説明

ヘミセルロースおよびセルロース物質の選択的加水分解のために酸の組み合わせを使用した糖類の製造方法

バイオマス中のヘミセルロースおよびセルロース物質を加水分解するために酸の組み合わせを使用した糖類の製造方法が提供され、前記酸の組み合わせは、すなわち、バッチ方式、半連続方式、または連続方式でバイオマス中のヘミセルロース物質を加水分解することにより、ペントース生成物またはストリームを提供するための第1の弱有機酸(酢酸またはギ酸など)と、バイオマス中のセルロース物質を加水分解することにより、ヘキソース生成物またはストリームを提供するための第2の強鉱酸(硫酸など)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質の合成またはバイオ燃料もしくはバイオ燃料添加剤の製造でさらに使用するためのセルロースおよびヘミセルロースを含む物質、特にリグノセルロースバイオマスを加水分解するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石起源の物質の供給が難しくなり、確保および使用することがより困難になり、あるいはより費用がかかるようになってきていることから、現在、石油などの化石起源の物質から誘導されている化学物質や燃料製品を提供するため、または、そのような化学物質および燃料製品の許容されたバイオ系機能代替品を提供するために、バイオマス―炭素分が化石起源でなく生物起源である物質―の使用が、近年急速に、研究開発の投資および取り組みの中心になってきている。
【0003】
ある種の化学物質および燃料製品の代用品または代替品は、既にバイオマスから大規模に、商業的に製造されている。例えば、液体燃料製品の分野では、これまでにエタノールおよびバイオディーゼル(脂肪酸アルキルエステル)が、トウモロコシまたは他の穀類、およびサトウキビから(エタノール用)、また各種植物油および脂肪から(バイオディーゼル用)、商業規模で製造されている。
【0004】
しかしながら、通常、6パーセント以上の酸性デタージェント不溶リグニン分(乾燥重量基準で)を含有し、かつ食用製品としては使用されていない、または土地使用の形態や行動様式に物質的な悪影響(例えば、ダイズ、トウモロコシなどの作物をさらに追加生産するための森林破壊)を及ぼさずに、収穫もしくは調達して使用することができるリグノセルロースバイオマスから、適当な液体燃料および燃料添加剤を製造できることは好ましいことであろうと以前から認識されている。例えば、意図的に育てられた非食用バイオマス作物(草、サトウモロコシ、高速成長樹など)、またはより具体的には、木材廃棄物(刈込み材、木材チップ、おが屑など)および植物廃棄物(例えば、葉、刈り取った草、野菜および果物の廃棄物)を含む、多くの非食用リグノセルロースバイオマスが、この性質を有するものとして考え得るであろう。さらに、食用作物または他の目的のために既に耕作されている土地に関しては、生産されたバイオマスの約4分の3は廃棄物になっていると推定されており、したがって、問題のバイオマスが、その栽培に土地が使用されてきた食用作物、またはその他の作物を生産した際の廃棄物であろうと、あるいは栽培された作物とは関係のない資源から発生したものであろうと、利用可能なリグノセルロースの大量の供給があれば、リグノセルロースバイオマスを原料として製造できるであろう、我々が必要としている各種化学物質および燃料製品は、実際、経済的に製造することができるはずであると考えられる。
【0005】
残念ながら、実際には、この提案を実現するには、乗り越えるべき多くの実際的、現実的な困難がある。第1の困難は、リグノセルロースバイオマスに含まれる各種成分が非常に異なる性質を有することに起因する。
【0006】
この点に関しては、石油などの化石系物質でもそうであるが、必要な、または必要となるであろう商品としての化学物質および燃料製品の代用品または代替品の全てを、必要な規模で、また必要な品質、経済性および効率で製造することの、実際の現実的な可能性は、原料―リグノセルロースバイオマス―をいかに有効にかつ効率的にその構成成分へと分別することができるか、また、次には、これらの構成成分を、いかに有効にかつ効率的にさらに処理して、所望の商品としての化学物質および燃料製品の代用品または代替品を得ることができるかにある程度かかっている。
【0007】
本発明に関しては、リグノセルロースバイオマスは、主としてセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分画を含み、これら3種の成分の中ではセルロースが最も多い。セルロースは植物の構造組織に由来し、1、4位で結合したベータグリコシド残基の長鎖からなる。これらの結合により、セルロースは高い結晶性を有しており、したがって、さらなる処理のため、セルロースをC6糖類、すなわちヘキトースへ加水分解を行うために提案されている、酵素または酸触媒には接近しにくい。対照的に、ヘミセルロースは、非晶質のヘテロポリマーであり、容易に加水分解される。一方、芳香族3次元ポリマーであるリグニンは、植物の繊維細胞中でセルロースとヘミセルロースとの間に分散しており、さらに別の任意選択のプロセスを必要とする。
【0008】
リグニン分画について補足すると、用語「リグニン」に包含されると考えられている物質、及びそれに対応してバイオマス中のリグニン含有量を定量してきた方法は、歴史的には、リグニン含有量について検討されてきた背景、すなわち、「リグニン」は明確な分子構造を有さず、したがってバイオマス毎に実験的に測定されているという背景に依存している。動物科学および農学では、例えばリグノセルロースバイオマスの可消化エネルギー量を考える場合、所与のバイオマス中のリグニンの量は、酸性デタージェントリグニン法(Goering and Van Soest, Forage Fiber Analyses Apparatus Reagents, Procedures, and Some Applications), Agriculture Handbook No. 379, Agricultural Research Service, United States Dept of Agriculture (1970); Van Soest et al., "Methods for Dietary Fiber, Neutral Detergent Fiber, and Nonstarch Polysaccharides in Relation to Animal Nutrition", J. Dairy Sci., vol. 74, pp 3583-3597 (1991))による測定がより一般的である。紙およびパルプ工業では、対照的に、所与のバイオマス中のリグニン量は、従来、クラーソン法により測定されている(Kirk and Obst, "Lignin Determination", Methods in Enzymology, vol 16, pp.: 89-101 (1988))。本発明の目的では、我々は、成長した寒冷地牧草(これは、反芻動物用としては比較的低栄養価であり、したがって多くは他の用途に転用されている成長した寒冷地牧草と同量のリグニン量を少なくとも有するリグノセルロースバイオマスに特に関心を有しており、そのような牧草は、通常、6%以上の酸性デタージェント不溶物(乾燥重量基準で)を特徴としている。
