説明

ベチバーの粉末を含む化粧料

【課題】入浴、洗顔、洗髪、化粧などの日常行為によって、加齢臭をはじめとする体臭の防止や防虫といった多重的な効果を得るベチバーの粉末を含む化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の化粧料は、乾燥したベチバーの根の粉末を含む。この化粧料によって、加齢臭をはじめとする身体の臭いを防止したり、害虫からの被害を防止したりできる。また、ペットの洗浄剤に適用することで、ペットの臭いを防止できる。更にはペットに被害を与える害虫を防止することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来の成分、特にベチバーの粉末を含んで生成される化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、男性や女性を問わず、清潔感、衛生感、爽快感などを目的とした化粧やおしゃれを重視する傾向がある。例えば、男性、女性を問わず、年齢を重ねるに連れ、自身の体臭が気になることも多い。特に男性は、いわゆる加齢臭と呼ばれる臭いを発するようになり、周囲との関係なども含めて、このような臭いを抑えたいという欲求を持っている。
【0003】
また、加齢臭は、男性に顕著であるが、当然ながら女性にも生じるものであり、日本人の高齢化に伴って、男性や女性を問わず、加齢臭をはじめとする体臭を抑えることは大きな欲求となってきている。これは、加齢臭に限らず、汗や体質が原因となる体臭についても同様である。このように、現代人は、自身の体臭(当然に周囲の人の体臭)を何とかしたいという欲求を有している。
【0004】
また、日本の気候は年々亜熱帯化しており、それに伴い夏場は多くの蚊や虫に悩まされることが多くなっている。このような虫に対する防御も求められている。
【0005】
以上のような、防臭や防虫といった欲求に対して、防臭スプレーや防虫スプレーなどの専用の液剤を体や洋服に施すことが一般的には行われる。しかしながら、専用の液剤を体や洋服に噴射することは、化粧を崩すことになったりして、不都合がある。加えて、これらの専用のスプレー容器などを持ち歩く必要があり、携帯することを忘れた場合には、防臭や防虫の効果を得ることはできない。
【0006】
このように、現代人にとっては、加齢臭をはじめとする体臭を防止したり、蚊や虫などの害を防止したりするために、何らかの処置を施したいという欲求がある。しかも、簡便かつ忘れずにこの欲求を解消する対応を行いたい。例えば、洗顔、洗髪、洗浄、化粧などといった、日常に行う通常行為によって、これらの欲求を解消したいと考えている。
【0007】
一方で、洗顔、洗髪、洗浄、化粧などといった日常行為において、化学物質を含む洗浄料や化粧料を使うことに対する抵抗は高い。
【0008】
化学物質を用いず天然素材を用いた化粧料としては、ベチバー、インドサルサ、コウウイガヤなどの植物の溶媒抽出物を含んだ化粧料についての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−207777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、ベチバー、インドサルサ、コウウイガヤなどの植物の溶媒抽出物を含んだ化粧料を開示する。
【0011】
ここで、特許文献1は、これら天然素材の抗酸化作用や肌荒れに着目しているだけで、防臭や防虫といった、化粧料の直接的ではない機能や目的に着目していない。すなわち、化粧料として、外見を良く見せたり、外見を良く見せたりするための肌質改善などのような、いわゆる化粧としての直接的な機能を発揮することを目的としている。
【0012】
このため、化粧料としての直接的な機能を発揮するだけでなく、化粧料を使用することを通じて、防臭や防虫といった多重的な機能を発揮することは、特許文献1の技術では出来ない問題がある。特許文献1の技術は、ベチバーなどの天然素材の防臭や防虫効果を見出せていない問題がある。
【0013】
