説明

ヘミセルロースを含むポリマーフィルムまたはコーティング

ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを含むフィルム形成組成物およびポリマーフィルムまたはコーティングが開示される。前記ポリマーフィルムまたはコーティングは、耐透液・耐透湿性を向上させ、フィルムまたはコーティングを形成する前または形成と同時にヘミセルロースおよび前記少なくとも1つの成分と混合および/または反応する少なくとも1つの添加剤/反応物質をさらに含む。前記フィルムまたはコーティングの使用も開示される。さらに、前記ポリマーフィルムまたはコーティングを製造するための方法、ならびにヘミセルロースの耐透液・耐透湿性を向上させるための方法が開示される。耐透液・耐透湿性を向上させる前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、架橋剤または疎水化剤である。別の好適な実施形態において、添加剤は、2:1層状フィロ珪酸塩である。添加剤は、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ複合体を形成する。ヘミセルロース/フィロ珪酸塩ナノ複合補強材料は、優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。そのフィルムすべての熱処理は、それらの耐透液・耐透湿性を向上させ、それらの酸素透過度を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミセルロースを含むフィルム形成組成物およびポリマーフィルムまたはコーティングに関する。本発明は酸素、芳香またはグリースバリアとしての前記フィルムまたはコーティングの使用にも関する。さらに、本発明は、ヘミセルロースを含むポリマーフィルムまたはコーティングを製造するための方法、ならびにヘミセルロースの耐透液・耐透湿性を向上させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2004/083286に開示されているように、多くの包装用プラスチック材料は現在のところ石油ベースである。しかし、地球上の化石資源は限られている。焼却は温室効果の増大をもたらす。また、これらの材料は概して分解性でない。将来における持続可能な発展のためには、再生可能な原材料の使用への転換が必要である。
【0003】
多くの食品包装用途では、食品を酸素から保護することが重要である。というのは、酸素の侵入による芳香化合物(aroma compounds)や、脂肪族化合物、ビタミンの酸化により、製品の品質および/または香味が低下するためである。このような保護は、酸素透過度の低いバリア材料を使用することによって実現され得る。また、バリア材料は、柔軟で、機械的耐性を有し、透明で、低コストであることが望ましい。また、芳香バリアやグリースバリアといった他のバリア特性も非常に重要であり得る。
【0004】
ヘミセルロースは種々の植物において生合成される多糖類であり、それらはセルロース微細繊維の間に存在するマトリックス材料として作用し、またリグニンとセルロースの間の結合として作用する。ヘミセルロースは、食品における甘味料、増粘剤および乳化剤として商業的に使用される。従来、ヘミセルロースの食品以外の利用は非常に限られていた。例えば、それらが包装用ポリマー材料の製造に商業的に利用されることが示唆されたのはWO2004/083286が初めてであった。
【0005】
WO2004/083286に開示されているように、ヘミセルロースをベースとするフィルムおよびコーティングは良好な酸素バリアである。WO2004/083286には、機械特性を向上させるための方法も記載されている。
【0006】
ヘミセルロースは液体/湿気と相互作用し、そして、酸素、芳香およびグリースの透過性は高い相対湿度において増加する。この材料の水溶性は、コーティングプロセスにおける利点となるが、多くの包装用途では欠点になり得る。
【0007】
米国特許第5498662号明細書および米国特許第5621026号明細書およびそれらの対応欧州特許出願である欧州特許第649870号明細書ならびに米国特許第5897960号明細書およびその対応特許出願である欧州特許第665263号明細書は、それぞれ耐透湿性ガスバリアフィルムならびにポリ(メタ)アクリル酸ポリマー(PMA)および糖類をベースとしてフィルムを製造し、そのフィルムを熱処理するための方法に関する。この糖類は好ましくはデンプンなどの多糖類である。ところで、ペントースのみから構成されたヘテロ多糖類として、キシランおよびアラビノキシランが挙げられる。PMAは石油をベースとしている。
【0008】
さらに、米国特許出願公開第2005/0070703号明細書には、少なくとも1つの塩基性多糖類と少なくとも1つの網状多糖類の混合物のホモ結晶化またはヘテロ結晶化によって耐透湿性の生分解性多糖類網状体を製造するための方法が提案されている。
【0009】
したがって、上記課題を克服し、酸素、グリースおよび/または芳香に対する低透過性を有する所望の特性を示す新しい生分解性フィルム形成組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の一目的は、ヘミセルロースをベースとし、耐透液・耐透湿性が向上した包装用柔軟フィルムまたはコーティングを提供することにある。
別の目的は、フィルム形成組成物、ならびに酸素、芳香および/またはグリースバリアとして使用できる、ヘミセルロースをベースとするフィルムまたはコーティングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを混合し、ヘミセルロースおよび前記少なくとも1つの成分と、耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質とを混合および/または反応させ、そのフィルムまたはコーティングを形成することによって達成される。それによって形成されたポリマーフィルムまたはコーティングを酸素、芳香またはグリースバリアとして使用することができ、前記混合または反応は、フィルムまたはコーティングを形成する前またはその形成と同時に実施される。
【0012】
好適な実施形態において、前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、架橋剤または疎水化剤である。
ポリマーフィルムまたはコーティングは、好適には乾燥重量%で1〜99%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは60〜90%のへミセルロース含有量を有し、架橋剤または疎水化剤の含有量は、乾燥重量%で0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、特に0〜10%、最も好ましくは0〜5%である。
【0013】
1つの有利な実施形態において、該架橋剤または疎水化剤が、好ましくは、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と反応または相互作用する架橋剤からなる群から選択される架橋剤であり、特に、クエン酸、ホウ酸、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、エチレンアクリル酸共重合体、ホルムアルデヒド、グリオキサール、炭酸ジルコニウム、エピクロロヒドリン、リン酸およびアクロレインからなる群から選択される架橋剤である。特に、炭酸アンモニウムジルコニウムの添加は、ヘミセルロースフィルムまたはコーティングに優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0014】
別の有利な実施形態において、該架橋剤または疎水化剤が、好ましくは、酸無水物、ロジン、無水コハク酸アルケニルおよびアルキルケテン2量体からなる群から選択される疎水化剤である。アルキルケテン2量体の添加は、ヘミセルロースフィルムまたはコーティングに優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0015】
第3の有利な実施形態において、該架橋剤または疎水化剤は、2:1層状フィロ珪酸塩であり、該フィルムは、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ粒子小板(platelet)を含むナノ複合材料である。好適には、2:1層状フィロ珪酸塩は、粘土鉱物であり、有利には、粘土鉱物は、スメクタイト群から選択される。2:1層状フィロ珪酸塩は、中心の8面体シートを狭持する2枚の4面体シートを有する。その粒子は、小板形で、約1ナノメートルの厚さを有する。すなわち、それらはナノ粒子である。添加剤は、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ複合体を形成する。ヘミセルロース/フィロ珪酸塩ナノ複合補強材料は、優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0016】
本発明の利点は、製造されたフィルムまたはコーティングの耐透液・耐透湿性を、架橋剤および/または疎水化剤の添加によって向上させることができることである。また、フィルムまたはコーティングを、好適には2秒から20分にわたって80℃から180℃、好ましくは120℃から160℃の温度で熱処理することによって耐透液・耐透湿性を向上させ、酸素透過度を低下させることができる。
【0017】
さらなる利点として、本発明における原材料が再生可能であり、バイオマスから抽出され得ることがある。
生合成ポリマーをベースとする材料は、いくつかの環境的利点を有する。これらの材料は、使用された後に大気中の二酸化炭素の正味の増加を引き起こさず、さらに、それらのほとんどが生分解性であるため、堆肥化(composting)によって処分することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初にWO2004/083286に開示された発明に至り、次いで本発明に至った研究において、ヘミセルロース、特にペントサンリッチの多糖類、例えば、キシランをベースとする緻密性のフィルムは、優れた酸素バリア特性を発揮することが示された。
【0019】
ヘミセルロースは、低分子量から高分子量の置換/分岐ポリマーである。それらは、異なる部分に配列され、異なる置換基を有する異なる糖単位からなる。ペントサンリッチ多糖類は一般的なペントース含有量を有し、最大のヘミセルロース群を構成する。
【0020】
本明細書で用いた「ペントサンリッチの多糖類」は、少なくとも20重量%のペントサン含有量および少なくとも20重量%のキシロース含有量を有する多糖類を指す。例えば、該多糖類は、40重量%から80重量%のペントサン含有量および40重量%から75重量%のキシロース含有量を有する。
【0021】
ペントサンリッチの多糖類、特にキシランは、本発明による使用に最も好適な化合物である。しかし、他の種類のヘミセルロース、例えば、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナンまたはアラビノガラクタンも本発明により使用できる。
【0022】
キシランは、木材、穀類、草および薬草などのバイオマスに存在し、植物界において2番目に豊富なバイオポリマーであると考えられる。キシランを様々なバイオマス供給源における他の成分から分離するために、水およびアルカリ水溶液による抽出を用いることができる。キシランは、また、シグマ・ケミカル・カンパニーのような供給源から商業的に入手可能である。
【0023】
