ヘルメット
【課題】 従来のヘルメットは、このヘルメットの外表面に、シリカ、セラミックの微粒子をアクリル結合剤とともに硬質のラッテクスのベースに浸液した混合物でなる断熱塗料を塗布した構造である。直射日光等の放射熱エネルギーの大部分を反射、及び/又は、吸収できる特徴がある。しかし、ヘルメット内の殺菌と、消臭効果は、構造上よりして不可能である。
【解決手段】 本発明は、ヘルメット本体の内外面に銀鏡皮膜を設け、内外面に設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とするヘルメットである。ヘルメット内の蒸れと、温度上昇の回避、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、悪臭発生による不快感の解消に役立つ特徴がある。
【解決手段】 本発明は、ヘルメット本体の内外面に銀鏡皮膜を設け、内外面に設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とするヘルメットである。ヘルメット内の蒸れと、温度上昇の回避、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、悪臭発生による不快感の解消に役立つ特徴がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡皮膜(銀鏡メッキ)の特徴である高い熱伝導率を利用した断熱、及び/又は、放熱効果と、殺菌かつ消臭効果が期待できるヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
基本となる、銀鏡皮膜を生成する方法は、本出願人も含めて、多数の出願がある。しかし、何れも、「プラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等の基材の表面に、直接、又は各基材に応じた下地層(ベースコート/アンダーコート)を形成した後、銀鏡皮膜を形成させる方法」、又は美感を重視する容器、例えば、化粧品、装飾品等の容器に、銀鏡皮膜を形成する構造である。その一例を説明する。
【0003】
文献(1)は、特開2004−190061の「銀鏡皮膜の製造方法」、この発明は、基材の表面上に、均一な銀白色の銀鏡皮膜を形成する方法で、基材に直接、又は下地層を形成し、第1スズイオン、又はパラジウムイオンで活性化処理し、活性化処理の後、銀イオン処理を行い、銀鏡反応で銀鏡皮膜を形成し、銀鏡皮膜の形成後、チオ硫酸塩を含有する水溶液で処理する構造である。効果は、銀鏡皮膜の耐食性の向上と、チオ硫酸塩での安定化処理を行うことで、銀鏡皮膜の耐変色性の向上と、を図る。
【0004】
また、文献(2)は、特開2006−274400の「銀鏡皮膜の形成方法」、この発明は、基材の表面に銀鏡皮膜を形成する際に、カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下か、又は二酸化珪素の水系分散物の存在下で行う構造である。効果は、色調が青味か、又は金色を帯びた鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる。
【0005】
さらに、文献(3)は、特開2000−104175の「容器及びその製造方法」、この発明は、無色透明、着色透明でなる容器の表面に、アクリル樹脂塗料と、チタンアルコキシド等を含有するプライマ剤を塗布し、乾燥させてプライマ層を形成し、その表面に銀鏡反応により銀めっき層を形成し、更に、この銀めっき層上にサラン樹脂の保護層を形成する構造である。効果は、容器の内表面に美しい金属光沢のめっき層を備え、かつ高い耐久性を有し、また、視認できる独自の外観を呈する容器を提供できる。
【0006】
次に、ヘルメットにおいて、その内部の高温化を回避できる、例えば、断熱効果を発揮できる構造の一例を、以下、先行文献として説明する。
【0007】
文献(4)は、特開2000−27020の「防暑帽」、この発明は、ヘルメットの外表面に、シリカやセラミックの微粒子をアクリル結合剤とともに硬質のラッテクスのベースに浸液した混合物でなる断熱塗料を塗布した構造である。効果は、直射日光等の放射熱エネルギーの大部分を反射、及び/又は、吸収する。
【0008】
また、文献(5)は、特開2010−95828の「衝撃吸収ライナ及びそれを備える保護帽」、この発明は、ヘルメット内に、突起を有する発泡スチロール材、発泡ポリウレタン材でなるライナー本体を、隙間をおいて内装し、ヘルメットに、ライナー本体が、接触しない構造である。その効果は、隙間を介して輻射熱による、ヘルメット内の熱の放散を図る。
【0009】
さらに、文献(6)は、実用新案登録第3125077号の「遮熱性および放熱性に優れた帽子」、この考案は、ヘルメット本端の外表面に、セラミックス系中空粒子およびセラミックス系遮熱顔料を含有する塗材を塗布した遮熱層を形成する構造である。効果は、ヘルメットに太陽光の熱を、遮熱層で吸収し、断熱効果を図ること、また、帽子内部の熱は、セラミックスの遠赤外線放射機能で、遮熱層を通り、帽子の外側へ放熱すること、である。
【0010】
【特許文献1】特開2004−190061
【特許文献2】特開2006−274400
【特許文献3】特開2000−104175
【特許文献4】特開2000−27020
【特許文献5】特開2010−95828
【特許文献6】実用新案登録第3125077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
文献(1)〜(3)の発明は、各種基材の表面に、耐食、耐変色性、又は装飾等の銀の有する特性の発揮を図る銀鏡皮膜の製造方法と、その容器等の構造である。そして、この基材には、ヘルメットを対象とする構造でなく、かつ、例えば、このヘルメットの内外面(内外部)に銀鏡皮膜を設けた構造を利用して、ヘルメット装着(着用)時の高温化の解消等を意図しない。また、ヘルメットを装着時における、内外面の高温化に基く、不快感の解消の考えはない。因みに、この不快感とは、例えば、装着時の蒸れと、温度上昇、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、悪臭発生である。
【0012】
そこで、本発明は、蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、内面に銀鏡皮膜を設けた構造では、銀の有する殺菌かつ消臭効果を利用して、細菌繁殖抑制と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。
【0013】
また、文献(4)〜(6)の発明等は、ヘルメットの断熱、及び/又は、放熱効果を図る構造であるが、外表面であり、放熱効果は、ヘルメット本体の効果と考えられる。従って、例えば、前述と同様に、ヘルメットの内外面に銀鏡皮膜を設けた構造を利用して、このヘルメット装着時の高温化と、その不快感の解消には、十分とは考えられない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、温度上昇と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感を解消するために、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、また、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図ること、さらに、この銀の有する殺菌かつ消臭効果を利用して、細菌繁殖抑制を図ること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、主として、ヘルメットの内面(内部)の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感の解消であり、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。また、請求項1の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果を最大限に発揮すること、制約される要素を排除し、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造とすること、等を意図する。