また、化粧料は、あくまでの人体の外側に施すために用いられ、化粧を行うという作業によって始めて実行される。一方で、男性は化粧をすることは少なく、化粧料の使用によって、体臭を防止したり、虫の害を防止したりすることができない。洗顔や入浴といった日常行為によって、防臭や防虫を実現することが必要となる。もちろん、これは女性であっても同様で、化粧といった特別な作業ではなく、日常行為によって防臭や防虫を実現できることが好ましい。しかしながら、特許文献1の化粧料は、あくまでも化粧という行為に用いられるので、日常行為によって効果を得ることはできない。
【0014】
また、特許文献1の化粧料は、ベチバーやインドサルサなどの溶媒抽出物を含むが、溶媒抽出物は、液体であって、石鹸のような固形物に混合するのは面倒である。液体であることで、混合される側の品質を変えてしまったり、製造工程を複雑にしてしまったりするからである。石鹸などの固形物には、液体の抽出物を混合させるのは、製造工程が複雑になる。
【0015】
すなわち、従来技術では、(1)日常行為である、洗顔、洗浄、洗髪、入浴、などによって、防臭や防虫といった多重的な機能を発揮する、(2)ベチバーをはじめとする天然素材が、防臭や防虫に機能を発揮することを利用する、(3)様々な素材に混合しやすい天然素材によって、この天然素材を含む広い応用範囲の化粧料を提供する、といったことができないという問題があった。
【0016】
本発明は、上記課題を解決し、入浴、洗顔、洗髪、化粧などの日常行為によって、加齢臭をはじめとする体臭の防止や防虫といった多重的な効果を得るベチバーの粉末を含む化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題に鑑み、本発明の化粧料は、乾燥したベチバーの根の粉末を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化粧料は、ベチバーの粉末が有する防臭効果によって、使用者の体臭などを防止できる。特に、ノネナールが原因物質と言われる加齢臭の防止に効果を発揮できる。結果として、使用する中高年層は、外出先においても自分の体臭を気にしなくて済むようになり、生活に対する張りがでる。
【0019】
また、加齢臭などの体臭予防に加えて、ベチバーの粉末が有する防虫効果によって、外出先で蚊に刺される等のリスクも低減できる。例えば熱帯地方などに海外旅行したり海外出張したりする際には、蚊を媒介とする伝染病(マラリアなど)を予防することもでき、健康管理にも役立つ。当然ながら、農作業などにおいても有効である。
【0020】
これらの効果を、特別な意識や特別な作業によって得る必要はなく、入浴、洗顔、洗髪、化粧といった日常において必要となる日常行為によって得ることができるので、使用者にとっての負担が少ないメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるベチバーの根の粉末が有する抗酸化作用を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の形態1におけるPH実験の実験結果の一覧図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の発明に係る化粧料は、乾燥したベチバーの根を粉砕した粉末を含む。
【0023】
この構成により、化粧料は、防臭、防虫効果を、使用者に提供できる。
【0024】
本発明の第2の発明に係る化粧料では、第1の発明に加えて、粉末は、平均として200メッシュ以下であり、更に好ましくは平均として50メッシュ以上80メッシュ以下である。
【0025】
この構成により、ベチバーの粉末が、容易に化粧料に混合される。
【0026】
本発明の第3の発明に係る化粧料では、第1又は第2の発明に加えて、粉末は、所定の臭いを防止する防臭機能を有する。
【0027】
この構成により、化粧料は、通常の化粧料としての効果に加えて、防臭という新しい機能を提供できる。
【0028】
本発明の第4の発明に係る化粧料では、第3の発明に加えて、所定の臭いは、ノネナールを原因物質とする。
【0029】
この構成により、化粧料は、加齢臭を予防できる。
【0030】
本発明の第5の発明に係る化粧料では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、粉末は、害虫忌避機能を有する。