キシランをヘテロキシランおよびホモキシランのサブグループに分けることができる。ホモキシランとヘテロキシランの化学構造は異なる。ホモキシランは、キシロース残基の骨格を有し、いくつかのグルクロン酸または4−O−メチル−グルクロン酸置換基を有する。ヘテロキシランもキシロース残基の骨格を有するが、ホモキシランと対照的に、グルクロン酸または4−O−メチル−グルクロン酸置換基のみならず、アラビノース残基で広範囲にわたって置換されている。ヘテロキシランと比較した場合のホモキシランの利点は、ホモキシランがより高度に結晶化することである。結晶性は、ガス透過性および感湿性の両方を低下させる。
【0024】
本発明により使用できるホモキシランの例は、グルクロノキシランである。
本発明により使用できるヘテロキシランの例は、アラビノキシラン、グルクロノアラビノキシランおよびアラビノグルクロノキシランである。
【0025】
任意のバイオマスまたは商業的供給源由来のキシランを使用して、本発明におけるフィルムまたはコーティングを製造することができる。
ヘミセルロース、特にキシランのフィルム形成組成物を様々な手法によって達成することができる。これを行うための1つの方法は、低分子量の可塑剤を添加することである。緻密性のフィルムを製造するための別の方法は、微細セルロースを添加することである。フィルムを得るための第3の手順は、キシランと他のオリゴマーまたはポリマーを混合することによる。より良好なフィルム形成特性を達成するためのさらなる手順は、異なる分子量または構造のヘミセルロースを混合することである。1つまたは複数の先述の手法の組合せを用いることも可能である。
【0026】
ペントサンリッチの多糖類の水溶液もしくは分散液のキャスティングによって、またはペントサンリッチの多糖類の溶液コーティングもしくは分散コーティングによって、フィルムまたはコーティングを調製することができる。他の溶媒を本発明における溶媒として使用することができるが、水が最も好適な溶媒である。
【0027】
本明細書に用いた「フィルム」という用語は、担体を有さない個別のシートまたはウェブを指す。しかし、フィルムまたはコーティングは、耐透液・耐透湿性が向上し、消化系において容易に分解しないため、薬物送達系に好適でない。
【0028】
本明細書に用いた「コーティング」という用語は、バリア層を設けるために担体、例えばセルロース繊維のウェブ、シートまたはフィルム上に塗布された被覆物を指す。
本発明によるフィルムまたはコーティングは、100μm以下の厚さを有することができる。特に、フィルムまたはコーティングは、50μm以下の厚さを有することができ、より具体的には、フィルムまたはコーティングは、10μm以下の厚さを有することができる。非常に薄いフィルムおよびコーティングを本発明により製造することができる。例えば、フィルムまたはコーティングは、2μmまたは1μmの厚さを有しながら、所望の特性を示すことができる。
【0029】
本明細書に用いた「可塑剤」という表現は、材料の柔軟性を向上させる低分子量の物質を指す。使用できる可塑剤の例は、水、グリセロール、キシリトール、ソルビトールおよびマルチトールなどの糖、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリンおよび尿である。
【0030】
好適には、可塑剤の含有量は、乾燥重量で1から60%の範囲、例えば乾燥重量で20から50%の範囲である。
フィルム形成特性を向上させるために添加されるセルロースは、木綿、木材および農業残留物などのバイオマスもしくは商業的供給源を起源とし、または細菌によって製造され得る。好ましくは、セルロースは微細化されている。好適には、微細セルロースの含有量は、乾燥重量で1から90%の範囲、例えば乾燥重量で50から75%の範囲である。
【0031】
フィルムまたはコーティングの主要成分がバイオマスから製造されるのであれば、場合により添加されるポリマーまたはオリゴマーは任意のタイプであり得る。したがって、合成ポリマーまたはオリゴマーを使用できるが、バイオマスをベースとするものが好適である。例えば、緻密性フィルムを得るために添加されるポリマーまたはオリゴマーは、様々な分子量のポリビニルアルコール、デンプンまたはベータ−グルカンである。好適には、ポリマーまたはオリゴマーの含有量は、乾燥重量で1から90%の範囲、例えば乾燥重量で20から75%の範囲である。
【0032】
本願を通じて用いた「酸素バリア」という表現は、酸素の透過度が低い材料を指す。酸素バリアを使用して、例えば食品または医薬品といった物質を酸素に対する曝露から保護することができる。しかし、本発明の酸素バリアは、その中の食品または医薬品を保護するために包装材内部に使用できる保護的な窒素または二酸化炭素雰囲気などの他の気体の移動も防止することになることが、当業者には明らかであろう。
【0033】
本願を通じて用いた「芳香バリア」という用語は、芳香物質の透過性が低い材料を指す。芳香バリアを使用して、例えば食品または医薬品といった物質を味および/または匂いの低下、ならびに周囲環境からの味および/または匂いの吸収を防止することができる。
【0034】
本願を通じて用いた「グリースバリア」という表現は、グリースの透過性が低い材料を指す。グリースバリアを使用して、例えば食品または医薬品といった物質をグリースに対する曝露から保護するとともに、例えば、包装材料が製品中のグリースで汚染されることを防止することができる。
【0035】
本発明によるポリマーフィルムまたはコーティングを、例えば食品包装または医薬品包装における酸素バリア、芳香バリアおよび/またはグリースバリアとして使用することができる。さらに、本発明のフィルムまたはコーティングを、場合により耐水材料と組み合わせて、例えば、紙、板紙およびプラスチック上の酸素バリア、芳香バリアおよび/またはグリースバリアとして使用することができる。
【0036】
本発明によるポリマーフィルムまたはコーティングの耐透液・耐透湿性を向上させるために、耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質をヘミセルロースと混合および/または反応させる。耐透液・耐透湿性の向上は、水溶性の低下、または高い周囲相対湿度(50%R.H.以上)における酸素透過度の低下として検出することができる。
【0037】
さらに、本発明によるポリマーフィルムまたはコーティングの耐透液・耐透湿性を向上させるために、耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質をヘミセルロース、ならびに可塑剤、セルロースおよびオリゴマーもしくはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの他の成分と混合および/または反応させることができる。通常、前記添加剤/反応物質は、他の成分と混合するが、必要があれば、耐透液・耐透湿性の向上した表面層を形成するために、既製のフィルムまたはコーティングに添加することができる場合もある。
【0038】
1つの好適な実施形態において、耐透液・耐透湿性を向上させる前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は架橋剤であり、該架橋剤は、好ましくはカルボキシル基および/またはヒドロキシル基と反応または相互作用する架橋剤からなる群から選択される。該架橋剤は、網状体を形成する。それらは、ヘミセルロースポリマー鎖と反応しそれらを互いに結合させるか、または互いに反応し、ヘミセルロースポリマー鎖を物理的に閉じ込めることができる。該架橋剤がヘミセルロースポリマー鎖と反応すると、ヘミセルロースが網状態に化学結合するため、有利であり得る。
【0039】
該架橋剤がヘミセルロースポリマー鎖と反応すると、異なる種類の化学結合が形成され得る。1つの好適な実施形態において、形成された結合は、イオン結合である。別の好適な実施形態において、形成された結合は、水素結合である。より好適な実施形態において、形成された結合は、イオン結合および水素結合より安定した共有結合である。
【0040】
当該架橋剤の例は、クエン酸、ホウ酸、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、エチレンアクリル酸共重合体、ホルムアルデヒド、グリオキサールおよび炭酸ジルコニウムである。他の有用な例は、エピクロロヒドリン、リン酸およびアクロレインである。特に、炭酸アンモニウムジルコニウムの添加は、ヘミセルロースフィルムまたはコーティングに優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0041】
ポリアミドアミン−エピクロロヒドリンは、スウェーデンのエカ・ケミカルズ社(Eka Chemicals)によって市販されている湿潤強化剤、すなわち湿った状態で紙の強度を向上させるために紙製造原料に使用される添加剤であるEka WS XOであり得る。同様に、炭酸アンモニウムジルコニウムは、スウェーデンのエカ・ケミカルズ社によって市販されているEka AZCであり得る。AZCは、紙コーティング、塗料およびインク処方ならびに金属表面処理に使用されるアニオン性ヒドロキシル化ジルコニウムポリマーである。紙コーティングにおいて、それは、ラテックス含有コート紙または板のための不溶化剤として使用され、また、未コート紙に使用されると、印刷ブランケット粉塵および毛羽立ちを低減する。
【0042】
別の好適な実施形態において、耐透液・耐透湿性を向上させる前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、酸無水物、ロジン、アルケニルコハク酸無水物およびアルキルケテン2量体などの疎水化剤である。疎水化剤は、ヘミセルロースと反応し、それをより親水性の低いものとする。アルキルケテン2量体の添加は、ヘミセルロースフィルムまたはコーティングに優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。アルキルケテン2量体は、内添サイズ剤、すなわち紙における水溶液の吸収および拡散を防止するための紙製造原料に対する添加剤として、スウェーデンのエカ・ケミカルズ社によって市販されているEka AKDであり得る。
【0043】
ポリマーフィルムまたはコーティングは、好適には、乾燥重量%で1〜99%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは60〜90%のヘミセルロース含有量、および乾燥重量%で0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、特に0〜10%、最も好ましくは0〜5%の架橋剤または疎水化剤の含有量を有し、前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、架橋剤または疎水化剤である。
【0044】
紙、板紙およびプラスチックをベースとする基板に本発明によるコーティングを塗布することができる。
生分解性および/または再生可能基板を使用する上での利点は、多層包装材料を堆肥化によって容易にリサイクルできることである。生分解性および/または再生可能基板の使用は環境の観点からさらに有利である。生分解性および/または再生可能基板の例は、板、紙ならびにポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デンプンの誘導体を含むデンプン系プラスチック、セルロースの誘導体を含むセルロース系プラスチック、生分解性ポリエステル、再生可能原料をベースとするポリエステル等の生分解性および/または再生可能プラスチックである。
【0045】
紙および板紙などの繊維系基板上へのコーティングに伴う1つの短所は、水性分散液または溶液が基板の孔および液体吸収性繊維に浸透することである。これにより、機能性コーティングを得るためにより多量の溶液または分散液が必要になる。セルロース/セルロース系繊維はともに植物や木組織中に天然に存在していることから、ヘミセルロースは当該繊維と高度に相互作用している。
