説明

ベタレイン組成物およびそれらの使用

考慮される組成物および方法は、多様な状態、特に、骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および/または気分障害の治療のためにベタレインを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、両方とも参照により本明細書に組み込まれている、出願者の2008年7月30日に出願した出願番号第61/084879号の米国仮出願および2008年12月23日に出願した出願番号第61/140541号の米国仮出願の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
発明の分野は、ヒトの状態を治療する組成物および方法であり、特に、骨関節症、ざ瘡、アレルギー状態、副鼻腔炎および接触皮膚炎の治療のためのベタレイン含有組成物に関する。本明細書において考慮される組成物および方法も、非カフェイン刺激剤としてのベタレイン含有組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
骨関節症(OA)は、極めて一般的な状態であり、米国の人口の約80%が65歳までにはX線によるOAの証拠を有すると予想される。骨関節症は、罹患した関節に隣接する組織の疼痛および腫脹を頻繁に伴う関節軟骨の損失により特徴付けられ、次に多くの場合にその関節に関連する筋肉の局所性または領域性の萎縮を引き起こす。OAは同一の基礎原因を有さないが、OAは、一次または変形性OAとも呼ばれ、一方、二次OAは、多様な障害または疾患(例えば、糖尿病、局所傷害または感染、関節不安定症など)により典型的に誘起される。対照的に、リウマチ様関節炎(RA)は、免疫系が罹患関節を攻撃し、著しい炎症をもたらし、続いて組織変性をもたらす、慢性で全身性の自己免疫障害である。
【0004】
異なる病因に起因して、RAおよびOAは、異なる治療手法を有する。例えば、RAは、シクロスポリン、メトトレキセートまたはペニシラミンによって典型的に治療され、より重篤な場合では、TNF−アルファまたはIL−1ブロッカーによって治療される。炎症を低減するために、グルココルチコイドおよび/または非ステロイド性抗炎症薬を投与することができる。一方、OAは、理学療法、体重管理および/または多様な栄養補給剤によって多くの場合に治療される。補給剤のうち、メチルスルホニルメタン、グルコサミンおよび/またはコンドロイチン硫酸は、補給剤として大きな注目を集めている。最近、多様な植物由来補給剤がOAの治療において記載された。例えば、WO 05/053710は、多様な植物材料からのグルコサミンの製造における乾燥方法の使用を教示する。別の例では、骨関節症の治療用の植物抽出物が、米国特許出願2007/0196527に記載されているように、モリンダ・シトリフォリア(Morinda citrifolia)から調製される。
【0005】
最近の入手可能な栄養飲料(例えば、Red Bull(商標)、Rockstar(商標)、Java Monster(商標)など)は、有意な量のカフェインおよび他のメチルキサンチン、選択されたビタミンB(例えば、B3、B6、B12)、ならびに小分子エフェクター(例えば、タウリン、クレアチン、マルトデキストリン、グルクロノラクトンなど)、また多様な薬草抽出物/調合剤(例えば、ガラナ、チョウセンニンジン、イチョウ、マテチャノキなど)を典型的に含む。加えて、現在市販されている栄養飲料のうちの少なくとも幾つかも、相当量の糖を含む。
【0006】
そのような栄養飲料の刺激効果の大部分は、カフェイン由来であり、カフェインは一杯分平均8オンスに約80mgの量で存在する。80mgの用量のカフェインは、平均的な消費者にとって一般に問題ではないが、複数杯の栄養飲料は、望ましくない、幾つかの場合では危険でもある副作用を生じる傾向がある。例えば、250mgを超えるカフェイン用量は、神経過敏、被刺激性、不眠、排尿の増加、不整脈、胃刺激、さらには骨量減少を生じる傾向がある。残念なことに、全身からカフェインを排除することは、「不快な体験」または脱力感を典型的にもたらし、大量のカフェインレベルの急激な低下は、さらには発作と関連している。
【0007】
大量のカフェイン摂取に関連する問題の少なくとも幾つかを克服するために、多量のビタミンB、アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン)、タウリン、グルクロノラクトンおよびほんの少量のカフェインを含む他の栄養飲料(例えば、5 Hour Energy)が、現在市販されている。そのような栄養飲料は、カフェイン排除の際の自覚的不快感を典型的には回避するが、ナイアシン紅潮および不眠を含む他の副作用に、多くの場合遭遇する。更に、高用量のビタミンB投与の長期的効果は、一般に知られていない。
【0008】
赤ビートは、長い間、多様な栄養素、特に糖およびベタイン(すなわち、トリメチルグリシン)の一般的な供給源となってきた。赤ビートから得られる更なる有用な化合物にはベタレインが含まれ、ベタレインは、赤色から紫色のベタシアニン(例えば、アマランチン、イソアマランチンなど)および典型的には黄色のベタキサンチン(例えば、ブルガキサンチン)の化学的に多様な群を表し、ベタレインには、医薬品用および食品用着色剤として、ならびに酸化防止剤としての使用が見出されている。例えば、ベタレインは、酸化防止剤として報告されており(例えば、J.Agric Food Chem.2001年11月;49(11):5178−85を参照すること。)、このことは、LDLコレステロール酸化の防止に特に関連性を有しうる(例えば、Free Radic Res.2003年6月;37(6):689−96を参照すること。)。最近では、出願者の同時係属国際出願WO 08/094705に記載されているように、ベタレイン組成物は、血清トリグリセリド濃度の低減、NF−kBの阻害およびSIRTの刺激において効果的であることも見出された。更に、赤ビート繊維は、総コレステロールおよびトリグリセリドレベルを低減すること、同時に、HDLコレステロールを増加することを含む、摂取されたときに多数の望ましい特性を有することが報告されている。
【0009】
しかし、赤ビートおよび赤ビート抽出物の多数の利点にもかかわらず、赤ビートは、OA、多様なアレルギー状態またはアレルギーに関連する状態および活力欠如を治療する活性化合物を含有するとは報告されていない。赤ビート抽出物の問題を複雑にしているのは、特に赤ビート調製物が乾燥形態である場合、それらの製造および分配には問題が多いことである。幾つかある困難のうち、凍結乾燥ビート液汁から調製したベタレインは、多くの場合、塊状であり、極めて吸湿性がある。したがって、そのような調製物は、特に比較的少量を分配する場合、計量し、アリコートにすることが難しいことで有名である。さらに悪いことには、現在知られている乾燥ベタレイン調製物の大部分は、約1重量%(総ベタレイン)のベタレイン濃度に限定されており、抽出または他の方法によりベタレイン濃度を増加するほぼ全ての試みも、吸湿性および集塊の増加をもたらす。あるいは、赤ビート抽出物が液体形態である場合、そのような抽出物は、多くの場合、極めて不安定であり、急速に分解する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第05/053710号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0196527号明細書