【0031】
この構成により、化粧料は、ペットに群がる害虫などを防止できる。また、農作業などを行う使用者にとって、蚊などの害虫の被害を防止できる。
【0032】
本発明の第6の発明に係る化粧料では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、粉末は、固形石鹸、液体石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、デオドラント化粧剤、肌用クリーム、肌用化粧剤、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤、ペット用洗浄パウダーおよび乳液の少なくとも一つに含まれる。
【0033】
この構成により、化粧料は、様々な用途に利用される。
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
(実施の形態1)
【0036】
(全体概要)
【0037】
実施の形態における化粧料は、乾燥したベチバーの根を粉砕した粉末を含む。
【0038】
ベチバー(学名「Vetiveria Zizaniodes」)は、インド原産のイネ科の多年草であり、乾燥させたその根が実施の形態1の粉末に用いられる。ベチバーは、すすきに似た葉を有し、その葉は、2〜3mの永さに達する。加えて、その根は1〜2mの地下深くに成長し、強い香を有している。この根が水蒸気蒸留して乾燥されることで、実施の形態1における粉末の原料として用いられるようになる。
【0039】
ベチバーの根は、種々の成分を含有しているが、主にベチベロールなどを含んでいる。
【0040】
粉末は、まずベチバーの根を乾燥させることを前提とする。ベチバーの根を乾燥させるには、種々の方法が用いられるが、例えば次のような工程を経ることでもよい。
【0041】
工程1:ベチバーの根を水洗いして、1〜2日間天日乾燥する。
工程2:天日乾燥の後、1週間程度、風通しの良いところで陰干しを行う。
工程3:4〜5気圧の蒸気圧による水蒸気蒸留を行う。所定時間(一例として、12〜30時間)の水蒸気蒸留を行う。この工程3によって、ベチバーの根から余分な香り成分が除去される。
【0042】
工程4:工程3の後で、27℃〜105℃、好ましくは27℃〜60℃の温風でベチバーの根を乾燥させる。乾燥によって、水分を取り除く。
【0043】
このような工程1〜4を経ることで、ベチバーの根が乾燥される。なお、工程3は、ベチバーの根が有する香り成分(ベチバーの根を精製して得られる精油は、この除去される香り成分を多く含む)を除去する工程であるが、ベチバーの根を乾燥させるだけであれば、この工程3を省略しても構わない。また、工程4では、温風を用いているが、ベチバーの根の水分を除去できれば、温風ではなく、自然乾燥を用いても良い。
【0044】
このように、乾燥されたベチバーの根が、粉末の原料となる。
【0045】
乾燥されたベチバーの根は、所定の長さに切断され、切断後に粉砕機にかけられて、所定の粒度に粉砕される。粉砕機は、一般に用いられる粉砕機であり、粉砕機に切断されたベチバーの根が投入されて、粉砕される。粉砕されて生成される粉末が、化粧料に混合されることで、実施の形態1における化粧料が製造される。
【0046】
化粧料は、化粧料に必要となる主原料に、ベチバーの根の粉末を混合させて製造される。ベチバーの根は、上述の通り、乾燥工程を経て粉砕されて粉末にされる。この粉末は、平均して200メッシュ以下であり、更に好ましくは平均して50メッシュ以上80メッシュ以下である。このような微細な粒度を有することで、ベチバーの根の粉末は、化粧料の主原料に適切に混合される。また、粉末は固体であるので、クリームやゲルなどの状態である化粧料の主原料に混合されやすい。粉末ではなく液体であったり、粉末であるが粒度が大きかったりすると、クリームやゲルなどの状態である化粧料の主原料に混合されにくい。実施の形態1における化粧料では、粉末にされたベチバーの根が混合されるので、このような不具合がない。加えて、粉末が平均して200メッシュ以下であることでも、化粧料の主原料に混合されやすい。
