説明

ヘミング用シーリング材組成物

【課題】
本発明は、短い硬化時間、および硬化後に優れた物性、とりわけ優れた追従性、密着性および伸長性を有するシーリング材、特に自動車車体工程におけるヘミング用シーリング材を提供することを課題とする。
【解決手段】
(A)シーリング材組成物全量を基準として6重量%〜40重量%のアクリル系重合体、
(B)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として20〜120重量部のエポキシ樹脂、および
(C)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として2〜20重量部の多官能酸無水物
を含み、前記エポキシ樹脂(B)は、500〜1500の数平均分子量および250〜750のエポキシ当量を有する、ヘミング用シーリング材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材組成物、詳しくは、硬化時間が短く、優れた追従性、密着性および伸長性を示す、ヘミング用シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体工程において、ドアパネルやエンジンフード等のヘミング構造部を接着するために、エポキシ樹脂を含む塩化ビニル系プラスチゾル組成物が用いられている(特許文献1および2)。しかしながら、上記組成物は、伸張性に欠けるため、パネル変位に対する追従性等の点で満足できるものではなかった。また、上記組成物は、硬化に要する時間が長いため、自動車ラインの工程合理化を満足することができなかった。
【0003】
そこで、自動車用シーリング材として、アクリル樹脂粒子が分散された可塑剤および酸無水物を含有するプラスチゾル組成物(特許文献3)、およびアクリルゾルとエポキシ樹脂とを配合した熱硬化性組成物(特許文献4)が提案されている。しかしながら、これら組成物は、シーリング材としての追従性の点で未だ満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−140321号公報
【特許文献2】特開平5−1196号公報
【特許文献3】特開平2004−51792号公報
【特許文献4】国際公開第01/088034号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、短い硬化時間、および硬化後に優れた物性、とりわけ、優れた追従性、密着性および伸長性を有するヘミング用シーリング材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アクリル系重合体、特定のエポキシ樹脂、および多官能酸無水物を、それぞれ所定の量で含むシーリング材組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下の好適な実施態様が含まれる。
[1](A)シーリング材組成物全量を基準として6重量%〜40重量%のアクリル系重合体、
(B)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として20〜120重量部のエポキシ樹脂、および
(C)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として2〜20重量部の多官能酸無水物
を含み、前記エポキシ樹脂(B)は、500〜1500の数平均分子量および250〜750のエポキシ当量を有する、ヘミング用シーリング材組成物。
[2]アクリル系重合体(A)は、コアシェル型粒子である、請求項1に記載のシーリング材組成物。
[3]ブロック化ウレタン樹脂を更に含む、請求項1または2のいずれかに記載のシーリング材組成物。
[4]潜在性硬化剤を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載のシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシーリング材組成物は、硬化時間が短く、および硬化後に優れた物性、とりわけ優れた追従性、密着性および伸長性を有するので、自動車のドアパネルやエンジンフード等のヘミング構造部を、効率的かつ良好にシーリングすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のシーリング材組成物は、アクリル系重合体(A)、エポキシ樹脂(B)および多官能酸無水物(C)を含んでなる。
本発明に用いるアクリル系重合体(A)としては、構成モノマーとして、例えばエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートの少なくとも1種(Aモノマーと称す)と、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートの少なくとも1種およびメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸の少なくとも1種の混合物(混合Bモノマーと称す)を使用して重合するコアシェル型アクリル樹脂、および上記Aモノマーと混合Bモノマーとを、その配合割合(比率)を多段階乃至連続的に変化させながら重合を行うことによって製造するコアシェル型アクリル樹脂の重合体、グラジェント型アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中で、重量平均分子量1000〜2000000、一次粒子のおよび/または一次粒子が凝集した二次粒子の粒径0.1〜100μmのコアシェル型アクリル樹脂やグラジェント型アクリル樹脂が特に好ましい。
