説明

ヘモグロビンの電気化学的検出のためのディスポーザブルセンサ

【課題】少量の体液中のヘモグロビン濃度の測定が可能なディスポーザブルヘモグロビンセンサを提供する。
【解決手段】全血試料中のヘモグロビンおよびヘマトクリットの含量を決定するためのディスポーザブルバイオセンサであって、第1および第2の端部、積層ストリップ内に埋め込まれた少なくとも参照電極、作用電極およびブランク電極、第1の端部から始まり、第1の端部から間隔を置いたベント開口部に連絡し、参照電極、作用電極およびブランク電極を血液試料に露出するために充分に長い、血液試料を受容するための開通路を有する毛細管チャネル、ならびに積層ストリップの第2の端部に位置する電導接点を含むバイオセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、液体試料中の特定の成分または検体の定量のために用い得る電気化学的センサに関する。特に、本発明は、血液中のヘモグロビン濃度を測定するためのディスポーザブル電気化学的センサに関する。特に、本発明は、血液試料中のヘモグロビンおよびヘマトクリットを同時に測定するためのシステムに関する。特に、本発明は、少量の試料(およそ1.6μL)で高精度にヘモグロビンおよびヘマトクリットの分析を実施するために使用することができるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘモグロビンは、体中に酸素を運搬する赤血球内タンパク質である。ヘモグロビン試験は、ヒト血中にどれだけのヘモグロビンがあるかを明らかにし、貧血(低ヘモグロビンレベル)および真性赤血球増加症(高ヘモグロビンレベル)を診断し、モニターするために用いることができる。低ヘモグロビン測定値は通常、そのヒトが貧血を有することを意味する。高ヘモグロビンは、脱水(水分の減少)、低酸素症(酸素の減少)または真性赤血球増加症によって引き起こされることがある。
【0003】
静脈血中または毛細血管血中のヘモグロビンの測定は、最も頻繁に実施される臨床分析の1つである。外傷の症例、手術室および集中治療室において、患者のヘモグロビン値を直ちに知ることは重要である。ヘモグロビンは透析患者において貧血をモニターし管理するために用いられる。これは血液バンクにおいて供血者を貧血についてスクリーニングするために広く用いられるパラメータでもある。したがってヘモグロビンの正確な測定は極めて望ましい。
【0004】
比色法はヘモグロビンの測定のための最も普遍的な方法である。これらの方法はヘモグロビン、即ちHbFe(II)の第一鉄の還元性を利用している(Ashwood、R. Edward、およびBurtis、A. Carl、Tietz Textbook of Clinical Chemistry、1996; W.C.Stadie、J. Biol. Chem.、1920、41、237頁)。具体的には、ヘモグロビンの第一鉄は酸化剤、たとえばフェリシアン化物によって酸化されてHbFe(III)、即ちメトヘモグロビンモノマーを産生し、これが次にシアン化カリウムの添加によって安定なシアンメトヘモグロビンに変換される。生成したシアンメトヘモグロビンの吸光度は光学的に測定され、ヘモグロビン濃度に関連付けられる。この方法はフェリシアン化カリウムとシアン化カリウムのアルカリ性水溶液を含むDrabkin試薬(Drabkinら、J. Biol. Chem.、1932、98、719頁)の使用によって修正され、単一の試薬を用いて分析を実施することが可能となっている。J. Lab. Clin. Med.、1966、67、116頁においてVanzettiはシアン化カリウムの代わりにアジ化ナトリウムを用いることを提案した。アジドメトヘモグロビンはシアノメトヘモグロビンと同様の吸収スペクトルを有している。シアン化カリウムの毒性のため、これらの方法は後にいくつかのグループ(S. Wongら、米国特許第5,958,781号;Y. Liら、米国特許第5,882,934号;W. Ziegler、米国特許第5,773,301号)によって改良され、シアン化物を用いない試薬が達成された。この改良に基づいていくつかの製品が開発され、市販されている。
【0005】
BIOSAFE Anemia Meter (Biosafe社、Pittsburg、PA)は、貧血の検出のための最初の迅速血液検査であると考えられる。この方法はデバイス中の血液(血液数滴が必要)の移動および発色(15〜25分)を利用しており、結果はスケールから裸眼で読み取られる。
【0006】
STAT−Site(登録商標)MHgb Test System(Stanbio Laboratory社、Boerne、TX)は反射率計およびヘモグロビンテストカードからなっており、血液1滴でヘモグロビンを測定する。反応はアジドメトヘモグロビン法に基づいており、指からの採血または静脈全血の試料のいずれか(血液約10μLが必要)を用いる。
【0007】
HemoCueシステム(HemoCue社、Cypress、CA)は全血中のヘモグロビンを測定するために現在広く用いられている。血液約10μLを採取し、デオキシコール酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムおよびアジド亜硝酸ナトリウム試薬からなる試薬を含む毛細管キュベットに満たす。これらが血液を溶解し、ヘモグロビンをヘミグロビナジドに変換する。次いで吸光度を分光学的に測定する(S.S.Morrisら、Am. J. Clin. Nutr.、1999、6(6)、1243頁)。キュベットの充填およびバックグラウンドの濁り、およびその他の問題(たとえば気泡のトラップ)等の分光学的測定系に付随する問題点のため、広くばらついた結果が報告されている(H.Gehringら、Acta Anaes. Scand.、2002、46、980頁)。A.M.Conwayらは、HemoCueシステムによる皮膚穿刺血液の単一の液滴からのヘモグロビンの測定はやめるべきであると警告した(J. Clin. Pathol.、1998、51、248頁)。
【0008】
iSTAT−1 POCTデバイス(EC6+カートリッジ付きのModel iSTAT−1、I−STAT社、Princeton、NJ)は血液ヘマトクリットを測定するために電導度に基づく方法を用いている。測定された電導度は血液試料中のヘマトクリット濃度に逆比例する。血液ヘモグロビン濃度は実験式から計算される。電導度は血漿タンパク質濃度および電解質濃度および他の要因によって強く影響され得ることは明らかである。血液試料中の血漿タンパク質濃度および電解質(たとえば塩化ナトリウム)濃度の変動を考えれば結果は極めて疑わしいであろう。したがって、低タンパク血症または実質的な血液希釈が疑われる患者におけるヘマトクリットおよびヘモグロビンの検査は電導度に基づかない検査法によって行うべきであることが推奨される(Sidney M. Hopferら、Annals of Clinical & Laboratory Science、2004、34、75頁)。
【0009】
電気化学的手法はその迅速性、高感度、安い装置価格および簡単な操作等の利点により、近年多くの注目を集めている。J.Greenらは米国特許第4,876,205号においてヘモグロビンの電気化学的分析について開示している。その方法は界面活性剤(赤血球を溶解してヘモグロビンを溶出させるため)、フェリシアン化カリウム(ヘモグロビンのHbFe(II)を酸化するため)を含む混合物を担持させた乾燥ストリップの使用に基づいている。20μLの血液試料中で30〜60秒インキュベートした後、Ag/AgCl参照電極に対し0.45Vまたは0.50Vの印加電圧で電流−時間トランジエントを記録する(アンペロメトリー)。30秒後に測定された電流が血液試料中のヘモグロビン濃度に関連付けられる。
【0010】
上記のフェリシアン化カリウム−HbFe(II)反応原理に基づいて、A.Hodgesらは米国特許第6,632,349号および米国特許出願公開第20030201177号においてヘモグロビン濃度測定のためのディスポーザブル電気化学的セルを開示した。このディスポーザブル電気化学的セルは検知チャンバー、第1電極および第2電極(参照電極)を有して構成されており、第2電極は第1電極から500ミクロン未満の距離をもって対向する関係(フェースツーフェース)で取り付けられている。検知セルはアンペロメトリーのセンサとして操作される。
【0011】
最近、米国特許出願公開第20070062822号はヘマトクリット測定用の電気化学的センサを開示した。開示された方法は作用電極および対向電極を有する電極システムであって、酸化還元物質が対向電極に設けられているが作用電極には設けられていない電極システムを提供している。電極システムには高電圧(水の電気分解を起こす電圧以上)が印加される。この特許に開示されたデータによれば、ヘマトクリット濃度はまた、得られた電流信号に逆比例する。
【0012】
より最近になって、米国特許出願公開第20090104641号は試料中のヘモグロビンを検出するための電気化学的方法およびテストストリップを開示した。この方法は、定電位条件下における試料中のヘモグロビンと電子メディエータ(シクロデキストリンで修飾されたテトラチアフルバレンまたはジメチルフェロセン)との反応によって生成する電流の検出に基づいている。しかし、ヘモグロビン濃度は電流信号に逆比例する。即ちヘモグロビン濃度またはヘマトクリットが低いと電流応答が高くなり、逆もそうである。
【0013】
ヘモグロビンおよびヘマトクリットを正確に測定することは極めて望ましい。誤った高いまたは低いヘモグロビンの試験結果は患者への誤った処置をもたらし、生命を脅かす合併症に導くことにさえなる。したがって、より正確なヘモグロビンの読み取り値を提供し得るヘモグロビン測定システムを得ることが望ましい。
【0014】
さらに、変動する要因によって引き起こされる従来技術の欠点を克服することによって、より正確なヘモグロビンの読み取り値を提供し得るヘモグロビン測定システムを得ることが望ましい。
【0015】
さらに、従来技術によってこれまで必要とされていたよりも少ない試料量で足りる電気化学的センサを得ることが望ましい。
【0016】
より正確なヘモグロビン読み取り値を提供することができるディスポーザブルで使いやすいヘモグロビンセンサを得ることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,958,781号明細書
【特許文献2】米国特許第5,882,934号明細書
【特許文献3】米国特許第5,773,301号明細書
【特許文献4】米国特許第4,876,205号明細書
【特許文献5】米国特許第6,632,349号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20030201177号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20070062822号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20090104641号明細書
【特許文献9】米国特許第6,767,441号明細書
【特許文献10】米国特許第6,287,451号明細書
【特許文献11】米国特許第6,837,976号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第20060278537号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第20070131549号明細書
【特許文献14】米国特許第6,258,229号明細書
【特許文献15】米国特許第6,942,770号明細書
【特許文献16】米国特許第7,955,484号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Ashwood、R. Edward、およびBurtis、A. Carl、Tietz Textbook of Clinical Chemistry、1996年
【非特許文献2】W.C.Stadie、J. Biol. Chem.、1920、41、237頁
【非特許文献3】Drabkin、J. Biol. Chem.、1932、98、719頁
【非特許文献4】Vanzetti、J. Lab. Clin. Med.、1966、67、116頁
【非特許文献5】S.S.Morris、Am. J. Clin. Nutr.、1999、69(6)、1243頁
【非特許文献6】H. Gehring、Acta Anaes. Scand.、2002、46、980頁
【非特許文献7】A.M.Conway、J. Clin. Pathol.、1998、51、248頁
