説明

ベクターとして鳥類ヘルペスウイルスを用いた鳥類用組換え生ワクチン

【課題】鳥類ヘルペスウィルスをベクターとして有する鳥類用組換え生ワクチン
【解決手段】CMV即時初期プロモータの制御下に、ORF UL55のATGと隣接する繰り返し領域を有するULの接合点との間の領域に挿入された、鳥類の病原物質の抗原ポリペプチドをコードし且つ発現する塩基配列を少なくとも1つ含む鳥類用組換え生ワクチンと、異なる配列が挿入されたワクチンを少なくとも2種含む混合物または混合用の多価ワクチン製剤。ベクターはマレック病ウィルス(MDVおよびHVT)、感染性喉頭器官炎ウィルスILTVおよびアヒルのヘルペスウィルスからなる群の中から選択するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組み換えによって鳥類の病原物質の抗原ポリペプチドをコードし且つ発現する少なくとも1つの塩基配列をワクチンを接種した動物が病原物質から効果的に保護される免疫を獲得するような条件で挿入した、鳥類ヘルペスウィルス、特にマレック病(Marek's disease) ウィルス(MDV) 、特に HVTウィルス(七面鳥のヘルペスウィルス)をベースとした鳥類用の組換え生ワクチンに関するものである。
本発明は感染性喉頭器官炎ウィルス(ILTV)およびアヒルのヘルペスウィルスにも適用される。
【背景技術】
【0002】
鳥類の病原物質、特にマレック病ウィルス(MDV)、ニューカッスル病ウィルス(NDV)、感染性喉頭器官炎ウィルス(ILTV)、ガンボロ病ウィルス(感染性滑液嚢炎ウィルスIBDV)、感染性気管支炎ウィルス(IBV)および鳥類の貧血症ウィルス(CAV)を含む病原性ウィルスに対して鳥類に予防接種を行うための鳥類の組換え生ベクターは既にいくつか提案されている。
そのために用いられる生ベクターはアヴィポックスウィルス(avipox viruses)特に、鶏痘ウィルス(下記特許文献1、下記非特許文献1、2)、血清型が2および3のマレック病ウィルス(HVT)(下記特許文献2〜5、下記非特許文献4〜6)またはILTVおよび鳥類のアデノウィルスである。
【特許文献1】欧州特許第0,517,292 号公報
【非特許文献1】H. G. Heine 達、 Arch. Virol. 1993. 131. 277-292
【非特許文献2】D.B. Boyle達, Veterinary Microbiology 1994. 41. 173-181
【非特許文献3】C.D. Bayliss達, Arch. Virol. 1991. 120. 193-205
【特許文献2】国際特許第WO-A-87 04463 号公報
【特許文献3】国際特許第WO-A-89 01040 号公報
【特許文献4】国際特許第WO-A-93-25665 号公報
【特許文献5】欧州特許第 513,921号公報
【非特許文献4】J. McMillen, Poultry Condemnation Meeting, 1994年10月, 359-363
【非特許文献5】P.J.A. Sondermeijer 達, Vaccine 1993. 11. 349-357
【非特許文献6】R.W. Morgan 達, Avian Diseases 1992. 36. 858-870、 1993, 37, 1032-1040
【0003】
これらのウィルスを予防接種に使用した場合、特定の事例でかなりの防御効果が示されることが稀にはあるが、これらの組換えウィルスによって誘導される防御レベルは変化し易く、一般には弱いか、部分的なものである。
鳥類用組み換え生ワクチンによる予防の中で最も困難なものはガンボロ病ウィルスまたはIBDVウィルスである。すなわちこれらの病気に対しては従来の不活化または弱毒化生ワクチンが効果的であるが、組換え生ワクチンで適当な効果を示すものはない。
カンボロ病ウィルスのゲノムは二重鎖RNAで構成されており、その最大断片(断片A)は115kDaのポリプロテインをコードする。このポリプロテインはさらに3つの蛋白質VP2(41kDa)、VP4(28kDa)、VP3(32kDa)に分裂する。VP4 は115kDaのポリプロテインの成熟に関与するプロテアーゼであると言われている。VP2 とVP4 との間の分裂箇所については大体の位置しか分かっていない(下記非特許文献7)。蛋白質VP2 は中和抗体を出す免疫源であり、ガンボロ病に対する防御を誘導する。
【非特許文献7】M. Jagadish, J. Virol. 1988, 62, 1084-1087
【0004】
免疫原性のIBDV蛋白質をコードする遺伝子を各種の生ベクターに挿入する方法は既に提案されている:欧州特許第 517,292号(VP2 またはポリプロテインをコードする配列をアヴィポックスに挿入);上記の非特許文献1〜3 (VP2を鶏痘に)。
マレック病ウィルスも既に提案されている:下記特許文献6、7(gC、TK、PR1,PR2の各種挿入部位)、下記特許文献8(PR2)、下記特許文献9(US3)、下記特許文献10、下記特許文献11(BamHI#16および#19)および下記特許文献12(US3)。下記非特許文献8は HVTゲノムにレトロウィルスを組み込むための組み込み部位の数を決定しており、これらの部位はBamHI制限酵素断片F、AおよびI上に位置している。
【特許文献6】国際特許第WO-A-90 02802号公報
【特許文献7】国際特許第WO-A-90/02803号公報
【特許文献8】フランス国特許出願第90/03105号公報
【特許文献9】国際特許第WO-A-90/11146号公報
【特許文献10】国際特許第WO−A−87/04463号公報
【特許文献11】国際特許第WO−A−89/01040号公報
【特許文献12】国際特許第WO−A−93/25655号公報
【非特許文献8】R.J. Isfort 達(Virology 1994. 203. 125-133
【0005】
一般に市販のものを含む各種プロモータは従来技術の各種構成で利用されている。すなわちPRV gXプロモータ、HCMV IE (ヒトのCMV 即時初期)プロモータ、ヘルペス単純ウィルスのα−4プロモータ、FPV P.E/L プロモータ(鶏痘プロモータ)(下記非特許文献9)、RSV(Rous sarcomavirus)のLTR 配列に由来する痘疹ウィルスのP7.5 (下記非特許文献10)およびp11 (下記非特許文献11)プロモータ、SV40の初期プロモータ、さらにMDVまたはHVTプロモータ、例えばgB、gC、TK、RR2などの遺伝子のプロモータがあるが、一貫したパターンは現れていない。特にHVTにおける構成の場合。いくつかのプロモータ配列は組換えHVTまたはMDVベクターの複製を禁止する(下記非特許文献12および下記非特許文献13)。上記プロモータのいくつか、例えばSV40、LTRRSVおよびPRVgXは、マレックウィルスのいくつかの遺伝子本来のプロモータ、特に血清タイプ3と同様に何らかの効力を示す。
【非特許文献9】H.Heine et al., Arch. Virol. 1993. 131. 277-292
【非特許文献10】C. Bayliss et al., Arch. Virol. 1991. 120. 193-205
【非特許文献11】D. Boyle et al., Vet. Microb. 1994.41. 173-181
【非特許文献12】D. R. Marshall et al.,J. Vir. Meth. 1992. 40. 195-204