【特許文献3】国際公開第08/094705号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Agric Food Chem.2001年11月;49(11):5178−85
【非特許文献2】Free Radic Res.2003年6月;37(6):689−96
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、赤ビート調製物の多数の組成物および方法が当該技術において知られているが、それらの全てまたはほぼ全てが欠点を被っている。したがって、赤ビート調製物の改善された組成物および方法を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ビート由来組成物およびそのような組成物が多様な状態、特に、骨関節症、ざ瘡、接触皮膚炎、副鼻腔炎および/またはアレルギーに関連する状態の治療に使用される方法を対象とする。より好ましくは、考慮される組成物および方法は、ベタレインが豊富であり、未加工ビート液汁と比較して糖含有量が低減している。
【0014】
本発明の主題の一つの好ましい態様において、ヒト消費用の生成物を提供する方法は、ヒト消費用の生成物に一定量のベタレインを提供するまたは含める工程を含み、ここで上記量は、生成物が推奨投与量およびスケジュールで摂取される場合、骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および気分障害の少なくとも1つに伴う少なくとも1つの症状を低減するのに有効である。更なる工程において、次に人は、状態に伴う少なくとも1つの症状を低減するために、生成物を推奨投与量およびスケジュールで経口投与するように指示される。最も典型的には、指示は、症状の低減に有効であるのは上記量のベタレインであることをヒトに更に知らせる。
【0015】
本発明の主題に限定されることなく、上記量のベタレインが、赤ビートから調製されること、および/またはベタレインの量が、少なくとも2重量%、より典型的には少なくとも10重量%の濃度の総ベタレインを含む固体調製物として生成物に含まれることが、一般に好ましい。固体調製物が、少なくとも0.3のベタレインと糖の比、より典型的には少なくとも1.0を有することも、一般に好ましい。投与量およびスケジュールは、組成物の総1日摂取量が10mgから50mgの総ベタレインを提供するように選択されることが、なお更に一般に好ましい。したがって、特に考慮される態様において、生成物は栄養補給剤として配合され、補給剤は、補給剤が1000mg未満の重量を有する1日量において、10から250mgの総ベタレインを提供するように配合される。
【0016】
したがって、本発明の主題の別の好ましい態様において、骨関節症の治療方法は、骨関節症に伴う少なくとも1つの症状を低減するのに有効な投与量およびスケジュールでベタレインを、それを必要とするヒトに投与する工程を含む。最も好ましくは、投与量およびスケジュールは、ベタレインの総1日摂取量が10mgから50mgであるように選択され、所望であれば、ベタレインは植物材料から単離された組成物に存在し、組成物は、少なくとも1.0のベタレインと糖の比を有する。
【0017】
本発明の主題のなお更に好ましい態様において、栄養補助刺激剤を提供する方法は、栄養補助刺激剤が推奨投与量およびスケジュールで摂取される場合、覚醒状態、体力、身体持久力および気分の少なくとも1つを増加するのに有効な量でベタレインを栄養補助刺激剤に提供する工程を有し、別の工程では、人は、覚醒状態、体力、身体持久力および気分の少なくとも1つを増加するために、推奨投与量およびスケジュールで刺激剤を経口投与するように指示される。投与量およびスケジュールは、刺激剤の総1日摂取量が、10mgから50mgのベタレインを提供するようにおよび/またはベタレインが、植物材料から単離され、ベタレインと糖の比が少なくとも1.0である組成物における刺激剤に添加されるように選択されることが、一般に好ましい。
【0018】
したがって、異なる視点から見ると、ベタレイン含有調製物の使用は、骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および/または気分障害の治療のための経口投与組成物の製造において考慮される。特に好ましい態様において、ベタレイン含有調製物は、少なくとも5重量%のベタレイン濃度を有する乾燥調製物であるおよび/またはベタレインは、1投与単位あたり少なくとも15mgの量で調製物に含まれる。
【0019】
本発明の多様な目的、特徴、態様および利点は、以下の本発明の好ましい実施態様の詳細な記載によって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な記述)
本発明者たちは、ベタレイン含有調製物、特に多様な赤ビート調製物が、特定の状態、特に、骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、喘息、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および/または気分障害に伴う1つ以上の症状を低減するのに適していることを発見した。
【0021】
最も好ましくは、本発明の主題の組成物および方法は、総ベタレインの1日投与量の10mgから250mgが達成されるように経口投与される。本明細書に考慮される組成物の好ましい投与は、特定のスケジュールまたは投与量に限定されないが、組成物は、好ましくは1日1回および1日3回の経口投与を使用して、少なくとも3日間、より典型的には少なくとも2週間、最も典型的には少なくとも1か月間にわたって投与されることが、一般に好ましい。
【0022】
一つの例示的な好ましい態様において、ビート調製物は、少なくとも2重量%、より典型的には少なくとも5−10重量%のベタレインの濃度で乾燥物質を生成する抽出方法において、赤ビート液汁から調製されることが考慮される(例えば、下記の実施例および実験のセクションを参照すること。)。特に好ましい組成物は、参照により本明細書に組み込まれている、出願者の国際特許出願WO 08/094705(出願番号PCT/US08/01418)に記載されており、それによって既知である。次にそのような調製物は、経口投与用のカプセルに、カプセル1個あたり約100mgの総調製物で充填され、1日に3回で少なくとも3週間にわたって経口投与される。