【非特許文献8】Sidney M. Hopfer、Annals of Clinical & Laboratory Science、2004、34、75頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、少量の体液中のヘモグロビン濃度の測定が可能なディスポーザブルヘモグロビンセンサを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、使用者の皮膚を穿刺することによって得られる血液等の少量の体液中のヘモグロビン濃度の測定が可能なディスポーザブルヘモグロビンセンサを提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、速い応答時間を有するディスポーザブルヘモグロビンセンサを提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、単一のディスポーザブルデバイスを用いて血液試料中のヘモグロビンとヘマトクリットとを同時に決定するために用いるディスポーザブルセンサを提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、センサーストリップを用いる血液試料中のヘモグロビン含量の信頼できる測定法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、以下に記述する実施形態においてこれらのおよびその他の目的を提供する。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、センサーストリップは、全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成され、少なくとも第1導電層および第2導電層がその表面に配設されている基層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含み、センサーストリップは、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に独立に印加された変動電圧と定電圧とに応答して血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返す。
【0026】
本発明の1つの態様によれば、酸化還元メディエータは、ヘモグロビン鉄(II)を酸化し、1つの実施形態においては試薬組成物の0.1%〜20%(W/W)を含むフェリシアン化カリウムであってよい。
【0027】
本発明の別の態様によれば、試薬組成物は、有効量のポリマーバインダー、有効量の界面活性剤および少なくとも1種の緩衝剤をさらに含む。ポリマーバインダーは組成物の0.04%〜2%(W/W)の範囲であってよく、界面活性剤は組成物の0.01%〜5%(W/W)の範囲であってよく、緩衝剤は7を超えるpHを有してよい。ポリマーバインダーはポリエチレンオキシドを含んでよく、界面活性剤はポリオキシエチレンエーテルを含んでよく、緩衝剤はアルカリ性組成物を含んでよい。
【0028】
1つの好ましい実施形態においては、センサーストリップは、基層上の第1中間層と、第1中間層上の第2中間層と、最上層とを含んでよく、第1中間層は、試薬組成物が受容される第1導電層と位置合わせされた第1開口部と、試薬組成物が受容される第2導電層と位置合わせされた第2開口部、を含み、第2中間層は、第1開口部および第2開口部の上に位置してチャネルを画定する切り欠きを含み、最上層はチャネルと連通するベント開口部を含む。本発明の別の態様によれば、チャネルは、2マイクロリットル以下の全血を受容するような寸法である。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、センサーストリップは、基層上の第3導電層と、第3導電層と接してブランク電極を画定する第2試薬組成物とをさらに含み、第3試薬組成物はヘモグロビン非感応性の酸化還元メディエータを含む。この実施形態においては、第1中間層は、試薬組成物が受容される第1導電層と位置合わせされた第1貫通開口部と、試薬組成物が受容される第2導電層と位置合わせされた第2貫通開口部と、第2試薬組成物が受容される第3導電層と位置合わせされた第3開口部とを含み、第2中間層は、第1開口部、第2開口部および第3開口部の上に位置してチャネルを画定する切り欠きを含み、最上層はチャネルと連通するベント開口部を含む。本発明の態様によれば、チャネルは、2マイクロリットル以下の全血を受容するような寸法である。
【0030】
1つの実施形態においては、第2導電層と接する試薬組成物は、酸化還元メディエータの代わりにAg/AgClスタックを含む。
【0031】
本発明の別の態様によれば、血液試料の量は、1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲であってよい。
【0032】
別の実施形態においては、第1の量の第1試薬組成物および第2の量の第2試薬組成物は同一の組成物である。
【0033】
別の実施形態によれば、センサーストリップは、全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成され、少なくとも第1導電層および第2導電層がその表面に配設されている基層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含み、センサーストリップは、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に印加された電圧に応答して1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲の量の血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返す。
【0034】
本発明の別の態様によれば、本発明によるセンサーストリップを使用して少量の血液試料(2マイクロリットル未満)中のヘモグロビン含量を信頼性良く決定するために種々の方法を用いることができる。これらの方法は、以下にさらに詳細に述べるようにリニアスキャンボルタンメトリー、アンペロメトリー、アンペロメトリーとインピーダンス測定の連結を含み得る。
【0035】
全血試料のヘモグロビン含量を測定するための本発明による方法は、血液試料にヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを導入するステップと、血液試料に初期電位を印加するステップ、終止電位に達するまで電位を離散的段階で増加させるステップと、各々の電位を印加した後に全血の電気的パラメータを測定するステップとを含む。
【0036】
本発明の態様によれば、パラメータは電流値であり得る。1つの好ましい実施形態における初期電位は−0.5ボルトであってよく、終止電位は0.3ボルトであってよく、各々の離散的段階は0.1ボルト/秒であってよい。
【0037】
本発明の別の態様によれば、血液試料のインピーダンスを測定することができ、電流値およびインピーダンス値を併用して血液試料のヘモグロビン含量を得ることができる。インピーダンス値および電流値を用いることにより、拡張された線形範囲にわたってヘモグロビン含量を測定することができる。拡張された線形範囲は少なくとも0g/dL〜23g/dLのヘモグロビンであり得る。
【0038】
本出願はまた、全血試料のヘモグロビン含量を測定するための方法であって、全血試料にヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを導入するステップと、導入ステップの後で血液試料の電流値を得るステップと、導入ステップの後で血液試料のインピーダンス値を得るステップと、電流値に第1の係数を乗じるステップと、インピーダンス値に第2の係数を乗じるステップと、第1の乗算ステップの結果を第2の乗算の結果に加えるステップとを含み、第1の係数と第2の係数の和が1である方法を開示する。
【0039】
有利には、血液試料の量は僅か1.6μLであり得る。しかし、本発明によるセンサは、10μLまでの血液試料について正確に機能することができる。
【0040】
本発明はまた、全血試料中のヘマトクリット含量を測定する方法であって、少なくとも第1導電層と第2導電層がその表面に配設されている基層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含むセンサーストリップであって、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に独立に印加された変動電圧と定電圧とに応答して血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して全血試料中のヘモグロビン含量を測定するステップと、測定されたヘモグロビン含量に基づいて式
Hct=aHb+b
(式中、Hctはヘマトクリット含量を示し、Hbはヘモグロビン含量であり、aおよびbは定数である)
の直線関係を用いてヘマトクリット含量を決定するステップとを含む方法を開示する。
【0041】
1つの実施形態においては、直線関係は、別の方法を用いて全血のヘマトクリット含量を測定し、第1の測定ステップの結果と第2の測定ステップの結果とを関連付けて全血中のヘマトクリット含量を示す直線関係を得ることによって決定してもよい。
【0042】
本発明の別の態様によれば、センサーストリップは、全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成され、基層と、基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の第1試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物と、第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含み、センサーストリップは、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返し、測定可能な電気信号は干渉性被酸化性物質の最大量未満の量の存在によって影響されず、最大量は、全血試料に種々の量の干渉性被酸化性物質を添加すること、添加した被酸化性物質の各々の量に対する電圧印加の後にブランク電極および作用電極からの電流を測定すること、ブランク電極および作用電極からの電流を各々測定した後に式
I=I2−kI1
(式中、Iは試料中のヘモグロビン含量に比例する補正された信号、I1はブランク電極における電流値、I2は作用電極における電流、kは定数である)
の関係に基づいて補正された電流信号を決定すること、および各々の決定された補正信号を各々の参照値と比較して、添加した干渉性被酸化性物質が測定可能な電気信号に影響したか否かを決定することによって実験的に決定される。
【0043】
本出願はさらに、基層と、基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の第1試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物、ならびに第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含むセンサーストリップであって、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、第1の時間にブランク電極と参照電極との間に第1の電圧を印加するステップと、第2の時間に作用電極と参照電極との間に第2の電圧を印加するステップと、第3の時間の開回路遅延の後で、初期電圧値から終止電圧値まで所定のレートでの電圧増分で作用電極と参照電極との間にリニアスキャンボルタンメトリーを印加してその電圧増分における電流値を決定するステップと、リニアスキャンボルタンメトリーの印加から得られるピーク電流値からヘモグロビン含量を決定するステップとを含む方法を開示する。
【0044】
1つの実施形態においては、第1の電圧は0.7ボルトであってよく、第1の時間は5秒であってよく、第2の電圧は1.0ボルトであってよく、第2の時間は10秒であってよく、リニア電位スキャンに先立つ開回路の第3の時間は17秒であってよく、初期電圧値は−0.5ボルトであってよく、終止電圧値は0.3ボルトであってよく、所定のレートは0.1V/sであってよい。
【0045】
