説明

ベシクル含有組成物、それを含有する化粧料又は皮膚外用剤

【課題】みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるベシクル含有組成物を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)、(B);
成分(A)水溶性コラーゲン
成分(B)ムコ多糖類
を含有することを特徴とするベシクル含有組成物であって、成分(A)が、ベシクルに含有され、成分(B)が該ベシクルを分散する外相に存在することを特徴とするベシクル含有組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性コラーゲン、ムコ多糖類を含有することを特徴とするベシクル含有組成物であって、詳細には水溶性コラーゲンが、ベシクルに含有され、ムコ多糖類が該ベシクルを分散する外相に存在することを特徴とするベシクル含有組成物に関するものであり、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージの持続性に優れ、なお且つ、経時安定性にも優れたベシクル含有組成物に関するものである。また該組成物を含有する化粧料又は皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にベシクルは両親媒性物質が形成する二分子膜構造を有した閉鎖小胞のことであるが、この特異的な構造ゆえに有効成分を内包することができ、ドラッグデリバリーシステム等へのキャリアとして注目されている。また、ベシクルは角層中での滞留性が高く、有効成分を効率的に作用させることができるため、近年は特に注目されている。
【0003】
ベシクルを構成する両親媒性物質は、多数存在するが特に生体に由来したリン脂質からなるベシクルは「リポソーム」と呼ばれ、生体への安全性の面からも多くの検討がなされている。例えば、リノール酸、ビタミンE、コラーゲン、コンドロイチン硫酸Naを含有したリポソームがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
またリポソームの安定性向上を検討した技術がある。例えば、リポソームを海洋性アテロコラーゲンとコンドロイチン硫酸Naの組成膜で被覆することで、リポソームの製剤中での安定性を高める方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、リポソーム形成時に水溶性高分子を共存させて製造することで、リポソームの安定性だけでなく、皮膚の角層内に浸透、貯留し、含有している薬剤成分を角層内で放出することにより優れた薬効を得ることのできる方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ところで化粧料には、目的や用途等に応じて様々なアイテムがある。その一つにマッサージ効果を主たる目的としたマッサージ化粧料があり、剤型としては水系ベース、油型ベースとに大別できる。例えば、油型ベースとしては、オイルを多量に含んでおり、使用されるオイルとしては、スクワラン、オリーブ油、トリグリセライド系オイルやエステル系オイルなどのような、液状から半固形状のものが知られている(例えば、特許文献3)。一方、水系ベースとしては、種々の水溶性高分子を配合することで可能であり、水性ゲルタイプのマッサージ化粧料も使用されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特許3687277号公報
【特許文献2】特開2008−94809号公報
【特許文献3】特開2005−82481号公報
【特許文献4】特開2004−339110号公報
【非特許文献1】フレグランスジャーナル(Vo.33 No.8 第124頁−第125頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の技術では、多量に含有したオイル分による使用感触の重さや、マッサージ後皮膚に残留する油分によるべたつき感やぎらつき感、閉塞感が残るなど、みずみずしい使用感に課題があった。一方、水系ベースのマッサージ料である特許文献4の技術では、水性ゲルとして汎用性の高いカルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子を利用する技術であるが、皮膚上に存在する電解質成分で粘度低下を起こすこともありマッサージの持続性に課題があった。
すなわち上記先行技術文献では、種々のマッサージ化粧料の開示があるが、マッサージの持続性等においては、まだ十分なものとは言えなかった。
【0008】