【非特許文献13】Virology1993. 195. 638-648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、EVTベクターに鳥類の免疫原、特にIBDVの蛋白質VP2をコードする配列を少なくとも1つ挿入したものをベースとする組換え生ワクチンを開発することにある。
VP2をコードする配列を組み込んだワクチンは動物をガンボロ病から十分に防御することができ、死亡およびファブリシウス滑液嚢炎から守ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、ベクターとして鳥類の病原物質の抗原ポリペプチドをコードし且つ発現する塩基配列を少なくとも1つ含む鳥類ヘルペスウィルスを含む鳥類用組換え生ワクチンであり、上記塩基配列は、即時初期CMVプロモータの制御下に、ORF UL55のATGと隣接する繰り返し領域を有するULの接合点との間の領域に挿入されている。
この挿入領域はHVTではBamHI断片Iに相当し、MDVではBamHI断片K+Hに相当する。このことはブックマスター(A. E. Buckmaster)の下記文献14に記載されている。
【非特許文献14】J. Gen. Virol.1988. 69. 2033-2042)
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による鳥類用ヘルペスウィルスはマレック病ウィルス、特に HVT、感染性喉頭器官炎ウィルスILTV、アヒルのヘルペスウィルスであるのが好ましく、マレック病ウィルス、特に、HVTウィルスが好ましい。
HVTのBamHI制限断片Iは複数のORFと3個の遺伝子間領域とを有し、さらに本発明の挿入領域として複数の好ましい挿入領域、好ましくは3つの遺伝子間領域1、2および3とORF UL55とを含んでいる。
挿入領域への挿入とは、欠失を伴わない挿入、遺伝子間領域の複数の塩基を欠失させて行う挿入、ORFを完全または部分的に欠失させて行う挿入あるいは欠失させずに行う挿入を意味する。
CMV即時初期プロモータ(CMV immediate early promoter, IE)とは例に挙げた断片およびそれと同じプロモータ活性を保持するサブ断片を意味する。
CMVIEプロモータはヒトのプロモータ(HCMVIE)またはネズミのプロモータ(MCMVIE)あるいは由来の異なるCMVIEプロモータ、例えばラットまたはモルモット由来のプロモータにすることができる。
【0009】
マレックベクターに挿入され、発現される塩基配列は鳥類の病原物質の抗原ポリペプチドすなわち本発明で実現される好適な条件のもとで発現された時に、予防接種をした動物が病原物質から効果的に防御されるような免疫を獲得できるようなポリペプチドをコードする任意の配列にすることができる。従って、所定の病気の対象となる抗原をコードする塩基配列を本発明の条件下で挿入することができる。
本発明の組換え体は、卵の状態での予防接種や生後1日目のヒナの予防接種、さらに大きなヒナや成鳥の予防接種で使用することができる。
本発明は特にIBDVウィルスのVP2ポリペプチドを適切にコードする塩基配列の挿入に使用することができる。これによって得られる組換え生ワクチンはマレック病に対する防御に加えてガンボロ病に対して完全に防御できる。必要な場合には、別のIBDV抗原、例えばVP3やポリプロテインVP2+VP4+VP3などをコードする配列を挿入することもできるが、これらの挿入は好ましくない。
【0010】
ガンボロ病に対する組換えワクチンは1回の投与量当り10〜104pfuの濃度で与えるのが好ましい。
本発明の他の好ましいケースはマレック病ウィルスの抗原をコードする塩基配列、特にgB、gC、gDおよびgH+gL遺伝子(特許文献7)、ニューカッスル病ウィルスの抗原をコードする塩基配列、特にFおよびHN遺伝子、感染性気管支炎ウィルス(IBV) の抗原をコードする塩基配列、特にSおよびM遺伝子 (非特許文献15、非特許文献16)、鳥類の貧血症ウィルス(CAV) の抗原をコードする塩基配列、特にVP1(52kDa)+VP2(24kD) (非特許文献17)および感染性喉頭器官炎ウィルス(ILTV)の抗原をコードする塩基配列、特にgB(特許文献6)、gC、gDおよびgH+gLを挿入したものである。
【非特許文献15】M. Binns et al., J. Gen. Virol. 1985. 66. 719-726
【非特許文献16】M. Boursnell et al., Virus Research 1984. 1. 303-313
【非特許文献17】N.H.M.Noteborn et al., J. Virol. 1991. 65. 3131-3139
【0011】
投与量はガンボロワクチンで確認されたものと同じにするのが好ましい。
本発明の有利な展開は、CMVIEプロモータを別のプロモータにヘッドツーテイル(Head-to-tail)の向きで連結し、2つの塩基配列は一方はCMV IEのプロモータの制御下に挿入し、もう一方は該プロモータに連結されたプロモータの制御下に挿入しきるようにすることである。この構成はCMV IEプロモータ、特にそのエンハンサー部分によって連結されたプロモータによって誘導される転写が活性化されるという点で特筆すべきものである。連結されるプロモータとして好ましいものはマレック1.8 RNA プロモータであり、その転写活性はこれらの条件下で4.4倍になることが分かっている。
本発明の典型的なケースは、CMVIEの制御下にIBDV VP2をコードする配列を含み、別のプロモータの制御下にもう1つの鳥類疾患の抗原、特に上記のものをコードする塩基配列を含むワクチンである。
【0012】
由来の異なるCMV IEプロモータをヘッドツーテイルの向きに並べることも可能である。
特に、マレック病、ニューカッスル病、感染性喉頭器官炎、感染性気管支炎および鳥類の貧血症に対するワクチンについては、1.8RNAプロモータをCMVIEプロモータの代わりに単独で使用することもできる。
本発明の他の対象は、異なる病原体に由来する異なる配列を挿入された上記定義の組換え生ワクチンを少なくとも2種含む、混合物または混合用の多価ワクチン製剤にある。
本発明は、さらに、上記定義の組換え生ワクチンまたは多価ワクチン製剤を投与する鳥類の予防接種法に関するものである。本発明は特に卵の状態での予防接種、生後1日またはそれ以上のヒナおよび成鳥の予防接種を行うための方法を対象にする。
【0013】
以下、図を参照して非限定的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
図は遺伝子間部位での構成図と配列のリストである。
遺伝子間部位での構成用配列リスト
配列 NO.1 HVTBamHI断片Iの配列
配列 NO.2 オリゴヌクレオチドEL102
配列 NO.3 オリゴヌクレオチドEL161
配列 NO.4 オリゴヌクレオチドEL147
配列 NO.5 オリゴヌクレオチドEL162
配列 NO.6 オリゴヌクレオチドEL154
配列 NO.7 オリゴヌクレオチドEL163
配列 NO.8 オリゴヌクレオチドEL164
配列 NO.9 オリゴヌクレオチドEL165
配列 NO. 10 オリゴヌクレオチドEL132
【0014】
配列 NO. 11 オリゴヌクレオチドEL133
配列 NO. 12 オリゴヌクレオチドMB070
配列 NO. 13 オリゴヌクレオチドMB071
配列 NO. 14 オリゴヌクレオチドCD001
