説明

ヘルペスウイルスを用いた癌処置のための組成物および方法

【課題】複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルス、およびこれを利用した治療薬を提供する。
【解決手段】ULまたはUS領域に存在するUS3またはUL56遺伝子を含む、複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルス(好ましくは、単純ヘルペスウイルス、より好ましくは単純ヘルペスウイルス−1または単純ヘルペスウイルス−2)。および、該ウイルスを利用した、腫瘍および感染性疾患を含む種々の疾患または障害を処置するための方法、組成物およびその使用。また、プロドラッグを活性化するための方法、組成物およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規単純ヘルペスウイルス(以下、本明細書においてHSVと略すことがある)の構築物に関する。より詳細には、本発明は、新規ヘルペスウイルス構築物を用いた種々の疾患または障害(例えば、がん、細菌感染症、ウイルス感染症など)の処置、治療または予防のための方法、使用および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルスが歴史に記されるのは紀元前の古代ギリシア時代にさかのぼる。ヘルペスウイルスは、初めて感染した後に発症する例は少なく、長期間、ウイルスは神経節などに潜伏する。ヒトの免疫能が低下すると、ウイルスが活性化され増殖し発症する。この際、ヘルペスウイルスは、皮膚、性器、眼球、神経などと、広い範囲の組織を標的とする。血液中にウイルスを中和する抗体が存在していても症状が現れることが多いことから、発症に細胞性免疫能の低下が関与していると考えられている。
【0003】
ヒトに感染するヘルペスウイルスには、単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス(HSV−2)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、EBウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(HCMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)などが包含される。
【0004】
HSV−1は、初感染症状として、歯肉口内炎、顔面ヘルペスを呈し、回帰感染症状として、口唇ヘルペス、角膜結膜炎ヘルペス、ヘルペス脳炎を呈する。HSV−1の潜伏感染部位は、おもに三叉神経節である。HSV−2は、初感染症状として、性器ヘルペスを呈し、回帰感染症状として、性器ヘルペス、新生児ヘルペスを呈する。HSV−2の潜伏感染部位は、おもに仙骨部神経節である。VZVは、初感染症状として水痘を呈し、回帰感染症状として水痘、帯状疱疹を呈する。VZVの潜伏感染部位は、おもに脊椎後根神経節である。EBVは、無症状であるか、または初感染症状として伝染性単核症を呈し、回帰感染症状としてバーキットリンパ腫、鼻咽腔がんを呈する。EBVの潜伏感染部位は、おもにBリンパ球である。HCMVは、初感染症状としては無症状であるが、回帰感染症状として肺炎、巨細胞封入体症などを呈する。HCMVの潜伏感染部位は、おもにマクロファージ、造血前駆細胞とみられる。HHV−6は、初感染症状として突発性発疹を呈し、回帰感染症状として突発性発疹(肺炎)を呈する。HHV−6の潜伏感染部位は、マクロファージ、造血前駆細胞と見られる。HHV−7は、初感染症状として突発性発疹を呈する。HHV−7の潜伏感染部位はおもにTリンパ球である。HHV−8は、初感染症状としては無症状であるが、回帰感染症状としてカポジ肉腫、PEL、キャッスルマン病を呈する。HHV−8の潜伏感染部位はおもにBリンパ球である。このようにヘルペスウイルスに起因する感染は非常に多岐にわたる。
【0005】
ヒトのヘルペスウイルスワクチンの中で成功したのは水痘ウイルス弱毒化生ワクチンのみである(Takahashi M.,et al.Lancet、2:1288,1974)。しかし、この弱毒化生ウイルスは、偶然にもたらされたものであり水痘ウイルスが他のヘルペスウイルスと異なりウイルス血症により全身感染を起こすため液性免疫の有効性が高いという特性に基づくという特性に基づく。従って、実質的には、ヘルペスウイルスに対するワクチンとして普遍的に利用可能に有効なものはいまだない。
【0006】
HSVはヒトに感染するヘルペスウイルスの中でも代表的な例である。HSVによる感染は、粘膜のウイルス接種から、あるいはウイルスが表皮の破れから皮膚の中に入ることにより生じる。大抵の一次感染は幼児期に起こり、ほとんどの子供は一次感染から急速に回復する。しかし、感染している付添人から、一般的にはHSV感染した母親から、新生児がHSVに感染した場合、より具体的には誕生時に新生児が産道で陰部疱疹に出合うときに、HSVの感染が重症を引き起こす。例えば、播種性新生児疱疹感染が、肝炎等を引き起こし、新生児を死に至らしめる場合もある。
【0007】
HSVが体内にいったん獲得されると、HSVは生涯身体中に保持される。感染の潜状期間は、HSVは知覚神経節のニューロン中に局在化され(顔の病変の場合には、通常三叉神経節が関係する)、感染者は無徴候である。しかし、月経、日光もしくは冷風への過剰暴露、下垂体もしくは副腎ホルモン、アレルギー反応、または熱のごとき多くの刺激によって、HSVが活動状態となる。活動状態となったHSVは複製して、宿主細胞の機構を乗っ取り、感染性の成熟ウイルス粒子を作り、そして細胞死を引き起こす。かかる再発性の攻撃により引き起こされる病気は、口、顔および性器に現れることが最も多い。例えば、再発性のHSVによる角膜炎は失明の主要な原因とされている。また、HSVの性器感染は頻繁に起こり、HSVに起因する性感染症(例えば、陰部ヘルペス)が顕著な羅病率で発症する。より具体的には、かかる再発性の攻撃により引き起こされる再発性HSV誘導性疾病としては、例えば口唇疱疹(通常「熱性疱疹」または「コールドソアス(cold sores)」と呼ばれる唇上の障害)、歯肉口内炎(ロおよび歯肉が小胞でおおわれ、それが破れて潰瘍となる)、咽頭炎、扁桃炎、角結膜炎(角膜炎または眼の角膜の炎症で、樹状潰瘍へと進行し、最終的には角膜の瘢痕化をもたらし、盲目となる)および陰部疱疹を含む粘膜皮膚病などが挙げられる。稀には、HSV感染は脳炎、疱疹性湿疹、外傷性庖疹および肝炎を引き起こすことがある。
【0008】
単純ヘルペスウイルス2型(本明細書において以下、HSV−2ということがある)は、生殖器で皮膚粘膜感染を誘導する。感染後、ウイルスは知覚神経節において維持され、活性化された後、再発性HSV感染を引き起こす(Price,R.W.,Walz,M.A.,Wohlenberg,C.,and Notkins,A.L.(1975).Latent infection of sensory ganglia with herpes simplex virus: efficacy of immunization.Science 188,938−940)。動物モデルを用いたHSV−2感染に対する免疫反応は、多くの研究者によって幅広く研究されている。
【0009】
主要な抗原提示細胞(APC)はランゲルハンス細胞(LC)を含む樹状細胞(DC)であり、膣におけるマクロファージ(Mφ)およびB細胞の細胞数は少ないことが報告されている(Parr,M.B.,and Parr,E.L.(1991).Langerhans cells and T lymphocyte subsets in the murine vagina and cervix.Biol.Reprod.44:491−498,;Nandi,D.,and Allison,J.P.(1993).Characterization of neutrophiles and T lymphocytes associated with the murine vaginal epithelium.Reg.Immunol.5,332−338)。
【0010】
T細胞は細胞障害性Tリンパ球(CTL)として重要な役割を果たしており、HSV−2感染に対する抗ウィルス性サイトカインを生産することが報告されている(Milligan,G,N.,and Bernstein,D.I.(1995).Analysis of herpes simplex virus−specific T cells in the murine female genital tract following genital infection with herpes simplex virus type 2.Virology 212,481−489.;Parr,M.B.,and Parr,E.L.(1998).Mucosal immunity to herpes simplex virus type 2 infection in the mouse vagina is impaired by in vivo depletion of T lymphocytes.J.Virol.72,2677−2685.; Milligan,G.N.,Bernstein,D.I.,and Bourne,N.(1998).T lymphocytes are required for protection of the vaginal mucosae and sensory gaglia of immune mice against reinfection with herpes simplex virus type 2.J.Immunol.160,6093−6100)。
【0011】
複製能力欠損変異株は広域スペクトルの免疫反応を誘導できることが知られている(Morrison,L.A.,Da Costa,X.J.,and Knipe,D.M.(1998).Influence of mucosal and parenteral immunization with a replication−defective mutant of HSV−2 on immune responses and protection from genital infection.Virology 243,178−187.;McLean,C.S.,Ni Challanain,D.,Duncan,I.,Boursnell,M.E.G.,Jennings,R.,and Inglis,S.C.(1996).Induction of a protective immune response by mucosal vaccinatin with a DISC HSV−1 vaccine.Vaccine 14,987−992)。
【0012】
HSV−2弱毒系統を感染させると、HSV−2特異的T細胞1型(Th1)様CD4細胞の膣への流入が引き起こされることが知られている(Milligan,G.N.,Bernstein,D,I.,and Bourne,N.(1998).T lymphocytes are required for protection of the vaginal mucosae and sensory ganglia of immune mice against reinfection with herpes simplex virus type 2.J.Immunol.160,6093−6100)。
【0013】
しかしながら、病理学において、HSVに特異的なウイルス遺伝子の役割と免疫反応の関係の詳細については、まだ完全には明らかになっていない。
【0014】
このように、ヘルペスウイルスに起因する疾患または障害に対しては、決定的な予防法、治療法に欠けるのが現状である。
【0015】
癌に対する治療としては、現在一般に、外科的切除、化学療法、放射線療法等が行われている。しかしながら、これらの治療法が充分な効果を奏さない癌も存在し、例えば、進行膵癌または進行卵巣癌では未だ充分な予後を得るには至っていない。特に腹膜播種の存在する進行膵癌または進行卵巣癌では、外科的切除による予後は期待できない。
【0016】
このため、癌に対する新たな治療方法として、遺伝子治療が試みられている。癌に対する遺伝子治療としては、(1)アンチセンスまたはリボザイムを用いて癌遺伝子を抑制するか、または、癌抑制遺伝子を導入して腫瘍細胞の増殖を抑制する方法、(2)代謝毒性遺伝子(自殺遺伝子)を導入して腫瘍細胞を自殺に追いやる方法、(3)導入遺伝子により抗腫瘍免疫を強化する方法、(4)化学療法の効果を向上させるために多剤耐性遺伝子を用いて骨髄幹細胞を保護する方法等が検討されている。
【0017】
上記(2)の方法として、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを自殺遺伝子として用いる方法が知られている。癌細胞に単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを導入した後、ガンシクロビルを投与すると、ガンシクロビルは、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼによってリン酸化され活性型となり、癌細胞のDNAポリメラーゼを阻害する。このため、癌細胞に単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを導入することにより、癌細胞の増殖を抑制することができ、ひいては癌細胞を死滅させることも可能となる。
【0018】
単純ヘルペスウイルスは病原性ウイルスであるので、野生型のものをそのまま癌の治療に使用することはできない。このため、単純ヘルペスウイルスを弱毒化して癌の治療に用いることが研究されている(WO96/39841)。
【0019】
このため、癌に対する新たな治療方法として、遺伝子治療が試みられている。そのような遺伝子治療の一つとしては、代謝毒性遺伝子(自殺遺伝子)を導入して腫瘍細胞を自殺に追いやる方法が挙げられ、より具体的には単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを自殺遺伝子として用いる方法が知られている。
【0020】
上記に示したように、単純ヘルペスウイルス(例えば複製能力のあるヘルペスウイルス1型(HSV−1))のようなヘルペスウイルスは、腫瘍細胞の破壊を媒介することがあることから、遺伝子操作した複製可能なHSV−1ウイルスベクターの使用が、抗腫瘍治療に関連して検討されている。
【0021】
このようなHSV−1ウイルスベクターとしては、γ34.5遺伝子(γ34.5)を欠損し、神経毒性が低下したγ34.5欠損株が用いられて一定の抗腫瘍効果を示されている。しかし、γ34.5欠損株は実用化には至っていない。
【0022】
本発明者らは、以前よりHSV−2のUS2をコードする遺伝子(以下、US2遺伝子と略称する)およびUS3をコードする遺伝子(以下、US3遺伝子と略称する)に着目し、US2欠損変異体またはUS3欠損HSV遺伝子組換え体を用いて病理学的な役割を調べ、US2およびUS3遺伝子はともに細胞培養でのウイルス複製に必ずしも必要でなく、US3欠損HSV遺伝子組換え体は非常に弱毒化されていることが明らかにした(Nishiyama,Y.,Yamada,Y.,Kurachi,R.,and Daikoku,T.(1992).Construction of a US3 lac Z insertion Mutant of herpes simplex virus type 2 and characterization of its phenotype in vitro and in vivo.Virology 190,256−268.;Daikoku,T.,Yamashita,Y.,Tsurumi,T.,Maeno,K.,and Nishiyama,Y.(1993).Purification and biological characterization of the protein kinase encoded by the US3 gene of herpes simplex virus type 2.Virology 197,685−694.;Jiang,Y−H.,Yamada,H.,Goshima,F.,Daikoku.T.,Oshima,S.,Wada,K.,and Nishiyama,Y.(1998).Characterization of the herpes simplex virus type 2 (HSV−2) US2 gene product and a US2−deficient HSV−2 mutant.J.Gen.Virol.79,2777−2784)。
【0023】
また、マウスモデルを用いて行った性器ヘルペスに関する以前の研究から、感染初期の段階ではHSV−1KOS株感染とは異なり、強毒なHSV−2 186株を膣内感染させると、膣内で活性化されたT細胞を効果的に増加させることも、APC(抗原提示細胞)の急速な増加も誘導できないことが明らかとなった(Inagaki−Ohara K,Daikoku T,Goshima F,Nishiyama Y.Impaired induction of protective immunity by highly virulent herpes simplex virus type 2 in a murine model of genital herpes.Arch Virol.2000; 145(10): 1989−2002)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明は、特性の改変されたヘルペスウイルス構築物またはその使用もしくはそれを使用する方法を提供することによって、ヘルペスウイルスに関連する疾患または障害あるいはその他の疾患または障害を処置または予防することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の要旨
