し、これを乾燥させることにより形成することができる。例えば、0.01〜2.0wt%CMC水溶液を、前記基板上の作用極11の上に0.01〜100mg滴下し、乾燥させればよい。前記乾燥の方法は、特に制限されず、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよい。
【0026】
前記対極12上への酸化還元物質13の配置は、例えば、酸化還元物質を水若しくは緩衝液に溶解し、これを対極表面に滴下若しくは塗布し、これを乾燥させればよい。酸化還元物質に加え、他の試薬を配置する場合には、前述のように試薬液を調製し、これを対極表面に滴下若しくは塗布し、これを乾燥させればよい。例えば、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、前記基板上の対極12の上に0.01〜100mg滴下し、乾燥させる。前記乾燥の方法は、特に制限されず、自然乾燥でも温風を用いた強制乾燥でもよい。
【0027】
つぎに、本発明において、スペーサーの材質は、特に制限されず、例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。また、スペーサーの大きさは、特に制限されず、図示のような形状の場合、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜1mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.5mmであり、より好ましくは、全長10〜30mm、幅3〜10mm、厚み0.05〜0.25mmである。スペーサーには、血液導入のための流路となる切り欠き部が形成されているが、その大きさは、例えば、血液供給口から端までの長さ0.5〜50mm、幅0.1〜10mm、好ましくは、血液供給口から端までの長さ1〜10mm、幅0.5〜5mm、より好ましくは、血液供給口から端までの長さ1〜5mm、幅0.5〜2mmである。この切り欠き部は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、スペーサーの形成時に、切り欠き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。
【0028】
つぎに、本発明において、カバーの材質は、特に制限されず、例えば、絶縁基板と同様の材料が使用できる。カバーの試料供給路の天井部に相当する部分は、親水性処理することが、さらに好ましい。親水性処理としては、例えば、界面活性剤を塗布する方法、プラズマ処理などによりカバー表面に水酸基、カルボニル基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入する方法がある。カバーの大きさは、特に制限されず、図示のような形状の場合、例えば、全長5〜100mm、幅3〜50mm、厚み0.01〜0.5mmであり、好ましくは、全長10〜50mm、幅3〜20mm、厚み0.05〜0.25mmであり、より好ましくは、全長15〜30mm、幅5〜10mm、厚み0.05〜0.2mmである。カバーには、空気抜孔が形成されていることが好ましく、形状は、例えば、円形、楕円形、多角形などであり、その大きさは、例えば、最大直径0.01〜10mm、好ましくは、最大直径0.025〜5mm、より好ましくは、最大直径0.025〜2mmである。また、空気抜孔を複数個設けてもかまわない。この空気抜孔は、例えば、レーザーやドリル等で穿孔して形成してもよいし、カバーの形成時に、空気抜き部が形成できるような金型を使用して形成してもよい。
【0029】
つぎに、このセンサは、絶縁基板、スペーサーおよびカバーをこの順序で積層し、一体化することにより製造できる。一体化には、前記3つの部材を接着剤で貼り付けたり、若しくは熱融着してもよい。前記接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、また熱硬化性接着剤(ホットメルト接着剤等)、UV硬化性接着剤等が使用できる。
【0030】
このセンサを用いたHct値測定は、例えば、次のようにして実施される。すなわち、まず、専用のランセットで指先等を穿刺し、出血させる。一方、前記センサを専用の測定装置(メータ)にセットする。そして、出血した血液に、測定装置にセットしたセンサの血液供給口を接触させ、毛細管現象により、血液をセンサ内部に導入させる。そして、作用極11および対極12の間に一定の電圧を印加することにより、作用極11においては、血液成分の酸化が起こり、対極12では酸化状態の還元物質の還元が起こる。ここで流れる電流は、Hct値に依存するものであり、この電流を検出してHctを求める。検出した電流からHct値を求めるには、予め電流とHct値との検量線若しくは検量線テーブルを準備し、電流の検出の都度、換算すればよい。印加電圧は、前述のように、例えば、水が電気分解する電圧以上であり、好ましくは1〜10V、より好ましくは1〜6.5Vであり、印加時間は、例えば、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒、より好ましくは0.01〜5秒である。この工程において、作用極11と対極12との間は一定の間隙があり、かつ、前記作用極11上には酸化還元物質が存在していないので、血液のHct値のみ依存する電流が流れ、かつ前記対極12上に存在する酸化還元物質によって、対極12での反応が律速過程となることを抑制できる。
【0031】
つぎに、図4、図5および図6に、本発明のHct値測定用センサのその他の例を示す。図4は、前記センサの分解斜視図であり、図5は断面図であり、図6は平面図であり、前記3図において、同一部分には同一符号を付している。
【0032】
図示のように、このセンサでは、基板201上に、作用極21および対極22が並列に形成され、対極22上に酸化還元物質23が配置されている。これに伴い、血液を電極に導入するための流路24は、センサ先端部の血液導入口からセンサ中心に向かって延びているが、途中に2つの流路に分岐し、全体的にT字状となっており、分岐した流路のそれぞれの端部に、作用極21若しくは対極22が位置している。またスペーサー202の切り欠き形状もT字状であり、カバー203の、前記2つの分岐流路の端部に該当する部分に、毛細管現象を発生するための空気抜孔25がそれぞれ形成されている。これ以外の構成、形成材料、形成方法、Hct値の測定手法および測定条件等は、前述の例と同様である。
【0033】
