説明

ベアチップ実装面発光体

【課題】 本願発明は、発光ダイオードに対する電子的制御によることなく、所望する発光色が実現可能なベアチップ実装面発光体を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記面発光体L1は、樹脂基板(プリント基板)1と、この樹脂基板1上に貼り付けられ、加圧されることで、基板1にアンカー部としてのピンホール10を形成させると共に、所定の配線パターン20にエッチングされる金属箔2と、前記配線パターン20上に施されるメッキ層Pとしての補助メッキ4及び金メッキ5を介して電極30、31が接続される青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yと、前記電極30、31が接続される領域及び打ち抜き又は切削される領域を少なくとも除いて形成される印刷層7と、樹脂基板1全体にフラット状にコーティクングされるコーティング層8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアチップを直接基板に実装する面発光体に関し、特に、所望する発光色を、発光ダイオードに対する電子的制御によることなく、実現できるベアチップ実装面発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色、緑色及び青色に発光する発光ダイオードにより光の三原色が揃い、所望する発光色が、発光ダイオードに対する電子的制御のみで実現できるものとされていた。
現在では、この三原色ではすべての色を再現することはできないことが明らかになり、3原色より多い多原色を用いることにより、再現できる色の範囲を広げる試みが行なわれている。
【0003】
しかし、発光ダイオードを構成する材料、構造の相違に起因する相性の問題があり、また所望する色を得るため、各発光ダイオードに対する発光を駆動するために複雑な制御が必要とされている(特許文献1)。
さらに、従来型の面発光体は、樹脂ベース毎にベアチップを封止した実装型の複数のLEDユニット又はベアチップ毎に砲弾形状の樹脂カバーで封止した砲弾型の複数のLEDユニット(以下、これらを本願では砲弾型LEDユニットと総称する)をベース部材に取付け、このベース部材に拡散板を固定しているが、砲弾型LEDユニットの光の直進性が強いため、混色が難しいという技術的限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−344913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、発光ダイオードに対する電子的制御によることなく、所望する発光色が実現可能なベアチップ実装面発光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、配線パターンが形成される基板と、前記配線パターン上に接続され、且つ、発光色が同一の少なくとも一群の発光ダイオード(LED)のベアチップと、前記配線パターン上に接続され、且つ、前記ベアチップ群の中に混在させると共に、前記ベアチップとは、その発光色の色相が相違する発光ダイオードのベアチップと、前記基板全体をコーティングするコーティング層を備えたことを特徴とするベアチップ実装面発光体(請求項1の発明)とした。
【0007】
発光ダイオードのベアチップ群の発光と、その発光と色相が異なり、且つ、前記ベアチップ群に混在される発光ダイオードのベアチップの発光が、コーティング層によって拡散され、そのコーティング層から出射されて、視覚を介して混色されることで、これら発光ダイオードの発光を光源色とする面発光体を提供することができる。
即ち、本願発明では、発光ダイオードのベアチップ群の発光とこのベアチップ群に混在する発光ダイオードのベアチップの発光がコーティング層によって拡散されることで、混色を容易にすることができ、本願発明によって、従来の砲弾型LEDユニットでは光の直進性が強いため、混色が難しいという技術的限界が解消される。
【0008】
上記課題を解決するため、配線パターンが形成される基板と、前記配線パターン上に接続され、且つ、発光色の色相が色相対比の関係となる一群の発光ダイオードのベアチップと、前記基板全体をコーティングするコーティング層を備えたことを特徴とするベアチップ実装面発光体(請求項2の発明)とした。
色相が色相対比の関係となる一群の発光ダイオードのベアチップからの発光がそれぞれコーティング層によって拡散され、コーティング層から出射される。よって、各群毎に面発光が実現されるので、色相対比の効果を発揮させ易い面発光体を提供することができる。