本発明は、複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルスを提供する。より詳細には、ULおよび/またはUS領域に存在する複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルスを提供する。また、本発明は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子が不活化されたヘルペスウイルスを提供する。より好ましくは、この複製非必須遺伝子は、US3および/またはUL56を含む。好ましくは、このヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスであり得、より好ましくは単純ヘルペスウイルス−1または単純ヘルペスウイルス−2であり得る。本発明により、腫瘍および感染性疾患を含む種々の疾患または障害を処置するための方法、組成物および使用が提供される。本発明はまた、プロドラッグを活性化するための方法、組成物および使用が提供される。
【0026】
一つの局面において、本発明は、少なくとも1つの複製非必須遺伝子が不活化されている、ヘルペスウイルスを提供する。
【0027】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0028】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは単純ヘルペスウイルスであり、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0029】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0030】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0031】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL56またはUS3を含む。
【0032】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL39およびUL40を含む。
【0033】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL39およびUL56を含む。
【0034】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2およびUS3を含む。
【0035】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL56を含む。
【0036】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3を含む。
【0037】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、少なくとも2つが不活化されている。
【0038】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子のうち2つ目以降は、RL1、RL2、ORFP,ORFO、RL3、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、ULl3、UL16、UL20、UL20.5、UL21、UL24、UL39、UL40、UL41、UL43、UL43.5、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US1.5、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0039】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、外来性の自殺遺伝子をさらに含む。
【0040】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、カルボキシエステラーゼ遺伝子をさらに含む。
【0041】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、癌細胞選択性を有する。
【0042】
一つの実施形態において、上記不活化は、上記複製非必須遺伝子の配列において、少なくとも1ヌクレオチドの置換、付加、欠失または改変を含む。
【0043】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0044】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0045】
別の局面において、本発明の薬学的組成物は、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている、ヘルペスウイルス;および薬学的に受容可能なキャリア、を含む。
【0046】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0047】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される、からなる群より選択される。
【0048】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0049】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0050】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL56またはUS3を含む。
【0051】
一つの実施形態において、上記不活化は、上記複製非必須遺伝子の配列において、少なくとも1ヌクレオチドの置換、付加、欠失または改変を含む。
【0052】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子の配列において、翻訳を停止するシグナルが挿入されている。
【0053】
一つの実施形態において、上記翻訳を停止するシグナルは、ポリアデニル化シグナルである。
【0054】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0055】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0056】
一つの実施形態において、上記組成物は、弱毒化ヘルペスウイルスが活性型に変換しうるプロドラッグをさらに含む。
【0057】
一つの実施形態において、上記プロドラッグは、ガンシクロビル、アシクロビル、タキソールおよびカンプトテシンからなる群より選択されるものを含む。
【0058】
一つの実施形態において、上記組成物は、腫瘍処置のためである。
【0059】
一つの実施形態において、上記組成物は、少なくとも1つの腫瘍処置のための薬剤をさらに含む。
【0060】
一つの実施形態において、上記組成物は、上記ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグの抗癌作用増強のためである。
【0061】
一つの実施形態において、上記組成物は、感染性疾患の処置のためである。
【0062】
一つの実施形態において、上記感染性疾患は、ヘルペスウイルスに起因する。
【0063】
一つの実施形態において、上記組成物は、上記感染性疾患の病因因子に由来する遺伝子を含む。
【0064】
一つの実施形態において、上記組成物は、L1BR1を含有する。
【0065】
一つの実施形態において、上記組成物は、ワクチンの形態をとる。
【0066】
一つの実施形態において、上記組成物は、ヘルペスウイルス感染により惹起される疾患または障害の処置または予防治療剤であることを特徴とする。
【0067】
一つの実施形態において、上記組成物は、上記ヘルペスウイルス感染により惹起される疾患は、性感染症である。
【0068】
一つの実施形態において、上記組成物は、感染性疾患を処置または予防するためである。
【0069】
一つの実施形態において、上記組成物は、上記感染性疾患の病因因子を含む。
【0070】
一つの実施形態において、上記感染性疾患の病因因子は、ウイルスまたは細菌性である。
【0071】
一つの実施形態において、上記感染性疾患の病因因子は、HIV、インフルエンザウイルスおよびロタウイルスからなる群より選択される。
【0072】
別の局面において、本発明の、感染性疾患または腫瘍を処置または予防するための方法は、、そのような処置または予防を必要とする被検体に、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている、ヘルペスウイルスおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物を投与する工程、を包含する。
【0073】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0074】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0075】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0076】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0077】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む。
【0078】
一つの実施形態において、上記不活化は、上記複製非必須遺伝子の配列において、少なくとも1ヌクレオチドの置換、付加、欠失または改変を含む。
【0079】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0080】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0081】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグを投与する工程をさらに包含する。
【0082】
一つの実施形態において、上記プロドラッグは、ガンシクロビル、アシクロビル、タキソールおよびカンプトテシンからなる群より選択される少なくとも一つを含む。
【0083】
一つの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つの腫瘍処置のための薬剤をさらに投与する工程を包含する。
【0084】
一つの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つの感染性疾患処置のための薬剤をさらに投与する工程を包含する。
【0085】
一つの実施形態において、上記腫瘍は、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、膀胱癌、尿管癌、大腸癌、皮膚癌、悪性メラノーマ、骨肉腫、頭頚部の扁平上皮癌および胃癌からなる群より選択される。
【0086】
別の局面において、本発明の、ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグの抗癌作用増強方法は、上記抗癌作用増強を必要とする被検体に、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている、ヘルペスウイルスおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物を投与する工程、を包含する。
【0087】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0088】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0089】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0090】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0091】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む。
【0092】
一つの実施形態において、上記プロドラッグは、ガンシクロビル、アシクロビル、タキソールおよびカンプトテシンからなる群より選択される一つを含む。
【0093】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0094】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0095】
別の局面において、本発明の、ヘルペスウイルス感染の重篤度またはヘルペスウイルス感染率を減少させる方法は、そのような処置または予防を必要とする被検体に、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている、ヘルペスウイルスを含む、ワクチンを投与する工程、を包含する。
【0096】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する、項目70に記載の方法。
【0097】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0098】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0099】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0100】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む。
【0101】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0102】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0103】
別の局面において、本発明の、腫瘍を処置または予防するための薬学的組成物を製造するための、ヘルペスウイルスの使用では、上記ヘルペスウイルスは、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている。
【0104】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0105】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0106】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0107】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0108】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む、項目78に記載の使用。
【0109】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0110】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0111】
別の局面において、本発明の、ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグの抗癌作用増強のための薬学的組成物を製造するための、ヘルペスウイルスの使用では、上記ヘルペスウイルスは、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている。
【0112】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0113】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0114】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0115】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0116】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む。
【0117】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0118】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【0119】
別の局面において、本発明の、ヘルペスウイルス感染の重篤度および/またはヘルペスウイルス感染率を減少させるための薬学的組成物を製造するための、ヘルペスウイルスの使用では、上記ヘルペスウイルスは、少なくとも1つのヘルペスの複製非必須遺伝子が不活化されている。
【0120】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在する。
【0121】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0122】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子である。
【0123】
一つの実施形態において、上記DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12からなる群より選択される。
【0124】
一つの実施形態において、上記複製非必須遺伝子は、US3またはUL56を含む。
【0125】
一つの実施形態において、上記薬学的組成物は、ワクチンである。
【0126】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、単純ヘルペスウイルスを改変したものである。
【0127】
一つの実施形態において、上記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0128】
以下、発明の実施の形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「le」、「la」など、スペイン語における「un」、「una」、「el」、「la」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。本明細書において引用される文献または特許もしくは特許出願は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0129】