【0046】
上記課題を克服するための1つの方法は、溶液または分散液の浸透を低減するプレコーティングを多孔性および液体吸収性基板上に作ることである。さらに、プレコーティングを使用すると、コーティングに亀裂が生じるのを防止することができる。
【0047】
好ましくは、プレコーティングは基板の多孔性を低減させる。このような材料の例としては、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、デンプン、アルギン酸塩および他の多糖類などの粘性ポリマー溶液または分散液がある。より好ましくは、プレコーティングは、また、基板の疎水性を向上させる。このような材料の例としては、ラテックスおよび熱可塑性樹脂がある。
【0048】
さらに、本発明によるコーティングを既存の工業用分散液コーティングまたは溶液コーティング法で基板上に塗布することができる。分散液コーティングまたは溶液コーティングは、紙および板紙製造において広く適用されている方法である。紙および板紙をベースとする基板上へのコーティングは、塗布工程装置が既に利用可能であり、新たな機械または装置への投資が必要ないため、有利であり得る。
【0049】
本発明による熱処理を分散液コーティングまたは溶液コーティング法の乾燥セクションに関連して実施することができる。熱処理は、製造に通常用いられるウェブ速度に対応するような短時間の処理であり得る。熱処理中の温度は、製造に通常用いられる温度に対応してもよい。
【0050】
さらに別の好適な実施形態において、添加剤は、2:1層状フィロ珪酸塩であり、フィルムは、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ粒子小板を含むナノ複合材料である。2:1層状フィロ珪酸塩は、中心の8面体シートを狭持する2枚の4面体シートを有する。その粒子は、小板形で、約1ナノメートルの厚さを有する。すなわち、それらはナノ粒子である。添加剤は、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ複合体を形成する。ヘミセルロース/フィロ珪酸塩ナノ複合補強材料は、優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0051】
好適には、2:1層状フィロ珪酸塩は、粘土鉱物であり、有利には、粘土鉱物は、スメクタイト群から選択される。好ましくは、2:1層状フィロ珪酸塩は、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイトまたはモンモリロナイトのような層状珪酸塩の群から選択される。特に、モンモリロナイトの添加は、優れた耐透液・耐透湿性をもたらす。
【0052】
ナノ複合体の調製中に直面する主たる問題は、ナノ粒子/小板が積層形になる傾向である。これらの積層体を崩壊させて、材料特性の効率的な向上を達成することが重要である。ナノ粒子/小板とポリマー・マトリックスの間の界面面積が大きいため、有意な向上を確認するのに、ごく少量のナノ粒子/小板が必要とされる。
【0053】
ヘミセルロースにおけるナノ粒子/小板の集積の前および/または最中に、物理的および/または化学的処理を含む異なる手法が、積層体を崩壊させるのに用いられる。
第1の工程において、2:1層状フィロ珪酸塩を撹拌下、例えば高剪断撹拌下、他の機械的撹拌下または磁気撹拌下、好ましくは高剪断撹拌下で極性溶媒、例えば水に膨潤させる。膨潤を20から140℃の温度で、溶媒に対するその温度における沸点を超える圧力において、好ましくは80から100℃で行うことができる。膨潤時間は、1分から24時間、好ましくは15分から3時間であり得る。
【0054】
第2に、化合物を、膨潤した2:1層状フィロ珪酸塩に撹拌下でインターカレート/エクスフォリエートする。インターカレーションは、分子(基)を他の2つの分子(基)の間に挿入することである。例えば、選択された化合物を、積層ナノ粒子/小板の間にインターカレートする。エクスフォリエーションは、粒子凝集物の解体を担う工程である。インターカレーション/エクスフォリエーション工程温度は、溶媒に対するその温度における沸点を超える圧力において20から140℃、好ましくは80から100℃であり得る。ナノ複合フィルムの2:1層状フィロ珪酸塩含有量は、0.1から15重量パーセント、好ましくは2から8重量パーセントであり得る。インターカレーション/エクスフォリエーション工程時間は、15分から8時間であり得る。
【0055】
該化合物を膨潤工程において添加することもできる。該化合物とヘミセルロースの混合物を、膨潤した2:1層状フィロ珪酸塩にインターカレート/エクスフォリエートすることもできる。
【0056】
該化合物は、フレークに対して強い親和性を有し、フレーク間を架橋することができ、極性溶媒に可溶である化合物、例えばポリマーまたはオリゴマーの群から選択される。特に、化合物は、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ(酢酸ビニル−ビニルアルコール)P(VAc−VOH)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVp)、ポリアクリルアミド(PAAm)およびポリメタクリルアミド(PMAAm)ならびにそれらの共重合体、またはバイオポリマー、例えば、デンプン、β−グルカン、セルロース誘導体およびキトサンからなる群から選択される。特に、ポリビニルアルコール(PVOH、別の略語PVA)の添加は、インターカレーション/エクスフォリエーション工程および優れた耐透液・耐透湿性を有するナノ複合体の形成を容易にする。PVOHの重量平均分子量は、1から1000kDa、最も好ましくは10から300kDaであり得る。ナノ複合フィルムのPVOH含有量は、0から40重量パーセント、好ましくは3から9重量パーセントであり得る。
【0057】
ヘミセルロースを、撹拌中に、溶媒に対するその温度における沸点を超える圧力で2:1層状フィロ珪酸塩/化合物混合物にインターカレート/エクスフォリエートする。好ましくは、1分から5時間、好ましくは15分から3時間にわたって80から100℃で行う。ヘミセルロースを膨潤中にインターカレート/エクスフォリエートし、または膨潤中に化合物と一緒にインターカレート/エクスフォリエートすることもできる。
【0058】
ポリマーフィルムを高温に曝すことで、閉じ込められた水を除去し、ポリマー鎖の間の共有架橋結合を促進することによって鎖間の2次的な力を強化することによって目的を達成することもできる。熱処理は、2秒から20分の範囲であってもよく、処理温度は、80から180℃、好ましくは120から160℃であり得る。
【0059】
必要ならば、本発明によるコート基板を熱可塑性樹脂または蝋などの防湿バリアでさらに保護することができる。それらの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ナイロンなどのポリアミド;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸塩共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;およびポリ硫化フェニレンである。また、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デンプンの誘導体を含むデンプン系プラスチック、セルロースの誘導体を含むセルロース系プラスチック、生分解性ポリエステル、および再生可能原料をベースとするポリエステルなどの生分解性および/または再生可能プラスチックを使用することもできる。使用できる蝋の例は、天然および合成蝋である。他の生分解性および/または再生可能成分が使用される本発明による多層構造体については、生分解性および/または再生可能防湿バリアが好適である。
【0060】
異なる層の間の接着性を向上させるために、コロナ処理を用いることができる。連続的な工程において、コーティングの前に基板をコロナ処理することができる。
必要ならば、当該技術分野で知られている従来の添加剤を本発明のフィルムコーティングに含めることができる。例えば、顔料、他の着色剤、安定剤、定着剤、防腐剤、pH調節剤、発泡調節剤、流動性改質剤、加工助剤および充填剤を本発明のフィルムおよびコーティングに含めることができる。
【実施例】
【0061】
実施例1〜9は、基礎フィルムまたはコーティングの製造を説明し、実施例10〜15では、耐透液・耐透湿性を向上させる添加剤/反応物質の添加、および該添加によって得られる特性を説明する。その後に続く実施例は、キシランをベースとするコーティングと他の材料との組合せを説明する。特に、実施例21は、キシランをベースとするフィルムの熱処理を説明し、実施例22〜24は、添加剤が2:1層状フィロ珪酸塩である実施形態を説明する。
【0062】
(実施例1)
本実施例は、低分子可塑剤キシリトールを使用してフィルム形成特性を向上させた、キシランをベースとするフィルムの製造を説明する。20%、27.5%、35%、42.5%および50%の添加キシリトール(乾燥重量)を含む1連のフィルムを調べた。全重量が1gのキシリトールとポプラ由来のグルコロノキシランの混合物を15分間にわたって95℃で35mlの水に溶解させた。次いで、溶液を、直径が14cmのポリスチレンペトリ皿上に注いだ。23℃、50%RHで2から3日間乾燥させた後、透明で多少柔軟のフィルムを得た。
【0063】
DMSO:水(90:10)中0.05MのLiBrを移動相とするサイズ排除クロマトグラフィーを用いてグルクロノキシランのモル質量を測定した。以下のPSS(ポリマー・スタンダード・サービス社(Polymer Standard Service))カラムセットを使用した。GRAM30、100、3000(8×300mm)およびガードカラム(8×50mm)。流量を60℃で0.4ml/分とすることで、58バールの系圧を得た。試料を24時間にわたって室温でシェーカ中にて溶出液に溶解させ、再生セルロース膜(0.45μm)を使用して濾過した。RI検出器(Shodex RI−71)、2角レーザ光散乱検出器(精密検出器PD2000)および粘度法検出器(Viscotek H502)を検出に使用した。データを収集し、PSSのWINGPC6.0ソフトウェアを使用して計算した。プルラン標準(PSS)を使用する汎用的な較正によって、モル質量データを粘度およびRI信号から計算した。得られたモル質量は、15,000g/molであった。
【0064】
100Nの容量のロードセルを有する引張試験機(Lloyd L2000R)を使用して、フィルムの機械特性を測定した。試料を切断して、1.5cmの幅を有する犬骨形の条片とした。測微計で測定した試料の厚さは、30から40μmであった。グリップ間の初期間隔を20mmとし、グリップの分離速度を5mm/分(実施例1、2および7)または10mm/分(実施例4)と一定にした。各材料からの少なくとも5つの反復試験片の試験を行った。試料毎に、応力−歪み曲線を記録し、破断応力および破断歪みを計算した。
【0065】
フィルムの酸素透過度を、電量的酸素センサを使用したMocon Oxtran 2/20装置で測定した。試料の面積を5cmとし、分析を50%R.H.で実施した。酸素透過度を酸素透過量およびフィルムの実測厚さから計算し、(cmμm)/(md kPa)(d=24hである)の単位で示す。
【0066】
広角X線散乱(WAXS)を用いてフィルムの結晶性を調べた。液体窒素を使用してフィルムを微粉末に粉砕し、試料をSiemens D5000回折計で調べた。1.54Åの波長のCuKα放射線を使用した。2Θは、5°から30°の範囲であった。
【0067】
【表1】

