説明

ヘンゾ[cフエナンスリジニユーム誘導体及びその用途

【目的】抗腫瘍活性、血小板凝集抑制活性を有する新規化合物を提供する。
【構成】次の一般式で表されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム型の化合物を合成した。
【化1】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。X- は酸残基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗腫瘍活性及び血小板凝集抑制作用を有し、医薬品として期待される一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、癌患者に対する化学療法にはアルキル化剤、核酸代謝拮抗剤、抗生物質、及び植物アルカロイド等が用いられている。又、血栓症は血小板の粘着及び凝集によっておこり、脳梗塞、循環器障害、癌性DIC等の他、癌の転移にも関与することが知られている。2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニュ−ムは血小板凝集阻害作用があることが開示されている(特開平2−243628)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】悪性腫瘍の性質は千差万別であり、また、上記抗腫瘍剤の使用により、それに対する耐性も出てくるため、新規な抗腫瘍剤の開発が望まれる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、抗腫瘍作用を有する化合物を種々探索した結果、一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体が抗腫瘍活性、及び血小板凝集抑制作用を有することを見出し、本発明に到達したものである。即ち、本発明は下記一般式(A)
【0005】
【化3】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。X- は酸残基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕
【0006】で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤に関する。本発明における低級アルコキシ基とは例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、ペントキシ等のC1 〜C5 のアルコキシ基が挙げられるが、好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシのC1 〜C3 のアルコキシ基が好ましい。又、低級アルキル基としては例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル等のC1 〜C5 アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルのC1 〜C3 のアルキル基が好ましい。
【0007】さらに本発明における酸残基とは、正塩をつくる酸残基、例えばX- が、塩素イオンCl- 臭素イオンBr- 、沃素イオンI- 、フッ素イオンF- などのハロゲンイオンや、硫酸イオンSO42- 、硝酸イオン NO3- 、p−トルエンスルホン酸イオン TsO- 、及び酸性塩をつくる酸残基、例えば、硫酸水素イオン HSO4- 燐酸二水素イオン H2PO4- 、などがあげられるが、本発明化合物の安定性を増大させる為には酸性塩をつくる酸残基、例えば、硫酸水素イオン、燐酸二水素イオン等が好ましい。
【0008】本発明の一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体は以下の方法で製造する。一般式(B)で示されるナフチルアミン化合物
【0008】
【化4】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は低級アルコキシ基、又は水酸基、或いはMとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。〕
【0009】と、例えば、文献J.C.S.Perkin I,1221,(1976)及びJ.Org.Chem.,53,1708,(1988)記載の方法で入手できる2−(保護オキシ)−3−メトキシ−6−ハロゲノベンズアルデヒドをトルエンまたはベンゼン中80℃から 110℃に1時間から3時間加熱後濃縮し、アミノ基とアルデヒド基の縮合により副生する水を、トルエン又はベンゼンとの共沸により効果的に系外に除く。望ましくは、濃縮残留物に新たにトルエンまたはベンゼンを加えて、加熱後濃縮という上記操作を2から4回繰り返し、脱水縮合生成物(シッフの塩基)をほぼ定量的に得る。脱水縮合生成物の縮合部位二重結合を還元して、下記一般式(C)で示される化合物を得る。
【0010】
【化5】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は低級アルコキシ基、又は水酸基、或いはMがNで接続しメチレンジオキシ基を示す。Yはハロゲン原子を示す。Wは保護基を示す。〕
【0011】還元剤はCN二重結合を還元するものならどれでも良いが、特に水素化ほう素シアノナトリウムを使い、反応温度を−10℃から+10℃の低温にするのが望ましい。一般式(C)で示される化合物と、1当量から3当量のトリブチル錫ヒドリドをトルエンまたはベンゼンに溶解し、ラジカル反応開始剤(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、または過酸化ベンゾイルなど)を加えて60℃から 110℃で30分から2時間加熱し、閉環反応を完結する。その後、活性二酸化マンガン酸化による閉環部の芳香族化を行って、下記一般式(D)で示される化合物を得る。
【0012】
【化6】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は低級アルコキシ基、又は水酸基、或いはMとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。Wは保護基を示す。〕
【0013】以上でベンゾ[c]フェナンスリジン骨格の構築が完成する。一般式(C)におけるハロゲン原子としては一般的にブロム原子が使用される。また一般式(C)及び(D)における保護基Wとしてはヒドロキシ基の保護基であれば特に制限はないが、置換又は非置換ベンジルなどのベンジル系保護基又はイソプロポキシ基が好ましい。一般式(D)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジン化合物をN−アルキル化反応後、保護基をはずし、酸処理して下記一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体を得る。
【0014】
