説明

ベシクル組成物の製造方法

【課題】塗布時のなじみ感、すすぎ時の滑らかさ、塗布時の滑らかさ、指通りのよさ、乾燥時のまとまりを維持又は向上させることを可能にする毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】本発明は、成分(A)所定の構造の分岐脂肪酸、(B)所定の構造の第3級アミン、(C)炭素数1〜8の有機酸及び水から形成される連続相が水相であるベシクル組成物であって、ベシクル組成物中の前記成分(A)、(B)及び(C)の合計が1〜20質量%であり、かつ、ベシクル組成物中の成分(A)の体積量に対して5体積倍以上のベシクルを含有するベシクル組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーマやヘアカラー、ブリーチなどの利用が一般化する反面、これらの化学処理に伴う毛髪のダメージも問題となっている。従来から、シャンプー後の毛髪の感触を向上させるために、リンス、コンディショナー、トリートメントなどの毛髪化粧料が使用されているが、毛髪のダメージを軽減する観点からも、更なる性能向上が望まれている。
【0003】
特許文献1および2には、化学処理、ドライヤー乾燥、日々のヘアケア行動による毛髪の損傷・疲労破壊を修復又は抑止し、また湿潤時から乾燥後まで良好な柔軟性及びしなやかな感触を付与できる毛髪化粧料が開示されている。特許文献1に記載の毛髪化粧料は、特定の分岐脂肪酸またはその塩、特定のアミドアミンまたはその塩およびシリコーン類、ならびに必要に応じて両親媒性アミド脂質を含有し、特許文献2に記載の毛髪化粧料は、特定の分岐脂肪酸またはその塩、特定の芳香族アルコールおよび特定のアミドアミンまたはその塩を含有する。その結果、この毛髪化粧料は毛髪の損傷、疲労破壊を修復又は抑制し、また湿潤時から乾燥後まで良好な柔軟性及びしなやかな感触を付与することができることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、頭髪損傷の修復及び予防を目的として、コレステロールと塩基性アミノ酸と脂肪酸及び非イオン活性剤で安定化した多層小胞分散物からなる頭髪トリートメント組成物及び、多層小胞分散物を含むシャンプー及びコンディショナーのような頭髪トリートメント組成物が開示されている。このトリートメント組成物は頭髪繊維への幾つかの頭髪有効物質の浸透が特異的に促進されることが記載されている。
【0005】
一方、乳化組成物の製造方法の一つとして、転相乳化法や液晶乳化法が知られている。転相乳化法とは油相に水相を添加しながら乳化する方法である。また液晶乳化法とは液晶相に水相を加えながら乳化する方法である。例えば非特許文献1では油相に水相を添加しながら乳化し、転相点付近で油−水界面張力が著しく低下することを利用して平均粒径1μm以下の微細なエマルションを形成させている。
また、例えば特許文献4には、香気のロングラスティング及び拡散性が良く、経時での安定性が良好となる、4級アンモニウム塩を含有する水中油型エマルションの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−297262号公報
【特許文献2】特開2007−176924号公報
【特許文献3】特表2002−516831号公報
【特許文献4】特開2008−094980号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Optimization of Nano-emulsion Preparation by Low-Energy Methods in an Ionic Surfactant System, Langmuir 2006,22,8326-8332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1及び2に記載の技術では毛髪化粧料を塗布した際のなじみ感やすすぎ時の滑らかさの点については十分に効果が得られない場合もあり、更なる有効成分の含有量や、配合処方の最適化が求められている。また、製造方法については旧来の方法を実施している。
【0009】
特許文献3に記載の技術ではコレステロールを必須成分として混在させることで、多層小胞を形成する。すなわち、ステロール類など特定の脂質が介在していることによりベシクル構造を形成する。しかし通常のトリートメント剤の成分ではないステロール類が必須となっており、また、毛髪表面の特性の変化、改質については何ら言及されていない。
【0010】
更に、非特許文献1および特許文献4に記載されているような転相乳化は一般的にエマルションの安定化のために行われるが、ベシクル構造を形成することについては何ら言及されていない。また、得られる容積の大きなベシクルを造り、これを適用することにより毛髪表面の特性の変化、改質については開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定の第3級アミンおよび特定の分岐脂肪酸に加えて、特定の有機酸を組み合わせて用いることにより、水中でベシクルを構成することができることを見出した。また、当該ベシクル組成物を用いた毛髪化粧料が従来と同程度の分岐脂肪酸の含有量であった場合、従来の毛髪化粧料以上の効果を発揮することを見出した。
【0012】
さらに、本発明者らは、このようにベシクルが大きな容量を占める組成物を用いた毛髪化粧料が、塗布時のなじみ感、すすぎ時の滑らかさ、塗布時の滑らかさ、指通りのよさ、乾燥時のまとまりを維持又は向上させることを見出した。
このようなベシクル組成物は、具体的には、成分(A)、(B)、(C)及び水から形成され、十分なベシクル体積濃度を有するベシクル組成物は特定の第3級アミンおよび特定の分岐脂肪酸および特定の有機酸を含む油相に水相を加えながら混合することにより製造でき、かつ、十分なベシクル体積濃度を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明のベシクル組成物によれば、成分(A)、(B)、(C)及び水から形成される連続相が水相であるベシクル組成物であって、ベシクル組成物中の前記成分(A)、(B)及び(C)の合計が1〜20質量%であり、かつ、ベシクル組成物中の成分(A)の体積量に対して5体積倍以上のベシクルを含有するベシクル組成物:
(A)一般式(1)で表される分岐脂肪酸
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは5〜36の整数を示す。);
(B)一般式(2)または(3)で表される群から選ばれる少なくとも一種の第3級アミン
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R11は、炭素数12〜24の脂肪族炭化水素を示し、R12はそれぞれ独立にHまたは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)、
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R23は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R24は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは2〜4の数を示す。);および
(C)炭素数1〜8の有機酸、
が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のベシクル組成物によれば、従来の「洗い流す形態」にて使用される毛髪化粧料と分岐脂肪酸の含有量が同程度であった場合、当該従来の毛髪化粧料により実現されていた塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさを劇的に向上させることができる。
【0021】
また、「洗い流さない形態」にて使用される毛髪化粧料として用いても、塗布時の滑らかさ、指通りのよさ、乾燥時のまとまりを維持又は向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のベシクル組成物は、以下の成分(A)、(B)、(C)及び水から形成される連続相が水相である。以下、各成分について具体的に説明する。
(A)分岐脂肪酸
(B)第3級アミン
(C)炭素数1〜8の有機酸
【0023】
はじめに、成分(A)について説明する。
本発明で用いる成分(A)は、一般式(1)で表される分岐脂肪酸である。
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは5〜36の整数を示す。)
このような分岐脂肪酸の中でも、好ましくはnが5〜35(分岐脂肪酸の総炭素数9〜40)、更には6〜35(分岐脂肪酸の総炭素数10〜40)、特に6〜19(分岐脂肪酸の総炭素数10〜24)である。
【0026】
具体的には、18−メチルエイコサン酸、18−メチルノナデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、17−メチルオクタデカン酸、17−メチルノナデカン酸が挙げられる。
【0027】
成分(A)の分岐脂肪酸は、例えば、LIPIDS, vol.23, No.9, 878〜881(1988)、国際公開第98/30532号パンフレットの記載に従い、毛髪等から分離、抽出することもできるが、特開平4−173719号公報の記載に従って合成することもできる。
【0028】
抽出品としては、ラノリンからの抽出物、すなわちラノリン脂肪酸及びその塩が挙げられる。市販のラノリン脂肪酸は、イソ脂肪酸、アンテイソ脂肪酸と呼ばれるメチル分岐長鎖脂肪酸を50質量%程度含有する。具体的には、18−MEA〔クローダジャパン株式会社製〕、スクライロ〔クローダジャパン株式会社製〕、FA−NH〔日本精化株式会社製〕が挙げられる。
【0029】
成分(A)の分岐脂肪酸は、2種以上を併用してもよい。また、合成品と抽出品を組み合わせて使用してもよい。成分(A)のベシクル組成物中の含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0030】
本発明で用いる成分(B)は、一般式(2)または(3)で表される第3級アミンである。
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、R11は、炭素数12〜24の脂肪族炭化水素、好ましくは炭素数14〜24の脂肪族炭化水素、より好ましくは炭素数18〜24の脂肪族炭化水素を示し、R12はそれぞれ独立にHまたは炭素数1〜4のアルキル基、好ましくはHまたは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
具体的には、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミンが挙げられる。
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、R23は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数13〜23の脂肪族炭化水素、より好ましくは炭素数17〜23の脂肪族炭化水素を示し、R24は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは2〜4の数を示す。)
具体的には、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミドが挙げられる。
【0035】
成分(B)の第3級アミンは、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明で用いる成分(C)は、炭素数1〜8の有機酸である。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;安息香酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸などが挙げられる。これらの中で、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸がより好ましく、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が特に好ましい。酸性アミノ酸としては、グルタミン酸が特に好ましい。
