説明

ヘモグロビン受容体を含む髄膜炎菌ワクチン

髄膜炎菌のヘモグロビン受容体HmbRを、1つ以上の更なる抗原と組み合わせて、例えば、髄膜炎菌外膜小胞と、別の精製髄膜炎菌抗原(例えば、fHBP、287、NadA、NspA、NhhA、App、Omp85、LOS)と、結合体化髄膜炎菌莢膜糖と、などと組み合わせてワクチン抗原として使用する。また、本発明は、(i)HmbRを高発現する髄膜炎菌、および(ii)そのような細菌から調製される外膜小胞、および(iii)そのような細菌由来の小胞を作製する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2008年12月17日に出願された米国仮特許出願61/203,087からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願の全容は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は髄膜炎菌ワクチンの分野に属する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
現在、髄膜炎菌の血清群B(「MenB:serogroup B of Neisseria meningitidis」)に対する各種ワクチンが研究されている。Novartis Vaccines社製MENZBTM製品、Finlay Institute製VA−MENGOC−BCTM製品、およびNorwegian Institute of Public Health製MENBVACTM製品などの一部のワクチンは外膜小胞(OMV:outer membrane vesicle)に基づいている。参考文献1(非特許文献1)のNovartis Vaccines社により報告された「血清群B髄膜炎菌に対する汎用ワクチン」などの他のものは組換え蛋白質に基づいている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Giulianiら、Proc Natl Acad Sci U S A(2006年)103(29):10834〜9
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の開示)
本発明は、髄膜炎菌のヘモグロビン受容体HmbR(haemoglobin receptor)のワクチン抗原としての利用に関する。しかしながら、参考文献2と異なり、HmbRはワクチン中の唯一の抗原として含めるものではない。もっと正確に言えば、より広範でより良好な免疫反応が得られるように、1つ以上の更なる髄膜炎菌抗原と組み合わせて含めるものである。
【0006】
本発明は、髄膜炎菌HmbR抗原および髄膜炎菌外膜小胞を含む免疫原性組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、(i)HmbRを高発現(hyper−express)する髄膜炎菌、および(ii)そのような細菌から調製される外膜小胞、および(iii)そのような細菌由来の小胞を作製する方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、その発現が相変動性ではないhmbR遺伝子を含む髄膜炎菌を提供する。また、本発明は、HmbRを構成的に発現する髄膜炎菌を提供する。また、本発明は、誘導プロモータの制御下にhmbR遺伝子を含む髄膜炎菌を提供する。また、本発明は、(i)そのような細菌から調製した外膜小胞および(ii)そのような細菌由来の小胞を作製する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は髄膜炎菌HmbR抗原および髄膜炎菌抗原:fHBP、287、NadA、NspA、NhhA、App、Omp85および/またはLOSのうちの1つ以上を含む免疫原性組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、(i)髄膜炎菌HmbRを発現する非髄膜炎菌および(ii)そのような非髄膜炎菌から調製される外膜小胞および(iii)そのような細菌由来の小胞を作製する方法を提供する。
【0011】
本発明は、髄膜炎菌HmbR抗原および結合体化髄膜炎菌莢膜糖を含む免疫原性組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、式:
−A−[−X−L−]−B−
のアミノ酸配列を含むハイブリッドポリペプチドを提供する(式中、Xは髄膜炎菌抗原配列を含むアミノ酸配列であり、Lは任意選択的なリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意選択的なN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意選択的なC末端アミノ酸配列であり、およびnは2以上の整数であり、少なくとも1つのX部分はHmbR抗原であるものとする)。好ましい非HmbR X部分はfHBP、287、NadA、NspA、NhhA、Appおよび/またはOmp85である。これらのハイブリッドポリペプチドは免疫原性組成物の一部分を形成することができる。
【0013】
また、本発明は、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび(iv)HmbR抗原の混合物を含む免疫原性組成物を提供する。(i)および(ii)および(iii)の混合物は参考文献1および3に開示されている。
【0014】
また、本発明は、配列番号20のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、長さが500アミノ酸未満、例えば<400aa、<300aa、<200aaであるポリペプチドを提供する。
【0015】
また、本発明は、配列番号21のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、長さが750アミノ酸未満、例えば<750aa、<700aaであるポリペプチドを提供する。
【0016】
また、本発明は、配列番号22のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、(i)このポリペプチド中の配列番号22の上流にあり、(ii)配列番号19の1乃至23番目のアミノ酸と同一である配列を含まないポリペプチドを提供する。
【0017】
(HmbR)
本発明の組成物は、髄膜炎菌HmbR抗原を含む。完全長のHmbR配列は、遺伝子NMB1668として、公表された髄膜炎菌血清群B株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた(本明細書における配列番号7)。参考文献2には異なる菌株からのHmbR配列(本明細書における配列番号8)が報告されている。本明細書の実施例では菌株NZ05/33からの配列番号19のクローニングを報告している。配列番号7および8は1アミノ酸だけ長さが異なり、94.2%の同一性を有する。配列番号19は配列番号7よりも1アミノ酸短く、これらはCLUSTALWでは99%の同一性(1挿入、7相違)である。本発明は任意のこのようなHmbRポリペプチドを使用することができる。
【0018】
本発明は、完全長のHmbR配列を含むポリペプチドを用いることができるが、多くの場合、部分的なHmbR配列を含むポリペプチドを用いる。従って、一部の実施態様では、本発明において用いるHmbR配列は、配列番号7と少なくともi%の配列同一性を有するアミノ酸配列であって、iの値が50、60、70、80、90、95、99またはそれ以上であるアミノ酸配列を含むことができる。他の実施態様では、本発明において用いるHmbR配列は、配列番号7からの少なくともj個の連続するアミノ酸の断片であって、jの値が7、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上であるアミノ酸の断片を含むことができる。他の実施態様では、本発明において用いるHmbR配列は、(i)配列番号7と少なくともi%の配列同一性を有し、および/または(ii)配列番号7からの少なくともj個の連続するアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むことができる。
【0019】
j個のアミノ酸の断片は、配列番号7由来のエピトープを含むことが好ましい。通常、そのようなエピトープは、HmbRの表面にあるアミノ酸を含む。有用なエピトープとしては、HmbRのヘモグロビンとの結合に関与するアミノ酸を有するものが挙げられる。何故なら、こうしたエピトープに結合する抗体は細菌の宿主ヘモグロビンとの結合能を遮断することができるからである。HmbRのトポロジーおよびその重要な機能性残基については参考文献4で検討されている。膜貫通配列を保持している断片は、細菌表面上に、例えば小胞において表示させることができるので、有用である。HmbRの長い断片の例は配列番号21および22に該当する。しかしながら、可溶性HmbRを用いる場合、膜貫通配列を含めないが、通常細胞外部分由来のエピトープを保持させた配列を用いることができる。
【0020】
本発明の最も有用なHmbR抗原は、被験体への投与後に、配列番号7のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なHmbR抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0021】
参考文献5と異なり、本発明のHmbR抗原は、通常は莢膜糖抗原と結合体化しない。
【0022】
(外膜小胞および好適な小胞産生髄膜炎菌株)
本発明の一実施態様では、(a)髄膜炎菌HmbR抗原および(b)髄膜炎菌外膜小胞を含む免疫原性組成物を提供する。これら2つの成分(a)および(b)を別々に調製した後、混合してこの免疫原性組成物を得ることができる[21]。本発明の別の実施態様では、髄膜炎菌HmbR抗原を高発現する髄膜炎菌から調製される外膜小胞を提供する。そのような高発現菌株についても提供する[21]。こうした菌株から調製される小胞は、HmbR抗原を含むことが好ましく、この抗原は小胞内で免疫接近可能形態にある必要がある。即ち、抗HmbR抗体が、小胞内に存在するHmbRに結合できる必要がある。
【0023】
こうした外膜小胞としては、髄膜炎菌外膜の破壊またはそれからのブレブリング(blebbling)により、その外膜の蛋白質成分を含む、外膜から小胞を形成させることで得られる任意の蛋白リポソーム小胞が挙げられる。従って、この用語には、OMV(「ブレブ(bleb)」と称することもある)、微小胞 (MV:microvesicle[6])、および「天然型OMV」(「NOMV:native OMV」[7])を含める。
【0024】
MVおよびNOMVは、細菌の増殖中に自然発生的に形成され、培養培地中に放出される天然の膜小胞である。MVは、ブロス培養培地でNeisseriaを培養し、このブロス培養培地中の小さなMVから細胞全体を(例えば、濾過または低速度で遠心分離して小さな小胞ではなく細胞のみをペレット化することによって)分離し、次いで細胞枯渇培地からMVを(例えば、濾過で、MVの分別沈殿または凝集で、高速度遠心分離でMVをペレット化することで)採取することによって得ることができる。MVの作製に用いるための菌株は、一般に、培養において産生されるMVの量に基づいて選択することができ、例えば、参考文献8および9には高MV産生のNeisseriaが記載されている。
【0025】
OMVは細菌から人工的に調製され、(例えば、デオキシコール酸塩による)界面活性剤処理または非界面活性剤手段(例えば、参考文献10参照)を用いて調製することができる。OMVを形成させる技術としては、胆汁酸塩界面活性剤(例えば、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ウルソコール酸などの塩、Neisseriaの処理にはデオキシコール酸ナトリウム[11&12]が好まれる)をこうした界面活性剤を沈殿させないために十分に高いpH[13]で用いて細菌を処理する技術が挙げられる。実質的に界面活性剤の存在しない状態で[10]、超音波処理、ホモゲナイズ、マイクロフルイダイゼーション、キャビテーション、浸透圧ショック、粉砕、フレンチ・プレス、混合などの技術を用いる他の技術を実施することができる。界面活性剤を全く用いないか少量用いる方法ではNspAなどの有用な抗原を保持することができる[10]。従って、方法としては約0.5%以下、例えば約0.2%、約0.1%、0.05%未満またはゼロのデオキシコール酸塩を含むOMV抽出緩衝液を用いることができる。