即ち、従来の砲弾型LEDユニットでは、光の直進性が強いため、面発光が難しいという限界があったが、本願発明では、発光ダイオードのベアチップの発光をコーティング層によって拡散させることで、面発光を実現させて色相対比を容易にすることができる。
【0009】
前記ベアチップ群の発光色と前記ベアチップの発光色とは補色の関係にあること、また、色相対比の関係となる前記ベアチップ群相互の発光色とは補色の関係にもあることを特徴とする(請求項3又は4の発明)。
本願において、色相対比とは、背景の色とその上に置かれた色を同時に見比べた場合に、その色が背景色に影響されて色相の違った色に見えることである。色相が補色の関係にあるときに、色は背景色に最も強く影響される。
【発明の効果】
【0010】
上記発明によれば、発光色の色相が異なる二種類の発光ダイオードのベアチップとコーティング層の組み合わせにより得られる光源色の面発光体を提供することがきる。例えばディスプレイ装置、各種産業、日常生活に利用される照明装置、農業分野に利用される照明装置を想定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ベアチップ実装面発光体を用いた照明装置の斜視図、
【図2】図1の縦断面図、
【図3】図1の要部断面図、
【図4】ベアチップ実装面発光体の製造工程説明図、
【図5】ベアチップ実装面発光体を用いた照明装置の平面図、
【図6】別例のベアチップ実装面発光体の製造工程説明図、
【図7】別例のベアチップ実装面発光体の平面図、
【図8】同面発光体を構成する凸状コーティング層の拡大平面図、
【図9】同面発光体の概略断面図、
【図10】同面発光体の概略断面図、
【図11】同面発光体の縦概略断面図、
【図12】同面発光体の縦概略断面図、
【図13】同面発光体の工程説明図、
【図14】別例のベアチップ実装面発光体の平面図、
【図15】同面発光体を構成する凸状コーティング層の拡大平面図、
【図16】図15に図示したA―A矢視の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示した本発明のベアチップ実装面発光体L(以下、面発光体Lと略称する)は,屋内に配置される照明装置、例えば植物育成工場内に配置される照明装置への応用が想定されるもので、樹脂基板1の配線パターン上に、青色発光ダイオードのベアチップ3B(以下、青色ベアチップ3Bと称する)がマトリックス状に配置され、これら一群の青色ベアチップ3Bの中に、黄色発光ダイオードのベアチップ3Y(以下、黄色ベアチップ3Yと称する)が点在して配置され、これらの青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Y上をコーティング層8で覆うものである。
【0013】
このような面発光体Lによれば、色相が異なる青色ベアチップ3Bの発光と黄色ベアチップ3Yの発光がコーティング層8によって拡散され、混色され、それぞれコーティング層8から出射されるので、電子的制御を介することなく、発光ダイオードの発光により得られる光源色を面発光体の形態にて提供することができる。
【0014】
前記面発光体Lの構成例について説明する。
前記面発光体Lは、図2及び図3に図示したように、樹脂基板(プリント基板)1と、この樹脂基板1上に貼り付けられ、加圧されることで、基板1にアンカー部としてのピンホール10を形成させると共に、所定の配線パターン20にエッチングされる金属箔2と、前記配線パターン20上に施されるメッキ層Pとしての補助メッキ4及び金メッキ5を介して電極30、31が接続される青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yと、前記電極30、31が接続される領域及び打ち抜き又は切削される領域を少なくとも除いて形成される印刷層7と、樹脂基板1全体にフラット状にコーティクングされるコーティング層8を備えている。
【0015】
前記樹脂基板1は、放熱性能が優れた耐熱性有機樹脂基板を用いるのが望ましく、具体的には熱伝導性フィラー入りフェノール樹脂系基板を用いる。エポキシ樹脂基板、ガラス織布エポキシ樹脂基板、ガラス不織布エポキシ樹脂基板等を用いてもよい。
【0016】
前記金属箔2は配線パターン20を形成するものであり、例えば銅、銀、金、白金等の導電性に優れた材料が用いられ、廉価な銅箔が好適に用いられる。これらの金属箔の裏面には、多数の突起21が予め形成されている。