【0009】
バイオマスのセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの分画の違いのため、また各種バイオマス中に異なる程度で存在する、比較的少量の他の分画を考慮して、Faroneらの米国特許第5,562,777号「Method of Producing Sugars Using Strong Acid Hydrolysis of Cellulosic and Hemicellulosic Materials」に記載されているように、リグノセルロースバイオマスを分画し、セルロースおよびヘミセルロースの分画を加水分解する方法が、長年に亘って数多く開発、または提案されている。
【0010】
基本的に、生物学的方法および非生物学的方法の両方が開示されており、セルロースから糖を製造する最も古くかつ最もよく知られている非生物学的方法は、酸による加水分解、最も一般的には、希酸法、濃酸法、またはこれらの2つの組み合わせを使用する硫酸ベースの加水分解を含むものである。Faroneらの米国特許第5,562,777号には、この分野でその時点において知られていた硫酸ベースの各種方法の利点と欠点が記載され、そして、強酸/硫酸加水分解を使用し、かつ非晶化工程の組み合わせを1回以上繰り返して行うさらなる変法を提案している。この方法では、バイオマス(および/または、その前の繰り返しの際の非晶化工程で残った固体を含む)を、25〜90パーセントの硫酸溶液と混合してバイオマスの1部を可溶化し、その後、酸を20〜30パーセントに希釈し、その混合物を、好ましくは摂氏80〜100度に一定時間加熱して、加水分解されなかったセルロース分画およびヘミセルロース物質を可溶化する。
【0011】
前述したように、耕作地および草原で生産されるバイオマスの約4分の3が廃棄物になると推定されている事実から別の困難が生じる。これらのバイオマス廃棄物は、各種のバイオ化学物質およびバイオ燃料製品の製造に大きな可能性を有する資源であることを示しているが、石油系物質の代替品として、そのような化学物質および燃料製品を製造し流通させる手段―および、そのような化学物質および燃料製品の最終使用市場―は、一般に、バイオマス廃棄物が製造または生産される場所(またはその近く)には位置していない。これまでに提案され、今も考慮されている、意図的に育てられた非食用バイオマス作物についても、同様のことが観察される。したがって、化学物質、燃料、および燃料代替品、または添加剤の製造に利用できる各種のリグノセルロースバイオマスを使用しようとする者は、バイオマスを収集または生産する場所の近くではあるが、流通経路および顧客から離れた場所に、多くの比較的小規模のグリーンフィールド化学プラントまたは精製所を建設すること、バイオマスを中間製品(例えば、シュガーシロップ、糖アルコール)へ処理する処理施設を多数建設し、その後、その中間製品を、流通経路および顧客のより近くに位置する(一般的に)さらなる化学物質または燃料を製造および/または精製する施設へ搬送すること、あるいはバイオマスを収集、または生産した場所から、バイオマスを一貫処理する中央施設へバイオマスを搬送することのいずれかにこれまで直面してきた。
【0012】
直前に述べたように、処理と、それに伴う輸送/ロジスティクス/物流および販売の選択肢に関して、石油系原料では遭遇しないが、リグノセルロースバイオマス供給原料を使用することに特有の1つの困難は、バイオマスが生物由来であるという事実から生じている。例えば、トウモロコシ茎葉をバイオマス供給原料として使用することの困難の1つは、醗酵によるエタノールの製造であろうと、あるいは、トウモロコシ茎葉の供給原料から出発して製造することができる他の化学物質、バイオ燃料またはバイオ燃料代替物(例えば、二価アルコールおよび多価アルコール、アクリレート、ヒドロキシメチルフルフラールおよび他のフラン化合物、レブリン酸塩、エピクロロヒドリン)の製造であろうと、適切な品質のバイオマス供給原料を安定して提供するために、どれだけの量の茎葉を収集すべきか、また、それをどのように破砕してパッケージまたは束にし、貯蔵し、輸送するかを決めることにあった。これについては、いかなる変換方法でも、原料の安定性が常に懸念されることであり、バイオマスは生物由来であるから、収集したバイオマスの品質は本質的に幾分かは変動し得るものであり、したがって貯蔵、輸送および処理施設への近さはバイオマス選択の因子とする必要があった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した困難の一部または全部に対処し、かつ克服し得る方法で、リグノセルロースバイオマスを処理する方法を提供するものである。特に、本発明は、バイオマス中のヘミセルロースおよびセルロース物質を加水分解するために酸の組み合わせを使用して糖類を製造する方法であって、前記酸の組み合わせが、すなわち、バッチ、半連続、または連続方式でバイオマス中のヘミセルロース物質を加水分解することにより、ペントース生成物またはストリームを与える第1の弱有機酸(酢酸またはギ酸など)と、バイオマス中のセルロース物質を加水分解してヘキソース生成物またはストリームを与える第2の強鉱酸(硫酸など)とを含む方法に関する。
【0014】