【0016】
請求項1は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、この内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0017】
請求項2の発明は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、ヘルメットの内外面の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと悪臭発生による不快感の解消を図り、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。また、請求項2の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果、及び反射効果を最大限に発揮し、蒸れ防止と、温度上昇、並びに不快感を解消することを意図する。
【0018】
請求項2は、ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、この内外面に設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0019】
請求項3・4の発明は、請求項1の意図とともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を確実、かつ美麗に塗着するために、最適な下処理と仕上げ処理をすることを意図する。
【0020】
請求項3は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0021】
請求項4は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1の意図とともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面の防眩効果と、放熱効果を最大限に発揮すること、また、ヘルメットの外面に対する制約を無くすこと、この種のヘルメットに対する、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造とすること、等を意図する。
【0023】
請求項5は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメットである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0025】
従って、請求項1は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、主として、ヘルメットの内面(内部)の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感の解消が図れること、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図れ、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消できる。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消できる。また、請求項1は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果を最大限に発揮できること、制約される要素を排除し、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となること、等の特徴を有する。
【0026】
請求項2の発明は、ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、内外面に設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0027】
従って、請求項2は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、ヘルメットの内外面の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと悪臭発生による不快感の解消が図れ、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果が図れ、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消できる。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消できる。また、請求項2は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果、及び反射効果を最大限に発揮し、蒸れ防止と、温度上昇、並びに不快感を解消できる特徴がある。
【0028】
請求項3の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0029】
請求項4の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0030】
従って、請求項3・4は、請求項1の意図を達成できるとともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を確実、かつ美麗に塗着するために、最適な下処理と仕上げ処理を行な得る特徴がある。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメットである。
【0032】
従って、請求項5は、請求項1の意図を達成できるとともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面の防眩効果と、放熱効果を最大限に発揮すること、また、ヘルメットの外面に対する制約を無く得ること、この種のヘルメットに対する、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造を提供できること、等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第一実施例であり、内面に銀鏡皮膜を設けた(形成した)構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図2】図1の断面図
【図3−1】第二実施例であり、ライナーの内面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの一例を示した断面図
【図3−2】第二実施例の別の一例であり、ライナーの全周面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの他の一例を示した断面図
【図4】図3−1に示したヘルメットの横断面図
【図5】図1の第一実施例の別の一例を示した斜視図
【図6】第三実施例であり、外面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの斜視図
【図7】図6の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図8】第四実施例であり、内外面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図9】図8の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図10】第五実施例であり、内面に銀鏡皮膜を、その外面に遮熱塗料を設けた構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図11】図10の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図12】第一実施例、第三実施例と、第四実施例で、下地が白色のヘルメットと、従来の白色のヘルメットとの内外部温度分布を示した図表