本発明に用いるアクリル系重合体の代表的市販品としては、例えばエボニックデグーサ株式会社製デガロン等が挙げられる。
【0009】
また、アクリル系重合体(A)としては、ブロック化イソシアネート基を有するアクリル系共重合体を用いることもできる。アクリル系重合体にブロック化イソシアネート基を導入することで、成分(C)の加熱により生じたカルボキシル基と、非ブロック化されたイソシアネート基とが反応し、アクリル系重合体粒子(A)のポリマー鎖に水酸基含有化合物(C)がグラフトされる。このため、アクリル系重合体粒子(A)にグラフトした水酸基含有化合物(C)と、基材や無機充填剤と反応した水酸基含有化合物(C)との相互作用により、得られるシーリング材組成物の基材密着性や機械的強度を一層向上させることができる。
【0010】
本発明のシーリング材組成物は、上記アクリル系重合体(A)を、シーリング材組成物の全重量を基準として、通常、6重量%以上、好ましくは15重量%以上含んでなる。また、本発明のシーリング材組成物は、上記アクリル系重合体(A)を、通常、40重量%以下、好ましくは30重量%以下含んでなる。本発明のシーリング材組成物に含まれるアクリル系重合体(A)の量が、6重量%以上であると、シーリング材組成物が受ける温度として低温(120〜150℃)かつ短時間(20秒以内)でプレキュアさせることができる。また、本発明のシーリング材組成物に含まれる上記アクリル系重合体(A)の量が40重量%を超えると塗布性能が低下する。
【0011】
本発明に用いるエポキシ樹脂(B)としては、高分子型のエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体、アルキレンオキシド変性グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびポリエーテルウレタン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの1種または2種以上の混合物を、本発明のシーリング材組成物に用いることができる。本発明に用いるエポキシ樹脂の代表的市販品としては、例えばアデカ株式会社製アデカレジン等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いるエポキシ樹脂(B)は、数平均分子量が、通常、500以上、好ましくは700以上である。また、上記エポキシ樹脂(B)は、数平均分子量が、通常、1500以下、好ましくは1200以下である。エポキシ樹脂(B)の数平均分子量が500以上であると、エポキシ樹脂(B)の伸長性が増加し、数平均分子量が1500以下であると、良好な鋼板密着性が得られる。
本発明における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0013】
また、本発明に用いるエポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が、通常、250以上、好ましくは300以上である。また、上記エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が、通常、750以下、好ましくは600以下である。上記エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量が250以上であると、シーリング材組成物の伸長性が増加し、数平均分子量が750以下であると、シーリング材組成物の接着強度が良好である。ここで、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の数平均分子量を1分子当たりのエポキシ基数で割ったものである。
【0014】
本発明のシーリング材組成物は、上記エポキシ樹脂(B)を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、20重量部以上、好ましくは35重量部以上含んでなる。また、本発明のシーリング材組成物は、上記エポキシ樹脂(B)を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、120重量部以下、好ましくは100重量部以下含んでなる。上記エポキシ樹脂(B)が10重量部以上であると、シーリング材組成物の基材への接着性が増加し、上記エポキシ樹脂(B)が120重量部以下であると、硬化後のシーリング材組成物の伸長性が良好である。
【0015】
本発明のシーリング材組成物は、アクリル系重合体(A)およびエポキシ樹脂(B)に加えて、潜在性硬化剤として多官能酸無水物(C)を含んでなる。
本発明において、多官能酸無水物とは、2個のカルボキシル基が分子内で脱水縮合することにより生じる無水カルボン酸基を2個以上有する化合物のことである。本発明に用いる多官能酸無水物としては、貯蔵安定性の観点から、常温(20℃〜50℃)下で水および水酸基含有化合物との反応性が低く、および常温(20℃〜50℃)下で可塑剤に不溶のものであれば特に限定されない。本発明に用いる多官能酸無水物としては、低温短時間焼付けにおける接着性の点で、エチレングリコールビストリメリット酸無水物が好ましく、例えば新日本理化株式会社製リカシッド等が挙げられる。