第1の態様では―動物用飼料または肥料として望ましいものであり得るタンパク質に富む成分を分離する(一例として、バイオマスの機械的破砕、および風力分級により)ために、かつ/あるいは、下流での除去がより困難になるであろう、かつ、下流での目的の変換反応を妨げ得る、またはより困難にし得る、かつ/またはさらなる処理による予定の生成物に悪影響を及ぼし得る化学種または物質(例えば、窒素化合物、硫黄化合物、高灰分成分)を比較的高含有率で含む成分を分離するために、任意選択によりバイオマスを前処理した後―バイオマス収集地点の近くで、バイオマス中のヘミセルロース物質を解重合し、かつリグニンを可溶化するのに十分な条件下(例えば、酸濃度、温度、圧力および滞留時間に関し)で、第1の弱有機酸をバイオマスに適用する。その後、「調理された」酸性化バイオマスを乾燥させ、中央施設へ搬送するために乾燥固体をペレット化できる程度に脱水する。その後、ペレット化し、弱酸処理したバイオマスを、中央施設で、可溶化および解重合されたヘミセルロースおよびリグニンをバイオマスのセルロース分画から分離するのに有効な溶媒または溶媒混合物で洗浄し、その後、セルロース分画を、ヘキソース生成物またはストリームを与えるのに適した条件下で第2の強鉱酸(または強鉱酸群)と接触させる。第1の弱有機酸は、ペレット化工程の前に乾燥負荷を部分的に減じるために、高温の蒸気形態でバイオマスに適用することが好ましい。
【0015】
関連する第2の態様では、第1の弱有機酸―これは、第2の強鉱酸を参照する場合と同様に、そのような特徴を有する単一の酸、およびそのような特徴を有する酸の組み合わせを包含するものと理解されよう―を、バイオマス中のヘミセルロース物質の加水分解にした条件下で、バイオマス(または、上述したように、任意選択によりバイオマス全体を前処理した後のバイオマスの残部)に適用し、その後、弱酸処理したバイオマスを溶媒または溶媒の混合物で洗浄し、大部分を占める残留セルロース物質固体分画からペントース生成物またはストリーム(バイオマス中のヘミセルロース物質の加水分解で得られたものである)を分離する。その後、セルロース質固体分画を、乾燥させ、ペレット化して、第2の強鉱酸によるさらなる処理のために中央拠点へ搬送し、一方、可溶化したヘミセルロース質およびリグニンを、バイオマス収集地点近くの第1のサイトに保存し、任意選択によりさらに処理する。一般に、このさらなる処理には、バイオマス中のヘミセルロース物質の加水分解で得られたペントース生成物またはストリームから、水に不溶なリグニンを固体残渣として分離するための、少なくとも1回の水による洗浄が含まれるであろう。また、懸案のローカルの市場状況において、「調理された」酸性化バイオマスまたはセルロース固体が飼料成分として利用され得るであろうことも理解される。
【0016】
関連するさらなる他の態様では、第1の弱有機酸をバイオマスに(または、ここでも、任意選択によりバイオマスを前処理した後の残部に)適用するが、その後、弱酸処理したバイオマスを溶媒または溶媒の混合物で洗浄して、大部分がセルロースの固体分画から可溶化したヘミセルロース物質およびリグニンを分離し、次いで、セルロース固体分画を1種または複数の強鉱酸と接触させる。弱酸および強酸による加水分解は同じ場所で行わせる。第1の弱有機酸も、高温の蒸気形態でバイオマスに適用することが好ましい。
【0017】
収集したバイオマスを中央処理施設へ移動させる、または派生製品を市場や顧客に提供することに関係するロジスティクス、設備、労働力、その他の処理に必要な物への到達の方法などの従来のサイトに関する考察により、当業者は、本発明の方法のこの最後の一般的概念の中で、問題の場所が、バイオマス収集地点の集合体近くが理想的であり、あるいは、施設で使用するバイオマス源の中央で、かつその施設が提供する市場や顧客に便利な場所がより好適であり得ると認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の態様の方法を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の第2の態様の方法を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の、上述したさらに他の態様の方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
リグノセルロースバイオマス中のヘミセルロースおよびセルロース物質を加水分解して糖類を製造するために酸を組み合わせる本方法は、添付の図面を参照することにより一層容易に理解される。それらの図面は、第1の態様、または一般的な実施形態100(図1)、第2の態様、または一般的な実施形態200(図2)、およびさらに他の態様、または一般的な実施形態300(図3)により、本発明を示している、
【0020】
まず図1において、リグノセルロースバイオマス(好ましい実施形態では、通常6パーセント以上の酸性デタージェント不溶リグニン分を含み、好ましくは、ヒトの食用製品の製造においてまたはその製造のために実質的な代替使用がなされない)は、最初、工程102において、バイオマスが生育もしくは生産された場所に近い便利な場所(サイトA)に収集される。
【0021】
同様に、食用作物の収穫および加工からのバイオマスを含む各種起源のバイオマスの混合物も明らかに企図され、単数の「リグノセルロースバイオマス」を使用したときにも包含されると考えるべきである。各種起源からの数種の異なるバイオマスが使用される場合、意図的に栽培した非食用バイオマスまたは農業廃棄物のバイオマスが、混合物中にそれらの数種のバイオマスの最も大きな分画が含まれることが好ましい。混合バイオマス供給原料の例には、トウモロコシの茎葉およびトウモロコシの繊維が含まれ、トウモロコシの繊維よりトウモロコシの茎葉が供給原料に、より大きい割合で含まれていることが好ましい。さらに、石油依存の供給原料に頼る施設と同様に、再生可能源由来の化学物質、燃料および燃料添加剤を製造する殆どの施設は、それらの施設にバイオマスまたはバイオマスをベースとした供給原料を年中入手する必要があり、また、そのような施設の運転員にとってサイレージは、他の処理済みバイオマスよりはるかに「よく知っている産物」を示すものであろうから、混合バイオマス供給原料は、単なる植物全体のサイレージ、例えば、収穫し、大部分が嫌気的に貯蔵された、すなわち「サイロに貯蔵して」サイレージを形成したトウモロコシ植物の全体であってよい。
【0022】
本発明の実施形態100においては、バイオマスをサイトA(バイオマスが生育もしくは生産された場所に近い便利な場所)から、通常、望みのバイオ系化学物質および燃料製品を製造し流通させる手段の近くで、かつ、これらの化学物質および燃料製品を最終的に購入するであろう顧客のより近くに位置する中央処理施設(「中央施設」)へ、より経済的に輸送できる状態にするために、工程102で収集したバイオマスを、基本的に、部分的に処理する(サイトAで)。従来、サイトAと中央施設は互いに50キロメートル以上(30マイル以上)離れており、多くのサイトAが中央施設から平均して少なくとも同じ距離だけ離れていると予想されている。サイトAが中央施設から平均して80km(50マイル)以上離れていることも少なくないであろう。