【図13】図12に示した各実施例の内部温度をグラフで示した図
【図14】図12に示した各実施例の外部温度をグラフで示した図
【図15】第一実施例、第三実施例と、第四実施例で、下地が紺色のヘルメットと、従来の紺色のヘルメットとの内外部温度分布を示した図表
【図16】図14に示した各実施例の内部温度をグラフで示した図
【図17】図14に示した各実施例の外部温度をグラフで示した図
【図18】図12と図15に示した内外部温度分布を測定するための一例の写真と条件を示す
【図19】銀鏡皮膜の製造方法の一例を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1、図2と、図5〜図11に示した第一実施例から第五実施例において、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101を、それぞれ、清浄と、脱脂を行う。例えば、一般的に使用されている各種の脱脂剤を使用する脱脂工程である(ST−1)。
【0035】
前記脱脂工程の脱脂剤を除去するために、それぞれ、水洗と、乾燥をする水洗乾燥工程である(ST−2)。
【0036】
続いて、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101と銀鏡皮膜2との密着性を高めるため、下地材として、それぞれ、例えば、一般のアンダーコート塗料を塗布する下地材塗布工程である(ST−3)。
【0037】
前処理したヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ従来から知られている第1スズイオン、及びパラジウムイオンにより第一の活性化処理(活性化処理)する第一活性化処理工程である(ST−4)。この活性化処理に使用する活性化液は、例えば、水道水1l(リットル)に塩化第1スズ5g、及び35%塩酸10ml(ミリリットル)を溶解させることによって得られた水溶液である。この水溶液を、図示しない、スプレーガンによって、このヘルメット本体1の内面100、又は外面101に吹き付ける。
【0038】
そして、必要により、スプレーガンによって、脱イオン水を、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ、吹き付けて、余分な活性化液を洗い流す水洗工程である(ST−5)。
【0039】
その後、それぞれ、銀イオンによる第二の活性化処理(活性化処理)する。例えば、脱イオン水1lに硝酸銀0.01〜0.3モル、好ましくは、0.05〜0.1モルを含有する水溶液を使用し、この水溶液を、スプレーガンによって、ヘルメット本体1の内面100に吹き付ける第二活性化処理工程である(ST−6)。
【0040】
その後、第一・第二活性化処理した、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ、銀鏡メッキ液を、プレーガンによって、吹き付けて銀鏡皮膜2を形成する銀鏡皮膜工程である(ST−7)。そして、この銀鏡メッキ液は、例えば、脱イオン水1Lに硝酸銀0.1モル及びアンモニア0.4モル(アンモニア水として)を溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、別個に、脱イオン水1Lにホルマリン0.2モルを溶解することによって調製した還元剤溶液と、及び/又は、水1Lに二酸化珪素0.1モル〜0.8モルを溶解した水系分散液とでなる銀イオンとで構成される。この各々の溶液は、別々の圧送タンクに収納しておき、使用時、両液を、スプレーガンによって、銀イオンにて処理した表面に同時に吹き付けて銀鏡皮膜2を形成する(ST−7)。
【0041】
尚、望ましくは、この銀鏡皮膜2を設けた後、それぞれ、素早く、スプレーガンにて脱イオン水を吹き付けて、余分に付着している銀鏡メッキ液を洗い流す水洗工程がある(ST−8)。
【0042】
続いて、それぞれ、チオ硫酸塩による安定化処理工程をする(ST−9)。この安定化処理は、脱イオン水1Lにチオ硫酸塩0.01〜0.2モル、好ましくは、0.03〜0.1モルを含有する水溶液を、スプレーガンによって、銀鏡皮膜2を設けた表面に吹き付けることで、この銀鏡皮膜2の剥離と、耐久性の向上を図る重要な安定化処理工程である。
【0043】
尚、この安定化処理工程後、それぞれ、スプレーガンによって、脱イオン水を吹き付けによる洗浄と、乾燥処理する。そして、必要に応じて、この銀鏡皮膜2を保護し、かつ銀鏡皮膜2の光輝を維持するために、クリヤー塗装の如きトップコートを塗布し、乾燥する仕上げ工程をする(ST−10)。
【0044】
図1は、第一実施例であり、ヘルメット本体1の内面100に銀鏡皮膜2を形成した(設けた)構造を示している。また、図3−1は、第二実施例であり、発泡樹脂製の衝撃吸収用のライナー3の内面3aに銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。また、図3−2は、第二実施例の別の一例であり、ライナー3の全周面(内外面3a、3bと、端面3c)に銀鏡皮膜2を設けた構造を、さらに、図6は、第三実施例であり、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。そして、図8は、第四実施例であり、ヘルメット本体1の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。また、図10は、第五実施例であり、内面100に銀鏡皮膜2を、その外面101に遮熱塗料8を設けた構造を示している。
【0045】
この第一・第三〜第五実施例では、銀鏡皮膜2を設けることで、ライナー3による断熱効果の補助と、場合により、このライナー3を不要とすることで、作業の簡略化と、低コスト化、量産化、資源の有効利用等が図れる。
【0046】
そして、図3−1と図3−2、図4に示した、第二実施例において、ライナー3に、予め銀鏡皮膜2を塗布した構造とし、この銀鏡皮膜2を設けたライナー3を、ヘルメット本体1の内面100に設ける構成である。そして、このライナー3に、銀鏡皮膜2を塗布する方法は、前述のスプレーガンにする工程(ST−3〜ST−10「ST−1とST−2は省略できると考えられる」)に準ずる。また、断熱効果と放熱効果等は、第一実施例に準ずる。この第二実施例では、製作の容易性と、コストの低廉化、又は取替えの容易化、或いは量産化等を考慮した実用に供する構造である。そして、前記図3−1は、ライナー3の内面3aと端面3c(端面3cは必要により、以下同じ)、及び/又は、後述する孔301壁(壁は必要により、以下同じ)に銀鏡皮膜2を設けた一例を、図3−2はライナー3の全周面(内面3aと外面3b、及び端面3c)、及び/又は、孔301壁に銀鏡皮膜2を設けた一例を、それぞれ示している。また、その他は、前述の第一実施例に準ずる。尚、図示しないが、このライナー3は、第三実施例等に採用することは可能である。
【0047】
この第二実施例におけるライナー3には、空気の流通用の通路300(溝)を複数開設するとともに、この通路300と外部を連通する孔301を複数個設ける。これにより、ヘルメット本体1の内面100、又はこの内面100に塗布した銀鏡皮膜2、又は銀鏡皮膜20との間に、空気の流れを確保し、ヘルメットA内の蒸れ防止と、昇温を少なくすること、また消音効果を図ることを意図する。そして、図中4はあご紐、5はハンモック、6は環紐、7はヘッドバンドをそれぞれ示している。
【0048】
そして、本発明の第一実施例と、第二実施例では、ヘルメット本体1の外面101の色彩、柄、マーク(識別標章)或いは形態等は、原則として、従来と同様である。従って、例えば、本発明の構造では、ヘルメットAの採用、使用等に関して、何ら制約を受けることがないので、この種のヘルメットAの汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となる。
【0049】