【0026】
OMV調製の有用な方法については参考文献14に記載されており、粗OMVに対して高速度遠心分離ではなく限外ろ過を行うものである。この方法には、限外ろ過を行った後に超遠心分離の工程を含めることができる。
【0027】
本発明に使用するための小胞は、任意の髄膜炎菌株から調製することができる。こうした小胞は通常、血清群B菌株由来であるが、A、C、W135またはYなどのB以外の血清群から調製することが可能である(例えば、参考文献13には血清群Aのための方法が開示されている)。上記の菌株は任意の血清型(例えば、1、2a、2b、4、14、15、16など)、任意の血清亜型および任意の免疫型(例えば、L1;L2;L3;L3,3,7;L10など)のものとすることができる。髄膜炎菌は、高侵入性および高毒性系統、例えば、以下の7つの高毒性系統:サブグループI、サブグループIII、サブグループIV−1、ET−5複合体、ET−37複合体、A4クラスター、系統3など、を含む任意の好適な系統由来のものとすることができる。これら系統は、多座位酵素電気泳動(MLEE:multilocus enzyme electrophoresis)により規定されているが、多座位配列タイピング(MLST:multilocus sequence typing)も髄膜炎菌を分類するために使用されており[参考文献15]、例えばET−37複合体は、MLSTによりST−11複合体であり、ET−5複合体はST−32(ET−5)であり、系統3はST−41/44である。小胞は、以下の亜型:P1.2;P1.2,5;P1.4;P1.5;P1.5,2;P1.5,c;P1.5c,10;P1.7,16;P1.7,16b;P1.7h,4;P1.9;P1.15;P1.9,15;P1.12,13;P1.13;P1.14;P1.21,16;P1.22,14の内の1つを有する菌株から調製することができる。
【0028】
本発明に使用される小胞は、野生型髄膜炎菌株または(髄膜炎菌HmbR抗原を高発現するように操作された菌株を含む)変異体髄膜炎菌株から調製され得る。例えば、参考文献16には、修飾されたfur遺伝子を有するN.meningitidisから得られる小胞の調製について開示されている。参考文献25では、nspA発現が、porAおよびcpsの同時ノックアウトにより上方制御されるはずであることが教示されている。参考文献25乃至27では、OMV産生のためのN.meningitidisの更なるノックアウト変異体について開示されている。参考文献17では、fHBPが上方制御されている小胞について開示されている。参考文献18では、6つの異なるPorA亜型を発現するように修飾された菌株に由来する小胞の構築について開示されている。LPS生合成に関与する酵素のノックアウトによって達成された低内毒素レベルを有する変異体Neisseriaも使用することができる[19、20]。これらの変異体または他の変異体は、すべて本発明に使用することができる。
【0029】
従って、本発明に使用される菌株は、一部の実施態様では、2つ以上のPorA亜型を発現し得る。6価および9価のPorA株は、これまでに構築されている。この菌株は、PorA亜型:P1.7,16、P1.5−1,2−2、P1.19,15−1、P1.5−2,10、P1.12−1,13、P1.7−2,4、P1.22,14、P1.7−1,1および/またはP1.18−1,3,6のうちの2、3、4、5、6、7、8、または9つを発現することができる。他の実施態様では、菌株は、PorAの発現について下方制御されていてもよく、その場合、例えば、PorAの量は、野生型レベルと比較して(例えば、参考文献29に開示されているような菌株H44/76と比較して)、少なくとも20%(例えば、≧30%、≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%、≧90%、≧95%など)減少しているか、さらにはノックアウトされている。
【0030】
一部の実施態様では、菌株は、(対応する野生型菌株と比較して)特定の蛋白質を高発現することができる。例えば、菌株は、NspA、蛋白質287[21]、fHBP[17]、TbpAおよび/またはTbpB[22]、Cu,Zn−スーパーオキシドジスムターゼ[22]などを高発現することができる。前述のように、一部の実施態様では、髄膜炎菌はHmbR抗原を(対応する野生型菌株と比較して)高発現する。従って、HmbRコード遺伝子は野生型菌株のプロモータよりも高い発現をもたらすプロモータの制御下に置くことができ、或いはこの菌株に、例えば染色体中またはプラスミド内に組み込むことで、非天然のHmbRコード配列を備えさせることができる。
【0031】
小胞作製にとって好都合なことに、髄膜炎菌は、これが相変動を起こしにくいhmbR遺伝子を確実に有するように、遺伝子操作することができる。髄膜炎菌における遺伝子発現の相変動性を低減または除去する方法については参考文献23に開示されている。例えば、hmbR遺伝子は、構成的または誘導プロモータの制御下に置くことができ、或いはその相変動性に関与するDNAモチーフを除去または置換することができる。
【0032】
一部の実施態様では、菌株は、参考文献24乃至27に開示されているノックアウトおよび/または高発現変異のうちの1つ以上を有することができる。下方制御および/またはノックアウトのための好ましい遺伝子としては、(a)Cps、CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PilC、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[24]、(b)CtrA、CtrB、CtrC、CtrD、FrpB、GalE、HtrB/MsbB、LbpA、LbpB、LpxK、Opa、Opc、PhoP、PilC、PmrE、PmrF、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[25]、(c)ExbB、ExbD、rmpM、CtrA、CtrB、CtrD、GalE、LbpA、LpbB、Opa、Opc、PilC、PorB、SiaA、SiaB、SiaC、SiaD、TbpAおよび/またはTbpB[26]、並びに(d)CtrA、CtrB、CtrD、FrpB、OpA、OpC、PilC、PorB、SiaD、SynA、SynBおよび/またはSynC[27]が挙げられる。
【0033】
変異菌株が使用される場合、一部の実施態様では、これは以下の特性のうちの1つ以上または全てを有することができる:(i)髄膜炎菌性LOSを切断するためのLgtBおよび/またはGalEの下方制御またはノックアウト、(ii)TbpAの上方制御、(iii)NhhAの上方制御、(iv)Omp85の上方制御、(v)LbpAの上方制御、(vi)NspAの上方制御、(vii)PorAのノックアウト、(viii)FrpBの下方制御またはノックアウト、(ix)Opaの下方制御またはノックアウト、(x)Opcの下方制御またはノックアウト、(xii)cps遺伝子複合体の欠失。切断されたLOSは、シアリル−ラクト−N−ネオテトラオースエピトープを含んでいないものとすることができ、例えば、ガラクトース−欠損LOSとすることができる。このLOSは、α鎖を有さない場合がある。
【0034】
小胞の調製に用いる髄膜炎菌株に応じて、小胞は菌株の天然HmbR抗原を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい[28]。本発明では、HmbR含有またはHmbR不含の小胞を用いることができるが、HmbR高発現菌株からこうした小胞を調製する場合には、その目的は小胞に確実にHmbRを含有させることにある。
【0035】
LOSが小胞に存在している場合、そのLOSと蛋白質成分とを結合させるように小胞を処理することが可能である(「ブレブ内」結合[27])。
【0036】
本発明は、種々の菌株に由来する小胞の混合物を使用することができる。例えば、参考文献29では、使用国において流行している血清亜型を有する髄膜炎菌株由来の第1の小胞および使用国において流行している血清亜型を必ずしも有さない菌株由来の第2の小胞を含む、多価髄膜炎菌性小胞組成物を含むワクチンについて開示されている。参考文献30にも、種々の小胞の有用な組み合わせが開示されている。L2およびL3免疫型のそれぞれの菌株に由来する小胞の組み合わせを、一部の実施態様において用いることができる。
【0037】
HmbR高発現菌株を設計するための3つの有用なバックグラウンド菌株はMC58、NZ05/33およびGB013である。MC58はPorA血清亜型1.7,16を有し、NZ05/33は血清亜型1.7−2,4を有し、GB013は血清亜型1.22,9を有する。
【0038】
(fHBP(H因子結合蛋白質))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)fHBP抗原を含むことができる。
【0039】
fHBP抗原については詳細な特徴付けが行われている。これは蛋白質「741」[参考文献40における配列番号2535および2536]、「NMB1870」、「GNA1870」[参考文献31乃至33]、「P2086」、「LP2086」または「ORF2086」[34乃至36]とも呼ばれている。これは、天然型がリポ蛋白質であり、全ての髄膜炎菌血清群にわたって発現される。fHbpのC末端免疫優性ドメイン(「fHbpC」)の構造はNMRによって決定されている[37]。上記蛋白質のこの部分は8本鎖βバレルを形成しており、その各鎖は可変長のループによって結合されている。このバレルには短いαヘリックスおよび柔軟なN末端尾部が先行している。
【0040】
fHBP抗原は、3つの異なる改変体に分類され[38]、所与のファミリーに対する血清は同じファミリー内では殺菌性であるが、その他の2ファミリーのうちの一つを発現する菌株に対しては活性がなく、即ち、ファミリー内交差防御はあるが、ファミリー間交差防御はないことが分かっている。本発明は単一のfHBP改変体を使用することができるが、上記改変体の2または3つ由来のfHBPを有用に含む。従って、これは、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第1の蛋白質、(b)配列番号2に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号2に由来する少なくともy個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第2の蛋白質、並びに/或いは(c)配列番号3に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号3に由来する少なくともz個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第3の蛋白質、から選択される、2または3つの異なるfHBPの組み合わせを用いることができる。
【0041】
aの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。bの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。cの値は、少なくとも85、例えば、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上である。a、bおよびcの値は、本質的に、互いに関連しない。
【0042】