前記配線パターン20は、青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yを直列に接続するように、スルーホール等を介して樹脂基板(プリント基板)1の横方向又は縦方向に形成される。
【0017】
前記青色ベアチップ3Bは、例えばピーク波長が465nmのInGaN系化合物半導体を用いる。
前記黄色ベアチップ3Yは、例えばピーク波長が590nmのInGaN系化合物半導体を用いる。
【0018】
青色ベアチップ3Bに黄色ベアチップ3Yを混在させる割合は、1〜20パーセント程度であればよい。好ましくは、青色ベアチップ3Bに対する黄色ベアチップ3Yの混在割合は、1〜10パーセント程度であり、さらに好ましくは5パーセント前後である。但し、製品、必要とされる光、面発光体Lの設置場所等により混合比率は異なる。
その他、現在、単色光の発光が可能な発光ダイオードについて、混色に適する発光色を例示すれば、次のような組み合わせとなる。
緑色発光ダイオードのベアチップと赤色発光ダイオードのベアチップとの組合せ、橙色発光ダイオードのベアチップと緑色発光ダイオードのベアチップとの組合せ、橙色発光ダイオードのベアチップと青色発光ダイオードのベアチップとの組合せが想定される。
ここでも、好ましくは、混在する発光ダイオードの中で、その割合が大きい発光ダイオードの発光色(主たる発光色という)の発光ダイオードに対し、1〜10パーセント程度の割合で、他の発光色の発光ダイオードを混在させればよく、さらに好ましくは5パーセント前後の割合で、他の発光色の発光ダイオードを混在させる。
将来的には、緑青、青緑、黄緑、紫赤の各色の発光が可能な発光ダイオードが開発されれば、紫色発光ダイオードのベアチップと黄緑色発光ダイオードのベアチップとの組合せ、緑青色発光ダイオードのベアチップと橙色発光ダイオードのベアチップとの組合せ、青緑色発光ダイオードのベアチップと赤色発光ダイオードのベアチップとの組合せが想定される。
【0019】
前記補助メッキ4は、硬い皮膜が形成されるニッケルメッキが好ましい。かかる補助メッキ4は、無電解メッキによって、図2及び図3等に図示したように、各青色ベアチップ3B及び各黄色ベアチップ3Yの各電極30を接続する箇所及び各電極31を接続する金線6用のワイヤーボンディングポイントパターン部に施される。
前記メッキ層Pは、この実施形態では補助メッキ4及び/又は金メッキ5により構成されるが、これらの材質等に限定されるものではない。
【0020】
前記補助メッキ4の上に施される前記金メッキ5は、無電解メッキによって形成されるもので、高密度実装に適している。
【0021】
前記金線6としては、青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yの電極30、31とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められ、具体的には、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤーが挙げられる。
【0022】
前記印刷層7は、配線パターン20を隠蔽したり、発光体の反射率を調整するもので、光源色に適合した色の印刷層を形成する。
印刷層7の印刷方法は特に限定されるものではなく、例えばシルク印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷方法を用いることができ、通常はシルク印刷によって行われる。
【0023】
前記コーティング層8は、樹脂基板1の表面をフラット状に形成するもので、このフラット化により、前記コーティング層8から出射される光が乱出射しないようにするものである。
【0024】
前記コーティング層8は透明なもので、例えば急速硬化性のエポキシ系アクリルを用いる。その他のアクリル系樹脂でもよいし、エポキシ系樹脂でもよい。
【0025】
次に以上のように構成された面発光体Lの製造方法を、図4(A)〜(F)に基いて説明する。
(A) 前記樹脂基板1上に、多数の突起21を有する金属箔2を、該突起21を前記樹脂基板1に食い込ませて貼り付ける(図4(A))。
即ち、金属箔2の貼り付け面には予め接着剤を塗布しておき、また、突起21が樹脂基板1に食い込むように加圧接着する。
【0026】
(B) 前記金属箔2を所定の配線パターン20に形成する(図4(B))。
即ち、金属箔2をエッチングし所定の配線パターン20を形成する。
配線パターン20の形成方法は、エッチドフォイル法等の従来公知の技術を用いて行うことができる。このエッチングにより金属箔が無くなった樹脂基板1の表面には、前記突起21の食い込みによって形成されたピンホール10が残ることになる。