【0023】
中央施設とサイトAが地理的に極めて近く、例えば、所望するバイオ化学物質またはバイオ燃料の製造手段がサイトAの近くに既に存在したり、あるいは、サイトAが需要源の近くにあった場合、図3の実施形態が通常好ましいが、サイトAに固有の考慮事項(例えば、地域規制および許認可に関する考慮、または場所の制約など)により、図3の実施形態が実行できないことがあり得ることも明らかである。
【0024】
ここで図1に戻って、プロセス100の最初の工程として、バイオマスを収集し、必要に応じて洗浄して泥およびその他の汚れを除去する。その後、任意選択により、その材料を乾燥させ、好ましくは水分含有量を10%以下にする。その後、バイオマスを、限定はされないものの、粉砕、細断、およびハンマーミルによる粉砕を含む多くの手段の中の任意の手段によって、細かく粉砕する。バイオマスや、下流での意図した処理や、バイオマスの各種セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン分画から製造される一連の製品に応じて、バイオマスの前処理には、動物飼料や肥料に使用するために、バイオマスのタンパク質に富む部分を分離および回収する(風力分級、または他の知られた離法により)ことが含まれ得る。例えば、トウモロコシ茎葉からの葉の分画は、窒素含有量が比較的多く、栄養価は干し草並みである。トウモロコシ穀粒全体のサイレージなどの混合バイオマスでは、バイオマスの前処理には、付加価値を有する副産物として穀粒からのコーン油の回収が含まれ得る。
【0025】
あるいは、またはさらに、再び、バイオマスや、下流での意図した処理およびバイオマスの各種セルロース、ヘミセルロース、およびリグニン分画から製造される一連の製品に応じて、下流での除去がより困難であり、かつ、下流での目的とする変換を阻害するかより困難なものにし得る、および/または、さらなる処理により得られる生成物に悪影響を及ぼし得る、種または物質を比較的高含有率で含むバイオマス全体の中の部分を分離し除去する前処理をバイオマスに対し行うことができる。例えば、多くの有用な化学物質は、ペントースおよび/またはヘキソース生成物から各種触媒による変換により誘導できるものとして提案されているが、バイオマスの一部は、触媒の活性点への炭素析出、重合、遮蔽により、または他のメカニズムにより、予定の触媒を不活性化させる傾向を有するであろう物質(または、そのような物質の前駆体)を含み得る。さらに、上で示唆したように、バイオマスを処理して得られる目的とする製品は、動物用飼料としてもよく、また、リグノセルロースバイオマス中の硝酸塩は、さらなる処理の前に分離し除去することができるバイオマスの一部中により多く濃縮されている場合、バイオマス全体を前処理して除去することが望ましい。
【0026】
その後、収集もしくは前処理したバイオマスを弱酸工程104において弱有機酸と接触させ、ヘミセルロース物質、および、好ましくはバイオマス中のリグニンのいくらかを、少なくとも部分的に可溶化/解重合する。好ましい酸には、ギ酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、およびプロピオン酸が含まれ、ギ酸および酢酸がより好ましい。その後の乾燥工程106での脱水要求量を最小限にするために、弱酸は高温蒸気の形態でバイオマスに適用することが好ましい。
【0027】
我々は、50パーセント以上の弱酸水溶液を十分に加熱すれば、部分的に解重合された物質が、その後のペレット化または高密度化工程でバインダーとして有効に働き得る程度までバイオマス中のヘミセルロースおよびリグニン物質を十分に解重合させることができることを見出した。後で詳しく説明するように、所望の耐久性を有するペレットを得るために、追加のバインダーを必要としないことが好ましい。
【0028】
したがって、好ましい実施形態では、弱酸は50パーセント以上の酸の高温蒸気の形態で適用することができるが、バイオマス中のヘミセルロース分画および少なくともリグニンの一部を、その後に形成されるペレットの耐久性を大量のバインダーを加えなければならなくなるほど過度な範囲にまで低下させずに、可能な限り分解するために、摂氏50度〜摂氏160度の温度、大気圧〜3.5MPaのゲージ圧(500psig)の圧力、少なくとも約30分の滞留時間で、70パーセント〜90パーセント超の酸を含有する高濃度蒸気として適用することがより好ましい。
【0029】
弱酸処理したバイオマスは、その後、乾燥または脱水工程106に供され、工程108で乾燥したバイオマスをペレット化するのに十分な量の水分を除去する。乾燥/脱水工程106は、水性スラリーを濃縮し、残留固体のペレット化に適した濃度にまでそれから水を除去するための数多くの従来装置またはそのような装置の組み合わせ、例えば、遠心分離機、ハイドロクロン、ベルトフィルタープレス乾燥機、流動層乾燥機、間接式または直接式ロータリードラム乾燥機、スピンフラッシュ乾燥機などにより実施することができる。ペレット化を促進し、かつ搬送コストを低減するためには、乾燥工程106を出るバイオマスの水分含有量が、10重量パーセント以下であることが好ましく、8重量パーセント以下がより好ましく、6パーセント以下がさらに好ましい。
【0030】
動物飼料および燃料用木質バイオマスのペレット化技術は十分に確立されているので、乾燥工程106を出た固体のペレット化は、当業者に従来知られている方法と装置を使用して工程108で行うことができ、好ましくは、サイトAから中央施設へ物質を運ぶための、空気による、あるいは、コンベヤーベルト/システム、トラック、船舶もしくは鉄道、または他の手段もしくは手段の組み合わせによる輸送に耐えられるだけの凝集性と完全性を有する物質が得られるであろう。サイトAから第2の場所へのペレット化した物質の輸送は、後述の特許請求の範囲、および本明細書の他の個所では、便宜上、ローカルサイトAから第2の場所へ物質を「搬送する(shipping)」と記載されるが、「搬送する」の使用には、船舶、航空機、鉄道またはトラック、あるいは類似の乗り物による輸送手段に限定することを意図するものではなく、そのようなペレット化した物質をサイトAから第2の場所へ移動させ得る任意の方法を含むと理解すべきである。
【0031】