xの値は、少なくとも7(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。yの値は、少なくとも7(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。zの値は、少なくとも7(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、225、250)である。x、yおよびzの値は、本質的に、互いに関連しない。
【0043】
本発明が単一のfHBP改変体を用いる場合、組成物は、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、或いは(b)配列番号2に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列および/または配列番号2に由来する少なくともy個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含むアミノ酸配列、或いは(c)配列番号3に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列および/または配列番号3に由来する少なくともz個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むことができる。
【0044】
本発明が上記改変体のうちの2または3つ由来のfHBPを用いる場合、組成物は、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド、(b)配列番号2に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号2に由来する少なくともy個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチド、並びに/或いは(c)配列番号3に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号3に由来する少なくともz個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第3のポリペプチド、から選択される、2または3つの異なるfHBPの組み合わせを含むことができる。上記の第1、第2および第3のポリペプチドは異なるアミノ酸配列を有する。
【0045】
本発明が上記改変体のうちの2つ由来のfHBPを用いる場合、組成物は、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド、並びに(b)配列番号2に対して少なくともb%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号2に由来する少なくともy個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチド、の両者を含むことができる。上記の第1および第2のポリペプチドは異なるアミノ酸配列を有する。
【0046】
本発明が上記改変体のうちの2つ由来のfHBPを用いる場合、組成物は、(a)配列番号1に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号1に由来する少なくともx個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド、(b)配列番号3に対して少なくともc%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または配列番号3に由来する少なくともz個の隣接するアミノ酸の断片から成るアミノ酸配列を含む、第2のポリペプチド、の両者を含むことができる。上記の第1および第2のポリペプチドは異なるアミノ酸配列を有する。
【0047】
一部の実施態様では、fHBP蛋白質(単数または複数)は、例えば、N末端システインにおいて脂質付加される。他の実施態様では、これらは脂質付加されない。
【0048】
(287)
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)287抗原を含むことができる。
【0049】
この287抗原は、遺伝子NMB2132(GenBankアセッション番号GI:7227388、本明細書における配列番号9)として、公表された髄膜炎菌血清群B株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。その後、多くの菌株由来の287抗原の配列が公表されている。例えば、参考文献39の図5および15並びに参考文献40の実施例13および図21に287の対立形質(allelic form)をみることができる(これらの文献における配列番号3179乃至3184)。287抗原の各種免疫原性断片も報告されている。
【0050】
本発明において用いるのに好ましい287抗原は、(a)配列番号9との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号9の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号9由来のエピトープを含む。
【0051】
本発明の最も有用な287抗原は、被験体への投与後に配列番号9のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合な287抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0052】
(NadA(ナイセリア付着因子A))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)NadA抗原を含むことができる。
【0053】
このNadA抗原は、遺伝子NMB1994(GenBankアセッション番号GI:7227256、本明細書における配列番号10)として、公表された髄膜炎菌血清群B菌株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。その後、多くの菌株由来のNadA抗原の配列が公表され、この蛋白質のナイセリア付着因子としての活性ついて十分な記載がある。NadAの各種免疫原性断片も報告されている。
【0054】
本発明に用いるのに好ましいNadA抗原は、(a)配列番号10との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号10の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号10由来のエピトープを含む。
【0055】
本発明の最も有用なNadA抗原は、被験体への投与後に配列番号10のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なNadA抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。配列番号6はそのような断片の1つである。
【0056】
(NspA(ナイセリア表面蛋白質A))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)NspA抗原を含むことができる。
【0057】
このNspA抗原は、遺伝子NMB0663(GenBankアセッション番号GI:7225888、本明細書における配列番号11)として、公表された髄膜炎菌血清群B菌株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。この抗原は、すでに参考文献41および42から知られていた。その後、多くの菌株由来のNspA抗原の配列が公表された。NspAの各種免疫原性断片も報告されている。
【0058】
本発明に用いるのに好ましいNspA抗原は、(a)配列番号11との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号11の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号11由来のエピトープを含む。
【0059】
本発明の最も有用なNspA抗原は、被験体への投与後に配列番号11のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なNspA抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0060】
(NhhA(Neisseria hiaホモログ))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)NhhA抗原を含むことができる。
【0061】
このNhhA抗原は、遺伝子NMB0992(GenBankアセッション番号GI:7226232、本明細書における配列番号12)として、公表された髄膜炎菌血清群B菌株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。多くの菌株由来のNhhA抗原の配列が、例えば、参考文献39および43以後に公表されており、NhhAの各種免疫原性断片が報告されている。これはHsfとしても知られている。
【0062】
本発明に用いるのに好ましいNhhA抗原は、(a)配列番号12との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号12の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号12由来のエピトープを含む。
【0063】
本発明の最も有用なNhhA抗原は、被験体への投与後に配列番号12のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なNhhA抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0064】
(App(付着因子および侵入蛋白質))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)App抗原を含むことができる。
【0065】
このApp抗原は、遺伝子NMB1985(GenBankアセッション番号GI:7227246、本明細書における配列番号13)として、公表された髄膜炎菌血清群B株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。その後、多くの菌株由来のApp抗原の配列が公表されている。これは、「ORF1」および「Hap」としても知られている。Appの各種免疫原性断片も報告されている。
【0066】
本発明において用いるのに好ましいApp抗原は、(a)配列番号13との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号13の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号13由来のエピトープを含む。
【0067】
本発明の最も有用なApp抗原は、被験体への投与後に配列番号13のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なApp抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0068】
(Omp85(85kDa外膜蛋白質))
本発明の組成物は、精製HmbR抗原由来の精製ポリペプチド分離物として、またはHmbR抗原としての同ポリペプチドの一部として(即ち、ハイブリッドポリペプチドの一部として)Omp85抗原を含むことができる。
【0069】
このOmp85抗原は、遺伝子NMB0182(GenBankアセッション番号GI:7225401、本明細書における配列番号14)として、公表された髄膜炎菌血清群B菌株MC58[109]のゲノム配列に含まれていた。その後、多くの菌株由来のOmp85抗原の配列が公表されている。Omp85に関する更なる情報を参考文献44および45に見出すことができる。Omp85の各種免疫原性断片も報告されている。
【0070】