本明細書において、「ヘルペスウイルス」とは、ウイルスの一科であるヘルペスウイルス科に属する任意のウイルスをいう。ヘルペスウイルスは、コアタンパクのまわりに分子量80〜150×10ダルトンの複鎖線状DNAが162個のカプソメアを含み、潜伏感染を特徴とする。ウイルス粒子は直径約100〜200nmの球状であり、エンベロープ中には直径100nm前後の正二十面体状のカプシドがある。ゲノムは二本鎖DNAであり、そのサイズは,例えば単純ヘルペスウイルス1型が152260塩基対であり、EBウイルスが172282塩基対であり、サイトメガロウイルスが229400基塩対である。細胞核内で増殖し、フォイルゲン反応陽性の封入体をつくる。自然宿主、実験動物の皮膚および粘膜などの上皮細胞、中枢神経組織などでよく増殖する.3亜科があり所属ウイルスは次のとおりである:アルファヘルペスウイルス亜科:ヒトヘルペスウイルス−1(単純ヘルペスウイルス1型;HSV−1)、ヒトヘルペスウイルス−2(単純ヘルペスウイルス2型;HSV−2)、アラートンウイルス(Allerton virus)、Bウイルス(B virus)、ウシ乳頭炎ウイルス(bovine mammilitis virus,BMV)、ネコ鼻腔気管炎ウイルス(feline rhinotracheitis virus)、伝染性喉頭気管炎ウイルス(infectious laryngotracheitis virus,ILT virus)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)など;ベータヘルペスウイルス亜科:サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV−7)、など;ガンマヘルペスウイルス亜科:ヒトヘルペスウイルス−4(HHV−4)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)、EBウイルス(EBV)、マレック病ウイルスなど。好ましくは、本発明のウイルス構築物は、アルファヘルペスウイルス亜科に由来する。
【0130】
本明細書において、「単純ヘルペスウイルス」または「HSV」とは、ヘルペスウイルス科アルファヘルペスウイルス亜科シンプレックスウイルス属に属する任意のウイルスをいう。単純ヘルペスウイルスは、直径100−200mmの大きさで、最外層にはウイルス糖タンパク質を含むエンベロープをもち、その中に正20面体のカプシドを含む。カプシドとはエンベロープとの間には、テグメントと名づけられる構造体が存在し、多数のウイルスタンパク質が含まれる。カプシドの中心部(コア)には2本鎖線状DNA(約15万基塩基対)が存在する。ゲノムDNAには、少なくとも74種類の遺伝子が存在し、その半数は、培養細胞での増殖に必須ではない複製非必須遺伝子(アクセサリー遺伝子)である。ゲノムDNAの複製、カプシドの形成は、核内で行われ、DNAを含んだカプシドは核内膜から出芽することにより核内から細胞質へと輸送される。HSVとしては、代表的に、1型(HSV−1)および2型(HSV−2)と名づけられた2つの密接に関連するウイルス種がある。本発明においては、HSV−1およびHSV−2の変異体を用いてもよい。場合によってはHSV−2を用いるのが好ましい。本明細書において、「弱毒化HSV」とは、改変などによって毒性が減少しているHSVをいう。
【0131】
本明細書において、「複製非必須遺伝子」または「アクセサリー遺伝子」とは、本明細書において互換的に用いられ、その遺伝子を欠損しても、ウイルスの増殖性が維持されるものをいう。好ましくは、そのような遺伝子は、UL領域またはUS領域に存在し、ゲノムDNA上に一つしかない遺伝子から構成される。そのような遺伝子としては、HSV−1およびHSV−2のような単純ヘルペスウイルスでは、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL39、UL40、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11、US12などが挙げられるがそれらに限定されない。他のヘルペスウイルスでは、上記遺伝子に相当する遺伝子が不活化の対象とされ得る。
【0132】
1つの実施形態において、複数の複製非必須遺伝子が不活化される場合、2つ目以降の不活化される遺伝子としては、RL1、RL2、ORFP,ORFO、RL3、UL2、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL12、ULl3、UL16、UL20、UL20.5、UL21、UL24、UL39、UL40、UL41、UL43、UL43.5、UL44、UL45、UL46、UL47、UL50、UL51、UL55、UL56、US1、US1.5、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11、US12などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0133】
好ましい実施形態において、本発明において不活化される遺伝子としては、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子が挙げられる。理論に束縛されることは望まないが、DNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子を不活化することにより、安全性が飛躍的に伸び得、および/またはヒトへの特異性が顕著に高くなり得る。そのようなDNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子としては、例えば、UL2、UL12、UL23、UL39、UL40およびUL50以外の遺伝子などが挙げられる。より好ましくは、そのようなDNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、US領域またはUL領域に存在する。したがって、好ましいDNAおよびデオキシヌクレオチド代謝に関与しない遺伝子は、UL3、UL4、UL7、UL10、UL11、UL13、UL14、UL16、UL20、UL21、UL24、UL35、UL41、UL43、UL44、UL45、UL46、UL47、UL51、UL55、UL56、US1、US2、US3、US4、US5、US7、US8、US8.5、US9、US10、US11およびUS12を包含するがそれらに限定されない。
【0134】
本発明の弱毒化HSVは、癌細胞において優位に増殖し得る、癌細胞選択性を有していることが好ましい。
【0135】
1つまたは2つ以上のアクセサリー遺伝子が不活化されている弱毒化HSVとしては、例えば、UL39またはUL40が不活化されているものを挙げることができ、なかでも、UL39またはUL40と、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子とが不活化されているものが好ましい。
【0136】
UL39またはUL40が不活化されている弱毒化HSVは、この遺伝子にコードされておりDNA合成に必要なリボヌクレオチドレダクターゼを宿主に依存しなければならない。このため、UL39またはUL40が不活化されている弱毒化HSVを癌患者に接種すると、増殖が盛んな癌細胞において優位に増殖させることができる。このような弱毒化HSVに感染された癌細胞は、ウイルスが保有する様々なタンパク質の細胞障害作用によって増殖が抑制され、更には死滅してしまうこともある。
【0137】
UL39またはUL40に加えて、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子が不活化されていると、癌細胞における優位の増殖性を維持しうるとともに宿主に対する病原性を更に減弱することができる。
【0138】
UL39またはUL40と、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子とが不活化されている弱毒化HSVとしては、例えば、UL39(またはUL40)、UL55およびUL56が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)およびUL2が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)およびUS3が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)、UL2およびUS3が不活性されている弱毒化HSV等を挙げることができる。
【0139】
UL39(またはUL40)、UL55およびUL56が不活化されている弱毒化HSV、またはUL39(またはUL40)およびUL2が不活化されている弱毒化HSVは、UL39(またはUL40)のみが不活化されている弱毒化HSVよりも、更に、高い安全性を有する。一方、UL39(またはUL40)およびUS3が不活化されている弱毒化HSV、またはUL39(またはUL40)、UL2およびUS3が不活化されている弱毒化HSVは、高い癌細胞選択性に加えて癌細胞のアポトーシスを引き起こす機能を併せ持つことができる。
【0140】
別の実施形態では、US3および/またはUL56が不活化されているHSVが提供される。
【0141】
本明細書において、遺伝子が「不活化」されるとは、その遺伝子の少なくとも1つの機能が損なわれているか、または好ましくは実質的に消失していることをいう。不活化する方法としては特に限定されず、例えば、以下の公知の方法を挙げることができる。
【0142】
かかる改変としては、例えばHSV複製非必須遺伝子(例えば、US3遺伝子)が翻訳されないような処理(例えば、発現しないようにプロモーターを改変すること)、またはHSV遺伝子のうち特定の複製非必須遺伝子(例えば、US3遺伝子)を組換え(例えば、他の配列の挿入、一部の配列の切除、塩基の修飾、塩基の置換等)、該組換えられた遺伝子が翻訳されるとUS3とは異なるタンパクが発現する改変(例えば、他のアミノ酸配列の挿入、一部の配列の切除、アミノ酸の置換など)などが挙げられる。
【0143】
上記遺伝子組換え体を作製するための遺伝子組換え処理としては、特に限定されない。例えば、特定の複製非必須遺伝子(例えば、US3遺伝子)の全部または一部を欠損させる処理、特定の複製非必須遺伝子の全部または一部を置換させる処理、特定の複製非必須遺伝子の一部を逆位させる処理、US3遺伝子の一部を重複させる処理、特定の複製非必須遺伝子の一部を転座させる処理、特定の複製非必須遺伝子に遺伝子断片を挿入しその特定の複製非必須遺伝子を中断させる処理などが挙げられる。中でも、特定の複製非必須遺伝子の全部または一部を欠損させる処理、特定の複製非必須遺伝子の全部または一部を置換させる処理、または特定の複製非必須遺伝子に遺伝子断片を挿入しその特定の複製非必須遺伝子を中断させる処理が好ましい。特に、特定の複製非必須遺伝子に遺伝子断片を挿入し特定の複製非必須遺伝子を中断させる処理がより好ましく、挿入する他の遺伝子には、翻訳を停止させるシグナルが含有されていることがさらに好ましい。翻訳を停止させるシグナルとしては、中でもSV40由来のポリアデニル化シグナルが好ましい。
【0144】
本明細書において、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、互換的に用いられ、一連のアミノ酸からなる高分子をいう。アミノ酸は、炭素原子にカルボキシル基およびアミノ基を有する有機分子をいう。本明細書において好ましくは、アミノ酸は、天然に存在する20種類のアミノ酸であるがこれらに限定されない。
【0145】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0146】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol. 157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0147】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0148】
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0149】
本明細書において、「非保存的置換」とは、上記のような保存的置換ではない置換をいい、それにより、タンパク質の機能の改変が生じ得る。非保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ間での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0150】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0151】
本明細書において使用されるポリペプチドをコードする核酸分子は、同一または類似の機能を発揮することを目的とする場合、発現されるポリペプチドが本発明のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、このポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような核酸分子を作製する方法は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
【0152】
本発明において、機能を改変、好ましくは不活化することを目的とする場合、発現されるポリペプチドが本発明において利用されるポリペプチドと実質的に異なる、好ましくは消失した活性を有するように、その核酸の配列の一部が欠失または置換され得、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。
【0153】
本明細書において「発現可能なように組み込まれる」とは、例えば下記に示すようなプロモーター配列の下流に目的とする自殺遺伝子が組み込まれることをいう。
【0154】
このような本発明の弱毒化HSVは、例えば、プロモーター配列およびターミネーター配列が組み込まれ、アクセサリー遺伝子が不活化されたHSVベクターを用い、プロモーター配列の下流に上記外来性の自殺遺伝子を挿入することにより得ることができる。
【0155】
プロモーターとしては、腫瘍細胞中でプロモーターとして機能するものであれば特に限定されないが、腫瘍特異的プロモーターまたはHSV由来プロモーターが好ましい。そのようなプロモーターとしては、本発明の実施に有用なプロモーターの例としては(特にヒトに対する遺伝子ワクチンの製造において)、シミアンウイルス40(SV40)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(HIV長い末端反復配列(LTR)プロモーターのような)、モロニーウイルス、ALV、サイトメガロウイルス(CMV)(CMV前初期プロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)からのプロモーター類、ならびにヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびヒトメタロチオネインのようなヒト遺伝子からのプロモーター類が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0156】
腫瘍細胞特異的プロモーターは特定の細胞型かまたは腫瘍細胞において選択的にまたは高レベルに誘導されるプロモーターを含み、例えばCEA、AFPなどの癌胎児性タンパク質プロモーター、チロシナーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、ストレス誘発性GRP78/Bipプロモーターなどを挙げることができる。
【0157】
HSV由来プロモーターとしては、例えばHSV初期タンパク質UL29プロモーター、HSV UL39プロモーターなどを挙げることができる。
【0158】
本発明の実施に有用なポリアデニル化シグナルの例としては(特にヒトに対する遺伝子ワクチンの製造において)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナルおよびLTRポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに制限されるわけではない。特に、pCEP4プラスミド中に存在するSV40ポリアデニル化シグナル(Invitrogen,SanDiego,CA、SV40ポリアデニル化シグナルと称される)が使用される。
【0159】
DNA発現に必要とされる制御エレメントに加え、他のエレメントもDNA分子に含まれているであろう。本明細書において使用されるHSV由来プロモーターは、さらにエンハンサー有していてもよい。そのような追加のエレメントにはエンハンサーが含まれる。エンハンサーは:ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびCMV、RSVおよびEBVからのエンハンサーのようなウイルスエンハンサーからなる群より選択されるであろうが、それらに制限されるわけではない。
【0160】
遺伝子構築物を染色体外に維持するためおよび細胞中で構築物の多数のコピーを生成するために、構築物は哺乳類複製起点とともに提供できる。Invitrogen(SanDiego,CA)からのプラスミドpCEP4およびpREP4はエプスタインバーウイルス複製起点および組込みなしで高コピーエピソーム複製を生み出す核抗原EB NA−1コード領域を含んでいる。いくつかの態様において、免疫調節タンパク質をコードしているcDNAがpCDNA3内へ挿入される。
【0161】