【0016】
本発明のシーリング材組成物は、上記多官能酸無水物(C)を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、2重量部以上、好ましくは4重量部以上含んでなる。また、本発明のシーリング材組成物は、上記多官能酸無水物(C)を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、20重量部以下、好ましくは15重量部以下含んでなる。上記多官能酸無水物(C)が2重量部以上であると、シーリング材組成物の基材への密着性が増加し、上記多官能酸無水物(C)が20重量部以下であると、焼付け時のシーリング材組成物の変色が減少し、且つ硬化後の組成物の伸長性が良好である。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、上記成分(A)、(B)および(C)に加えて、必要に応じて、ブロック化ウレタン樹脂、潜在性硬化剤、可塑剤、塩化ビニル樹脂若しくは塩化ビニルコポリマー樹脂、ならびに充填剤を含んでいてもよい。
【0018】
上記ブロック化ウレタン樹脂としては、脂肪族イソシアネートのイソシアネート基をフェノール類、オキシム類、あるいはアミン類等のブロック剤でブロックしたブロック化脂肪族イソシアネートを用いることができる。また、ブロック化ウレタン樹脂としては、ポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリエーテルポリオール中において、アクリロニトリル単独を、またはアクリロニトリルとスチレン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種との混合モノマーを、重合乃至グラフト重合させたポリマーポリオール等)と過剰のポリイソシアネート化合物の反応で得られる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのブロック体(特に、上記ポリオールの少なくとも一部に上記ポリマーポリオールを含ませたものが好ましい)を用いることもできる。さらに、多官能ブロック化イソシアネートとして、内部ブロック化イソシアネート、例えばウレットジオン、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ビウレットおよび/またはアロファネート構造等を有するイソシアネートを用いることもできる。これらの1種または2種以上の混合物を本発明のシーリング材組成物に用いることができる。上記ブロック化ウレタン樹脂の代表的市販品としては、例えばアデカ株式会社製QR−9262等が挙げられる。
【0019】
本発明のシーリング材組成物は、上記ブロック化ウレタン樹脂を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、1重量部以上、好ましくは3重量部以上含み得る。また、本発明のシーリング材組成物は、上記ブロック化ウレタン樹脂を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、20重量部以下、好ましくは15重量部以下含み得る。上記ブロック化ウレタン樹脂が1重量部以上であると、シーリング材組成物の基材への密着性が増加し、上記ブロック化ウレタン樹脂が20重量部以下であると、硬化後の組成物の物性、とりわけ、追従性、密着性および伸長性が良好である。
【0020】
上記潜在性硬化剤としては、たとえば下記のものを用い得る。
(i)60℃以上、好ましくは100〜200℃の温度で活性化してエポキシ樹脂と反応し得る潜在性硬化剤(活性化温度60℃未満のものでは、粘度が上昇し、貯蔵安定性が悪化するので望ましくない):具体例として、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、エイコサン二酸ジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’−エチリデンビスフェノールジグリコール酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;イミダゾール、2−n−ヘプタンデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;メラミン;ベンゾグアナミン;N,N’−ジアルキル尿素化合物;N,N’−ジアルキルチオ尿素化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノビフェニル、ジアミノフェニール、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ドデカンジアミン、デカンジアミン、オクタンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ヒドラジド系ポリアミン等の融点60℃以上の常温固形のポリアミン;シアノグアニジン等のグアニジン誘導体が挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