本出願はまた、基層と、基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物と、第1の量および第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含むセンサーストリップであって、血液試料がチャネル内で第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、作用電極と参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、第1の時間にブランク電極と参照電極との間に第1の電圧を印加するステップと、第2の時間に作用電極と参照電極との間に第2の電圧を印加するステップと、第3の時間の開回路遅延の後で、作用電極とブランク電極との間の電流の増大を時間とともに測定しながら定電圧を印加してヘモグロビン含量を決定するステップとを含む方法を開示する。
【0046】
1つの実施形態においては、第1の電圧は0.7ボルトであってよく、第1の時間は5秒であってよく、第2の電圧は1.0ボルトであってよく、第2の時間は10秒であってよく、回路が開いている第3の時間は17秒であってよい。
【0047】
本発明の第1の実施形態(図1および図2)においては、本発明のセンサはグルコースセンサと同様の米国特許第6,767,441号、第6,287,451号、第6,837,976号、および米国特許出願公開第20060278537号、第20070131549号に開示されている4層ラミネート構造を用いており、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
本発明によるセンサの実用的な構成は、積層体の1端にある開口部と開口部から距離を有するベント孔との間に連結された試料流体チャネルを有する積層延長体を有し得る。流体チャネルの内部には、任意の順序で少なくとも1つの作用電極と参照電極(または対向電極)が存在する。作用電極と参照電極とは各々の導電経路によって電気的に接触している。分離された導電経路は終端し、露出して、積層体の開口チャネル終端に対向する読み取りデバイスと電気的に接続している。
【0049】
積層体はポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン等のプラスチック材料から作られた絶縁基層を有してよい。少なくとも2つの導電経路が絶縁基層上に線引きされ得る。導電経路はスクリーン印刷、蒸着、または絶縁基層に接着する導電層が得られる任意の方法によって絶縁層上に堆積され得る。導電経路は絶縁層上に個別に配設してもよく、または導電経路を絶縁層上に配設した後に必要な数の導電経路をエッチング/スクライビングしてもよい。エッチングプロセスは化学的に、導電層を個別の導電経路に罫書きするためにレーザを用いて導電層に機械的に線を罫書きし、または本発明に必要な個別の導電経路の間もしくはその中に割れ目を引き起こす任意の他の適当な方法によって、遂行され得る。用い得る電導性被覆または層は、ニッケル、金、酸化スズ/金、パラジウム、その他の貴金属もしくはその酸化物、または炭素フィルム組成物の被覆である。好ましい導電性被覆は金フィルムまたは酸化スズ/金フィルム組成物である。
【0050】
積層体は、絶縁基層および導電経路の上に試薬保持/電極領域画定層とも呼ばれる第1中間絶縁層を有し得る。第1中間層、即ち試薬保持層は、1つは作用電極を受容するため、他は参照電極を受容するための少なくとも2つの開口部を含む。各々の開口部は電極表面の小部分に対応し、これを露出する。好ましくは、中間層の2つの開口部は同じ形状および寸法を有するが、本発明の範囲および精神を逸脱しなければ異なった形状/寸法を有する。全ての開口部の位置は、上述の試料流体チャネルの内部に全てが位置するようなものである。第1中間絶縁層はまた、絶縁誘電材料、好ましくはプラスチックで作られ、材料を機械的にダイ切断し、またはレーザで作られ、次いで材料を基層に固定することによって作られる。感圧接着剤等の接着剤を用いて第1中間絶縁層を基層に固定してもよい。接着は第1中間層を超音波で基層に結合することによって達成することもできる。第1中間絶縁層は絶縁材料をスクリーン印刷することまたはフォトポリマーを基層の上に結合させることによっても作られ得る。
【0051】
積層体はまた、第1中間層の上にチャネル形成層と呼ばれる第2中間絶縁層を有し得る。第2中間層、即ちチャネル形成層はまたプラスチック絶縁材料から作られ、積層体の試料流体チャネルを形成する。これは先に述べた積層体の開口端に対応する開口端をもって第1中間層の開口部と重なる1端にU字形切り欠きを含む。二重被覆された感圧接着テープを第2中間層として用いてもよい。
【0052】
積層体はまた、ベント開口部および好ましくは入口ノッチを有する最上層を有し得る。この層はポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン等のプラスチックから作られている。ベント開口部は、ベント開口部の少なくとも一部が第2中間絶縁層のU字形切り欠きの底部と重なるような位置に存在する。ベントによって、試料流体が積層体の試料入口端から入る際に試料流体チャネル中の空気が逃げ出すことが可能になる。試料入口端にはノッチが位置している。一般的には試料流体は毛細管作用によって試料流体チャネルを満たす。毛細管作用の程度は、毛細管作用を受ける流体と接触する表面の疎水性/親水性に依存する。毛細管力は、最上層を形成するために親水性絶縁材料を用いること、または積層体の試料入口端と最上層のベント開口部との間の試料流体チャネルと対向する最上層の領域において疎水性絶縁材料の1つの側面の少なくとも一部を親水性物質で被覆することによって増大する。最上層の面全体を親水性物質で被覆し、次いで第2の中間層に結合させ得ることを理解されたい。
【0053】
1つの開口部は作用電極(W)用にヘモグロビン感応性化学物質および他の成分を保持した電極物質を含んでよく、1つの開口部は参照電極(R)用である。チャネル中の作用電極および参照電極の位置的配置は、電気化学的センサから有用な結果を得るためには重要ではない。試料流体チャネル内の可能な電極配置はW−RまたはR−Wであってよく、電極の配置が積層体の試料入口端からベント開口部までに現れるように列挙された配置を有している。作用電極および参照電極は、各々分離された導電経路と電気的に接触している。分離された導電経路は終端し、露出して、積層体の試料入口端に対向する端部で読み取りデバイスと電気的に接続している。
【0054】
作用電極にはヘモグロビンの第一鉄イオンと反応することができる少なくとも1種の化合物の混合物、および任意選択により1種または複数の界面活性剤、ポリマーバインダー、および緩衝剤が担持され得る。好ましくは、化合物は酸化剤であり、より好ましくはその還元形が電気化学的に活性で検出可能な酸化還元メディエータである。酸化還元メディエータは、これだけに限らないが、種々の金属錯体および有機酸化還元化合物から選択することができる。許容できる酸化還元メディエータの例は、フェリシアン化カリウム、フェロセンおよびその誘導体、コバルト、オスミウム、ロジウム、イリジウムおよびルテニウムの有機金属錯体、プロマジン、テトラチアフルバレン、メチルブルー、1,4−ベンゾキノン、1,4−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロビフェニルである。本発明における好ましいメディエータはフェリシアン化カリウムである。参照電極は作用電極と同じ混合物を担持し得る。好ましくは、参照電極の開口部にはフェリシアン化カリウム等の酸化還元メディエータの酸化形が、他の成分とともに担持される。参照電極の開口部にはまた、Ag/AgCl層(たとえばAg/AgClインクを塗布することまたは銀もしくはAg/AgCl層をスパッタ被覆することによって)または他の参照電極材料が担持され得る。
【0055】
液体試料をセンサに適用する場合には、試料はチャネル全体を満たし、作用電極と参照電極(または対向電極)の両方を覆う。これだけに限らないが、サイクリックボルタンメトリー、リニアスキャンボルタンメトリー、定電流ポテンシオメトリー、定電位アンペロメトリー、交流ボルタンメトリー、クーロメトリー、およびポテンシオメトリーを含む電気化学的手法が、作用電極から生成された電気信号を検出するために用いられる。本発明においては、リニアスキャンボルタンメトリーが好ましい。好ましくは、電位スキャンは比較的負の電位から始まり、比較的正の電位で終わる。好ましい出発電位は−1.0V(他に述べなければ参照電極に対して)である。より好ましくは、出発電位は−0.5Vである。好ましい終止電位は1.2Vである。より好ましくは、終止電位は0.3Vである。スキャンレート(1秒あたりの電位増分)は1mV/s〜10V/sであってよい。好ましくは、スキャンレートは10mV/s〜500mVである。より好ましくは、これは50mV〜200mV/sである。さらにより好ましくは、これは約100mV/sである。したがって、出発電位−0.5Vから終止電位0.3Vまでの電位スキャンを完了するには8秒が必要である。試料中のヘモグロビン濃度に比例する0.2Vにおける電流信号を測定する。電流はフェリシアン化物とヘモグロビン中の第一鉄との反応によって生成するフェロシアン化物(フェリシアン化物の還元形)の電解酸化に起因する。
【0056】
電位スキャンの前に、開回路遅延とともに前処理電位を印加してもよい。前処理電位は化学マトリックスに起因するフェロシアン化物を酸化し、それによりバックグラウンド電流を低減させるために用いられる。好ましい前処理電位は0.2V〜1.2V、より好ましくは0.5V〜1.0V、さらにより好ましくはおよそ1.0Vである。前処理の好ましい時間は1秒〜120秒、より好ましくは5秒〜30秒、さらにより好ましくはおよそ10秒である。開回路遅延によってフェリシアン化物とヘモグロビン中の第一鉄との反応が可能になる。好ましい遅延時間は1秒〜180秒、より好ましくは10秒〜60秒、さらにより好ましくはおよそ17秒である。
【0057】
作用電極と参照電極との間のインピーダンスは前処理電位印加の開始時、その途中、またはその終了時に測定することができる。インピーダンスは血液試料のヘマトクリットまたはヘモグロビンに関連していること、即ちヘモグロビン濃度が高いとインピーダンスが高く、逆も真であることは公知である。以下に示すように、本発明によるセンサは作用電極と参照電極との間のインピーダンスの正確な測定を可能にする。インピーダンスを用いて電流測定を補正し、ヘモグロビン含量をより正確に測定することができる。
【0058】
以下に開示するのは本発明の第2の実施形態の実用的な構成であり、これは第1の実施形態と同様の構造および試験手順を含むが、1つの作用電極(W2)、1つの参照電極(R)および1つのブランク電極(W1)を有している。作用電極とブランク電極とは、電位を印加する際に同じ参照電極を共有していてもよい。本発明による設計はまた、所望により作用電極とブランク電極とにおいて異なった試薬混合物を担持し、また異なった電気化学的手法を適用することを可能にする。作用電極にはヘモグロビン感応性材料(たとえばフェリシアン化カリウム)およびその他の成分が担持され、ブランク電極には被酸化性干渉物質に応答するように最適化された試薬が担持される。ブランク電極において被酸化性干渉物質を検出するために、これだけに限らないが、サイクリックボルタンメトリー、リニアスキャンボルタンメトリー、定電流ポテンシオメトリー、定電位アンペロメトリー、交流ボルタンメトリー、クーロメトリー、およびポテンシオメトリー等の種々の電気化学的手法を用いることができる。したがって「ブランク」電極は干渉表示電極として機能する。かかる3電極システムは第1の実施形態の特徴を有するのみならず、作用電極(W2)において得られる電流信号からブランク電極(W1)において得られるバックグラウンド信号を差し引くことによって、アスコルビン酸、アセトアミノフェン、尿酸等の、血液試料中にヘモグロビンと共存する任意の被酸化性物質による干渉を消去する能力を有している。
【0059】
作用電極(W2)にはヘモグロビン感応性材料(たとえばフェリシアン化カリウム)およびその他の成分が担持され、一方ブランク電極(W1)には作用電極と同様の化学物質が担持されるが、ヘモグロビン感応性材料は添加されず、そのため「ブランク」電極は干渉表示電極として機能し得る。ブランク電極には適切な電位および時間ならびに適切な化学組成物が適用され、それにより被酸化性物質の全濃度を正確に測定することができる。好ましい電位はアスコルビン酸、アセトアミノフェン、尿酸等の被酸化性干渉物質を酸化するために充分に高いが、電極材料または電解質を酸化することはない。印加される電位は約0.2V〜約1.2V、より好ましくは約0.4V〜約1.0V、さらにより好ましくは約0.7Vであり得る。電位印加の好ましい時間は約1秒〜約30秒、より好ましくは約2秒〜約10秒、さらにより好ましくは約5秒である。電流信号は試料中の被酸化性物質の全濃度を表わし、したがってブランク電極は干渉表示センサとして機能することに注目されたい。作用電極(W2)における電流信号に対する被酸化性物質の濃度の影響を検討することにより、ヘモグロビン濃度に比例する正確な電流信号を得ることができる。かかる補正は単にW1およびW2における電流信号間の差または和ではないであろうことを指摘すべきである。その理由は、1)W1(たとえばアンペロメトリー)およびW2(たとえばリニア電位スキャン)に異なった電気化学的手法を適用できること;2)W1およびW2において電流信号を測定する時点が異なり得ること;3)W1およびW2に担持させる化学物質が異なり得ること、である。