【0023】
例えば、ベタレイン含有組成物は、参照として本明細書に組み込まれている、WO 2008/094705に実質的に記載されているプロトコールに従って調製された。簡潔には、乾燥基準で約0.6重量%の総ベタレイン含有量を有する市販のビート液汁(約65ブリックス;SVZ Internationalから得た)を濾過して、粒子を除去し、濾液を、更に改質することなくクロマトグラフィーに使用した。濾液を、疎水的に変性されたスチレン樹脂(VDF FutureceuticalsからResin HST−226として市販されている。)が充填されたカラムの中を、1−20層容量で装填して、1時間あたり1−50層容量で通過させた。通過画分を廃棄し、ベタレインを、僅かに塩基性のpHで穏緩衝液を使用して樹脂から溶出した(例えば、水中0.1−0.2Mの酢酸アンモニウム、pH8.2から8.4、温度110°F(約43℃)または水中0.1−0.2Mの炭酸アンモニウム、pH7.0から9.0の範囲、同じ温度)。このようにして得られた溶出液を、更に改質することなく凍結乾燥して、乾燥生成物にした。このプロトコールに従って調製された試料は、下記の表1に提示された典型的な含有物を有した。
【0024】
【表1】

【0025】
このように調製された組成物は、ケルダールおよびフォリン・シオカルテユにより測定して、比較的高い窒素含有量を有したことに留意するべきである。留意すべきは、全ての窒素が、ベタイン(トリメチルグリシン)、アミノ酸(大体は、遊離アミノ酸と1つ以上のベタレインに共有結合したアミノ酸との混合物)、遊離アンモニウムイオンとアンモニウムイオンの対、また、アンモニア化化合物(特に、アミン化ベタレイン)の形態で存在したことである。比較的穏やかで急速な単離方法に起因して、そのように単離されたベタレインは比較的大きな画分のカルボキシル化ベタレインを有することも考慮され(例えば、総ベタレインの少なくとも50mol%、より典型的には、少なくとも80mol%、最も典型的には少なくとも90mol%であり、17−ジカルボキシ形態は、総ベタレインの10mol%未満、より典型的には5mol%未満、最も典型的には3mol%未満)、これらの全てまたは少なくとも一部は観察された活性に寄与しうる。
【0026】
なお更に考慮される態様において、ベタレイン含有組成物の多数の代替的な調製物が適切であると考えられ、総ベタレイン濃度が少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、さらにより好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも20重量%であり、典型的にはベタレインと糖の比が少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも1.0、最も好ましくは少なくとも2.0であるものを含むことが理解されるべきである。更に、ベタレイン含有組成物は、相当高濃度で水に容易に、実質的に完全に溶解することが、一般に好ましい(典型的には50−100mg/mlで、少なくとも90%−98%)。なお更には、ベタレイン含有組成物が乾燥調製物であることが一般に好ましいが、ゲルおよび液体調製物も本明細書における使用に適していると考えられることが理解されるべきである。そのような調製物を、更に加工して、特定のpH、粘稠度または非ベタレイン成分の濃度を得ることができる。本発明の主題になお更なる態様において、ベタレイン含有組成物におけるベタレインは、ほぼ天然の組成を有する(すなわち、個々のベタレインが、単離する前の組成物と比較して少なくとも10%過小または過大である。)。
【0027】
したがって、ベタレイン組成物を生成する多数の他の方法も、適切であると考えられ、微粉砕ビート根または根剥皮、根細胞懸濁液培養、ツナサボテンの実、さらには選択された高等菌を含む、多様な材料を出発材料として使用することができる。例えば、比較的低い収量が許容される場合、WO 98/26792は、根パルプからベタレイン抽出物を調製する多様な方法を記載し、一方、US 2003/0036565に記載されているように、凍結乾燥ビートが出発材料として使用され、続いて凍結乾燥ビートは、粉砕され、溶媒抽出され、架橋デキストランクロマトグラフィーに付されて、特定のベタレイン画分を生じる。あるいは、ビート液汁濃縮物を乾燥噴霧して、約0.4重量%のベタレインを含む粉末にすることができる。
【0028】
他の既知の方法において(例えば、米国特許第4,238,518号または英国特許1,559,275に記載されているように)、安定化ベタニジン抽出物は、イオン交換クロマトグラフィーを使用して調製され、一方、Garinらは、ビート根抽出物が非イオン樹脂を使用するクロマトグラフィーに非常に低いpHで付されて濃縮溶出液を生成する方法を、米国特許第4,409,254号に記載している。更なる適切な方法および生成物が米国特許第4,027,042号に記載されており、ここでは、ビート液汁またはビートパルプが酵母発酵、続く処理に付される。
【0029】
あるいは、赤ビート液汁以外の多数の原材料または出発材料も適切であると考えられ、特に考慮される材料には、未加工赤ビート根またはその一部分(例えば、固体、細断またはペーストの形態)、赤ビート加工排水ならびに赤ビート根細胞培養および培養上澄みが含まれることに留意すべきである。なお更に考慮される態様において、適切な出発材料には、天然の(または組み換え的に生成した)顔料としてベタレインを含む植物材料も含まれうる。したがって、ベタレイン含有植物には、ナデシコ目および選択された担子菌類ならびに多様なサボテン(例えば、ヒラウチワサボテンの実および関連する植物)において見出されるものも含まれる。したがって、出発材料の種類に応じて、ベタレインの正確な組成は著しく異なってもよいことが理解されるべきである。加えて、本発明の主題の組成物は、1つ以上の個別に単離されたまたは合成されたベタレインを、単独または補充成分として含むこともできることが理解されるべきである。しかし、調製物におけるベタレインは、天然またはほぼ天然(すなわち、それぞれのベタレインの差が天然組成と比較して10%未満)の相対的割合を有するベタレインの複合混合物であることが、一般に好ましい。
【0030】