配列 NO. 15 オリゴヌクレオチドCD002
配列 NO. 16 オリゴヌクレオチドCD003
配列 NO. 17 オリゴヌクレオチドCD004
配列 NO. 18 NDV HV遺伝子の配列
配列 NO. 19 オリゴヌクレオチドEL071
配列 NO. 20 オリゴヌクレオチドEL073
【0015】
配列 NO. 21 オリゴヌクレオチドEL074
配列 NO. 22 オリゴヌクレオチドEL075
配列 NO. 23 オリゴヌクレオチドEL076
配列 NO. 24 オリゴヌクレオチドEL077
配列 NO. 25 MDV1.8−kbpRNAプロモータの配列
配列 NO. 26 オリゴヌクレオチドMB047
配列 NO. 27 オリゴヌクレオチドMB048
配列 NO. 28 オリゴヌクレオチドMB072
【実施例】
【0016】
全てのプラスミドの作製はサムブルック(Sambrook)達の Molecular Cloning:
A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory. Cold Spring
Harbor. New York. 1989) に記載の分子生物学の標準的手法で行った。本発明で使用した全ての制限酵素断片はジェネクリーン(Geneclean) キット (BIO 101 Inc. La Jolla, CA)を用いて単離した。
親ウィルスとして使用したウィルスは七面鳥ヘルペスウィルス(HVT)のFC126株で、地域家禽研究所 (Regional Poultry Research Laboratory USDA, East Lansing, Michigan)のウィッタ博士が23週齢の七面鳥群から単離されたものである(下記非特許文献18)。このウィルスの培養条件は特許文献8(フランス国特許出願第90/03105号公報)に記載のものを用いた。
【非特許文献18】Writter R. L. et. al., Am. J. Vet. Res. 1970.31. 525-538
【0017】
実施例1
マレック病ウィルスからのDNA抽出
7日目にMDV のRB1B株を用いて攻撃したニワトリから感染14日後に血液の全量を注射器を用いて抗凝結物質(100IU/mlのヘパリン溶液)上に回収した。次いでこの血液を室温で15分間、30gで遠心分離した。軟膜と供に血漿を除去し、無菌のPBS を用いて最終量が10mlとなるように希釈した。150 gで15分間遠心分離した後、細胞ペレットを2%の牛胎児血清(FCS) を含む199 培地(ギブコ−BRL カタログ番号042-01183M)2mlに再懸濁した。
次に、感染させたリンパ球の全DNAをR. Morgan 達の方法 (Avian Diseases1990. 34. 345-351)に従って抽出した。これはPCR 試験の鋳型として直接使用することができる。MDV ウィルスのゲノム断片をクローニングするために、RB1B株をCEF 上で培養し、リー(Lee Y.)達の方法(J. Gen. Virol. 1980. 51. 245-253)に従って精製したウィルス粒からウィルスのDNAを調製した。
【0018】
実施例2
MCMVウィルス(マウスのサイトメガロウィルス)のゲノムDNAの調製
米国タイプカルチャーコレクション(Type Culture Collection, Rockville,
Maryland, USA)からMCMVウィルスのSmith 株を入手した(ATCC No. VR-194) 。このウィルスをBalb/Cマウスの胎児細胞上で培養し、このウィルスのウィルスDNAをエベリング達(Ebeling A. et al., J. Virol. 1983. 47. 421-433)の方法で精製した。
【0019】
実施例3
トランスフェクション試験のためのHVT ウィルスのゲノムDNAの調製
トランスフェクション試験に用いるウィルスDNAはモルガン(R.Morgan)達のAvian Diseases. 1990. 34. 345-351 に記載の方法でHVT ウィルスのFC126株に感染させた二次培養CEC(CECII)から調製した。
【0020】
実施例4
BamHI断片Iの説明
HVTウィルスFC126株の5.8-kbpのBamHI断片I (Igarashi T. et al., J.Gen. Virol. 1989. 70. 1789-1804)を Genecleanを用いて単離し、ベクターpBS-SK+ のBamHI 部位にクローニングしてプラスミドpEL037を作製した。この断片の配列の全体(5838bp)H確定している(図1〜4、配列 NO.1)。この配列では6個のオープンリーディングフレーム(ORF)が同定されている。これらのORF によってコードされる可能性のある蛋白質を研究した結果、これらの蛋白質のいくつかが他のαヘルペスウィルス内に存在するORFによってコードされる蛋白質との間に相同性を示すことが明らかになった。第1番目のORF(ORF1)(配列 NO.1の676 〜1209の位置) はHSV−1UL55のORF、EHV−1 遺伝子4のORFおよびVZV遺伝子5のORFとの間に相同性を示し、178 アミノ酸(aa)の理論上の蛋白質HVTUL55をコードする。ORF2は配列 NO.1の1941〜1387の位置にあって ORFEHV−1遺伝子3によってコードされる蛋白質と相同な185aa の蛋白質をコードする。 ORF3は不完全である。これは配列 NO.1の5838〜3573の位置にあってMDVのORF21との間に相同性を示す(Ross No. et al. Virus Genes. 1993. 7. 33-51) 。この配列で同定される他3つの ORFすなわちORF4 (1403 〜1957まで)(185aa の蛋白質)、ORF5(3081〜2287まで)(265aa の蛋白質)およびORF6(不完全;479 〜1まで)は、配列ライブラリー中に相同なものを持たない。HVTウィルスのBamHI断片Iのゲノムは外部遺伝子の発現のためのカセットの挿入部位として使用可能な遺伝子間領域が3箇所存在する構成をしている。
【0021】
遺伝子間領域(遺伝子間領域1)は ORFUL55とORFHVT遺伝子3との間に存在する。第2の遺伝子間領域(遺伝子間領域2)はORFHVT遺伝子3と265−aaORFとの間に存在する。第3の遺伝子間領域(遺伝子間領域3)は265−aaORFとORF21との間に存在する。これら3つの領域は、得られた組換えHVTウィルスのin vivoでの複製に影響を与えずに、発現カセットの挿入のために使用することができる。
以下、この遺伝子間領域1、2および3のためのドナープラスミドの作製例を説明する。
【0022】
実施例5
遺伝子間領域1用のドナープラスミドの作製
プラスミド pEL037をBamHIとEcoRIとで処理して、2672-bp と2163-bp のBamHI−EcoRI断片を単離した。これらの断片を予めBamHIとEcoRIで処理したベクターpBS−SK+に導入して 5167bp のプラスミドpEL039と、6104bpのプラスミド pEL040とをそれぞれ得た。プラスミドpEL039(図5)をBamHIおよびPstIで処理して997bp のBamHI−PstI断片(断片A)を得た。
下記のオリゴヌクレオチドおよび鋳型pEL039を用いてPCRにより420-bpの断片を作製した:
EL102 (配列 NO.2) 5'CATTATAAGACCAACGTGCGAGTC 3'