【0060】
作用電極にはヘモグロビン感応性材料(たとえばフェリシアン化カリウム)およびその他の成分が担持され、一方ブランク電極には少なくとも試料中の被酸化性物質と反応し得る化合物が担持され、そのため「ブランク」電極は干渉表示電極としても機能し得る。本発明の独特の設計により、所望により作用電極とブランク電極とに異なった試薬組成物を担持させることができる。ブランク電極に担持される試薬組成物は、ヘモグロビンの第1鉄以外の被酸化性物質を測定するために最適化することができる。化合物は、これだけに限らないが、種々の金属錯体および有機酸化還元化合物から選択することができる。許容できる酸化還元メディエータの例は、フェリシアン化カリウム、フェロセンおよびその誘導体、コバルト、オスミウム、ロジウム、イリジウムおよびルテニウムの有機金属錯体、プロマジン、テトラチアフルバレン、メチルブルー、1,4−ベンゾキノン、1,4−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロビフェニルである。本発明における好ましいメディエータはフェリシアン化カリウムである。好ましいpHは約7である。ブランク電極に用いられる好ましい電気化学的手法はアンペロメトリーである。ブランク電極には適切な電位および時間が適用され、それにより被酸化性物質の全濃度をアンペロメトリーによって測定することができる。好ましい電位は約0.2V〜約1.2V、より好ましくは約0.3V〜約0.7V、さらにより好ましくは約0.4Vであり得る。電位印加の好ましい時間は約1秒〜約30秒、より好ましくは約2秒〜約10秒、さらにより好ましくは約5秒である。かかる3電極システムは第1の実施形態の特徴を有するのみならず、作用電極における電流信号を補正することによって、試料中の任意の被酸化性物質による干渉を消去する能力を有している。
【0061】
ブランク電極の操作は作用電極の操作の前もしくは後に、または作用電極と同時に実施することができる。本発明による設計によって、作用電極における操作に干渉することなしに、ブランク電極において異なった電気化学的検出手法を適用することも可能である。
【0062】
作用電極(またはブランク電極)と参照電極との間のインピーダンスは、上述の電位印加の開始時、その途中、またはその終了時に測定することができる。本発明による設計によって、ブランク電極(W1)と参照電極(R)との間、ならびに作用電極(W2)と参照電極(R)との間のインピーダンスの正確な測定が可能である。得られるインピーダンス値を用いて電流測定を補正し、より正確なヘモグロビン測定を得ることができる。
【0063】
絶縁基層には少なくとも3つの導電経路が罫書きされる。第1中間層、即ち試薬保持層は、1つの作用電極、1つの参照電極および1つのブランク電極に対して少なくとも3つの開口部を含む。
【0064】
1つの開口部は作用電極(W2)用に酸化還元メディエータおよび他の成分を保持した電極物質を含み、1つはブランク電極(W1)用、1つは参照電極(R)用である。チャネル中の作用電極、参照電極およびブランク電極の位置的配置は、電気化学的センサから有用な結果を得るためには重要ではない。好ましい位置はW1−R−W2であることが見出された。即ち試料流体は積層体の入口開口端から入るので、流体はまずW1を、次いでRを、次いでW2を覆うことになろう。
【0065】
作用電極およびブランク電極は分離された参照電極(R1およびR2)を、一方は作用電極に、他方はブランク電極にそれぞれ有してもよい。チャネル中の作用電極および参照電極の位置的配置は、電気化学的センサから有用な結果を得るためには重要ではない。位置的配置には無数の組み合せがある。たとえば、1つの可能な配置はW1−R1−W2−R2である。即ち試料流体は積層体の入口開口端から入るので、流体はまずW1を、次いでR2を、次いでW2を、次いでR2を覆うことになろう。
【0066】
本発明によるセンサは第1中間層なしで考案してもよい。即ち、他の3層は第1の実施形態と同じである。かかる3層レイアウトの詳細は米国特許第6,258,229号および第6,942,770号に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。U字形のチャネル切り欠きはセンサ端(試料入口端)に位置している。U字形のチャネル切り欠きの長さ、厚みおよび幅は毛細管チャネルの寸法または体積を画定する。U字形チャネル切り欠きの長さおよび幅は、電導基層とともに、作用電極および参照電極の領域を画定する。
【0067】
作用電極(W)には少なくともヘモグロビン感応性化合物、および1種または複数のポリマーバインダー、任意選択により1種または複数の界面活性剤および1種または複数の緩衝剤が担持され得る。参照電極(R)は作用電極と同じ試薬混合物で覆われ得る。試薬混合物の代わりに、参照電極はAg/AgCl等の、当分野で日常用いられている参照材料で覆われてもよい。これはAg/AgClインクを塗布することまたは銀もしくはAg/AgCl層をスパッタ被覆することによって実施することができる。
【0068】
本発明によるセンサは同じストリップに側面を合わせて、または背面を合わせて配置された2つのチャネル(チャネル1およびチャネル2)を有し得る。少なくとも1つのチャネルは上の実施形態で述べたものと同様の構造を有するヘモグロビンセンサとして作用し、少なくとも1つのチャネルは他のセンサ、たとえば干渉表示センサとして作用する。試料入口端、即ち2つのチャネルの試料入口は互いに近接しているか、2つのチャネルが単に同じ試料入口を共有している。いずれの場合にも、2つのチャネルは血液試料の同じ液滴を用いることができる。2チャネル構成の例は米国特許第7,955,484号に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
絶縁基層上の基盤導電経路の数はチャネル1およびチャネル2における電極の総数と一致するべきである。第2中間層上には2列の開口部があり、1つはチャネル1に、他はチャネル2に用いられる。したがって、第2中間層には2つのU字形切り欠きがあり、1つはチャネル1に、他はチャネル2に用いられる。積層体も、各々のチャネルにベント開口部を有する最上層を有する。2つのチャネルはまた、1つのより大きなベント開口部を共有し得る。好ましくは、各々は試料入口端に入口ノッチを有する。より好ましくは、2つのチャネルは同じ入口ノッチを共有し、それにより2つのチャネルは血液試料の同じ液滴を用いることができる。
【0070】
チャネル1は少なくとも1つの作用電極と1つの参照電極を有し得る。作用電極の少なくとも1つにはヘモグロビン感応性材料および他の成分が担持される。チャネル1はヘモグロビンセンサとして独立に機能し得る。
【0071】
チャネル2は少なくとも1つの作用電極と1つの参照電極を有し得る。作用電極の少なくとも1つは血液試料中のヘモグロビンと共存する被酸化性物質に感応性がある。チャネル2は被酸化性物質(干渉)のセンサとして独立に機能し得る。
【0072】
本発明の利点の全ては詳細な説明、図面および添付した特許請求の範囲を概観することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態(2電極構成)によるテストストリップの斜視図である。
【図2】テストストリップの4成分層を示す第1の実施形態(2電極構成)の分解図である。
【図3】本発明の第2の実施形態(3電極構成)によるテストストリップの斜視図である。
【図4】テストストリップの4成分層を示す第2の実施形態(3電極構成)の分解図である。
【図5】本発明によるストリップを用いた血液試料のリニアスキャンボルタモグラムを示す図である。
【図6】本発明によるストリップを用いた血液試料のアンペロメトリーのi−tカーブを示す図である。
【図7】リニアスキャンボルタンメトリーで得られた電流信号のヘモグロビン濃度への依存性を示す図である。
【図8】インピーダンスのヘモグロビン濃度への依存性を示す図である。
【図9】連結Hb(aHb(i)+bHb(imp))の結果対参照値(HemoCue)を示す図である。これは本発明によるストリップの拡張された線形範囲を示す。
【図10】本発明によるストリップの、少量(2マイクロリットル未満)の全血試料中のヘモグロビン含量の信頼できる測定を提供する能力を示す図である。
【図11】血液試料中の変動するヘモグロビンに対する、本発明によるヘモグロビンセンサを用いたヘモグロビンの決定を示す図である。
【図12】本発明によるストリップを用いたヘマトクリットの測定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
上述した本発明の実施形態を図1〜図12に示す。
【0075】
図1および図2は本発明の第1の実施形態(2電極構成)によるストリップを示す。図3および図4は本発明の第2の実施形態(3電極構成)によるストリップを示す。以下の開示より理解されるように、本発明の第1の実施形態によるストリップは作用電極および参照電極を含み、一方第2の実施形態は作用電極、参照電極およびブランク電極を含む。本明細書に開示した原理による2電極構成(第1の実施形態)に基づいたヘモグロビンセンサを考案することはできるが、より多くの特徴を有する3電極構成(第2の実施形態)については後に詳細に述べる。作用電極および参照電極を用いる第2の実施形態の特徴は、本発明の第1の実施形態によるストリップを考案するために等しく適用することができる。
【0076】
他に指示しない限り、全ての類似の数字は図において類似の特徴を表わす。さらに、本明細書において用いる「約」または「およそ」は科学的に許容できる誤差の程度内を意味することを意図している。
【0077】
図3を参照して、センサ10は積層体12、流体採取端14、電気接点端16、およびベント開口部52を有している。センサ10はまた任意選択で入口ノッチ54を含んでもよい。流体採取端14は試料採取端入口18とベント開口部52との間に試料室17を含む。電気接点端16は3つの離散した電導接点16a、16bおよび16cを有する。
【0078】
ここで図4を参照して、積層体12は基層20、試薬保持層30、チャネル形成層40、およびカバー50からなっている。積層体12の全ての層は誘電性材料、好ましくはプラスチックで作られている。好ましい誘電性材料の例はポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、ポリウレタン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンである。
【0079】
基層20は、間隔を有する3つの導電経路22、24および26が表面に画定される導電層21を有する。導電経路22、24および26は、導電層21を罫書きするか切り込むことによって、または基層20に導電経路22、24および26をシルクスクリーン印刷することによって形成され得る。導電層21の罫書きもしくは切り込みは、導電層21を機械的に充分に罫書きして、間隔を有し電気的に分離された少なくとも3つの導電経路22、24および26を作り出すことによって行い得る。本発明の好ましい罫書きもしくは切り込みの方法は、二酸化炭素レーザ、YAGレーザまたはエキシマレーザを用いている。導電層21には任意の電導性材料、たとえば金、パラジウム、他の貴金属もしくはそれらの酸化物、または炭素フィルム組成物等から作られ得る。好ましい電導性材料は金または他の貴金属である。底層20に用い得る材料はCourtaulds Performance Films、Canoga Park、Calif.から発売されている金ポリエステルフィルム(Cat. No. FM−2)である。金ポリエステルフィルムは、以下に詳述するように試験したストリップの作成に用いた。
【0080】