さらに、特許文献1〜2、非特許文献1の技術にあるとおり、ベシクルに関する検討は種々行われ、ベシクルを用いたその効果は多岐にわたるものである。例えば、非特許文献1に記載の、ベシクルの膜の強度を向上させる成分などの開示はあるが、この技術を用いても、一時的にマッサージすることは可能であっても、マッサージの持続性等の使用性は十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、マッサージの持続性を向上させるためには、次の二点が重要であることを見出した。すなわち一点目がマッサージ性に優れた素材の検討、二点目はマッサージの持続性を向上させるための製剤化検討である。一点目については、種々の成分を検討したところ、アテロコラーゲン等の水溶性コラーゲンとコンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類を組み合わせることで、水不溶性物を作りだすことができ、この水不溶性物そのものがマッサージに効果的であるとの知見を得た。しかし、これらの成分は一緒に配合すると、すぐに水不溶性物として析出する場合があり、単なる組合せ配合による製剤化では困難である。すなわち安定に配合し、マッサージを効果的に行うための製剤化検討が二点目として必要であった。これらの知見に基づき更なる検討を重ねた結果、ベシクル系の構造においてベシクル内の水相とベシクルを分散する外相の二つの水相を有することに着目し、それぞれに、先に検討したアテロコラーゲン等の水溶性コラーゲンとコンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類を含有することにより、水不溶性物として析出することなく製剤としては安定に配合でき、使用時にベシクルが壊れることにより、水不溶性物として析出することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B);
成分(A)水溶性コラーゲン
成分(B)ムコ多糖類
を含有することを特徴とするベシクル含有組成物であって、成分(A)が、ベシクルに含有され、成分(B)が該ベシクルを分散する外相に存在することを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【0011】
さらに、本発明は、成分(A)と成分(B)の含有質量比が、(A):(B)=6:1〜3:4の範囲内であることを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【0012】
さらに、本発明は、前記ベシクルにおいて、成分(C)ポリオキシエチレンステロールエーテル及び成分(D)ステロール類が該ベシクルの構成成分であることを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【0013】
さらに、本発明は、成分(E)ジェランガムをベシクルを分散する外相に含有することを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【0014】
さらに、本発明は、化粧料であることを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【0015】
さらに、本発明は、マッサージ用化粧料であることを特徴とするベシクル含有組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のベシクル含有組成物は、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のベシクル含有組成物は、成分(A)水溶性コラーゲン及び成分(B)ムコ多糖類を少なくとも含有してなるものである。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
以下、まず本発明のベシクル含有組成物について説明する。
【0018】
本発明に用いられる成分(A)水溶性コラーゲンは、動物の骨、皮などの結合組織から抽出したものであり、水溶性を向上させるため、加水分解やアテロ化、サクシニル化等の処理を行うこともあるものであり、具体的にはアテロコラーゲン、サクシニルコラーゲン、加水分解コラーゲンを例示することができる。通常の化粧料に用いられる水溶性コラーゲンであれば、特に限定されず何れのものも用いることができる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。成分(A)は、本発明においては、主としてマッサージ効果や経時安定性の向上等に寄与するものである。
【0019】
具体的には、鮭、鮫等の海洋魚等から精製して得られるものであり、これらの中でも寒冷系魚類より得られる水溶性コラーゲンを用いると、よりみずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れたベシクル含有組成物を得ることができる。
【0020】
本発明において、成分(A)水溶性コラーゲンは、ベシクルに含有されていることを特徴とし、より具体的にはベシクルの内水相に分散されていることを特徴としている。本発明の成分(A)水溶性コラーゲンの市販品は、PANCOGENE MARIN(GATTEFOSSE社製)があり、純分0.3%の水溶液として提供されているものであるが、これに限定されない。
【0021】
本発明に用いられる成分(A)水溶性コラーゲンの含有量は特に限定されず、他の成分有量に応じて含有することができるが、概ね0.0006〜0.03質量%(以下、「%」と略記する)の範囲で用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる成分(B)ムコ多糖類は、微生物、鶏冠、皮膚などから抽出したものや、生化学的方法などにより製造されたものであり、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸並びにこれらの塩類が挙げられ、通常の化粧料に用いられるムコ多糖類であれば何れのものも用いることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも成分(B)としてコンドロイチン硫酸のナトリウム塩は特に優れた効果を得ることができる。成分(B)は、本発明においては、主としてマッサージ効果や経時安定性の向上等に寄与するものである。