いくつかの好適な態様において、標的タンパク質、免疫調節タンパク質、およびそのうえにそのような標的タンパク質に対する免疫応答をさらに促進するタンパク質のための遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含んでいる核酸分子が送達される。そのような遺伝子の例はα−インターフェロン、ガンマ−インターフェロン、血小板由来成長因子(PDGF)、TNF、上皮成長因子(EGF)、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10およびIL−12のようなサイトカインおよびリンホカインをコードしているものである。いくつかの態様において、GM−CSFの遺伝子が免疫化組成物で使用される遺伝子構築物に含まれていることが好適である。
【0162】
タンパク質産生を最大にするため、構築物が投与される細胞内での遺伝子発現に適した制御配列が選択され得る。さらに、細胞内で最も効率的に転写されるコドンが選択され得る。当業者は細胞内で機能的であるDNA構築物を周知技術に基づいて容易に製造することができる。
【0163】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変異誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0164】
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、 Wiley、 New York、 NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。
【0165】
遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、またはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0166】
本明細書では塩基配列の同一性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0167】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。
【0168】
「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、配列番号2,4または6で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。記載の相同性は、たとえばAltschulら(J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、scoreで類似度が示される。
【0169】
「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。
【0170】
本明細書において、「アミノ酸」は、上述のように天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸は、当該分野において周知である。
【0171】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドは、当該分野において周知である。
【0172】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。本明細書では、生物学的活性としては、重金属に結合する活性および細胞膜のような疎水性部分に結合する能力が挙げられる。
【0173】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。本明細書において、核酸分子の「ホモログ(種相同体)」とは、参照核酸分子のヌクレオチド配列と相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸分子をいう。ホモログは、代表的には、参照核酸分子と、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。本発明の核酸分子についていう場合、「ホモログ」とは、タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸配列と相同性を有する核酸配列を有する核酸分子であって、その生物学的機能が本発明のプロモーターと同一または類似する核酸分子をいう。従って、「ホモログ」と「改変体」とは一部重複する概念である。従って、「ホモログ」は、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのようなホモログを取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。
【0174】
本明細書において、ウイルス構築物を細胞などに導入することが必要である場合、ウイルス構築物の導入方法としては、細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換などが挙げられる(例えば、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)。
【0175】
本明細書において、薬学的(医薬)組成物は、好ましくは、本発明のヘルペスウイルスおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む。薬学的組成物は、宿主に有効であればその形態はどのようなものでもよく、例えば、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、丸剤、液剤、トローチ剤、バッカル錠、舌下錠、膣錠、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、懸濁剤、乳剤、エアゾール剤、注射剤、注入剤、噴霧剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、坐剤などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、ワクチンのような形態にした注射剤として本発明は提供される。本発明はまた、徐放剤とすることもできる。本発明はまた、DDS技術用いることもできる。
【0176】
好ましくは、本発明の薬学的組成物において、ヘルペスウイルスは、少なくとも10、好ましくは、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも10、少なくとも2×10、少なくとも5×10、少なくとも1010、または少なくとも1010を超えて存在する。適切な量は、使用する状況に応じて変動し、当業者であれば、組成物中に存在する活性成分の状態、医薬に使用する場合は、患者の状態、患者の疾患の状態、投与経路、投与形態、投与中の患者の状態をモニターすることなどにより応じて適宜決定することができる。
【0177】
薬学的に受容可能なキャリアとしては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、安定剤、コーティング剤、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクルおよび/または薬学的アジュバント。
【0178】
本発明の組成物が薬学的組成物として用いられる場合は、さらなる医薬成分として、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない成分がその薬学的組成物に含有され得る:
中枢神経系用薬(例えば、全身麻酔剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、興奮剤、覚せい剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、総合感冒剤、その他の中枢神経系用薬など);
末梢神経用剤(例えば、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自律神経剤、鎮けい剤など);
感覚器官用薬(例えば、眼科用剤、耳鼻科用剤、鎮暈剤など);
循環器官用薬(例えば、、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、高脂血症用剤、その他の循環器官用薬など);
呼吸器官用薬(例えば、呼吸促進剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮咳去痰剤、気管支拡張剤、含嗽剤など);
消化器官用薬(例えば、止瀉剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤、浣腸剤、利胆剤、その他の消化器官用薬など);
ホルモン剤(例えば、脳下垂体ホルモン剤、唾液腺ホルモン剤、甲状腺、副甲状腺ホルモン剤、蛋白同化ステロイド剤、副腎ホルモン剤、男性ホルモン剤、卵胞、.黄体ホルモン剤、混合ホルモン剤、その他のホルモン剤など);
泌尿生殖器官および肛門用薬(例えば、泌尿器官用剤、生殖器官用剤、子宮収縮剤、痔疾用剤、他の泌尿生殖器管、肛門用薬など);
外皮用薬(例えば、外皮用殺菌消毒剤、創傷保護剤、化膿性疾患用剤、鎮痛.鎮痒.収斂.消炎剤、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、毛髪用剤、その他の外皮用剤など);
歯科口腔用剤;
その他の個々の器官系用薬;
ビタミン剤(例えば、ビタミンA剤、ビタミンD剤、ビタミンB剤、ビタミンC剤、ビタミンE剤、ビタミンK剤、混合ビタミン剤、その他のビタミン剤など);
滋養強壮薬(例えば、カルシウム剤、無機質製剤、糖類剤、蛋白アミノ酸製剤、臓器製剤、乳幼児用剤、その他の滋養強壮剤など);
血液および体液用薬(例えば、血液代用剤、止血剤、血液凝固阻止剤、その他の血液.体液用剤など);
人工透析用薬(例えば、人工腎臓透析用剤、腹膜透析用剤など);
その他の代謝性医薬品(例えば、臓疾患用剤、解毒剤、習慣性中毒用剤、痛風治療剤、酵素製剤、糖尿病用剤、他に分類されない代謝性薬など);
細胞賦活用剤(例えば、クロロフィル製剤、色素製剤、その他の細胞賦活用剤など);
腫瘍用薬(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質製剤、抗腫瘍性植物成分製剤、その他の腫瘍用剤など);
放射性医薬品;
アレルギー用薬(例えば、抗ヒスタミン剤、刺激療法剤、非特異性免疫原製剤、その他のアレルギー用薬、生薬および漢方処方に基づく医薬品、生薬、漢方製剤、その他の生薬漢方処方に基づく製剤など);
抗生物質製剤(例えば、グラム陽性菌に作用するもの、グラム陰性菌に作用するもの、グラム陽性マイコプラズマに作用するもの、グラム陰性マイコプラズマに作用するもの、グラム陽性リケッチアに作用もの、グラム陰性リケッチアに作用するもの、抗酸菌に作用するもの、カビに作用するもの、その他の抗生物質製剤など);
化学療法剤(例えば、サルファ剤、抗結核剤、合成抗菌剤、抗ウィルス剤、その他の化学療法剤など);
生物学的製剤(例えば、ワクチン類、トキソイド類、抗毒素.抗レプトスピラ血清、血液製剤類、生物学的試験用製剤類、その他の生物学的製剤、抗原虫剤、駆虫剤など);
調剤用薬(例えば、賦形剤、軟膏基剤、溶解剤、矯味矯臭剤、着色剤、その他の調剤用剤など);
診断用薬(例えば、X腺造影剤、機能検査用試薬、その他の診断用薬);
公衆衛生用薬(例えば、防腐剤);
体外診断用医薬品(例えば、細菌学的検査用薬など);
分類されない治療を主目的としない薬剤;ならびに
麻薬(例えば、あへんアルカロイド系麻薬、コカアルカロイド系製剤、合成麻薬など)。
【0179】
本発明の薬学的組成物は、日本薬局方、米国薬局方、その他対応する他の国の薬局方、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照することによって、当業者は容易に製造することができる。
【0180】
本発明は、薬学的組成物として処方される場合、非経口的に投与され得る。あるいは、その組成物は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明における使用のための治療組成物は、発熱物質を含まない、経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な水溶液は、pH、等張性、安定性などに相当な注意を払うことを条件として、当該分野の技術を用いて調製され得る。
【0181】
好ましい実施形態では、本発明のHSVまたはそれを含む薬学的組成物は接種形態で投与され得る。本発明の弱毒化HSVを含む薬学的組成物の接種形態としては特に限定されず、公知の形態を用いることができるが、通常好ましくは、水溶液または懸濁液からなる注射剤として患者に接種される。前記注射剤には、輸液および栄養補充液なども含まれる。
【0182】
上記注射剤は、本発明の弱毒化HSVの他に、通常用いられる添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては特に限定されず、必要に応じて界面活性剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、無痛化剤、安定剤などの成分を配合することができる。界面活性剤としては例えば、Tween80、ステアリン酸ポリオキシル40、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、ラウロマクロゴールなど;乳化剤としては例えば、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウムなど;懸濁剤としては例えば、モノステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなど;保存剤としては例えば、フェノール、硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノールなど;無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトールなど、安定剤としては例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸などの緩衝剤、プロピレングリコール、ジエチリン、亜硫酸塩、アスコルビン酸、ロンガリットなどが挙げられる。
【0183】
また、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エチルオレイン酸などの有機エステルなど、pH緩衝剤、アジュバント、弱毒化HSVの効果を強化する免疫賦活剤などを添加することもできる。
【0184】
本発明において、上記注射剤の製造方法は特に限定されず、通常用いられる装置および方法によることができる。注射剤は調製した後、フィルター濾過による除菌を行ってもよいし、必要ならば凍結乾燥などを行って、常法により皮下・筋肉内、静脈内、腫瘍内、腹腔内、気管内、膀胱内、腸内、直腸内、口内、眼内、動脈内などへ注射剤、点滴注射剤により注入される。
【0185】
また、上記注射剤は、注射直前に溶液に溶解するか、または懸濁するのに適する固形物に調製されてもよい。
【0186】
本発明の弱毒化HSVを含む薬学的組成物の、個々の場合における正確な投与量は、例えば投与方法、投与される患者の個体差、疾患の種類、投与するときの患者の状態などによっても異なるため一概にはいえないが、例えば注射剤としてヒトに投与する場合は、成人の場合約0.01ng〜10mg/kg程度の弱毒化HSVを1日1〜数回に分げて投与できる。好ましくは、投与は、患者の状態をモニターしながら適宜調整され得る。
【0187】
本発明の弱毒化HSVとプロドラッグとを併用する場合は、公知方法に従って使用することができ、プロドラッグの投与経路、投与量は公知の方法に従って行うことができる。プロドラッグは、本発明の弱毒化HSVと同時に、または交互に使用することができる。
【0188】
本発明はまた、好ましくは、ワクチン形態で投与され得る。ワクチンとは、ある種の疾患(例えば、伝染病、感染症など)の予防(または治療)のため使用される抗原の諸形態(例えば、タンパク質、DNA)をいう。感染、伝播、流行などの諸形式にしたがい、生きた弱毒病原体(生ワクチンlive vaccine)、不活化病原体(またはその一部)、病原体代謝物(毒素、毒素の不活化物すなわちトキソイドなど)、DNAワクチンなどが使用される.ワクチン接種(vaccination)により生物(ヒト・家畜・媒介動物)の体内に能動的につくられる免疫(体液性免疫、細胞性免疫、または両者)が病原体の感染、伝播、流行などを阻止する。
【0189】
本発明に係るワクチンの剤形は特に問わず、また、その製造も当該分野で用いられている自体公知の方法に従ってよい。本発明に係るワクチンは、上記HSV遺伝子組換え体を含む生ワクチンとするのが好ましい。また、本発明に係るワクチンは、種々のアジュバントを含む乳濁液としてもよい。アジュバントは、上記HSV遺伝子組換え体のみを投与した場合よりも、少ない量のHSV遺伝子組換え体を用いて、少ない投与量で、持続する高レベルの免疫性を持続させるのを助けるものである。アジュバントの例には、フロインドのアジュバント(完全または不完全)、アジュバント65(落下生油、マンナイドモノオレエートおよびアルミニウムモノステアレートを含む)、および水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたはミョウバンのごとき鉱物ゲルがある。ヒトおよび食用動物のためのワクチンには、アジュバント65を用いるのが好ましい。また、商業的動物用ワクチンには、鉱物ゲルを用いるのが好ましい。
【0190】
本発明に係るワクチンには、上記アジュバントの他に例えば、希釈剤、香料、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1または2以上の製剤用添加物を含有させてもよい。
【0191】
本発明に係るワクチンの投与経路は、特に限定されないが、非経ロ的に投与することが好ましい。非経口投与としては、例えば、静脈内、動脈内、皮下、真皮内、筋肉内または腹腔内の投与が挙げられる。
【0192】