試薬保持層30は、第1導電経路22の一部を露出した第1電極開口部32、第2導電経路24の一部を露出した第2電極開口部34、および第3導電経路26の一部を露出した第3電極開口部36を有する。試薬保持層30はプラスチック材料、好ましくは医用グレードの、Glen Rock、PaのAdhesive Research社から入手可能な片面接着テープから作られている。本発明に用いられる許容可能なテープの厚みは約0.001インチ(0.025mm)〜約0.01インチ(0.25mm)の範囲である。かかるテープの1つであるARcareO 7815(約0.003インチ(0.075mm))が、その取り扱い易さとセンサの試料室を通る毛細管作用を促進する能力から好ましい。テープの使用は必須ではないことを理解されたい。上述のポリエステルテープを用いるのと同じ結果を得るために、試薬保持層30をプラスチックシートから作り、感圧接着剤、光ポリマーで被覆し、基層20に超音波で接着し、もしくは基層20にシルクスクリーン印刷してもよい。
【0081】
電極開口部32、34および36はそれぞれ電極ウェルW1、RおよびW2を画定し、化学試薬を保持して作用電極、参照電極、およびブランク電極を形成する。一般には、電極ウェルW2には少なくとも酸化還元メディエータ、ポリマーバインダー、緩衝剤、および任意選択により界面活性剤を含むヘモグロビン感応性試薬マトリックスが担持される。電極ウェルW1にはW2と同様の化学物質が担持されるが、ヘモグロビン感応性材料は担持されない。電極ウェルRには参照マトリックスが担持され、これはW1またはW2のマトリックスと同じでよい。
【0082】
典型的には、参照マトリックスは酸化還元メディエータの還元形、酸化還元メディエータの酸化形、もしくは酸化還元メディエータの還元形と酸化形の混合物等の酸化還元試薬/カップルまたはメディエータを少なくとも含む。Rに酸化還元試薬/カップルまたはメディエータが担持されない場合には、作用電極W2およびブランク電極W1は適切に機能しないことになる。その代わりに、参照電極(電極ウェルR)は、Ag/AgCl層を担持(たとえばAg/AgClインクを塗布するか、(a)Ag層をスパッタコーティングし、次いでAgを塩化物とするかもしくは(b)Ag/AgCl層をスパッタコーティングすることによって)してもよく、または適切に機能させるために追加的な酸化還元メディエータを必要としない他の参照電極材料であってもよい。Ag/AgClは1種の酸化還元カップルであるが、水溶性ではない。したがって、参照電極がAg/AgClを含む場合には、追加的な酸化還元メディエータは必要でない。
【0083】
試薬保持開口部32、34および36の好ましい形状は円形であり、直径は約0.02インチ〜0.04インチである。3つの試薬保持/電極開口部32、34および36は互いに隣接しており、その間隔は好ましくは約0.005インチ〜0.1インチ、好ましくは互いに約0.045インチ(1.14mm)である。試薬保持開口部が円形であることは説明のためのみである。試薬保持開口部の形状および寸法、ならびに試薬保持開口部間の距離は、開口部の寸法が化学試薬を分注することを可能にするために充分大きく、適度に小さい試料チャネルを可能とするために充分小さい限り、重要ではないことを理解されたい。
【0084】
試料室中の作用電極、ブランク電極および参照電極の位置的配置は、ヘモグロビンセンサから有用な結果を得るためには重要ではない。試料室内の可能な電極の配置はW1−B−W2、W1−R−W2、R−W1−W2、R−W2−W1、W2−R−W1、またはW2−W1−Rであってよく、電極の配置が積層体12の試料入口18からベント開口部52までに現れるように列挙された配置を有している。好ましい実施形態においては、相対的な位置取りはW1−R−W2であることが見出された。即ち流体試料は積層体12の試料採取端14から入るので、流体試料はまずW1を、次いでRを、次いでW2を覆うことになろう。
【0085】
作用電極、ブランク電極および参照電極は全て、分離された導電経路と直接に電気的接触をしている。分離された導電経路は終端し、露出して、積層体12の試料入口18に対向する端部で読み取りデバイスと電気的に接続している。
【0086】
チャネル形成層40は試料採取端14に位置するU字形切り欠き42を有している。切り欠き42の長さは、チャネル形成層40が試薬保持層30に積層されたときに電極領域W1、RおよびW2が切り欠き42によって画定されるスペース内にあるような長さである。U字形切り欠き42の長さ、幅および厚みによって、毛細管チャンバーの体積が画定される。チャネル形成層40の厚みは、試料流体の毛細管作用によって満たされる試料室内への試料流体の流速に影響し得る。好ましい実施形態においては、チャネル形成層40は医用グレードのプラスチック材料、Glen Rock、PaのAdhesive Research社から入手可能な両面感圧接着テープから作ることができる。本発明に用いられる許容可能なテープの厚みは約0.001インチ(0.025mm)〜約0.010インチ(0.25mm)の範囲である。かかるテープの1つはARcareO 7840(約0.0035インチ(0.089mm))である。U字形切り欠き42はレーザまたはダイカッティングで作ることができる。好ましい方法は切り欠きをダイカットで作ることである。U字形切り欠きの好ましい寸法は長さ約0.215インチ(5.46mm)、幅約0.050インチ(1.27mm)、厚み約0.0085インチ(0.216mm)である。したがって、好ましい実施形態におけるチャネル体積はおよそ1.6μLである。
【0087】
チャネル形成層40に積層されるカバー50は、試料室17中の試料が電極領域W1、RおよびW2を完全に覆うことを確実にするためにヘモグロビンセンサ10の流体採取端14から間隔を置いたベント開口部52を含む。ベント開口部52はカバー50の内部に位置し、それによりこれはU字形切り欠き42とある程度整列することになる。好ましくは、ベント開口部52はU字形切り欠き42の底部の一部を露出し、これと部分的に重なっている。ベント開口部52の好ましい形状は長方形であり、寸法は約0.08インチ(2mm)×約0.035インチ(0.9mm)である。カバー50の材料はポリエステルフィルムであってよい。毛細管作用を起こさせるために、ポリエステルフィルムが毛細管チャンバーに対面した高度に親水性の表面を有することが望ましい。3M社の透明フィルム(Cat No. PP2200またはPP2500)が本発明においてカバーとして用いられる材料である。カバー50は任意選択で入口ノッチ54を含んでもよい。
【0088】
本明細書に開示したいずれの実施形態においても導路は任意の非腐食性金属から作られ得ることを理解されたい。炭素ペーストまたは炭素インク等の炭素沈着物も導路として用いることができ、これらは全て当業者には周知である。
【0089】
酸化還元メディエータ
多くの酸化剤がヘモグロビンの第一鉄を酸化できるが、酸化還元メディエータの酸化形が、それから得られる還元形が電気化学的に測定できるので好ましい。酸化還元メディエータは作用電極W2に含ませることができ、含ませられる場合にはフェリシアン化カリウム等の酸化還元メディエータの酸化形が好ましい。メディエータはマトリックス中で安定であることが望ましい。メディエータはヘモグロビン作用電極のために望ましい電位を維持できることがさらに望ましい。メディエータは、これだけに限らないが、フェリシアン化カリウム、フェロセンおよびその誘導体、コバルト、オスミウム、ロジウム、イリジウムおよびルテニウムの有機金属錯体、プロマジン、テトラチアフルバレン、メチルブルー、1,4−ベンゾキノン、1,4−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゼン、および4,4’−ジヒドロビフェニル等の、種々の金属錯体および有機酸化還元化合物から選択することができる。好ましいメディエータは酸化された酸化還元メディエータ、たとえばフェリシアン化カリウム(KFe(CN))である。
【0090】
好ましい実施形態において、試薬混合物中のフェリシアン化カリウムの濃度は好ましくは0.1%(W/W)〜20%である。より好ましくは、フェリシアン化カリウムの濃度は約10%である。濃度が0.1%未満では本発明のセンサは検知できる再現性のある信号を発しないことがある。濃度が20%を超えると本発明のセンサは再現性のある結果を生じないことがある。銀もしくはAg/AgCl層または他の参照電極材料が参照電極開口部に適用でき、これは上に列挙したような追加的な酸化還元メディエータの使用を必要としないことに注目されたい。
【0091】
ポリマーバインダー
ポリマーは成分を電極表面に結合させるためにバインダーとして用いられる。ポリマーは活性化合物(たとえば酸化還元メディエータ)を水分から保護するための遮蔽としても作用する。ポリマーは充分に水溶性であるべきであり、また電極領域中の試薬の中の全ての他の化学物質を安定化し、電導性表面層に結合させる能力を有しているべきである。好ましくは、本発明によるストリップに用いられる試薬混合物には少なくとも2種のポリマーを添加することができる。好ましいポリマーの1つはポリエチレンオキシド(PEO)である。その分子量は数千〜数百万の範囲である。好ましくは、分子量は百万を超える。より好ましくは、分子量は約4百万である。かかる製品はScientific Polymer Products社、NY、USAから入手可能である(分子量4,000,000、Cat No. 344)。試薬混合物中のPEOの濃度は好ましくは0.04%(W/W)〜2%である。より好ましくは、PEOの濃度は約0.6%である。濃度が0.04%未満では結合効果が試薬を電極表面に結合するには充分強くないことがある。その結果、本発明のセンサは正確で再現性のある結果を生じないことがある。濃度が2%を超えると試薬混合物の粘度が高くなり、正確に分注できないことがある。その結果、本発明のセンサは再現性のある結果を生じないことがある。好ましい実施形態において用い得る他のポリマーはメチルセルロースであり、これはMethocel 60 HG(Cat. No. 64655、Fluka Chemicals、Milwaukee、WI、USA)の商品名で入手可能である。試薬混合物中のMethocel 60 HGの濃度は、好ましくは0.02%(W/W)〜5%である。より好ましくはMethocel 60 HGの濃度は約0.5%である。この範囲とする理由はPEOと同様である。
【0092】
界面活性剤
界面活性剤は、試薬混合物の作用電極および参照電極の開口部への分注を可能にするため、ならびに試料をチャネルに適用した際に乾燥化学物質を速やかに溶解させるために用いられる。界面活性剤は、適切に選択すれば、血液試料を溶解させることによって血液試料からヘモグロビンを放出させることができる。界面活性剤の量および種類は、既に述べた機能を確実にするために選択される。界面活性剤は、これだけに限らないが、ポリオキシエチレンエーテル、Tween 20、コール酸ナトリウム水和物、コール酸、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物およびCHAP等の、種々のアニオン性、カチオン性、非イオン性および両イオン性洗浄剤から選択することができる。好ましい界面活性剤はポリオキシエチレンエーテルである。より好ましくは、これはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールであり、Triton X−100の商品名で入手可能である。試薬混合物中のTriton X−100の濃度は、好ましくは0.01%(W/W)〜5%である。より好ましくは、Triton X−100の濃度は約1%である。界面活性剤の濃度がこの範囲より上または下の場合には、本発明のセンサは厳密で正確な結果を生じないことがある。任意選択により、既に述べた機能を保証するためにコール酸等の追加的な界面活性剤を製剤に加えてもよい。
【0093】
緩衝剤
本発明によるセンサーストリップにおいて、緩衝剤が乾燥状態で酸化還元メディエータとともに存在してもよい。適当な緩衝剤の例にはクエン酸、リン酸塩、炭酸塩、トリス等が含まれる。好ましくは、緩衝溶液のpHは7を超え、より好ましくは9〜13であり、さらにより好ましくはおよそ12.5である。pHが7未満であると、ヘモグロビンの第一鉄と酸化還元メディエータ(フェリシアン化カリウム)との反応は迅速(1分以内)に起こらないことがある。pHが13を超えても相互作用は起こるが、得られるセンサは正確で厳密な結果を生じないことがある。このpHに適した緩衝剤の例には、これだけに限らないが、リン酸、炭酸、クエン酸、および酢酸のナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。好ましくは、リン酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウム等の、アルカリ性緩衝溶液を形成する少なくとも2種のナトリウム塩の組み合せが、既に述べた機能を達成するために用いられる。より好ましくは、リン酸三ナトリウムおよび炭酸ナトリウムである。試薬混合物中のナトリウム塩の濃度は0.5%〜10%(W/W)、好ましくは約1〜3%(W/W)である。より好ましくは、リン酸三ナトリウムの濃度は1.5%(W/W)、炭酸ナトリウムの濃度は3%(W/W)である。