(ii)ポリアミン系変性化合物:具体例として、脂肪族ポリアミン(a)(例えばジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノプロパン等)と、NHもしくはNH基を少なくとも1個有する環状構造のアミンもしくは芳香族ポリアミン(b)(例えばメタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン等のポリアミンおよびモノアミン類)と、ジイソシアネート化合物(c)(例えばイソホロンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)との反応生成物[ここで、各反応成分の比率は、(a)1モル、(b)0.02〜3モル、および(a)と(b)のNHおよび/またはNH/(c)のNCO=1/1〜1.2となるように選定し、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン等の溶媒中で室温乃至160℃にて反応させればよい]、および上述の脂肪族ポリアミン(a)とアミン(b)とエポキシド化合物(d)(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、カテコール、レゾルシン、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ハイドロキノン、テトラメチルビスフェノールA等の多価フェノールとエピクロルヒドリンを反応して得られるグリシジルエーテル;グリセリン、ネンペンチルグリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応して得られるポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応して得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンから誘導されるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド等のモノエポキシド等)との反応生成物[ここで、各反応成分の比率は、(a)1モル、(b)0.5〜5モル、および(a)と(b)のNHおよび/またはNH/(d)のエポキシ基=1/0.3〜0.9、および(a)と(b)のNHおよび/またはNH/(c)のNCO=1/0.15〜1.35となるように選定し、先ず(b)の一部または全部と(d)を要すれば上記の溶媒中、60〜120℃で付加反応させ、次いで(a)と残りの(b)と(c)を加え、上記の溶媒中で室温乃至160℃にて反応させればよい]が挙げられる。
【0022】
(iii)その他のポリアミン系変性化合物:具体例として、上述の脂肪族ポリアミン、環状構造のアミンもしくは芳香族ポリアミンの群から選ばれる1種または2種以上とエポキシ化合物(例えば、エポキシ基を分子中に1個乃至2個以上有する、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリエステル型エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂等)の付加反応物に、フェノール化合物(例えばフェノール樹脂、レゾールノボラック樹脂等)および/またはポリカルボン酸化合物(例えばアジピン酸、セバチン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等)を反応させて、アミノ基をマスクして不活性化したもの(ここで、通常、ポリアミンのアミノ基1当量に対しエポキシ化合物のエポキシ基を0.7〜1.5当量で付加反応させ、次いで該付加反応物1重量部に対しフェノール化合物および/またはポリカルボン酸化合物0.04〜0.5重量部を反応させて、活性アミノ基をマスクする;得られる反応生成物は60℃未満の温度で不活性であり、60℃を越える80℃以上で活性化する)が挙げられる。
【0023】
本発明のシーリング材組成物は、上記の潜在性硬化剤を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、0.5〜20重量部、好ましくは2〜15重量部含み得る。
【0024】
上記可塑剤としては、例えばジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル;トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;ジオクチルアジペート、ジデシルアジペート、ジオクチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル;ポリオキシエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレングリコールジベンゾエート等のポリグリコール安息香酸エステル;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;アルキル置換ジフェニル、アルキル置換ターフェニル、部分水添アルキルターフェニル、芳香族系プロセスオイル、パインオイル等の炭化水素類;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油およびエポキシ化脂肪酸2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル等のエポキシ系可塑剤が挙げられ、接着性を向上させることからエポキシ系可塑剤が好ましい。本発明のシーリング材組成物は、上記の可塑剤を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、80〜600重量部、好ましくは130〜400重量部含み得る。