EL161 (配列 NO.3) 5'GTTCACGTCGACAATTATTTTATTTAATAAC 3'
この断片を PstIとSalIとで処理して250-bpのPstI−SalI断片(断片B)を単離した。断片AおよびBを予めBamHIとSalIとで処理したベクターpBSII−SK+(ストラタジーン社)に導入して4160-bpのプラスミドpEL077(図6)を得た。プラスミドpEL039をBstBIおよびScaIで処理して(ブラントエンドを有する)475-bpのBstBI−ScaI断片(断片C)を単離した。
【0023】
下記のオリゴヌクレオチドと鋳型pEL039を用いて715-bpのPCR断片を作製する:
EL147 (配列 NO.4)
5'AAGATAATGGGCTCCCGCTGTTC 3'
EL162 (配列 NO.5)
5' TAATTGTCGACCCCGGGGAATTCGTTTAATGTTAGTTTATTC 3'
この断片をBstBIとSalIとで処理して465-bpのBstBI−SalI断片(断片D)を単離した。断片Cおよび断片Dを予めApaIで処理してクレノーポリメラーゼで修復した後、SalIで処理したプラスミッドpEL077に導入して5082-bpのプラスミドpEL079(図7)を得た。このプラスミドは遺伝子間部位1にEcoRI−SmaI−SalIポリリンカーを含んでいる。
【0024】
実施例6
遺伝子間領域2のためのドナープラスミドの作製
プラスミドpEL039(実施例5)をBstBIおよびPstIで処理して715-bpのBstBI−PstI断片(断片A)を単離した。
下記オリゴヌクレオチドと鋳型pEL039を用いてPCRを行って500-bpのPCR断片を作製した:
EL154 (配列 NO.6) 5'GAAATGCAAACTAACATTATTGTC 3'
EL163 (配列 NO.7) 5'GTGTAAATAGTCGACAATATAGATAACGGGC 3'
この断片をBstBI とSalIとで処理し、430-bpのBstBI−SalI断片(断片B)を単離した。断片AとBを予めPstIとSalIとで処理したベクターpBSII−SK+に導入して4081-bp のプラスミドpBL076(図8)を得た。
【0025】
下記オリゴヌクレオチドと鋳型pEL039とを用いて565-bpのPCR断片を作製した:
EL164 (配列 NO.8)
5'CTATATTGTCGACCCCGGGGAATTCATCGACATGATTAAATAC 3'
EL165 (配列 NO.9)
5' CAATGAAGAAATATTTTCTTTGTTCCTTGAAATGC 3'
この断片をSalIおよびSspIとで処理して535-bpのSalI−SspI 断片を単離した。この断片を、あらかじめApaIで処理してクレノーポリメラーゼで修復後にSalIで処理したプラスミドpEL076に導入して、4598-bpのプラスミドpEL078(図9)を作製した。このプラスミドは、遺伝子間領域2にEcoRI−SmaI−SalI ポリリンカーを含んでいる。
【0026】
実施例7
遺伝子間領域3のためのドナープラスミドの作製
プラスミドpEL040(実施例5参照)をNcoIとSphIで処理して1468-bp のNcoI-SphI 断片を単離した。この断片を予めNcoIとSphIで処理したプラスミドpUC BM20(ベーリンガーマンハイム、カタログ番号1219235 )に導入して4182-bp のプラスミドpEL054(図10)を作製した。プラスミドpEL040をEcoRI およびSphIで処理して614-bpのEcoRI-SphI断片を単離した。この断片を予めEcoRI とSphIとで処理したプラスミドpUC BM20に導入して3263-bp のプラスミド pEL055 (図11)を得た。プラスミド pEL055 をEcoRI で処理し、クレノーポリメラーゼを用いて修復し、それをつなぎ、HindIII で処理し、クレノーポリメラーゼで修復し、最後にそれをつないで3279-bp のプラスミドpEL062(図12)を得た。プラスミドpEL054をNcoIとSalIとで処理して1492-bp のNcoI-SalI 断片(断片A)を単離した。
下記2種類のオリゴヌクレオチドを互いにハイブリダイズさせて24-bp のSalI-SphI 断片(断片B)を得た:
【0027】
EL132 (配列 NO. 10) 5' CCGAATTCATATAAGCTTACGTG 3'
EL133 (配列 NO. 11) 5' TCGACACGTAAGCTTATATGAATTCGGCATG 3'
断片AとBを予め NcoI と SphI とで処理したプラスミドpEL062に導入して、4787-bp のプラスミドpEL066(図13)を得た。このプラスミドは遺伝子間領域3にEcoRI-HindIII-SalIポリリンカーを含んでいる。
【0028】
実施例8
ドナープラスミドpEL090の作製とvHVT16の単離
BamHI-HindIII カセット状のIBDV VP2遺伝子を含むプラスミドpEL004(=フランス国特許出願第92/013109 号に記載のプラスミド pGH004 に等しい)を BamHIとXbaIとで処理して1140-bp のBamHI-XbaI断片(切り出されたVP2 遺伝子)を単離した。この断片を予めXbaIおよびBamHI で処理したベクターpBS-SK+ にクローニングして4052-bp のプラスミドpEL022(図14)を得た。このベクターpBS-SK+
をEcoRV とXbaIとで処理し、次いでそれをつないでpBS-SK+ (変性されたもの)を得た。プラスミドpEL004をKpnIとHindIII で処理して、完全なIBDV VP2を含有する1387-bp のKpnI-HindIII断片を単離した。この断片を予めKpnIとHindIII で処理したベクターpBS-SK* にクローニングして 4292bp のプラスミドpEL023(図15)を得た。プラスミドpEL022をBamHI およびNotIで処理して1122-bp のBamHI-NotI断片(断片A)を単離した。
【0029】
プラスミドpEL023をBamHI とNotIとで処理して333-bpのBamHI-NotI断片を単離した(断片B)。断片AとBを予め NotI で処理してアルカリホスファターゼで処理したベクターpBS-SK+ に導入して4369-bp のプラスミドpEL024(図16)を得た。プラスミドpEL024をNcoIで処理して1145-bp のNotI-NotI 断片を単離した。この断片を予め NotI で処理したプラスミドpCMVβ(クロンテック カタログ番号6177-1)に導入して 5096-bpのプラスミド pEL026 (図18)を得た。プラスミドpEL026を EcoRI、SalIおよびXmnIで処理して 2428-bpのEcoRI-SalI断片を単離した。この断片を予め EcoRIおよび SalI で処理したプラスミドpEL079(実施例5)に導入して、7514-bp のプラスミドpEL090(図19)を得た。このプラスミドによって、HCMV-IE/IBDV VP2発現カセットをHVT ウィルスの遺伝子間部位1に挿入することが可能となる。
【0030】