【0023】
本発明において、成分(B)ムコ多糖類は、ベシクルに含有せず、ベシクルを分散する外相に存在することを特徴としている。ベシクルを分散する外層に分散する方法は、特に限定されないが、ベシクルの系(I)と、成分(B)を含有する系(II)とを各々製造し、系(I)を系(II)に分散させることにより得られるものである。なおここで成分(B)を含有する系(II)とは、成分(B)を水等の水性成分に分散した系であり、かつベシクルを分散するための系であり、ベシクルを分散する際には、外相となるものである。
【0024】
本発明に用いられる成分(B)ムコ多糖類の含有量は特に限定されず、他の成分有量に応じて含有することができるが、概ね0.0001〜0.05%の範囲で用いることができる。
【0025】
本発明に用いられる成分(A)水溶性コラーゲンと成分(B)ムコ多糖類の含有質量比は特に限定されるものではないが、本願発明のマッサージ性は、成分(A)、成分(B)の相互作用に基づくものであり、成分(A)、成分(B)をより効果的に用いてマッサージを行う上において、(A):(B)=7:1〜3:5の範囲で含有するのが好ましく、6:1〜3:4の範囲で含有するのがより好ましい。
成分(A)と成分(B)の含有質量比がこの範囲であると、使用時にベシクル構造が崩壊に伴い、成分(A)と成分(B)が徐々に混合されることとなり、ゲル状組成物を生成していき、それに伴ってマッサージ効果の持続性を向上させることができ、よりみずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、ベシクルそのものの経時安定性に優れたベシクル含有組成物を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられるベシクルは、通常の化粧料に用いられるベシクルであれば、特に限定されず何れのものも用いることができる。ベシクルは両親媒性物質が形成する二分子膜構造を有した閉鎖小胞のことであり、用いられる両親媒性物質のイオン性によって、ノニオン性ベシクル、アニオン性ベシクル、カチオン性ベシクルに分類することができる。ノニオン性ベシクルとしては、ベシクルの構成成分が、ポリオキシエチレンステロールエーテルとステロール類のもの、ショ糖脂肪酸エステルとスフィンゴシン類のもの、アニオン性ベシクルとしては、リン脂質とステロール類のもの、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムとステロール類とモノステアリルグルリセリルエータルのもの、カチオン性ベシクルとしては、ステアロイルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオンや、エステル型カチオンのものが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでもノニオン性ベシクルは、含有される電解質等の有効成分や他の成分等の影響を受けにくいことから、これを含有したベシクル組成物は、経時安定性に優れたものとすることができる。
【0027】
本発明においては、成分(C)ポリオキシエチレンステロールエーテル及び成分(D)ステロール類をベシクルの構成成分として用いることで、より経時安定性に優れたベシクル含有組成物を得ることができる。
本発明に用いられる成分(C)ポリオキシエチレン(以下、単に「POE」とする。)ステロールエーテルは、通常の化粧料に用いられるものであれば、特に限定されず、何れのものも用いることができる。成分(C)は、コレステロール骨格またはフィトステロール骨格等のステロール骨格に、エチレンオキサイドが付加したものである。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、好ましくは3〜40、より好ましくは5〜30である。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記ステロール骨格部分の構造としては、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、セレグロステロール、デヒドロコレステロール、コプロスタノール等の動物系ステロール骨格;β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール及びエルゴステロール、フコステロール、スピナステロール及びブラシカステロール等の植物系ステロール骨格;ミコステロール及びチモステロール等の微生物系ステロール骨格;これらを水素付加又は水付加した誘導体が挙げられる。動物系ステロール骨格を有するものは動物から主として得られる。例えば、羊毛脂から得られ、コレステロールやラノステロールを主成分とするラノリンアルコール又はその水素付加物等が挙げられる。また、植物系ステロール骨格を有するものは植物から主として得られる。フィトステロールとは、一般的に、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール及びエルゴステロール等から選ばれる1種又は2種以上のものをいい、特に2種以上の混合物をいう。