本発明に係るワクチンの1回の投与量は、投与の目的がHSV感染より惹起される病気の予防であるか治療であるかにより、また感染が初感染か再感染かにより、さらに患者の年齢および体重、症状および疾患の重篤度などの種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。再感染により惹起される病気の治療を目的とする場合、本発明に係るワクチンの投与量は、体重1kgあたり約0.01ng〜10mg程度、より好ましくは約0.1ng〜1mg/kg程度であり得る。
【0193】
本発明に係るワクチンの投与回数は、上記のような種々の条件により異なるので、一概には言えないが、日単位から週単位の間隔で繰り返して投与するのが好ましい。中でも、約2〜4週間程度の間隔で、数回、好ましくは約1〜2回程度投与するのが好ましい。疾患症候学または抗体価を用いる基本的な検査により疾患の状態をモニターしながら投与回数(投与時間)を決定するのがより好ましい。
【0194】
本明細書において、「疾患または障害」とは、本発明のウイルス構築物が有効である疾患または障害をいう。そのような疾患または障害としては、例えば、ヘルペスウイルスに関連する疾患または障害(例えば、歯肉口内炎、顔面ヘルペス、口唇ヘルペス、角膜結膜炎ヘルペス、ヘルペス脳炎、性器ヘルペス、新生児ヘルペス、水痘、帯状疱疹、伝染性単核症、バーキットリンパ腫、鼻咽腔がん、肺炎、巨細胞封入体症、突発性発疹、肺炎、カポジ肉腫、PEL、キャッスルマン病)、がん(例えば、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、膀胱癌、尿道癌、大腸癌、皮膚癌、悪性メラノーマ、骨肉腫、頭頚部の扁平上皮癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸癌、リンパ腫、肝癌、中皮腫、黒色腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経線維腫、神経膠芽細胞腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経線維肉腫、神経髄芽細胞腫、線維肉腫、扁平上皮細胞癌、神経外胚葉細胞癌、甲状腺腫瘍、下垂体腫瘍、または類表皮癌腫など)、他の疾患または障害(例えば、他のウイルス(例えば、HIV、インフルエンザウイルス、ロタウイルスなど)または細菌(例えば、百日咳菌、ジフテリア菌、破傷風菌など)に起因する疾患または障害)、原核生物(例えば、淋菌、リステリアおよび赤痢菌など)および真核生物体(例えば、単細胞病原性生物体および多細胞寄生虫など)などが挙げられる。
【0195】
従って、本発明の単純ヘルペスウイルスおよび組成物は、上述のようながんを予防または治療するために用いることができる。好ましくは、進行性の膵臓癌、卵巣などの外科的切除、化学療法が困難な腹膜播種が存在するもの、固形腫瘍に対して用いられ得る。本発明は一つまたはそれ以上の癌のいくつかの形に対して個体を免疫するためにも使用され得るが、本発明は特定の癌が発現しやすい人または以前に癌を発病し、従って再発しやすい人のような個体を予防的に免疫するのにも利用され得る。遺伝学および技術ならびに疫学の発展は、個体における癌発生の可能性および危険事前評価の決定を可能にしている。遺伝子スクリーニングおよび/または家族健康履歴を用いて、特定の個人がいくつかの型の癌のどれか一つを発生する可能性を予測することが可能である。
【0196】
本発明の弱毒化HSVを含む薬学的組成物は、弱毒化HSVが効果を発揮する量を、適当な医薬用の担体その他の補助剤と組み合わせて常法により製剤化することで得ることができる。ここでいう「効果を発揮する量」または「有効量」とは、有効成分の種類、使用形態などにより異なるために一概にはいえないが、副作用が少なく目的とする効果を発揮する量が好ましい。
【0197】
本発明の弱毒化HSVを含む薬学的組成物の接種形態としては特に限定されず、公知の形態を用いることができるが、通常好ましくは、水溶液または懸濁液からなる注射剤として患者に接種される。前記注射剤には、輸液および栄養補充液なども含まれる。
【0198】
上記注射剤は、本発明の弱毒化HSVの他に、通常用いられる添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては特に限定されず、必要に応じて界面活性剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、無痛化剤、安定剤などの成分を配合することができる。界面活性剤としては例えば、Tween80、ステアリン酸ポリオキシル40、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、ラウロマクロゴールなど;乳化剤としては例えば、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸ナトリウムなど;懸濁剤としては例えば、モノステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなど;保存剤としては例えば、フェノール、硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノールなど;無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトールなど、安定剤としては例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、コハク酸などの緩衝剤、プロピレングリコール、ジエチリン、亜硫酸塩、アスコルビン酸、ロンガリットなどが挙げられる。
【0199】
また、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エチルオレイン酸などの有機エステルなど、pH緩衝剤、アジュバント、弱毒化HSVの効果を強化する免疫賦活剤などを添加することもできる。
【0200】
本発明において、上記注射剤の製造方法は特に限定されず、通常用いられる装置および方法によることができる。注射剤は調製した後、フィルター濾過による除菌を行ってもよいし、必要ならば凍結乾燥などを行って、常法により皮下・筋肉内、静脈内、腫瘍内、腹腔内、気管内、膀胱内、腸内、直腸内、口内、眼内、動脈内などへ注射剤、点滴注射剤により注入される。
【0201】
また、上記注射剤は、注射直前に溶液に溶解するか、または懸濁するのに適する固形物に調製されてもよい。
【0202】
本発明の弱毒化HSVを含む薬学的組成物の、個々の場合における正確な投与量は、例えば投与方法、投与される患者の個体差、疾患の種類、投与するときの患者の状態などによっても異なるため一概にはいえないが、例えば注射剤としてヒトに投与する場合は、成人の場合約0.01ng〜10mg/kg程度の弱毒化HSVを1日1〜数回に分げて投与できる。
【0203】
本発明の弱毒化HSVとプロドラッグとを併用する場合は、公知方法に従って使用することができ、プロドラッグの投与経路、投与量は公知の方法に従って行うことができる。プロドラッグは、本発明の弱毒化HSVと同時に、または交互に使用することができる。
【0204】
本明細書において、「プロドラッグ」とは、そのままの形では不活性であるが,生体内で薬物代謝酵素によって化学的変化をうけてはじめて活性を示すような薬物をいう(例えば、がんの化学療法剤として用いられるプリンおよびピリミジン誘導体)。本明細書において好ましいプロドラッグは、ガンシクロビル、アシクロビル、タキソール、カンプトテシン、グアニンヌクレオシド誘導体などが挙げられる。本発明における好ましいプロドラッグとしては、本発明において用いられる弱毒化HSVが含有している自殺遺伝子によって活性型に変換されるプロドラッグである。
【0205】
本明細書において、「自殺遺伝子」とは、発現すると、自己を殺傷することができる遺伝子をいい、代表的には、代謝毒性遺伝子が挙げられる。本明細書では、自殺遺伝子をウイルス構築物に導入して腫瘍細胞を自殺に追いやる方法が挙げられ、より具体的には単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを導入し得る。
【0206】
本明細書において、「癌細胞選択性を有する」とは、正常細胞における増殖速度よりも、癌細胞における増殖速度の方が勝ることを意味する。
【0207】
本発明はまた、免疫調節タンパク質とともに提供され得る。本明細書において、「免疫調節タンパク質」とは、免疫応答を促進および/または調節するタンパク質および核酸分子発現産物をいう。従って、好ましい実施形態において、免疫調節タンパク質は免疫療法剤としてまたはワクチン中の成分として送達され得る。
【0208】
免疫調節タンパク質にはケモカイン、接着分子、サイトカイン、共刺激分子、増殖因子およびレセプター分子が含まれる。免疫調節タンパク質であるケモカインにはMIP−1α、MIP−1β、RANTEs、IL−8およびMCP−1が含まれる。接着分子にはセレクチンファミリー構成物、ムチン様分子、インテグリンファミリー構成物およびイムノグロブリンスーパーファミリー構成物が含まれる。セレクチンファミリー構成物にはL−セレクチン、P−セレクチンおよびE−セレクチンが含まれる。ムチン様分子はセレクチンファミリー構成物のリガンドである。ムチン様分子にはCD34、GlyCAM−1およびMadCAM−1が含まれる。インテグリンファミリーの構成物にはLFA−1、VLA−1、Mac−1およびp150.95が含まれる。イムノグロブリンスーパーファミリー構成物にはPECAM−1、ICAM類(ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3)、CD2およびLFA−3が含まれる。サイトカインにはM−CSF、GM−CSF、G−CSF、CSF、IL−4およびIL−18の変異体(タンパク質の前形には存在するが成熟形態には存在しない最初の約35アミノ酸残基の欠失を含む)が含まれる。共刺激分子にはCD40およびCD40リガンド(CD40L)が含まれる。増殖因子には血管増殖因子、IL−7、神経成長因子および血管内皮細胞増殖因子が含まれる。レセプター分子にはFas致死遺伝子発現産物、腫瘍壊死因子TNFレセプター、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、DR6が含まれる。カスパーゼ(ICE)もまた、本発明の組成物に存在し得る。
【0209】
本発明のある実施形態では、免疫調節タンパク質は核酸分子(それは細胞に取り込まれた場合、発現されて免疫調節タンパク質を発現する)を投与することにより送達される。本発明のいくつかの態様では、免疫調節タンパク質はタンパク質それ自身を投与することにより送達される。本発明のいくつかの態様では、免疫調節タンパク質は核酸かまたはタンパク質を投与することにより送達される。本発明のある実施形態では、免疫調節タンパク質は核酸およびタンパク質を同時に投与することにより送達される。
【0210】
本発明のいくつかの実施形態では、上述の免疫調節タンパク質(タンパク質またはタンパク質をコードしている核酸分子として)は組成物またはさもなくばワクチン組成物とともに補給物として投与される。ここで、ワクチンは、サブユニット、不活化ワクチン、弱毒化生ワクチン、細胞ワクチン、組換え体ワクチン、核酸またはDNAワクチンのいずれかである。弱毒化生ワクチン、細胞ワクチン、組換え体ワクチン、または核酸またはDNAワクチンの場合、免疫調節タンパク質はこれらのワクチンの核酸分子によりコードされる。
【0211】
本明細書において、ヘルペスウイルス以外の病因因子(例えば、ウイルス(例えば、HIV、インフルエンザウイルス、ロタウイルスなど)または細菌)を処置または予防するための組成物(例えば、ワクチン)が提供される。そのような組成物は、本発明の弱毒化ヘルペスウイルスに外来遺伝子としてその病因因子の遺伝子を少なくとも1つ含む。含まれる外来遺伝子は、全長が好ましいが、免疫を惹起し得るエピトープを少なくとも一つ含んでいれば、部分配列でもよい。本明細書において、「エピトープ」とは、構造の明らかな抗原決定基をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。エピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。
【0212】
そのような外来遺伝子としては、例えば、HIVの場合、gp120、gp41、gp17マトリクスタンパク質、p24カプシドタンパク質、逆転写酵素(HIV pol)、tat revなどが挙げられるがそれらに限定されない。ロタウイルスの場合、VP4、VP6、およびVP7などが挙げられるがそれらに限定されない。インフルエンザウイルスの場合、HA、NA、およびNPなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0213】
免疫調節タンパク質は細胞傷害性T細胞(CTL)応答を誘導および促進し、および/または抗体応答を誘導および促進し、および/またはT細胞増殖応答を誘導および促進するのに有用である。
【0214】
CTL応答を誘導および促進する免疫調節タンパク質は、細胞内病原体に対する、または自己免疫疾患または癌に関して、ワクチンとともにまたはその一部として投与された場合に特に有用である。CTL応答を誘導および促進する免疫調節タンパク質は、弱毒化生ワクチン、細胞ワクチン、組換え体ワクチン、および核酸/DNAワクチンとともに投与された場合に特に有用である。もしくは、CTL応答を誘導および促進する免疫調節タンパク質は、癌または細胞内感染を患っている患者に投与される免疫療法剤として有用である。CTL応答を誘導および促進する免疫調節タンパク質は免疫無防備状態の患者に投与された場合に有用である。
【0215】
本明細書において、対象となる疾患の宿主は、ヘルペスウイルスが感染し得る動物であればどの動物でもよく、例えば、霊長類(例えば、サル、ヒト)、ウシ(肉牛、乳牛)、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、ニワトリなどが挙げられる。好ましくは、その宿主は、霊長類であり、より好ましくは、ヒトである。
【0216】
本明細書において、対象となる宿主の年齢は、ヘルペスウイルスが感染し得る年齢であれば、どのような年齢でもよく、例えば、高齢者、成人、小児、乳児、胎児などが挙げられる。
【0217】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルスを提供する。より詳細には、本発明は、ULまたはUS領域に存在する複製非必須遺伝子が不活化されたヘルペスウイルスを提供する。従来、inverted repeat領域の遺伝子を改変することによって特性が改変されたヘルペスウイルスが利用されていたが、臨床レベルでヘルペスウイルスに起因する疾患またはがんに有効なものが提供されているとはいえない。従って、ULまたはUS領域に存在する複製非必須遺伝子を不活化することによって、所望の特性(例えば、弱毒化、癌細胞への選択性、宿主(例えば、ヒト)への安全性の上昇など)を得ることができたことにより従来技術にない有利な有用性が提供される。
【0218】
1つの実施形態において、本発明に係るワクチンは、US3を発現しないHSV遺伝子組換え体を含有することを特徴とする。かかる組換え体としては、例えばHSV遺伝子のうちUS3遺伝子が翻訳されないよう処理が施されている遺伝子組換え体、またはHSV遺伝子のうちUS3遺伝子を組換え、該組換えられた遺伝子が翻訳されるとUS3とは異なるタンパクが発現する遺伝子組換え体などが挙げられる。
【0219】
上記遺伝子組換え体を作製するための遺伝子組換え処理としては、特に限定されない。例えば、US3遺伝子の全部または一部を欠損させる処理、US3遺伝子の全部または一部を置換させる処理、US3遺伝子の一部を逆位させる処理、US3遺伝子の一部を重複させる処理、US3遺伝子の一部を転座させる処理、US3遺伝子に遺伝子断片を挿入しUS3遺伝子を中断させる処理などが挙げられる。中でも、US3遺伝子の全部または一部を欠損させる処理、US3遺伝子の全部または一部を置換させる処理、またはUS3遺伝子に遺伝子断片を挿入しUS3遺伝子を中断させる処理が好ましい。特に、US3遺伝子に遺伝子断片を挿入しUS3遣伝子を中断させる処理がより好ましく、挿入する他の遺伝子には、翻訳を停止させるシグナルが含有されていることがさらに好ましい。翻訳を停止させるシグナルとしては、中でもSV40由来のポリアデニル化シグナルが好ましい。
【0220】
上記遺伝子組換え処理は、当該分野で十分確立されているので、それにしたがって容易に行うことができる。例えば、市販の実験書、例えば、1982年発行のMolecular Cloning Cold Spring Harbor Laboratory、1989年発行のMolecular Cloning,2nd ed、Cold Spring Harbor Laboratory等に記載された方法に従って容易に行うことができる。
【0221】
本発明で用いる「US3を発現しないHSV遺伝子組換え体」としては、L1BR1が挙げられる。L1BR1は、HSV−2 186株を用いて作製される。その作製方法を、図10を用いて以下に説明する。
【0222】
HSV−2 186株の遺伝子を、地図単位を付して図10のAに示した。また、同株のHind IIIの切断地図を図10のBに示した。図10のCおよびDから明らかなように、US3遺伝子は、US領域である9.6kbのHind III L断片(図10のB)中に存在する。また、US領域の塩基情報から、9.6kbのHind III L断片中のBgl IIによる切断部位(図10C中のG)はUS3遺伝子中に含まれている(図10のCおよびD)。そこで、このBgl IIによる切断部位を利用してUS3遺伝子を不活化させ、US3欠損HSVを作製する。
【0223】
なお、HSV−2 186株のBam HI、Xba I、Bal IIによる制限エンドヌクレアーゼ切断パターン(図10のC)は、HSV−2種HG52株と一致していることは公知である(McGeoch et al.,1987)。
【0224】
より具体的には、HSV−2 186株の遺伝子から、4.8kbのHind III−Xba I断片を前クローニングする。前クローニングの方法は、例えば、pLHXなどのpBluescriptのような公知のクローニングベクターを用いて自体公知の方法に従って行えばよい。