【化7】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MがNで接続しメチレンジオキシ基を示す。X- は酸残基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕
【0015】N−アルキル化は、前記一般式(D)の化合物とアルキル化剤とを無溶媒又は乾燥トルエン、乾燥ベンゼン等の溶媒に溶かし、これを無触媒又は無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム等の塩基性塩の共存下、加熱し行なわれる。アルキル化剤は、通常ピリジン環のN−アルキル化に用いられるものならどれでもよいが、例えばp−トルエンスルホン酸アルキル、或いは、より反応性の高い、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸アルキル、2−ニトロベンゼンスルホン酸アルキル、または、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルが望ましい。
【0016】酸処理は少量のメタノ−ル等の極性溶媒に保護基をはずして得られる化合物を溶かし、これに1.0 から3.0 倍モル程度の酸、例えば塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等を水で希釈して加える。更に、この反応溶液にアセトン等の水と良く混和する有機溶媒を加え、析出する塩を沈殿、乾燥し、一般式(A)で表わされる化合物を黄色粉末として得る。尚、X-が2価以上の酸イオン、例えば硫酸イオン等の場合では、添加する硫酸量を減少させることが必要である。1.0 〜2.5 倍モル過剰の硫酸処理で硫酸水素塩(酸残基X- は、HSO4- )が生成し、1/2量の硫酸を使用した場合は正塩型の硫酸塩(酸残基X- は、1/2(SO42-) が生成する。本発明化合物は、以下に示す化学的特徴を有する。一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体は、塩基処理により容易に分子内から酸1当量を放出し、下記一般式(E)の極限構造式で表される分子内対イオン(Zwitter Ion)構造とすることが可能である。
【0017】
【化8】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、又は水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕
【0018】或いは、逆に、この一般式(E)型の化合物を酸処理することにより、容易に一般式(A)型の化合物とすることが可能である。pH(水素イオン濃度)がおよそ4以下では一般式(A)で示される四級塩構造をとり、pHがおよそ4以上では一般式(E)で示される構造をとる。
【0019】この性質は、既存の、天然物由来のベンゾ[c]フェナンスリジニューム類、例えばファガロニン(Fagaronine)、ニチジン(Nitidine)、ケレリスリン(Chelerythrine) などは構造上とることがなく、本発明化合物群における化学的特質である。次に、一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体の代表化合物を表1に示すが、これによって本発明化合物が限定されるものではない。
【0020】
表1──────────────────────────────────── 化合物番号 化合物名 ──────────────────────────────────── A−1 2,3−(メチレンジオキシ)−5−エチル−7−ヒドロキシ −8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジニューム A−2 2,3−(メチレンジオキシ)−5−(n−プロピル)−7− ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジニュ ーム A−3 2,8−ジメトキシ−3,7−ジヒドロキシ−5−メチル−ベ ンゾ[c]フェナンスリジニューム A−4 2,7−ジヒドロキシ−3,8−ジメトキシ−5−メチル−ベ ンゾ[c]フェナンスリジニューム A−5 2−イソプロポキシ−3,8−ジメトキシ−5−メチル−7− ヒドロキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニューム A−6 2,3,7−トリヒドロキシ−5−メチル−8−メトキシ−ベ ンゾ[c]フェナンスリジニューム A−7 5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フ ェナンスリジニューム ────────────────────────────────────次に、一般式(D)で示される中間体の代表化合物を表2に示す。
【0021】
表2──────────────────────────────────── 化合物番号 化合物名 ──────────────────────────────────── D−1 2,3−(メチレンジオキシ)−7−ベンジルオキシ−8−メ トキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジン D−2 2,3−(メチレンジオキシ)−7−イソプロポキシ−8−メ トキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジン D−3 2,8−ジメトキシ−3−イソプロポロキシ−7−ベンジルオ キシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジン D−4 2−イソプロポキシ−3,8−ジメトキシ−7−ベンジルオキ シ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジン D−6 2,3−ジイソプロポキシ−7−ベンジルオキシ−8−メトキ シ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジン D−7 7−ベンジルオキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンス リジン ────────────────────────────────────次に、一般式(C)で示される中間体の代表化合物を表3に示す。
【0022】
表3──────────────────────────────────── 化合物番号 化合物名 ──────────────────────────────────── C−1 N−((2’−ベンジルオキシ)−3’−メトキシ−6’−ブ ロモベンジル)−6,7−(メチレンジオキシ)−1−ナフチ ルアミン C−3 N−((2’−ベンジルオキシ)−3’−メトキシ−6’−ブ ロモベンジル)−6−メトキシ−7−イソプロポキシ−1−ナ フチルアミン C−4 N−((2’−ベンジルオキシ)−3’−メトキシ−6’−ブ ロモベンジル)−6−イソプロポキシ−7−メトキシ−1−ナ フチルアミン C−6 N−((2’−ベンジルオキシ)−3’−メトキシ−6’−ブ ロモベンジル)−6,7−ジイソプロポキシ−1−ナフチルア ミン C−7 N−((2’−ベンジルオキシ)−3’−メトキシ−6’−ブ ロモベンジル)−1−ナフチルアミン ────────────────────────────────────次に、一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体の代表化合物の物性値を表4に示す。