【0037】
本発明の毛髪化粧料は、水を含む。水は、精製水を使用することが好ましい。水の含有量は、特に限定されず、使用する目的に応じて、適宜調整して用いることができる。
【0038】
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び水により、ベシクルが形成され、特にいくつかの二重膜から成る多層ラメラベシクル(いわゆる、オニオンベシクル)が水中に分散したベシクル組成物が形成されやすい。また、ベシクルとは通常内層が中空あるいは水相である小胞体を指すが、ここで形成される多層ラメラベシクルは内層の一部もしくは全部が油相となる構造を持つものも包含される。また、本願において、「ベシクル」には多層ラメラベシクルも包含される。
なお、多層ラメラベシクルと層状ラメラは異なるものであって、本明細書における層状ラメラとは、二分子膜が曲率を持たず板状になっている、いわゆる板状のラメラ構造体であり、多層ラメラベシクルと層状ラメラは偏光顕微鏡下で直交ニコルを用いたときに観察される十字像(マルタ十字像:Maltese Cross)により判別することが出来る。
【0039】
ベシクル分散液中のベシクル体積濃度を高くするという観点から、成分(A)と成分(C)とのモル比(A)/(C)は、5/5以上、好ましくは7/3以上であり、かつ、9/1以下、好ましくは8/2以下である。
【0040】
また、成分(A)、成分(B)、成分(C)を効率的にベシクル形成に寄与させるという観点から、ベシクル組成物中の成分(A)及び成分(C)を含む全脂肪酸の酸当量と成分(B)の塩基当量との比は、0.25以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。かつ、4以下が好ましく、2以下がより好ましく、さらに好ましくは1.8以下である。
【0041】
さらに、ベシクル分散液の保存安定性やハンドリング性という観点から、ベシクル分散液中の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は、1〜20質量%であり、好ましくは1〜15質量%である。
【0042】
ベシクル分散液中に生成したベシクルの体積はベシクルを含有する毛髪化粧料の塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさの向上という観点から、ベシクル組成物中の成分(A)の体積量に対して5体積倍以上であり、6体積倍以上が好ましく、8体積倍以上が更に好ましい。
また、好ましいベシクル分散液の形態はベシクルの体積濃度が20〜95体積%であることが好ましく、30〜95体積%であることがより好ましく、その中でも30〜80体積%であることが特に好ましい。この範囲であれば、ベシクル分散液の保存安定性、ハンドリング性と馴染み感、すすぎ時の滑らかさの向上が最も優れるからである。
【0043】
本発明のベシクル組成物はベシクルの分散液(プレミックス)の形態をとることが望ましい。このベシクル分散液は以下の段階、すなわち、
(i)成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有する油相を、当該油相の融点以上の温度で溶解する工程と、
(ii)得られた油相に水相を加えながら混合する工程と、
によって好適に製造できる。このような手順に従えば、連続相が水相であるベシクル組成物が得られる。
【0044】
工程(i)においては安定的な製造の観点から油相は完全に溶解することが好ましい。ここで「完全に溶解する」とは油相に固形物がなくなる状態まで溶解した状態のことをいう。このため、油相の融点以上の温度で溶解し、更に油相の融点より5℃以上高い温度で溶解することが好ましく、特に油相の融点より10℃以上高い温度で溶解することが好ましい。
また、油相は均一に混合された状態であることが好ましい。そこで、本工程は油相を混合しながら溶解させることが好ましい。混合方法は特に限定しないが、例えば攪拌により混合することが好ましい。
【0045】
工程(ii)においては水相滴下時の温度は油相温度及び滴下する水相の温度及び混合装置での加熱あるいは冷却により適宜決めることが出来る。ここで、「水相」には、イオン交換水、蒸留水などの精製水を用いるが、水に溶解する(D)成分である多価アルコール、例えばグリセリンやジプロピレングリコールなどを含有させることもできる。また、効率的にベシクルを製造する観点から、油相温度及び滴下する水相の温度を、形成させるベシクルのゲル転移温度以上にすることが好ましい。
【0046】
ベシクル分散液中のベシクルの体積濃度は油相への水相の滴下速度及び水相滴下時の攪拌速度により、またベシクルの粒径は水相滴下開始以降の攪拌速度(せん断速度)により調整可能である。油相への水相の滴下速度や滴下時の攪拌速度の最適値はベシクル組成物の処方や成分比及び配合槽の大きさ、形状によって変化するが、水相滴下途中で最も粘度の上昇する状態において均一に混合できる条件が好ましい。更に水相を滴下していくと、ベシクル分散液の粘度は低下し、ベシクル体積濃度は減少する。滴下する水相の量はベシクル分散液の保存安定性、ハンドリング性を考慮して適宜調整可能である。
油相への水相の滴下速度は上述のように適宜選択できるが、ベシクル分散液中のベシクルの体積濃度を高める目的から、10分以上時間をかけて滴下することが望ましい。特に滴下速度を制限するものではないが、例えば、滴下する水相の全量が600gであれば、5〜20g/分で滴下することが好ましい。
【0047】
また、ベシクル組成物の安定性の観点から、工程(ii)の後に
(iii)水相滴下終了後、速やかにベシクルの相転移温度以下まで冷却する工程
を含むベシクル組成物の製造方法であることが好ましい。
【0048】
ベシクル組成物中のベシクル体積濃度は、電解質溶液にベシクル組成物を分散させ、電解質溶液に浮遊しているベシクルがアパチャーと呼ばれる細孔で区切られた領域を通過する際、アパチャーを隔てて設置された2電極間の電気抵抗あるいは電圧あるいは電流の変化を測定することにより、アパチャーを通過するベシクルの正確な体積を求めることができる。このような原理の粒度分布測定装置、例えばベックマン・コールター株式会社製のMultisizerTM4またはシスメックス株式会社製CDA−1000Xなどを用いて測定することが出来る。