この点に関し、ペレット化した物質に要求される耐久性―取扱い、輸送および貯蔵時に、ペレットが過剰量の微粉を生成しないことを主として意味する―は、より詳しくは、所与のサイトA、サイトAと所与の中央施設/第2の場所との間、および中央施設/第2の場所でのこの材料の取扱い、輸送、および貯蔵の仕方によるであろう。さらに、耐久性を示す正確な数値が妥当性をもって先験的に割り当てられるおそれがないように、ペレットの耐久性を評価するために開発された装置とそれに関連する方法がいくつかある。しかしながら、ペレット化された物質の処理方法によるものであろうと、その物質に添加されたバインダーの効果によるものであろうと、あるいはその両方によるものであろうと、ペレット化され、部分的に処理されたバイオマスは、ペレット化工程108の完了から中央施設における溶媒洗浄の開始までに、細粉または微粉の生成によって5パーセント超の質量の損失が生じないだけの耐久性を有していることが好ましく、この移動において、ペレット化され、部分的に処理されたバイオマスの3パーセント超が微粉として失われないことが好ましい。
【0032】
ペレット化され、部分的に処理されたバイオマスは、その後、さらなる処理を行うために中央施設へと搬送することが好都合である。このさらなる処理には、工程110で溶媒、または溶媒の組み合わせによる洗浄を少なくとも含む。溶媒は、バイオマス中のヘミセルロース物質の加水分解によって生成したペントースを含有する生成物またはストリーム112中の少なくとも部分的に解重合したヘミセルロース物質と、セルロース固体分画114とを有効に分離するように選択される。溶媒洗浄工程110は、所望するなら、任意選択により洗浄と濾過の数回の繰り返しを含むことができる。
【0033】
バイオマスのリグニン分画118を分離するために、溶媒洗浄工程110と共に、任意選択により追加の溶媒洗浄工程116(洗浄と濾過の1回以上繰り返し)が使用される。工程110および116の実施方法は、バイオマスがサイトAでどのように処理されたかによるが、どのような場合にも、清浄なセルロースパルプ生成物またはストリーム114が得られるように行われ、これはその後、工程124で強鉱酸に暴露されることによって加水分解され、ヘキソース生成物またはストリーム122を得ることができる。
【0034】
例えば、サイトAでの高温の50パーセント酢酸水溶液の適用は、上述したように、例えば、バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニンを少なくとも部分的に解重合するには十分であり、それによりバイオマスをペレット化し、効率的に輸送できるが、50パーセント溶液にはバイオマス中のリグニンは大部分が溶解しないであろう。工程110で、水不溶性リグニンも含有するであろうセルロース固体分画114から、少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよび可溶性の塩を分離する好ましい方法は、熱水の使用であろう。その後、溶媒洗浄工程116は分画114に対して行われ、リグニンを可溶化し、ストリーム118中に分離し、生成物またはストリーム114中に物質を得て、これを強鉱酸により酸加水分解することができる。この目的のために有用な溶媒は、リグニンを可溶化し、かつ残留セルロース分画から分離するのに必要な温度で適用されるより高濃度の有機酸である。
【0035】
しかしながら、サイトAでより高濃度(例えば、50パーセントに対して70パーセント以上の酸)の弱有機酸を使用する代替の実施形態では、清浄なセルロースパルプ114を、さらなる溶媒洗浄工程116を必要とせずに工程110で回収することができる。乳酸エチルがこの実施形態の工程110で使用する溶媒として有効であることがわかった。他の有効な溶媒には、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ギ酸エチルおよび酢酸エチルが含まれる。本実施形態の、任意選択によるさらなる溶媒洗浄工程116は、リグニン分画118を分離するために使用され、単に熱水で洗浄して水不溶性リグニンをストリーム118中に回収することを含むことが好ましい。
【0036】
このように回収または分画されたセルロース固体分画114は、その後、ヘキソース生成物、または実質的にヘキソースからなるストリーム122へ、従来の強鉱酸加水分解124により、この変換を行うのに適した条件下で、変換される。本発明のいくつかの実施形態により製造されたヘキソース生成物またはストリーム(図1のストリーム122、図2のストリーム220および図3のストリーム314など)は、好ましくは、全体が実質的にC6の単糖類からなり、かつ最小限のさらなる前処理または精製により、所望のバイオ化学物質およびバイオ燃料製品まで品質を高めるのに適した性質を有するものであることが好ましい。C6単糖類から誘導できるものとして示唆されているバイオ化学物質およびバイオ燃料製品の例には、水素化および水素化処理による燃料添加剤製品、あるいは醗酵によるエタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸または他の有機酸が含まれる。
【0037】
同様に、本発明のいくつかの実施形態で製造されたペントース生成物またはストリーム(図1のストリーム112/120、図2のストリーム208、図3のストリーム316など)は、全体が実質的にC5の単糖類からなり、かつそのようなC5単糖類から誘導できるバイオ化学物質およびバイオ燃料製品、例えば、醗酵によるエタノール、トレオニン、リシン、乳酸、グルコン酸または他の有機酸、一般に水素化および水素化処理によるフルフラール、フルフリルアルコール、メチルテトラヒドロフルフラール、フルフリル酸、および燃料添加剤にまで品質を高めるのに適した性質を有するものであることが好ましい。
【0038】
工程124の好ましい強鉱酸は硫酸であり、摂氏25度〜摂氏100度の温度、大気圧〜0.7MPaゲージ圧(100psig)の圧力、および、主として使用温度条件に依存するが15分〜2時間の滞留時間で、1〜80、好ましくは40〜80パーセント濃度の硫酸水溶液として使用される。
【0039】
リグニン分画(図1のストリーム118、図2のストリーム212および図3のストリーム318など)も、同様に、実際的なさらなる使用、例えば、米国特許出願公開第2009/0718498A1号の教示に基づき、例えば、燃焼用燃料としての合成ガスを製造するガス化供給原料としての芳香族燃料添加剤を得るオゾン分解、または、バイオ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を製造する芳香族スルホン化供給原料を得るオゾン分解に供し得る。