【0094】
好ましい実施形態においては、ブランク電極(W1)に用いられる試薬混合物(以下、「試薬混合物1」とする)は、0.5%(W/W)のMethocel 60 HG、0.6%(W/W)のポリエチレンオキシド、1%(W/W)のTriton X−100を含む。
【0095】
好ましい実施形態においては、ヘモグロビン作用電極(W2)に用いられる試薬混合物(以下、「試薬混合物2」とする)は、0.5%(W/W)のMethocel 60 HG、0.6%(W/W)のポリエチレンオキシド、1%(W/W)のTriton X−100、1.5%のリン酸三ナトリウム12水塩、3%の炭酸ナトリウムおよび10%のフェリシアン化カリウムを含む。好ましい実施形態においては、試薬混合物2は参照電極(R)にも用いられる。
【0096】
試薬混合物の調製
試薬混合物1は以下に説明するようにして調製することができる。
【0097】
蒸留水100mlにMethocel 60 HG 0.5g、ポリエチレンオキシド0.6g、およびTriton X−100 1.0gを加える。溶解するまで液を撹拌する。得られる溶液は分注できる状態になっている。
【0098】
試薬混合物2は以下に説明するようにして調製することができる。
【0099】
蒸留水100mlにMethocel 60 HG 0.5g、ポリエチレンオキシド0.6g、フェリシアン化カリウム10.0g、およびTriton X−100 1.0g、三リン酸ナトリウム12水塩1.5g、炭酸ナトリウム3.0gを加える。溶解するまで液を撹拌する。得られる溶液は分注できる状態になっている。
【0100】
センサ/ストリップの構成
本発明の種々の実施形態の組立ては比較的単純である。一般には4層構成については(図1〜図4に示す)、基層および試薬保持層を互いに積層し、次いでそれらの各々の電極ウェルに試薬混合物を分注する。試薬混合物を乾燥した後、試薬保持層にチャネル形成層を積層し、次いでチャネル形成層にカバーを積層する。側面を合わせた、または背面を合わせた構造のような他のセンサ構成においては、基層および試薬保持層を互いに積層し、次いでそれらの各々の電極ウェルの中に(または側面を合わせた実施形態の脚部の中の電極ウェルの各々の中に)試薬混合物を分注する。試薬混合物を乾燥した後、試薬保持層にチャネル形成層を積層し、次いでチャネル形成層にカバーを積層する。
【0101】
より特定すれば、金ポリエステルフィルムの一片を図4に示す形状に切って、センサ10の基層20を形成する。金ポリエステルフィルムに切り込みを入れるためにレーザ等(既述)を用いてもよい。また図4に示すように、試料流体端14における3つの電極ならびに3つの接点22、24および26が電気接点端16において画定されるように、レーザでフィルムに切り込みを入れてもよい。切り込み線は非常に細いが、分離され間隔を有して電気的に隔離された導電経路を形成するために充分であるようにできる。切り込み線28は、完成したセンサ10からのノイズ信号を起こし得る静電気の問題の可能性を避けるために、必要ではないが任意選択により、基層20の外縁とともに作ってもよい。
【0102】
次いで片面接着テープの一片を、図4に示す小さな電気接点領域を露出する以外は基層20の導電層21の主要部分を覆うような形状および寸法に切って、試薬保持層30を形成する。
【0103】
試薬保持層30を基層20に取り付ける前に、実質的に同じ寸法の3つの円形開口部32、34および36をレーザまたはダイパンチアセンブリー等の機械的手段によって穿孔して、試薬保持層30に電極開口部32、34および36を形成する。開口部32、34および36の好ましい孔径は、典型的には約0.0276インチ(0.70mm)である。図4に示すように、電極開口部32、34および36は互いに整列しており、それらの間の間隔は約0.045インチ(1.14mm)である。開口部が円形であることは説明のためのみである。開口部の形状および寸法、ならびに開口部間の距離は、開口部の寸法が、電極が適切に機能するために充分な化学試薬を保持するために充分大きく、適度に小さい試料室を可能とするために充分小さい限り、重要ではないことを理解されたい。既に述べたように、開口部32、34および36に形成される電極の好ましい配置はW1(ブランク電極)、R(参照電極)およびW2(作用電極)である。次いで電極ウェルW1、RおよびW2を画定するような方法で試薬保持層30を基層20に取り付ける。
【0104】
試薬混合物1を電極領域W1に分注する。上述のように、試薬混合物1は好ましくは少なくともポリマーおよび界面活性剤の混合物である。同様に、試薬混合物2を電極領域RおよびW2に分散させる。試薬混合物2は好ましくは酸化還元メディエータ(好ましくはフェリシアン化カリウム)、少なくとも界面活性剤、緩衝剤およびポリマーバインダーの混合物である。好ましくは、試薬1および2をW1、RおよびW2に同時に分注し、したがって同じ乾燥条件で同時に乾燥する。本発明のセンサ寸法に対しては、W1、W2およびRに分注する体積は40〜110nLである。より好ましくは、これは50〜90nLであり、さらにより好ましくはおよそ70nLである。体積が40nL未満では試薬混合物は電極表面を完全に覆うことができず、体積が110nLを超えると試薬混合物が溢れる恐れがある。いずれにせよ、得られるセンサは正確で厳密な結果を生じないことがある。
【0105】
試薬混合物を加えた後、試薬混合物を乾燥する。試薬の乾燥はほぼ室温〜約50℃の温度範囲で起こり得る。試薬を乾燥するために必要な時間は、乾燥プロセスを実施する温度に依存する。
【0106】
乾燥後、Adhesive Research社から入手可能な両面テープの一片を、U字形チャネル42を含むチャンバー形成層40に構築する。次いでチャンバー形成層40を試薬保持層30に重ねる。上述のように、このチャンバー形成層40はスペーサとして作用し、試料室17の寸法を画定する。その幅および長さは、流体試料が比較的迅速に流動するように最適化される。
【0107】
透明フィルム(3M社から入手可能なCat. No. PP2200またはPP2500)を最上層50に構築する。既に述べたレーザまたはダイパンチを用いて長方形のベント開口部52を作成する。ベント開口部52は流体入口54からおよそ0.212インチ(5.38mm)の位置にある。最上層50を整列させ、チャンバー形成層40に重ねて、図4に示すようにセンサ10の組立てを完成させる。
【0108】
上記の電極構成は単一センサの構成について記述したが、用いられる設計および材料は、各々の層材料の1片からの多重センサの作成に理想的である。これは、表面に導電層を有する比較的大きな基層の片から出発することによって達成され得る。導電層に複数の罫書き線を作成して、既に述べた好ましい罫書き方法によって繰り返しパターンを形成し、それにより各々のパターンが最終的には各々のセンサの導電経路を画定するようにする。同様に、これも複数の開口部を繰り返しパターンの中に有する試薬保持層材料の大きな片を基層に合致するように寸法取りし、それにより完成した際には複数のセンサが作られるようにする。各々の開口部の寸法ならびに複数の電極領域W1、RおよびW2に配設される電極材料は上で開示したものと同様である。試薬混合物をそれらの各々の試薬保持開口部に配設して乾燥した後、複数の伸長された開口部を有するチャネル形成層材料の大きな片を試薬保持層材料に重ね、チャネル形成層材料の各々の伸長された開口部が試薬保持層材料の対応する開口部を含むようにする。複数のベント開口部およびノッチ形成開口部を繰り返しパターンで有する同等の大きさのカバー層材料をチャンバー形成層材料に重ねる。次いで積層シートを適当な場所で切断して個別のセンサーストリップを形成する。
【0109】
センサ/ストリップの適用
本発明の第2の実施形態によるヘモグロビンストリップを手持ちメータとともに用いて、全血の少量(2マイクロリットル未満)試料中のヘモグロビン含量を決定することができる。ストリップをストリップコネクタに挿入し、これによってメータを起動させ得る。血液約1.6μLをヘモグロビンストリップに適用する。一旦血液試料が本発明のヘモグロビンストリップの毛細管チャネルに入れば、および0.7ボルトの電位をブランク電極(W1)と参照電極(R)の間に印加し、得られる電流信号を時間に対して記録する(アンペロメトリー)。5秒の時間における電流が試料中のヘモグロビンと共存する被酸化性物質(干渉性物質)に比例し、したがってこれは作用電極(W2)において得られる電流信号を補正するために用いられる。
【0110】
ブランク電極(W1)におけるアンペロメトリー測定の後、メディエータFe(II)の還元形をその酸化形(Fe(III))に変換(酸化)し、それによりバックグラウンドノイズを最小化してセンサの性能を改善するため、作用電極(W2)に約10秒間、1.0ボルトの電位を印加する。Fe(III)をヘモグロビン鉄(HbFe(II))と反応させるための開回路遅延(たとえば約17秒)の後、リニア電位スキャンを実施する。好ましい実施形態においては、出発スキャン電位はおよそ−0.5ボルト、終止電位はおよそ0.3ボルトである。スキャンレートはおよそ0.1V/sである。スキャン時間は約8秒である。固定電位(たとえば0.2ボルト)における電流応答またはピーク電流(および0.2V)はヘモグロビン濃度に比例する。試験に要する全時間はおよそ40秒(5+10+17+8秒)である。本発明のヘモグロビンストリップは単回使用のために設計されており、即ち1回の使用の後は再使用できず、使用後は廃棄される。
【0111】
以下の方法により、本発明によるセンサーストリップの有効性を説明する。本発明の全てのセンサはWaltham、Mass.のNova Biomedical Corporation社製の手持ちヘモグロビンメータを用いて試験した。参照値を得るため、HemoCueシステム(HemoCue Inc.、Cypress、CA)、Sysmex Hemotologyシステム(Kobe、Japan)等の参照分析器を用いて同じ試料を試験してもよい。以下に開示する方法において用いたセンサは、上に開示した好ましい試薬組成物および好ましい材料によって考案した。
【0112】
電圧スキャン(可変電圧)およびアンペロメトリー(定電圧)法
最適の電気化学的検出手法を得るため、サイクリックボルタンメトリー、リニアスキャンボルタンメトリー、アンペロメトリー、クーロメトリー、ポテンシオメトリー、クロノポテンシオメトリー等のいくつかの電気化学的手法を検討した。好ましい方法はリニアスキャンボルタンメトリーおよびアンペロメトリーであることを決定した。
【0113】
リニアスキャンボルタンメトリーの手順は以下のように実施した。第1に、ブランク電極(W1)におよそ0.7ボルトの電位を5秒間印加し、第2に、作用電極(W2)に1.0ボルトの電位を10秒間印加し、第3に、開回路遅延(17秒)の後、初期電位−0.5ボルト、終止電位0.3ボルト、スキャンレート0.1V/sでリニアスキャンボルタンメトリーを実施した。
【0114】
図5に本発明のヘモグロビンストリップを用いた、異なったレベルのヘモグロビンを含む血液試料についてのリニアスキャンボルタモグラムを示す。およそ0.1〜0.2ボルト(A〜G)の電気酸化ピークは、電気還元およびフェリシアン化物と血液試料中のヘモグロビンの第一鉄との相互作用により生じたフェロシアン化物の再酸化に帰属される(下のTable 1(表1)を参照)。図5は、ピーク電流または固定電位(たとえば0.2ボルト)における電流値がヘモグロビン濃度の増大(A〜G)とともに直線的に増加することを示している。ヘモグロビン値はHemoCue System (HemoCue Inc.、Cypress、CA)を用いて得た。
【0115】
【表1】

【0116】
アンペロメトリーは以下の手順を用いて実施した。第1に、ブランク電極におよそ0.7ボルトの電位を5秒間印加し、第2に、作用電極に1.0ボルトの電位を10秒間印加し、第3に、開回路遅延(17秒)の後、0.2Vの定電位を印加して、電流対時間曲線を記録した。図6に図5と同じ血液試料A〜Gのアンペロメトリーi−t曲線を示す(Table 1(表1)参照)。図6は、所与の時点における電流がヘモグロビン濃度(A〜G)の増大とともに増加するが、直線性はリニアスキャンボルタンメトリーから得られたものほど良くないことを示している。
【0117】
ボルタンメトリーおよびインピーダンス測定の連結