本発明の主題の典型的な例において、ベタレイン含有調製物は、少なくとも4.0重量%、より典型的には少なくとも10.0重量%、さらにより典型的には少なくとも15.0重量%、最も典型的には少なくとも20.0重量%の総ベタレイン濃度を有する。本発明の主題のベタレイン調製物の化学組成物は、複数の化学的に異なるベタレインを含む複合組成物であることに留意すべきである。したがって、複合調製物は、ベタキサンチンおよびベタシアニンの両方を含む。最も好ましくは、本明細書に存在するベタレイン調製物は、ほぼ天然の組成を有する(すなわち、元々赤ビートに存在する単独のベタシアニンまたはベタキサンチンで、天然の組成に対して30%を超えて[より典型的には、15−20%を超えて]濃縮または希釈されているものはない。)。ベタレインおよび複合組成物の分析は、Corkeら(J Chromatogr Sci.2005年10月;43(9):454−60)またはPourratら(Journal of Food Science 53(1)、294−295)により記載されたように実施することができる。したがって、典型的な調製物は、少なくとも10個、より典型的には少なくとも20個、最も典型的には少なくとも25個の化学的に異なるベタレインを含む。したがって、多様な使用において、大部分の市販ベタレイン含有調製物(例えば、液汁、液汁濃縮物、粉末)も適していると考えられるが、これらの調製物の有意に多い全体量が必要となりうる(多くの場合において、糖の食事摂取量が増加する。)ことに留意するべきである。
【0031】
特定の供給源材料および使用される溶媒に応じて、考慮される組成物におけるベタレインと糖の比は、少なくとも0.3、より典型的には少なくとも0.5、さらにより典型的には少なくとも1.0、最も典型的には少なくとも2.0であることに留意するべきである。異なる視点から見ると、最も好ましい調製物は、ベタレインと糖の比の1.0から5.0、さらにより典型的には2.5から4.5を有する。考慮される組成物における残存糖に関して、化学的性質が異なっていることならびに出発材料および処理によって左右されることを認識するべきである。しかし、含まれる最も典型的な残存糖は、単、オリゴおよび/または多糖類、糖アルコールならびにペクチンであることができる。したがって、オリゴおよび/または多糖濃度が低減される場合、酵素または発酵過程を使用して、そのような低減を達成できることを理解するべきである。代替的にまたは追加的に、残留単糖類を、限外濾過、分子ふるいおよび/または酵素変換を含む、当該技術において既知の多様な方法を使用して、除去することができる。
【0032】
1日用量で投与されるビート調製物の量に関して、調製物の量は、1mgから数百グラム(またはそれ以上)であることが、一般に好ましい。しかし、本発明の主題に限定されることなく、調製物は、状態の少なくとも1つの症状を低減するために有効なベタレインの1日量を提供することが求められる量で典型的に投与されることに留意するべきである。典型的には、有効用量は、約1mgから約1000mgの範囲、より典型的には約10mgから約500mgの範囲、最も典型的には約25mgから約250mgの範囲である。
【0033】
本発明の主題の調製物は、多数の方法で配合されうる固体ベタレイン含有調製物であることが、更に考慮される。例えば、適切な製剤には、調製物が一次成分である経口製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、即時混合製剤など)または調製物が食用担体(例えば、バー、スナック、菓子など)に配置されている製剤が含まれる。あるいは、ベタレイン含有調製物は、液体が栄養学的に許容される担体に混合または封入されている液体製剤であることもできる。例えば、適切な液体製剤には、飲用剤、シロップ剤、ゼラチン封入液体抽出剤、油浸剤、軟質ゲル剤、カプセル剤用被覆および液体チンキ剤が含まれうる。更に、特に単一のベタレインが活性成分として使用される場合、ベタレインは、経口または非経口投与用の薬学的に許容される製剤に配合されうることが考慮される。そのような場合において、特に適切な製剤には、経口製剤、局所製剤および注射用製剤が含まれる。
【0034】
加えて、投与に考慮される製剤/組成物は、OAの症状または他の状態の症状を低減することが知られているまたは報告されている第2化合物を含むこともできることを理解するべきである。例えば、特に適切な第2化合物には、グルコサミン、メチルスルホニルメタンおよびコンドロイチン硫酸が含まれ、ここで調製物は、栄養補給剤として提供される。一方、調製物が医薬組成物として提供される場合、第2化合物は、非ステロイド性抗炎症薬、COXインヒビターなどであることができる。したがって、考慮される組成物には、単一のベタレインまたは複数の化学的に異なるベタレインが、OAの症状を低減することが知られているまたは報告されている別の化合物と場合により組み合わされて、経口投与可能な化合物として配合されているものが特に含まれる。例えばそのような組成物は、1つ以上のビタミン、ミネラルもしくは薬草調製物と場合により更に組み合わされた錠剤またはカプセル剤として、またはベタレインで強化された食用生産物として、配合されうる。例えば、そのような生産物は、スナック、バー、キャンディー、飲料などであることができる。
【0035】
したがって、考慮される組成物の投与は、約1−250mg、最も好ましくは10から100mgの1つ以上のベタレインを含有する1日投与量を使用する、好ましくは経口である。活力および敏捷性における改善は、大部分の場合、3日間の連続投与後に観察され、一方、骨関節症および他の状態における改善は、約1週間後に典型的に観察される。大部分の場合において、投与は、典型的には1用量あたり10から250mgの量で、典型的には1日に1回から1日に4回(またはそれ以上)である。したがって、特に好ましい投与量は、約0.01mg/kgから約10mg/kg(最も好ましくは0.1mg/kgから約1mg/kg)体重である。長期投与が一般に好ましいが、投与は少なくとも3日間、より典型的には少なくとも1週間、さらにより典型的には少なくとも1か月、最も典型的には1か月から6か月にわたって延長できることが理解されるべきである。興味深いことに、考慮される組成物の使用停止は、栄養飲料において通常見られる退薬症状とは関連しなかった。
【実施例】
【0036】
実験および実施例
抽出の例示的方法
【0037】
選択肢1:抽出は、乾燥基準で約0.6重量%の総ベタレイン含有量を有する市販のビート液汁(約65ブリックス;SVZ Internationalから得た)により始めた。液汁を濾過して粒子を除去し、濾液を更に改質することなくクロマトグラフィーに使用した。カラムを、疎水的に変性されたシリカ樹脂(VDF Futureceuticals;Momence、IL60954からResin HSI−564として市販されている。)で充填し、濾過液汁を1−20層容量で装填して、1時間あたり1−50層容量でカラムを通過させた。通過画分を廃棄し、ベタレインを、僅かに塩基性のpHで穏緩衝液を使用して樹脂から溶出した(例えば、水中0.1−0.2Mの酢酸アンモニウム、pH8.2から8.4、温度110°F(約43℃)または水中0.1−0.2Mの炭酸アンモニウム、pH7.0から9.0の範囲、同じ温度)。このようにして得られた溶出液を、更に改質することなく凍結乾燥して、乾燥生成物にした。生成物の定量分析は、約15重量%の総ベタレイン含有量と6重量%の総糖および約8重量%の残留含水量を明らかにした。次に乾燥生成物を、回転羽根粉砕器を使用して粉砕して、粉末生成物を形成し、粉末生成物は60メッシュのふるいを通過した。90%を超える、より典型的には95%を超える自由流動乾燥生成物は、0.1mg/mlから15mg/mlの濃度、より典型的には10mg/mlから50mg/mlの濃度、より典型的には50mg/mlから100mg/mlの濃度(幾つかの場合にではより多く、例えば、100mg/mlから200ml/ml)で2分未満以内に溶解した。さらにより際立っていることは、生成物は、75°F(約24℃)および50%の相対湿度で少なくとも2週間の保存において、組成、自由流動性または他のパラメーターに観察可能な変化が何もなく、大型粒子に凝集または集塊することなく安定していた。事実、特定の条件下での2週間(それ以上)の保存の後、実質的に同じ量(>90%)の乾燥粉末が、同じメッシュ径のメッシュふるいを通過した。