24時間培養した初代 CEF細胞を1μgの直鎖状プラスミドpEL090+5μgのHVT ウィルスDNA を 300μlのOptiMEM 培地(ギブコ BRL カタログ番号041-01985H)に入れたものと、100 μgのLipofectAMINE を300 μlの培地に希釈したものとの混合物(混合物の最終量は600 μl)を用いて感染させた。この600 μlを3ml(最終量)の培地に希釈して3×106 のCECI上に播いた。混合物を細胞と接触させた状態で5時間保ち、その後取り除いて5mlの培養培地で置き換える。その後細胞を37℃で3日間培養し、その後プロナーゼ処理して、新鮮なCECII と混合し(3:1で混合)、さらに再び96ウェルのプレート1個に播く。このプレートを3日間培養し、その後細胞をプロナーゼ処理し、新鮮なCEFII と混合し、再び2枚の96ウェルプレートに播く(元の1つのウェルから2つの姉妹ウェルを得る)。
【0031】
96−ウェルプレートを細胞変性効果が見られるようになるまで培養した。72時間培養後、2枚の96−ウェルプレートのうち一方を95%のアセトン中で30分間固定し、抗VP2 モノクロナル抗体を用いて間接蛍光抗体(IIF) 反応を行い、蛋白質VP2 を発現するプラークを調べた。IIF で陽性のプラークを示すカップの「シスターカップ」をプロナーゼ処理し、新鮮なCEFII と混合し、限定的な希釈で96ウェルのプレートに塗布した。3日間培養後、細胞変性効果を示したカップをプロナーセ処理し、CEF IIと混合して、再び96−ウェルのプレートに播いた(元の1つのウェルから2つの姉妹ウェルを得る)。3日後、蛋白質VP2 を発現しているプラークを、再び、前回と同様IIF によって2つのシスタープレートのうち一方について試験した。
【0032】
一般に、連続4回の単離サイクル(カップの回収、再播付け、IIF によるモニタリング、シスターカップの継代培養等) を行うことによって子孫全てが特異的な蛍光を示す組換えウィルスを得ることができる。抗VP2 モノクロナル抗体を用いたIIF によって100 %の陽性プラークを与えるウィルスプラークをvHVT16と命名した。この組換えウィルスのゲノムDNAについて適当なオリゴヌクレオチドおよびDNAプローブを用いた標準的なPCRおよびサザンブロット法によって分子レベルでの特徴付けを行った。
【0033】
実施例9
ドナープラスミドpEL091の作製と、vHVT17の単離
プラスミドpCMVβ(図17)をSalIとSmaIで処理してlacZ遺伝子並びにVS40ウィルスの後期遺伝子のポリアデニレーションシグナルを含む3679-bp のSalI-SmaI
断片を単離した。この断片を予めSalIとEcoRV とで処理したベクターpBS-SK+ に挿入して6625-bp のプラスミドpCD002(図20)を得た。このプラスミドはlacZレポータ遺伝子を含むが、この遺伝子の下流に位置するプロモータはない。実施例2に従ってMCMVウィルスのウィルスゲノムDNAを調製し、PstIで処理して2285-bp のPstI-PstI 断片を得た。この断片を予めPstIで処理したアルカリホスファターゼで処理したベクター pBS-SK+にクローニングしてプラスミド pCD004 を得た。プラスミドpCD004をHpaIとPstIで処理して1389-bp のHpa-PstI断片を得た。この断片はネズミのサイトメガロウィルス(MCMV)の即時初期遺伝子のプロモータ/アクチベータ領域を含む(Dorsch-Hasler K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci.1985. 82. 8325-8329 、WO-A-87/03905 号)。この断片を予めPstIとSmaIとで処理したプラスミド pCD002 にクローニングして8007-bp のプラスミドpCD009(図21)を得た。
【0034】
下記2つのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行って2本鎖のオリゴヌクレオチドを作製した:
MB070 (配列 NO. 12)
5' CGAATTCACTAGTGTGTGTCTGCAGGCGGCCGCGTGTGTGTCGACGGTAC 3'
MB071 (配列 NO. 13)
5' CGTCGACACACACGCGGCCGCCTGCAGACACACACTAGTGAATTCGAGCT 3'
【0035】
この2本鎖オリゴヌクレオチドを予めKpnIとSacIで処理したベクターpBS-SK+
に導入してプラスミドpEL067を得た。
プラスミド pCD009 を PstI と SpeI で処理して1396-bp のPstI-SpeI 断片を単離した。この断片を予めPstIとSpeIとで処理したプラスミドpEL067に導入して4297-bp のプラスミドpEL068(図22)を得た。プラスミド pEL026 (実施例8参照)をHindIII およびSalIで処理して235-bpのHindIII-SalI断片(断片B)を単離した。断片AとBを同時に予めNotIとSalIで処理したプラスミドpEL068に導入して 5908-bpプラスミドpEL070(図23)を得た。プラスミド pEL070 を EcoRI、SalIおよびXmnIで処理して3035-bp のEcoRI-SalI断片を単離した。この断片を予めEcoRI とSalIで処理したプラスミドpEL079(実施例5参照)に導入して 9109-bpのプラスミドpEL091(図24)を得た。このプラスミドによってHVT ウィルスの遺伝子間部位1にMCMV-IE/IBDV VP2発現カセットを挿入することが可能になる。プラスミドpEL091およびHVT ウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換(cotransfection)を行って組換え体vHVT17の単離および精製を行った。
【0036】
実施例10
ドナープラスミドpEL092の作製およびvHVT18の単離
MDV gB遺伝子を含む MDVウィルス RB1B 株のゲノムDNAの3.9-kbp のEcoRI-SalI断片〔この配列はロス(Ross N.) 達が開示している (J. Gen. Virol. 1989.70. 1789-1804)〕を予めEcoRI とSalIで処理したベクターpUC13 に導入してプラスミドpCD007を得た。このプラスミドを SacI およびXhoIで処理して2260-bp のSacI-XhoI 断片(gB遺伝子の中央部位=断片A)を単離した。
下記のオリゴヌクレオチドと鋳型pCD007を用いてPCRを行いて222-bpのPCR断片を作製した:
CD001 (配列 NO. 14)
5'GACTGGTACCGCGGCCGCATGCACTTTTTAGGCGGAATTG 3'
CD002 (配列 NO. 15)
5'TTCGGGACATTTTCGCGG 3'
この断片をKpnIとXbaIで処理して190-bpのkpnI-XbaI 断片(gB遺伝子の5’末端=断片B)を単離した。
下記オリゴヌクレオチドと鋳型pCD007とを用いて195-bpのPCR断片を作製した:
CD003 (配列 NO. 16)
5' TATATGGCGTTAGTCTCC 3'
CD003 (配列 NO. 17)
5' TTGCGAGCTCGCGGCCGCTTATTACACAGCATCATCTTCTG 3'
【0037】