可塑剤の添加量の増加とともに柔軟性が向上した。すべてのフィルムは、半結晶性であり、結晶性の程度は、キシリトールの添加によってほとんど影響されなかった。通常、結晶性が低下すると、バリア特性が低下する。
【0068】
1.10(cmμm)/(md kPa)の酸素透過度は、フィルムが良好な酸素バリアであることを示す。
(実施例2)
本実施例は、低分子可塑剤ソルビトールを使用してフィルム形成特性を向上させた、キシランをベースとするフィルムの製造を説明する。可塑剤としてキシリトールの代わりにソルビトールを使用し、一連の可塑剤に3種類の量の可塑剤を含めた、すなわち20%、35%および50%を調べた点を除いては、実施例と同じ手順を用いた。
【0069】
【表2】

ソルビトールの量の増加とともにフィルムの柔軟性が向上した。ソルビトールを添加しても、フィルムの相対的結晶性はわずかしか影響されなかった。通常、結晶性が低下すると、バリア特性が低下する。
【0070】
0.21(cmμm)/(md kPa)の酸素透過度は、フィルムが非常に良好な酸素バリアであることを示す。
(実施例3)
本実施例は、キシランおよびポリビニルアルコールから製造されたフィルムの製造を説明する。実施例1と同じ手順を用いたが、0.75gのポリビニルアルコール(mw20,000)を0.25gのキシランと混合した。柔軟フィルムを形成した。フィルムの実測酸素透過度は、フィルムが非常に良好な酸素バリアであることを示す0.18(cmμm)/(md kPa)であった。
【0071】
(実施例4)
本実施例は、キシランおよび微細セルロースから製造されたフィルムの製造を説明する。95℃で15分間にわたって20mlの水に溶解させた0.37gのグルクロノキシランを120mlの水において均質化された1.13gの細菌セルロースに添加した。混合物を30分間相互作用させた。得られたゲルを直径が14cmのポリスチレンペトリ皿上に注ぎ、50℃で48時間乾燥させた。乾燥後、柔軟フィルムを得た。この方法により製造されたフィルムは、セルロースがフィルムを補強していることを示す102.8MPaの破断応力を示した。破断歪みは、3.1%であり、0.225(cmμm)/(md kPa)の酸素透過度は、フィルムが非常に良好な酸素バリアであることを示す。
【0072】
(実施例5)
本実施例は、キシランが、オートムギスペルト、大麦殻または亜麻などの農業残留物から得られる、キシランをベースとするフィルムの製造を説明する。1gのアラビノキシランを95℃で15分間にわたって35mlの水に溶解させた。次いで、溶液を直径が14cmのポリスチレンペトリ皿上に注いだ。23℃、50%R.H.で2から3日間乾燥させた後、柔軟フィルムを得た。
【0073】
この場合、水が好適な可塑剤である。水以外のいずれの可塑剤も添加せずにアラビノキシランのフィルムを得ることができることは、非常に有利であり、本発明の驚くべき態様である。
【0074】
測微計で測定したフィルムの厚さは、30〜40μmであった。
実施例1に記載したサイズ排除クロマトグラフィーを用いてアラビノキシランのモル質量を測定した。得られたモル質量は、34,000g/molであった。
【0075】
フィルムの酸素透過度は、非常に良好なバリアを示す低値である0.19(cmμm)/(md kPa)(d=24h)であった。
(実施例6)
本実施例は、キシランをベースとするコーティングの製造を説明する。0.105gのソルビトールとポプラ由来の0.195gのグルコロノキシランとの混合物を95℃で15分間にわたって30mlの水に溶解させた。次いで、溶液を直径が14cmのポリスチレンペトリ皿上に注いだ。23℃、50%RHで2から3日間乾燥させた後、プラスチックフィルム上のキシランのコーティングを得た。
【0076】
実施例1に記載したサイズ排除クロマトグラフィーを用いてグルクロノキシランのモル質量を測定した。得られたモル質量は、15,000g/molであった。
測微計を使用して測定した、キシランコーティングを有するプラスチックフィルムの厚さからプラスチックフィルムの厚さを引くことによってコーティングの厚さを得た。得られたコーティングの厚さは、1μmであった。本実施例において、キシランをベースとする薄膜コーティングを成功裡に製造した。この薄膜コーティングを製造できることは、多くの工業用途において重要である。
【0077】
(実施例7)
本実施例は、低分子可塑剤ソルビトールを使用してフィルム形成特性を向上させた、グルコマンナンをベースとするフィルムの製造を説明する。ソルビトールを含まないフィルムおよび20%の添加ソルビトール(乾燥重量)を含むフィルムを調べた。全重量が0.2gのソルビトールとグルコマンナンの混合物を95℃で15分間にわたって20mlの水に溶解させた。次いで、溶液を直径が9cmのポリスチレンペトリ皿上に注いだ。23℃、50%RHで2から3日間乾燥させた後、透明で多少柔軟のフィルムを得た。
【0078】
実施例1に従ってフィルムの機械特性を測定した。測微計で測定した試料の厚さは、60〜70μmであった。
【0079】
【表3】