以上、本発明のセンサを2例あげたが、本発明における電極パターンは、これらに限定されない。また、本発明のセンサは、血液成分測定用のセンサに組み込まれた状態であってもよい。
【0034】
つぎに、本発明の測定装置の一例について、図33および図34に基づき説明する。前記両図において、図1〜図6と同一部分には、同一符号を付している。
【0035】
図33の斜視図に、センサを装着した状態の本発明の測定装置の一例を示す。図示のように、この測定装置123は、その一端にセンサの装着口125を有し、ここにセンサ121を装着して保持する。なお、122は、センサ121の検体供給口である。また、この測定装置123の略中央には表示部124を有し、ここに測定結果を表示する。
【0036】
つぎに、図34に、本発明の測定装置の構成の一例を示す。図示のように、この測定装置110は、2つのコネクタ111a、111b、電流/電圧変換回路112、A/D変換回路113、CPU114、液晶表示装置(LCD)115および基準電圧源116を主要構成要素としている。なお、基準電圧源116は、グランドとすることもできる。センサの対極12は、コネクタ111aを介して基準電圧源116に接続されている。センサの作用極11は、コネクタ111b、電流/電圧変換回路112およびA/D変換回路113を介しCPU114に接続されている。また、液晶表示装置115は、CPUに接続されている。この測定装置において、ヘマトクリットの測定は、例えば、つぎのようにして実施される。すなわち、まず、センサの電極系に血液が導入されると、CPU114の指令により電流/電圧変換回路112および基準電圧源116から作用極11および対電極12間に一定の電圧が一定時間印加される。この印加電圧の好ましい範囲は、前述のとおりである。この電圧印加により、前記両電極間に酸化電流若しくは還元電流が流れる。この電流は、血液のヘマトクリット値に基づくものである。そして、この電流は、電流/電圧変換回路112によって電圧に変換され、その電圧値は、A/D変換回路113によってデジタル値に変換されてCPU114に出力される。CPU114は、そのデジタル値をもとにして応答値を算出し、これをヘマトクリット値に換算し、その結果を、液晶表示部115に表示する。
【0037】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0038】
図1、2および3に示す構成のセンサを作製した。なお、前記センサにおいて、前記作用極11は、CMCにより被覆した。一方、フェリシアン化カリウム(量:60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を前記対極12上に滴下した後、乾燥させた。前記両電極間の最近接距離は1.0mm以上とした。他方、Hct値を、25、45および65に調整した、3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料について、前記センサにより、印加電圧2.5V、印加時間3秒の条件で、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図7Aおよび図7Bのグラフに示す。図7Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図7Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。感度差のグラフは、Hct値が25%または65%の血液応答値の経時変化を、Hct値45%の血液応答値を基準にして示したものである。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。なお、両電極上にCMCのような高分子材料が無い場合においても、検出は可能であった。
【0039】
(比較例1)
図8Aに示す構成のセンサを作製した。図示のように、このセンサでは、作用極31と対極32とが、流路34上で接するように形成され、カバー(図示せず)の流路34の端に対応する部分には、毛細管現象を発生するための空気抜孔35が形成されている。このセンサにおいて、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、フェリシアン化カリウムの約7分の1の濃度のフェロシアン化カリウム、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、基板の作用極31および対極32の両電極からはみ出るように滴下し、乾燥させた。また、前記印加電圧を0.2Vとした。これら以外は、実施例1と同じ条件で、3つのHct値の前記試料について、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図8Bおよび図8Cのグラフに示す。図8Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図8Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。図示のように、この比較例では、その感度差が電圧印加時間の影響を大きく受けており、Hctの定量に適した応答電流を得るに至らなかった。
【0040】
(比較例2)
前記比較例1のセンサにおいて、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、フェリシアン化カリウム10〜200mM、タウリン10〜300mMを溶解させて試薬溶液を調製し、これを、基板の作用極31および対極32の両電極からはみ出るように滴下し、乾燥させた。これ以外は、実施例1と同じ条件で(印加電圧2.5V等)、3つのHct値の前記試料について、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図9Bおよび図9Cのグラフに示す。図9Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(μA)の経時的変化を表すグラフであり、図9Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。図示のように、この比較例においても、その感度差が電圧印加時間の影響を大きく受けており、Hctの定量に適した応答電流を得るに至らなかった。
【実施例2】
【0041】