【0047】
なお、粉末が、平均して200メッシュ以下であり、更に好ましくは平均して50メッシュ以上80メッシュ以下であるとの点は、目安であって、粉砕機における粉末生成過程で生じるこれらの粒度に入らない粉末を除外する意図ではない。種々の理由によって、200メッシュ以上の粉末が含まれていてもよい。また、粉砕の過程などで含まれうる不可避混合物が、ベチバーの根の粉末に含まれても良いものである。
【0048】
このように、ベチバーの根の粉末が、化粧料の主原料に混合された上で、他の必要な工程を経て、化粧料が製造される。なお、化粧料の製造に必要な工程であって、ベチバーの根の粉末を混合する工程以外の工程は、一般的な化粧料の製造工程であるので、説明を省略する。
【0049】
なお、ベチバーの根の粉末を混合する工程は、化粧料の種類に応じて、適切な順番において使用されれば良い。例えば、主原料を生成する工程で、ベチバーの根の粉末が混合されても良いし、主原料が生成された後において、ベチバーの根の粉末が混合されても良い。
【0050】
このようにして、ベチバーの根の粉末を含む化粧料が製造される。
【0051】
ベチバーの根の粉末は、後述するように、所定の臭いを防止する防臭機能を有しており、加えて、害虫を忌避する害虫忌避機能(防虫機能)を有している。このため、使用者が、ベチバーの根の粉末を含む実施の形態1の化粧料を使用することで、自身の人体から発せられる臭いを低減や防止したり、蚊などの害虫を忌避させたりする効果を得ることができる。特に、実施の形態1における化粧料は、加齢臭の原因物質であるとされるノネナールに働きかけて、ノネナールによる臭いを防止できる。このため、実施の形態1における化粧料は、加齢臭を抑制できる。
【0052】
(化粧料の種類)
【0053】
化粧料は、種々の態様を有する。
(固形石鹸や液体石鹸)
【0054】
例えば、化粧料の一例として、固形石鹸や液体石鹸のような、身体(人間であったり、ペットであったりする)を洗浄するのに用いられる態様がある。
【0055】
固形石鹸や液体石鹸が製造されるいずれかの工程において、ベチバーの根の粉末が混合される。ベチバーの根の粉末は、非常に小さい粒度であるので、固形石鹸や液体石鹸に好適に混合される。加えて、非常に小さい粒度であることで、使用者が固形石鹸や液体石鹸を使用する際にも、不快感や違和感が生じにくい。
【0056】
このような固形石鹸や液体石鹸を、入浴の際や手の洗浄の際に用いることで、使用者は、防臭、防虫(害虫忌避)といった機能や効果を得ることができる(これらの効果については、後で詳述する)。
【0057】
特に、固形石鹸や液体石鹸のような、身体の洗浄に用いる化粧料によって、使用者は、全身に化粧料を用いる。化粧料に含まれるベチバーの根の粉末は、防臭や防虫機能を有しているので、使用者は、全身に渡って防臭や防虫効果を享受できる。特に、固形石鹸や液体石鹸は、一般的に日常的に用いられる。このため、通常の人であれば、これらの固形石鹸や液体石鹸を日常的に使用する機会を多く得る。このため、使用者は期せずして、ベチバーの根の粉末の有する防臭や防虫効果を、日常的に得ることができる。特に、防臭や防虫といった効果は、日常的にかつ繰り返しこれら固形石鹸や液体石鹸によって身体の洗浄を行うことで、より強く得られるので、このような意味でも、日常的に使用されるのが前提である固形石鹸や液体石鹸に、ベチバーの根の粉末が混合されていることは好適である。
【0058】
加えて、液体ではなく固体であって、平均して200メッシュ以下、好ましくは平均して50メッシュ〜80メッシュである粉末であることで、固形石鹸や液体石鹸に混合したとしても、使用感に悪影響はない。このため、使用者は、違和感なくこれらベチバーの根の粉末が含まれた固形石鹸や液体石鹸を繰り返し使用する。この繰り返し使用することで、使用者は、防臭や防虫の効果を得ることができる。
【0059】
特に、近年中高年男性にとって問題となっているノネナールを原因物質とする加齢臭を抑えることができる。全身洗浄に用いる固形石鹸や液体石鹸によって、使用者は身体の全体に、ベチバーの根の粉末の有する防臭効果をいきわたらせることができる。結果として、加齢臭を発することを防止できる。