成分(C)は、例えば、POE(5)コレステロールエーテル、POE(10)コレステロールエーテル、POE(20)コレステロールエーテル、POE(30)コレステロールエーテル、POE(5)フィトステロールエーテル、POE(10)フィトステロールエーテル、POE(20)フィトステロールエーテル、POE(30)フィトステロールエーテル、POE(5)コレスタノールエーテル、POE(10)コレスタノールエーテル、POE(20)コレスタノールエーテル、POE(30)コレスタノールエーテル、POE(5)フィトスタノールエーテル、POE(10)フィトスタノールエーテル、POE(20)フィトスタノールエーテル、POE(30)フィトスタノールエーテル等が挙げられ、これらのPOEステロールエーテルは必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0029】
本発明に用いられる成分(C)POEステロールエーテルの含有量は特に限定されず、他の成分有量に応じて含有することができるが、概ね0.1〜5%の範囲で用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる成分(D)ステロール類は、ベシクル形成における二分子膜構造の安定性に寄与しており、これを含有することでベシクルの保存安定性を向上させることができる。成分(D)は、通常の化粧料に用いられるものであれば、特に限定されず、何れのものも用いることができる。成分(D)は、例えば、コレステロール、ラノステロール、セレグロステロール、デヒドロコレステロール、コプロスタノール等の動物性ステロール類;β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロール等の植物性ステロール類;ミコステロール、チモステロール等の微生物由来ステロール類などが挙げられ、これらのステロール類は1種又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0031】
本発明に用いられる成分(D)ステロール類の含有量は特に限定されず、他の成分有量に応じて含有することができるが、概ね0.02〜1%の範囲で用いることができる。
【0032】
本発明は、更に成分(E)としてジェランガムを含有することができる。成分(E)は、Sphingomonas elodeaという微生物が菌体外に産生する多糖類であり、通常化粧料等に用いることができるものであれば、特に限定されない。またジェランガムには、ネイティブ型及び脱アシル型が知られているが、本発明の成分(E)としては何れのものも用いることができるがより好ましくはネイティブ型のものである。
本発明において、ベシクルを分散する外相に含有させた組成物としておくことにより、肌への塗布においてベシクル構造が崩壊することにより、前述の成分(A)と成分(B)が徐々に混合されることとなり、マッサージ効果を向上させることができる。ここでジェランガムを含有しておくことによりゲル状組成物のマッサージ効果がより持続的なものとなり、さらに経時安定性の点でも優れたものとなる。また成分(E)ジェランガムは、マッサージ後の肌のハリ感付与としての効果も期待できるものである。
【0033】
本発明に用いられる成分(E)ジェランガムの含有量は特に限定されず、他の成分有量に応じて含有することができるが、概ね0.005〜0.5%の範囲で用いることができる。
【0034】
本発明によって得られるベシクル含有組成物は、上記成分の他に、通常の化粧料に使用される成分、界面活性剤、油剤、保湿剤、水溶性高分子、粉体、美容成分、防腐剤、香料を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0035】
続いて、本発明のベシクル含有組成物の製造方法について説明する。
なお、以下で用いられる成分(A)水溶性コラーゲン、成分(B)ムコ多糖類、成分(C)ポリオキシエチレンステロールエーテル、成分(D)ステロール類、成分(E)ジェランガムは前記記載のものと同一である。
【0036】
本発明のベシクル含有組成物は、成分(A)水溶性コラーゲンと成分(B)ムコ多糖類を含有することを特徴とするベシクル含有組成物であって、成分(A)が、ベシクルに含有され、成分(B)が該ベシクルを分散する外相に存在することを特徴としているものである。本発明においては、成分(A)はベシクルに含有されたものであり、ベシクルを分散する外相に存在することは好ましくない。
【0037】
すなわち、本発明においては、成分(A)と成分(B)は、それぞれベシクルの内外に別々に含有されていることが重要である。そのため以下の製造方法により製造することが可能である。ベシクル構成成分として、リン脂質、成分(C)、成分(D)を用いた例である。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
(製造方法)
以下のとおり、系(I)と系(II)を各々調製する。
[成分(A)を含有するベシクル系(I)の調製]
リン脂質、成分(C)、成分(D)を含む60〜90℃の水相(これを以後、水相Xと略す)を混合溶解する。水相Xには所望により、多価アルコール等を含有しておくことも可能である。またこれとは別にあらかじめ成分(A)水溶性コラーゲンを40〜90℃、好ましくは60〜80℃の水相(これを以後、水相Yと略す)に混合溶解しておく。続いて、水相Xに水相Yをディスパーミキサーにて攪拌しながら混合し、40℃まで冷却して、ベシクルの系(I)を得る。これにより成分(A)はベシクルの内水相に含有することができる。