本実施例では、6種類のセンサ(2−1〜2−6)を作製し、それぞれのセンサにおいて、作用極もしくは対極に対する酸化還元物質(フェリシアン化カリウム)の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。また、併せて、比較例3として、3種類のセンサ(2−7〜2−9)を作製し、それぞれのセンサにおいて、作用極もしくは対極に対する酸化還元物質(フェリシアン化カリウム)の配置を変えて、応答電流および感度差を測定した。前記各センサは、酸化還元物質の配置および電極間距離(1.15mm)以外は、実施例1と同様にして作製した。また、応答電流値および感度差の測定も、実施例1と同様にして行った。以下、各センサの酸化還元物質の配置パターンと、前記測定結果を示す。なお、図10〜図18において、図Aは、酸化還元物質の配置パターンを示す図であり、図Bは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図Cは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【0042】
(2−1)
図10Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面上と、前記両電極間の対極側の一部とに、酸化還元物質13が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図10Bおよび図10Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0043】
(2−2)
図11Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12の表面上のみに配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図11Bおよび図11Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確かつ良好に検出することができた。
【0044】
(2−3)
図12Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面上と、前記両電極間とに、酸化還元物質が存在している。なお、作用極11上には酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図12Bおよび図12Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0045】
(2−4)
図13Aに示すように、この例のセンサでは、作用極11と対極12との配置を入れ替え、導入される血液の流れの上流側に酸化還元物質13の配置された対極12を形成し、下流側に酸化還元物質13が配置されていない作用極11を形成している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図13Bおよび図13Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができたが、上記(2−1)、(2−2)および(2−3)の例に比べると、感度差が若干小さかった。
【0046】
(2−5)
図14Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面の一部上と、前記両電極間の一部とに、酸化還元物質が存在している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図14Bおよび図14Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0047】
(2−6)
図15Aに示すように、この例のセンサでは、酸化還元物質13を、対極12からはみ出るように配置しており、対極12表面の一部に、酸化還元物質が存在している。なお、前記両電極間には、酸化還元物質は存在していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図15Bおよび図15Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサによれば、電圧を印加した直後の1秒間(図中3〜4秒の間)においては、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。
【0048】
(2−7)
図16Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質13を、作用極11、対極12および前記両電極の全てに配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図16Bおよび図16Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0049】
(2−8)
図17Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質13を、作用極11、対極12および前記両電極の一部に配置している。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図17Bおよび図17Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できなかった。
【0050】
(2−9)
図18Aに示すように、この比較例のセンサでは、酸化還元物質を配置していない。このセンサの前記両電極に流れる電流を測定した結果を、図18Bおよび図18Cのグラフに示す。前記両図に示すように、このセンサでは、Hct値を反映した応答電流を検出できなかった。
【実施例3】
【0051】
本実施例では、印加電圧を0.5〜6.5Vの範囲で変化させて、センサにおける応答電流および感度差を測定した。前記センサは、実施例1と同様にして作製した。また、応答電流値および感度差の測定も、実施例1と同様にして行った。この測定結果を、図19〜図31の各グラフに示す。なお、図19〜図31において、図Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。
【0052】
図19に示すように、0.5Vの印加電圧であってもHct値を反映した応答電流を検出できたが、1〜6.5Vで印加すると、図20〜図31に示すように、さら明確に応答電流が検出可能であり、最も好ましいのは、図20〜図24に示すように、1〜3Vで印加した場合であった。なお、5V以上で印加すると、時間の経過により波形が乱れるが、印加直後から短い時間内であれば、Hct値を反映した応答電流を明確に検出できる。なお、本実施例では、一定の条件下で印加電圧を変化させてHct値に基づく電流を検出したが、本発明は、これに限定されず、印加電圧が本実施例で示した範囲に無くても、電極間距離、酸化還元物質の種類や量等のその他の条件を適宜設定することで、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することが可能である。