【0040】
ここで、図2を参照すると、代替の実施形態200が概略的に示されている。実施形態200では、バイオマスからのセルロース分画のみが固体の形態で収集され、輸送、および中央施設でのヘキソース生成物またはストリームを製造する処理のためにペレット化され、ヘミセルロースおよびリグニン分画は、好ましくはバイオマスの生産地または生育地に便利な第1のサイト、サイトAで加水分解される。代替実施例200は、バイオマスのリグニン含有率は比較的高いが、セルロースまたはリグニン分画から製造される製品に対する販路が準備されていない場合に有利であろう。
【0041】
より詳しくは、一般的な実施例200では、リグノセルロースバイオマスは収集され、実施形態100の工程102について上で記載したのと同じ方法で、工程202でその後の弱酸加水分解のための準備がされる。収集し前処理されたバイオマスは、その後、好ましくは再び実施形態100の弱酸加水分解工程104に対応して、弱酸加水分解工程204に供される。弱酸で加水分解された、少なくとも部分的に解重合したリグニンおよびヘミセルロース物質と、セルロース質固体分画を含むバイオマスは、上述した実施形態100の溶媒洗浄工程110と同様に、溶媒洗浄工程206で溶媒洗浄および濾過が1回以上繰り返される。バイオマス中のヘミセルロースの弱酸加水分解から得られたペントース生成物またはストリーム208(「生成物」は、本明細書では、バッチ方式または一般的な非連続操作方式の考え方と理解され、「ストリーム」は、通常、連続操作方式を指すと理解される)は、その後、任意選択により、工程210で1回以上の洗浄および濾過の繰り返しによって洗浄され、固体リグニン生成物またはそのストリーム212および液体ペントース生成物またはストリーム214が生成される。
【0042】
同時に、溶媒洗浄工程206からのセルロース固体は、乾燥工程216で乾燥され、第2の場所―図2では「中央施設」と表示されている―へ搬送するためのペレット化を工程218で行う前に、固体から水分が除去される。実施形態200では、乾燥工程216およびペレット化工程218は、図1の乾燥工程106およびペレット化工程108について上で記載したように一般に行われるであろう。
【0043】
好ましくは、工程218からのペレット化したセルロース固体から製造されるヘキソース生成物またはストリーム220の重要な需要地の近くに立地する「中央施設」では、所与のサイトAの工程218からの、これらの同じペレット化セルロース固体が、他のローカル(localized)サイトAの工程218からのペレット化セルロース固体と合わされ、強鉱酸加水分解工程222で加水分解されることが好ましい。実施形態200の強鉱酸加水分解工程222は、実施形態100の工程124について上で記載したのと同様であることが好ましい。
【0044】
ここで、図3を参照すると、第3の一般的な実施形態300が概略的に示されているが、簡単には、実施形態100および200と共通して行われる、同じかつ基本のバイオマス収集および前処理、弱酸加水分解、溶媒洗浄、任意選択の水洗浄、および強酸加水分解工程を含むものとして簡単に記載されているが、実施形態300は、処理すべきバイオマスが生育もしくは生産される場所に理想的には近い、所与のローカルサイトでの実施が想定されているので、例えば、実施形態200から乾燥およびペレット化工程が省かれている。したがって、バイオマスは収集工程302で収集され、前処理された後、弱酸加水分解工程304に供され、次いで、可溶化/加水分解されたヘミセルロースおよびリグニン分画310から固体セルロース分画308を実質的に分離する溶媒洗浄・濾過プロセス306に入る。セルロース固体308は、次に、強酸加水分解工程312で加水分解され、ヘキソース生成物またはストリーム314が得られる。一方、水溶性のペントースおよび水不溶性のリグニンは、任意選択により、ストリーム310に対して行われる洗浄工程320で、生成物(またはストリーム)316および318として分離され回収される。
【0045】
したがって、実施形態300は、処理するバイオマスが、例えば、バイオ化学物質、バイオ燃料および/またはバイオ燃料添加剤の製造用としてバイオマスから生成されるペントースおよび/またはヘキソースの需要源近くで、生育または生産される場合に採用すると有利である。一例を挙げれば、サトウキビ―および、甘蔗糖や関連製品を製造するために処理した後に残るバガス―は、Louisiana州の、Baton RougeとNew Orleansの間のMississippi River石油化学処理回廊で大規模に栽培されている。本発明により処理することができるリグノセルロースバイオマスが多様であるために、当業者であれば、ペントースおよび/またはヘキソースの需要源近くに、適当なバイオマスの十分な供給先がある場合の似た例を他にも多く考え得ることは理解できよう。大規模な人口中心地近くに立地した、十分に発達した化学および燃料工業を有する経済圏では、実施形態300が使用される機会は(実施形態100および200とは対照的に)、比較的制限され得るが、化学および燃料工業が発達した、または発達中で、大規模な人口中心地が少ない―または、化学および燃料工業が大規模人口中心地から遠く、農業地域近くに発達した―経済圏では、実施形態300が好適であり得る。いずれにしても、当業者であれば、一連の特定の状況の中で、本明細書に記載された3つの実施形態のいずれが好ましいかを適切に決定できるであろう。
【0046】
言うまでもなく、実施形態100、200、および300は追加の工程をさらに含んでもよい。例えば、弱有機酸および強鉱酸のいずれか、または両方を、再使用するための回収および再利用を行うための、酸の回収および再利用を含むことが、通常、望ましいであろうし、当業者であれば、本発明の方法の糖ストリームから、酸を分離する適切な手段を適切に選択して使用することができよう。弱酸として使用する場合、酢酸は、単蒸留によって回収することができるが、パルプ製造技術におけるように、高濃度水溶液としてギ酸を使用するときは、ギ酸は水と共沸物を生成するので、共沸蒸留法を必要とする。しかしながら、少量の水蒸気と共に非常に高濃度の蒸気としてギ酸を適用する場合は、含まれている水を分離する必要はなく、好ましくは共沸剤としてギ酸エチルを使用する単蒸留により、ギ酸を高濃度の形態で回収し、再利用し、かつ再使用することができる。強鉱酸、硫酸を回収し、再使用する方法、Faroneらの米国特許第5,562,777号に各種記載されている。あるいは、弱有機酸および強鉱酸のいずれか、または両方を単に中和してもよい。特に、高濃度蒸気相として弱有機酸を適用する場合は、使用するそのような酸の量は、回収および再利用の経費を正当化するには不十分であり得るので、中和を行うことが好適であり得る。