可塑剤を添加すると柔軟性が向上した。
【0080】
(実施例8)
本実施例は、キシランが50.000g/molを超える高モル質量を有する、大麦殻由来のアラビノキシランをベースとするフィルムの製造を説明する。1gのアラビノキシランを95℃で15分間にわたって35mlの水に溶解させた。次いで、溶液を直径が14cmのポリスチレンペトリ皿上に注いだ。23℃、50%R.H.で2から3日間乾燥させた後、柔軟フィルムを得た。
【0081】
この場合、水が好適な可塑剤である。水以外のいずれの可塑剤も添加せずにアラビノキシランのフィルムを得ることができることは、非常に有利であり、本発明の驚くべき態様である。
【0082】
測微計で測定したフィルムの厚さは、30〜40μmであった。
水系においてサイズ排除クロマトグラフィーを用いてアラビノキシランのモル質量を測定した。得られたモル質量は、73,900g/molであった。
【0083】
フィルムの酸素透過度は、0.45(cmμm)/(md kPa)(d=24h)であり、フィルムが非常に良好な酸素バリアであることを示す。
以下の実施例において、他に指定する場合を除いて、フィルムにおける主要成分は、大麦殻由来のキシランであった。2つの異なる基準フィルム、すなわち純粋のキシランフィルム、および30%の添加ソルビトールを含むキシランフィルムを使用した。
【0084】
また、添加剤/反応物質の添加/反応時の温度を、1時間未満、好ましくは10分間未満、より好ましくは製造に通常用いられるウェブ速度に対応する時間にわたって0から300℃、好ましくは20から100℃に維持し、耐透液・耐透湿性を向上させるために使用する添加剤/反応物質の含有量を乾燥重量%で0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、特に0〜10%、最も好ましくは0〜5%とした。
【0085】
(実施例9)
キシランの(架橋剤または疎水化剤を含まない)基準フィルムの溶解性を、30〜40μmの厚さのフィルムを5×5mmの正方形の片に切断し、振盪装置内の試験管中の室温のMilli−Q(登録商標)水にそれらを浸漬させることによって試験した。水のみを可塑剤とする基準フィルムは、37秒後に完全に溶解した。30%のソルビトールを可塑剤とする基準フィルムは、23秒後に溶解した。これらは、これらの材料を高湿条件下の用途に使用する可能性に影響を与えることになる非常に短い時間である。
【0086】
酸素透過率の測定を83%R.H.、すなわち非常に高い湿度において行い、酸素透過度を酸素透過率および試料の厚さから計算した。
大麦殻の基準フィルムは、2つの測定において、500.4(cmμm)/(md kPa)(d=24h)および381.2(cmμm)/(md kPa)(d=24h)の酸素透過度を有していた。
【0087】
(実施例10)
本実施例は、架橋剤としてのクエン酸(CA)の使用を説明する。フィルムを8分間熱処理した。フィルムの溶解性を以下の表に示す。
【0088】
【表4】

これらの結果は、フィルムの耐透液・耐透湿性が基準フィルムと比較して大きく向上していることを示す。正の効果は、CAの量が多いほど、そして熱処理時の温度が高いほど大きい。
【0089】
(実施例11)
本実施例は、架橋剤としてのホウ酸(BA)の使用を説明する。フィルムを8分間熱処理した。フィルムの溶解性を以下の表に示す。
【0090】
【表5】