【実施例4】
【0053】
図1、2および3に示す構成のセンサを作製した。なお、前記センサにおいて、前記作用極11は、CMCにより被覆した。一方、フェロシアン化カリウム(量:60mM)、タウリン(80mM)を、CMC水溶液(0.1wt%)に溶解して調製した試薬液を前記対極12上に滴下した後、乾燥させた。前記両電極間の最近接距離は1.0mm以上とした。他方、Hct値を、25、45および65に調整した、3種類の血液試料を準備した。これら3つの血液試料について、前記センサにより、印加電圧として作用極に−2.5Vを印加し、印加時間3秒の条件で、センサの前記両電極に流れる電流を測定した。その結果を、図32Aおよび図32Bのグラフに示す。図32Aは、印加電圧(V)に対する応答電流値(A)の経時的変化を表すグラフであり、図32Bは、印加電圧(V)に対する感度差(%)の経時変化のグラフである。前記両図に示すように、このセンサによれば、その感度差が電圧印加時間に依存せず、Hct値を反映した応答電流を明確に検出することができた。なお、両電極上にCMCのような高分子材料が無い場合においても、検出は可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明のHct値の測定方法およびこれに用いるセンサならびに測定装置は、Hct値を電気化学的に高精度および高信頼度で、しかも簡単に測定することができる。したがって、本発明の測定方法およびセンサならびに測定装置は、血液のHct値の測定に有用であり、グルコース等の血液成分のセンサを用いた電気化学的測定におけるHct値による補正に適している。
【符号の説明】
【0055】
11、21、31 作用極
12、22、32 対極
13、23、33 試薬部
14、24、34 流路
15、25、35 空気抜孔
101、201 絶縁基板
102、202 スペーサー
103、203 カバー
110、123 測定装置
121 センサ
122 検体供給口
124 表示部
125 装着口
111a、111b コネクタ
112 電流/電圧変換回路
113 A/D変換回路
114 CPU
115 LCD
116 基準電圧源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法であって、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記電極間に流れる酸化電流または還元電流を検出し、この電流値からHct値を測定する方法。
【請求項2】
前記酸化還元物質が、酸化状態および還元状態の少なくとも一方の酸化還元物質を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記酸化還元物質が、フェリシアン化物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記酸化還元物質が、フェロシアン化物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記フェロシアン化物が、フェロシアン化カリウムである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記酸化還元物質が配置されていない前記作用極が、高分子材料で被覆されている請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記印加電圧が、1〜10Vである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記印加電圧が、前記対極を基準として作用極に対するマイナスの印加電圧である請求項5記載の方法。
【請求項13】
血液のヘマトクリット(Hct)値を電気化学的に測定するためのセンサであって、作用極および対極を含む電極系を有し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に前記血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより電極間に流れる酸化電流または還元電流の電流値を検出するセンサ。
【請求項14】
前記作用極と前記対極とが同一の絶縁基材上に、互いに間隔をあけて平面的に配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項15】
前記センサは血液を導入するための流路を有しており、前記流路の一端から供給された血液の流れの上流側に前記作用極が配置され、下流側に前記対極が配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項16】
前記酸化還元物質が、酸化状態および還元状態の少なくとも一方の酸化還元物質を含む請求項13記載のセンサ。
【請求項17】
前記酸化還元物質が、フェリシアン化物である請求項13記載のセンサ。
【請求項18】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項17記載のセンサ。
【請求項19】
前記酸化還元物質が、フェロシアン化物である請求項13記載のセンサ。
【請求項20】
前記フェロシアン化物が、フェロシアン化カリウムである請求項19記載のセンサ。
【請求項21】
前記酸化還元物質が配置されていない前記作用極が、高分子材料で被覆されている請求項13記載のセンサ。
【請求項22】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項21記載のセンサ。
【請求項23】
前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項13記載のセンサ。
【請求項24】
前記印加電圧が、1〜10Vである請求項13記載のセンサ。
【請求項25】
前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項13記載のセンサ。
【請求項26】
前記印加電圧が、前記対極を基準として作用極に対するマイナスの印加電圧である請求項19記載のセンサ。
【請求項27】
絶縁基板を有し、前記絶縁基板において、前記電極系およびここに前記血液を導入するための流路が形成され、前記流路の一端は前記電極系に連通し、前記流路の他端はセンサの外部に向かって開口され、この部分が血液供給口となっている請求項13記載のセンサ。
