説明

ヘミング材、プレスヘミング又はロールヘミング装置、及びプレスヘミング又はロールヘミング方法

【課題】アウタパネルとインナパネルのズレを防止して外観品質にも優れたヘミング材、プレスヘミング又はロールヘミング装置、及びプレスヘミング又はロールヘミング方法を提供する。
【解決手段】アウタパネル101の縁部101hを略平行に折返してインナパネル102を挟み込んでなるヘミング材100であって、アウタパネルのヘミング部の表面からインナパネルに向かって圧入される半球状の凹部104が1個以上形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスヘミング又はロールヘミングを行う装置及び方法、並びにヘミング材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアパネルなどの板材は、アウタパネルにインナパネルを重ね、アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込むヘミング加工を行って製造されている。ここで、同一形状のヘミング材を大量に製造する場合は、それぞれ予めヘミング材の形状に合わせた下型、及び上型に取り付けられてアウタパネルの縁部を押付けて折り返す押付け部材を用いたプレスヘミングが行われる(特許文献1参照)。一方、少ロットのヘミング材を製造する場合は、下型にアウタパネル及びインナパネルを載置した後、アウタパネルの縁部に沿ってロボットアーム等に取り付けられたローラを押付けるロールヘミングが行われる(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ヘミング加工を行なった後、外力によってアウタパネルとインナパネルがズレることがあり、このズレを防止するため、ヘミング加工前にアウタパネルとインナパネルの間に構造接着剤を塗布して固定したり、両者をスポット溶接等により固定することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−57368号公報
【特許文献2】特開2002−160031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、構造接着剤は塗布後に熱硬化させるものであるため、硬化前に衝撃や外力が加わると、やはりアウタパネルとインナパネルがズレてしまう。又、スポット溶接の場合には、最終製品であるヘミング材のへミング部の両面に溶接圧痕が生じて外観品質が劣るという問題がある。
又、本発明者らは、上記ズレを防止すべく、プレスヘミングの押付け部材の表面や、ロールヘミング装置のロールの表面に一般的な円錐形状の凸部を設け、この凸部をアウタパネルのヘミング部に圧入したところ、ヘミング部の凹部にキズが生じたり、凹部がヘミング部の裏面(アウタパネルの外観面)に圧痕として表れる問題が生じることがわかった。
つまり、図15(a)に示すように、ヘミング加工の予備曲げ後のアウタパネル101の縁部101hは、水平面に対して斜めになっている。そして、この状態で、縁部101hを押付け部材2300で略平行に折返すまで曲げ、インナパネル102を挟み込む本曲げを行うと(図15(b))、押付け部材2300の円錐状凸部2300pが縁部101hに圧入されて凹部1040を形成する。この際、縁部101hの面が凸部2300pの軸線に対して角度を変えつつ曲げられるので、凹部1040となる面が凸部2300pの側面と摺動し、凹部1040近傍にキズが生じる。又、凸部2300pの先端が円錐状であると、円錐部分の体積(=塑性加工量)が小さいため、その分凸部2300pを深く圧入する必要がある。そのため、凹部1040がヘミング部の裏面(アウタパネル101の外観面)に出っ張る圧痕1010として表れる(図15(c))。
従って、本発明の目的は、アウタパネルとインナパネルのズレを防止して外観品質にも優れたヘミング材、プレスヘミング又はロールヘミング装置、及びプレスヘミング又はロールヘミング方法、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヘミング材は、アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込んでなるヘミング材であって、前記アウタパネルのヘミング部の表面から前記インナパネルに向かって圧入される半球状の凹部が1個以上形成されている。
このヘミング材によれば、溶接等をせずにアウタパネルとインナパネルのズレを防止し、凹部の近傍やヘミング部の反対面には圧痕が生じない(又は少ない)ので外観品質にも優れる。
【0007】
前記凹部は、プレスヘミングの本曲げ工程にて用いる押付け部材の表面に設けられた半球状の凸部、又はロールヘミングの本曲げ工程にて用いるヘムロールの表面に設けられた半球状の凸部を圧入することにより形成されているとよい。