【0023】
表4──────────────────────────────────── 化合物番号 物性値 ──────────────────────────────────── A−1 黄色粉末(X- = HSO4- ) 1H-NMR(200MHz), D2O, (ppm) :1.64(br t,J=6.3Hz,3H), 3.63(s,3H), 4.27(br m,2H), 6.02(br s,2H), 6.45(s,1H), 6.55(br s,1H), 6.81(d,J=9.0Hz,1H), 6.95(br s,2H), 7.05(d,J=9.0Hz,1H), 8.79(s,1H) 13C-NMR(50MHz), D2O, (ppm) : 19.32(q), 58.78(q), 59.43(t), 104.40(d), 105.92(t), 108.03(d), 115.24(d), 115.63(s), 119.17(d), 120.05(s), 125.49(s)&(d), 127.39(s), 130.66(s), 132.96(d), 133.33(s), 146.54(s), 147.55(s), 150.25(d), 150.59(s), 151.46(s) IR(KBr), (cm-1) :3364,3040,2970,2930,2888,1622,1602,1550,1491(s), 1474(s),1453,1412,1383,1348,1334,1300,1279(s),1260(s), 1223(s),1217(s),1158,1128,1115,1103,1080,1042(s),942, 925,884,825,771 ────────────────────────────────────
【0024】
A−2 黄色粉末(X- = HSO4- ) 1H-NMR(200MHz), D2O, (ppm) :0.97(br t,J=7.1Hz,3H), 1.95(br m,2H), 3.79(s.3H), 4.22(br m,2H), 6.12(br s,2H), 6.55(br s,1H), 6.65(s,1H), 7.10(d,J=9.0Hz,1H), 7.16(d,J=9.0Hz,1H), 7.26(d,J=9.0Hz,1H), 7.30(d,J=9.0Hz,1H), 8.97(s,1H) 13C-NMR(50MHz), D2O, (ppm) : 12.40(q), 27.92(t), 59.22(q), 65.30(t), 104.49(d), 106.31(t), 108.62(d), 116.05(d), 116.30(s), 120.09(d), 120.79(s), 126.27(d), 126.40(s), 128.26(s), 131.31(s), 133.53(d), 134.08(s), 147.41(s), 148.36(s), 151.10(d), 151.27(s), 152.02(s) IR(KBr), (cm-1) :3394,3064,2982,1647,1620,1602,1581,1550,1493(s), 1472(s),1417,1387,1375,1355,1302(s),1277(s),1257(s), 1215(s),1172(s),1155,1139,1117,1105,1082,1062,1039(s), 1001,971,934,926,886,855(s),829,811,790,759,707 ────────────────────────────────────
【0025】
A−3 黄色粉末(X- = Cl- ) 1H-NMR(200MHz), CD3OD(+DCl), (ppm) :4.09(s,3H), 4.11(s,3H), 4.95(s.3H), 7.62(s,1H), 8.08(d,J=9.0Hz,1H), 8.16(s,1H), 8.20(d,J=9.0Hz,1H), 8.39(d,J=9.0Hz,1H), 8.55(d,J=9.0Hz,1H), 9.94(s,1H) IR(KBr), (cm-1) :3428,3082,1621,1591,1578,1554,1504,1448,1415,1384, 1374,1352,1339,1289(s),1276(s),1220,1193,1167,1157, 1114,1061,1025,1008,966,921,865,854,818,781,748 ────────────────────────────────────
【0026】
A−4 黄色粉末(X- = Cl- ) 1H-NMR(200MHz), CD3OD(+DCl), (ppm) :4.11(s,3H), 4.17(s,3H), 5.03(s.3H), 7.49(s,1H), 8.08(d,J=9.1Hz,1H), 8.09(s,1H), 8.12(d,J=9.1Hz,1H), 8.39(d,J=9.1Hz,1H), 8.57(d,J=9.1Hz,1H), 9.98(s,1H) 13C-NMR(50MHz), CD3OD(+DCl), (ppm) : 52.74(q), 57.05(q), 57.75(q), 108.55(d), 113.59(d), 115.20(d), 117.09(s), 119.49(d), 120.14(s), 125.88(d), 126.98(s), 129.99(s), 132.13(d), 133.20(s), 133.46(s), 147.62(s), 150.80(s), 151.11(s) ×2, 151.63(d) IR(KBr), (cm-1) :3384,3214,1619,1589,1576,1556,1504,1457,1445,1421, 1414,1378,1350,1338,1301(s),1279(s),1262(s),1217,1168, 1155,1115,1058,1022,1006,976,935,866,828,818,808,785, 747,723 ────────────────────────────────────
【0027】
A−6 黄色粉末(X- = OTs- ) 1H-NMR(200MHz), CD3OD+D2O(+DCl), (ppm) :4.00(s,3H), 4.67(s.3H), 7.17(s,1H), 7.73-7.80(m,3H), 7.92(br d,J=9.0Hz,1H), 8.35(br d,J=9.0Hz,1H), 9.44(s,1H), (以下は、 OTs- 部分。Ts=p-Toluenesulufonyl) 2.38(s,3H), 7.31(br d,J=8.0Hz,2H), 7.67(br d,J=8.0Hz,2H) IR(KBr), (cm-1) :3390,3200-3050,1622,1562,1495,1459,1454,1445,1407, 1384,1352,1339,1295(s),1274(s),1217,1189,1148,1118(s), 1056,1033,1009,978,927,871,815,784,744,717,681,671 ────────────────────────────────────