前述した如く、銀鏡皮膜2を設ける位置(箇所)は、ヘルメット本体1の内面100に設ける第一実施例と、ライナー3の内面3aと端面3c、及び/又は、孔301壁に設ける第二実施例の一例と、ライナー3の全周面に設ける第二実施例の他の一例では、断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とは、若干異なるが、何れにしても、従来のヘルメット(図示せず)では期待できない効果があることは、明確である。そして、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメット本体1の外面101に設ける第三実施例では、前記第一実施例と第二実施例では、期待できない、断熱効果、及び/又は、放熱効果が図れる。尚、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメットAの内外面100、101とした第四実施例では、前記第一実施例〜第三実施例では、期待できない、断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とが図れる。そして、また、図示しないが、第二実施例とその他の一例を、前記第三実施例と、第四実施例に採用することも可能である。尚、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメット本体1の内面100で、その外面101に、遮熱塗料8を設けた第五実施例では、第一実施例と第三実施例の中間の断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とが図れる。
【0050】
そして、図5において、銀鏡皮膜2に梨子地200を形成する一例では、前記銀鏡メッキ液に凸部を形成する粒子200aを混入することで、一度の作業で、かつスプレーガンを利用して、この梨子地200を形成できる。そして、この梨子地200が、防眩効果と、消音効果の効果が図れること、又は銀鏡皮膜2の面積拡充に役立ち、かつ放熱面積の拡充に役立つ等の特徴がある。更には、使用等の制約を無くし、このヘルメットの汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となる。尚、図示しないが、この銀鏡皮膜2に梨子地200を形成する他の一例では、図6に示した外面101にも採用でき、乱反射効果と、防眩効果が期待できる。
【0051】
以上の断熱効果、及び/又は、放熱効果の効果を実証するために図18に示した条件下で、従来と、各実施例のヘルメットAの外部と内部の温度測定をし、その結果を、図12と図14の図表に表してあるので、以下に詳細を説明する。この従来と、各実施例の区別を、図12〜図17において、共通した記号(イ)〜(ニ)を使用する。この記号(イ)〜(ニ)は、下地の白色、紺色ともに、下記のように、従来の構造と、各実施例の構造である。
【0052】
(イ)は従来の白色、又は紺色のヘルメット(図示せず)の測定値を、
(ロ)は第一実施例の内面100に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
(ハ)は第三実施例の外面101に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
(ニ)は第四実施例の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
それぞれ示している。
【0053】
そして、従来と、各実施例との測定値の内部温度差を表示するが、明らかな違いがある。例えば、記号(ロ)では、図12の例で10.7度(図15の例で12.1度)、また、記号(ハ)では、図12の例で11.2度(図15の例で14.6度)の如くなり、さらに、記号(ニ)では、図12の例で13.8度(図15の例で17.8度)の如くなり、明らかな違いとなる。従って、本発明の断熱効果等があることが明確となった。そして、この結果、一番が記号(ニ)の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた第四実施例で、二番が記号(ハ)の外面101に銀鏡皮膜2を設けた第三実施例、三番が記号(ロ)の内面100に銀鏡皮膜2を設けた第一実施例である。
【0054】
また、図12と図15による従来と、各実施例との測定値の内部温度を、図13と図16のグラフの図に示し、また、その外部温度を、図14と図17のグラフの図に示す。このグラフは、縦軸が温度を、横軸が時間(分)を示している。先ず、図13と図16に示したグラフは、内部温度の時間を基準とした、推移を、記号(イ)〜(ニ)として示す。この記号(イ)は、菱形を直線で結んだ線で、記号(ロ)は、黒塗四角を直線で結んだ線で、また、記号(ハ)は、黒塗三角を直線で結んだ線で、記号(ニ)は、×を直線で結んだ線で、それぞれ示す。この図において、内部温度の差は、5分の状態では差がなく、30分の状態では、大きな差となり、記号(イ)の従来の構造のヘルメットは、その内部温度の上昇が顕著であり、暑さと蒸れの弊害がある。そして、順に、記号(ロ)〜記号(ニ)ということになる。従って、第三実施例の優位性があることが実験の結果判明した。
【0055】
次に、図14と図17に示したグラフは、外部温度の時間を基準とした、推移を、記号(イ)〜(ニ)として示す。この記号(イ)〜(ニ)の意味は、前記図13と図16のグラフの図と同じとする。この図において、外部温度の差は、5分の状態では差がなく、30分の状態では、大きな差となり、記号(イ)の従来の構造のヘルメットは、その外部温度の上昇はあるが、記号(ロ)の第一実施例が最も高くなる。従って、30分の状態の順位は、図14の下地が白色の例では、第一が、記号(ロ)の第一実施例、第二が、記号(ニ)の第四実施例、第三が、記号(イ)の従来例、第四が、記号(ハ)の第三実施例、となった。この第四の第三実施例は、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造であり、当然と考えられる。また、前記30分の状態の順位は、図17の下地が紺色の例では、第一が、記号(ロ)の第一実施例、第二が、記号(イ)の従来例、第三が、記号(ニ)の第四実施例、第四が、記号(ハ)の第三実施例、となった。この第四の第三実施例は、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造であり、当然と考えられる。
【0056】
以上の実験の結果よりして、5分から30分に向かって、順次、差が開くことが、内外部温度で、それぞれ明確になった。従って、本発明の各実施例は、ヘルメットAを長時間、装着して、作業する場合の断熱効果の利点と、疲労の軽減化、又は熱中症の防止に有効であることが理解できる。
【0057】
また、望ましくは、外面101に銀鏡皮膜2を形成する一例では、落雷時の安全性の確保と、防眩方法等に注意することを推奨する。
【符号の説明】
【0058】
A ヘルメット
1 ヘルメット本体
100 内面
101 外面
2 銀鏡皮膜
200 梨子地
200a 粒子
3 ライナー
3a 内面
3b 外面
3c 端面
300 通路
301 孔
4 あご紐
5 ハンモック
6 環紐
7 ヘッドバンド
8 遮熱塗料
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡皮膜(銀鏡メッキ)の特徴である高い熱伝導率を利用した断熱、及び/又は、放熱効果と、殺菌かつ消臭効果が期待できるヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
基本となる、銀鏡皮膜を生成する方法は、本出願人も含めて、多数の出願がある。しかし、何れも、「プラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等の基材の表面に、直接、又は各基材に応じた下地層(ベースコート/アンダーコート)を形成した後、銀鏡皮膜を形成させる方法」、又は美感を重視する容器、例えば、化粧品、装飾品等の容器に、銀鏡皮膜を形成する構造である。その一例を説明する。
【0003】