【0225】
次いで、上記前クローニングされたHind III−Xba I断片をBgl IIで消化し、1443bpの読み取り枠を、5’末端から215残基のところで切断する。切断された部分に、図10のEで示される4.3kbの遺伝子断片を挿入する。図10のEで示される遺伝子断片は、具体的には5’末端にHSV−1β8プロモーターおよび3’末端にSV40由来のポリアデニル化シグナルを融合させたlac Zコードしている遺伝子をふくむ4.3kbのBam HI断片である。SV40由来のポリアデニル化シグナルによって、lac Z遺伝子の翻訳が停止する(Spaete and Mocarski,1985;Ho and Mocarski,1988)。
【0226】
このようにして得られたlac Z遺伝子により中断されているUS3遺伝子を有する遺伝子、すなわち図10のCで示される遺伝子断片の「G」の位置に、Eで示される遺伝子断片が挿入された遺伝子を公知の方法でクローニングする。なお、公知のクローニングベクターであるpLHXに、かかる遺伝子を挿入した遺伝子組換え体をpHZL1と称する。
【0227】
ついで、感染性のHSV−2 186株の完全DNAおよびlac Z遺伝子により中断されているUS3遺伝子を含有する線状pHZL1のDNAをベロ細胞にコトランスフェクション(同時細胞導入)する。同時に導入された2種のDNAが組換えを起こし、ベロ細胞中でHSV遺伝子組換え体が増殖する。lac Z遺伝子により中断されているUS3遺伝子を含有するHSV遺伝子組換え体は、Xgal染色によるプラークの色で選択することができる。すなわち、lac Z遺伝子はβ−ガラクトシダーゼをコードしており、HSV遺伝子組換え体lac Z遺伝子が含まれていると、β−ガラクトシダーゼが発現し、かかる酵素によりβ−ガラクトシダーゼの基質であるXgal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)が濃青色の分解産物を生じるので、青色のプラークを選択すれぱlac Z遺伝子を含有するHSV遺伝子組換え体を選択することができる。選択された遺伝子組換え体のうち1つを6回プラーク精製し、ベロ細胞中で増殖させて、L1BR1を作製する。
【0228】
上記遺伝子組換え体であるL1BR1が、US3遺伝子を中断するようlac Z遺伝子を含んでいるかどうかを調べるためには、野生型HSV−2 186株の遺伝子と比較すればよい。具体的には、L1BR1遺伝子を制限酵素処理し、プローブとしてHind III L断片中の1.6kbのBam HI断片を用いてサザンブロットハイブリダイゼーション分析を行う。野生型HSV−2 186株の遺伝子も同様の処理を行う。その結果、野生型遺伝子で観察される1.6kbの断片が、L1BR1遺伝子で喪失していれば、US3遺伝子を中断するようlac Z遺伝子を含んでいることが確認できる。
【0229】
本発明の弱毒化HSVは、癌細胞において優位に増殖しうる、癌細胞選択性を有していることが好ましい。
【0230】
別の実施形態において、1つまたは2つ以上のアクセサリー遺伝子が不活化されている弱毒化HSVとしては、例えば、UL39またはUL40が不活化されているものを挙げることができ、なかでも、UL39またはUL40と、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子とが不活化されているものが好ましい。
【0231】
UL39またはUL40が不活化されている弱毒化HSVは、この遺伝子にコードされておりDNA合成に必要なリボヌクレオチドレダクターゼを宿主に依存しなければならない。このため、UL39またはUL40が不活化されている弱毒化HSVを癌患者に接種すると、増殖が盛んな癌細胞において優位に増殖させることができる。このような弱毒化HSVに感染された癌細胞は、ウイルスが保有する様々なタンパク質の細胞障害作用によって増殖が抑制され、更には死滅してしまうこともある。
【0232】
UL39またはUL40に加えて、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子が不活化されていると、癌細胞における優位の増殖性を維持しうるとともに宿主に対する病原性を更に減弱することができる。
【0233】
UL39またはUL40と、1つまたは2つ以上の他のアクセサリー遺伝子とが不活化されている弱毒化HSVとしては、例えば、UL39(またはUL40)、UL55およびUL56が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)およびUL2が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)およびUS3が不活化されている弱毒化HSV、UL39(またはUL40)、UL2およびUS3が不活性されている弱毒化HSV等を挙げることができる。
【0234】
UL39(またはUL40)、UL55およびUL56が不活化されている弱毒化HSV、またはUL39(またはUL40)およびUL2が不活化されている弱毒化HSVは、UL39(またはUL40)のみが不活化されている弱毒化HSVよりも、さらに高い安全性を有する。一方、UL39(またはUL40)およびUS3が不活化されている弱毒化HSV、またはUL39(またはUL40)、UL2およびUS3が不活化されている弱毒化HSVは、高い癌細胞選択性に加えて癌細胞のアポトーシスを引き起こす機能を併せ持つことができる。
【0235】
本発明に係るワクチンは、上記したようなHSVより惹起される病気の予防治療剤として有用である。特に、本発明に係るワクチンは、HSVに起因する性感染症(例えば、陰部ヘルペス)の予防治療剤として有用である。
【0236】
本発明に係るワクチンを投与することにより、HSV感染の重篤度および/またはHSV感染率を減少させることができる。
【0237】
後述する実施例からも明らかなように、本発明に係るワクチンに含まれるUS3欠損HSV遺伝子組換え体は、Fas単核細胞数を増加させ、また樹状細胞、貪食細胞およびT細胞を急速に活性化させる。さらに、該組換え体は、抗ウイルス性サイトカインであるIL−12を増加させ、またIFN−γ(インターフェロンγ)をも増加させ、その刺激によりTh1細胞が活性化され、細胞性免疫が活性化される。このように、US3欠損HSV遺伝子組換え体を含有する本発明に係るワクチンを投与することにより、HSV感染に対する免疫機能が賦活され、上述のようにHSV感染の重篤度および/またはHSV感染率を減少させることができる。
【0238】
最近、単純ヘルペスウイルス1型(以下、HSV−1という)およびHSV−2のUS3遺伝子は感染細胞におけるアポトーシス阻害に必要であることが示されている(Leopardi,R.,Van Sant,and Roizman B.(1997). Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94,7891−7896.;Asano,S.,Honda,T.,Goshima,F.,Watanabe,D.,Miyake,Y.,Sugiura,Y.,and Nishiyama,Y.(1999). J.Gen.Virol.80,51−56)。したがって、US3欠損HSV遺伝子組換え体は、感染細胞のアポトーシス阻害を引き起こさないという利点も有する。すなわち、US3欠損HSV遺伝子組換え体を投与した場合は、感染細胞が直ちにアポトーシスを起こし、US3欠損HSV遺伝子組換え体の過剰増殖を抑制できるとともに、アポトーシスした感染細胞が抗原提示の役割を果たし、HSV感染に対する免疫賦活化がより一層増強される。
【0239】
別の実施形態において、本発明に係る弱毒化単純ヘルペスウイルス(以下弱毒化HSVともいう)は、複製非必須遺伝子のうち、US3遺伝子、および/または病原性関連遺伝子であるとされるUL56遺伝子のDNA塩基配列の一部あるいは全部が欠損、あるいは塩基配列の置換、修飾もしくは挿入などによって不活化されたものが用いられる。また、US3遺伝子および/またはUL56遺伝子の転写を制御することにより不活化させたものも用いることができる。
【0240】
本発明で用いられる1つの好ましい弱毒化HSVはHF株より採取されたクローンの一つであるクローン10(MNO10)であり、該クローンはヘルペスウイルスのゲノム上116515〜120346の位置に3832bpの欠失が存在し、UL56の全197アミノ酸のN末端側136アミノ酸、およびその上流を欠いている。MNO10は、名古屋大学医学部病態制御研究施設ウイルス感染研究部門において、特許法によって要求されている該菌の保存および分譲が保証されており、容易に入手することができる。
【0241】
本発明に係る弱毒化HSVは、HSV−1を用いて作製されたものでもよく、あるいはHSV−2を用いて作製されたものであってもよい。
【0242】
弱毒化HSVのUS3および/またはUL56遺伝子を不活化する方法としては特に限定されず、例えば他の配列の挿入、一部の配列の切除、塩基の修飾、塩基の置換などの公知の方法を挙げることができる。
【0243】
US3遺伝子および/またはUL56遺伝子が不活化することにより、本発明の弱毒化HSVを癌細胞において優位に増殖させることができる。さらに標的とする癌細胞において自殺遺伝子を効率的に発現させることができ、ひいては抗癌作用をより効果的に作用させることができる。
【0244】
本発明のUS3遺伝子および/またはUL56遺伝子が不活化されている弱毒化単純ヘルペスウイルスは、当該ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグと組み合わせ、または組み合わせずに単独で癌の治療に使用される。
【0245】
本発明の弱毒化HSVは、好ましい実施形態において、チミジンキナーゼ遺伝子を含有していることから、プロドラッグであるガンシクロビルを投与すると、ガンシクロビルがチミジンキナーゼによってリン酸化され活性型となり、弱毒化HSVは、癌細胞のDNAポリメラーゼとともに、DNA中に取り込まれてDNA合成、DNA依存性RNA合成を阻害する。このような働きを行う遺伝子を自殺遺伝子とよび、本発明においては上記のチミジンキナーゼ遺伝子の他に、外来性の自殺遺伝子を発現可能なように組み込んでもよい。
【0246】
上記外来性の自殺遺伝子としては、プロドラッグを活性型に変換することができるものであれば特に限定されず、例えばシトシンデアミナーゼ遺伝子、大腸菌gpt遺伝子、大腸菌deoD遺伝子、カルボキシエステラーゼ遺伝子などを挙げることができる。
【0247】
別の好ましい実施形態では、本発明は、US3欠損HSV−2ウイルスを提供する。
【0248】
本発明は、ワクチン組成物(DNAワクチン、弱毒化生ワクチンおよび組換え体ワクチンを含む)の一部として個体の細胞へ遺伝子構築物を送達する工程を包含する、個体を免疫化する改良された方法を提供する。遺伝子構築物は免疫調節タンパク質をコードしおよびそれが発現を達成するためにワクチン中で機能できる制御配列へ作動可能なように連結されているヌクレオチド配列を包含する。改良されたワクチンは高められた細胞性免疫応答を生じる。
【0249】
本発明のUS3および/またはUL56が不活化されている弱毒化単純ヘルペスウイルスは、当該ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグと組み合わせ、または組み合わせずに単独で癌の治療に使用される。
【0250】
プロドラッグとしては、例えばガンシクロビル、アシクロビル、タキソール、カンプトテシンなどが挙げられる。本発明におげる好ましいプロドラッグとしては、本発明において用いられる弱毒化HSVが含有している自殺遺伝子によって活性型に変換されるプロドラッグである。
【0251】
本発明の弱毒化HSVはチミジンキナーゼ遺伝子を含有していることから、プロドラッグであるガンシクロビルを投与すると、ガンシクロビルがチミジンキナーゼによってリン酸化され活性型となり、さらに弱毒化HSVは、癌細胞のDNAポリメラーゼとともに、DNA中に取り込まれてDNA合成、DNA依存性RNA合成を阻害する。このような働きを行う遺伝子を自殺遺伝子とよび、本発明においては上記のチミジンキナーゼ遺伝子の他に、外来性の自殺遺伝子を発現可能なよ
上記外来性の自殺遺伝子としては、プロドラッグを活性型に変換することができるものであれば特に限定されず、例えばシトシンデアミナーゼ遺伝子、大腸菌gpt遺伝子、大腸菌deoD遺伝子、カルボキシエステラーゼ遺伝子などを挙げることができる。
実施例
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。なお、%は、特に断りのない限り重量%を示す。
【実施例】
【0252】
(実施例1 弱毒化HSV(UL39不活化HSV)の作製)
HSV−1のUL39遺伝子を含むDNA断片をプラスミドpBluescript(Stratagene社製)ヘクローニングし、そのオープンリーディングフレームを分割する形でlacZカセット(HSV UL39プロモーターを5’端に、大腸菌のlacZ遺伝子とSV40のpolyadenylation signalをその下流に有するDNA断片)を挿入したDNAを作製した。このDNAと、感染細胞より調製した感染性HSV DNAとを細胞にトランスフェクトし、その3日後に産生されてきたウイルスを採取した。その中でX−gal存在下にて青色に染色されるプラークを採取し、更に3回プラーククローニングを行った後、Vero細胞で増殖させストックとした。この変異株に対してSouthern blot、PCR、Western blot等を行い、UL39が不活化されていることを確認した。
【0253】
(実施例2:DNA複製に関しない遺伝子の不活化弱毒化HSVであるUL39およびUL56不活化HSV(Hh)の作製)
UL56遺伝子を含む領域が欠損しているHSV−1由来の株HFを用意する(名古屋大学医学部Isomura Shin博士から入手した)。この株は野生株に比べ、マウスにおける腹腔接種での病原性が著しく低く、かつ、感染細胞に細胞融合を起こす。上記のUL39欠損ウイルスとHF株とをVero細胞に混合感染させ、子ウイルスの中から細胞融合を起こし、かつ、X−gal存在下で青色プラークを作るウイルスを採取した。クローニングした後、PCR、塩基配列の決定およびWestern blotにより、UL39およびUL56に欠損があることを確認した。
【0254】
(実施例3:UL39不活化HSVにカルボキシエラスターゼが組み込まれた株の作製)
ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子のプロモーターをもつヒトカルボキシエステラーゼ遺伝子をlacZ遺伝子(オープンリーディングフレーム)を分割する形で挿入したDNAを作製した。このDNAとlacZを持つUL39不活化ウイルス由来の感染性DNAをVero細胞にトランスフェクトし、産生されてくるウイルスを採取した。X−gal存在下で無色のプラークを作るウイルスを採取し、プラーククローニングを行い、第一次ストックとした。第一次ストックとして得られた各々のクローンについて、感染細胞標本を作製し、タッグ抗体を用いて蛍光抗体法を行い、陽性のクローンに関して第二次ストックを作製した。最終的に得られたクローンについて、感染細胞におけるカルボキシエステラーゼ活性の誘導を確認した。
【0255】
(実施例4:UL56不活化HSV−1の分離)
UL56遺伝子を含む領域を欠損しているHSV−1ウイルスをHF株から分離した。このHSV−1 HF株由来クローン10(MNO10:名古屋大学医学部病態制御研究施設ウイルス感染研究部門にて保管)は、PCR、塩基配列の決定およびウエスタン分析を行うことにより、UL56遺伝子が欠損していることを確認した。
【0256】
(実施例5:多核巨細胞を形成する能力を有する弱毒化HSV(HR522)の作製)
実施例1で作製したUL39弱毒化HSVと、実施例4で分離したUL56遺伝子を含む領域を欠損しているHSV−1 HF株由来クローン10とをベロ細胞(理化学研究所細胞バンク、つくば、茨城、日本)に混合感染し、UL39弱毒化HSVのマーカーであるX−galの存在下で青いプラークを作る能力と、HF MNO10のマーカーである多核巨細胞を形成する能力の両方を持つクローンを選択した。確認のために、表現型により分離した。LacZを発現し(RR−を意味する)、感染細胞に多核巨細胞を形成する特徴を有するものを分離した。この混合感染により得られたクローンをHR522と命名した。
【0257】
(実施例6 弱毒化HSVを用いた癌治療)
エ一テル麻酔下に各群10匹のヌードマウス(雌性、6週齢)の腹腔内にヒト卵巣癌由来のSW1990を1×10ずつ膵近傍により注入し移植した。移植後7日目および12日目に腹腔内にUL39不活化HSVまたはHR522を1×10PFU/1匹ずつ、それぞれ2群に注入した。UL39不活化HSVまたはHR522接種後10日目(即ち、移植後17日目および22日目)に、UL39不活化HSV接種群およびHR522接種群のうちのそれぞれ1群に、0.4mg/1匹のガンシクロビルを投与した。それぞれの群の生存率を移植後60日目まで観察し、結果を図1に示した。
【0258】
図1に示された結果より、UL39不活化HSVおよびHR522を接種することにより、ヌードマウスの生存期間が延長することが明らかとなった。また、さらに、ガンシクロビルを投与することによって生存期間がより一層延長することが明らかとなった。なかでも、HR522接種+ガンシクロビル投与群の生存率が高かった。
【0259】
(実施例7 弱毒化HSVと公知の抗ガン剤との比較)
エーテル麻酔下に各群10匹のヌードマウス(雌性、6週齢)の腹腔内にヒト卵巣癌由来のSWl990を1×10ずつ膵近傍により注入し移植した。移植後7日目および12日目に、それぞれ1群ずつ、腹腔内にUL39不活化HSVもしくはHR522を5×10PFU/1匹ずつ注入するか、または、公知の抗ガン剤としてタキソールを0、4mg/1匹投与した。それぞれの群の生存率を移植後60日目まで観察し、結果を図2に示した。
【0260】
図2に示された結果より、UL39不活化HSVおよびHR522を接種した群の方が、タキソールを投与した群より生存期間が延長することが明らかとなった。