【0028】
A−7 黄色粉末(X- = HSO4- ) 1H-NMR(200MHz), D2O, (ppm) :1.72(t,J=7.0Hz,3H), 3.56(s,3H), 4.52(br q,J=7.0Hz,2H), 6.95 & 7.05(AB,JAB=9.2Hz,each 1H), 7.21(br s,2H), 7.32-7.50(m,2H), 7.38(br d,J=7.9Hz,1H), 7.59(br d,J=7.9Hz,1H), 8.96(s,1H) 13C-NMR(50MHz), D2O, (ppm) : 19.21(q), 58.82(q), 59.83(t), 115.65(d), 116.24(s), 120.59(d), 124.28(s), 125.66(d), 127.01(s)&(d), 127.52(s), 131.05(d), 131.38(s)&(d), 132.25(d), 134.28(d), 135.72(s), 146.64(s), 147.90(s), 150.21(d) IR(KBr), (cm-1) :3419,3052,1614,1583,1540,1497,1468,1446,1431,1384, 1361,1341,1302(s),1277(s),1216(s),1164,1150,1143,1130, 1086,1059,985,921,854,821,767,695 ────────────────────────────────────
【0029】次に、一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体の変移型である一般式(E)で表される化合物の代表例を示す。ここで、(A)及び(E)の番号はそれぞれ相互に関連する物質に対応する。例えば、化合物番号(A−1)の物質は、化合物番号(E−1)の物質に対応する。表5に一般式(E)で示される代表化合物の物性値を示す。
【0030】
表5──────────────────────────────────── 化合物番号 物性値 ──────────────────────────────────── E−1 濃紫色固形物 1H-NMR(200MHz), CDCl3+CD3OD(1:1), (ppm) :1.65(t,J=7.2Hz,3H), 3.95(s,3H), 4.83(q,J=7.2Hz,2H), 6.19(s,2H), 7.30(s,1H), 7.30(d,J=8.2Hz,1H), 7.44(d,J=8.2Hz,1H), 7.56(s,1H), 7.81(d,J=8.9Hz,1H), 8.18(d,J=8.9Hz,1H), 9.36(s,1H) 13C-NMR(50MHz), CDCl3+CD3OD(1:1), (ppm) : 16.65(q), 54.90(t), 56.36(q), 102.71(d), 103.14(t), 103.54(d), 106.56(d), 119.61(d), 119.77(s), 120.94(d), 121.47(s), 127.20(s), 128.10(s), 129.37(d), 131.33(s), 132.58(s), 149.29(s), 149.71(s), 150.84(d), 152.12(s), 168.45(s) IR(KBr), (cm-1) :2970,2918,1623(s),1582,1558,1534(s),1502(s),1475(s), 1460(s),1376(s),1345,1300,1285,1250(vs),1189,1142, 1115,1099,1036(s),941,864,794,761,736,707,673,664 ────────────────────────────────────
【0031】
E−5 濃紫色固形物 1H-NMR(200MHz), CD3OD, (ppm) :2.84(d,J=6.0Hz,6H), 3.77(s,3H), 3.97(s,3H), 4.36(s,3H), 4.77(septet,J=6.0Hz,1H), 6.84-6.94(m,1H), 7.06-7.16(m,1H), 7.25(s,1H), 7.54(s,1H), 7.56-7.64(m,1H), 7.76-7.84(m,1H), 9.00(s,1H) ────────────────────────────────────
【0032】
E−7 濃紫色固形物 1H-NMR(200MHz), DMSO-d6, (ppm) :1.45(t,J=7.1Hz,3H), 3.78(s,3H), 4.82(q,J=7.1Hz,2H), 7.10(d,J=8.0Hz,1H), 7.21(d,J=8.0Hz,1H), 7.63-7.76(m,2H), 8.03(d,J=8.8Hz,1H), 8.08-8.14(m,1H), 8.32-8.41(m,1H), 8.40(d,J=8.8Hz,1H), 9.11(s,1H) 13C-NMR(50MHz), DMSO-d6, (ppm) : 15.96(q), 53.13(t), 55.23(q), 99.29(d), 117.77(d), 118.88(s), 120.57(d), 123.89(s), 124.56(d), 126.38(s), 126.54(s), 126.61(d), 126.68(d), 128.08(d), 128.86(d), 130.38(s), 133.47(s), 148.66(d), 151.53(s), 169.42(s) IR(KBr), (cm-1) :3039,2986,2938,2832,1628(s),1614(s),1557(s),1530(s), 1510(s),1495,1474,1456,1423,1386,1377(s),1354,1345, 1335,1317,1287,1266(s),1245(s),1239(s),1194,1155,1139, 1101(s),1075,1061,1046,977,945,923,907,871,823,798, 792,774(s),752,691,675 ────────────────────────────────────次に、一般式(D)で示される中間体の代表化合物の物性値を表6に示す。
【0033】
【表6】