本発明に用いるのに好ましいOmp85抗原は、(a)配列番号14との同一性を50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上)有し、および/または(b)配列番号14の少なくとも「n個」の連続するアミノ酸の断片を含み、「n」は7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)であるものとするアミノ酸配列を含む。(b)の好ましい断片は配列番号14由来のエピトープを含む。
【0071】
本発明の最も有用なOmp85抗原は、被験体への投与後に配列番号14のアミノ酸配列からなる髄膜炎菌ポリペプチドに結合することができる抗体を誘発することができる。本発明に用いるための好都合なOmp85抗原は、被験体への投与後に殺菌性の抗髄膜炎菌抗体を誘発することができる。
【0072】
(ハイブリッドポリペプチド)
一部の実施態様では、本発明は、式:−A−[−X−L−]−B−のアミノ酸配列を含むハイブリッドポリペプチドを提供する(式中、Xは髄膜炎菌抗原配列を含むアミノ酸配列であり、Lは任意選択的なリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意選択的なN−末端アミノ酸配列であり、Bは任意選択的なC末端アミノ酸配列であり、およびnは2以上の整数である(通常、nは2または3である))。
【0073】
上記のとおり、少なくとも1つのX部分はHmbR抗原である。理想的には、少なくとも1つの更なるX部分は、fHBP、287、NadA、NspA、NhhA、Appおよび/またはOmp85から選ばれる。
【0074】
少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5またはそれ以上)の抗原を単一のポリペプチド鎖(上記「ハイブリッド」ポリペプチド)として発現させることで、主に2つの利点がある。即ち、第1に、そのままでは不安定であるかまたは発現が乏しいと考えられるポリペプチドを、この問題を解決する適切なハイブリッドパートナーを加えることでサポートすることができ、第2に、抗原として有用な2つのポリペプチドを製造するのに必要な発現および精製が1回で済むので、商業的生産が単純化される。
【0075】
−X−部分がその野生型形態においてリーダーペプチド配列を有する場合、上記ハイブリッド蛋白質ではこれを含めてもよく、削除してもよい。一部の実施態様では、リーダーペプチドは、ハイブリッド蛋白質のN末端に位置する−X−部分のそれを除いて、欠失させられる。即ち、Xのリーダーペプチドは保持させるが、X...Xのリーダーペプチドは削除する。これは全てのリーダーペプチドを欠失させ、部分−A−としてXのリーダーペプチドを用いることに等しい。
【0076】
[−X−L−]の各n例について、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもよく、存在しなくてもよい。例えば、n=2のとき、ハイブリッドはNH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOH、などとすることができる。リンカーアミノ酸配列(単数または複数)である−L−は、通常短いものとなる(例えば、20個以下のアミノ酸、即ち、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例として、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわち、Gly、式中、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)およびヒスチジンタグ(すなわち、His、式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者には明らかである。有用なリンカーとしては、GSGGGG(配列番号15)またはGSGSGGGG(配列番号16)があり、Gly−SerジペプチドはBamHI制限酵素部位から形成されており、従って、クローニングおよび操作に役立つものであり、そして、(Gly)テトラペプチドは典型的なポリ−グリシンリンカーである。他の、特に最後のLとして用いるのに適切なリンカーはLeu−Gluジペプチドである。
【0077】
−A−は、任意選択的なN末端アミノ酸配列である。これは、通常短いものとなる(例えば、40個以下のアミノ酸、即ち、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例としては、蛋白質の輸送を導くためのリーダー配列、或いはクローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、即ち、His、式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者には明らかである。Xがそれ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば、アミノ酸1、2、3、4、5、6、7または8個)、例えば、Met−Ala−Serまたは単一のメチオニン残基、であることが好ましい。
【0078】
−B−は、任意選択的なC末端アミノ酸配列である。これは、通常短いものとなる(例えば、40個以下のアミノ酸、即ち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1個)。例としては、蛋白質の輸送を導くための配列、或いはクローニングまたは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、配列番号17などのヒスチジンタグ、即ち、Hisを含む、式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)または蛋白質の安定性を高める配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者には明らかである。
【0079】
(LOS)
髄膜炎菌HmbR抗原は、精製髄膜炎菌リポオリゴ糖(LOS)と組み合わせて用いることができる。LOSはそのままで、またはキャリアに結合体化させて用いることができる。結合体化させる場合、LOSのリピドA部分を介して、または任意の他の適切な部分、例えばそのKDO残基によって結合体化させることができる。LOSのリピドA部分が無い場合、代替的なそのような結合が必要とされる。
【0080】
本発明に用いるLOSは任意の免疫型、例えば、L2、L3、L7など、由来のものとすることができる。
【0081】
天然LOSを用いるのではなく、修飾形態を用いることが好ましい。こうした修飾は化学的に達成することができるが、特定の生合成付加に関与する、MenBにおける酵素をノックアウトする方がより簡便である。例えば、LOSは、天然のラクト−N−ネオテトラオースユニットの少なくとも末端Galを除去するべく修飾することができるが、この修飾は、1つ以上の関連する酵素をノックアウトすることによって達成することができる。天然LOSにおける2つの末端単糖(シアル酸およびガラクトース)の付加に関与する酵素は、末端Siaだけを除去するために、またはSia−Galの二糖を除去するためにノックアウトすることができる。例えば、lgtB遺伝子をノックアウトすると、Sia−Galが除去される。galE遺伝子のノックアウトによっても、有用な修飾LOSが得られる。リピドAの脂肪トランスフェラーゼ遺伝子をノックアウトしてもよい[46]。
【0082】
少なくとも1つの第一級O−結合脂肪酸を、LOSから除去してもよい[47]。LOS1分子あたりの第二級アシル鎖の数を減らしたLOSも使用することができる[48]。このLOSはα鎖を有しなくてもよい。
【0083】
このLOSは、GlcNAc−Hepホスホエタノールアミン−KDO−リピドAを含むことができる[49]。
【0084】
(髄膜炎菌莢膜糖)
髄膜炎菌HmbR抗原は、1つ以上の髄膜炎菌莢膜糖と組み合わせて用いることができ、この糖は通常キャリア蛋白質と結合体化させることになる。
【0085】
血清群Cに対する結合体化一価ワクチンは、ヒトへの使用が承認されており、MENJUGATETM、MENINGITECTM、およびNEISVAC−CTMが挙げられる。血清群A+Cに由来する結合体の混合物は公知であり[50、51]、血清群A+C+W135+Yに由来する結合体の混合物も報告されており[52乃至55]、2005年にMENACTRATM製品として承認されている。
【0086】
本発明の組成物は、髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYのうちの1、2、3、または4つ、例えば、A+C、A+W135、A+Y、C+W135、C+Y、W135+Y、A+C+W135、A+C+Y、A+W135+Y、A+C+W135+Yなど、に由来する莢膜糖の1つ以上の結合体を含むことができる。血清群A、C、W135およびYの4つすべてに由来する糖を含む成分が理想的である。
【0087】
血清群Aの髄膜炎菌の莢膜糖は、C3位およびC4位において部分的O−アセチル化を有する、(α1→6)−結合N−アセチル−D−マンノサミン−1−ホスフェートのホモポリマーである。C−3位でのアセチル化は、70乃至95%とすることができる。糖を精製するために使用される条件は、(例えば、塩基性条件下において)脱−O−アセチル化を生じ得るが、このC−3位にOAcを保持することは有用である。一部の実施態様では、血清群Aの糖におけるマンノサミン残基の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)は、C−3位においてO−アセチル化される。アセチル基をブロッキング基で置き換えることで、加水分解を防ぐことが可能であり[56]、そのような修飾された糖は、依然として、本発明の意図する範囲内の血清群Aの糖である。
【0088】
血清群Cの莢膜糖は、(α2→9)−結合シアル酸(N−アセチルノイラミン酸、または「NeuNAc」)のホモポリマーである。糖構造は、
【0089】
【化1】

として記述される。大部分の血清群Cの菌株は、シアル酸残基のC−7位および/またはC−8位にO−アセチル基を有するが、臨床単離株の約15%は、これらのO−アセチル基が欠損している[57、58]。OAc基の存在または欠損により特有のエピトープが生じ、糖に対する抗体結合の特異性は、O−アセチル化(OAc+)菌株および脱−O−アセチル化(OAc−)菌株に対するその殺菌活性に影響を及ぼすと考えられる[59乃至61]。本発明で使用される血清群Cの糖は、OAc+またはOAc−菌株から調製することができる。承認されているMenC結合体化ワクチンとしては、OAc−(NEISVAC−CTM)およびOAc+(MENJUGATETMおよびMENINGITECTM)糖の両方が挙げられる。一部の実施態様では、血清群Cの結合体の産生のための菌株は、例えば、血清型16、血清亜型P1.7a,1などのOAc+菌株である。従って、C:16:P1.7a,1のOAc+菌株を使用することができる。血清亜型P1.1におけるOAc+菌株、例えば、C11菌株なども有用である。
【0090】
血清群W135の糖は、シアル酸−ガラクトース二糖ユニットのポリマーである。血清群Cの糖のように、これは、種々のO−アセチル化を有するが、但し、シアル酸の7位および9位においてである[62]。その構造は、
【0091】
【化2】

として記述される。
【0092】
血清群Yの糖は、二糖繰り返しユニットがガラクトースの代わりにグルコースを含むこと以外は、血清群W135の糖と同様である。血清群W135のように、これは、シアル酸の7位および9位に種々のO−アセチル化を有する[62]。血清群Yの構造は、
【0093】
【化3】

として記述される。
【0094】
本発明に従って用いる糖は、上記のように(例えば、天然莢膜糖に見られるのと同じO−アセチル化パターンで)O−アセチル化されていてもよく、または、これは、糖環の1つ以上の位置で、部分的にまたは全体的に脱−O−アセチル化されていてもよく、または、これは、天然の莢膜糖と比較して、過剰にO−アセチル化されていてもよい。