【0025】
本発明のシーリング材組成物は、適宜、塩化ビニル樹脂または塩化ビニルコポリマー樹脂を含み得る。塩化ビニルコポリマー樹脂としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類;ジエチルマレエート、ジブチルマレエート等のマレイン酸エステル類;ジエチルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル類;アクリル酸エステル類;メタクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類等の共重合体を挙げられる。本発明のシーリング材組成物は、上記の塩化ビニル樹脂、または塩化ビニルコポリマー樹脂を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、通常、280重量部まで、好ましくは200重量部まで含み得る。
【0026】
上記充填剤としては、例えばクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム、酸化チタン、焼石コウ、硫酸バリウム、亜鉛華、ケイ酸、マイカ粉、アスベスト、タルク、ベントナイト、シリカ、ガラス粉、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト粉、アルミナ、シラスバルーン、セラミックバルーン、ガラスバルーン、プラスチックバルーン、金属粉等が挙げられる。上記の充填剤を、アクリル系重合体(A)100重量部に対して、1000重量部まで、好ましくは200〜700重量部含み得る。
【0027】
本発明では、吸湿剤(酸化カルシウム、モレキュラーシーブス等)、揺変性賦与剤(有機ベントナイト、フュームドシリカ、ステアリン酸アルミニウム、金属石けん類、ヒマシ油誘導体等)、安定剤[2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等]、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、オクチル酸ビスマス等)、潜在性硬化剤を溶解しない溶剤(ナフサ、パラフィン等の高沸点炭化水素系溶剤)を適宜選択して、本発明のシーリング材組成物に添加し得る。
【0028】
本発明のシーリング材組成物は、上記の各成分を、例えば高速攪拌混合機、パールミル等を用いて混合することによって製造することができる。
【0029】
本発明のシーリング材組成物は、自動車の車体組立工程において、ドアパネルやエンジンフード等のヘミング部に塗布し、シーリング材が受ける温度として100〜200℃にて、10〜60秒間プレキュアし、その後、必要に応じて、電着塗装焼付け(例えば170℃にて20分間)を経て、硬化させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1乃至4および比較例1乃至11〕
表1に示される重量の各成分を、均質になるまで、高速攪拌混合機を用いて、室温および減圧下にて混練した。ペースト状のシーリング材組成物を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
表1中、
注1)コアシェル型アクリル樹脂、エボニックデグーサ株式会社製「デガロン」
注2)高分子型エポキシ樹脂、株式会社アデカ製「ED−506」、エポキシ当量310、分子量600
注3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、株式会社アデカ製「EP−4100」、エポキシ当量184、分子量450
注4)多官能酸無水物、新日本理化株式会社製「リカシッドTMEG−200」
注5)無水フタル酸、三菱ガス化学製「H−TMAn」
注6)ブロック化ウレタン樹脂、株式会社アデカ製ブロック化ポリイソシアネート、「QR−9262」
注7)シアノグアニジン、エアプロダクツジャパン株式会社製「CG−325」
注8)塩化ビニル樹脂、東ソー株式会社製「リューロン」
注9)フタル酸エステル、新日本理化株式会社製「DINP」
注10エポキシ化亜麻仁油、新日本理化株式会社製「サンソサイザー」
注11)炭酸カルシウム、竹原化学工業株式会社製「SP−60」
注12)炭酸カルシウム、備北粉化工業株式会社製「ホワイトンSB」
【0034】
上記のように調製した各シーリング材組成物について以下の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0035】
〔試験方法〕
1.プレキュア硬化性
2枚の100mm×100mmの油面鋼板を20mmの幅で重ね合わせ、次いで、シーリング材組成物を厚み2mmおよび幅10mmで塗布した。シーリング材組成物を、簡易熱風機を用いて、280℃の噴射口温度にて、20秒間熱風を吹き付けることによりプレキュアした。簡易熱風機の噴出し口から鋼板までの距離は、10mm程度であった。また、簡易熱風機の風量は、試験試料内部が到達する最高温度が150℃になるように調節した。試験片の温度が室温になるまで試験片を放冷した。次いで、シーリング材組成物が硬化しているか否か指触にて確認した。