【0060】
なお、固形石鹸や液体石鹸は、人体用だけでなく、ペット用のものであっても良く、ペット用の固形石鹸や液体石鹸にベチバーの根の粉末が混合されることで、ペットの体臭が抑えられたり、ペットに害虫が寄り付きにくくなったりする効果が得られる。
【0061】
(入浴剤)
【0062】
また、化粧料の一例として、入浴剤の態様を有することもある。
【0063】
入浴剤は、液体、ゲル、粉末などの様々な態様を有するが、これらのいずれの態様の入浴剤であっても、ベチバーの根の粉末が容易に混合される。
【0064】
入浴剤は、使用者が入浴時に浴槽に投入される。この入浴剤が投入された浴槽に使用者が入浴することで、使用者の人体には、入浴剤が所定時間接触することになる。この接触によって、入浴剤が含むベチバーの根の粉末が人体に接触し、使用者の人体から発せられる体臭が抑えられたり、蚊などを寄せ付けなかったりする効果が生じる。特に、入浴は日常的に行われるので、使用者が、これらのベチバーの根の粉末に由来する効果を得ることが容易である。
【0065】
(入浴用化粧剤)
【0066】
また、化粧料の一例として、入浴用化粧剤がある。例えば、入浴中に身体に塗りこむクリームやゲルなどである。これらの入浴用化粧剤にも、ベチバーの根の粉末が混合されている。入浴は日常的に行われる行為であって、使用者は、入浴時にこれらの入浴用化粧剤を用いる。このため、使用者は、日常的に入浴用化粧剤を用いるものである。
【0067】
また、入浴用化粧剤は、クリームやゲルなどの態様を有するが、混合されるベチバーの根の粉末は、200メッシュ以下の小さい粒度を有するので、混合しやすく、使用感にも影響がない。このため、使用者は入浴の際に、入浴用化粧剤を違和感無く使用できる。この日常的な使用によって、使用者は、ベチバーの根の粉末が有する防臭や防虫効果を享受できる。
【0068】
(洗顔化粧剤、洗髪化粧剤)
【0069】
また、化粧料の一例として、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤(洗顔洗浄剤、洗髪洗浄剤も含む)がある。いわゆる、洗顔石鹸、シャンプー、リンス、コンディショナーなどである。洗顔や洗髪は、一般の人にとっては、日常的に行う行為である。洗顔や洗髪の際には、これらに適した洗浄剤や化粧剤が用いられるのが通常である。これらの化粧剤や洗浄剤は、クリーム状であったりゲル上であったりするので、平均して200メッシュ以下である非常に粒度の小さいベチバーの根の粉末は混合されやすい。加えて、ベチバーの根の粉末を含むこれらの化粧剤や洗浄剤は、違和感なく使用される。
【0070】
使用者は洗顔や洗髪を通じて、ベチバーの根の粉末が有する防臭や防虫の効果を得ることができる。特に、加齢臭の原因物質といわれるノネナールは、耳の後ろや首などから多く発せられるといわれている。このため、洗髪や洗顔において、ベチバーの根の粉末を含む化粧剤や洗浄剤を用いると、これらの耳の後ろや首などを洗浄することになりやすく、加齢臭の防止に有効である。
【0071】
また、化粧料の一例として、洗浄パウダーも同様に好適である。洗浄パウダーは、粉状であるので、ベチバーの根の粉末を混合させやすい。洗浄パウダーは、洗顔、洗髪などの様々な用途に用いられるので、これらに合わせて使用することで、防臭や防虫の効果を得ることができる。
【0072】
(デオドラント化粧剤、日焼け止め)
【0073】
また、化粧料の一例として、デオドラント化粧剤や日焼け止めが挙げられる。
【0074】
デオドラント化粧剤は、様々な化学物質や天然物質を配合することで、汗や皮脂を原因とするにおいを防止する。ベチバーの根の粉末を混合したデオドラント化粧剤は、ベチバーの根の粉末によって、更に防臭効果を高めることができる。特に、一般的なデオドラント化粧剤は、汗や皮脂を原因とする臭いを打ち消すようなほかの臭いを用いることで、防臭効果を得ている。
【0075】
これに対して、ベチバーの根の粉末は、ベチバーの根が備える本来的な防臭成分に加えて、ベチバーの根の粉末は、多くの気泡や気孔を有しており、これらが臭いの原因物質を吸着する。この結果、ベチバーの根の粉末は、通常のデオドラント化粧剤が備える防臭能力よりも高い防臭能力を発揮できる。体臭などを気にする人は、デオドラント化粧剤を日常的に使用するので、ベチバーの根の粉末を含むデオドラント化粧剤を使用することによって、使用者は汗や皮脂による臭いに加えて、加齢臭などの臭いも抑制できる。