【0038】
選択肢2:抽出は、乾燥基準で約0.6重量%の総ベタレイン含有量を有する市販のビート液汁(約65ブリックス;SVZ Internationalから得た)により、上記に記載されたように始めた。液汁を濾過して粒子を除去し、濾液を更に改質することなくクロマトグラフィーに使用した。カラムを、疎水的に変性されたスチレン樹脂(VDF FutureceuticalsからResin HST−226として市販されている。)で充填し、濾過液汁を1−20層容量で装填して、1時間あたり1−50層容量でカラムを通過させた。通過画分を廃棄し、ベタレインを、僅かに塩基性のpHで穏緩衝液を使用して樹脂から溶出した(例えば、水中0.1−0.2Mの酢酸アンモニウム、pH8.2から8.4、温度110°F(約43℃)または水中0.1−0.2Mの炭酸アンモニウム、pH7.0から9.0の範囲、同じ温度)。上記に記載されているように乾燥することなく、このようにして得られた溶出液を、担体としての水溶性多糖と(例えば、約30重量%のマルトデキストリン最終濃度に)混合し、噴霧乾燥して、約10重量%のベタレインと45重量%の総糖含有量、約5重量%の残留含水量を有する乾燥生成物にした。噴霧乾燥生成物の平均粒径は、(60メッシュふるいを通過した)約150ミクロンであった。90%を超える、より典型的には95%を超える自由流動乾燥生成物は、0.1mg/mlから15mg/mlの濃度、より典型的には10mg/mlから50mg/mlの濃度、より典型的には50mg/mlから100mg/mlの濃度(幾つかの場合にではより多く、例えば、100mg/mlから200ml/ml)で2分未満以内に溶解した。上記と同様に、生成物は、75°F(約24℃)および50%の相対湿度で少なくとも2週間の保存において、組成、自由流動性または他のパラメーターに観察可能な変化が何もなく、大型粒子に凝集または集塊することなく安定していた。ここでも、特定の条件下での2週間(それ以上)の保存の後、実質的に同じ量(>90%)の乾燥粉末が、同じメッシュ径のメッシュふるいを通過した。
【0039】
分析試験
【0040】
ベタレイン豊富赤ビート抽出物(RBE)を、上記の選択肢1および2に記載されている方法に従って調製した。
【0041】
近似分析。RBEの含水量を、USPの乾燥減量(LOD)法に従って決定した。試料を真空オーブンにより70℃で7時間加熱した。総タンパク質含有量を、ブラッドフォード法に基づいて決定した。利用可能な炭水化物を、粗タンパク質、粗脂質、灰および水分の合計を100%のDMから差し引くことにより計算した。灰分を、電気炉AOAC923.03(AOAC、2005)により550℃で試料を発火させることにより決定した。
【0042】
無機質分析。1.2gの試料試験部分を、500℃±50℃で8時間乾燥灰化し、HNOで処理した。得られた灰を濃塩酸(5%)で処理し、乾燥し、塩酸溶液に再溶解した(16)。各元素(Al、Ba、B、Ca、Cu、Fe、K、Mg、Mn、Na、Zn)の量を、誘導結合プラズマ原子分光分析(ICAP−61 E−Trace、Thermo Jarrell−Ash)を使用して、標準溶液からの各元素の発光に対して未知の試料の発光を比較することよって決定した。使用した標準溶液は、全て、Inorganic Ventures(Christiansburg、VA−USA)から得て、分析試薬等級であった。
【0043】
糖分析。糖(スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトースおよびガラクトース)を、時々かき回しながら24時間放置して、80%エタノールにより、正確に計量した試料から抽出した。アリコートを不活性ガスにより乾燥し、フェニル−β−D−グルコシドを内部標準として含有するピリジン中ヒドロキシルアミン塩酸塩の溶液で再構成した。得られたオキシムを、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)およびトリフルオロ酢酸(TFA)処理によりシリル誘導体に変換し、続いて、水素炎イオン化検出器を使用するガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0044】
総食物繊維分析。総食物繊維(TDF)の決定は、以下の方法に基づいた。複製試料を、熱安定性α−アミラーゼと共に約100℃で煮沸して、ゲル化を生じ、次に、リン酸緩衝液中の酵素により消化させて、デンプンおよび一部のタンパク質を分解した。エタノールを各試料に加えて、あらゆる可溶性繊維を沈殿させた。試料を濾過し、残渣をエタノールおよびアセトンですすいで、デンプンおよびタンパク質分解産物ならびに水分を除去した。タンパク質含有量を、複製の一方において決定し、灰分を他方において決定した。試料中の総食物繊維を、タンパク質および灰値を調整した後に計算した。
【0045】
アミノ酸分析。RBEの試料を塩酸(HCl)で加水分解し、トリプトファンを除く全てのアミノ酸をpH2.2に調整した。トリプトファン試料を、水酸化ナトリウムで加水分解し、pH5.2に調整した。個別のアミノ酸を、自動アミノ酸分析器を使用して比較することによって決定した。
【0046】
脂肪酸プロフィール分析。脂肪および脂肪酸を、(23)に基づいた加水分解法によりRBE試料から抽出した。焦性没食子酸を加えて、分析の間の脂肪酸の酸化分解を最小限にした。トリグリセリド、トリウンデカノイン(C11:0)を内部標準として加えた。脂肪をエーテルの中に抽出し、次にメタノール中のBF3を使用してメチル化し、脂肪酸メチルエステル(FAME)にした。FAMEを、C11:0内部標準に対するキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)により、定量測定した。総脂肪を、トリグリセリド等価物として表される個別の脂肪酸の合計として計算した。飽和および単不飽和脂肪を、それぞれの脂肪酸の合計として計算した。
【0047】
ビタミン分析。RBE試料におけるビタミンCを抽出し、酸化させ、o−フェニレンジアミンと反応させて、蛍光体を生成した。ビタミンC含有量は、既知の標準の蛍光を試料抽出物の蛍光と比較することにより決定した。ベータカロテン分析は、HPLC法により実施した。