【0049】
また、ベシクルが球状の場合の平均粒径は、毛髪塗布時の馴染み感のさらなる向上という観点から、2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、かつ、20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。ここで、平均粒径は、上記ベシクル体積濃度の測定で用いられる粒度分布測定装置、例えばベックマン・コールター株式会社製のMultisizerTM4またはシスメックス株式会社製CDA−1000Xなどまたは、レーザ回折式粒度分布測定装置、例えば島津製作所社製のSALD2100あるいは株式会社堀場製作所製LA−920などを用いて、循環方式におけるフローセルの中を移動するベシクルにレーザ光を照射して得られる散乱光の強度分布を測定し、当該強度分布から変換して得られる体積分布により平均粒径を測定することができる。測定は室温下(15〜30℃)にて行うことが望ましい。
【0050】
本発明のベシクル組成物は、さらに、(D)多価アルコールを含んでいてもよい。
成分(D)として具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0051】
成分(D)の含有量は、ベシクル組成物の保存安定性の観点から、ベシクル組成物全体に対して0.5〜60質量%が好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。
【0052】
成分(D)の添加においては、前記(i)の段階において、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有する油相を、油相の融点以上の温度で溶解させた後、油相に成分(D)を加えることができる。または、前記(i)の段階において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を含有する油相を、油相の融点以上の温度で固形物が無くなるまで溶解させた油相を得てもよい。(i)の段階の後、得られた油相に水相を加えながら混合する(ii)の段階を経ることによって、ベシクル体積濃度が高く、保存安定性の高いベシクル分散液を得ることができる。さらにベシクルの保存安定性の観点から水相滴下終了後、速やかにベシクルの相転移温度以下まで冷却する(iii)の段階を経ることが好ましい。
【0053】
また、油相には本発明のベシクルの製造を阻害しない範囲で任意の成分を入れることができる。任意成分としては、例えば各種エキス類及び酸化防止剤などを挙げることができるが、これに限定されない。油相に添加できる任意成分は安定的なベシクル組成物の製造の観点から油相の1質量%以下である。
水相には本発明のベシクルの製造を阻害しない範囲で任意の成分を添加できる。添加できる任意成分としては、例えば各種エキス類及び防腐剤などがあるが、特にこれに限定されない。水相に添加できる任意成分は安定的なベシクル組成物の製造の観点から、水相の0.1質量%以下である。
【0054】
なお、高級アルコールは、本願の成分A)成分B)成分C)を含む処方では、組成物中に含まれるベシクルの体積割合を増やす観点から、油相の全体質量の10分の1以下であることが好ましく、実質的にベシクル組成物中に含まない方がより好ましく、ベシクル組成物中には含まないのが特に好ましい。
【0055】
ベシクル組成物を製造する際には、せん断混合状態の油相に水相を滴下する。混合装置はせん断混合ができれば特に限定されないが、水相添加途中で高粘度になる場合には高粘度物を混合できる装置、例えばプライムミクス株式会社製アヂホモミキサー、T.K.コンビミックス、みづほ工業株式会社製真空乳化攪拌装置、住友重機械工業株式会社製マックスブレンド攪拌槽、佐竹化学機械工業株式会社製スーパーミックス攪拌槽などが好ましい。攪拌速度については特に限定するものではないが、例えば300mlの配合槽であれば100〜600rpmで攪拌するのが好ましい。
【0056】
確証はないが、このような本発明の製造方法により得られるベシクルでは、毛髪に塗布した際に容易にベシクルから膜状に構造変化することにより、毛髪表面での特性を好適に変化させることができるものと考えられる。
また、従来のベシクル構造は、特許文献3に記載されているように、ステロール類、リン脂質などの特定の脂質が介在することにより構成されている。これに対して、本発明は、ステロール類やリン脂質を含有していなくてもベシクル組成物を形成できる。すなわち、ベシクル構造を従来からリンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料に使用される成分により構成することができるという点で新しい知見ということができる。従って、本発明は、当該分野における新規な製剤処方を提供するものである。
【0057】
本発明の毛髪化粧料は、1種または複数の界面活性剤と脂肪族アルコールとを含有し、さらに前述したベシクル組成物を含有する。
毛髪化粧料中のベシクル組成物の含有量は、塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさを付与する点から、ベシクルを構成する成分(A)である分岐脂肪酸の量として見たときに、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%となる量である。このような毛髪化粧料は、従来の毛髪化粧料よりも有効成分の含有量を低減させても、従来の毛髪化粧料により実現されていた柔軟性、平滑性、しっとり感、しなやかさを維持または向上させることができる。
このような毛髪化粧料としては例えば、コンディショナー、リンス、トリートメント、シャンプーなどが挙げられる。特に効果的な毛髪化粧料として、コンディショナー、リンス、トリートメントが好ましい。これらの毛髪化粧料は、毛髪化粧料塗布後、洗い流す使用形態でも洗い流さない使用形態でも良い。