【0261】
(実施例8 US3欠損ウイルスの作製)
(マウスおよびウイルス)
雌のBALB/cマウスは日本SLC(浜松、日本)から購入し、処置開始時には生後8〜10週間であった。すべてのマウスをゲージに収容し、画一的に推奨されているガイドラインに沿って扱った。「Daikoku,T.,Yamashita,Y.,Tsurumi,T.,Maeno,K.,and Nishiyama,Y.(1993). Virology 197,685−694.」に記載されている方法でUS3を発現しないHSV−2 186の遺伝子組換え体を作製した(以下、L1BR1と称する)。また、比較例として、HSV−2 186野生株(以下単に186野生株という)およびUS2欠損変異体であるYY2を用いた。かかる3種のウイルスをベロ細胞中で生育させ、使用するまで−80℃で保管した。ウイルス感染価はベロ細胞で測定し、プラーク形成単位(PFU)/mlで表わす。
【0262】
(HSV感染方法)
「Parr,M.B.,Kepple,L.,McDermott,M.R.,Drew.M.D.Bozzola,J.J.,and Parr,E.R.(1994). Lab.Invest.70,369−380.」、および「Milligan,G.N.,and Bernstein,D.I.(1997). Virol.229,259−268.」に記載された方法によって、マウスの膣内にウイルス接種した。ウイルス接種前に、すみやかにプロゲステロン優勢段階で発情周期を連動させるため、すべてのマウスにβ−エストラジオール 17−シピノサイト(β−estradiol 17−cypionate)(以下、Eと略す)(Sigma、St.Louis、MO)を0.1μg/マウス、および翌日以降はデポープロペラ(Depo−Provera)(以下、DPと略す。)(Sigma)2mg/マウスを皮下注射した。DP投与の5日後、ぺントバルビタール(pentbarbital)ナトリウムをガーゼで塗布し、マウスを麻痩させ、186野生株、YY2またはL1BR1の懸濁液20μlを用いて、それぞれのウイルスを膣内に感染させた。
【0263】
(ウイルス感染価測定法)
PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を膣にピペットで移すことで膣損傷(vaginal ravage)を生じさせ、その後、「Milligan,G.N.,and Bernstein,D.I.(1997). Virol.229,259−268.」に記載された方法に従って、ベロ細胞単分子層上でのプラーク形成による感染価の測定まで−80℃で貯蔵した。
【0264】
(膣内での細胞調製)
膣由来のMNC(単核細胞)およびEC(上皮細胞)は、「Rakasz,E.,Hagen.M.,Sandor,M.,and Lynch,R.G.(1997).Int.Immunol.9,161−167」に記載の方法に改変を加えた「Inagaki−Ohara,K.,Nishimura,H.,Sakai,T,,Lynch,D,H.,and Yoshikai.Y,(1997).Lab.Invest.77,421−429.」に記載の方法に従い得た。手短に、致死性の麻酔後膣をマウスから切除し、2mm断片に切断し、4U/mlDNaseI含有ハンクス平衡塩溶液で37℃60分間インキュベートした。振盪後、懐死組織片を取り除くために細胞懸濁液をナイロンウールカラムに通し、単細胞の懸濁液を得た。通過細胞を20分間20℃で600×gの遠心力で40%/75%あるいは25%/40%の不連続なPercoll(Pharmacia,Uppsala,Sweden)勾配で遠心分離した。MNCおよびECはそれぞれ40%/75%および25%/40%のインターフェイスから集められた。タイムコース間でのHSV感染後、毎日5匹のマウスから単離された細胞を下記の実験のためにプールした。
【0265】
(フローサイトメトリー法)
細胞は、「Inagaki−Ohara,K.,Kobayashi,N.,Nishimura,H.,Sakai,T.,Matsumoto,Y.,Hiromatsu,K.,Awaya,A.,and Yoshikai,Y,(1996)。Cell.Immunol.171,30−40.」に記載された方法により染色した。本発明で使用されたモノクローナル抗体(mAbs)は、PharMingen(San Diego,CA)から購入され、下記にそれを記す;FITC−抱合型抗CD3 mAb(145−2 C11)、抗CD11b mAb(M1/70)、抗CD40 mAb(3/23)、抗IAdmAb(AMS−32.1)、PE−抱合型抗CD4mAb(RM4−5)、抗CD45/B220(RA3−6B2)、抗CD40L mAb(MR1)、ピオチン抱合型抗CD8αmAb(53−6.7)。染色細胞はEPICS XLフローサイトメトリーによって分析した(COULTAR,Miami,FL)。
【0266】
(組織学的分析法)
マウスは致死的に麻痺させ、4%のホルムアルデヒド含有PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で固定した。膣壁、子宮および直腸は矢状に切断してブロック状にし、パラフィンに埋め込んだ。次に、3μmの厚さのパラフィン断片をヘアマトキシリン(heamatoxylin)−エオシン染色で組織学的に調べ、ウサギのHSV−2抗血清を用いて、「Kurachi,R.,Daikoku,T.,Tsurumi,T.,Maeno,K.,Nishiyama,Y.,Kurata,T.(1993).Arch Virol.133,259−273」に記載した方法に従って免疫組織化学的に分析した。手短に脱パラフィン処理を行った後、断片を0.02(v/v)%塩化カルシウムおよび0.25(v/v)%トリプシン(Difco,Detroit,MI)含有PBSで30分間37℃処理し、0.3容量%の過酸化水素メタノール溶液に30分間浸した。断片を4℃で夜通し、抗HSV−2抗血清と反応させた。ビオチン化された抗ウサギIgG(DAKO、日本,東京,日本)を加えて37℃30分間、続いて37℃で30分間、ペルオキシダーゼ抱合型ストレプトアビジン(DAKO日本)を加えて反応させた。ペルオキシダーゼ反応は0.02%ジアミノベンジジン(ケミカル同仁、熊本、日本)および0.015%過酸化水素含有の0.05Mトリス緩衝液(PH7.6)の中で行った。細胞核は2%のメチルグリーン(Chrome,Stuttgart,ドイツ)で対比染色した。
【0267】
(ELISAによる膣洗浄液でのサイトカイン測定)
膣洗浄液は毎日、感染後に集められた。膣洗浄液内のサイトカイン内容物は、メーカーの説明書に従って、マウスのIFN−γ、IL−4(BioSource International,Inc.Camarillo,カナダ)およびIL−12を用いてELISA法による測定キット(Amersham LIFE SCIENCE、Buckinghamshire,イギリス)を用いて分析した。
【0268】
(統計分析)
誤差の重要度を決定するために、t−検定を用いた。0.05未満のp値は、誤差が有意であるとみなした。
【0269】
(186野生株、YY2(US2欠損186株)またはL1BR1(US3欠損186株)によって誘導された生殖器の病変と死亡率)
病原性に関するUS2およびUS3欠損の効果を測定するために、YY2あるいはL1BR1のそれぞれ20,000PFUをマウスの膣内に感染させた。図3は膣感染後の、マウスの代表的な外観を示している。YY2を感染させたマウスの性器は、接種後(post−inoculation;p.i.)5日目に186野生株を感染させたマウスと同様に著しく膨張し始めた。一方、L1BR1感染させたマウスでは膣炎症の兆候はほとんどみられなかった。生存率は図4に示している。186野生株あるいはYY2を感染させたマウスはすべて、膣内接種後10日以内に死亡した。対照的に、L1BR1を感染させたすべてのマウスは接種後(p.i.)3週間でも生き残った。
【0270】
(膣からのウイルスのクリアランス)
膣粘膜からのウイルスクリアランス率を比較するために、186野生株、YY2あるいはL1BR1を膣内感染させた後にウイルスの滴定を測定した(図5)。それらのマウスのウイルス滴定濃度は急速に増加し、接種後(p.i.)1日で最大レベルに達した。YY2およびL1BR1感染マウスにおける滴定濃度は5日目まで徐々に下がり、L1BR1感染マウスでは5日目以降に急激に下がった。186野生株感染マウスにおける滴定濃度は3日目まではよく保たれていたが、その後緩やかに低下した。
【0271】
(膣の組織病理学的変化)
膣および子宮の病理学的変化は接種後(p.i.)1、3、5および7日目で犠牲となったマウスすべてにおいて調べられた。すべてのマウスにおいて、ウイルス感染は1日目に膣壁の扁平上皮細胞上皮組織で観察された(図6A、B、C)。組織学的な分析により、巨大多核細胞および核内封入体は扁平上皮細胞で見られ、HSV−2抗原もまた、これらの細胞で検出された(図6D、E、F)。3日目までには病変に有意義な変化は観察されなかった。今回、ウイルス感染は外陰部および皮膚の扁平上皮細胞上皮組織まで拡大し、186野生株およびYY2を感染させたマウスの上皮下組織における神経叢に達した。しかしながら、そのようなウイルスの拡散はL1BR1感染マウスでは観察されなかった。代わりに、単核細胞の著しい上皮下への浸透が接種後(p.i.)5日目に観察された(図6G、H、I)。
【0272】
(膣における細胞反応)
次に、膣から単離された単核細胞(MNC)数を測定した。図7Aに示されるように、L1BR1感染マウスのMNC数は5日目まで増加し、その後、急速に減少した。しかしながら、186野生株あるいはYY2感染マウスでは、MNC数は1日目には増加したが、その後は増加せず、接種後(p.i.)3日目に緩やかな減少が観察された。この特異的な反応動態は、膣壁の組織学的変化に非常に関連している。これらの結果から、186野生株あるいはYY2に感染したマウスにおけるウイルスクリアランスの遅延が、高い致死率をもたらすことがわかる。
【0273】
(Fas抗原の発現レベル測定)
図7Bに示されているように、L1BR1感染マウス中のFas細胞数は5日目までは、186野生株あるいはYY2感染マウス中のFas細胞数より多めに増加した。Fas+細胞の大部分はMHCクラスII抗原、I−A(データは示されていない)に陽性であった。これは、L1BR1感染マウスにおけるFas膣EC数が、感染初期の段階で186野生株あるいはYY2感染マウスよりも著しく多いことが分かる。
【0274】
(膣におけるAPCおよびT細胞出現の反応動態測定)
図8からも明らかなように、CD40およびCD11bは、DCおよびMφそれぞれに対する代表マーカーとして用いた。L1BR1感染マウスのCD40細胞数は急速に増加し、実験を通じて186野生株あるいはYY2感染マウスよりも一貫して多かった。3日目にはCD11b細胞の数はわずかに増加したのみであったが、5日目にはL1BR1感染マウスで著しい増加が観察された。T細胞に関しては、CD4、CD8、CD40LおよびFasT細胞数は5日目に最大限のレベルに達したが、その後減退した。CD40LはFasと同様に活性化されたT細胞で発現された。L1BR1感染マウス中のFasおよびCD40L細胞数は、186野生株あるいはYY2感染マウスにおけるFasおよびCD40L細胞数よりもはるかに多かった。それらもまた、5日目には最大レベルに適した。この結果から、膣でのAPCおよびT細胞の誘導/活性は186野生株あるいはYY2感染マウスに比べると、L1BR1感染マウスではより急速で、大きいことが示された。
【0275】
(膣洗浄液中のサイトカイン分泌)
サイトカインの生産は、ウイルス性病原体から宿主を保護するのに必要である。そこで、2日目にELISAでサイトカインの生産レベルを調べた結果、IL−12生産の増加が検出され、2日目および4日目においてIL−12生産は186野生株あるいはYY2感染マウスよりも、L1BR1感染マウスでのほうで著しく高かった(図9)。IFN−γおよびIL−4はそれぞれTh1とTh2の代表サイトカインである。生産パターンは、IFN−γではLIBR1感染マウスが186野生株感染マウスよりも4日目で有意に高かった。一方、L1BR1感染マウスにおけるIL−4生産レベルは、186野生株感染マウスよりも低くなる傾向にあった。YY2感染マウスにおげる両方のサイトカインの生産パターンとレベルは、186野生株感染マウスで観察されたものと類似していた。これらの結果から、Th1に偏向したサイトカイン生産はL1BR1感染マウスで誘導されるということが分かる。
【0276】
本発明に係るワクチンに含有されているUS3欠損HSV遺伝手組換え体は非常に弱毒化されており、生物に接種しても、感染の徴候を全く示さない、またはほんの少しの徴候しか示さない。それにも関わらず、US3欠損HSV遺伝子組換え体は、感染者の体内においてHSV感染に対する免疫機能を活性化させることができる。したがって、HSV感染の重篤度および/またはHSV感染率を減少させ、HSV感染より惹起される病気を予防および/または治療することができる。さらに、US3遺伝子はウイルス複製に必ずしも必要でないことからかかるUS3欠損HSV遺伝子組換え体が接種した生物の体内で増殖することにより、HSV感染に対する免疫活性を長期間に渡って持続させることができる。
【0277】
(実施例9 HF株クローン10(MNO10)およびUL39不活化HSVの抗腫瘍作用の比較)
エーテル麻酔下に各群10匹のC3Hマウス(生後6週齢)の腹腔内にC3Hマウス由来の腫瘍細胞株NfSaY83を1×10細胞/1匹ずつ注入し移植した。移植後、7日目にそれぞれ1群ずつ腹腔内にUL39不活化ウイルスまたはHF株クローン10(UL56欠損ウイルス)を1×10pfu(plaque forming unit)/1匹ずつ注入した。UL39不活化ウイルスを注入した群にのみ、さらに移植12日目に2回目の注入を行い、生残日数を比較した。癌細胞のみを接種した群のマウスをコントロールとし、結果は図11に示す。
【0278】
図11に示された結果より、13日目までは、いずれの群でも生存率は100%を示していた。その後、UL39不活化ウイルスを2回接種した場合であっても、HF株クローン10を1回接種した群のほうが生存期間が延長することが明らかになった。
【0279】
(実施例10 HF(MNO10)の連続投与による効果)
エーテル麻酔下に各群10匹のC3Hマウス(生後6週齢)の腹腔内にC3Hマウス由来の腫瘍細胞株NfSa Y83を5×10細胞/1匹ずつ注入し移植した。移植後、1群については7日目、8日目および9日目と3日間連続で腹腔内にHF株(UL56欠損ウイルス)を1×10pfu(plaqueforming unit)/1匹ずつ注入し、生残日数を比較した。癌細胞のみを接種した群のマウスをコントロールとし、結果は図12に示す。
【0280】
図12に示された結果より、17日目までは、どちらの群でも生存率は100%を示していた。その後、ウイルスを連続投与することにより、生存日数はさらに延長されることがわかった。
【0281】
(実施例11)
本発明の弱毒化HSV(MNO10)1×10pfu、ブドウ糖1.8g、クエン酸ナトリウム0.06gを注射用水80mlに溶解し、さらに水酸化ナトリウムを加えてpH6.3に調製後、注射用水で全量を100mLにメスアップした。次に、この溶液を濾過した後、ガス透過性プラスチック容器(PP製)に500mL充填した。この容器を116℃で14分間高圧蒸気滅菌を行った後、該容器を二次包材(酸化アルミ蒸着フィルム)で包装し、真空包装または窒素ガス封入し、注射剤を得た。
【0282】
本発明のUL56が不活化されている弱毒化HSVを用いると、1回のみの投与であっても、弱毒化HSVであるUL39不活化ウイルスを投与した場合よりも高い延命効果を得ることができる。すなわち、弱毒化HSV株が連続的に投与されることになる。
【0283】
さらに、本発明の弱毒化HSVを連続投与することにより、さらに高い延命効果を得ることができ、悪性腫瘍治療用の薬学的組成物に有用であることが実証された。
【0284】
(実施例12:US3欠損HSV−2ウイルスおよびUS3およびUL56不活化HSV(HL)の抗腫瘍作用)
次に、US3欠損HSV−2ウイルスおよびUS3およびUL56不活化HSV(HL)の抗腫瘍作用について調べた。
【0285】
(用いたウイルス)
本実施例において使用されるウイルスは以下のとおりであり、その構造は図13に示される。
1)HSV−2 US3Δ(L1BR1)
HSV−2の野生株(186株)からUS3遺伝子をlacZカセットの挿入により不活化した変異ウイルス。このウイルスは、実施例8に記載されるように作製した。
2)HSV HL
HSV−1 HFと、HSV−2 US3Δの組換えウイルスである。L領域は、おもにHSV−1 HF由来であり、S領域は、HSV−2由来である。作製は、上記ウイルス2種を混合感染し、細胞融合を形成し、かつ、X−gal存在下で青いプラークを生成するウイルスを分離することによって行った。その後PCRにて遺伝子を構成を確認した。HLウイルスは、US3およびUL56の遺伝子欠損を有する。
3)HSV−1 UL39不活化HSV
上記実施例において使用されたものを同様にコントロールとして使用した。
【0286】
(マウス)
エーテル麻酔下に各群10匹のC3Hマウス(生後6週齢)の背部および頸部にC3Hマウス由来の腫瘍細胞株NfSakを1×10細胞/1匹ずつ注入し移植した。移植後、7日目に1群ずつ、背部に腫瘍細胞を注入したマウスにはHSV−2 US3Δを1×10pfu(plaque forming unit)/1匹、またはコントロールとしてPBSを注入し、ならびに頸部に腫瘍細胞を注入したマウスにはHLおよびHrR3を1×10pfu/1匹ずつ、およびコントロールとしてPBSを注入し、生残日数を比較した。以下の表および図14および15に示す。
【0287】

表 Melanoma固形腫瘍(背部)に対するHSV−2 US3Δの作用
(生存数(率))
Control (PBS接種)
Day1−16 5/5(100%)
Day17 4/5
Day24 2/5
Day25 1/5
Day37 0/5(0%)
HSV−2 US3Δ接種群
Day1−26 5/5(100%)