【0095】
結合体の糖部分は、髄膜炎菌から調製されるような完全長の糖を含んでいてもよく、および/または完全長の糖の断片を含んでいてもよく、即ち、こうした糖は、細菌において見られる天然の莢膜糖より短かくてもよい。従って、こうした糖は、糖の精製中あるいは精製後の、結合体化の前に行う脱重合反応により、脱重合させることができる。脱重合により、糖の鎖長は減少する。脱重合方法の1つは、過酸化水素を使用するものである[52]。過酸化水素を、(例えば、1%の最終H濃度が得られるように)糖に添加し、次いで所望の鎖長の減少が達成されるまで、この混合物を(例えば、約55℃で)インキュベートする。別の脱重合方法は、酸加水分解を行うものである[53]。他の脱重合方法については、当技術分野において公知である。本発明による使用のための結合体を調製するために使用する糖は、これらの脱重合方法のいずれによっても入手可能と考えられる。脱重合は、免疫原性に最適な鎖長を与えるため、および/または物理的に扱いやすいように糖の鎖長を減少させるために用いることができる。一部の実施態様では、糖は、以下の範囲の平均重合度(Dp:degrees of polymerisation):A=10乃至20、C=12乃至22、W135=15乃至25、Y=15乃至25、を有する。Dpではなく分子量に関して言えば、有用な範囲は、すべての血清群に対して、<100kDa、5kDa乃至75kDa、7kDa乃至50kDa、8kDa乃至35kDa、12kDa乃至25kDa、15kDa乃至22kDaである。
【0096】
一部の実施態様では、髄膜炎菌血清群A、C、W135、およびYのそれぞれに由来する糖の平均分子量は、特にMALLSによって特定される場合に、50kDa超、例えば、≧75kDa、≧100kDa、≧110kDa、≧120kDa、≧130kDaなどであり得[63]、最大1500kDaにまで及ぶことがある。例えば、MenAの糖は、50乃至500kDa、例えば、60乃至80kDaの範囲であり得、MenCの糖は、100乃至210kDaの範囲であり得、MenW135の糖は、60乃至190kDa、例えば、120乃至140kDaの範囲であり得、および/またはMenYの糖は、60乃至190kDa、例えば、150乃至160kDaの範囲であり得る。
【0097】
組成物における血清群あたりの髄膜炎菌の糖の質量は、通常、1μg乃至20μgの間であり、例えば、血清群あたり2乃至10μgの間、または約4μg、または約5μg、または約10μgとなる。2つ以上の血清群に由来する結合体が含まれる場合、これらは、実質的に等しい質量において存在し得、例えば、各血清群の糖の質量は、お互いの+10%内である。同じ比率の代わりに、2倍の質量の血清群Aの糖を使用してもよい。従って、ワクチンは、10μgのMenAの糖と、それぞれ5μgのMenC、W135およびYの糖を含むことができる。
【0098】
好ましいキャリア蛋白質は、ジフテリア、破傷風毒素などの細菌毒素、またはトキソイド、或いはそれらの変異体である。これらは、結合体ワクチンにおいて一般的に使用される。CRM197ジフテリア毒素変異体は、特に好ましい[64]。他の好適なキャリア蛋白質としては、N.meningitidis外膜蛋白質複合体[65]、合成ペプチド[66、67]、熱ショック蛋白質[68、69]、百日咳菌蛋白質[70、71]、サイトカイン[72]、リンホカイン[72]、ホルモン[72]、成長因子[72]、様々な病原菌由来抗原に由来する複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工蛋白質[73]、例えば、N19[74]、H.influenzae由来の蛋白質D[75乃至77]、ニューモリシン[78]またはその無毒の誘導体[79]、肺炎球菌表面蛋白質PspA[80]、鉄取込蛋白質[81]、C.difficile由来の毒素AまたはB[82]、組換えPseudomonas aeruiginosaエキソプロテインA(rEPA)[83]、などが挙げられる。単一のキャリア蛋白質は、複数の異なる血清群に由来する糖を有することができるが[84]、このアレンジメントは好ましくない。組成物が2つ以上の髄膜炎菌血清群に由来する結合体を含む場合、様々な結合体は、異なるキャリア蛋白質を使用し得るか(例えば、一方の血清群はCRM197で、他方は破傷風トキソイドを使用するなど)、あるいは同じキャリア蛋白質を使用し得る(例えば、2つの血清群に由来する糖を別々にCRM197に結合体化させ、次いで組み合わせる)。
【0099】
1:5(即ち、過剰な蛋白質)乃至5:1(即ち、過剰な糖)の間の糖:蛋白質比(w/w)、例えば、1:2乃至5:1の間の比率および1:1.25乃至1:2.5の間の比率を有する結合体を用いることができる。参考文献85に記載されているように、混合物における異なる髄膜炎菌血清群結合体は、異なる糖:蛋白質の比率を有することができ、例えば、あるものは1:2乃至1:5の間の比率を有することができ、別のものは5:1乃至1:1.99の間の比率を有する。
【0100】
キャリア分子は、直接またはリンカーを介して、共有結合によりグルカンに結合体化されていてもよい。例えばアジピン酸リンカーなどの様々なリンカーが公知であり、これは、(例えば、アミノ化によって糖に導入された)遊離−NH基とアジピン酸とを(例えば、ジイミド活性化を用いて)カップリングさせ、次いで、得られた糖−アジピン酸中間体に蛋白質をカップリングさせることによって形成され得る[86、87]。別の好ましいタイプの結合は、カルボニルリンカーであり、これは、修飾グルカンの遊離ヒドロキシル基とCDIとを反応させ[88、89]、次いで蛋白質と反応させてカルバメート結合を形成することによって形成され得る。他のリンカーとしては、β−プロピオンアミド[90]、ニトロフェニル−エチルアミン[91]、ハロアシルハライド[92]、グリコシド結合[93]、6−アミノカプロン酸[94]、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP:N−succinimidyl−3−(2−pyridyldithio)−propionate)[95]、アジピン酸ジヒドラジドADH[96]、C乃至C12部分[97]、などが挙げられる。カルボジイミド縮合も使用することができる[98]。
【0101】
参考文献99に記載されているように、混合物は、一方として糖/蛋白質の直接の結合を有する結合体と、他方としてリンカーを介した結合を有する結合体とを含むことができる。このアレンジメントは、特に、異なる髄膜炎菌血清群に由来する糖結合体を使用する場合に適用され、例えば、MenAの糖とMenCの糖を、リンカーを介して結合体化してもよいし、あるいは、MenW135の糖とMenYの糖を、キャリア蛋白質に直接結合体化してもよい。
【0102】
組成物がMenA、C、W、および/またはY結合体のうちの1つ以上を含む場合、一部の実施態様では、これは、好都合にも、さらにHib(B型Hameophilus influenzae莢膜糖)結合体をも含むことができる。組成物が、2つ以上の髄膜炎菌血清群に由来する糖を含む場合、血清群あたりの平均糖質量が存在する。それぞれ実質的に等しい質量の血清群が使用される場合、平均質量は、それぞれの個々の質量と同じとなるが、等しくない質量が用いられる場合は、その平均は異なり、例えば、MenACWY混合物において10:5:5:5μg量が使用される場合、平均質量は、血清群あたり6.25μgである。Hib糖も含まれる場合、一部の実施態様では、その質量は、血清群あたりの髄膜炎菌の糖の平均質量と実質的に同じとなる。一部の実施態様では、Hib糖の質量は、血清群あたりの髄膜炎菌の糖の平均質量よりも多くなる(例えば、少なくとも1.5倍)。一部の実施態様では、Hib糖の質量は、血清群あたりの髄膜炎菌の糖の平均質量よりも少なくなる(例えば、少なくとも1.5倍)[100]。
【0103】
(HmbR提示のための非髄膜炎菌)
本発明の一部の実施態様では、髄膜炎菌HmbR抗原を、例えばE.coli菌によるなど非髄膜炎菌によって提示させる。
【0104】
即ち、本発明は、髄膜炎菌HmbRを発現する非髄膜炎菌を提供する。この細菌は、通常グラム陰性菌である。これは、理想的にはEscherichia coli菌である。この菌は、異種HmbR抗原を構成的に発現することができ、または、hmbR遺伝子を誘導プロモータの制御下に置くことができる。
【0105】
この菌株は欠損Tol−Pal系を有することがあり、その結果、正常な増殖中に自然に小胞を放出し、このため、界面活性剤抽出などの必要がなくなる。E.coliのそのようなTol−Pal変異体については、例えば、参考文献101および102に開示されており、例えば、tolRノックアウトを有する、例えば、機能性TolR蛋白質を発現しない菌株がある。
【0106】
また、本発明は、そのような非髄膜炎菌から調製される外膜小胞およびそのような非髄膜炎菌由来の小胞を作製する方法を提供する。
【0107】
(医薬組成物)
本発明を用いて患者に投与するための医薬組成物を調製することができる。これは、通常、医薬用として許容可能なキャリアを含むことになる。医薬用として許容可能なキャリアについての詳細な説明は、参考文献103において入手可能である。
【0108】
有効な投与容量は日常的に決定することができるが、この組成物の典型的なヒト用量は、例えば、筋肉内注射では約0.5mlの容量を有する。RIVM OMVベースのワクチンは、大腿部または上腕部への筋肉内注射により、0.5ml容量で投与された[104]。MeNZBTMは、大腿部の前外側または腕の三角筋部への筋肉内注射により、0.5mlで投与される。同様の用量を、他の送達経路に使用してもよく、例えば、噴霧のための鼻腔内OMVベースのワクチンは、スプレーあたり約100μlまたは約130μlの容量を有し得るので、約0.5mlの全用量を与えるために4回のスプレーが施される。
【0109】
本発明の組成物のpHは、通常6乃至8の間であり、より好ましくは6.5乃至7.5の間(例えば、約7)である。RIVM OMVベースのワクチンのpHは、7.4であり[105]、本発明の組成物にはpH<7.5が好ましい。RIVM OMVベースのワクチンは、10mM Tris/HCl緩衝液を使用することによってpHを維持し、本発明の組成物における安定したpHは、緩衝液、例えば、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、またはヒスチジン緩衝液の使用により維持することができる。このため、本発明の組成物は、一般的に、緩衝液を含むことになる。
【0110】
この組成物は、滅菌および/または発熱物質不含とすることができる。本発明の組成物は、ヒトに対して等張性とすることができる。
【0111】
患者への投与のための本発明の組成物は、免疫原性であり、より好ましくはワクチン組成物である。本発明によるワクチンは、予防的(即ち、感染を予防するため)または治療的(即ち、感染を処置するため)のいずれかとすることができるが、通常は、予防的である。ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原(単数または複数)、並びに必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」とは、単一用量または一連の用量の一部のいずれかでその量を個体に投与することが、処置または予防のために有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康状態および身体的状態、年齢、処置される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫システムの能力、所望される防御の度合い、ワクチンの処方、医学的状態に関する処置医の評価、および他の関連要因に応じて変わる。この量は、日常的な試験によって決定することができる比較的広い範囲に入ると予測される。本発明の組成物の抗原含有量は、一般的に、1用量あたりの蛋白質の量として表される。OMVベースの鼻腔内ワクチンの場合、1mlあたり蛋白質約0.9mgの用量が標準的である。