【0076】
また、近年の紫外線の増加に伴って、日焼け止めが使用されることが多い。この日焼け止めにベチバーの根の粉末が混合されていることで、日焼け止めを塗るだけで、防臭効果や防虫効果を得ることができる。
【0077】
特に、日焼け止めを塗る状況は、戸外に出る場合である。農作業やアウトドアなどで戸外に出かける際には、紫外線の影響を考慮して、日焼け止めが使用されることが多い。農作業やアウトドアの場面では、蚊や虻などの害虫に出会うことが多く、これらを防止したい欲求がある。この場合に、日焼け止めがベチバーの根の粉末を含むことで、使用者は日焼け止めを考慮していながら、期せずして(あるいは期して)ベチバーの根の粉末が有する防虫効果を得ることもできる。蚊などの害虫が忌避されるからである。
【0078】
もちろん、日焼け止めを塗るだけで、ベチバーの根の粉末が有する防臭効果を得ることもできる。このように、デオドラント化粧剤や日焼け止めといった日常に使用する化粧料に、ベチバーの根の粉末が混合されることで、使用者は容易に防臭や防虫効果を享受できる。
【0079】
また、防虫クリームや防虫化粧剤に、化粧料が応用される場合であっても同様である。
【0080】
(肌用クリーム、肌用化粧剤)
【0081】
化粧料は、肌用クリームや肌用化粧剤にも適用される。
【0082】
肌用クリームや肌用化粧剤は、化粧水、乳液、美容液、ファンデーション化粧剤、下地化粧剤、クリームなどの幅広い分野の化粧剤を含む。もちろん、ハンドクリームなども含む。
【0083】
このような肌用クリームや肌用化粧剤は、女性を中心に、幅広く使用される。特に、化粧や保水などのために、日常的に用いられる。例えば、外出前の化粧であったり、入浴後や就寝前の肌の手入れだったりなどの状況で用いられる。
【0084】
肌用クリームや肌用化粧剤は、当然ながら、人体の肌に用いられる。体臭は、肌から発せられるので、肌用クリームや肌用化粧剤といった化粧料を肌に用いることで、体臭を抑制できる。特に、肌用クリームや肌用化粧剤は、日常的に用いられるので、防臭効果を効率よく得ることができる。当然ながら、使用者は防虫効果も得ることができる。
【0085】
(ペット用化粧剤、ペット用洗浄剤)
【0086】
化粧料は、ペット用化粧剤やペット用洗浄剤に適用されてもよい。
【0087】
ペットは、体臭が強く、室内で飼う場合には、不都合が多い。特に、来客にとっては不快であったり、近所に迷惑がかかったりすることも多い。このため、ペットの体臭を防止することが求められる。
【0088】
実施の形態1における化粧料を、ペット用化粧剤やペット用洗浄剤に適用することでペットを洗ったりするだけで、ペットの臭いを防止できる。動物は意外に汗をかくことが多く、体毛も長いため汗を体表面に残してしまうことが多い。このような汗が臭いの元となるが、ベチバーの根の粉末を含むペット用化粧剤やペット用洗浄剤によってペットを洗浄することで、これらの臭いが抑えられる。
【0089】
また、ペットは、蚊をはじめ、ノミやダニなどの害虫の被害にさらされることが多いが、ベチバーの根の粉末は、これらの害虫を忌避する機能を有しているので、ペットの防虫にも高い効果を有する。
【0090】
もちろん、ペットは、室内に不快なにおいを発生させることも多い。ベチバーの根の粉末は、消臭する能力を有するので、このようなペットの臭いを防止できる。このペットの臭いの防止により、ペット用化粧剤やペット用洗浄剤は、住居内でペットを飼う場合にも、住人や来客に不快な思いをさせないで済むようになる。
【0091】
ペット用化粧剤やペット用洗浄剤は、ペット用シャンプーやペット用消臭剤などに適用されればよい。このようなペット用シャンプーやペット用消臭剤で、飼い主がペットを洗浄することで、ベチバーの根の粉末の効果が、ペットに生じる。この効果によって、ペットの臭いが防止される。当然に、ペットに群がりうる蚊などの害虫も防止できる。
【0092】