これらの結果は、フィルムの耐透液・耐透湿性が基準フィルムと比較して大きく向上していることを示す。正の効果は、BAの量が多いほど、そして熱処理時の温度が高いほど大きい。
【0091】
(実施例12)
本実施例は、架橋剤としてのポリアミドアミン−エピクロロヒドリン(PAAE)の使用を説明する。Eka WS XOを試験した。フィルムを30分間熱処理した。フィルムの溶解性を以下の表に示す。
【0092】
【表6】

これらの結果は、フィルムの耐透液・耐透湿性が基準フィルムと比較して大きく向上していることを示す。正の効果は、PAAEの量が多いほど大きい。熱処理時にかなり低温を用いることができることは、大きな利点である。
【0093】
(実施例13)
本実施例は、架橋剤としての炭化アルミニウムジルコニウム(AZC)の使用を説明する。Eka AZCを試験した。フィルムを1分間熱処理した。フィルムの溶解性を以下の表に示す。
【0094】
【表7】

これらの結果は、フィルムの耐透液・耐透湿性が基準フィルムと比較して大きく向上していることを示す。正の効果は、AZCの量が多いほど大きいが、少量のAZCも非常に良好な効果を与える。熱処理時にかなり低温を用いることができ、なおも耐透液・耐透湿性に対する非常に大きな効果が得られることは、大きな利点である。
【0095】
(実施例14)
本実施例は、異なる架橋剤および疎水化剤の使用ならびに酸素透過度に対するそれらの影響を説明する。
【0096】
酸素透過率の測定を80%R.H.、すなわち高い湿度において行い、酸素透過度を酸素透過率および試料の厚さから計算した。
80%R.H.における測定を50%R.H.における測定と同様に実施する。湿度が平衡に達するまでフィルムを調湿し、次いで80%R.H.の雰囲気湿度を維持しながらフィルムの酸素透過率を測定する。
【0097】
【表8】

この結果は、CA、AKDおよびPAAEを添加すると、いずれも、基準フィルム(実施例9参照)と比較して高い相対湿度におけるキシランフィルムの酸素透過度が低下することを示す。しかし、AZCの添加は、極めて良好な驚くべき効果を示す。
【0098】
(実施例15)
本実施例は、疎水化剤としてのアルキルケテン2量体(AKD)の使用を説明する。ソルビトールを含む場合および含まない場合のEka AKDの3つの含有量を試験した。試験した含有量は、0.5%、1%および1.5%のAKDであった。ソルビトールで可塑化したフィルムは、30%のソルビトールを含んでいた。フィルムを20〜100℃で0.5〜30分間熱処理した。
【0099】
溶解性試験において、試料のほとんどは、3時間を超える時間にわたって振盪機の中で破断せず、数日間水中に放置した後も溶解しなかった。試験した試料の半分は、ソルビトールを含んでいたが、試験中、ソルビトールを含む試料と含まない試料の間の溶解時間の差は、観察されなかった。
【0100】
(実施例16)
本実施例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)上へのキシランをベースとするコーティングの製造を説明し、キシランを多層包装用途のプラスチックフィルムと成功裡に組み合わせることができることを示す。アラビノキシランとソルビトールの7:3の比率の混合物を95℃で30分間にわたって水に溶解させた。溶液の乾燥含有量は、12.5%であった。ワイヤを巻きつけたメーター・バー(Kコントロール・コーター)を使用して、溶液をPETフィルム(マイラー800、36μm)上にコートした。コーティングをIRで1から2分間乾燥させた。
【0101】
コートされたPETフィルムの表面重量から純粋のPETフィルムの表面重量を引くことによってコート重量を得た。乾燥コート重量は、5g/mであった。
コーティングの酸素透過度は、0.32(cmμm)/(md kPa)であり、それは、非常に良好なバリアである。
【0102】
(実施例17)
本実施例は、板紙(インヴェルコートクレアト社(Invercoat Creato)、Iggesund Paperboard)からなるプレコート基板上へのキシランをベースとするコーティングの製造を説明し、包装用多層材料の製造をさらに説明する。多層材料を乾燥および湿性用途における板ベースの包装に使用することができる。様々な湿性コート重量を与えるワイヤが巻きつけられたメーター・バーを有する実験用電気コーター(K202コントロール・コーター)を使用してコーティングを実施した。ラテックス(チバ社(Ciba)のスチレンブタジエンラテックス)のプレコーティングを板にコートし、IRを使用して1分間乾燥させた。プレコーティングの乾燥コート重量は、9g/mであった。アラビノキシランとソルビトールの7:3の比率の混合物を95℃で30分間にわたって水に溶解させた。溶液の乾燥含有量は、12.5%であった。溶液を、プレコートされた基板にコートし、IRを使用して2分間乾燥させた。キシランをベースとするコーティングの乾燥コート重量は、5g/mであった。低密度ポリエチレンをパイロットコーティング装置において、コートされた基板の両面上に押し出した。低密度ポリエチレンのコート重量は、40g/m/面であった。
【0103】
得られた多層材料の酸素透過率は、0.6cm/(m日気圧)であり、それは、非常に良好なバリアである。酸素透過率を「cc」単位(すなわち、100%Oで測定したcm/m24h気圧)で測定する。必要ならば、気圧をKpaに変換し、フィルム/コーティングの厚さを考慮に入れることによって実測値を透過度に変換することができる。例えば、40μの厚さのフィルムについて5ccと測定された場合は、透過度は、(5/101.325)×40=1.97(cmμm)/(md kPa)(d=24h)になる。
【0104】
(実施例18)
本実施例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)またはポリプロピレン(PP)からなるコロナ処理基板上へのキシランをベースとするコーティングの製造を説明し、接着性に対するコロナ処理の影響の評価をさらに説明する。ワイヤが巻きつけられたメーター・バーを使用してコーティングを製造して、100μmの湿性コーティングを得た。コーティングの前に、10m/分の速度で2.5Aおよび56Vの出力電圧を有するFG−2 Ahlbrandtコロナ・システムを用いて基板を処理した。電極を互いに1.8mm離れた位置に置いた。アラビノキシランとソルビトールの7:3の比率の混合物を95℃で30分間にわたって水に溶解させた。溶液の乾燥含有量は、12.5%であった。溶液をコロナ処理基板上にコートし、IRを使用して2分間乾燥させた。基板とコーティングの接着性をテープ試験によって評価し、コロナ処理されなかった同じ基板上のコーティングと比較した。試料毎に10回測定を行った。テープ片をコーティングの表面に貼付し、90度の角度で急速に引き離した。コーティングが影響を受けなければ結果を「合格」とし、コーティングが基板から剥離すると結果を「不合格」とした。それらの結果の概要を以下の表に示す。
【0105】
【表9】