このヘミング材によれば、凹部をキズなく確実に形成することができる。
【0008】
本発明のプレスヘミング又はロールヘミング装置は、下型に載置されて縁部が折り返されたアウタパネルにインナパネルを重ねた状態で、前記アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込む本曲げ工程を行うプレスヘミング又はロールヘミング装置において、前記本曲げ工程にて用いるプレスヘミングの押付け部材の表面、又はロールヘミング装置のロールの表面に、前記アウタパネルの縁部に圧入される1個以上の半球状の凸部が設けられている。
このようにすると、本曲げの際に凸部がアウタパネルに圧入されることでアウタパネルとインナパネルが加締められるので、両者のズレを防止することができる。又、本曲げの際、アウタパネルの縁部が水平面に対して斜めになっている状態で、縁部を略平行に折返すまで曲げてインナパネルを挟み込むと共に、凸部を縁部10に圧入して凹部を形成する。この際、縁部の面が凸部の軸線に対して角度を変えつつ曲げられる、凹部となる面が凸部の側面と摺動するが、凸部が球面であるので凹部近傍にキズが生じない。
さらに、得られたヘミング材のヘミング部の反対面には圧痕が生じない(又は少ない)ので外観品質にも優れる。
【0009】
前記アウタパネルの厚みtに対し、前記凸部の高さhがh≦tの関係を満たすことが好ましい。
このようにすると、凸部がアウタパネルに圧入され過ぎないので、ヘミング部の反対面に圧痕が生じることを確実に防止することができ、外観品質にさらに優れる。
【0010】
本発明のプレスヘミング又はロールヘミング方法は、下型に載置されて縁部が折り返されたアウタパネルにインナパネルを重ねた状態で、前記アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込む本曲げ工程を行うプレスヘミング又はロールヘミング方法において、前記本曲げ工程にて、プレスヘミングの押付け部材の表面、又はロールヘミング装置のロールの表面に設けた半球状の凸部を、前記アウタパネルの縁部に圧入する。
なお、本発明において、「半球状」とは、球の一部をいい、必ずしも半分の球に限られない。
【0011】
本発明のプレスヘミング又はロールヘミング方法において、前記アウタパネルの厚みtに対し、前記凸部の高さhがh≦tの関係を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレスヘミング又はロールヘミングの本曲げの際にアウタパネルとインナパネルのズレを防止し、外観品質にも優れたヘミング材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るロールヘミング装置を本曲げ工程に用いた状態を示す斜視図である。
【図2】本曲げ用のヘムロールの外観斜視図である。
【図3】本曲げに先立つフランジング及び予備曲げを示す工程図である。
【図4】本曲げを示す工程図である。
【図5】本発明の実施形態に係るヘミング材の断面図である。
【図6】本曲げ用のヘムロールの変形例を示す外観斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るプレスヘミング装置の構成を示す正面図である。
【図8】プレスヘミングにて、本曲げに先立つフランジング及び予備曲げを示す工程図である。
【図9】プレスヘミングにて本曲げを示す工程図である。
【図10】本曲げ用の押付け部材の斜視図である。
【図11】半球状の凸部を有する押付け部材を用いたプレスヘミングにて、アウタパネルの縁部を本曲げする工程を示す図である。
【図12】プレスヘミングの押付け部材の別の構成を示す図である。
【図13】図12の押付け部材をプレスヘミングに適用する態様を示す図である。
【図14】図12の押付け部材にて、アウタパネルの縁部を本曲げする態様を示す図である。
【図15】従来の円錐状の凸部を有する押付け部材を用いたプレスヘミングにて、アウタパネルの縁部を本曲げする工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、図1〜図6を参照し、本発明の実施形態に係るロールヘミング装置10について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るロールヘミング装置10を本曲げ工程に用いた状態を示す斜視図である。ロールヘミング装置10は、ロボットアーム2の先端に本曲げ用のヘムロール4を取り付けてなる。ヘムロール4の周面には、ヘムロール4の軸方向中央線に沿いつつ、径方向に1個以上の半球状の凸部4pが配置されている。