【0047】
各実施形態100、200、および300の弱酸加水分解工程で使用した酸を簡単に回収するためのさらなる改良方法には、弱酸加水分解工程に入るバイオマスを水性スラリーとして調製し、弱酸を、濾過により回収が可能な固体の形態で加えることが含まれよう。ゼオライトが、使用できる酸固体の例であろう。
【0048】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で説明してきたが、同様に多くの変更と修正を着想できることを、当業者であれば認識しているであろう。例えば、ある種のバイオマスの分画の効率を高めるために、言及した酸加水分解に加えて、またはそれと共に、酵素による加水分解を用いることができる。バイオマスにサイレージを使用する場合は、ある期間に亘ってサイレージ供給原料自体を嫌気性醗酵させることにより、乳酸を生成させ、この乳酸を弱有機酸として、最初の加水分解に単独、または他の原料からの弱有機酸と組み合わせて使用することができる。当業者には、以下の特許請求の範囲に示す本発明の真の範囲から逸脱することなく、さらに他の変更が可能なことは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分画を含むリグノセルロースバイオマスの処理方法であって、
弱有機酸をバイオマスに適用して、前記バイオマス中の前記ヘミセルロースおよびリグニン物質を少なくとも部分的に解重合する工程;
前記弱酸処理したバイオマスを乾燥させて、ペレット化するのに十分な固体含有量の物質を提供する工程;
前記乾燥工程からの前記物質をペレット化する工程;および
前記ペレット化した物質を第2の場所へ搬送する工程;
前記第2の場所で、前記ペレット化した物質からセルロース固体生成物を回収する工程;および
そのようにして分離した前記セルロース固体を強鉱酸と接触させて、これを加水分解し、ヘキソース生成物またはストリームを提供する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記セルロース質固体生成物を、前記ペレット化した物質から、前記ペレット化した物質の溶剤洗浄を濾過と共に1回以上繰り返すことにより回収し、それにより、前記ペレット化した物質からの前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよびリグニン物質を、残留する前記セルロース質固体から共に分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロースおよびリグニン物質の洗浄を濾過と共に1回以上繰り返して、水不溶性リグニン固体を水溶性ヘミセルロース物質から分離する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロース物質を、最初に、前記ペレット化した物質から、前記ペレット化した物質の水による洗浄を濾過と共に1回以上繰り返すことにより分離し、その後、前記リグニンを、前記セルロース固体生成物から、異なる溶媒洗浄を濾過と共にまた1回以上繰り返すことにより分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に解重合したヘミセルロース物質に対し、これを前記リグニンおよびセルロース固体生成物から分離した後に、さらなる酸加水分解工程を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘミセルロース物質の前記さらなる酸加水分解の生成物を発酵させて、エタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸、またはその他の有機酸を製造する工程、または、前記さらなる酸加水分解工程の生成物を水素化および水素化処理して、輸送燃料用の燃料添加剤製品を得る工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水不溶性のリグニンを、オゾン分解、もしくは1種以上の他の酸化剤に暴露する、または燃料として燃焼させる、または液体炭化水素製品およびコークを製造するためのコーキングプロセスに供給する、または合成ガスを製造するためのガス化装置に送入する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘキソース生成物またはストリームを醗酵させて、エタノール、リシン、トレオニン、乳酸、グルコン酸、またはその他の有機酸を製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リグノセルロースバイオマスが、乾燥重量基準で6重量パーセント以上の酸性デタージェントに不溶なリグニンの含有量を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リグノセルロースバイオマスが、成長した草、穀物サイレージから分離したまたは穀物サイレージに含まれる穀物残渣、トウモロコシの茎葉、小麦の藁、大麦の藁、ススキ種、スイッチグラス、バヒアグラス、ソルガム種、サトウキビの絞り粕、カモガヤ、クサヨシ、綿繰り機の屑の1種以上を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
処理された前記リグノセルロースバイオマスが、トウモロコシの茎葉およびトウモロコシの繊維を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