【0058】
ベシクル組成物を含有する毛髪化粧料は本発明のベシクル組成物を別途、通常の方法で調製した毛髪化粧料ベースに混合することで得られる。通常の方法で調整した毛髪化粧料ベースとは例えば界面活性剤と脂肪族アルコールを含有し、必要に応じてシリコーン、油性成分などを配合した一般的な毛髪化粧料をいう。これは任意の方法で調整することができる。
【0059】
毛髪化粧料ベースとして使用するカチオン界面活性剤は、4級アンモニウム、3級アミン化合物が挙げられ、特に3級アミン化合物が好ましい。3級アミン化合物は、成分(C)に挙げられた化合物から選択される。特に、ベシクル組成物で使用した3級アミン化合物と同じ成分を用いることが好ましい。
【0060】
毛髪化粧料ベースとして使用する脂肪族アルコールは、炭素数12〜26の脂肪族アルコールが好ましい。これにより、毛髪への塗布時の毛髪を滑らかにすることができる。直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールが好ましく、中でも、炭素数16〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールが好ましい。特に炭素数16〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールがより好ましい。具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0061】
毛髪化粧料ベースの処方や製造方法は特に限定されるものではないが、例えば加熱攪拌した水相にカチオン性界面活性剤と高級アルコールを含有する油相を添加し、乳化することで得られる。
通常の毛髪化粧料ベースに本ベシクル組成物を配合する方法は特に限定されないが、ベシクルの安定性の観点から、ベシクルのゲル転移温度以下の温度で配合することが望ましい。これによりベシクル組成物の構造を維持した毛髪化粧料を得ることができる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)10.50g、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、株式会社武蔵野化学研究所製)0.72g、ファーミンDM 8098(N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、純度98%、分子量297.56、融点23℃、花王株式会社製)10.92g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)31.50gを、300mlビーカーにいれ、80℃まで攪拌下加熱し、原料を溶解した。この油相中に、水相として80℃に加熱したイオン交換水246.36gを10分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。その後5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行った。このようにして得られたベシクル組成物をプレミックスとした。このプレミックス中の18−MEAの体積量は18−MEAの比重を1g/cmとして計算すると、3.5体積%である。油相を攪拌しながら水相を滴下する乳化形式を一般に転相乳化という。このベシクル組成物のゲル転移温度を示差走査熱量計(DSC)で測定したところ53.8℃であった。なお、ゲル転移温度の測定にはSETARAM INSTRUMENTATIONのμDSC7 evoを用い、5℃から90℃まで昇温速度0.5℃/分で測定した。表1には、プレミックスの製造条件およびプレミックス10.00gに換算した各成分の量(g)を示した。
【0063】
ここで、調製したベシクル組成物であるプレミックスを用いて、リンスの配合を行った。なお、本実施例1〜14及び比較例1〜6で調整したリンスは洗い流す形態で使用する毛髪化粧料である。
【0064】
500mlビーカーに水相としてイオン交換水301.40g、ムサシノ乳酸90を2.36g入れ、55℃までプロペラで攪袢下加熱する。その後、ファーミンDM E−80を9.29g、カルコール8098(ステアリルアルコール、純度98%、花王株式会社製)21.00g、DPG−RF(同上)5.95gから成る油相を80℃で均―溶解した後、水相中に添加し、攪拌して乳化した。5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行い、ベースリンスを調製した後、前述のプレミックス10,00gを添加し、リンスとした。
【0065】
(比較例1)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)10.50g、ファーミンDM 8098(N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、純度98%、分子量297.56、融点23℃、花王株式会社製)10.92g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)31.50gを、300mlビーカーにいれ、80℃までプロペラで攪拌下加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、水相として80℃に加熱したイオン交換水247.08gを10分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。その後5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行い、プレミックスを得た。
【0066】