アウタパネル101は下型(図示せず)に載置され、その縁部(ヘミング部)101hがヘムロール4によって押圧されて略平行に折り返され、インナパネル102を挟み込む。そして、ロボットアーム2及びヘムロール4は、ヘミング部101hの輪郭に沿って図1の矢印方向に移動し、ヘミング部101hを順次転圧しながら本曲げが進行する。
ここで、凸部4pがアウタパネル101及びインナパネル102に圧入されることでアウタパネル101とインナパネル102が加締められるので、両者のズレを防止することができる。本曲げによって得られたヘミング材100のヘミング部101h表面には、凸部4pが圧入して形成された半球状の凹部104が1個以上形成される。
【0016】
図2は、本曲げ用のヘムロール4の外観斜視図である。ヘムロール4は支持部3に軸支され、後述する予備曲げ用のヘムロール8(図3参照)と交換する際には、支持部3毎交換されるようになっている。また、ヘムロールのみを交換できる構造をとることもでき、本曲げ用ヘムロールと予備曲げ用ヘムロールを専用のロボットまたはロボットアームに別々に保持させてもよい。
凸部4pは略半球状に突き出しており、ヘムロール4の周面から凸部4p先端までの高さをhとする。また、凸部4pは、なめらかな略半球状の先端であることが望ましい。
【0017】
図3は、本曲げに先立つフランジング及び予備曲げを示す工程図である。図3(a)に示すように、ヘミング加工に先立ち、下型200に載置されアウタパネル101の縁部101hをほぼ垂直に立ち上げるように曲げてフランジを作るフランジングを行う。そして、アウタパネル101の上にインナパネルを重ねた後、このフランジ状の縁部101に所定の角度で周面が傾いた予備曲げ用のヘムロール8を近接させる。
次に、図3(b)に示すように、縁部101にヘムロール8の周面を押圧し、ヘミング部101hを順次転圧しながら所定の曲げ角度まで曲げることで、予備曲げが進行する。予備曲げは、本曲げに必要な曲げ角度まで縁部101を曲げる工程である。なお、ヘムロール8の周面は平坦であり、凸部は設けられていない。
【0018】
そして、図4に示すように、予備曲げ後のアウタパネル101の縁部101hを、ヘムロール4で略平行に折返すまで曲げ、インナパネル102を挟み込む本曲げを行う。
ここで、アウタパネル101の厚みtに対し、凸部4pの高さhがh≦tの関係を満たすことが好ましい。h>tになると、凸部4pがアウタパネル101に圧入され過ぎて縁部101の反対面のアウタパネル101が出っ張って圧痕が生じ、外観不良となることがある。
又、アウタパネル101の縁部101hとインナパネル102との重なり領域Lの幅方向中心Cより外側の位置で、凸部4pをアウタパネル101に圧入することが好ましい。幅方向中心Cより外側には、アウタパネル101とインナパネル102との間に隙間Gが存在するので、凸部4pをアウタパネル101に圧入した際にインナパネル102の材料がこの隙間Gに流れることができ、縁部101の反対面のアウタパネル101が出っ張り難くなる。
【0019】
図5は、本発明の実施形態に係るヘミング材100の断面図であり、ヘミング材100は上記したロールヘミング装置10によって製造することができる。
ヘミング材100は、アウタパネル101の縁部101hを略平行に折返してインナパネル102を挟み込んでなり、アウタパネルの縁部(ヘミング部)101hの表面からインナパネル102に圧入される半球状の凹部104が1個以上形成されている。
又、凸部4pがアウタパネル101及びインナパネル102に圧入されることに伴い、凹部104の直下のアウタパネル101の材料105がインナパネル102に加圧され、これによりインナパネル102がアウターパネル101に加締められる。そのため、アウタパネル101とインナパネル102のズレを防止することができる。
【0020】
図6は、本曲げ用のヘムロール6の変形例を示す外観斜視図である。ヘムロール6は支持部3に軸支され、ヘムロール6の周面には、ヘムロール6の軸方向に沿う2箇所の位置に、周方向に所定の間隔で軸方向に幅をもって複数の凸部6pが設けられている。なお、凸部6pは軸方向の異なる位置に千鳥状に配置されている。
このように、本曲げ用のヘムロールに設けられる凸部の位置及び個数は限定されない。
【0021】
次に、図7〜図10を参照し、本発明の実施形態に係るプレスヘミング装置20について説明する。
【0022】
図7は、本発明の実施形態に係るプレスヘミング装置20の構成を示す正面図である。プレスヘミング装置20は、下部定盤26及び上部定盤28を有する油圧プレス機と、下部定盤26上に配置された下型210と、下型210上に載置されて縁部101hが折り返されたアウタパネルにインナパネル102を重ねた状態で、縁部101hの予備曲げを行う予備曲げ用の押付け部材21と、上部定盤28の下面に取り付けられて縁部101hを略平行に折返す本曲げを行う本曲げ用の押付け部材23とを備えている。押付け部材21は、フランジ状に立ち上がる縁部101hの外側から横方向に移動し、押付け部材23は上部定盤28と共に油圧によって下方に移動して、縁部101hを上から押圧する。