処理された前記リグノセルロースバイオマスが、サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシであり、かつ前記弱有機酸が適用される前に、前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシの少なくとも1成分を分離し除去するために前記バイオマスを前処理する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記弱有機酸と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスからコーン油を回収する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記弱有機酸と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスから前記トウモロコシ茎葉の葉分画を機械的に分離し、除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記サイロに貯蔵された植物全体としてのトウモロコシバイオマスを前記弱有機酸と接触させる前に、前記トウモロコシバイオマスから硫黄、窒素、または灰分含有量が高い1種以上の成分を機械的に分離し、除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記弱有機酸を、摂氏50度以上の高温の蒸気相で適用する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記弱有機酸が酢酸またはギ酸であり、前記酸を摂氏50度〜摂氏160度の温度、大気圧〜3.5MPaゲージ圧の圧力、かつ30分以上の時間で適用する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記弱有機酸を、少なくとも50パーセントのそのような酸の水中濃度で、前記リグノセルロースバイオマスに適用する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記弱有機酸を、70パーセント以上のそのような酸の水中濃度で前記バイオマスに適用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記弱酸処理したバイオマスを10重量パーセント以下の水分含有量にまで乾燥させる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥させたバイオマスをさらなるバインダーを加えずにペレット化する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
共通の第2の場所へペレット化した物質を搬送するために、前記弱酸処理、乾燥、およびペレット化工程を複数の場所で適用する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記複数のサイトが、前記共通の第2の場所から平均して50キロメートル以上の距離にある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のサイトが、前記共通の第2の場所から平均して80キロメートル以上の距離にある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の場所から少なくとも50キロメートルの場所で、前記弱酸加水分解、乾燥、およびペレット化工程を適用し、ペレット化物質を製造する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記弱有機酸と接触させる前に、タンパク質に富みかつ動物用飼料中もしくは動物用飼料用としての使用に適しているか、あるいは硫黄、窒素、または灰分の含有量が所望の値より大きい、前記バイオマスの少なくとも1つの成分を分離し除去するために、前記バイオマスを前処理する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分画を含むリグノセルロースバイオマスの処理方法であって、
弱有機酸を前記バイオマスに適用して、前記バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニン物質を加水分解する工程;
前記弱酸処理した物質の溶媒または溶媒混合物による洗浄および濾過を1回以上繰り返して、前記濾液中のヘミセルロースおよびリグニン物質と、固体残渣のセルロース物質とを分離する工程;
前記固体残渣を乾燥させて、ペレット化するのに十分な固体含有量の物質を提供する工程;
前記乾燥工程からの前記物質をペレット化する工程;
前記ペレット化した物質を第2の場所へ搬送する工程;および
第2の場所で、そのようにして分離した前記セルロース物質を強鉱酸と接触させて、前記セルロース物質を加水分解し、ヘキソース生成物またはストリームを提供する工程
を含む方法。
【請求項28】
セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの分画を含むリグノセルロースバイオマスの処理方法であって、
弱有機酸を前記バイオマスに適用して、前記バイオマス中のヘミセルロースおよびリグニン物質を加水分解する工程;
前記弱酸処理した物質の溶媒または溶媒混合物による洗浄および濾過を1回以上繰り返して、前記濾液中のヘミセルロースおよびリグニン物質と、固体残渣のセルロース物質とを分離する工程;および
そのようにして分離した前記セルロース物質を強鉱酸と接触させて、前記セルロース物質を加水分解し、ヘキソース生成物またはストリームを提供する工程
を含む方法。
【請求項29】
前記弱有機酸を摂氏50度以上の高温の蒸気相で適用する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記弱有機酸が酢酸またはギ酸であり、前記酸を摂氏50度〜摂氏160度の温度、大気圧〜3.5MPaゲージ圧の圧力、かつ30分以上の時間で適用する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記弱有機酸を、少なくとも50パーセントのそのような酸の水中濃度で前記リグノセルロースバイオマスに適用する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記弱有機酸を、70パーセント以上のそのような酸の水中濃度で前記バイオマスに適用する、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518972(P2013−518972A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551990(P2012−551990)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/021518
【国際公開番号】WO2011/097065
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507303309)アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド カンパニー (16)
【Fターム(参考)】