○:硬化(指触変形なし)、×:未硬化(指触変形あり)
【0036】
2.プレキュア後追従性
上記1.と同様にして、各シーリング材組成物について試験片を作製した。次いで、室温まで放冷した試験片を、チャンバー付き引っ張り試験機のチャンバー内に設置した。チャンバー内の温度を100℃に設定し、試験片の温度が100℃に到達していることを確認した。試験片を、1mm/分の速度にて引張した。シーリング材組成物が鋼板界面から剥がれ始めた時の変位量を計測した。
【0037】
3.電着焼付け後伸び物性
シーリング材組成物を、2mmの厚みで塗布し、次いで、簡易熱風機を用いて、280℃の噴射口温度にて、20秒間熱風を吹き付けることによりプレキュアした。簡易熱風機の噴出し口から鋼板までの距離は、10mm程度であった。また、簡易熱風機の風量は、試験試料内部が到達する最高温度が150℃になるように調節した。プレキュア後のシーリング材組成物を、180℃にて30分間焼付けした。次いで、室温で24時間放冷した。その後、2号ダンベル形状に打ち抜き、試験片を作製した。該試験片を、引っ張り試験機を用いて、50mm/分の速度で引っ張り、破断時の伸び量を計測した。
【0038】
4.電着焼付け後鋼板接着性
シーリング材組成物を、幅25mm×長さ100mm×厚み1mmの油面鋼板上に塗布し、次いで、シーリング材組成物の塗布面に、もう1枚の上記油面鋼板を、シーリング材組成物が幅25mm×長さ100mm×厚み1mmとなるように重ね合わせた。次いで、180℃×30分間焼付けを行い、試験片を作製した。試験片を、室温にて50mm/分の速度で引っ張り、破壊状態を観察した。
○:凝集破壊(CF)、×:界面破壊(AF)
【0039】
5.塗布性能
グラコ株式会社製レシオ45:1ペール缶ポンプ、材料圧力調節用レギュレーター、内径3/8インチ×5mホースおよび該ホースの先端に接続された1mmΦノズルを含んでなる塗布システムを用い、20℃雰囲気下でシーリング材組成物の吐出量を計測した。静止圧は、レギュレーターにより8MPaに調節した。
○:50g/5秒以上、△:30以上50g未満/5秒、×:30g/5秒未満
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果から、本発明によるシーリング材組成物は、良好なプレキュア硬化性およびプレキュア後追従性並びに十分な塗布性能を有し、電着焼付け後に良好な伸びおよび接着性を示すことが確認された(実施例1乃至4)。
これに対し、アクリル系重合体を含まないか、またはアクリル系重合体を、シーリング材組成物全量に対して6重量%未満含むシーリング材組成物では、十分なプレキュア硬化性およびプレキュア後追従性が得られなかった(比較例1及び2)。また、アクリル系重合体を50重量%より多く含むシーリング材組成物では、十分なプレキュア後追従性および塗布性能が得られなかった(比較例3)。
エポキシ樹脂を含有しないか、またはエポキシ樹脂を、アクリル系重合体100重量部に対して20重量部未満含むシーリング材組成物からは、十分なプレキュア後追従性および電着焼付け後鋼板接着性が得られなかった(比較例4及び5)。また、エポキシ樹脂を、アクリル系重合体100重量部に対して120重量部を越えて含むシーリング材組成物は、プレキュア後追従性及び電着焼付け後伸び物性が満足のいくものではなかった(比較例6)。さらに、所定の分子量およびエポキシ当量を有さないエポキシ樹脂を含むシーリング剤組成物からは、電着焼付け後に良好な伸びが得られなかった(比較例7)。
多官能酸無水物を含まないか、または多官能酸無水物をアクリル系重合体100重量部に対して2重量部未満含むシーリング材組成物は、プレキュア後追従性及び電着焼付け後鋼板接着性が十分ではなかった(比較例8、9及び11)。また、多官能酸無水物を、アクリル系重合体100重量部に対して20重量部を越えて含むシーリング材組成物からは、十分な電着焼付け後伸び物性が得られなかった(比較例10)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シーリング材組成物全量を基準として6重量%〜40重量%のアクリル系重合体、
(B)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として20〜120重量部のエポキシ樹脂、および
(C)前記アクリル系重合体(A)100重量部を基準として2〜20重量部の多官能酸無水物
を含み、前記エポキシ樹脂(B)は、500〜1500の数平均分子量および250〜750のエポキシ当量を有する、ヘミング用シーリング材組成物。
【請求項2】
アクリル系重合体(A)は、コアシェル型粒子である、請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
ブロック化ウレタン樹脂を更に含む、請求項1または2のいずれかに記載のシーリング材組成物。
【請求項4】
潜在性硬化剤を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載のシーリング材組成物。

【公開番号】特開2013−53263(P2013−53263A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193716(P2011−193716)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】