──────────────────────────────────── 化合物番号 物性値 ──────────────────────────────────── D−1 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :4.07(s,3H), 5.32(s,2H), 6.13(s,2H), 7.26(s,1H), 7.34-7.46(m,3H), 7.58(dd,J=8.0 & 1.6Hz,2H), 7.61(d,J=9.0Hz,1H), 7.84(d,J=9.0Hz,1H), 8.34(d,J=9.0Hz,1H), 8.36(d,J=9.0Hz,1H), 8.69(s,1H), 9.75(s,1H) 13C-NMR(50MHz), CDCl3, (ppm) : 50.03(q), 76.21(t), 101.62(t), 102.46(d), 104.68(d), 118.57(d), 118.69(d), 119.02(d), 120.27(s), 122.48(s), 127.40(d), 128.43(s), 128.67(d), 128.87(d)×2, 128.96(d) ×2, 129.51(s), 130.11(s), 137.59(s), 140.37(s), 144.38(s), 147.22(d), 148.71(s), 148.89(s), 149.91(s) IR(KBr), (cm-1) :3032,3004,2964,2944,2910,2875,2840,1640,1616,1595, 1578,1533,1495,1460(vs),1440(s),1394,1378,1358,1324, 1284(s),1277(s),1251(s),1223,1202(s),1169,1136,1112, 1081(s),1040(s),991,968,958,949,920,904,875,850,845, 830,795,759,750,697,686,667 ────────────────────────────────────
【0034】
D−2 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.43(d,J=6.2Hz,6H), 4.02(s,3H), 4.80(septet,J=6.2Hz,1H), 6.12(s,1H), 7.25(s,1H), 7.56(d,J=9.1Hz,1H), 7.82(d,J=9.0Hz,1H), 8.31(d,J=9.1Hz,1H), 8.33(d,J=9.0Hz,1H), 8.70(s,1H), 9.79(s,1H) 13C-NMR(50MHz), CDCl3, (ppm) : 22.75(q) ×2, 56.89(q), 76.33(d), 101.61(t), 102.40(d), 104.69(d), 118.10(d), 118.61(d), 118.95(d), 120.31(s), 123.47(s), 127.34(d), 128.39(s), 129.49(s), 130.09(s), 140.23(s), 143.62(s), 147.79(d), 148.66(s), 148.87(s), 150.09(s) ────────────────────────────────────
【0035】
D−3 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.54(d,J=6.1Hz,6H), 4.04(s,3H), 4.06(s,3H), 5.05(septet,J=6.1Hz,1H), 5.31(s,2H), 7.28(s,1H), 7.34-7.47(m,3H), 7.55-7.61(m,2H), 7.59(d,J=9.0Hz,1H), 7.86(d,J=9.0Hz,1H), 8.33(d,J=9.0Hz,1H), 8.35(d,J=9.0Hz,1H), 8.77(s,1H), 9.77(s,1H) IR(KBr), (cm-1) :2976,2938,2838,1618,1576,1525,1509,1479,1461,1434, 1411,1389,1372,1351,1324,1282,1265(s),1218,1203,1168, 1143,1115,1080,1068,1026,981,953,929,915,880,856,842, 830,797,759,747,698,685 ────────────────────────────────────
【0036】
D−4 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.51(d,J=6.0Hz,6H), 4.07(s,3H), 4.17(s,3H), 4.80(septet,J=6.0Hz,1H), 5.32(s,2H), 7.32(s,1H), 7.34-7.47(m,3H), 7.55-7.62(m,2H), 7.62(d,J=9.0Hz,1H), 7.86(d,J=9.0Hz,1H), 8.36(d,J=9.0Hz,1H), 8.39(d,J=9.0Hz,1H), 8.72(s,1H), 9.79(s,1H) IR(KBr), (cm-1) :2976,2938,2840,1618,1578,1527,1509,1478,1456,1435, 1409,1389,1375,1355,1325,1267(s),1220,1191,1177,1163, 1140,1112,1083,1067,1021,995,973,942,911,872,849,830, 804,772,759,749,698 ────────────────────────────────────
【0037】
D−6 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.45(d,J=6.1Hz,6H), 1.49(d,J=6.1Hz,6H), 4.04(s,3H), 4.69(septet,J=6.1Hz,1H), 4.92(septet,J=6.0Hz,1H), 5.31(s,2H), 7.34-7.46(m,3H), 7.36(s,1H), 7.55-7.62(m,2H), 7.58(d,J=9.0Hz,1H), 7.83(d,J=9.0Hz,1H), 8.31(d,J=9.0Hz,1H), 8.34(d,J=9.0Hz,1H), 8.78(s,1H), 9.77(s,1H) IR(KBr), (cm-1) :2976,2932,1617,1576,1527,1507,1463,1439,1413,1385, 1373,1355,1323,1265(s),1216,1180,1166,1139,1113,1086, 1066,998,952,932,910,876,856,831,800,743,697 ────────────────────────────────────
【0038】
D−7 淡黄白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :4.08(s,3H), 5.34(s,2H), 7.34-7.47(m,3H), 7.55-7.61(m,2H), 7.64(d,J=9.0Hz,1H), 7.61-7.71(m,1H), 7.71-7.81(m,1H), 7.97(dd,J=8.0 & 1.3Hz,1H), 8.00(d,J=9.0Hz,1H), 8.41(d,J=9.0Hz,1H), 8.48(d,J=9.0Hz,1H), 9.36(dd,J=8.0 & 1.0Hz,1H), 9.84(s,1H) IR(KBr), (cm-1) :3025,2985,2925,2870,2830,1617,1574,1525,1464,1442, 1425,1355,1332,1291(s),1281(s),1261,1236,1204,1177, 1154,1138,1079(s),1024,986,958,934,901,868,843,834, 809(s),816,744,721,695 ────────────────────────────────────次に、一般式(C)で示される中間体の代表化合物の物性値を表7に示す。