文献(1)は、特開2004−190061の「銀鏡皮膜の製造方法」、この発明は、基材の表面上に、均一な銀白色の銀鏡皮膜を形成する方法で、基材に直接、又は下地層を形成し、第1スズイオン、又はパラジウムイオンで活性化処理し、活性化処理の後、銀イオン処理を行い、銀鏡反応で銀鏡皮膜を形成し、銀鏡皮膜の形成後、チオ硫酸塩を含有する水溶液で処理する構造である。効果は、銀鏡皮膜の耐食性の向上と、チオ硫酸塩での安定化処理を行うことで、銀鏡皮膜の耐変色性の向上と、を図る。
【0004】
また、文献(2)は、特開2006−274400の「銀鏡皮膜の形成方法」、この発明は、基材の表面に銀鏡皮膜を形成する際に、カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下か、又は二酸化珪素の水系分散物の存在下で行う構造である。効果は、色調が青味か、又は金色を帯びた鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる。
【0005】
さらに、文献(3)は、特開2000−104175の「容器及びその製造方法」、この発明は、無色透明、着色透明でなる容器の表面に、アクリル樹脂塗料と、チタンアルコキシド等を含有するプライマ剤を塗布し、乾燥させてプライマ層を形成し、その表面に銀鏡反応により銀めっき層を形成し、更に、この銀めっき層上にサラン樹脂の保護層を形成する構造である。効果は、容器の内表面に美しい金属光沢のめっき層を備え、かつ高い耐久性を有し、また、視認できる独自の外観を呈する容器を提供できる。
【0006】
次に、ヘルメットにおいて、その内部の高温化を回避できる、例えば、断熱効果を発揮できる構造の一例を、以下、先行文献として説明する。
【0007】
文献(4)は、特開2000−27020の「防暑帽」、この発明は、ヘルメットの外表面に、シリカやセラミックの微粒子をアクリル結合剤とともに硬質のラッテクスのベースに浸液した混合物でなる断熱塗料を塗布した構造である。効果は、直射日光等の放射熱エネルギーの大部分を反射、及び/又は、吸収する。
【0008】
また、文献(5)は、特開2010−95828の「衝撃吸収ライナ及びそれを備える保護帽」、この発明は、ヘルメット内に、突起を有する発泡スチロール材、発泡ポリウレタン材でなるライナー本体を、隙間をおいて内装し、ヘルメットに、ライナー本体が、接触しない構造である。その効果は、隙間を介して輻射熱による、ヘルメット内の熱の放散を図る。
【0009】
さらに、文献(6)は、実用新案登録第3125077号の「遮熱性および放熱性に優れた帽子」、この考案は、ヘルメット本端の外表面に、セラミックス系中空粒子およびセラミックス系遮熱顔料を含有する塗材を塗布した遮熱層を形成する構造である。効果は、ヘルメットに太陽光の熱を、遮熱層で吸収し、断熱効果を図ること、また、帽子内部の熱は、セラミックスの遠赤外線放射機能で、遮熱層を通り、帽子の外側へ放熱すること、である。
【0010】
【特許文献1】特開2004−190061
【特許文献2】特開2006−274400
【特許文献3】特開2000−104175
【特許文献4】特開2000−27020
【特許文献5】特開2010−95828
【特許文献6】実用新案登録第3125077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
文献(1)〜(3)の発明は、各種基材の表面に、耐食、耐変色性、又は装飾等の銀の有する特性の発揮を図る銀鏡皮膜の製造方法と、その容器等の構造である。そして、この基材には、ヘルメットを対象とする構造でなく、かつ、例えば、このヘルメットの内外面(内外部)に銀鏡皮膜を設けた構造を利用して、ヘルメット装着(着用)時の高温化の解消等を意図しない。また、ヘルメットを装着時における、内外面の高温化に基く、不快感の解消の考えはない。因みに、この不快感とは、例えば、装着時の蒸れと、温度上昇、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、悪臭発生である。
【0012】
そこで、本発明は、蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、内面に銀鏡皮膜を設けた構造では、銀の有する殺菌かつ消臭効果を利用して、細菌繁殖抑制と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。
【0013】
また、文献(4)〜(6)の発明等は、ヘルメットの断熱、及び/又は、放熱効果を図る構造であるが、外表面であり、放熱効果は、ヘルメット本体の効果と考えられる。従って、例えば、前述と同様に、ヘルメットの内外面に銀鏡皮膜を設けた構造を利用して、このヘルメット装着時の高温化と、その不快感の解消には、十分とは考えられない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、温度上昇と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感を解消するために、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、また、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図ること、さらに、この銀の有する殺菌かつ消臭効果を利用して、細菌繁殖抑制を図ること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、主として、ヘルメットの内面(内部)の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感の解消であり、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。また、請求項1の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果を最大限に発揮すること、制約される要素を排除し、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造とすること、等を意図する。
【0016】
請求項1は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、この内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0017】
請求項2の発明は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、ヘルメットの内外面の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと悪臭発生による不快感の解消を図り、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図り、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消する。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消する。また、請求項2の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果、及び反射効果を最大限に発揮し、蒸れ防止と、温度上昇、並びに不快感を解消することを意図する。
【0018】
請求項2は、ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、この内外面に設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0019】
請求項3・4の発明は、請求項1の意図とともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を確実、かつ美麗に塗着するために、最適な下処理と仕上げ処理をすることを意図する。
【0020】
請求項3は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0021】