【0027】
(C) 所定の配線パターン20上に、補助メッキ4及びその上に無電解金メッキ5を重ねて形成する(図4(C))。
青色ベアチップ3Bが固着される配線パターン20と、これに隣接する配線パターン20上に、無電解メッキにより、実装密度を上げることができ、また皮膜の強いニッケルをメッキする。次に、この補助メッキ4の上に、無電解メッキにより金メッキ5を施す。
黄色ベアチップ3Yが固着される配線パターン20上、これに隣接する配線パターン20上にも同様に補助メッキ4及びその上に無電解金メッキ5を重ねて形成する
【0028】
(D) 前記金メッキ5、青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yが配置される領域を少なくとも除いた領域に印刷層7を形成する(図4(D))。
これらの印刷層7は、シルク印刷によって形成する。
なお、この時、本発明においては、印刷層7の範囲を加減し、面発光体Lに対する、打ち抜き又は切削等の2次加工によって、面発光体Lを分割する場合には、その外周部分となる領域には印刷層7を形成しない。
【0029】
(E) 前記配線パターン20上に青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yを接合固着させ、且つ、前記金メッキ5との間を金線6を用いてボンディングする(図4(E))。
また、前記配線パターン20上の青色ベアチップ3Bに対し、混在されるように、黄色ベアチップ3Yを接合固着させ、且つ、前記金メッキ5との間を金線6を用いてボンディングする(図4(E))
即ち、例えば青色ベアチップ3Bの一方の電極(例えばN側電極)30は、前記配線パターン20上に直接接続され、他方の電極(例えばP側電極)31は、金線6によって近接の配線パターン20上の前記金メッキ5と接続される。各青色ベアチップ3B及び黄色ベアチップ3Yの電極と配線はワイヤーボンディング機器によって容易に接続させることができるが、この場合には、上述のように、前記補助メッキ4は、ボンディングポイントに加えられる溶接機による熱溶着及び圧力溶着によって、前記樹脂基板1が変形しないように保護すると共に、ボンディングの信頼を向上させる。
【0030】
(F) 第1のコーティング層8をフラット状に形成する(図4(F))
【0031】
上記工程ではアンカー部のピンホール10は、金属箔2を樹脂基板1上に貼り付け、加圧することで形成されているが、予めアルミニウム等の基板上にサンドブラスト等によりアンカー部を形成し、絶縁体を成膜し、メッキ等で配線パターンを形成してもよい。或いは、アルミニウム等の基板上に絶縁体を成膜し、メッキ等で配線パターンした後に、機械的にアンカー部を形成してもよい。
【0032】
以上のように構成される面発光体Lの作用効果は次の通りである。
(1) 色相が異なる青色ベアチップ3Bのベアチップ群の発光及びこのベアチップ群に混在される黄色ベアチップ3Yの発光が、コーティング層8によって拡散され、そのコーティング層8から出射されて、視覚を介して混色される。
即ち、発光ダイオードに対する電子的制御を行うことなく、所望の発光色のベアチップ実装面発光体を提供することができる。
(2) 従来型面発光体では砲弾型LEDユニットの光の直進性が強いため違和感を与える場合があるが、面発光体Lでは発光ダイオードの発光がコーティング層8によって拡散されるので混色が認識され易く、違和感を抑えることができる。
(3) 樹脂基板1に残されたピンホール10にコーティング層8が食い込んだ状態となっているため、樹脂基板1との接着性が極めて高いものとなる。このため、ピンホール10にコーティング層8が食い込んだ領域を利用して、プレスで打ち抜き又は切削加工等による2次加工を施すことにより、樹脂基板1とコーティング層8との剥離を引き起こすことなく、所望の形状の面発光体Lを得ることができる。
(4) 本発明の面発光体では、拡散板が不要であること及び下記の要素により、薄くて、軽量な、防水性に優れ、且つ、安価な面発光体を提供することができる。
即ち、前記補助メッキ4は、ボンディングポイントに加えられる溶接機による熱溶着と圧力溶着によって、樹脂基板1が変形しないように保護すると共に、ボンディングの信頼を向上させるものである。よって、前記金メッキ5の下に補助メッキ4を介在させることで、薄型の樹脂基板(例えば、厚さ0.3mm)に青色ベアチップ3B等を実装することが可能となった。
また、この作用により、樹脂基板1の表面に塗布するコーティング層8を含めて、厚さが1.3mm±0.1の厚さの面発光体Lが製造可能である。