【0039】
表7──────────────────────────────────── 化合物番号 物性値 ──────────────────────────────────── C−1 白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :3.90(s,3H), 4.37(br,1H), 4.48(s,2H), 5.04(s,2H), 5.99(s,2H), 6.74(dd,J=7.4 & 1.2Hz,1H), 6.82(d,J=8.8Hz,1H), 7.05(s,1H), 7.07(s,1H), 7.11(br d,J=8.0Hz,1H), 7.33(d,J=8.8Hz,1H), 7.18-7.37(m,6H) IR(KBr), (cm-1) :3396,3096,3064,3038,2998,2944,2906,2845,1621,1603, 1573,1538(s),1501,1464(vs),1435,1400,1393,1371,1316, 1285(s),1271(s),1251(s),1218,1202,1194,1173,1144,1131, 1099,1072,1040(s),993,960,948,916,907,862,831,795,778, 757,739,687 ────────────────────────────────────
【0040】
C−3 白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.36(d,J=6.0Hz,6H), 3.88(s,3H), 3.94(s,3H), 4.53(s,2H), 4.57(septet,J=6.0Hz,1H), 4.58(br, 1H), 5.03(s,2H), 6.75(dd,J=7.5 & 1.0Hz,1H), 6.80(d,J=9.0Hz,1H), 7.08(s,1H), 7.09(s,1H), 7.13(br d,J=7.5Hz,1H), 7.22(t,J=7.5Hz,1H), 7.24-7.31(m,3H), 7.32(d,J=9.0Hz,1H), 7.34-7.41(m,2H) ────────────────────────────────────
【0041】
C−4 白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.43(d,J=6.0Hz,6H), 3.84(s,3H), 3.89(s,3H), 4.54(s,2H), 4.60(br, 1H), 4.69(septet,J=6.0Hz,1H), 5.04(s,2H), 6.76(dd,J=7.5 & 1.0Hz,1H), 6.81(d,J=9.0Hz,1H), 6.97(s,1H), 7.105(s,1H), 7.113(br d,J=7.5Hz,1H), 7.22(t,J=7.5Hz,1H), 7.24-7.30(m,3H), 7.33(d,J=9.0Hz,1H), 7.32-7.41(m,2H) ────────────────────────────────────
【0042】
C−6 白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :1.32(d,J=6.1Hz,6H), 1.39(d,J=6.1Hz,6H), 3.88(s,3H), 4.49(septet,J=6.1Hz,1H), 4.51(s,2H), 4.55(br, 1H), 4.61(septet,J=6.1Hz,1H), 5.03(s,2H), 6.72(dd,J=7.5 & 1.1Hz,1H), 6.80(d,J=8.8Hz,1H), 7.08-7.40(m,10H) IR(KBr), (cm-1) :3420,2978,2936,1626,1595,1581,1522,1468(s),1437,1383, 1334,1277,1253(s),1215,1182,1159,1139,1112,1079,1012, 982,954,925,860,840,800,773,735,695 ────────────────────────────────────
【0043】
C−7 白色粉末 1H-NMR(200MHz), CDCl3, (ppm) :3.90(s,3H), 4.52(s,2H), 4.80(br,1H), 5.06(s,2H), 6.80-6.85(m,2H), 7.22-7.47(m,10H), 7.68-7.81(m,2H) IR(KBr), (cm-1) :3999(s),3070,2944,2856,1626,1581(s),1531,1481,1467(s), 1432,1410,1372,1355,1336,1296,1272(s),1227,1215,1200, 1178,1144,1109,1088,1073(s),983,959,911,865,795,783, 764(s),741,690 ────────────────────────────────────
【0044】
【作用】以下に薬理試験例を示す。本発明の一般式(A)で示されるベンゾ〔c〕フェナンスリジニューム誘導体は、後記の如く各種の培養された腫瘍細胞に対して増殖抑制作用を示す。また、血小板活性化因子による血小板凝集を抑制する。
1.癌細胞に対する増殖抑制作用各種の腫瘍細胞を24時間、37℃、 5%炭酸ガス下で培養した後、被験薬を2から4日間作用させる。その後、0.05%メチレンブルーで細胞を染色し、染色された細胞から色素を抽出し、660nm 吸光度から細胞の増殖阻害度を求め、50%増殖阻害濃度 (IC50値) を算出する。結果を表8に示す。
【0045】
表8 IC50 (μg/ml) ──────────────────────────────────── 化合物番号: A−1 A−2 A−3 A−4 A−5 A−6 A−7──────────────────────────────────── HeLa S3 : 0.177 n.t. 3.0 0.201 1.1 2.1 0.69 MMI : 0.165 0.273 n.t. 0.996 n.t. n.t. n.t. SHIN-3 : 0.170 0.414 n.t. 1.06 n.t. n.t. n.t. N-231 : 0.040 0.085 n.t. 0.199 n.t. n.t. n.t. Lu-130 : 0.250 0.108 n.t. 0.291 n.t. n.t. n.t. Nakajima : 0.426 0.777 n.t. 1.87 n.t. n.t. n.t. ────────────────────────────────────〔表中、HeLa S3 は子宮頸癌、MMI は卵巣癌、SHIN-3は卵巣癌、N-231 は肺小細胞癌、Lu-130は肺小細胞癌、Nakajimaは胃癌の各腫瘍細胞を示す。n.t.は未試験部分。〕