(比較例2)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)10.50g、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、株式会社武蔵野化学研究所製)0.72g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)31.50gを、300mlビーカーにいれ、80℃までプロペラで攪拌下加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、水相として80℃に加熱したイオン交換水257.28gを10分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行い、プレミックスを得た。
【0067】
(比較例3)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)10.50g、コータミン86W(トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、純度28%、分子量:348.05、融点−5℃、花王株式会社製)35.79g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)31.50gを、300mlビーカーにいれ、80℃までプロペラで攪拌下加熱し、原料を完全溶解した。この油相中に、水相として80℃に加熱したイオン交換水222.21gを10分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。その後5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行い、プレミックスを得た。その後、実施例1と同じ方法でリンスを調整した。
【0068】
(実施例2)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)をファーミンDM4098(N,N−ジメチルテトラデシルアミン、純度97%、分子量241.46、花王株式会社製)0.30gとし、イオン交換水を8.28gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0069】
(実施例3)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)をファーミンDM2285(N,N−ジメチルベヘニルアミン、純度85%、分子量269.51、融点44℃、花王株式会社製)0.38gとし、イオン交換水を8.20gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0070】
(実施例4)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)をAMIDET APA−22(N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ドコサンアミド、純度99%、分子量424.75、融点76℃、花王株式会社製)0.51gとし、イオン交換水を8.07gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0071】
(実施例5)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中の乳酸0.02gを安息香酸(シグマアルドリッチジャパン株式会社一級試薬)0.03gとし、イオン交換水を8.21gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0072】
(実施例6)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中の乳酸0.02gをカプリル酸(和工純薬工業株式会社試薬)0.04gとし、イオン交換水を8.20gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0073】
(比較例4)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中の乳酸0.02gをカプリン酸(和工純薬工業株式会社試薬) 0.04gとし、イオン交換水を8.20gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0074】
(実施例7)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のDPG−RFを0.00g、イオン交換水を9.27gとし、ベースリンス調整時のDPG−RFを16.45g、イオン交換水を290.90gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0075】
(実施例8)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)を0.09gとし、イオン交換水を8.49gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0076】
(実施例9)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)を0.18gとし、イオン交換水を8.40gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0077】
(実施例10)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)を0.73gとし、イオン交換水を7.85gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0078】
(実施例11)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中のファーミンDM8098(0.36g)を1.46gとし、イオン交換水を7.12gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0079】
(実施例12)
実施例1に記載のプレミックス10.00g中の乳酸0.02gを0.10g、ファーミンDM8098(0.36g)を0.57gとし、イオン交換水を7.93gとしたこと以外は、実施例1と同様にプレミックス、リンスを調整した。
【0080】
(比較例5)