又、図10に示すように、押付け部材23の下面は、アウタパネル101の縁部を押圧できるように平坦になっているが、所定の間隔で半球状の凸部23pが設けられ、アウタパネル101の縁部に凸部23pが圧入可能になっている。
【0023】
図8は、本曲げに先立つフランジング及び予備曲げを示す工程図である。図8(a)に示すように、ヘミング加工に先立ち、下型210に載置されアウタパネル101の縁部101hをほぼ垂直に立ち上げるように曲げてフランジを作るフランジングを行う。そして、アウタパネル101の上にインナパネルを重ねた後、このフランジ状の縁部101に所定の角度で傾いた押圧面を有する予備曲げ用の押付け部材21を外側から近接させる。
次に、図8(b)に示すように、縁部101に予備曲げ用の押付け部材21を横方向から押圧し、ヘミング部101hを所定の曲げ角度まで曲げることで、予備曲げが進行する。予備曲げは、本曲げに必要な曲げ角度まで縁部101を曲げる工程である。なお、予備曲げ用の押付け部材21の押圧面は平坦であり、凸部は設けられていない。
【0024】
そして、図9に示すように、予備曲げ後のアウタパネル101の縁部101hを、本曲げ用の押付け部材23で略平行に折返すまで曲げ、インナパネル102を挟み込む本曲げを行う。
ここで、ロールヘミング装置10の場合と同様に、凸部23pがアウタパネル101及びインナパネル102に圧入されることでアウタパネル101とインナパネル102が加締められるので、両者のズレを防止することができる。そして、本曲げによって得られたヘミング材100のヘミング部101h表面には、凸部23pが圧入して形成された半球状の凹部が1個以上形成される。
なお、図8、図9の例では、各押付け部材21、23は、アウタパネル101の4辺にそれぞれ当たるよう、4個の部材からなるが、アウタパネル101の曲率などの形状の変化によって各押付け部材21、23を適宜分割することができ、また、アウタパネル101は4辺に限られない。
【0025】
次に、プレスヘミングを例にして、凸部23pを半球状にすることの作用効果について説明するが、ロールヘミングについても同様である。
図11(a)に示すように、ヘミング加工の予備曲げ後のアウタパネル101の縁部101hは、水平面に対して斜めになっている。そして、この状態で、縁部101hを押付け部材23で略平行に折返すまで曲げ、インナパネル102を挟み込む本曲げを行うと(図11(b))、押付け部材23の半球状の凸部23pが縁部101hに圧入されて凹部104を形成する。この際、縁部101hの面が凸部23pの軸線(図11(b)の矢印)に対して角度を変えつつ曲げられ、凹部104となる面が凸部23pの側面と摺動するが、凸部23pが球面であるので凹部104と滑らかに接し、凹部104近傍にキズが生じることを防止する。
そして、アウタパネル101の縁部101hが水平になってインナパネル102に接するまで押付け部材23を押圧し(図11(c))、アウタパネル101のバックリングを考慮してさらに深く押付け部材23を押圧し(図11(d))、ヘミング作業が終了する。
【0026】
さらに、凸部23pを半球状にすると、上述のように本曲げを行う際に凹部104にキズが付き難いため、本曲げと凹部104の形成を同時に行うことができ、本曲げ後に別工程でキズがつかないように凹部104を形成しなくて済むので、生産性が向上する。
又、例えば凸部の先端が円錐状であると、円錐部分の体積(=塑性加工量)が小さいため、その分凸部を深く圧入する必要があり、凹部がヘミング部の裏面(アウタパネル101の外観面)に圧痕として表れることがある。これに対し、凸部23pを半球状にすると、その先端部分の体積が大きいため、凸部の圧入深さを深くしなくてもアウタパネルをインナパネルに固定する加締め効果が発揮でき、ヘミング部の裏面(アウタパネル101の外観面)に圧痕が生じ難い。
さらに、半球状の凸部23pは形状が単純であるので、例えば、異形形状(かまぼこ状)の凸部に比べ、製造が容易である。
【0027】
なお、プレスヘミングの場合、図12に示すように、押付け部材23xからの凸部23xpの突出量を可変とすることもできる。図12に示す押付け部材23xは、上下方向(プレス方向)に開口する凸部取付孔23xh1と、左右方向(プレス方向と垂直な方向)に開口する凸部受け部取付孔23xh2とを有する略台形状をなしている。又、半球状の凸部23xpは円柱状の基部23xbの先端に一体に形成されていて、押付け部材23xに着脱可能になっている。さらに、凸部取付孔23xh1に連通し、凸部取付孔23xh1と垂直な方向にボルト252がネジ止めされている。