【0048】
総ベタレイン定量。ベタレインの定量は、UV−VIS分光光度計Shimadzu 1650 PC(Shimadzu Corporation、Kyoto、Japan)を使用するNilssonの分光光度複数成分法により実施した。顔料濃度(すなわち、ベタシアニンおよびベタキサンチン)の決定は、ベタニンおよびブルガキサンチン−Iそれぞれの観点から計算した。総顔料含有量(ベタレイン)は、ベタシアニン成分およびベタキサンチン成分の合計として表した。顔料含有量の計算は、ベタニンでは吸光率値A1%1120、ブルガキサンチン−Iでは750に基づいていた。
【0049】
ベタレインプロフィール分析。20mgのRBEを、1mlの水と共に、2mlのガラスバイアルにより中性ガス下で10分間振とうした。試料を遠心分離し、上澄みを、精製することなく、LC−DADまたはLC−MSにより直接分析した。UVD340U、Gynkotek HPLCポンプシリーズP580およびサーモスタットを備えたGynkotek HPLCシステム、(Gynkotek Separations、H.I.Ambacht、The Netherlands)をクロマトグラフ分析に使用した。分析カラムは、Luna C−18(2)250×mm I.D.、5μm(Phenomenex、Torrance、CA、USA)であった。以下の勾配系を分析物の分離に使用した:B中3%のAを0分;B中16%のAを17分間への勾配;B中50%のAを30分間への勾配(A アセトニトリル;B 水中2%ギ酸)。注入容量は10μLであり、0.5mL/分の流速を適用した。検出は、それぞれ533、505および480nmのUV−Vis検出器またはDAD(ダイオードアレイ検出)系によりλ=538nmで一般に実施した(27)。カラムをサーモスタットで35℃に調節した。陽イオンエレクトロスプレー質量スペクトルを、HPLC勾配系1に適用されるThermoFinnigan LC Surveyorポンプに連結しているThermoFinnigan LCQ Advantage質量分析計(San Jose、CA、USA)により、エレクトロスプレー電圧4.5kV、毛管250℃およびシースガス:Nで記録した。MSを制御し、総イオンクロマトグラムおよび質量スペクトルを、ThermoFinnigan Xcaliburソフトウエア(San Jose、CA、USA)を使用して記録した。
【0050】
臨床試験の記載および設計
【0051】
この試験は、臨床的有効度試験ではなく開放型臨床発見のために設計された。第1の目標は、RBEが骨関節症状態に関連する疼痛および疲労を改善しうるかを確認することであった。この試験の第2の目標は、最小有効量(MED)を同定することであった。したがって、本発明者は、3つの時点(1、5、10日目)を有する複数固定用量型試験を用いた。1実験群あたり8人の被験者であった。各群を、100mg(群1)、70mg(群2)または35mg(群3)により1日あたり2回治療した。全ての参加者は、食事を食べる30分前にRBEカプセル剤を1つ摂取するように求められた。
【0052】
この試験の被験者は、骨関節症を有すると以前診断され、関節痛、制限された関節柔軟性ならびに慢性疼痛および関節の問題に起因する活力涸渇の感覚などのOAの症状特性を報告している人々の群から無作為に選択された。本発明者は、症状を定量化する手段として、1、5および10日目にマッギール疼痛スコア系および活力スコア系質問表を使用した。
【0053】
被験者の募集、治療、1、5および10日目の血液採取、マッギールおよび活力スコア試験、ならびに血液化学は、Nutra Clinical、Inc.(San Diego、California、USA)において実施した。収集した血清中のヒトサイトカインおよびケモカインの測定は、Quensys、Inc.により調査業務として提供された。AOPP試験は、市販のキット(Cell Biolabs、Inc、USA)を使用して、FutureCeuticalの研究室における治療の1日後および10日後に被験者から収集した血清により実施した。
【0054】
接触皮膚炎、湿疹、ざ瘡および副鼻腔炎における、OAに使用されることが考慮される化合物による志願者の治療は、100mgの上記組成物の1日2回の投与により実施され、自覚的評価を下記に示す。
【0055】
結果
【0056】
RBEの栄養組成。赤ビート(ベータ・ブルガリスL.(Beta vulgaris L.))は、食品として一般的に消費され、FutureCeuticalsのRBEは、この物質から得た特別に加工した抽出物である。下記の表2において、RBEは、他の既知の濃縮技術により製造された4つの異なる赤ビート産物と簡潔に比較される。本発明者の製造方法によって、RBE物質では、糖が涸渇し、総ベタレインが24%まで豊富になっている。RBEについての更なる詳細な基本的な化学情報を表3に表す。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
ベタレイン組成物。RBE試料を、クロマトグラフ分析して、基本的なベタレインプロフィールを得た(表4;λmaxで測定した注入試料あたりのピーク領域。顔料シグナル間の相対比較の方位データ)。化合物のプロフィールは精製過程の際に変化する可能性があるため、いくらかの顔料分解が起こりうる可能性によって、試料を、水による抽出の後、直接分析することにした。極めて豊富な基本的化合物のみを表4に提示した。
【0060】
【表4】

【0061】
ベタニン/イソベタニン1/1’の最高ピーク以外に、ベータ・ブルガリスL.の根から頻繁に検出されているネオベタニン3の突出したピークもクロマトグラムにおいて観察された。ベタシアニン含有試料における過剰量の3の存在は、試料加工の際のベタニン分解の原因であると何回も考えられているが、この試験では、前濃縮係数がベタニン/イソベタニンと同様であり(データ示されず)、3の存在は、ベタニンの脱水素化よりもむしろその豊富化によりもたらされたことを示唆している。この効果は調査中である。興味深いことに、ベタニン/イソベタニン1/1’の両方のジアステレオマーの濃度は同様であり、抽出濃縮の全過程におけるエピマー化の可能性を示している。主要な顔料1/1’は、分光光度的に測定した総ベタレイン含有量(24.6%)の主な原因である。
【0062】
クロマトグラムおよび質量イオン追跡の更なる調査は、既知の17−デカルボキシル化ベタニン2/2’が濃縮抽出物に低レベルで存在することを明らかにした。出発材料との比較において、これらの豊富化係数は、ベタニンの場合よりもはるかに高く(データ示されず)、このことは、明らかにベタニン分解過程によってもたらされた可能性がある。2/2’の存在は、ベタニン溶液の加熱の際の脱カルボキシル化の原因であると頻繁に考えられているが(27、31−33)、室温での分解を排除することはできない。
【0063】
【化1】

【0064】