この断片をSacIとSacII で処理して162-bpのSacI-SacII断片(gB遺伝子の3’末端=断片C)を単離した。断片A、BおよびCを同時に予めKpnIおよびSacIで処理したベクターpBS-SK+ に導入して5485-bp のプラスミドpCD011(図25)を得た。プラスミドpCD011をNotIで処理して2608-bp のNotI-NotI 断片(MDV gB遺伝子全体)を単離した。この断片を予めNotIで処理してアルカリホスファターゼで処理したプラスミドpCMVβに導入して6299-bp のプラスミドpCD020(図26)を得た(このプラスミドではlacZ遺伝子がMDV gB遺伝子に置き代っている)。プラスミドpCD020をEcoRI とSalIで処理して3648-bp のEcoRI-SalI断片を得た。この断片を予めEcoRI とSalIとで処理したプラスミドpEL079(実施例5参照)に導入して8718-bp のプラスミドpEL092(図27)を得た。このプラスミドによって、HVT
ウィルスの遺伝子間部位1にHCMV-IE/MDV gB発現カセットを挿入することが可能となる。
プラスミドpEL092とHVT ウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換(cotransfection)を行って組換え体vHVT18の単離・精製をした。
【0038】
実施例11
ドナープラスミドpEL093の作製と、vHVT19の単離
テイラー達の方法(Taylor J. et al., J. Virol. 1990. 64. 1441-1450) に従ってニューカッスル病ウィルス(NDV) テキサス株のゲノムに対して相補的なDNAのライブラリーを作製した。フュージョン遺伝子(F) の末端、赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)遺伝子の全体およびポリメラーゼ用の遺伝子の開始点を含むpBR322クローンをpHN01 として同定した。このクローン内に存在するNDV HN遺伝子の配列を図28、29(配列 NO. 18)に示す。プラスミドpHN01 をSphIおよびXbaIで処理して2520-bp のSpaI-XbaI 断片を単離した。この断片を予めSpaIとXbaIで処理したベクターpUC19 に導入して5192-bp のプラスミドpHN02 を得た。プラスミドpHN02 をClaIとPstIで処理して700-bpのClaI-PstI 断片(断片A)を単離した。
【0039】
下記のオリゴヌクレオチドと鋳型pHN02 を用いてPCRを行って270-bpのPCR断片を作製した:
EL071 (配列 NO. 19) 5'CAGACCAAGCTTCTTAAATCCC 3'
EL073 (配列 NO. 20) 5'GTATTCGGGACAATGC 3'
この断片をHindIII とPstIで処理して220-bpのHindIII-PstI断片(断片B)を単離した。断片Aと断片Bを同時に予め ClaI および HindIIIで処理したベクターpBS-SK+ に導入して3872-bp のプラスミドpEL028(図30) を得た。プラスミドpHN02 をBsphI とClaIで処理して 425-bp のBsphI-ClaI断片(断片C)を単離した。下記のオリゴヌクレオチドと鋳型pHN02 を用いて425-bpのPCR断片を作製した:
EL074 (配列 NO. 21)
5' GTGACATCACTAGCGTCATCC 3'
EL075 (配列 NO. 22)
5' CCGCATCATCAGCGGCCGCGATCGGTCATGGACAGT 3'
【0040】
この断片をBsphI とNotIで処理して390-bpのBsphI-NotI断片(断片D)を単離した。断片CおよびDを同時に予めClaIおよびNotIで処理したベクターpBS-SK+
に導入して3727-bp のプラスミドpEL029bis (図31)を得た。プラスミドpEL028をClaIとSacII で処理して960-bpのClaI-SacII断片(断片E)を単離した。プラスミドpEL029bis をClaIとNotIで処理して820-bpのClaI-NotI 断片(断片F)を得た。断片EとFを同時に予めNotIとSacIで処理したベクターpBS-SK+ に導入して4745-bp のプラスミドpEL030(図32)を得た。プラスミドpEL030をNotIで処理して1780bpのNotI-NotI 断片(NDV HN遺伝子の全体)を単離した。この断片を、lacZの代わりに予めNotIで処理してアルカリホスファターゼで処理したプラスミド pCMV βに導入して5471-bp のプラスミドpEL032(図33)を得た。プラスミドpEL032をEcoRI とClaIで処理して1636-bp のEcoRI-ClaI断片(断片G)を単離した。プラスミドpEL032をClaIとSalIで処理して1182-bp のClaI-SalI 断片(断片H)を単離した。断片GおよびHを予めEcoRI とSalIとで処理したプラスミドpEL079(実施例5参照)に導入して7890-bp のプラスミドpEL093(図34) を得た。このプラスミドによってHVT ウィルスの遺伝子間部位1にHCMV-IE/NDV HNを挿入することが可能となる。
プラスミドpEL093とHVT ウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換を行って組換え体vHVT19の単離・精製を行った。
【0041】
実施例12
ドナープラスミドpEL094の作製と、vHVT20の単離
ニューカッスル病ウィルスのゲノムに相補的なDNAのライブラリー(実施例11参照)に由来するフュージョン遺伝子(F) の全体を含むクローンをpNDV81とした。このプラスミドは公知であり、このクローン中に存在するNDV F 遺伝子の配列は既に発表されている(Taylor J. et al. J. Virol. 1990. 64. 1441-1450)。プラスミドpNDV81をNarIとPstIで処理して1870-bp のNarI-PstI 断片(断片A)を単離した。下記オリゴヌクレオチドと鋳型pNDV81を用いてPCRを行って160-bpの断片を作製した:
EL076 (配列 NO. 23)
5'TGACCCTGTCTGGGATGA 3'
EL077 (配列 NO. 24)
5'GGATCCCGGTCGACACATTGCGGCCGCAAGATGGGC 3'
【0042】
この断片をPstIとSalIで処理して130bp のPstI-SalI 断片(断片B)を単離した。断片Aと断片Bを同時に予めClaIおよびSalIで処理したベクターpBS-SK+ に導入して4846-bp のプラスミドpEL033(図35)を得た。プラスミドpEL033をNotIで処理して1935-bp のNotI-NotI 断片(F遺伝子全体)を単離した。この断片を予めNotIで処理してアルカリホスファターゼで処理したプラスミドpCMBβに導入して5624-bp のプラスミドpEL034(lacZ遺伝子がNDV F 遺伝子で置き換えられている)を得た(図36)。プラスミド pEL034 をEcoRI とKpnIで処理して866-bpのEcoRI-KpnI断片(断片C)を単離した。プラスミドpEL034をKpnIとSalIで処理して2114-bp のKpnI-SalI 断片(断片D)を単離した。断片Cと断片Dを同時に予めEcoRI およびSalIで処理したプラスミドpEL079(実施例5参照)に導入して、8043-bp のプラスミドpEL094(図37)を得た。このプラスミドによって、HVT ウィルスの遺伝子間部位1にHCMV-IE/NDV F の発現カセットを挿入することが可能となる。