ヘパリン化されたグリーントップチューブに静脈血試料を採取し、遠心分離して血漿と赤血球を分離した。赤血球および血漿を再度混合して種々のヘモグロビン濃度の血液試料を作成した。各々の試料を、HemoCueシステムで測定し、次いで手持ちヘモグロビンメータを用いて本発明のセンサで測定した。ヘモグロビンストリップには約1.6μLの血液を添加する。試験結果は約40秒後にメータ上に表示される。
【0118】
図7に、リニアスキャンボルタンメトリーで得られた電流信号の、参照分析器(HemoCueメータ)を用いて得られたヘモグロビン濃度への依存性を示す。電流応答はヘモグロビン0〜約20g/dLで直線であり、次いでその範囲を超えると水平になり始めることに注目されたい。
【0119】
図8に、インピーダンスの参照分析器(HemoCueメータ)を用いて得られたヘモグロビン濃度への依存性を示す。インピーダンスはおよそ7.8g/dL未満ではヘモグロビン濃度の増大とともに僅かに増加するが、それを超えると優れた感度を示す。したがって、電流信号値とインピーダンス値を連結して用いることによって、ヘモグロビンの測定をより正確にし、線形範囲をより広くすることができよう。
【0120】
ヘモグロビン濃度(Hb)は以下の式から計算することができる。
Hb=aHb(i)+bHb(Imp) (1)
a+b=1 (2)
式中、Hbはヘモグロビン(g/dL);
Hb(i)は電流信号に基づくヘモグロビン値;
Hb(Imp)はインピーダンスに基づくヘモグロビン値;
aおよびbは0〜1の係数である。
【0121】
電流信号とインピーダンス値の両方を用いることの利点を示すため、式(1)および式(2)を用いてHb(i)とHb(Imp)を連結した連結ヘモグロビン濃度読み取り値(Hb)を参照分析器(HemoCueメータ)を用いて得た濃度値に対してプロットし、図9に示す。連結結果がHb(i)またはHb(Imp)単独より優れていることは明らかである。その結果、本発明のセンサは23g/dLまで拡張された線形範囲を示す。
【0122】
同一試料を複数回試験することによって、本発明のセンサの正確性を検討した。この目的のため、本発明のセンサの3つの異なったバッチを用い、3種のヘモグロビンレベルの血液試料を試験した。典型的には、7.5、14.0および20.0g/dLのレベルのヘモグロビンを含む試料に対して、変動係数(CV%)はそれぞれ約4.0、3.6および3.8%であった(n=20)。
【0123】
干渉物質の影響の除去
本発明の第2の実施形態である3電極システムの独特の設計により、電極で酸化され得る共存物質による干渉を除去することができる。これはブランク電極(W1)における被酸化性物質の全濃度を測定して作用電極(W2)における電流信号を補正することによって達成される。補正は以下の式によって表わされる。
I=I−kI (3)
式中、IはW2(作用電極)における電流;
はW1(ブランク電極)における電流;
kは電極面積、毛細管チャネル構造およびその他の要因に関連する定数;
Iは補正された電流信号で、これは試料中のヘモグロビン濃度に比例する。
【0124】
干渉効果を評価するため、血液試料に種々の濃度の干渉物質を加えた。次いで試料を本発明の第2の実施形態によるヘモグロビンストリップを用いて試験した。参照値を得るため、血液試料をHemoCueシステム(HemoCue Inc.、Cypress、CA)によっても試験した。試験結果より、10mg/dLまでのアセトアミノフェン、アスコルビン酸、ヒドロキシ尿素、15mg/dLまでのビリルビン、8mg/dLまでのトラザミド、30mg/dLまでのサリチル酸、20mg/dLまでの尿酸は本発明の第2の実施形態によるヘモグロビンストリップを用いたヘモグロビン濃度決定に影響を及ぼさないことが示された。上述の各々の干渉物質の最大値は、血液試料中に共存してもよい干渉物質の最大濃度を表わす。各々の最大値は臨床的重要性を有する上限よりも顕著に大きい。したがって試験結果は、上述の干渉物質の存在が顕著な量であっても本発明によるセンサの性能は影響を受けないことを示している。
【0125】
他の普遍的な干渉物質は塩化ナトリウム等の電解質に由来するが、これは試料間で変動し、他の型のヘモグロビンセンサ(たとえばインピーダンスまたは電導度に基づくセンサ)においては主要な問題点となり得る。本発明のセンサを用いたヘモグロビン測定に対する電解質の濃度の変動の影響を評価するため、血液試料に種々のレベルの塩化ナトリウムを加えた。試験結果より、血液試料に加えた30mMまでのNaClはヘモグロビン測定に実質的な影響を与えないことが示された。上述のNaClの最大レベルは血液試料中に存在してもよい最大許容NaCl濃度である。この最大値は臨床的重要性を有する上限よりも顕著に大きい。したがって試験結果は、NaClの存在が顕著な量であっても本発明によるセンサの性能は影響を受けないことを示している。
【0126】
1.6〜10マイクロリットルの範囲の量の試料の結果の正確性
有利なことに、本発明の第2の実施形態によるストリップを用いた本発明による方法は、正確な結果を生じるために僅かの血液しか必要としない。ヘモグロビンの測定のために必要な血液量は毛細管チャネルの容積によって決まる。本発明の毛細管チャネルの計算された容積は約1.6μLである。センサ応答に対する量の影響を試験するため、種々の量の血液試料(1.6〜10μL)をセンサに添加した。チャネルは僅か1.6μLまでしか保持できないので、過剰の血液(>1.6μL)は毛細管チャネルに入らないことを指摘したい。試験データを図10に示す。明らかに、本発明のセンサは1.6〜10μLの試料量に対して応答の依存性を示さない。したがって、厳密な結果を得るために必要な最小量は1.6μLである。図10は、本明細書に記載した発明の概念を用いれば僅か1.6μLの血液を用いて正確な結果が得られることを示している。
【0127】
本発明によるセンサを用いたヘモグロビン測定の正確性の実証
本発明によるセンサーストリップは手持ちヘモグロビンメータと併せて用いることができる。種々のヘモグロビン濃度(非合成)のヘパリン化血液試料(グリーントップ)を、本発明のヘモグロビンセンサで試験した。同一試料を参照法(Sysmex Hemotology System、Kobe、Japan)によっても試験した。約2μLの血液をヘモグロビンストリップに添加した。試験結果はメータにより約39秒で得られた。図11に184の全試料および368のデータポイントについての試験結果をまとめる(各々の試料は2回の結果を有する)。図から判るように、本発明のセンサは約6.6g/dL〜約22.0g/dLの試験範囲にわたって血液試料中のヘモグロビン濃度に応答する。回帰式y=0.9678x+0.4074、R平方0.9377、全数368が得られた。
【0128】
本発明によるセンサーストリップを用いたヘマトクリットの決定
ヘマトクリットは赤血球の体積分率の測定である。本発明によるヘモグロビンセンサーストリップを用いてヘマトクリットを測定するため、本発明のヘモグロビンストリップおよび微小遠心分離によって血液試料中のヘモグロビン含量を測定することによってヘマトクリットとヘモグロビンの相関を確立した(ヘマトクリットまたはパックトセルボリューム(PCV)を決定するためのNCCLSによって推奨された参照法が遠心分離である)。ヘマトクリットとヘモグロビンの相関式は以下であることが見出された。
Hct=aHb+b (4)
式中、Hctはヘマトクリット(%)を表わし;
Hbはヘモグロビン(g/dL)を表わし;
aおよびbは実験定数で、本条件下ではそれぞれ2.805および2.205である。
【0129】
したがって、一旦ヘモグロビン濃度が測定されれば、Hctは上の式(4)を用いて容易に計算できる。図12に本発明のヘモグロビンストリップを用いたヘマトクリットの試験結果を示す。
【0130】
本明細書において本発明の好ましい実施形態を記述したが、上述の記載は単に説明のためのみであることに注意されたい。本明細書に開示した本発明のさらなる改変は当業者には想到でき、かかる全ての改変は添付した特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0131】
本発明をその特定の実施形態に関連付けて記述したが、多くの他の変化および改変ならびに他の用途は当業者には明白であろう。したがって、本発明は本明細書の特定の開示によってではなく、添付した特許請求の範囲のみによって限定されることが好ましい。
【符号の説明】
【0132】
10 センサ
12 積層体
14 流体採取端(試料採取端)
16 電気接点端
16a 電導接点
16b 電導接点
16c 電導接点
17 試料室
18 試料採取端入口
20 基層
21 導電層
22 導電経路
24 導電経路
26 導電経路
28 切り込み線
30 試薬保持層
32 第1電極開口部
34 第2電極開口部
36 第3電極開口部
40 チャネル形成層
42 U字形切り欠き
50 カバー
52 ベント開口部
54 入口ノッチ
W1 ブランク電極
W2 作用電極
R 参照電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成されたセンサーストリップであって、
少なくとも第1導電層および第2導電層がその表面に配設されている基層と、
前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、
前記第1の量および前記第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルと
を含み、
血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および前記第2の量の試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に独立に印加された変動電圧と定電圧とに応答して前記血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップ。
【請求項2】
前記酸化還元メディエータがヘモグロビン鉄(II)を酸化する、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項3】
前記酸化還元メディエータがフェリシアン化カリウムを含む、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項4】
前記酸化還元メディエータが前記試薬組成物の0.1%〜20%(W/W)の範囲である、請求項3に記載のセンサーストリップ。
【請求項5】
前記試薬組成物が有効量のポリマーバインダー、有効量の界面活性剤および少なくとも1種の緩衝剤をさらに含む、請求項4に記載のセンサーストリップ。
【請求項6】
前記ポリマーバインダーが前記組成物の0.04%〜2%(W/W)の範囲であり、前記界面活性剤が前記組成物の0.01%〜5%(W/W)の範囲であり、前記緩衝剤が7を超えるpHを有する、請求項5に記載のセンサーストリップ。
【請求項7】
前記ポリマーバインダーがポリエチレンオキシドを含み、前記界面活性剤がポリオキシエチレンエーテルを含み、前記緩衝剤がアルカリ性組成物を含む、請求項6に記載のセンサーストリップ。
【請求項8】
前記基層上の第1中間層と、前記第1中間層上の第2中間層と、最上層とをさらに含み、前記第1中間層は、前記試薬組成物が受容される前記第1導電層と位置合わせされた第1開口部と、前記試薬組成物が受容される前記第2導電層と位置合わせされた第2開口部とを含み、前記第2中間層は、前記第1開口部および前記第2開口部の上に位置して前記チャネルを画定する切り欠きを含み、前記最上層は前記チャネルと連通するベント開口部を含み、前記チャネルは2マイクロリットル以下の全血を受容するような寸法である、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項9】
前記基層上の第3導電層と、前記第3導電層に接してブランク電極を画定する第2試薬組成物とをさらに含み、前記第3試薬組成物はヘモグロビン非感応性の酸化還元メディエータを含む、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項10】
前記基層上の第1中間層と、前記第1中間層上の第2中間層と、最上層とをさらに含み、前記第1中間層は、前記試薬組成物が受容される前記第1導電層と位置合わせされた第1貫通開口部と、前記試薬組成物が受容される前記第2導電層と位置合わせされた第2貫通開口部と、前記第2試薬組成物が受容される前記第3導電層と位置合わせされた第3開口部とを含み、前記第2中間層は、前記第1開口部、前記第2開口部および前記第3開口部の上に位置して前記チャネルを画定する切り欠きを含み、前記最上層は前記チャネルと連通するベント開口部を含み、前記チャネルは2マイクロリットル以下の全血を受容するような寸法である、請求項9に記載のセンサーストリップ。