【0046】2.血小板に対する凝集抑制作用日本白色種ウサギ(体重 3から 4kg)より多血小板血漿(PRP)を得る。血小板凝集惹起物質は、血小板活性化因子(PAF)を最終濃度10-7M で使用する。PRPに被験薬を加えて一定時間インキュベートした後、PAFを加え血小板凝集反応を起こさせる。EDTAで反応を止め、遠心して上清を除く。血小板沈渣に蒸留水を加え、血小板内に残存するセロトニン量をオルトフタルアルデヒド試薬と反応させ、セロトニン−オルトフタルアルデヒド縮合物とし、励起波長 360nm、測定波長 475nmで測定する。被験薬の抗PAF作用は以下の式より求める。


代表化合物の試験結果を表9に示す。
【0047】
表9──────────────────────────────────── 被験薬 濃度 阻害率 (化合物番号) (μg/ml) (%) ──────────────────────────────────── A−1 100 96.5 50 74.1 25 49.6 12.5 25.2 ──────────────────────────────────── 生理食塩水 − 0 ──────────────────────────────────── A−0 100 24.2 (対照化合物) 50 14.6 25 6.84 12.5 3.55 ────────────────────────────────────〔表中、対照化合物A−0は、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニューム・ヨード塩である。〕
【0048】表9に明らかなように、被験薬に血小板凝集抑制作用が認められるが、化合物(A−1)は特に強い作用を示し、対照化合物(A−0)よりも、更に強い作用が認められた。例えば、100 μg/mlの濃度に着目すると、本発明化合物(A−1)は対照化合物(A−0)のおよそ4倍強い阻害率を示した。
【0049】本発明の一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体を医薬品として使用する場合の製剤化及び投与方法は、従来公知の種々の方法が適用できる。即ち、投与方法は注射、経口、直腸投与等が可能である。製剤形態としては注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、座剤等の形態がとりえる。製剤化に際しては主薬に悪影響を与えないかぎり、医薬品に用いられる種々の補助剤、即ち、担体やその他の助剤、例えば安定化剤、防腐剤、無痛化剤、乳化剤等が必要に応じて使用されうる。
【0050】製剤において一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体の含量は製剤形態により広範囲に変えることが可能であり、一般には0.01から100 %(重量)、好ましくは 0.1から50%(重量)含有し、残りは通常の医薬用に使用される担体やその他の補助剤からなる。一般式(A)で示されるベンゾ〔c〕フェナンスリジニューム誘導体の投与量は症状等により異なるが成人一人一日当たり50から 500mg程度である。
【0051】
【発明の効果】以上の結果から、本発明の一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体は、種々の腫瘍細胞に対して抗腫瘍性を有し、更に癌の転移抑制に関わるとされる血小板凝集抑制作用をも有することが明らかになり、癌の治療剤として期待される。
【0052】
【実施例】一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体の代表化合物の製造を、実施例によって具体的に説明するが、本発明化合物がこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1化合物(A−1)、2,3−(メチレンジオキシ)−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジニューム の合成。
化合物(D−1)、2,3−(メチレンジオキシ)−7−ベンジルオキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジン1.433g(3.5mmol) にトリフルオロメタンスルホン酸エチル0.906ml(3.7mmol)と乾燥トルエン10mlを加えて 100℃で4時間30分加熱する。その後、これに、酢酸10mlと濃塩酸 5mlを加えて 100℃で1時間加熱する。終了後、反応混合物を氷水に徐々に加えて希釈する。これに炭酸水素ナトリウムを少量ずつ加えて中和後、クロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、濾過し、これを減圧下濃縮して残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液は、クロロホルム:メタノール=9:1)で精製する。主要分画を集めて濃縮し、濃い紫色の固形物を得る。これは、一般式(E)で表される構造をとった、化合物(E−1)である。次に、化合物(E−1)を少量のメタノールに溶解し、 1.0から2.0倍モルの希硫酸水溶液に徐々に加えて酸性化する。溶液は黄色ないし橙色になる。続いて、これを減圧下濃縮し、濃厚水溶液に振り混ぜながらアセトンを少量ずつ加える。この時析出する沈澱物を濾過後、乾燥して目的とする化合物(A−1)を黄色粉末として得る。ただし、この場合はX- = HSO4- として得る。収量1.171g(収率75.1%)。
【0053】実施例2化合物(A−1)、2,3−(メチレンジオキシ)−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニューム の合成(別法)。
化合物(D−1)、2,3−(メチレンジオキシ)−7−ベンジルオキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジン 127mg(0.31mmol)に2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸エチル 265mg(0.96mmol)と乾燥トルエン 5mlを加えて13時間加熱還流する。その後トルエンを留去する。これに、酢酸 1.5mlと濃塩酸 0.6mlを加えて 100℃で1時間30分加熱する。終了後、反応混合物を氷水に徐々に加えて希釈する。これに炭酸水素ナトリウムを少量ずつ加えて中和後、クロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、濾過し、これを減圧下濃縮して残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液は、クロロホルム:メタノール=9:1)で精製する。主要分画を集めて濃縮し、濃い紫色の固形物を得る。これは、一般式(E)で表される構造をとった、化合物(E−1)である。次に、化合物(E−1)を少量のメタノールに溶解し、 1.0から 2.0倍モルの希硫酸水溶液に徐々に加えて酸性化する。溶液は黄色ないし橙色になる。続いて、これを減圧下濃縮し、濃厚水溶液に振り混ぜながらアセトンを少量ずつ加える。この時析出する沈澱物を濾過後、乾燥して目的とする化合物(A−1)を黄色の粉末として得る(X- = HSO4- として)。収量68mg(収率63.1%)。