マッギール試験を使用して測定した疼痛感覚に対するRBEの効果。この試験は、ベタレイン豊富食物等級物質RBEが、骨関節症に罹患している人において疼痛性および腫脹性の関節に関連する不快感を低減しうるという、出願者の仮説を確認するために実施された。収集した結果は、全ての被験者が、マッギール質問表を使用して測定すると、用量依存的に疼痛レベルが低減されたと報告したことを示す。詳細なデータを表5に提示する。これらのデータから、RBEによる治療は、マッギールの感覚部門において有意な改善もたらしたことがはっきりと分かる。
【0065】
【表5】

【0066】
より少ない改善が感情の局面において観察され、質問表の評価部門では、効果が何も観察されなかった。この傾向から、70mgのRBEによる治療は、感覚部門で評価して疼痛に41%の低減をもたらしたが、この実験群についてのマッギール質問表の総スコアは、10日後に33%の低減を生じた。70mgのRBEによる5日間の治療は、疼痛の33%低減(総マッギールスコア)を既にもたらしていることに留意することも、興味深い。RBEによる治療は、(NSAIDSのような鎮痛剤と同様の急性の効果ではないが)中程度の急速な効果をもたらすことができる。試験参加者の出口面接は、疼痛における最初の自覚的改善は、治療の3日後に認知されたことを明らかにした。この観察は、3日目の時点を任意の将来のRBE臨床効能試験プロトコールに含めて、OA疼痛関連状態の改善に対する急速な活性および効果を追跡するべきであることを強く示唆している。
【0067】
血液化学分析。標準血清生化学的分析を、1日目および10日目に収集した各血清により実施した。異常な変化は、あらゆるパラメーターにおいて注目されなかった。全てのパラメーターは、正常な範囲内であった(データ示されず)。
【0068】
自覚的活力試験。マッギール質問表と平行して、全ての参加者は、体力評価(設問1)、覚醒状態(設問2)、身体持久力評価(設問3)および気分評価(設問4)に関する4つの設問に答えるように求められた。全ての設問に対する評価を1−4の評価に分けた。このアンケート(活力スコアとして本明細書に記載されている。)は、1、5および10日目に実施した。最高数は、感覚評価の一般的な上昇レベルを示した。
【0069】
この質問表の全ての詳細なデータを表6に表す。これらのデータは、全ての参加者が、RBEによる治療後、覚醒状態、体力、持久力および気分の用量依存的な増加の感覚を報告したことを示す。70mgの治療は、1日目に122%の改善をもたらし(表6)、一方、用量100mgのRBEによる治療は、81%の改善をもたらし、70mgのより低い用量による治療が最適であることを示した。したがって、マッギールデータを分析したときに留意するべきであるように、70mgの用量は、表6に提示されたパラメーターの改善に最も強力であると思われる。また、最低用量の35mgも、治療の10日後に、74%までの有意な活力スコアの増加をなおもたらした。比較すると、同じ用量のマッギールデータでは、僅か11%の改善しかもたらさなかった。これは、RBEの主な効果が、35mgの低い用量が活力スコアに74%までの改善をもたらすので、活力、気分、持久力および認識力の感覚を調節することであることを示しうる。これらの結果は、活力スコアがマッギール疼痛スコアを補足する追加的な自覚的パラメーターとしてのみ追跡されたので、多少予想外であった。
【0070】
【表6】

【0071】
活力およびマッギールスコアにより収集されたデータは、RBEが、OAに関連する状態に軽減を実際にもたらしうることを示す。この文書の始めの記述された作業仮説によると、ベタレインは、活性化好中球から放出された次亜塩素酸によるタンパク質の塩素化に対する阻害効果に起因して、OA状態を改善することができる。この仮説は、1)ベタレインは、活性化好中球から生じる次亜塩素酸の量を低減することができる;ならびに2)塩素化タンパク質は、骨関節症および関連する状態の発症に寄与しうる、という2つの理論的根拠に基づいている。
【0072】
この仮説を調べ始める前に、Advanced Oxidation Protein Products(AOPP)の血清レベルを、市販のキット(Cell Biolabs、Inc.、#STA318)を使用して測定した。このアッセイは、クロラミンまたは次亜塩素酸により修飾された血清タンパク質を測定する。詳細な収集データを表7にまとめる。データは、各実験群において1日目にAOPPのベースラインで有意に広い範囲(最大および最小)を示す。興味深いことに、この範囲は、治療の10日後に各群において有意に低減された。得られた合計データは、群1、2および3のそれぞれにおいて36.3、47.6および30.9%の低減を示す。しかし、1日目のAOPP値の広い範囲に起因して、標準は比較的高い。したがって、これらの結果は、指示的なものおよび血清AOPPレベルの上昇したOA被験者に対する更なる臨床調査を正当化するものとしてのみ本明細書において表される。
【0073】
【表7】

【0074】
AOPPは、炎症促進性因子としておよび単球からのTNFアルファの放出のインデューサーとして知られている。 したがって、RBEによる治療が血中TNFアルファレベルの低減をもたらしうるかを確認することは、理にかなっていた。ベタレインの可能な作用を更に調査するために、RBEで治療した志願者の血清を、Qynsys Inc.により提供されたサイトカインおよびケモカインアレイに付した。収集されたデータは、治療前には、24人のうち10人の参加者のみが、Elisaアッセイの1pg/mLの検出限界を超えたTNFアルファを有することが見出されたことを示した。しかし、RBEによる治療は、治療の10日後にこれらの10人の被験者にTNFアルファの低減を引き起こした(表8)。同じ血清を、他のサイトカインおよびケモカインのレベルの変化について追加的に試験した。このスクリーニングは、RBEによる治療が、治療の10日後にIL6の血清レベル、GROアルファおよびRANTESレベルを低減したことを示すデータを生じた。(表8)。H
【0075】
【表8】

【0076】
これらのデータは、RBEがTNFアルファ、IL−6、RANTESおよびGROアルファの血中レベルに好ましい効果を有しうることを示す。1pg/mLを超えるTNFアルファの血清レベルを示す1群あたりの比較的限定された数の参加者に起因して、表8のデータは、確定的ではなく指示的なものとして表される。ここでは、RBEの効果は、TNFアルファ血中レベルの>1pg/mLを有する被験者における選択されたサイトカインおよびケモカインの血中レベルに対したものが示される。他の全てのサイトカインおよびケモカインは、pg/mL濃度で表される。列の上側の数字は、1日目に測定されたペプチドのレベルを表し、下側の数字は10日目である。DOD1=1日目に対する10日目のペプチドのレベルの変化であり、変化%で表される。
【0077】