【0039】
[成分(B)を含有する系(II)の調製]
成分(B)ムコ多糖類を含む水相(これを以後、水相Zと略す)をあらかじめ混合溶解し調製しておく。このとき、水相Zの温度は、特に限定されないが、好ましくは10℃から40℃である。こうして、成分(B)を含有し、ベシクルを分散するための系(II)が得られる。
【0040】
[ベシクル含有組成物の調製]
本発明のベシクル含有組成物は、前記ベシクルの系(I)に系(II)を添加混合しても、系(II)にベシクルの系(I)に添加混合しても得ることができる。
【0041】
(製造機器)
上記水相X、水相Y、水相Zを調製する機器としては、特に限定されないが、通常化粧料等を製造する際に用いる機器であれば何れのものでも使用することができる。具体的には、ホモミキサー、ディスパーミキサー、パドルミキサーなどを用いることができる。また、これら以外としても、ホモミキサーよりも強力な剪断力をかけられる乳化機、例えばコロイドミル、マイクロフルイダイザー、超音波乳化機など、強力な剪断力で処理することによっても調製可能である。また、注入速度などは特に限定されることなく製造することができる。
【0042】
本発明のベシクル含有組成物の製造時において、前述したとおり水相Xに多価アルコールを添加混合することも可能である。多価アルコールを含有することにより、リン脂質等の界面活性剤の分散性が向上し、より経時安定性に優れるベシクル系とすることが可能である。このような多価アルコールとしては特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等が好ましいものとして例示できる。
【0043】
本発明のベシクル含有組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料の化粧料を例示することができる。その使用方法は、手や指で使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明のベシクル含有組成物は、皮膚外用剤の用途しては、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記した化粧料と同様に挙げることができる。
【0045】
前記用途のなかでも、本発明品は、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる特性を有することからもマッサージ用の化粧料として用いることが、特に好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜11及び比較例1〜4
表1に示す実施例1〜11、比較例1〜4の欄に示す各成分を用いて下記の製法によりベシクル含有組成物を調製した。みずみずしい使用感、マッサージ性、経時安定性について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
(製造方法)
A:成分1〜6を80℃に加熱する。
B:成分7〜9を70℃に加熱する。
C:AをBに添加し、ディスパミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを40℃まで冷却し、ベシクルの系(I)を得る。
E:成分10〜14を混合溶解し、系(II)を得る。
F:EにDを分散後、成分15〜18を混合しベシクル含有組成物を得た。
【0052】
(評価方法)
表1〜表3記載の処方により調製したベシクル含有組成物をいかに示す方法にて評価した。20〜40代女性の化粧品評価専門パネル20名に、前記ベシクル含有組成物2gを両頬に乗せ、両手で円を描きながらマッサージ行為を行い使用評価した。各評価について下記評価基準に従って4段階評価し評点を付け、試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0053】
(評価1:みずみずしい使用感)
評点 評価結果
4点 :非常にみずみずしい
3点 :みずみずしい
2点 :あまりみずみずしくない
1点 :みずみずしくない
判定基準:
評価 評点の平均点
◎ :3.5以上
○ :2.5以上3.5未満
△ :1.5以上2.5未満
× :1.5未満
【0054】
(評価2:マッサージ性)
評点 評価結果
4点 :90秒以上マッサージすることができる
3点 :60秒以上マッサージすることができる
2点 :30秒以上マッサージすることができる
1点 :30秒未満マッサージすることができる
判定基準:
評価 評点の平均点
◎ :3.5以上
○ :2.5以上3.5未満
△ :1.5以上2.5未満
× :1.5未満
【0055】
(評価方法:経時安定性)
ベシクル含有組成物の経時安定性については、5℃および50℃にて一ヶ月静置したものを室温(25℃)にて一ヶ月静置したものとの比較観察し、下記(ロ)4段階判定基準を用いて判定した。
【0056】
(ロ)4段階判定基準
(判定):(評価)
◎ :沈殿がほとんど認められない。
○ :沈殿がやや認められるが問題ないレベル
△ :沈殿がやや認められ問題あるレベル
× :沈殿がかなり認められる。
【0057】