(5) また、基板1に形成されたピンホール10のアンカー効果により、基板1に対するコーティング層8の付着力、密着力が強まり、耐衝撃、耐振動、耐防水性に優れており、屋外でもそのまま使用可能な面発光体となっている。
(6) 砲弾型LEDユニットを別工程にて作り込む必要がなく、樹脂基板1へのマウンテングからコーティングまで1回の工程でベアチップ実装面発光体Lを生産することができる。即ち、従来は、砲弾型LEDユニットをそのパッケージメーカーが作り、それを照明機器メーカーが購入して、基板に実装していたが、本発明では、一度に、少ない工程で効率よく所定の発光色の面発光体Lを生産することができる。
【0033】
なお、コーティング材としてエポキシ樹脂を用いることができ、これに用いられる硬化剤としては、エポキシ樹脂と硬化反応を示すものであれば特に制限されず、公知の硬化剤が使用され、例えば、フェノール樹脂又は酸無水物が好ましい。特に酸無水物系硬化剤を用いると、硬化体の光学特性が著しく改善されるため、酸無水物を用いることがより好ましい。
【0034】
また、上記各樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、着色剤、カップリング剤、変性剤、光線(紫外線、可視光線、赤外線)吸収剤、充填剤等の従来公知の添加剤を配合することができる。
【0035】
次に、本発明のベアチップ実装面発光体L1(以下、面発光体L1と略称する)の構成例を説明する。
この面発光体L1は,樹脂基板1の配線パターン上に、一群の発光ダイオードのベアチップと、これらの発光ダイオードのベアチップの発光色と色相対比の関係にある発光色の一群の発光ダイオードのベアチップを隣接させて配置し、これらのベアチップ上をコーティング層で覆うものである。
例えば、図5のように「A、B、C」の文字の輪郭に沿って赤色発光ダイオードのベアチップ3R(以下、赤色ベアチップ3Rと称する)の一群を配置し、一方、背景色として青色発光ダイオードのベアチップ3B(以下、青色ベアチップ3Bと称する)の一群を配置し、これらの青色ベアチップ3B及び赤色ベアチップ3R上をコーティング層8で覆うものである。
【0036】
より詳細には、前記面発光体L1は、樹脂基板1と、この樹脂基板1上に貼り付けられ、加圧されることで、樹脂基板1にアンカー部としてのピンホール10を形成させると共に、所定の配線パターン20にエッチングされる金属箔2と、前記配線パターン20上に施されるメッキ層Pとしての補助メッキ4及び金メッキ5を介して電極30、31が接続され、且つ、A、B及びCの文字輪郭内を埋めるように配置される一群の赤色ベアチップ3Rと、前記メッキ層Pを介して電極30、31が接続され、且つ、A、B及びCの文字輪郭外を埋めるように配置される一群の青色ベアチップ3Bと、前記電極30、31が接続される領域及び打ち抜き又は切削される領域を少なくとも除いて形成される印刷層7と、樹脂基板1全体にフラット状にコーティクングされるコーティング層8を備えている。
【0037】
前記赤色ベアチップ3Rは、例えばピーク波長が700nmのGaP系化合物半導体を用いる。
その他の各構成は、上記面発光体Lの各構成と同一であり、それらの詳細な説明は省略する。
【0038】
前記面発光体L1の製造方法は、上記面発光体Lの製造方法と略同一の手順であり、異なる手順は、上記(E)工程において、前記配線パターン20上において、赤色ベアチップ3Rは、A、B及びCの文字輪郭内を埋めるように配置することと、A、B及びCの文字輪郭外を埋めるように青色ベアチップ3Bを配置することである。
なお、A、B及びC等の文字輪郭に沿って、後述のシルクダム等で文字等の境界領域での発光色の混色を避けるためのバリアを設けることが望ましい。
【0039】
以上のような前記面発光体L1によれば、上記(1)〜(6)までの効果に加えて、(7) 一群の赤色ベアチップ3Rの発光が、一群の青色ベアチップ3Bの発光により引き立てられることで、補色効果が発揮される。
その他の構成及び効果等は、前記面発光体Lの効果と同様である。
【0040】
次に、本発明のベアチップ実装面発光体L2(以下、面発光体L2と略称する)の製造方法及び構成例を,図6に基いて説明する。なお、上記各面発光体と同一の構成についは詳細な説明を省略する。
この面発光体L2が前記各面発光体と異なる工程は、上記(E)工程以後について、(F’)樹脂基板1を加温すると共に、この樹脂基板1に滴下するコーティング材Cを加温し、加温されたコーティング材Cを樹脂基板の幅に対応させて数条に分岐させて滴下する工程と、(G)工程として、前記コーティング材Cを硬化させた後、その表面に印刷する工程を付加できることである。