【請求項11】
前記第2導電層に接する前記試薬組成物が前記酸化還元メディエータの代わりにAg/AgClスタックを含む、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項12】
前記血液試料の量が1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲である、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項13】
前記第1の量の前記第1試薬組成物および前記第2の量の前記第2試薬組成物が同じ組成物である、請求項1に記載のセンサーストリップ。
【請求項14】
請求項1に記載のセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、リニアスキャンボルタンメトリーを含む方法。
【請求項15】
請求項1に記載のセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、前記血液試料についてリニアスキャンボルタンメトリーを使用した電流値およびインピーダンス値を得るステップと、前記電流値および前記インピーダンス値を使用して前記血液試料中のヘモグロビン含量を得るステップとを含む方法。
【請求項16】
請求項1に記載のセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、アンペロメトリーを含む方法。
【請求項17】
全血試料のヘモグロビン含量を測定する方法であって、
前記血液試料中にヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを導入するステップと、
前記血液試料に初期電位を印加するステップと、
終止電位に達するまで前記電位を離散的段階で増加させるステップと、
各々の電位を印加した後に前記全血の電気的パラメータを測定するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記パラメータが電流値を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パラメータが電流値を含み、前記血液の電気的インピーダンスを測定するステップをさらに含み、前記電流値と前記インピーダンス値を併用して前記血液試料のヘモグロビン含量を得る、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
電流値およびインピーダンス値を併用することにより、拡張された線形範囲にわたってヘモグロビン含量値を測定できる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
拡張された線形範囲が、少なくとも0g/dL〜23g/dLのヘモグロビンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記初期電位が−0.5ボルトであり、前記終止電位が0.3ボルトであり、各々の離散的段階が0.1ボルト/秒である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記血液試料の量が1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
全血試料のヘモグロビン含量を測定するための方法であって、
前記全血試料中にヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを導入するステップと、
前記導入ステップの後で前記血液試料の電流値を得るステップと、
前記導入ステップの後で前記血液試料のインピーダンス値を得るステップと、
前記電流値に第1の係数を乗じるステップと、
前記インピーダンス値に第2の係数を乗じるステップと、
前記第1の乗算ステップの結果を前記第2の乗算の結果に加えるステップと
を含み、前記第1の係数と前記第2の係数の和が1である方法。
【請求項25】
前記血液試料の量が1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化還元メディエータがフェリシアン化塩を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化還元メディエータがフェリシアン化カリウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成されたセンサーストリップであって、
少なくとも第1導電層および第2導電層がその表面に配設されている基層と、
前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、
前記第1の量および前記第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルと
を含み、
血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に印加された電圧に応答して1.6マイクロリットル〜10マイクロリットルの範囲の量の血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップ。
【請求項29】
全血試料中のヘマトクリット含量を測定する方法であって、
少なくとも第1導電層および第2導電層がその表面に配設されている基層と、
前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の試薬組成物と、
前記第1の量および前記第2の量の試薬組成物の間の連通を提供するチャネルと
を含むセンサーストリップであって、血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および第2の量の試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に独立に印加された変動電圧と定電圧とに応答して血液試料中のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して前記全血試料中のヘモグロビン含量を測定するステップと、
測定されたヘモグロビン含量に基づいて式
Hct=aHb+b
(式中、Hctはヘマトクリット含量を示し、Hbはヘモグロビン含量であり、aおよびbは定数である)
の直線関係を用いてヘマトクリット含量を決定するステップと
を含む方法。
【請求項30】
前記直線関係が、別の方法を使用して前記全血のヘマトクリット含量を測定すること、および前記第1の測定ステップの結果と前記第2の測定ステップの結果とを関連付けて前記全血中のヘマトクリット含量を示す直線関係を得ることによって決定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
全血試料中のヘモグロビンの測定のために構成されたセンサーストリップであって、
基層と、
前記基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、
前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の第1試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、
前記第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物と、
前記第1の量および前記第2の量の前記試薬組成物の間の連通を提供するチャネルと
を含み、
前記センサーストリップは血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および前記第2の量の前記試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返し、前記測定可能な電気信号は干渉性被酸化性物質の最大量未満の量の存在によって影響されないセンサーストリップ。
【請求項32】
前記最大量が、全血試料に種々の量の前記干渉性被酸化性物質を添加すること、添加した被酸化性物質の各々の量に対する電圧印加の後に前記ブランク電極および前記作用電極からの電流を測定すること、前記ブランク電極および前記作用電極からの電流を各々測定した後に式
I=I2−kI1
(式中、Iは前記試料中のヘモグロビン含量に比例する補正された信号、I1は前記ブランク電極における電流値、I2は作用電極における電流、kは定数である)
の関係に基づいて、補正された電流信号を決定すること、および各々の決定された補正信号を各々の参照値と比較して、添加した干渉性被酸化性物質が前記測定可能な電気信号に影響したか否かを決定することによって実験的に決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
基層と、前記基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、前記第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物と、前記第1の量および前記第2の量の前記試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含むセンサーストリップであって、血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および第2の量の前記試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、
第1の時間に前記ブランク電極と前記参照電極との間に第1の電圧を印加するステップと、
第2の時間に前記作用電極と前記参照電極との間に第2の電圧を印加するステップと、
第3の時間の開回路遅延の後で、初期電圧値から終止電圧値まで所定のレートでの電圧増分で前記作用電極と前記参照電極との間にリニアスキャンボルタンメトリーを適用してその電圧増分における電流値を決定するステップと、
前記リニアスキャンボルタンメトリーの適用から得られるピーク電流値からヘモグロビン含量を決定するステップと
を含む方法。
【請求項34】
前記第1の電圧が0.7ボルトであり、前記第1の時間が5秒であり、前記第2の電圧が1.0ボルトであり、前記第2の時間が10秒であり、前記第3の時間が17秒であり、前記初期電圧値が−0.5ボルトであり、前記終止電圧値が0.3ボルトであり、前記所定のレートが0.1V/sである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
基層と、前記基層上の少なくとも第1導電層、第2導電層、および第3導電層と、前記第1導電層と接して作用電極を画定する、少なくとも有効量のヘモグロビン感応性酸化還元メディエータを含む第1の量の試薬組成物、および前記第2導電層と接して参照電極を画定する第2の量の第2試薬組成物と、前記第3導電層と接してブランク電極を画定し、ヘモグロビン非感応性酸化還元メディエータを含む第3試薬組成物と、前記第1の量および前記第2の量の前記試薬組成物の間の連通を提供するチャネルとを含むセンサーストリップであって、血液試料が前記チャネル内で前記第1の量および第2の量の前記試薬組成物と接触する際に、前記作用電極と前記参照電極との間に印加された電圧に応答して血液試料のヘモグロビン含量を示す測定可能な電気信号を返すセンサーストリップを使用して全血中のヘモグロビンを測定する方法であって、
第1の時間に前記ブランク電極と前記参照電極との間に第1の電圧を印加するステップと、
第2の時間に前記作用電極と前記参照電極との間に第2の電圧を印加するステップと、
第3の時間の開回路遅延の後で、定電圧を印加しながら前記作用電極と前記ブランク電極との間の電流の増大を時間とともに測定してヘモグロビン含量を決定するステップと
を含む方法。
【請求項36】
前記第1の電圧が0.7ボルトであり、前記第1の時間が5秒であり、前記第2の電圧が1.0ボルトであり、前記第2の時間が10秒であり、前記回路が開いている前記第3の時間が17秒である、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−61336(P2013−61336A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−199212(P2012−199212)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(512236032)ノヴァ・バイオメディカル・コーポレーション (1)