Day27 4/5
Day32 3/5
Day42 2/5
Day60 2/5(40%)

NfSak固形腫瘍(頸部)に対するHSVの作用
生存数(率)
Control (PBS接種)
Day1−22 5/5(100%)
Day23 4/5
Day25 3/5
Day30 2/5
Day31 0/5(0%)
HL接種群
Day1−27 7/7(100%)
Day28 6/7
Day30 5/7
Day32 4/7
Day60 4/7(57%)
HSV−1 UL39不活化HSV接種群
Day1−23 7/7(100%)
Day24 6/7
Day25 5/7
Day34 4/7
Day35 3/7
Day36 2/7
Day60 2/7(28%)

本発明のUS3が不活化されているHSVを用いると、1回のみの投与であっても、よりも高い延命効果を得ることができることが実証された。
【0288】
(実施例13:Hhの抗腫瘍効果)
次に、UL39およびUL56不活化HSV(Hh)を用いて抗腫瘍効果を実証した。
【0289】
対象動物として、各群6〜7匹の雌性BALB/cマウス(6週齢)を使用した。腫瘍としては癌腫Colon26(名古屋大学医学部外科学Hayashi Shuji博士より入手;大腸癌由来の細胞株;BALB/c由来)を使用した。この腫瘍細胞Colon26を5×10細胞/1匹にて腹腔内に接種した。ウイルスとして、実施例2で調製したHSV−1 Hhを用い、対象群としてPBS接種を行った。
【0290】
(形式1)
腫瘍細胞を接種後、7日目に1×10pfuを腹腔内に接種し、生存曲線をコントロール群(PBS接種)とを比較した。結果を以下に示す。
【0291】
表 Hhの抗腫瘍効果
抗腫瘍接種後日数 15日 30日 45日 60日 75日
Hh接種群 6/6 5/6 4/6 4/6 4/6
コントロール群 6/6 5/6 4/6 2/6 2/6
(形式2)
腫瘍接種後、8日、9日および10日後、3日連続で、1×10pfuのウイルス(Hh)を3回連続で接種し、生存曲線をコントロール群と比較した。結果を以下の表に示す。
【0292】

表 3回連続投与の効果
抗腫瘍接種後日数 30日 45日 60日
Hh接種群 7/7 7/7 7/7
コントロール群 5/7 4/7 2/7

以上に示すように、Hhはコントロール群に比較して顕著な抗腫瘍効果を示した。特に、安全性を著しく高めたHhでも3回摂取によって100%生存した。また、これらの生存マウスに1×10細胞のColon26で再びchallengeしたところ、100%の生存率を示した。これは、抗腫瘍免疫が成立していることを実証する。
【0293】
(実施例14:L1BR1)
この実施例では、実施例9で調製したUS3を発現しないHSV−2 186の遺伝子組換え体を用いて固形腫瘍に対する効果を実証した。
【0294】
各群5匹の雌性C3H/He(6週齢)を対象動物として使用した。腫瘍としては、上記実施例において使用されるNfSaY83を用いた。
【0295】
背部の毛をそり落とした後、NfSaを1.25×10細胞/0.1mlで背部に接種した。
【0296】
腫瘍細胞の接種後、L1BR1(1×10細胞pfu/0.1ml)を3回、腫瘍部に直接0.1ml接種した。
【0297】
評価は、生残数、腫瘍サイズ(体積)の変化を目安に行った。結果を以下の表に示す。
【0298】

表 腫瘍接種後の腫瘍サイズ体積(mm)の推移(1匹ごとに示す)

10日目 20日目 30日目 40日目 50日目
L1BR1 5 <5 <5 <5 <5
接種群 9 54 150 545 死
<5 <5 <5 <5 <5
24 <5 <5 <5 <5
13 <5 <5 <5 <5
生残数 5/5 5/5 5/5 5/5 4/5
コントロール 21 186 1210 死
群 42 419 死
73 420 死
42 161 1346 4300 死
142 266 486 死
生残数 5/5 5/5 3/5 1/5 0/5

上記のように、L1BR1(US欠損HSV−2)は、固形腫瘍に対しても優れた抗腫瘍効果を示した。
【0299】
(実施例15:HIV治療のための弱毒化HSVの利用)
次に、本発明の弱毒化HSVを利用して他の疾患を処置または予防することができることを実証する。
【0300】
ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子のプロモーターを上流に配置し、その下流にエンベロープタンパク質であるHIV gp120をコードする拡散配列を配置したものを、lacZ遺伝子(オープンリーディングフレーム)を分割する形で挿入したDNAを作製する。
【0301】
次に、このDNAと実施例5で作製した弱毒化HSV(HR522)を持つUL56およびUL39の両方が不活化されているウイルス由来の感染性DNAをVero細胞にトランスフェクトし、産生されてくるウイルスを採取する。
【0302】
X−gal存在下で無色のプラークを作るウイルスを採取し、プラーククローニングを行い、第一次ストックとする。第一次ストックとして得られた各々のクローンについて、感染細胞標本を作製し、タッグ抗体を用いて蛍光抗体法を行い、陽性のクローンに関して第二次ストックを作製する。最終的に得られたクローンについて、市販の抗gp120抗体を用いてドットブロッティングを行って、gp120の存在について確認する。gp120陽性の株を以下の実験に用いる。
【0303】
次に、HIV gp120を発現した弱毒化HSVを、HIVに感染するおそれのあるヒトの予防および/またはHIVに感染したヒトの処置に使用することができる。そして、その効果は、従来の薬物治療よりも有利であり得る。
【0304】
上記HIV抗原としては、gp120のほかに、gp41、gp17マトリクスタンパク質、p24カプシドタンパク質、逆転写酵素(HIV pol)、tat revなどを使用することができる。
【0305】
したがって、本発明の弱毒化HSVは、ヘルペスウイルスに関連する感染因子以外の感染症にも有効であることが実証される。
【産業上の利用可能性】
【0306】
本発明により、種々の疾患(例えば、感染性疾患またはがん)に対する有効な治療法が提供された。本発明は、従来有効な処置方法がなかったヘルペスウイルス関連の疾患、腫瘍などに対して副作用の少ない、持続的な効果を有する効果を提供する。これらのことは、格別の効果といえる。また、本発明の処置方法のために使用する組成物、ウイルス構築物、キット、医薬などを製造することには、産業上の利用可能性が十分ある。本発明は、医師以外に、例えば、製薬企業などが業として本発明の組成物などを生産することができることから、産業上の利用可能性または有用性は十分にあると考えられる。本発明の方法もまた、純粋な医療目的の治療方法に加え、事業目的の治験そのものとして有用であることから、産業上の利用可能性がある。また、本発明の治療方法を間接的または直接的に実施することが、医療業周辺の産業において利用する可能性が十分考えられることから、産業上の利用可能性または有用性は十分にある。
【図面の簡単な説明】
【0307】
【図1】図1は、本発明の弱毒化HSVを接種したことによる癌治療の効果を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の弱毒化HSVと公知の抗ガン剤との癌治療効果を比較したグラフである。
【図3】図3は、E/DP処理後186野生株、YY2野生株あるいはL1BR1のそれぞれ2X10pfuで膣内感染させたBALB/cマウスの臨床的特徴を示す。写真は膣内感染後7日目に撮ったものである。
【図4】図4は、186野生株、YY2野生株あるいはL1BR1のそれぞれ2×10PFUで膣内感染させたマウスの生存率を示す。それぞれの場合の試験数はn=7である。なお、図中の黒丸は186野生株を、白抜きの四角はYY2野生株を、白抜きの丸はL1BR1をそれぞれ感染させた場合を示す。
【図5】図5は、186野生株、YY2野生株あるいはLIBRlをそれぞれ感染させたマウスの膣からのウイルスクリアランスを示す。0日目における膣洗浄液は、186野生株、YY2あるいはL1BR1のそれぞれ2×10pfuで膣内感染させた後2時間後に採取した。3つの独立した実験の値は±標準偏差(SD)で表している。なお、図中の黒丸は186野生株を、白抜きの四角はYY2野生株を、白抜きの丸はL1BR1をそれぞれ感染させた場合を示す。また、図中の**は、186野生株感染マウスにおける値と比較した場合の有意差がp<0.001であったことを示す。図中の*は、上記有意差がp<0.01であったことを示す。
【図6】図6は、A〜Fは、実施例において組織学的免疫組織化学的検討に用いたBALB/cマウスの膣粘膜を示す。AおよびDは、模擬感染させたマウスの膣粘膜、BおよびEは186野生株感染マウスの膣粘膜、CおよびFはL1BR1感染マウスの膣粘膜を示す。
【0308】
G、H、Iは、接種後5日目における、186野生株(G)、YY2野生株(H)およびL1BR1(I)感染マウスの膣壁の組織学的変化を示す。なお、A〜Iは倍率100倍で見た場合の顕微鏡写真である。A、B、C、G、HおよびIは、ヘマトキシリン(heamatoxylin)−エオシン(eosin)染色をもちいて染色したものである。D、EおよびFはHSV抗原を検出したものである。
【図7】図7では、Aは、186野生株、YY2野生株あるいはL1BR1における膣MNCの数を示す。膣MNCの数は、それぞれのウイルスを感染させたマウスから集められた生存可能な細胞数をトリパンブルーで染色された細胞数によって測定した。なお、図中の黒丸は186野生株を、白抜きの四角はYY2野生株を、白抜きの丸はL1BR1をそれぞれ感染させた場合を示す。
【0309】
Bは、膣ECで発現するFasの動態を示す。186野生株、YY2野生株あるいはL1BR1感染マウスから単離された膣ECを抗Fas mAbで染色した。
【図8】図8は、HSV感染マウスから単離された膣MNCを、APC検出のためにCD11bおよびCD40で染色し、T細胞検出には標示mAbで染色したものを示す。3つの独立した実験の値は±標準偏差(SD)で表されている。図中の**は、186野生株感染マウスにおける値と比較した場合の有意差がP<0.001であったことを示す。図中の*は、上記有意差がP<0.01であったことを示す。
【図9】図9は、膣洗浄液におけるサイトカイン生成量を示す。膣洗浄液は0,2,4日目の186野生株、YY2野生株あるいはL1BR1感染マウスから集められた。IL−12、IFN−γおよびIL−4のレベルは、ELISAによって測定された。3つの独立した実験の値は±標準偏差(SD)で表されている。図中の**は、186野生株感染マウスの値と比較した場合の有意差がP<0.05であったことを示す。図中の*は、上記有意差がP<0.01であったことを示す。
【図10】図10において、Aは、HSV−2の遺伝子の模式図である。該模式図には、地図単位を示した。
【0310】
Bは、HVS−2 186株のHind IIIの切断地図である。
【0311】
Cは、本発明に関係のある制限酵素部位(制限エンドヌクレアーゼ切断部位)の地図上の位置を示す。なお、図中のHは、Hind IIIによる制限酵素部位を示し、Bは、Bam HIによる制限酵素部位を示し、GはBal IIによる制限酵素部位を示し、Xは、Xba Iによる制限酵素部位を示し、
Dは、pBluescriptであるpLHXで前クローニングされた4.8kbのHind III−Xba I断片におけるUS3遺伝子の位置を示す。
【0312】
Eは、5’末端にHSV−1β8プロモーターおよび3’末端にSV40由来のポリアデニル化シグナルを融合させたlac Zをコードしている遺伝子をふくむ4.3kbのBam HI断片を示す。かかる4.3kbのBam HI断片は、pLHXのBal IIによる制限酵素部位に挿入され、遺伝子組換え体pHZL1が作製される。
【図11】図11は、UL56欠損HSV(HF株;MNO10)またはUL39不活化HSVを接種した場合の生存日数を比較した図である。図中、白抜き菱形はコントロールを、黒四角はUL39不活化HSVを1回のみ投与したものを、白抜き三角はUL39不活化HSVを2回投与したものを、そしてばつ印はRF株を1回のみ投与したものを示す。
【図12】図12は、UL56欠損HSV(MNO10)の連続投与した場合の生存日数を示した図である。図中、黒菱形はコントロールを、白抜き三角はHF株を連続投与したものを示す。そのときの体重変化も示す。
【図13A】図13Aは、実施例9で用いたゲノム構造を示す図である。L1BR1は、HSV−2においてUS3遺伝子を不活化したものである。HFは、HSV−1においてUL56遺伝子を不活化させたものである。HLは、L1BR1とHFとをハイブリッドしたものである。L領域は、HSV−1であり、S領域は、HSV−2であり、UL56およびUS3の両方が欠損している。ゲノム構造は下のPCR結果から推定した。
【図13B】図13Bは、実施例13で用いたゲノム構造を示す図である。HFは、HSV−1においてUL56遺伝子を不活化させたものである。Hhは、UL39およびUL56遺伝子が不活化されたHSV−1である。UL39不活化HSVは、UL39遺伝子が不活化されたHSV−1である。変異塩基の表も示す。
【図13C】図13Cは、HFの不活化の詳細な説明図である。
【図13D】図13Dには、TRLとUL領域との間に挿入されたUL56周辺の遺伝子配列が示される。
【図13E】図13Eには、TRLとUL領域との間に挿入されたUL52周辺の遺伝子配列が示される。
【図13F】図13Fには、もともとあるUL56の周辺の遺伝子配列が示される。
【図14】図14は、US3遺伝子を不活化したHSV−2の抗腫瘍効果を示すグラフである。
【図15】図15は、UL56遺伝子を不活化したHSV−2の抗腫瘍効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの複製非必須遺伝子が不活化されている、単純ヘルペスウイルスであるヘルペスウイルス。
【請求項2】
外来性の自殺遺伝子をさらに含む、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項3】
カルボキシエステラーゼ遺伝子をさらに含む、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項4】
癌細胞選択性を有する、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項5】
前記不活化は、前記複製非必須遺伝子の配列における、少なくとも1ヌクレオチドの置換、付加、欠失または改変が含まれる、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項6】
前記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項7】
前記複製非必須遺伝子は、US3を含む、請求項1に記載のヘルペスウイルス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘルペスウイルスを含む、薬学的組成物。
【請求項9】
弱毒化ヘルペスウイルスが活性型に変換しうるプロドラッグをさらに含む、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記プロドラッグは、ガンシクロビル、アシクロビル、タキソールおよびカンプトテシンからなる群より選択されるものを含む、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
腫瘍処置のための、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの腫瘍処置のための薬剤をさらに含む、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグの抗癌作用増強のための、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
感染性疾患を処置または予防するための、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
腫瘍を処置または予防するための薬学的組成物を製造するための、ヘルペスウイルスの使用であって、
該ヘルペスウイルスは、少なくとも1つの複製非必須遺伝子が不活化されている、使用。
【請求項16】
前記複製非必須遺伝子は、US3を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記薬学的組成物は、ワクチンである、請求項15、16または17の使用。
【請求項19】
ヘルペスウイルスによって活性型に変換されるプロドラッグの抗癌作用増強のための薬学的組成物を製造するための、ヘルペスウイルスの使用であって、
該ヘルペスウイルスは、少なくとも1つの複製非必須遺伝子が不活化されている、使用。
【請求項20】
前記複製非必須遺伝子は、US3を含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2を改変したものである、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
前記薬学的組成物は、ワクチンである、請求項19、20または21の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図13D】
image rotate

【図13E】
image rotate

【図13F】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−5696(P2009−5696A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149907(P2008−149907)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【分割の表示】特願2002−589692(P2002−589692)の分割
【原出願日】平成14年5月9日(2002.5.9)
【出願人】(301004743)株式会社エムズサイエンス (8)
【出願人】(502268900)
【Fターム(参考)】