【0041】
即ち、図6(F’)のように、前記樹脂基板1を加熱ヒーター等から構成される加熱手段Hを用いて加温すると共に、加温されたコーティング材Cを、注入手段POを用いて樹脂基板1の幅に対応させて数条に分岐させて滴下させる。加温する際の温度は、約50℃〜70℃が好ましい。なお、その際、コーティング材Cの「タレ」を防ぐために、樹脂基板1の外周に柵手段を設けるようにしてもよい。
その後、図6(G)のように、コーティング層8の硬化を確認した後に、その表面に印刷層81を形成すればよい。
【0042】
以上のような工程により、樹脂基板1と、この樹脂基板1上に貼り付けられ、加圧されることで、前記基板1にアンカー部10を形成させると共に、所定の配線パターン20にエッチングされる金属箔2と、前記配線パターン20上に施されるメッキ層Pを介して電極30、31が接続される発光ダイオードのベアチップ3と、前記ベアチップ3が配置された領域及び打ち抜き又は切削される領域を少なくとも除いて形成される印刷層7と、平滑なコーティング層8と、その上に直接印刷されて形成される印刷層81を備えることを特徴とするベアチップ実装面発光体L2を得ることができる。
【0043】
以上のような面発光体L2の作用効果は、上記(1)〜(7)までの効果に加え、次の通りである。
(8) コーティング材C自体を加温して粘度を下げ、その加温が樹脂基板1
に影響されないようにその樹脂基板1自体も加温し、また、コーティング材Cを数条に分岐、且つ、滴下させるため、コーティング材Cのうねりの波長を小さくすることができると共に、滴下時間を減少させることができ、コーティング層8の平滑度を高めることができる。
即ち、液状のコーティング材の平滑化に関連する要素として、コーティング材の粘度及び表面張力、塗膜の厚さ、滴下されたコーティング材が形成する山と谷のうねり(波長)がある。そして、粘度が低く、表面張力が高く、塗膜の厚さが厚く、うねりの波長が小さくさいほど、平滑化が促進される。
また、コーティング材の粘度は時間の経過と共に増加することから、平滑化の精度を上げるためには、コーティング材の塗布面積に対するコーティング材の滴下時間を減少させることが望ましい。
そこで、本発明では、これらの要素の内、コーティング材の粘度とコーティング材のうねりに着目して、コーティング工程を改善して、平滑化の精度を上げることができるようにした。
(9) コーティング層8の平滑度を高めることができるため、ベアチップの基板への実装から面発光体への印刷まで、連続的に一連化させることができる。
(10) コーティング層8に直接印刷しているので、ベアチップ3の光強度が減衰されることなく印刷層81に届くことで、印刷層81を鮮やかに映し出すことができる。
(11) 発光面が平滑化されるので、その発光面から照射する光の画角(写角)を拡げることができる。
その他の効果は、前記面発光体Lの効果と同様である。
【0044】
次に、本発明のベアチップ実装面発光体L3(以下、面発光体L3と略称する)の構成例を、図7〜図12に基いて説明する。なお、上記各面発光体と同一の構成についは詳細な説明を省略する。
この面発光体L3が前記各面発光体と異なる構成は、前記ベアチップ3B等の上にから凸状コーティング層8Aを均一に形成し、さらにその上から前記コーティング層80(上記コーティング層8と同一構成である)を形成したものである。
【0045】
前記凸状コーティング層8Aは、前記青色ベアチップ3B等の上から垂下されて硬化されるもので、図9に図示したように、凸状レンズに形成されるものである。
なお、前記凸状コーティング層8Aは、レンズ状のものに形成しているが、球面ではなく、曲面を備えたもの、一部に平面を備えた曲面のものでもよい。
また、この実施例では、青色ベアチップ3B等のその本体のみに凸状コーティング層8Aが形成されているが、図10のように金線6の接続先の配線パターン部分を含むように凸状コーティング層8Aを形成するようにしてもよい。
【0046】
次に以上のように構成された面発光体L3の製造方法を、図13に基いて説明する。
図13の工程図において、図6の工程図に共通する工程は、同一の図番で表示しており、図13(E’)に示した工程が図6(E)の工程とは異なる。
即ち、(E’)工程として、前記青色ベアチップ3B等に、コーティング材Cを滴下させ、硬化させて凸状コーティング層8Aを形成する(図13(E’))。
【0047】
以上のように構成される面発光体L3では、上記(1)〜(11)までの効果に加え、次のような作用効果を奏する。