プラスミドpEL094と HVTウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換を行って組換え体vHVT20の単離・精製を行った。
【0043】
実施例13
ドナープラスミドpEL095の作製と、vHVT21の単離
MDV の1.8-kbp RNA 遺伝子の上流に位置する配列はブラドレー達によって報告されている(Bradley G. et al., J. Virol. 1989. 63. 2534-2542)(図38および配列 NO. 25)。下記オリゴヌクレオチドを用いてMDV のRB1B株に感染したニワトリから得られるリンパ球から抽出したDNAについてPCR増幅を行った:
MB047 (配列 NO. 26)
5' GGTCTACTAGTATTGGACTCTGGTGCGAACGC 3'
MB048 (配列 NO. 27)
5' GTCCAGAATTCGCGAAGAGAGAAGGAACCTC 3'
得られた163-bpのPCR断片をEcoRI とSpeIで処理した後、予めEcoRI とSpeIで処理したプラスミドpCD002(実施例9参照)に導入して6774-bp のプラスミドpBS002(図39)を得た。プラスミドpBS002は lacZ 遺伝子の上流にクローニングされたMDV の1.8-kbp RNA 遺伝子のプロモータを含んでいる。
【0044】
下記オリゴヌクレオチドと鋳型pBS002を用いてPCRを行った:
MB047 (配列 NO. 26)および
MB072 (配列 NO. 28)
5' GTGTCCTGCAGTCGCGAAGAGAGAAGGAACCTC 3'
得られたPCR断片をPstIとSpeIで処理して200bp のPstI-SpeI 断片を単離した。この断片を予め PstI およびSpeIで処理したプラスミドpEL067(実施例9参照)に導入してプラスミドpEL069(図40)を得た。プラスミドpCD007(実施例10参照)をEcoRI およびXbaIで処理して2670-bp のEcoRI-XbaI断片(断片A)を単離した。プラスミドpCD011(実施例10参照)を NotI およびXbaIで処理して180-bpのNotI-XbaI 断片(断片B)を単離した。プラスミドpEL069をNotIとSpeIで処理して180-bpのNotI-SpeI 断片(断片C)を単離した。
【0045】
断片A、BおよびCを同時に予めEcoRI とSpeIで処理したプラスミド pEL067
(実施例9)に導入して5939-bp のプラスミドpEL080(図41)を得た。プラスミドpEL070(実施例9)をKpnIとSpeIで処理して1345-bp のKpnI-SpeI 断片(断片D)を単離した。プラスミド pEL070 も KpnI とSalIで処理して1658-bp のKpnI-SalI 断片(断片E)を単離した。断片DおよびEを一緒に予めSalIとSpeIで処理したプラスミド pEL080 に導入して8938-bp のプラスミドpEL081(図42)を得た。プラスミドpEL081をEcoRI とSalIで処理して6066-bp のEcoRI-SalI断片を得た。この断片を予めEcoRI とSalIとで処理したプラスミド pEL079 (実施例5参照)に導入して最終的に11139-bpのプラスミドpEL095(図43を得た)。このプラスミドによってHVT ウィルスの遺伝子間部位1にVP2/HCMV-IE//1.8-kbp RNA/MDVgBの二重発現カセットを挿入することが可能となる。
プラスミドpEL095とHVT ウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換を行って組換え体vHVT21の単離・精製を行った。
【0046】
実施例14
ドナープラスミドpEL098の作製とvHVT24の単離
プラスミドpEL080(実施例13参照)をEcoRI とSalIで処理して3040-bp のEcoRI-SalI断片(1.8-kbp RNA/MDV gBカセット)を単離した。この断片を予めEcoRI
とSalIで処理したプラスミドpEL079(実施例5参照)に導入して8140-bp のプラスミドpEL098(図44)を得た。このプラスミドによってHVT ウィルスの遺伝子間部位1に1.8-kbp RNA/MDV gBのカセットを挿入することが可能となる。
プラスミドpEL098とHVT ウィルスのゲノムDNAを用いて実施例8に記載の同時形質転換を行って組換え体vHVT21の単離・精製を行った。
【0047】
実施例15
HVT ウィルスの遺伝子間部位1にIBV M およびS の発現カセットを挿入するためのドナープラスミドの作製
発現カセット(HCMV-IE またはMCMV-IE プロモータあるいはMCMV-IE//1.8-kbpRNA 二重プロモータの制御下に置かれた遺伝子)を遺伝子間部位1に挿入するための上記方法に従って、鳥類の感染性気管支炎ウィルス(IBV) の膜(M) 蛋白質またはスパイク(S) 蛋白質を高レベルで発現する組換えHVT ウィルスを作製することができる。IBVS遺伝子がHCMV-IE プロモータまたはMCMV-IE プロモータの制御下にある構成あるいはIBV M およびIBV S 遺伝子がMCMV-IE/1.8-kbp RNA 二重プロモータと一緒に遺伝子間部位1に挿入され、M遺伝子が1.8-kbp RNA プロモータの制御下にあり、S遺伝子がMCMV-IE プロモータの制御下にあるような構成にすることができる。この構成では1.8-kbp RNA プロモータがMCMV-IE プロモータのアクチベータ領域によって活性化される。
【0048】
実施例16
遺伝子間部位2および3に挿入された外部遺伝子を有する組換えHVT ウィルスの作製
遺伝子間部位2および3に外部遺伝子発現のためのカセットが挿入された組換えHVT ウィルスを実施例8〜14に記載の方法に従って作製したが、特異的なドナープラスミドを作製するために実施例8〜14で用いたプラスミドpEL079に代えてプラスミドpEL078(遺伝子間部位2)およびpEL066(遺伝子間部位3)をそれぞれ使用した。
【0049】
実施例17
本発明のワクチンの調製
本発明のワクチンは当業者には周知の任意の標準的な方法、例えばローラボトル培養で調製することができる。ニワトリの初期の胚細胞 200×106を植えつけ
たローラボトル(175 cm2)を37℃で24時間培養した後、ボトルに105pfu/ml の
力価を有する組み換えHVT ウィルスのウィルス溶液1mlを接種した。37℃で4日間培養後、上澄み液を除去してトリプシン/ヴェルセン溶液で細胞を剥がし、その後に回収する。次いで、感染した細胞を遠心分離する。上澄みを除去し、凍結乾燥安定剤(例えばSPGAスクロース、リン酸塩、グルタメート、アルブミン)を含む溶液20mlに再懸濁する。次いで、この混合物を超音波処理し、1ml画分ずつバイヤルに分配して最後に凍結乾燥する。必要な場合にはワクチンを凍結乾燥でなく分配後に凍結させることもできる。
【0050】
実施例18
本発明で得られたガンボロ病ウィルスのVP2 蛋白質を発現する組換えウィルスを用いて生後1日のヒナに筋肉注射で免疫処理した。このヒナに対して生後21日後にガンボロ病のウィルスを用いて攻撃(病原菌投与)した。攻撃から11日後、ワクチン処理された群とワクチン未処理の対照群との間で死亡とファブリシウス滑液嚢炎とを比較して防御効果を評価した。このワクチン処理/攻撃プロトコルの結果、本発明のワクチンは高レベルの防御を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】HVT BamHI 断片I