【0054】実施例3化合物(A−2)、2,3−(メチレンジオキシ)−5−(n−プロピル)−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニュ−ムの合成化合物(D−2)、2,3−(メチレンジオキシ)−7−イソプロポキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジンと2−ニトロベンゼンスルホン酸−n−プロピルを用い実施例1と同様に反応及び処理し化合物(E−2)を得、さらにこれをメタノ−ル下希硫酸処理し化合物(A−2)を得る。(ただしX- =HSO4-
【0055】実施例4化合物(A−3)、2,8−ジメトキシ−3,7−ジヒドロキシ−5−メチル−ベンゾ[c]フェナンスリジニュ−ムの合成。
化合物(D−3)、2,8−ジメトキシ−3−イソプロポキシ−7−ベンジルオキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジン227mg(0.5mmol)にp−トルエンスルホン酸メチル932mg(5mmol)と無水炭酸カリウム35mg(0.25mmol)を加えて140 ℃で3時間30分加熱する。その後、これに、酢酸6ml と濃塩酸 3mlを加えて100 ℃で3時間加熱する。終了後、反応混合物を氷水に徐々に加えて希釈する。これに炭酸水素ナトリウムを少量ずつ加えて中和後、クロロホルムと少量のメタノ−ルで抽出する。抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過し、これを減圧下濃縮して残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(展開液は、クロロホルム:メタノ−ル=4:1)で精製する。主要分画を集めて濃縮し、濃い紫色の固形物を得る。これは、一般式(E)で表される構造をとった、化合物(E−3)である。次に、化合物(E−3)を少量のメタノ−ルに溶解し、1.5 から 3.0倍モルの希塩酸水溶液に徐々に加えて酸性化する。溶液は黄色ないし橙色になる。続いて、これを減圧下濃縮して、溶媒および過剰の塩酸を留去する。残留物は、目的とする化合物(A−3)である。ただし、この場合はX- =Cl- として得る。収量98mg(収率52.7%)。
【0056】実施例5化合物(A−4)、2,7−ジヒドロキシ−3,8−ジメトキシ−5−メチル−ベンゾ[c]フェナンスリジニュ−ムの合成化合物(D−4)、2−イソプロポキシ−3,8−ジメトキシ−7−ベンジルオキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジンとp−トルエンスルホン酸メチルを用い実施例4と同様に反応及び処理し、化合物(E−4)を得、さらにこれをメタノ−ル下希塩酸処理し化合物(A−4)を得る。(ただしX- =Cl-
【0057】実施例6化合物(A−6)、2,3,7−トリヒドロキシ−5−メチル−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニュ−ムの合成化合物(D−6)、2,3−ジイソプロポキシ−7−ベンジルオキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジンとp−トルエンスルホン酸メチルを用い実施例4と同様に反応及び処理し化合物(E−6)を得、さらにこれをメタノ−ル下p−トルエンスルホン酸処理し化合物(A−6)を得る。(ただしX-=OTs - )
【0058】実施例7化合物(A−7)、5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジニューム の合成。
化合物(D−7)、7−ベンジルオキシ−8−メトキシ−ベンゾ[c]フェナンスリジン 183mg(0.5mmol) にトリフルオロメタンスルホン酸エチル0.13ml(1.0mmol) と乾燥トルエン 0.9mlを加えて 100℃で5時間加熱する。その後、これに、酢酸4mlと濃塩酸1mlを加えて 100℃で1時間加熱する。終了後、反応混合物を氷水に徐々に加えて希釈する。これに炭酸水素ナトリウムを少量ずつ加えて中和後、クロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、濾過し、これを減圧下濃縮して残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液は、クロロホルム:メタノール=9:1)で精製する。主要分画を集めて濃縮し、濃い紫色の固形物を得る。これは、一般式(E)で表される構造型をとった、化合物(E−7)である。次に、化合物(E−7)を少量のメタノールに溶解し、 1.0から 2.0倍モルの希硫酸水溶液を徐々に加えて酸性化する。溶液は黄色ないし橙色になる。続いて、これを減圧下濃縮し、濃厚水溶液に振り混ぜながらアセトンを少量ずつ加える。この時析出する沈澱物を濾過後、乾燥して目的とする化合物(A−7)を黄色粉末として得る(X- = HSO4- として)。収量 160mg(収率79.7%)。
【0059】実施例8(製剤例)
化合物(A−1)、2,3−(メチレンジオキシ)−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−ベンゾ〔c〕フェナンスリジニューム 硫酸水素塩(X- = HSO4- )を1g、ポリソルベートを1g、マクロゴール400 を1g、それぞれ計量後、注射用蒸留水100gに分散溶解し、メンブランフィルターで瀘過した後、アンプルに分注し、常法により凍結乾燥して1アンプル当たり50mgの化合物(A−1)を含有する注射用製剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(A)で示されるベンゾ[c]フェナンスリジニューム誘導体。
【化1】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。X- は酸残基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕
【請求項2】請求項1に記載された化合物を有効成分とする抗腫瘍剤。
【請求項3】一般式(E)の極限構造式で示される化合物。
【化2】


〔式中、M及びNは、それぞれ水素原子、水酸基、又は低級アルコキシ基を示す。或いは、MとNが接続しメチレンジオキシ基を示す。Rは低級アルキル基を示す。ただし、M及びNが両方とも水素原子、又はメチレンジオキシ基の場合、Rはメチル基を除く低級アルキル基を示す。〕