【0112】
本発明の組成物は免疫アジュバントを含むことができる。即ち、例えば、これは、アルミニウム塩アジュバントまたは水中油エマルジョン(例えば、水中スクワレンエマルジョン)を含むことができる。好適なアルミニウム塩としては、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、(例えば、参考文献106の第8および9章参照)、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの塩は任意の適当な形態(例えば、ゲル、結晶性、非晶質など)をとることができ、抗原がこうした塩に吸着することが好ましい。患者に投与するための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは、5mg/ml未満、例えば、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3乃至1mg/mlである。最大0.85mg/用量が好ましい。水酸化アルミニウムアジュバントは髄膜炎菌ワクチンに使用するのに特に適している。
【0113】
髄膜炎菌は生体の種々の部位を侵すので、本発明の組成物は各種の液状形態として調製することができる。例えば、この組成物は溶液または懸濁物としての注射剤として調製することができる。この組成物は、例えば細かいスプレーを用いた吸入器による肺内投与用に調製することができる。この組成物は、例えばスプレーまたは滴剤として鼻腔内、耳内または眼内投与用に調製することができる。筋肉内投与用注射剤が標準的である。
【0114】
本発明の組成物は、特に複数回用量方式においてパッケージングされる場合に、抗菌剤を含んでいてもよい。チオメルサールおよび2−フェノキシエタノールなどの抗菌薬が、一般的にワクチン中に見出されるが、水銀不含の防腐剤を使用するかまたは全く防腐剤を使用しないかのいずれかが好ましい。
【0115】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えば、Tween80などのTween(ポリソルベート)を含んでいてもよい。界面活性剤は、一般的には、低レベル、例えば0.01%未満で存在させる。
【0116】
本発明の組成物は、OMV調製物からの残存界面活性剤(例えば、デオキシコール酸塩)を含んでいてもよい。残存界面活性剤の量は、MenB蛋白質1μg当たり0.4μg未満が好ましい(0.2μg未満がより好ましい)。
【0117】
本発明の組成物がLOSを含む場合、LOSの量は、蛋白質1μg当たり0.12μg未満が好ましい(0.05μg未満がより好ましい)。
【0118】
本発明の組成物は、張度を得るためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含んでいてもよい。NaClの濃度は10±2mg/mlが標準的であり、例えば、約9mg/mlである。
【0119】
(処置方法)
また、本発明は、哺乳動物において免疫反応を惹起するための方法であって、この哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む、方法を提供する。この免疫反応は、好ましくは防御的であり、好ましくは抗体を伴う。この方法は、既にN.meningitidisに対して初回免疫されている患者において、追加免疫反応を引き起こすことができる。
【0120】
この哺乳動物は、好ましくはヒトである。このワクチンが予防的用途のものである場合、ヒトは、好ましくは小児(例えば、幼児または乳児)または十代の若者であり、このワクチンが治療用途のものである場合、ヒトは好ましくは成人である。小児を対象としたワクチンは、例えば安全性、投与量、免疫原性などを評価するために、成人に投与することもできる。
【0121】
また、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物を提供する。この医薬品は、好ましくは、哺乳動物において免疫反応を惹起するために用い(即ち、これは免疫原性組成物である)、更に好ましくはワクチンである。
【0122】
また、本発明は、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、本発明の組成物の使用も提供する。また、本発明は、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、(i)髄膜炎菌HmbR抗原および(ii)髄膜炎菌外膜小胞の使用も提供する。また、本発明は、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、(i)髄膜炎菌HmbR抗原および(ii)以下の髄膜炎菌抗原:fHBP、287、NadA、NspA、NhhA、App、Omp85、LOSのうちの1つ以上の使用を提供する。また、本発明は、哺乳動物において免疫反応を惹起するための医薬品の製造における、(i)髄膜炎菌HmbR抗原および(ii)髄膜炎菌莢膜糖の結合体化糖の使用を提供する。
【0123】
これらの使用および方法は、好ましくは、N.meningitidisが原因の疾患、例えば細菌性(または、より詳細には髄膜炎菌性)髄膜炎、または敗血症の予防および/または処置のためのものである。
【0124】
治療処置の効力を確認する方法の1つは、本発明の組成物の投与後のナイセリア感染症のモニタリングを含む。予防的処置の効力を確認する方法の1つは、この組成物の投与後の抗原に対する免疫反応のモニタリングを含む。本発明の組成物の免疫原性は、それらを試験被験体(例えば、12乃至16ヶ月齢の小児または動物モデル[107])に投与し、次いで血清殺菌抗体(SBA:serum bactericidal antibody)およびELISA力価(GMT)を含む標準的パラメータを測定することにより、求めることができる。こうした免疫反応は、一般的に、この組成物の投与の約4週間後に測定し、この組成物の投与前に測定した値と比較する。少なくとも4倍または8倍のSBA上昇が好ましい。2用量以上の組成物を投与する場合、投与後の測定を2回以上行うことができる。
【0125】
一般的に、本発明の組成物は、被験体に投与された後、血清殺菌抗体反応を誘導することができる。こうした反応は、マウスにおいて好都合に測定されるものであり、ワクチン効力の標準的指標である。血清殺菌活性(SBA:serum bactericidal activity)は、補体によって媒介される細菌死滅を評価するものであり、ヒトの補体またはウサギ乳仔の補体を用いてアッセイすることができる。WHO基準は、ワクチンが、90%より多くのレシピエントにおいて、少なくとも4倍のSBA上昇を誘導することを要求している。MeNZBTMは、第3の用量の投与の4乃至6週間後に、SBAにおいて4倍の上昇を惹起する。
【0126】
好ましい組成物は、ヒト被験体患者において、満足のいく割合の被験体に対して血清防御の基準より優れた抗体力価をもたらすことができる。その力価より上では宿主が抗原に対して血清変換されると考えられる、関連抗体力価を有する抗原は周知であり、そのような力価は、WHOなどの機関により公開されている。被験体の統計学的に有意なサンプルの80%超、より好ましくは90%超、さらにより好ましくは93%超、最も好ましくは96乃至100%が血清変換されることが好ましい。
【0127】
本発明の組成物は、一般的に、患者に直接投与されることになる。直接的送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔へ)により、または任意の他の好適な経路により遂行することができる。本発明を用いて全身性免疫および/または粘膜性免疫を惹起することができる。大腿部または上腕への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介することができるが、代わりに無針注射を用いてもよい。標準的な筋肉内用量は0.5mlである。
【0128】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールとすることができる。複数回用量は、初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールにおいて用いることができる。初回免疫用量スケジュールに続いて、追加免疫用量スケジュールを実施することができる。初回免疫投薬間(例えば、4乃至16週間)、および初回免疫と追加免疫との間の好適なタイミングは、日常的に決定することができる。OMVベースのRIVMワクチンは、0.2、および8ヶ月あるいは0、1、2、および8ヶ月でのワクチン接種による3用量または4用量の初回免疫スケジュールを用いて試験した。6週間の間隔で、3用量としてMeNZBTMを投与する。
【0129】
本発明の組成物を用いて髄膜炎菌の2以上の高毒性系統に対する殺菌抗体反応を誘導することができる。特に、これは、以下の3つの高毒性系統:(i)クラスターA4、(ii)ET5複合体、および(iii)系統3、のうちの2または3つに対して殺菌反応を誘導することができることが好ましい。さらに、これは、高毒性系統のサブグループI、サブグループIII、サブグループIV−1、またはET−37複合体のうちの1つ以上に対する殺菌抗体反応、並びに他の系統、例えば高侵襲性系統、に対する殺菌抗体反応を誘導することができる。これは、この組成物がこれら高毒性系統内の髄膜炎菌のそれぞれおよびすべての菌株に対して殺菌抗体を誘導することができることを必ずしも意味するものではなく、この組成物によって誘導される抗体は、例えば、特定の高毒性系統のうちの4つ以上の髄膜炎菌株の任意の所与の群に対し、この群の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)に対して殺菌性である。好ましい群の菌株としては、以下の国:GB、AU、CA、NO、IT、US、NZ、NL、BRおよびCUのうちの少なくとも4ヶ国において単離された菌株が挙げられる。上記血清は、好ましくは、少なくとも1024(例えば、210、211、212、213、214、215、216、217、218またはそれ以上、好ましくは、少なくとも214)の殺菌力価を有し、例えば、この血清は、1/1024に希釈された場合、特定の菌株の試験細菌の少なくとも50%を殺すことができる。
【0130】
有用な組成物は、血清群Bの髄膜炎菌の以下の菌株:(i)クラスターA4由来の菌株961−5945(B:2b:P1.21,16)および/または菌株G2136(B:−);(ii)ET−5複合体由来の菌株MC58(B15:P1.7,16b)および/または菌株44/76(B:15:P1.7,16);(iii)系統3由来の菌株394/98(B:4:P1.4)および/または菌株BZ198(B:NT:−)、に対して殺菌反応を誘導することができる。より好ましい組成物は、菌株961−5945、菌株44/76、および菌株394/98に対する殺菌反応を誘導することができる。
【0131】
菌株961−5945および菌株G2136は、両方ともNeisseria MLST参考株である[参考文献108のid 638および1002]。菌株MC58は広く入手可能であり(例えば、ATCC BAA−335)、参考文献109において配列決定された菌株であった。菌株44/76は広く用いられ、特徴付けられており(例えば、参考文献110)、Neisseria MLST参考株の1つである[参考文献108のid 237;参考文献15の表2の32行]。菌株394/98は、もともとは1998年にニュージーランドにおいて単離されたものであり、この菌株を使用したいくつかの研究が公表されている(例えば、参考文献111および112)。菌株BZ198は、別のMLST参考株である(参考文献108のid 409;参考文献15の表2の41行)。
【0132】
(更なる抗原性成分)
N.meningitidisに由来する抗原を含むことに加えて、組成物は、更なる病原菌に由来する抗原を含んでいてもよい。例えば、この組成物は、以下の更なる抗原のうちの1つ以上を含むことができる:
−Streptococcus pneumoniaeに由来する抗原、例えば、糖(通常、結合体)