1pg/mL未満のTNFアルファの初期血清レベルを有する被験者も、マッギールスコアの低減および活力の改善を報告したことに留意するべきである。この観察は、RBEが、マッギールおよび活力スコアをOA被験者においてTNFアルファ非依存的に改善しうることを示唆する。選択されたサイトカインおよびケモカインの血中レベルの測定は、TNFアルファ、IL−6、GROアルファおよびRANTESが、治療の10日後に低減する可能性を示した。AOPPの初期血中レベルが、治療の10日間にわたって低減したことも観察され、RBEに存在するベタレインがヒト被験者において次亜塩素酸の有害な影響を低減しうることを確認した。
【0078】
副鼻腔炎、接触皮膚炎およびざ瘡試験を、70mgのベタレイン組成物の1日投与量を使用して、OAについて上記に報告されているようにベタレイン組成物の投与により実施した。全ての被験者は、自覚的な結果を棒目盛で報告し、測定値を取り出して、当該技術に知られているように反応をデジタル化した。
【0079】
副鼻腔炎の治療について、下記の表9は、多様な提示パラメーターによる例示的な結果を示す。
【0080】
【表9】

【0081】
湿疹および接触皮膚の治療について、下記の表10は、多様な提示パラメーターによる例示的な結果を示す。
【0082】
【表10】

【0083】
ざ瘡の治療について、下記の表11は、多様な提示パラメーターによる例示的な結果を示す。
【0084】
【表11】

【0085】
このように、ベタレイン含有組成物を使用した多様な状態の治療についての特定の実施態様および適用が開示されてきた。しかし、これらの既に記載されているものの他にはるかに多くの変更が、本明細書の本発明の概念から逸脱することなく可能であることが当業者には明白であるべきである。したがって、本発明の主題は、添付の請求項の精神以外には限定されるべきではない。更に、明細書および請求項の両方を解釈するに際し、全ての用語は、内容と一致して可能な限り広く解釈されるべきである。特に、用語「含む」および「含んでいる」は、成分、構成成分または工程を非排他的に参照するように解釈されるべきであり、このことは、参照された成分、構成成分または工程が、明確に参照されていない他の成分、構成成分または工程と共に存在しうることまたは利用されうることまたは組み合わされうることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト消費用の生成物中に一定量のベタレインを提供すること(前記量は、生成物が推奨投与量およびスケジュールで摂取される場合に、状態に伴う少なくとも1つの症状を低減するのに有効であり、
状態は、骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および気分障害からなる群より選択される。);ならびに
状態に伴う少なくとも1つの症状を低減するために、生成物を推奨投与量およびスケジュールで経口投与するようにヒトに指示すること
を含む、ヒト消費用の生成物を提供する方法。
【請求項2】
状態が骨関節症である、請求項1の方法。
【請求項3】
状態が、副鼻腔炎、接触皮膚炎またはアレルギー状態である、請求項1の方法。
【請求項4】
状態がざ瘡である、請求項1の方法。
【請求項5】
状態が、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減または気分障害である、請求項1の方法。
【請求項6】
一定量のベタレインが赤ビートから調製される、請求項1の方法。
【請求項7】
一定量のベタレインが、少なくとも2重量%の濃度の総ベタレインを含む固体調製物として生成物に含まれる、請求項1の方法。
【請求項8】
固体調製物が、少なくとも2重量%の総ベタレイン濃度およびベタレインと糖の比が少なくとも0.3で化学的に異なる複数のベタレインを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
固体調製物が、少なくとも10重量%の総ベタレイン濃度の化学的に異なる複数のベタレインを含み、少なくとも1.0のベタレインと糖の比を有する、請求項7の方法。
【請求項10】
投与量およびスケジュールが、組成物の総1日摂取量が10mgから50mgの総ベタレインを提供するように選択される、請求項1の方法。
【請求項11】
生成物が、栄養補給剤として配合され、ならびに補給剤が、1000mg未満の補給剤の1日用量において10から250mgの総ベタレインを提供するように配合される、請求項1の方法。
【請求項12】
骨関節症に伴う少なくとも1つの症状を低減するのに有効な投与量およびスケジュールでベタレインを、治療を必要とするヒトに投与する工程を含む、骨関節症を治療する方法。
【請求項13】
投与量およびスケジュールが、ベタレインの総1日摂取量が10mgから50mgであるように選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
ベタレインが、植物材料から単離された組成物に存在し、ならびに組成物が、少なくとも1.0のベタレインと糖の比を有する、請求項13の方法。
【請求項15】
栄養補助刺激剤が推奨投与量およびスケジュールで摂取される場合、覚醒状態、体力、身体持久力および気分の少なくとも1つを増加するのに有効な量でベタレインを栄養補助刺激剤に提供すること;ならびに
覚醒状態、体力、身体持久力および気分の少なくとも1つを増加するために、推奨投与量およびスケジュールで刺激剤を経口投与するようにヒトに指示すること
を含む、栄養補助刺激剤を提供する方法。
【請求項16】
投与量およびスケジュールが、刺激剤の総1日摂取量が10mgから50mgのベタレインを提供するように選択される、請求項15の方法。
【請求項17】
ベタレインが、植物材料から単離された、少なくとも1.0のベタレインと糖の比を有する組成物における刺激剤に添加される、請求項16の方法。
【請求項18】
骨関節症、副鼻腔炎、接触皮膚炎、ざ瘡、アレルギー状態、覚醒状態の低減、体力の低減、身体持久力の低減および気分障害からなる群より選択される状態の治療のための経口投与組成物の製造における、ベタレイン含有調製物の使用。
【請求項19】
ベタレイン含有調製物が、少なくとも5重量%のベタレイン濃度を有する乾燥調製物である、請求項18の使用。
【請求項20】
ベタレインが、1投与単位あたり少なくとも15mgの量で調製物に含まれる、請求項18の使用。

【公表番号】特表2011−529906(P2011−529906A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521337(P2011−521337)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/052293
【国際公開番号】WO2010/014839
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(506338504)ブイ・デイ・エフ・フユーチヤーシユーテイカルズ・インコーポレイテツド (3)
【Fターム(参考)】