(12) レンズ状の凸状コーティング層8Aから出る光線は、広範囲に拡散されて出射され、これらの光線が、コーティング層80から出射されるので、その平滑度が高められたコーティング層80と相まって、一様な面発光体とすることができる。
その他の構成及び効果は、上記実施形態と同一である。
【0048】
次に、本発明のベアチップ実装面発光体L4(以下、面発光体L4と略称する)の構成例を,図14乃至図16に基いて説明する。
面発光体L4が、前記各面発光体と異なる構成は、前記基板1上の青色ベアチップ3B等の配置されている位置を中心にして、円形状のシルクダム71を設けて、前記凸状コーティング層8Aを、均一に、且つ、等間隔又は略等間隔に隣接させて形成したことである。その他の構成は、上記各面発光体と同様であり。詳細な説明を省略する。
【0049】
前記シルクダム71は、次のような機能を発揮するものである。
第1に、各凸状コーティング層8Aの形状が均一に成形できるようにすること、第2に各凸状コーティング層8Aの基板に対する配置を、可能な限り等間隔に、且つ、均等に位置させること等である。
即ち、通常のシルクダムのように、凸状コーティング層8Aを形成する流動性のコーティング材が意図しない領域まで流れ出ることを防止するものではない。
前記シルクダム71は、この実施例では直径約5mm、巾約0.3mm、厚み約0.2mmに形成されている。
なお、前記シルクダム71の代わりに、基板表面にコートされるレジストを用いてリング状のパターンを形成して、これを土手部としてもよい。
【0050】
以上のように構成された面発光体L4の製造方法は、上記各面発光体の製造工程(D)において、(D’) 前記金メッキ5及びベアチップ3Bが配置される円形領域70の外周にそってシルクダム71を形成する共に、これを少なくとも除いた領域に印刷層7を形成することとする。
これらの印刷層7及びシルクダム71は、シルク印刷によって形成する。
【0051】
以上のように構成される面発光体L4では、上記(1)〜(12)まで効果に加え、次のような作用効果を奏する。
(13)各凸状コーティング層8Aの形状が均一に成形され、また各凸状コーティング層8Aの基板に対する配置を、可能な限り等間隔に、且つ、均等に位置されるので、一様な面発光体とすることができる。
その他の効果は、上記各面発光体と同一である。
【符号の説明】
【0052】
L L1 L2 L3 L4 ベアチップ実装面発光体
1 樹脂基板 10 ピンホール(アンカー部)
2 金属箔 20 配線パターン
21 突起
3B 3Y 3R ベアチップ 30 31 電極
P メッキ層
4 補助メッキ
5 金メッキ
6 金線
7 印刷層
8 コーティング層 80 コーティング層
81 印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成される基板と、前記配線パターン上に接続され、且つ、発光色が同一の少なくとも一群の発光ダイオードのベアチップと、前記配線パターン上に接続され、且つ、前記ベアチップ群の中に混在させると共に、前記ベアチップとは、その発光色の色相が相違する発光ダイオードのベアチップと、前記基板全体をコーティングするコーティング層を備えたことを特徴とするベアチップ実装面発光体。
【請求項2】
配線パターンが形成される基板と、前記配線パターン上に接続され、且つ、発光色の色相が色相対比の関係となる一群の発光ダイオードのベアチップと、前記基板全体をコーティングするコーティング層を備えたことを特徴とするベアチップ実装面発光体。
【請求項3】
前記ベアチップ群の発光色と前記ベアチップの発光色とは補色の関係にあることを特徴とする請求項1に記載のベアチップ実装面発光体。
【請求項4】
色相対比の関係となる前記ベアチップ群相互の発光色とは補色関係にもあることを特徴とする請求項2に記載のベアチップ実装面発光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−109485(P2012−109485A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258678(P2010−258678)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(591255634)
【出願人】(302018503)サティスボンバー株式会社 (6)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】