−表面抗原HBsAgなどのB型肝炎ウイルス由来の抗原、
−Bordetella pertussisに由来する抗原、例えば、B.pertussisに由来する百日咳ホロ毒素(PT:pertussis holotoxin)および糸状性赤血球凝集素(FHA:filamentous haemagglutinin)、また、任意選択的に、ペルタクチン並びに/或いは凝集原2および凝集原3との組み合わせ、
−ジフテリアトキソイドなどのジフテリア抗原、
−破傷風トキソイドなどの破傷風抗原、
−通常、結合体化された、Haemophilus influenzae B(Hib:Haemophilus influenzae B)に由来する糖抗原、並びに
−不活化されたポリオウイルス抗原。
【0133】
ジフテリア抗原がこの組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが好ましい。従って、DTPの組み合わせが好ましい。
【0134】
Hib糖が含まれる場合(通常、結合体として)、この糖部分は、多糖(例えば、細菌から精製されるような完全長ポリリボシルリビトールホスフェート(PRP:polyribosylribitol phosphate))であってもよいが、精製された糖を断片化して、例えば加水分解によって、オリゴ糖(例えば、MWは約1乃至約5kDa)とすることも可能である。組成物中のHib結合体の濃度は、通常、0.5μg乃至50μg、例えば、1乃至20μg、10乃至15μg、12乃至16μg、などの範囲となる。この量は、約15gまたは、一部の実施態様では約12.5μgとすることができる。5μg未満の質量を、好適とすることができ[113]、例えば、1乃至5μgの範囲、2乃至4μgの範囲、または約2.5μgとすることができる。上記のように、Hib糖および髄膜炎菌の糖を含む組み合わせでは、前者の用量は、後者の用量に基づいて選択することができる(特に、複数の髄膜炎菌血清群の場合、それらの平均質量による)。Hib結合体のさらなる特性は、キャリア蛋白質の選択(例えば、CRM197または破傷風トキソイド)、結合、比率などを含め、髄膜炎菌性結合体に対して上記において開示した通りである。
【0135】
S.pneumoniae抗原が含まれる場合、これは、ポリペプチドまたは糖であってもよい。結合体莢膜糖は、肺炎球菌に対して免疫するために特に有用である。この糖は、細菌からのこの糖の精製の際に生じるサイズを有する多糖であってもよく、またはそのような多糖の断片化により得られるオリゴ糖であってもよい。7価のPREVNARTM製品では、例えば、6つの糖は完全な状態の多糖として与えられ、残りの1つ(18C血清型)は、オリゴ糖として与えられる。組成物は、以下の肺炎球菌の血清型のうちの1つ以上に由来する莢膜糖を含むことができる:1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23Fおよび/または33F。組成物は、複数の血清型、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23またはそれ以上の血清型を含むことができる。7価、9価、10価、11価および13価の結合体の組み合わせは、23価の結合体化されていない組み合わせと同様に、当技術分野において既に公知である。例えば、10価の組み合わせは、血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fに由来する糖を含むことができる。11価の組み合わせは、さらに、血清型3に由来する糖を含むことができる。12価の組み合わせは、10価の混合物に、血清型6Aおよび19A、6Aおよび22F、19Aおよび22F、6Aおよび15B、19Aおよび15B、r22Fおよび15Bを加えることができる。13価の組み合わせは、11価の混合物に、血清型19Aおよび22F、8および12F、8および15B、8および19A、8および22F、12Fおよび15B、12Fおよび19A、12Fおよび22F、15Bおよび19A、15Bおよび22F、などを加えることができる。肺炎球菌結合体のさらなる特性は、キャリア蛋白質の選択(例えば、CRM197または破傷風トキソイド)、結合、比率などを含め、髄膜炎菌性結合体に対して上記において開示した通りである。組成物が2つ以上の結合体を含む場合、各結合体は、同じキャリア蛋白質を使用してもよいし、または異なるキャリア蛋白質を使用してもよい。参考文献114に、多価性肺炎球菌結合体ワクチンにおいて異なるキャリア蛋白質を使用する場合の考えられる利点が記載されている。
【0136】
(一般論)
本発明の実施においては、特に示さない限り、当該分野の技術の範囲内にある、化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来方法を用いる。このような技術については、文献で十分に説明されている。例えば、参考文献115乃至121等を参照されたい。
【0137】
用語「〜を含む(comprising)」は、「〜を含む(including)」および「〜からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXから成り得るか、または何かの追加、例えば、X+Y、を含み得る。
【0138】
数値xとの関連において、用語「約」は任意であり、例えば、x±10%を意味する。
【0139】
本発明が「エピトープ」に関する場合、このエピトープはB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープとすることができるが、通常はB細胞エピトープとなる。このようなエピトープは、実験的に(例えば、PEPSCAN[122、123]または同様の方法を使用して)特定することができるか、或いは、(例えば、Jameson−Wolf抗原性指数[124]、マトリックスをベースとするアプローチ[125]、MAPITOPE [126]、TEPITOPE[127、128]、神経ネットワーク(neural network)[129]、OptiMer & EpiMer[130、131]、ADEPT[132]、Tsites[133]、親油性[134]、抗原性指数[135]、または参考文献136乃至140に開示されている方法などを使用して)推定することができる。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位によって認識され、これに結合する抗原の一部分であり、これは「抗原決定基」と呼ばれることもある。
【0140】
本発明が「精製」抗原を用いる場合、この抗原は自然環境から分離される。例えば、この抗原は、存在するその他の精製抗原以外の他の髄膜炎菌成分を実質的に含んでいないことになる。精製抗原の混合物は、通常、2つの抗原が自然界では混合状態で存在していても、各抗原を別々に精製し、次いでこれらを再び組み合わせることで調製することになる。
【0141】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性パーセントに言及することは、アラインメントされたときに、そのパーセンテージのアミノ酸が、その2つの配列を比較して同じであることを意味する。このアラインメントおよび相同性パーセントまたは配列同一性パーセントは、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、参考文献141の7.7.18節に記載されているものを使用して決定することができる。好ましいアラインメントは、ギャップオープンペナルティを12、ギャップ伸長ペナルティを2、BLOSUMマトリクスを62とするアフィン・ギャップ検索を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。このSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献142に開示されている。
【0142】
語句「実質的に」は、「完全に」を排除するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合もある。必要に応じて、語句「実質的に」は、本発明の定義から省略される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、デスフェラールの存在(正方形)または非存在(菱形)下におけるMC58(図1A)またはM12391(図1B)の培養物の増殖曲線(分単位の培養時間に対するOD)を示す。
【図2】図2は、抗HmbR血清を用いたウェスタンブロットを示す。4つのレーンは、左から右へ、MC58、デスフェラール;MC58、デスフェラール;M1239、デスフェラール;M1239、デスフェラールである。矢印はHmbRを示す。
【図3】図3は、図2と同じであるが、血清は抗Tbp2血清である。矢印はTbp2を示す。
【図4】図4は、MC58のFACS分析を示す。3つの列は種々の標識抗体についてであり、左から右へ、免疫前;抗HmbR−2;抗Tbp2である。2つの行はデスフェラールの非存在(上段)または存在(下段)下における細菌の増殖に関するものである。
【図5】図5は、図4と同じであるが、菌株M1239に関するものである。
【図6】図6は、(1および8)野生型MC58;(2)内因性hmbR遺伝子をノックアウトしたMC58;(3乃至7)0、0.001、0.01、0.1または1mMのIPTGを用いたIPTG誘導プロモータにより制御される外因性hmbR遺伝子を有する上記ノックアウト菌株;(9)デスフェラールを用いて増殖させた野生型MC58;および(10)野生型NZ菌株、におけるHmbR発現を示すウェスタンブロットである。
【図7】図7は、GB013菌株におけるHmbR発現を示すウェスタンブロットである。wt=野生型GB013、k/o=GB013ΔhmbR、c=GB013ΔhmbR−chmbR。各菌株とも0.5または1μgの蛋白質を分析した。
【図8】図8は、各種菌株由来の外膜物質のウェスタンブロットである。レーン1乃至3は、種々に希釈した組換えHmbR−2を含む。レーン5は、異種の髄膜炎菌hmbR遺伝子を有するE.coli BL21株である。レーン12は補完GB013株である。他のレーンは対照である。
【図9】図9は、E.coli BL21の菌株の自己誘導増殖後に得られた画分のウェスタンブロットである。レーン2乃至6はΔtolR株に関するものであり、レーン8乃至12はDE3*株に関するものである。レーン4、6、9および10はHmbRの強いバンドを示す。
【図10】図10は、E.coliのΔtolR株におけるHmbR発現のFACS分析を示す。HmbR発現株に由来するピークは右側にある。
【図11】図11は、各種菌株由来の小胞のウェスタンブロットである。レーン1乃至3は種々に希釈した組換えHmbR−2を含む。レーン5、7および9は、漸減希釈した、HmbRを発現するE.coliのΔtolR株からのものである。レーン11および12はTolR修飾なしのBL21株からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0144】
(発明を実施するための様式)
多くの髄膜炎菌単離株はhmbR遺伝子を有しない。さらに、hmbR菌株の遺伝子発現は、DNAレベルの可逆性変化の結果としてのオンの相(on phase)とオフの相(off phase)との間の遺伝子発現の変動である、相変動を起こしやすい[143]。相変動は多くの病原菌における表面露出性毒性因子の発現を制御する共通の機構である。
【0145】
このhmbR遺伝子は系統III菌株のパネルにおいて12株のうち10株で検出されている。10株全てにおいて、この遺伝子はMC58菌株で保存されていた。
【0146】