500mlビーカーに水相としてイオン交換水を309.62g、ムサシノ乳酸90を2.38g入れ、55℃までプロペラで攪拌下加熱する。そこへ予め80℃で均―に溶解した0.35gの18−MEA、9.65gのファーミンDM E−80、7.00gのDPG−RF、21.00gのカルコール8098から成る油相を添加し、10分間300rpmで攪拌して乳化した。その後5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行い、リンスとした。
【0081】
(比較例6)
イオン交換水を308.22gにして、ベンジルアルコール(純度99.9%、サンケミカル株式会社製)1.40gを油相に加えたこと以外は、比較例5と同様にて、リンスを調製した。
【0082】
(比較例7)
300mlビーカーに水相としてイオン交換水246.36gをいれ80℃までプロペラで攪拌下加熱した。また、18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)10.50g、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、株式会社武蔵野化学研究所製)0.72g、ファーミンDM 8098(N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、純度98%、分子量297.56、融点23℃、花王株式会社製)10.92g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)31.50gをビーカーに入れ、攪拌下、80℃の水浴中で完全溶解して油相とした。この油相を300mlビーカー中の水相に攪拌下10分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。その後5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行った。このようにして得られたベシクル組成物をプレミックスとした。水相を攪拌しながら油相を滴下する乳化形式を一般に順相乳化という。
【0083】
続いて実施例1と同様にプレミックスの評価を行うため、リンスの配合を行った。500mlビーカーに水相としてイオン交換水301.40g、ムサシノ乳酸90を2.36g入れ、55℃までプロペラで攪袢下加熱する。その後、ファーミンDM E−80を9.29g、カルコール8098(ステアリルアルコール、純度98%、花王株式会社製)21.00g、DPG−RF(同上)5.95gから成る油相を80℃で均―溶解した後、水相中に添加し、10分間300rpmで攪拌して乳化した。5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行いベースリンスを調製した後、前述のプレミックス10.00gを添加し、リンスとした。
【0084】
(比較例8)
300mlビーカー内の温度を45℃として油相成分を溶解し、滴下するイオン交換水の温度を45℃としたこと以外は実施例1に記載の方法にてプレミックスおよびリンスを調整した。
【0085】
(実施例13)
18−MEA(18−メチルエイコサン酸を含む脂肪酸及び分岐脂肪酸混合物、平均分子量:364.3、融点35〜55℃、クローダジャパン株式会社製)28.00g、ムサシノ乳酸90(乳酸、純度90%、分子量:90.08、融点18℃、株式会社武蔵野化学研究所製)1.92g、ファーミンDM 8098(N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、純度98%、分子量297.56、融点23℃、花王株式会社製)29.12g、及びDPG−RF(ジプロピレングリコール、融点−40℃、株式会社ADEKA製)84.00gを、乳化装置(T.K.アヂホモミクサー、プライミクス株式会社製)に入れ、槽内温度80°Cとなるようにジャケットに温水を投入し、パドル翼による攪拌(80rpm)で原料を完全溶解した。この油相中に、水相として80℃に加熱したイオン交換水656.96gを60分かけて定速滴下し、80℃にて乳化した。その後5℃の冷媒により30℃以下まで冷却を行い、プレミックスを得た。表1にはプレミックス10.00gに換算した各成分の量(g)を示した。
【0086】
続いて実施例1と同様にプレミックスの評価を行うため、リンスの配合を行った。500mlビーカーに水相としてイオン交換水301.40g、ムサシノ乳酸90を2.36g入れ、55℃までプロペラで攪袢下加熱する。その後、ファーミンDM E−80を9.29g、カルコール8098(ステアリルアルコール、純度98%、花王株式会社製)21.00g、DPG−RF(同上)5.95gから成る油相を80℃で均―溶解した後、水相中に添加し、10分間300rpmで攪拌して乳化した。5℃の冷媒を用いて30℃以下まで冷却を行いベースリンスを調製した後、前述のプレミックス10.00gを添加し、リンスとした。
【0087】
(実施例14)
実施例13に記載のプレミックスにホモミキサー7000rpm、30分間による剪断を加えて粒径を制御したこと以外は、実施例1と同様にて、プレミックス及びリンスを調製した。
【0088】
(プレミックスの評価方法)
(1)プレミックスの乳化状態は、プレミックス調整が終了してから1日後に評価した。評価時に油相と水相が分離し、2相を形成していた場合は乳化状態を「不良」、油相と水相が分離しておらず、1相を形成していた場合は乳化状態を「良好」とし評価した。
(2)プレミックス中ベシクルの平均粒径、および体積濃度は、ベックマンロコールター株式会社製のMultisizerTM4を用いて25℃で測定した。なお、平均粒径は体積基準のメディアン径(D50)を用い、体積濃度はプレミックス単位体積あたりのベシクル体積量を用いた。
(3)プレミックスの粘度はB型粘度計(株式会社東京計器製)を用い、30℃、ローターNo.2、30rpmで評価した。
なお、プレミックスの安定性は室温1ヶ月の保存前後の粘度変化で評価した。
【0089】
(リンスの評価方法)