この結果は、様々なプラスチック材料への接着性がコロナ処理によって大きく向上し、キシランをベースとするコーティングと異なるプラスチック材料とを組み合わせたときにコロナ処理を成功裡に使用できることを示す。
【0106】
(実施例19)
本実施例は、ポリエチレンコート紙からなる基板上へのキシランをベースとするコーティングの製造を説明する。アラビノキシランとソルビトールの7:3の比率の混合物を95℃で30分間にわたって水に溶解させた。溶液の乾燥含有量は、12.5%であった。ワイヤが巻きつけられたメーター・バー(Kコントロール・コーター)を使用して溶液を基板上にコートした。コーティングをIRで1から2分間乾燥させた。得られた乾燥コート重量は、7g/mであった。
【0107】
コート基板のグリースバリア性を評価し、非コート基板と比較した。1滴の精油(揮発性油およびエーテル性油としても知られる)をコート基板および非コート基板の前面(それぞれ、キシランコート面およびポリエチレンコート面)に落とし、試料を70℃の加熱炉に入れた。試料の逆の面上のグリース汚染の形成を観察した。非コート基板については、グリース汚染が2分後に形成された。60分後に試験を中断し、コート基板上にグリース汚染が観察されなかった。精油を使用して、脂様化合物、および例えばスパイスのような芳香化合物をシミュレートした。
【0108】
コート基板を、芳香スパイスで満たされる袋の製造にさらに使用した。芳香族化合物の透過性を匂いによって観察した。非コート基板をベースとする袋と比較して、コート基板をベースとする袋は、匂いが著しく減少していた。
【0109】
本実施例は、キシランをベースとするコーティングをグリースおよび芳香製品の包装に成功裡に使用できることを示す。
(実施例20)
本実施例は、板紙(リキッド・カートン・ボード、ストラ・エンソ社(Stora Enso))からなる基板上へのキシランをベースとするコーティングの製造を説明する。アラビノキシランとグリセロールの8:2の比率の混合物を95℃で30分間にわたって水に溶解させた。溶液の乾燥含有量は、10%であった。ワイヤが巻きつけられたメーター・バー(Kコントロール・コーター)を使用して溶液を基板上にコートした。コーティングをIRで1から2分間乾燥させた。得られた乾燥コート重量は、25g/mであった。
【0110】
グリースバリア特性をキット試験(TAPPI T559)により評価した。コート基板のグリースバリア性は、レベル12、すなわち最高レベルであった。非コート基板は、グリースバリア性を示さず、レベル0、すなわち最低レベルにとどまった。
【0111】
(実施例21)
本実施例は、耐透液・耐透湿性を向上させ、キシランフィルムおよびコーティングの酸素透過度を低下させるための熱処理の使用を説明する。フィルムを強制循環加熱炉において140℃で10分間処理した。耐透液・耐透湿性および酸素透過度を以下の表に示す。
【0112】
60から80μmの厚さのフィルムを5×5mmの正方形の片に切断し、振盪装置内の試験管中の室温のMilli−Q水にそれらを浸漬させることにより、フラグメントサイズ試験でフィルムの耐透液・耐透湿性を測定した。フラグメントサイズは、振盪装置における特定時間後の特徴的長さとして示される。
【0113】
フィルムを強制循環加熱炉において140℃で10分間処理した、耐透液・耐透湿性および酸素透過度を以下の表に示す。
【0114】
【表10】

この結果は、フィルムまたはコーティングの熱処理を用いて、耐透液・耐透湿性を向上させ、キシランフィルムの酸素透過度を低下させることができることを示す。
【0115】
(実施例22)
本実施例は、キシランフィルムおよびコーティングにおけるナノ複合補強材としてのモンモリロナイトの使用を説明する。また、化合物としてのポリビニルアルコール(PVOH)の使用およびその分子量の影響を説明する。モンモリロナイトを高剪断撹拌下で24時間にわたって1%懸濁液として25℃で水に膨潤させる。水溶液中のポリビニルアルコール(PVOH)を磁気撹拌下で90℃にて4時間にわたってモンモリロナイトにインターカレートする。キシランおよびソルビトールをPVOH/モンモリロナイト溶液に分散させる。フィルムにおける成分の比率は、キシラン:モンモリロナイト:PVOH:ソルビトールが1:0.11:0.1:0.3であった。45および85〜124kDaの2つの異なる分子量のPVOHを使用した。耐透液・耐透湿性を以下の表に示す。
【0116】
【表11】

この結果は、モンモリロナイトとPVOHの組合せを使用して、キシランフィルムおよびコーティングにおける耐透液・耐透湿性を向上させることができることを示す。PVOHの分子量の増加は、この向上に有利である。
【0117】
(実施例23)
本実施例は、キシランフィルムまたはコーティングにおけるナノ補強材としてのモンモリロナイトの使用とフィルムまたはコーティングの熱処理との組合せを説明する。モンモリロナイトを高剪断撹拌下で24時間にわたって25℃にて水に膨潤させる。水溶液中のポリビニルアルコール(PVOH)(M146〜186kDa)を磁気撹拌下で90℃にて4時間にわたってモンモリロナイトにインターカレートする。キシランおよびソルビトールをPVOH/モンモリロナイト懸濁液に分散させる。フィルムにおける成分の比率は、キシラン:モンモリロナイト:PVA:ソルビトールが1:0.11:0.1:0.3であった。2つのフィルムを強制循環加熱炉において10分間にわたって140℃で熱処理した。耐透液・耐透湿性および酸素透過度を以下の表に示す。
【0118】
【表12】

この結果は、耐透液・耐透湿性を向上させ、キシランフィルムおよびコーティングの酸素透過度を低下させる、ナノ補強材としてのモンモリロナイトの使用と熱処理との相乗効果を示す。
【0119】
(実施例24)
本実施例は、キシランフィルムおよびコーティングにおけるナノ補強材としてのモンモリロナイトの使用、およびポリビニルアルコールの添加の影響を説明する。モンモリロナイトを高剪断撹拌下で24時間にわたって25℃にて水に膨潤させる。水溶液中のポリビニルアルコール(PVOH)(M=146〜186)を磁気撹拌下で90℃にて4時間にわたってモンモリロナイトにインターカレートする。キシランおよびソルビトールをPVOH/モンモリロナイト懸濁液に分散させる。フィルムにおける成分、すなわちキシラン:モンモリロナイト:PVA:ソルビトールの比率は、1:0.11:0.1:0.3および1:0.11:0.05:0.3であった。フィルムを強制循環加熱炉において10分間にわたって140℃で熱処理した。耐透液・耐透湿性および酸素透過度を以下の表に示す。
【0120】
【表13】