請求項4は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0022】
請求項5の発明は、請求項1の意図とともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面の防眩効果と、放熱効果を最大限に発揮すること、また、ヘルメットの外面に対する制約を無くすこと、この種のヘルメットに対する、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造とすること、等を意図する。
【0023】
請求項5は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメットである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0025】
従って、請求項1は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、主として、ヘルメットの内面(内部)の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと又は悪臭発生等による不快感の解消が図れること、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果を図れ、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消できる。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消できる。また、請求項1は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果を最大限に発揮できること、制約される要素を排除し、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となること、等の特徴を有する。
【0026】
請求項2の発明は、ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、内外面に設けた銀鏡皮膜で、ヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメットである。
【0027】
従って、請求項2は、ヘルメットを装着時における、例えば、ヘルメット内の蒸れと、ヘルメットの内外面の温度上昇の解消と、又はヘルメットに近接する頭から発する汗による細菌と、蒸れと悪臭発生による不快感の解消が図れ、この蒸れと、温度上昇を、銀の有する高い熱伝導率を利用して、放熱効果が図れ、併せて、この銀の有する高い反射効果を利用して、断熱効果を図って、解消できる。また、この細菌と、悪臭発生を、銀の有する殺菌かつ消臭効果で、解消できる。また、請求項2は、ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設けることで、放熱効果、及び反射効果を最大限に発揮し、蒸れ防止と、温度上昇、並びに不快感を解消できる特徴がある。
【0028】
請求項3の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0029】
請求項4の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメットである。
【0030】
従って、請求項3・4は、請求項1の意図を達成できるとともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を確実、かつ美麗に塗着するために、最適な下処理と仕上げ処理を行な得る特徴がある。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメットである。
【0032】
従って、請求項5は、請求項1の意図を達成できるとともに、このヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面の防眩効果と、放熱効果を最大限に発揮すること、また、ヘルメットの外面に対する制約を無く得ること、この種のヘルメットに対する、汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造を提供できること、等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第一実施例であり、内面に銀鏡皮膜を設けた(形成した)構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図2】図1の断面図
【図3−1】第二実施例であり、ライナーの内面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの一例を示した断面図
【図3−2】第二実施例の別の一例であり、ライナーの全周面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの他の一例を示した断面図
【図4】図3−1に示したヘルメットの横断面図
【図5】図1の第一実施例の別の一例を示した斜視図
【図6】第三実施例であり、外面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットの斜視図
【図7】図6の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図8】第四実施例であり、内外面に銀鏡皮膜を設けた構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図9】図8の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図10】第五実施例であり、内面に銀鏡皮膜を、その外面に遮熱塗料を設けた構造のヘルメットを一部欠截した斜視図
【図11】図10の断面図で、要部の拡大図が付加されている。
【図12】第一実施例、第三実施例と、第四実施例で、下地が白色のヘルメットと、従来の白色のヘルメットとの内外部温度分布を示した図表
【図13】図12に示した各実施例の内部温度をグラフで示した図
【図14】図12に示した各実施例の外部温度をグラフで示した図
【図15】第一実施例、第三実施例と、第四実施例で、下地が紺色のヘルメットと、従来の紺色のヘルメットとの内外部温度分布を示した図表
【図16】図14に示した各実施例の内部温度をグラフで示した図
【図17】図14に示した各実施例の外部温度をグラフで示した図
【図18】図12と図15に示した内外部温度分布を測定するための一例の写真と条件を示す
【図19】銀鏡皮膜の製造方法の一例を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1、図2と、図5〜図11に示した第一実施例から第五実施例において、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101を、それぞれ、清浄と、脱脂を行う。例えば、一般的に使用されている各種の脱脂剤を使用する脱脂工程である(ST−1)。
【0035】
前記脱脂工程の脱脂剤を除去するために、それぞれ、水洗と、乾燥をする水洗乾燥工程である(ST−2)。
【0036】
続いて、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101と銀鏡皮膜2との密着性を高めるため、下地材として、それぞれ、例えば、一般のアンダーコート塗料を塗布する下地材塗布工程である(ST−3)。
【0037】
前処理したヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ従来から知られている第1スズイオン、及びパラジウムイオンにより第一の活性化処理(活性化処理)する第一活性化処理工程である(ST−4)。この活性化処理に使用する活性化液は、例えば、水道水1l(リットル)に塩化第1スズ5g、及び35%塩酸10ml(ミリリットル)を溶解させることによって得られた水溶液である。この水溶液を、図示しない、スプレーガンによって、このヘルメット本体1の内面100、又は外面101に吹き付ける。