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ20g(長さ15〜20cm、平均直径80μm)の毛髪束を、下記の組成の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に、表1に示すリンス2gを塗布し、毛髪全体に十分に馴染ませた後、およそ30秒間約40℃の流水下で濯ぎ、ついで、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させた。
【0090】
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩 62.0%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3%
エデト酸二ナトリウム 0.15%
安息香酸ナトリウム 0.5%
塩化ナトリウム 0.8%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
【0091】
毛髪の「塗布時の馴染み感」、「すすぎ時の滑らかさ」を評価した。評価は5人で5段階評価を行い、その平均値をとった。平均点が3点以上であれば合格品とした。
【0092】
(評価基準)
5:塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさ共に優れる
4:塗布時の馴染み感、すすぎ時の滑らかさ共に良好
3:塗布時の馴染み感又はすすぎ時の滑らかさのどちらかが良好
2:塗布時の馴染み感又はすすぎ時の滑らかさのどちらかが劣る
1:塗布時の馴染み感及びすすぎ時の滑らかさのどちらも劣る
【0093】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、(B)、(C)及び水から形成される連続相が水相であるベシクル組成物であって、ベシクル組成物中の前記成分(A)、(B)及び(C)の合計が1〜20質量%であり、かつ、ベシクル組成物中の成分(A)の体積量に対して5体積倍以上のベシクルを含有するベシクル組成物:
(A)一般式(1)で表される分岐脂肪酸
【化1】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは5〜36の整数を示す。);
(B)一般式(2)または(3)で表される第3級アミン
【化2】

(式中、R11は、炭素数12〜24の脂肪族炭化水素を示し、R12はそれぞれ独立にHまたは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)、
【化3】

(式中、R23は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R24は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは2〜4の数を示す。);および
成分(C)炭素数1〜8の有機酸。
【請求項2】
ベシクルが球状である場合の平均粒径が2〜20μmである請求項1に記載のベシクル組成物。
【請求項3】
さらに(D)多価アルコールを含有する請求項1または2に記載のベシクル組成物。
【請求項4】
ベシクル組成物中の成分(A)及び成分(C)を含む全脂肪酸の酸当量と成分(B)の塩基当量の比が0.25〜4である請求項1〜3いずれか一項に記載のベシクル組成物。
【請求項5】
1種または複数の界面活性剤と脂肪族アルコールと乳化シリコーン粒子を含有し、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベシクル組成物を添加することで得られる毛髪化粧料。
【請求項6】
成分(A)一般式(1)で表される分岐脂肪酸
【化4】

(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは5〜36の整数を示す。);
(B)一般式(2)または(3)で表される第3級アミン
【化5】

(式中、R11は、炭素数12〜24の脂肪族炭化水素を示し、R12はそれぞれ独立にHまたは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)、
【化6】

(式中、R23は炭素数11〜23の脂肪族炭化水素基を示し、R24は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは2〜4の数を示す。);および
成分(C)炭素数1〜 8の有機酸
を含有する油相を当該油相の融点以上の温度で溶解させる工程と、溶解した油相に水相を加えながら混合する工程を含む、連続相が水相であるベシクル組成物の製造方法。
【請求項7】
油相がさらに(D)多価アルコールを含有する請求項6に記載のベシクル組成物の製造方法。
【請求項8】
ベシクル組成物中の成分(A)及び成分(C)を含む全脂肪酸の酸当量と成分(B)の塩基当量の比が0.25〜4である請求項6または7に記載のベシクル組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8いずれか一項に記載の製造方法で製造されるベシクル組成物。
【請求項10】
ベシクル組成物中の前記成分(A)、(B)及び(C)の合計が1〜20質量%であって、ベシクル組成物中の成分(A)の体積量に対して5体積倍以上のベシクルを含有する請求項6〜8いずれか一項に記載の方法で製造されたベシクル組成物。
【請求項11】
ベシクルが球状である場合の平均粒径が2〜20μmである請求項6〜8いずれか一項に記載の方法で製造されたベシクル組成物。
【請求項12】
1種または複数の界面活性剤と脂肪族アルコールと乳化シリコーン粒子を含有し、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法で製造されたベシクル組成物を添加することで得られる毛髪化粧料。

【公開番号】特開2012−149010(P2012−149010A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9270(P2011−9270)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】