表1〜表3の結果から明らかなように、実施例1〜11は、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れたベシクル含有組成物であった。一方、成分(A)水溶性コラーゲンを含有しない比較例1は、肌すべり性が劣っており、マッサージの持続性に劣るものであった。また、成分(B)ムコ多糖類を含有しない比較例2は、肌すべり性が劣っており、マッサージの持続性に劣るものであった。つぎに、成分(B)が、ベシクルに含有され、成分(A)が該ベシクルを分散する外相に存在する比較例3は、沈殿がかなり認められ、肌すべり性が劣っており、マッサージの持続性に劣るものであった。すなわち、成分(A)と成分(B)を、ベシクルとその外相において本発明とは逆に含有されることにより、本発明の効果が得られず、含有される系が重要であることが理解できる。さらに、成分(B)を含有せず、代わりに別の水溶性高分子であるキサンタンガムを含有した場合においては、みずみずしい使用感が得られなかった。
【0058】
[実施例12:美容液]
(成分) (%)
1.POE(5)フィトステロール 0.1
2.フィトステロール 0.1
3.ステアリルグリセリンエーテル 0.05
4.ジプロピレングリコール 8.0
5.精製水 20
6.アテロコラーゲン 0.001
7.精製水 4.0
8.コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.001
9.1,3−ブチレングリコール 8.0
10.乳酸 0.01
11.乳酸ナトリウム 0.01
12.ジェランガム 0.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 適量
14.香料 適量
15.精製水 残量
(製法)
A:成分1〜4を90℃で加熱溶解する。
B:成分5〜6を70℃に加熱する。
C:BにAを添加し混合攪拌した後、40℃まで冷却する。
D:Cに成分7〜8を添加混合する。
E:Dに成分9〜15を添加混合し美容液を得た。
【0059】
実施例12の美容液は、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れる美容液であった。
【0060】
[実施例13:マッサージ化粧料]
(成分) (%)
1.水素添加大豆リゾリン脂質 4.0
2.水素添加卵黄リン脂質 1.0
3.フィトステロール 1.0
4.ジプロピレングリコール 15.0
5.精製水 30.0
6.加水分解コラーゲン 0.002
7.精製水 4.0
8.ヒアルロン酸ナトリウム 0.002
9.1,3−ブチレングリコール 2.0
10.コハク酸 0.1
11.コハク酸二ナトリウム 0.05
12.アルカリゲネス酸性多糖体(※1) 0.2
13.カルボキシビニルポリマー 0.05
14.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
14.水酸化ナトリウム 0.1
15.香料 適量
16.エタノール 3.0
17.精製水 残量
※1:アルカシーラン(伯東社製)
(製法)
A:成分1〜4を80℃で加熱溶解する。
B:成分5〜6を80℃に加熱する。
C:BにAを添加し混合攪拌した後、40℃まで冷却する。
D:Cをマイクロフルイダイザーで分散する。
E:Dに7〜8を添加する。
F:Eに9〜17を添加混合しマッサージ化粧料を得た。
【0061】
実施例13のマッサージ化粧料は、みずみずしい使用感を有しながらも、肌すべり性を維持しながら伸び広がることで、マッサージ性に優れ、なお且つ、経時安定性に優れるマッサージ化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B);
成分(A)水溶性コラーゲン
成分(B)ムコ多糖類
を含有することを特徴とするベシクル含有組成物であって、成分(A)が、ベシクルに含有され、成分(B)が該ベシクルを分散する外相に存在することを特徴とするベシクル含有組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の含有質量比が、(A):(B)=6:1〜3:4の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のベシクル含有組成物。
【請求項3】
前記ベシクルにおいて、成分(C)ポリオキシエチレンステロールエーテル及び成分(D)ステロール類が該ベシクルの構成成分であることを特徴とする請求項1又は2記載のベシクル含有組成物。
【請求項4】
さらに成分(E)ジェランガムをベシクルを分散する外相に含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載のベシクル含有組成物。
【請求項5】
化粧料であることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載のベシクル含有組成物。
【請求項6】
マッサージ化粧料であることを特徴とする請求項5項記載のベシクル含有組成物。
【請求項7】
皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載のベシクル含有組成物。


【公開番号】特開2012−201661(P2012−201661A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69947(P2011−69947)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】