【0038】
そして、必要により、スプレーガンによって、脱イオン水を、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ、吹き付けて、余分な活性化液を洗い流す水洗工程である(ST−5)。
【0039】
その後、それぞれ、銀イオンによる第二の活性化処理(活性化処理)する。例えば、脱イオン水1lに硝酸銀0.01〜0.3モル、好ましくは、0.05〜0.1モルを含有する水溶液を使用し、この水溶液を、スプレーガンによって、ヘルメット本体1の内面100に吹き付ける第二活性化処理工程である(ST−6)。
【0040】
その後、第一・第二活性化処理した、ヘルメット本体1の内面100、又は外面101に、それぞれ、銀鏡メッキ液を、プレーガンによって、吹き付けて銀鏡皮膜2を形成する銀鏡皮膜工程である(ST−7)。そして、この銀鏡メッキ液は、例えば、脱イオン水1Lに硝酸銀0.1モル及びアンモニア0.4モル(アンモニア水として)を溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、別個に、脱イオン水1Lにホルマリン0.2モルを溶解することによって調製した還元剤溶液と、及び/又は、水1Lに二酸化珪素0.1モル〜0.8モルを溶解した水系分散液とでなる銀イオンとで構成される。この各々の溶液は、別々の圧送タンクに収納しておき、使用時、両液を、スプレーガンによって、銀イオンにて処理した表面に同時に吹き付けて銀鏡皮膜2を形成する(ST−7)。
【0041】
尚、望ましくは、この銀鏡皮膜2を設けた後、それぞれ、素早く、スプレーガンにて脱イオン水を吹き付けて、余分に付着している銀鏡メッキ液を洗い流す水洗工程がある(ST−8)。
【0042】
続いて、それぞれ、チオ硫酸塩による安定化処理工程をする(ST−9)。この安定化処理は、脱イオン水1Lにチオ硫酸塩0.01〜0.2モル、好ましくは、0.03〜0.1モルを含有する水溶液を、スプレーガンによって、銀鏡皮膜2を設けた表面に吹き付けることで、この銀鏡皮膜2の剥離と、耐久性の向上を図る重要な安定化処理工程である。
【0043】
尚、この安定化処理工程後、それぞれ、スプレーガンによって、脱イオン水を吹き付けによる洗浄と、乾燥処理する。そして、必要に応じて、この銀鏡皮膜2を保護し、かつ銀鏡皮膜2の光輝を維持するために、クリヤー塗装の如きトップコートを塗布し、乾燥する仕上げ工程をする(ST−10)。
【0044】
図1は、第一実施例であり、ヘルメット本体1の内面100に銀鏡皮膜2を形成した(設けた)構造を示している。また、図3−1は、第二実施例であり、発泡樹脂製の衝撃吸収用のライナー3の内面3aに銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。また、図3−2は、第二実施例の別の一例であり、ライナー3の全周面(内外面3a、3bと、端面3c)に銀鏡皮膜2を設けた構造を、さらに、図6は、第三実施例であり、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。そして、図8は、第四実施例であり、ヘルメット本体1の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた構造を示している。また、図10は、第五実施例であり、内面100に銀鏡皮膜2を、その外面101に遮熱塗料8を設けた構造を示している。
【0045】
この第一・第三〜第五実施例では、銀鏡皮膜2を設けることで、ライナー3による断熱効果の補助と、場合により、このライナー3を不要とすることで、作業の簡略化と、低コスト化、量産化、資源の有効利用等が図れる。
【0046】
そして、図3−1と図3−2、図4に示した、第二実施例において、ライナー3に、予め銀鏡皮膜2を塗布した構造とし、この銀鏡皮膜2を設けたライナー3を、ヘルメット本体1の内面100に設ける構成である。そして、このライナー3に、銀鏡皮膜2を塗布する方法は、前述のスプレーガンにする工程(ST−3〜ST−10「ST−1とST−2は省略できると考えられる」)に準ずる。また、断熱効果と放熱効果等は、第一実施例に準ずる。この第二実施例では、製作の容易性と、コストの低廉化、又は取替えの容易化、或いは量産化等を考慮した実用に供する構造である。そして、前記図3−1は、ライナー3の内面3aと端面3c(端面3cは必要により、以下同じ)、及び/又は、後述する孔301壁(壁は必要により、以下同じ)に銀鏡皮膜2を設けた一例を、図3−2はライナー3の全周面(内面3aと外面3b、及び端面3c)、及び/又は、孔301壁に銀鏡皮膜2を設けた一例を、それぞれ示している。また、その他は、前述の第一実施例に準ずる。尚、図示しないが、このライナー3は、第三実施例等に採用することは可能である。
【0047】
この第二実施例におけるライナー3には、空気の流通用の通路300(溝)を複数開設するとともに、この通路300と外部を連通する孔301を複数個設ける。これにより、ヘルメット本体1の内面100、又はこの内面100に塗布した銀鏡皮膜2、又は銀鏡皮膜20との間に、空気の流れを確保し、ヘルメットA内の蒸れ防止と、昇温を少なくすること、また消音効果を図ることを意図する。そして、図中4はあご紐、5はハンモック、6は環紐、7はヘッドバンドをそれぞれ示している。
【0048】
そして、本発明の第一実施例と、第二実施例では、ヘルメット本体1の外面101の色彩、柄、マーク(識別標章)或いは形態等は、原則として、従来と同様である。従って、例えば、本発明の構造では、ヘルメットAの採用、使用等に関して、何ら制約を受けることがないので、この種のヘルメットAの汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となる。
【0049】
前述した如く、銀鏡皮膜2を設ける位置(箇所)は、ヘルメット本体1の内面100に設ける第一実施例と、ライナー3の内面3aと端面3c、及び/又は、孔301壁に設ける第二実施例の一例と、ライナー3の全周面に設ける第二実施例の他の一例では、断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とは、若干異なるが、何れにしても、従来のヘルメット(図示せず)では期待できない効果があることは、明確である。そして、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメット本体1の外面101に設ける第三実施例では、前記第一実施例と第二実施例では、期待できない、断熱効果、及び/又は、放熱効果が図れる。尚、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメットAの内外面100、101とした第四実施例では、前記第一実施例〜第三実施例では、期待できない、断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とが図れる。そして、また、図示しないが、第二実施例とその他の一例を、前記第三実施例と、第四実施例に採用することも可能である。尚、銀鏡皮膜2を設ける位置が、ヘルメット本体1の内面100で、その外面101に、遮熱塗料8を設けた第五実施例では、第一実施例と第三実施例の中間の断熱効果、及び/又は、放熱効果と、消臭効果とが図れる。
【0050】
そして、図5において、銀鏡皮膜2に梨子地200を形成する一例では、前記銀鏡メッキ液に凸部を形成する粒子200aを混入することで、一度の作業で、かつスプレーガンを利用して、この梨子地200を形成できる。そして、この梨子地200が、防眩効果と、消音効果の効果が図れること、又は銀鏡皮膜2の面積拡充に役立ち、かつ放熱面積の拡充に役立つ等の特徴がある。更には、使用等の制約を無くし、このヘルメットの汎用性、個別性、選択性等の要望に答え得る構造となる。尚、図示しないが、この銀鏡皮膜2に梨子地200を形成する他の一例では、図6に示した外面101にも採用でき、乱反射効果と、防眩効果が期待できる。
【0051】