【図2】HVT BamHI 断片I のつづき
【図3】HVT BamHI 断片I のつづき
【図4】HVT BamHI 断片I のつづき
【図5】プラスミドpEL039
【図6】プラスミドpEL077
【図7】プラスミドpEL079
【図8】プラスミドpEL076
【図9】プラスミドpEL078
【図10】プラスミドpEL054
【図11】プラスミドpEL055
【図12】プラスミドpEL062
【図13】プラスミドpEL066
【図14】プラスミドpEL022
【図15】プラスミドpEL023
【図16】プラスミドpEL024
【図17】プラスミドpCMVβ
【図18】プラスミドpEL026
【図19】プラスミドpEL090
【図20】プラスミドpCD002
【図21】プラスミドpCD009
【図22】プラスミドpEL068
【図23】プラスミドpEL070
【図24】プラスミドpEL091
【図25】プラスミドpCD011
【図26】プラスミドpCD020
【図27】プラスミドpEL092
【図28】NDV HN 遺伝子の配列
【図29】NDV HN 遺伝子の配列のつづき
【図30】プラスミドpEL028
【図31】プラスミドpEL029bis
【図32】プラスミドpEL030
【図33】プラスミドpEL032
【図34】プラスミドpEL093
【図35】プラスミドpEL033
【図36】プラスミドpEL034
【図37】プラスミドpEL094
【図38】MDV 1.8-kbp RNA プロモータの配列
【図39】プラスミドpBS002
【図40】プラスミドpEL069
【図41】プラスミドpEL080
【図42】プラスミドpEL081
【図43】プラスミドpEL095
【図44】プラスミドpEL098

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMV即時初期プロモータの制御下に、ORF UL55のATGと隣接する繰り返し領域を有するULの接合点との間の領域に挿入された、鳥類の病原物質の抗原ポリペプチドをコードし且つ発現する塩基配列を少なくとも1つ含む鳥類ヘルペスウィルスをベクターとして有する鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項2】
ベクターがマレック病ウィルス(MDVおよびHVT)、感染性喉頭器官炎ウィルスILTVおよびアヒルのヘルペスウィルスからなる群の中から選択される請求項1に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項3】
ベクターがHVTウィルスであり、BamHI断片Iに挿入される請求項2に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項4】
遺伝子間領域1、2および3またはBamHI断片のORF UL55に挿入される請求項3に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項5】
CMV即時初期プロモータがヒトのプロモータHCMV IEまたはネズミのプロモータMCMV IEである請求項1〜4のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項6】
CMV即時初期プロモータの制御下に挿入される塩基配列がガンボロ病の抗原、マレック病の抗原、ニューカッスル病の抗原、感染性気管支炎の抗原、感染性喉頭器官炎の抗原および鳥類の貧血症の抗原より成る群の中から選択される抗原をコードする塩基配列である請求項1〜5のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項7】
CMV即時初期プロモータの制御下に挿入される塩基配列がIBDVウィルスのポリペプチドVP2をコードする塩基配列である請求項1〜6のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項8】
CMV即時初期プロモータにヘッドツーテイル状に連結された他のプロモータを含み、2つの塩基配列が一方はCMV即時初期プロモータの制御下に、もう一方は該プロモータと組み合わせて使用されるプロモータの制御下に、それぞれ挿入領域に挿入される請求項1〜7のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項9】
組み合せて使用されるプロモータがマレックの1.8RNAプロモータである請求項8に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項10】
CMV即時初期プロモータの制御下に挿入される塩基配列がIBDVウィルスのポリペプチドVP2をコードする塩基配列であり、組み合わせて使用されるプロモータの制御下に挿入される塩基配列が別の鳥類疾患の抗原をコードする塩基配列である請求項8または9に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項11】
別の鳥類疾患の抗原をコードする塩基配列がマレック病の抗原、ニューカッスル病の抗原、感染性気管支炎の抗原、感染性喉頭器官炎の抗原および鳥類の貧血症の抗原より成る群の中から選択される請求項10に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項12】
組み合わせて使用されるプロモータが由来の異なるCMV即時初期プロモータである請求項8に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項13】
挿入される塩基配列が下記遺伝子:
1) ガンボロ病ウィルスのVP2、VP3およびVP2+VP4+VP3、
2) マレック病ウィルスのgB、gC、gD及びgH+gL、
3) 鳥類の貧血症ウィルスのVP1(52kDa)+VP2(24kDa)、
4) 感染性気管支炎ウィルスのSおよびM、
5) 感染性喉頭気管炎ウィルスのgB、gC、gDおよびgH+gL
をコードする配列の群の中より選択される請求項1〜12のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項14】
CVM即時初期プロモータの代わりに1.8RNAプロモータを使用する請求項1〜6のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチン。
【請求項15】
異なる配列が挿入された請求項1〜14のいずれか一項に記載の鳥類用組換え生ワクチンを少なくとも2種含む混合物または混合用の多価ワクチン製剤。
【請求項16】
挿入される異なる塩基配列が異なる病原体に由来する請求項15に記載の多価ワクチン製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2007−126465(P2007−126465A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329245(P2006−329245)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【分割の表示】特願平7−355020の分割
【原出願日】平成7年12月28日(1995.12.28)
【出願人】(503365659)
【Fターム(参考)】