これらの結果は、PVOHの量の増加がキシラン/モンモリロナイトナノ複合フィルムおよびコーティングにおける耐透液・耐透湿性の向上および酸素透過度の低下をもたらすことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の利点は、フィルムまたはコーティングが生分解性で、リサイクルを促進することである。
さらなる利点は、材料が再生可能な資源をベースとしており、環境の観点から好ましいことである。
【0122】
さらなる利点は、本発明によるフィルムまたはコーティングが再生可能な資源をベースとしており、木材および農業残留物由来の低価の副産物から抽出できることである。したがって、該フィルムおよびコーティングは、大規模生産量においてコスト効率が高くなる大きな可能性を有する。
【0123】
原油の価格は最近大きく上昇し、将来さらに上昇すると予想され、合成プラスチック材料の価格の大きな上昇につながった。本発明によるフィルムおよびコーティングは、再生可能な資源をベースとしているため、石油価格に影響されにくく、コスト効率が将来さらに重要になり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを備える装用耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティングであって、
耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質であって、前記ヘミセルロースおよび前記少なくとも1つの成分からなる水溶液から当該フィルムまたはコーティングを形成する前または該形成と同時に、該水溶液と混合されるか反応する少なくとも1つの添加剤/反応物質をさらに備える包装用耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項2】
前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、架橋剤または疎水化剤である請求項1に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項3】
前記フィルムまたはコーティングは、乾燥重量で1〜99%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは60〜90%のヘミセルロース含有量、および乾燥重量で0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、特に0〜10%、最も好ましくは0〜5%の架橋剤または疎水化剤の含有量を有する請求項2に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項4】
前記架橋剤または疎水化剤は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と反応または相互作用する架橋剤からなる群から選択される架橋剤であり、特に、クエン酸、ホウ酸、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、エチレンアクリル酸共重合体、ホルムアルデヒド、グリオキサール、炭酸ジルコニウム、エピクロロヒドリン、リン酸およびアクロレインからなる架橋剤の群から選択される架橋剤である請求項2または3に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項5】
前記架橋剤または疎水化剤は、酸無水物、ロジン、アルケニルコハク酸無水物およびアルキルケテン2量体からなる群から選択される疎水化剤である請求項2または3に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項6】
前記少なくとも1つの添加剤/反応物質は、2:1層状フィロ珪酸塩であり、前記フィルムは、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ粒子小板からなるナノ複合材料である請求項1に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項7】
前記2:1層状フィロ珪酸塩は、粘土鉱物である請求項6に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項8】
前記粘土鉱物は、スメクタイト群から選択される請求項7に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項9】
ナノ複合フィルムまたはコーティングの前記2:1層状フィロ珪酸塩含有量は、0.1から15重量パーセント、好ましくは2から8重量パーセントである請求項6から8のいずれか1項に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項10】
前記小板に対する強い親和性を有し、該小板の間を架橋することができ、極性溶媒に可溶である化合物の群の少なくとも1つの化合物が、2:1層状フィロ珪酸塩にインターカレートまたはエクスフォリエートされている請求項6から9のいずれか1項に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項11】
前記化合物は、ポリマーまたはオリゴマーである請求項10に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項12】
前記化合物は、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ(酢酸ビニル−ビニルアルコール)P(VAc−VOH)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリビニルピロリドン(PVp)、ポリアクリルアミド(PAAm)およびポリメタクリルアミド(PMAAm)ならびにそれらの共重合体、またはバイオポリマー、例えば、デンプン、β−グルカン、セルロース誘導体およびキトサンからなる群から選択される請求項11に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項13】
前記化合物は、1から1000kDa、好ましくは10から300kDaの重量平均分子量を有するポリビニルアルコール(PVOH)であり、前記ナノ複合フィルムまたはコーティングにおける該ポリビニルアルコール(PVOH)の含有量は、40重量パーセントまで、好ましくは3から9重量パーセントである請求項12に記載の耐透液・耐透湿性ポリマーフィルムまたはコーティング。
【請求項14】
酸素、芳香またはグリースバリアとしての請求項1から13のいずれか1項に記載のポリマーフィルムまたはコーティングの使用。
【請求項15】
ポリマーフィルムまたはコーティングの製造方法であって、ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを混合し、該ヘミセルロースおよび該少なくとも1つの成分と、耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質とを混合および/または反応させ、該へミセルロース、該少なくとも1つの成分および該少なくとも1つの添加剤の少なくとも1つを水に少なくとも部分的に溶解させることを備え、該混合または反応を該フィルムまたはコーティングを形成する前または該形成と同時に実施し、該溶解を該フィルムまたはコーティングを形成する前または該形成と同時に実施することをさらに備える、製造方法。
【請求項16】
ヘミセルロースを含み耐透液・耐透湿性が向上した耐透液・耐透湿性の向上したフィルムまたはコーティングの製造方法であって、ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを混合し、該ヘミセルロースおよび該少なくとも1つの成分と少なくとも1つの架橋剤および/または疎水化剤とを混合および/または反応させ、該へミセルロース、該少なくとも1つの成分および該少なくとも1つの添加剤の少なくとも1つを水に少なくとも部分的に溶解させ、得られた水溶液でフィルムまたはコーティングを形成することを備え、該溶解を該フィルムまたはコーティングを形成する前または該形成と同時に実施することを特徴とする、製造方法。
【請求項17】
ヘミセルロースを含み耐透液・耐透湿性が向上したフィルムまたはコーティングの製造方法であって、
ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを混合することを備え、更に、
2:1層状フィロ珪酸塩を極性溶媒に膨潤させる工程と、
該2:1層状フィロ珪酸塩の該膨潤の最中または後に、該フィロ珪酸塩から形成される小板に対する強い親和性を有し、さらに小板の間を架橋することが可能であり、極性溶媒に可溶であるインターカレート/エクスフォリエート化合物を添加する工程と、
該2:1層状フィロ珪酸塩中のインターカレート/エクスフォリエートヘミセルロースを、該ヘミセルロースを得られたフィロ珪酸塩/化合物混合物に添加することによって、または該2:1層状フィロ珪酸塩の該膨潤の最中または後に該ヘミセルロースをそのまま、または、ヘミセルロースと化合物の混合物として添加することによって添加する工程と、
得られた混合物で、ヘミセルロースをマトリックスとするナノ複合補強フィルムまたはコーティングを形成する工程とを備える、製造方法。
【請求項18】
前記2:1層状フィロ珪酸塩を極性溶媒に、20℃からから140℃、好ましくは80℃から100℃の温度、および該温度における該溶媒の沸点を超える圧力で、1分から24時間、好ましくは15分から3時間にわたって撹拌しながら膨潤させる工程と、
該2:1層状フィロ珪酸塩の該膨潤の最中または後に、前記インターカレート/エクスフォリエート化合物を、20℃からから140℃、好ましくは80℃から100℃の温度、および該温度における該溶媒の沸点を超える圧力で、15分から8時間にわたって撹拌しながら添加する工程と、
膨潤中の該化合物とともに、または該化合物を含めずに、該2:1層状フィロ珪酸塩の該膨潤または該インターカレーション/エクスフォリエーション中に、ヘミセルロースを該2:1層状フィロ珪酸塩/化合物混合物に、該温度、好ましくは80℃から100℃における該溶媒の沸点を超える圧力で、1分から5時間、好ましくは15分から3時間にわたってインターカレート/エクスフォリエートする工程とをさらに備える請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヘミセルロースを含み酸素、グリースおよび/または芳香バリア特性が向上したフィルムまたはコーティングの製造方法であって、
ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分とを混合することを備え、該ヘミセルロースおよび該少なくとも1つの成分と、少なくとも1つの架橋剤および/または疎水化剤とを混合および/または反応させ、該へミセルロース、該少なくとも1つの成分および該少なくとも1つの添加剤の少なくとも1つを水に少なくとも部分的に溶解させ、得られた水溶液でフィルムまたはコーティングを形成することを備え、該溶解をフィルムまたはコーティングを形成する前または該形成と同時に実施することを特徴とする、製造方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの架橋剤は、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基と反応または相互作用する架橋剤からなる群から選択され、特に、クエン酸、ホウ酸、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン、エチレンアクリル酸共重合体、ホルムアルデヒド、グリオキサール、炭酸ジルコニウム、エピクロロヒドリン、リン酸およびアクロレインからなる架橋剤の群から選択され、前記少なくとも1つの疎水化剤は、酸無水物、ロジン、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテン2量体および炭酸ジルコニウムからなる群から選択される請求項16または19に記載の方法。
【請求項21】
添加される成分の量は、前記フィルムまたはコーティングが、乾燥重量%で1〜99%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは60〜90%のヘミセルロース含有量、および乾燥重量%で0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%、特に0〜10%、最も好ましくは0〜5%の架橋剤または疎水化剤の含有量を有するような量である請求項16、19および20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記へミセルロース混合物からフィルムまたはコーティングを形成することと、80℃から180℃、好ましくは120℃から160℃の温度で、2秒から20分にわたって該フィルムまたはコーティングを熱処理することをさらに備える請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ヘミセルロースと、可塑剤、セルロースおよびオリゴマーまたはポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、さらに、フィルム形成組成物から形成されたフィルムまたはコーティングの耐透液・耐透湿性を向上させる少なくとも1つの添加剤/反応物質とからなる水性フィルム形成組成物。
【請求項24】
請求項15から22のいずれか1項に記載の方法によって、または請求項23に記載の組成物から製造されたポリマーフィルムまたはコーティングの酸素、芳香もしくはグリースバリアとしての使用。

【公表番号】特表2010−527384(P2010−527384A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549561(P2009−549561)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050191
【国際公開番号】WO2008/103123
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509209269)キシロフェン アクチボラグ (1)
【氏名又は名称原語表記】XYLOPHANE AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】