以上の断熱効果、及び/又は、放熱効果の効果を実証するために図18に示した条件下で、従来と、各実施例のヘルメットAの外部と内部の温度測定をし、その結果を、図12と図14の図表に表してあるので、以下に詳細を説明する。この従来と、各実施例の区別を、図12〜図17において、共通した記号(イ)〜(ニ)を使用する。この記号(イ)〜(ニ)は、下地の白色、紺色ともに、下記のように、従来の構造と、各実施例の構造である。
【0052】
(イ)は従来の白色、又は紺色のヘルメット(図示せず)の測定値を、
(ロ)は第一実施例の内面100に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
(ハ)は第三実施例の外面101に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
(ニ)は第四実施例の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた測定値を、
それぞれ示している。
【0053】
そして、従来と、各実施例との測定値の内部温度差を表示するが、明らかな違いがある。例えば、記号(ロ)では、図12の例で10.7度(図15の例で12.1度)、また、記号(ハ)では、図12の例で11.2度(図15の例で14.6度)の如くなり、さらに、記号(ニ)では、図12の例で13.8度(図15の例で17.8度)の如くなり、明らかな違いとなる。従って、本発明の断熱効果等があることが明確となった。そして、この結果、一番が記号(ニ)の内外面100、101に銀鏡皮膜2を設けた第四実施例で、二番が記号(ハ)の外面101に銀鏡皮膜2を設けた第三実施例、三番が記号(ロ)の内面100に銀鏡皮膜2を設けた第一実施例である。
【0054】
また、図12と図15による従来と、各実施例との測定値の内部温度を、図13と図16のグラフの図に示し、また、その外部温度を、図14と図17のグラフの図に示す。このグラフは、縦軸が温度を、横軸が時間(分)を示している。先ず、図13と図16に示したグラフは、内部温度の時間を基準とした、推移を、記号(イ)〜(ニ)として示す。この記号(イ)は、菱形を直線で結んだ線で、記号(ロ)は、黒塗四角を直線で結んだ線で、また、記号(ハ)は、黒塗三角を直線で結んだ線で、記号(ニ)は、×を直線で結んだ線で、それぞれ示す。この図において、内部温度の差は、5分の状態では差がなく、30分の状態では、大きな差となり、記号(イ)の従来の構造のヘルメットは、その内部温度の上昇が顕著であり、暑さと蒸れの弊害がある。そして、順に、記号(ロ)〜記号(ニ)ということになる。従って、第三実施例の優位性があることが実験の結果判明した。
【0055】
次に、図14と図17に示したグラフは、外部温度の時間を基準とした、推移を、記号(イ)〜(ニ)として示す。この記号(イ)〜(ニ)の意味は、前記図13と図16のグラフの図と同じとする。この図において、外部温度の差は、5分の状態では差がなく、30分の状態では、大きな差となり、記号(イ)の従来の構造のヘルメットは、その外部温度の上昇はあるが、記号(ロ)の第一実施例が最も高くなる。従って、30分の状態の順位は、図14の下地が白色の例では、第一が、記号(ロ)の第一実施例、第二が、記号(ニ)の第四実施例、第三が、記号(イ)の従来例、第四が、記号(ハ)の第三実施例、となった。この第四の第三実施例は、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造であり、当然と考えられる。また、前記30分の状態の順位は、図17の下地が紺色の例では、第一が、記号(ロ)の第一実施例、第二が、記号(イ)の従来例、第三が、記号(ニ)の第四実施例、第四が、記号(ハ)の第三実施例、となった。この第四の第三実施例は、外面101に銀鏡皮膜2を設けた構造であり、当然と考えられる。
【0056】
以上の実験の結果よりして、5分から30分に向かって、順次、差が開くことが、内外部温度で、それぞれ明確になった。従って、本発明の各実施例は、ヘルメットAを長時間、装着して、作業する場合の断熱効果の利点と、疲労の軽減化、又は熱中症の防止に有効であることが理解できる。
【0057】
また、望ましくは、外面101に銀鏡皮膜2を形成する一例では、落雷時の安全性の確保と、防眩方法等に注意することを推奨する。
【符号の説明】
【0058】
A ヘルメット
1 ヘルメット本体
100 内面
101 外面
2 銀鏡皮膜
200 梨子地
200a 粒子
3 ライナー
3a 内面
3b 外面
3c 端面
300 通路
301 孔
4 あご紐
5 ハンモック
6 環紐
7 ヘッドバンド
8 遮熱塗料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、この内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメット。
【請求項2】
ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、この内外面に設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメット。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメット。
【請求項4】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメット。
【請求項5】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメット。
【請求項1】
ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に銀鏡皮膜を設け、この内面、又はライナーに設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメット。
【請求項2】
ヘルメット本体の内外面の双方に、それぞれ銀鏡皮膜を設け、この内外面に設けた銀鏡皮膜で、このヘルメット内の温度上昇を抑制可能とする構成としたヘルメット。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメット。
【請求項4】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に、銀鏡皮膜を設けるに際し、この面を、ライナー活性化処理剤をスプレー方式で活性化処理し、この活性化処理後に、脱イオン水に硝酸銀及びアンモニアを溶解して得られた銀アンモニア水溶液と、脱イオン水にホルマリンを溶解することによって調製した還元剤溶液、及び/又は、水に二酸化珪素を溶解した水系分散液とでなる銀イオンにより銀鏡皮膜を形成し、さらに、チオ硫酸塩を含む水溶液で処理し、この銀鏡皮膜の仕上げをする構成としたヘルメット。
【請求項5】
請求項1、又は請求項2に記載のヘルメットであって、
前記ヘルメット本体の外面、内面、又はヘルメット本体の内側に設けたライナーの面の、何れかの面に設けた銀鏡皮膜を、梨子地構造とし、ヘルメット本体の内外面を防眩可能な構造としたヘルメット。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図18】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図18】
【公開番号】特開2012−72533(P2012−72533A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243929(P2010−243929)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(509322395)株式会社 ダイテック (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(509322395)株式会社 ダイテック (3)
【Fターム(参考)】
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