【請求項28】
さらに、スペーサーとカバーとを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている請求項27記載のセンサ。
【請求項29】
前記電極系に、さらに、結晶均質化剤が配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項30】
Hct値の測定装置であって、請求項13記載のセンサを保持する保持手段、前記センサの電極系に一定電圧を印加する印加手段および前記センサの電極系の酸化電流または還元電流を検出する検出手段を有する測定装置。
【請求項31】
前記印加手段により印加される電圧が、水が電気分解する値以上の電圧であり、前記検出手段により検出された電流値からHct値を算出する算出手段を有する請求項30記載の装置。
【請求項1】
血液のヘマトクリット(Hct)値の電気化学的測定方法であって、作用極および対極を有する電極系を準備し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより前記電極間に流れる酸化電流または還元電流を検出し、この電流値からHct値を測定する方法。
【請求項2】
前記酸化還元物質が、酸化状態および還元状態の少なくとも一方の酸化還元物質を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記酸化還元物質が、フェリシアン化物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記酸化還元物質が、フェロシアン化物である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記フェロシアン化物が、フェロシアン化カリウムである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記酸化還元物質が配置されていない前記作用極が、高分子材料で被覆されている請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記印加電圧が、1〜10Vである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記印加電圧が、前記対極を基準として作用極に対するマイナスの印加電圧である請求項5記載の方法。
【請求項13】
血液のヘマトクリット(Hct)値を電気化学的に測定するためのセンサであって、作用極および対極を含む電極系を有し、前記二つの電極のうち作用極上には、酸化還元物質が配置されておらず、対極上には酸化還元物質が配置されており、前記電極系に前記血液を導入し、この状態で前記電極系に電圧を印加し、これにより電極間に流れる酸化電流または還元電流の電流値を検出するセンサ。
【請求項14】
前記作用極と前記対極とが同一の絶縁基材上に、互いに間隔をあけて平面的に配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項15】
前記センサは血液を導入するための流路を有しており、前記流路の一端から供給された血液の流れの上流側に前記作用極が配置され、下流側に前記対極が配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項16】
前記酸化還元物質が、酸化状態および還元状態の少なくとも一方の酸化還元物質を含む請求項13記載のセンサ。
【請求項17】
前記酸化還元物質が、フェリシアン化物である請求項13記載のセンサ。
【請求項18】
前記フェリシアン化物が、フェリシアン化カリウムである請求項17記載のセンサ。
【請求項19】
前記酸化還元物質が、フェロシアン化物である請求項13記載のセンサ。
【請求項20】
前記フェロシアン化物が、フェロシアン化カリウムである請求項19記載のセンサ。
【請求項21】
前記酸化還元物質が配置されていない前記作用極が、高分子材料で被覆されている請求項13記載のセンサ。
【請求項22】
前記高分子材料が、カルボキシメチルセルロースである請求項21記載のセンサ。
【請求項23】
前記印加電圧が、水が電気分解する電圧以上である請求項13記載のセンサ。
【請求項24】
前記印加電圧が、1〜10Vである請求項13記載のセンサ。
【請求項25】
前記印加電圧が、1〜6.5Vである請求項13記載のセンサ。
【請求項26】
前記印加電圧が、前記対極を基準として作用極に対するマイナスの印加電圧である請求項19記載のセンサ。
【請求項27】
絶縁基板を有し、前記絶縁基板において、前記電極系およびここに前記血液を導入するための流路が形成され、前記流路の一端は前記電極系に連通し、前記流路の他端はセンサの外部に向かって開口され、この部分が血液供給口となっている請求項13記載のセンサ。
【請求項28】
さらに、スペーサーとカバーとを有し、前記絶縁基板の上に、前記スペーサーを介して前記カバーが配置されている請求項27記載のセンサ。
【請求項29】
前記電極系に、さらに、結晶均質化剤が配置されている請求項13記載のセンサ。
【請求項30】
Hct値の測定装置であって、請求項13記載のセンサを保持する保持手段、前記センサの電極系に一定電圧を印加する印加手段および前記センサの電極系の酸化電流または還元電流を検出する検出手段を有する測定装置。
【請求項31】
前記印加手段により印加される電圧が、水が電気分解する値以上の電圧であり、前記検出手段により検出された電流値からHct値を算出する算出手段を有する請求項30記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2011−141302(P2011−141302A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97370(P2011−97370)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2010−271649(P2010−271649)の分割
【原出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2010−271649(P2010−271649)の分割
【原出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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