そして、凸部取付孔23xh1に下側から基部23xbを挿入し、ボルト252を絞めることで、ボルト252が基部23xbを凸部取付孔23xh1に押圧して固定する。さらに、凸部受け部取付孔23xh2に凸部受け部25を挿入し、凸部受け部25の先端面が基部23xbの後端に接して基部23xbを保持するようにし、凸部受け部25をボルト251で押付け部材23xに固定する。
【0028】
図12に示す押付け部材23xは、先端面23xsが斜めになっている。このため、図13の自動車のドア部材のように、プレスヘミングの位置によってアウタパネル101xの面とプレス方向とのなす角度が垂直で無い場合に有効に適用できる。
つまり、アウタパネル101の面が水平(プレス方向と垂直)であれば、図11に示したように、押付け部材23の先端面を水平とすればよく、この場合は、過去のプレス実績が多数あるので、先端面からの凸部23の突出量についてもそれに従って調整すればよい。
一方、図14に示すように、アウタパネル101xの面が水平(プレス方向と垂直)でない場合、先端面23xsがアウタパネル101xと略平行になるように押付け部材23xの先端形状を調整するが、この場合の先端面23xsからの凸部23xpの突出量は予備テストを行って最適値を見出す必要がある。そこで、凸部23xpの突出量を調整可能とすることで、アウタパネル101xの面とプレス方向とが垂直で無い場合でも、凹部の近傍やヘミング部の反対面に圧痕が生じない(又は少ない)突出量を見出すことができる。
【0029】
なお、アウタパネルに形成される半球状凹部の深さは、アウタパネルの板厚0.6mm〜0.8mmで、インナパネルの板厚0.5mm〜0.7mmにおいて、0.1mm〜0.5mmが好ましい。
又、ロールヘミングの場合は、アウタパネルの面に合わせてロールを傾けながらヘミングを行うので、ヘムロールの表面の凸部はほぼ常にアウタパネルの面に垂直に圧入される。従って、凸部の突出量を調整する必要はない。
【0030】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、凸部の形状や個数は限定されない。
【符号の説明】
【0031】
4,6 本曲げ用のヘムロール
10 ロールヘミング装置
20 プレスヘミング装置
23 本曲げ用の押付け部材
4p、6p、23p 半球状の凸部
200、210 下型
101 アウタパネル
101h アウタパネルの縁部(ヘミング部)
102 インナパネル
100 ヘミング材
104 半球状の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込んでなるヘミング材であって、前記アウタパネルのヘミング部の表面から前記インナパネルに向かって圧入される半球状の凹部が1個以上形成されているヘミング材。
【請求項2】
前記凹部は、プレスヘミングの本曲げ工程にて用いる押付け部材の表面に設けられた半球状の凸部、又はロールヘミングの本曲げ工程にて用いるヘムロールの表面に設けられた半球状の凸部を圧入することにより形成されている請求項1記載のヘミング材。
【請求項3】
下型に載置されて縁部が折り返されたアウタパネルにインナパネルを重ねた状態で、前記アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込む本曲げ工程を行うプレスヘミング又はロールヘミング装置において、
前記本曲げ工程にて用いるプレスヘミングの押付け部材の表面、又はロールヘミング装置のヘムロールの表面に、前記アウタパネルの縁部に圧入される1個以上の半球状の凸部が設けられているプレスヘミング又はロールヘミング装置。
【請求項4】
前記アウタパネルの厚みtに対し、前記凸部の高さhがh≦tの関係を満たす請求項3記載のプレスヘミング又はロールヘミング装置。
【請求項5】
下型に載置されて縁部が折り返されたアウタパネルにインナパネルを重ねた状態で、前記アウタパネルの縁部を略平行に折返してインナパネルを挟み込む本曲げ工程を行うプレスヘミング又はロールヘミング方法において、
前記本曲げ工程にて、プレスヘミングの押付け部材の表面、又はロールヘミング装置のヘムロールの表面に設けた半球状の凸部を、前記アウタパネルの縁部に圧入するプレスヘミング又はロールヘミング方法。
【請求項6】
前記アウタパネルの厚みtに対し、前記凸部の高さhがh≦tの関係を満たす請求項5記載のプレスヘミング又はロールヘミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−46930(P2013−46930A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166146(P2012−166146)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)