hmbR遺伝子はNZ05/33株からクローニングした。リーダーペプチドを含むコード配列は、791アミノ酸ポリペプチド(配列番号19)をコードしている2,373bpおよびストップ(配列番号18)である。この配列のいくつかの誘導体が作製されて以下が発現された:(i)C末端ポリヒスチジンタグに融合させた、配列番号19の24乃至170番目アミノ酸(即ち、配列番号20)を有する「HmbR−プラグ」;(ii)C末端ポリヒスチジンタグに融合させた、配列番号19の171乃至791番目のアミノ酸(即ち、配列番号21)を有する「HmbR−ダウン」;(iii)C末端ポリヒスチジンタグに融合させ、リーダーペプチドを除外した、配列番号19の24乃至791番目のアミノ酸(即ち、配列番号22)を有する「HmbR−2」;および(iv)C末端ポリヒスチジンタグに融合させた、配列番号19の1乃至791番目のアミノ酸を有する「HmbR−3」。
【0147】
これらのポリペプチドをコードしているベクターをE.coli BL21細胞に形質転換して発現させた。発現したポリペプチドを精製し、マウスを免疫化するのに使用した。HmbR−プラグは可溶性で、MWは16kDaであった。HmbR−ダウン(68kDa)は、不溶性であったが、免疫化のために8M尿素で可溶化することができた。HmbR−2(85kDa)は、不溶性であったが、免疫化のために2M尿素で可溶化することができた。これら3つの精製ポリペプチドを用いてFreundの完全アジュバント(FCA)と組み合わせてマウスを免疫化し、免疫血清をSBAによって試験した。HmbR−プラグとHmbR−ダウンとの混合物もこのようにして試験した。
【0148】
HmbRポリペプチドはいずれもマウスにおいて殺菌抗体を誘導することができなかった(SBA力価は全て<16)。さらに、上記血清では同種菌株NZ05/33においてHmbRの表面露出を検出できなかった(FACSアッセイ)。しかしながら、蛋白質抽出物では、この血清は、(M01−240149を除く)hmbR株において蛋白質を検出することができた。
【0149】
SBA活性が無いにもかかわらず、更なる実験を行った。25μMのデスフェラールを存在させることで細菌の鉄利用度を制限して増殖させた細菌に対して、抗HmbR抗血清を試験した。2つの菌株、即ち、hmbR株(MC58)およびhmbR株(M1239)を増殖させた。これらの菌株はデスフェラールの存在下では増殖が極めてよくなかった(図1Aおよび1B)。
【0150】
ウェスタンブロットおよびFACS分析を行って発現を評価した。比較のために、Tbp2を陽性対照として用いた。というのは、これまでに、この蛋白質の発現は低鉄状態で誘導されると報告されていたからである。
【0151】
ウェスタンブロット分析から、MC58におけるHmbRの発現は低鉄状態で増加するが、M1239ではいずれの状態でもみられないことが分かった(図2)。これに対して、Tbp2は、低鉄状態でいずれの菌株によっても発現された(図3)。FACS分析では、免疫接近可能なHmbRの発現はMC58では低鉄状態で増加した(図4)が、M1239ではそうではなかった(図5)。
【0152】
上記に報告したSBAの結果と対照的に、低鉄状態で増殖する菌株に対して血清を試験したところ、殺菌力価の増加がみられた。この抗HmbR血清を、デスフェラールの非存在(OD 0.25における細菌)または存在(OD 0.16における細菌)下で増殖させたMC58に対して試験したところ、力価は陽性対照の殺菌性抗血清に比べて以下の通りであった。
【0153】
【表1】

更なる実験から、上記種々のHmbR誘導体(またはそれらの組合せ)に対する血清は、デスフェラール不含培地で増殖させた場合のMC58株に対する殺菌活性を示さないが、25μMデスフェラールの存在下で増殖させたMC58に対してはある程度の殺菌活性を示すことが確認された。デスフェラール増殖細菌に対するバックグラウンドを超える力価は、HmbR−2に対する血清を用いて認められた。
【0154】
これらの実験は、抗HmbR抗体が髄膜炎菌に対して殺菌性であり得るという最初の報告である。従って、これまでの報告とは対照的に、抗HmbR抗体は、髄膜炎菌による感染および疾患に対して、特に、HmbRが細菌表面に発現される増殖相において、実際に予防の役割を果たすことができる。従って、HmbRは、髄膜炎菌ワクチンにおいて、特に、1つ以上の更なる髄膜炎菌抗原と組み合わせて使用する場合に、有用であるとすることができる。操作された細菌においてその相変動性が除去されることによってHmbR小胞が容易に調製できる菌株が得られる。
【0155】
デスフェラールを用いずにHmbRの発現を増加させる他の方法が試みられた。ヒトヘモグロビン存在下で増殖させるとHmbR発現が増加する可能性があり[143]、Furリプレッサを発現しないfur変異体も最大量のHmbRを発現する可能性がある。これらの2つの状況におけるHmbR発現のレベルを測定し、SBAも行った。
【0156】
4μMのヒトヘモグロビンの存在下で増殖させても、デスフェラールを使用した際にみられるレベルを超えてHmbR発現のレベルを向上することはなかった。従って、抗HmbR血清でのSBA力価は低かった。
【0157】
fur変異体は、良好なレベルのHmbR発現を示したが、この菌株は、血清なしに補体により殺されるのでSBAに用いることができなかった。
【0158】
また、鉄キレート剤を用いた2つの連続する培養工程ではMC58についてのSBA力価は改善しなかった。NZ株ではわずかな増加が見られたが、この増加は(少なくとも部分的に)このアッセイの洗浄工程によるものであり得る。この工程は、時としてこの細菌を弱体化させることがある。
【0159】
全体として、これらの結果はHmbR発現の高レベルと殺菌の高レベルとの相関関係を裏付けるものである。
【0160】
さらなる実験では、MC58株を操作してその内因性hmbR遺伝子を除去した。このノックアウトした遺伝子は、IPTG誘導プロモータによって制御される外因性hmbR遺伝子によって補完した。図5から、この操作した菌株が野生型菌株よりもずっと高いレベルのHmbRを発現することができたことが分かる:例えば、レーン6および7。また、FACSを利用し、HmbR−2、HmbR−ダウンおよびHmbR−プラグに対する血清を用いて表面発現を検討した。このFACSによる実験から、野生型菌株の表面の発現は極めて低いこと、ノックアウト菌株の表面の発現はみられないこと、IPTGなしに増殖させたノックアウト菌株の表面の発現はみられないが、IPTG誘導後の発現は良好であることが確認された。同様な高レベルは0.1および1mMのIPTG誘導でみられた。
【0161】
これらの菌株に対するSBA実験から、HmbRの発現および表面露出が高いと、菌株はさらに補体に対して感受性になることが分かった。高IPTGレベルでは、細菌は補体単独によって殺された(ウサギまたはヒト)が、IPTGは野生型菌株には影響を示さなかった。実験から、HmbR高発現菌株は補体単独に結合し、この結合は用いた抗血清に依存しないことが分かった。
【0162】
また、ノックアウトおよび高発現菌株は、バックグラウンドとしてGB013株を用いても得られ、ノックアウト菌株(GB013ΔhmbR)および補完された菌株(GB013ΔhmbR−chmbR)が得られた。補完遺伝子はNZ株由来のものとした。これらのGB013をベースとした菌株は、発現、FACSおよびSBAについてMC58をベースとした菌株と同様の結果を示した。
【0163】
全体として、上記データから、ウサギ/ヒト補体の存在下で、細菌により忍容され得るHmbR発現の臨界閾値が存在することが示唆される。
【0164】
OMVはGB013ベース株から調製した。図7は、抗HmbR−2ポリクロナール血清を用いた上記3つの菌株からのOMVのウェスタンブロットを示したものである。OMV調製物中の蛋白質濃度は0.272mg/ml(wt)、0.504mg/ml(ΔhmbR)および0.457mg/ml(補完型)であった。野生型バックグラウンド菌株に比してHmbRの高発現が図7で明らかである。
【0165】
更なる研究において、E.coli株を操作してNZ株由来の髄膜炎菌HmbRを発現させた。BL21株(BL21DE3*)をpET21b hmbRで形質転換した。ウェスタンブロットによってこの菌株がHmbRを発現することが確認された(例えば、図8のレーン5)。また、E.coliのΔtolR株[101、102]をpET21b hmbRで形質転換して、増殖中にHmbR含有小胞を放出する菌株を得た(例えば、図9のレーン4および6)。FACSによっていずれの菌株においてもHmbRの発現が確認された。例えば、ΔtolR株についての図10参照。ΔtolR株から調製した小胞はHmbRを含有することが確認された(例えば、図11のレーン5)。
【0166】
髄膜炎菌GB013株およびE.coli株由来のOMVは免疫化に用いられる。
【0167】
本発明を、単に例示目的で上に説明しており、本発明の範囲および精神の範囲内に留まりながら変更を加えることができることは理解される。
【0168】
(参考文献)
【0169】
【数1】

【0170】
【数2】

【0171】
【数3】

【0172】
【数4】

【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)髄膜炎菌HmbR抗原および
(ii)髄膜炎菌外膜小胞
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
髄膜炎菌HmbR抗原を高発現する、操作された髄膜炎菌。
【請求項3】
発現が相変動性ではないhmbR遺伝子を含む、操作された髄膜炎菌。
【請求項4】
HmbRを構成的に発現する、操作された髄膜炎菌。
【請求項5】
誘導プロモータの制御下にhmbR遺伝子を含む、操作された髄膜炎菌。
【請求項6】
前記髄膜炎菌HmbR抗原を含む、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の細菌から調製される、外膜小胞。
【請求項7】
髄膜炎菌膜小胞を作製する方法であって、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の髄膜炎菌を破壊して該小胞を得る工程を含む、方法。
【請求項8】
(i)HmbR抗原および
(ii)fHBP、287、NadA、NspA、NhhA、App、Omp85およびLOSからなる群より選択される1つ以上の髄膜炎菌抗原
を含む、免疫原性組成物。
【請求項9】
(i)髄膜炎菌HmbR抗原および
(ii)血清群A、C、W135またはY由来の1つ以上の結合体化髄膜炎菌莢膜糖
を含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
式:
NH−A−[−X−L−]−B−COOH
のアミノ酸配列であって、式中、Xは髄膜炎菌抗原配列を含むアミノ酸配列であり、Lは任意選択的なリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意選択的なN末端アミノ酸配列であり、Bは任意選択的なC末端アミノ酸配列であり、nは2以上の整数であり、但し、少なくとも1つのX部分はHmbR抗原であるものとする、アミノ酸配列を含む、ハイブリッドポリペプチド。
【請求項11】
X部分がfHBP、287、NadA、NspA、NhhA、AppおよびOmp85からなる群より選択される、請求項6に記載のハイブリッドポリペプチド。
【請求項12】
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび
(iv)HmbR抗原
の混合物を含む、免疫原性組成物。
【請求項13】
前記HmbRが配列番号7と少なくとも80%の配列同一性を有し、および/または配列番号7由来のエピトープを含むアミノ酸配列を含む、前述の請求項のいずれかに記載の組成物、細菌、小胞、方法またはポリペプチド。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−512240(P2012−512240A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541638(P2011−541638)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007964
【国際公開番号】WO2010/070453
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】