以上のように、ベチバーの根の粉末を含む化粧料は、様々な用途に適用されて、人体やペットの防臭、防虫効果を発揮する。なお、以上列挙した化粧料の態様は、一例であり、これ等以外の様々な態様に使用されるものである。加えて、列挙した名前は、それぞれの態様を表す代表的な名称であって、名称が異なっても、目的や機能が同様であるものを含む名称である。
【0093】
(ベチバーの根の粉末の効果)
【0094】
次に、化粧料に含まれるベチバーの根の粉末の防臭効果や防虫効果について説明する。
【0095】
(防臭および消臭効果)
【0096】
ベチバーの根は、所定の臭いを防止する防臭効果や消臭効果を有する。一般的に、不快な臭いの原因物質は、アンモニア(アンモニア臭)、トリメチルアミン、酢酸(酢酸臭)、イソ吉草酸などである。これらは例えば、ペットから発せられることがあり、室内の臭いによって、人体にもその臭いが移ってしまうことがある。この結果、ペットや人体がこれらの臭いを発することがありうる。実施の形態1の化粧料に含まれるベチバーの根の粉末は、これらのアンモニア(アンモニア臭)、トリメチルアミン、酢酸(酢酸臭)、イソ吉草酸を原因物質とする臭いを防止する効果を有する。
【0097】
この防臭および消臭効果は、ベチバーの根の粉末が有する、天然由来の成分の働き、ベチバーの根の粉末が有する多くの気泡や細孔によってもたらされるものと考えられる。多くの気泡や細孔は、臭いの原因物質を吸着する能力があり、この吸着によって、臭いの原因物質が人体やその周囲から除去されて、臭いが防止される。
【0098】
これらアンモニア(アンモニア臭)、トリメチルアミン、酢酸(酢酸臭)、イソ吉草酸を原因物質とする臭いの防止について、発明者は実験を行った。実験結果を、表1に示す。
【表1】

【0099】
表1は、縦欄に対象となる原因物質を示している。上から順に、アンモニア(アンモニア臭)、トリメチルアミン、酢酸(酢酸臭)、イソ吉草酸、が並んでいる。横欄は、経過時間に伴う消臭率を示している。横欄においては、順に0分後、2分後、10分後、20分後、40分後、80分後の消臭率がそれぞれ示されている。これらは、原因物質とベチバーの根の粉末とを同一の閉鎖空間に封じた上で、臭いの消臭率を測定したものである。
【0100】
表1から明らかな通り、いずれの原因物質による臭いも、時間の経過と共に消臭されている。特に、アンモニア臭は、40分経過後にはほぼ100%の消臭率となっており、ベチバーの根の粉末によって、アンモニア臭がほとんど消臭されることが分かる。
【0101】
上述の通り、ペットや人体においても、諸般の事情でアンモニア臭が付着してしまうことがある。このようなアンモニア臭が付着してしまう場合であっても、ベチバーの根の粉末を含む化粧料を使用することで(例えば石鹸で洗ったり、肌用クリームを塗布したりすることで)、このような不快なアンモニア臭を消去できる。
【0102】
同様に、トリメチルアミンや酢酸も、40分から80分を経過することで、ほとんどが消臭されている。消臭が難しいイソ吉草酸も、80%以上が消臭されており、不快な臭いが人体やペットに付着した場合でも、ベチバーの根の粉末を含む化粧料を使用することで、これらの臭いを防止できる。
【0103】
また、近年中高年男性を中心に加齢臭が問題となっている。
【0104】
加齢臭は、加齢に合わせて人体から発生するものであり、個人差はあるが、年齢を重ねることで生じてしまいかねない臭いである。この加齢臭では、ノネナールとの成分が原因物質であるといわれている。発明者は、このノネナールに対するベチバーの根の粉末の消臭についても実験を行った。実験方法は、原因物質であるノネナールとベチバーの根の粉末を同一閉鎖空間に封止し、時間経過にあわせた消臭率を測定するものである。
【0105】
測定結果を表2に示す。
【表2】

【0106】
表2は、表1と同じように、横欄に、経過時間を示している。なお、ここで経過時間とは、原因物質とベチバーの根の粉末とを封止した時間からの経過時間であって、測定を開始してからの経過時間である。順に、0分後、2分後、10分後、20分後、40分後、80分後における消臭率を示している。ノネナールは、加齢臭を引き起こすほどの強い臭いの原因物質であるが、表2から明らかな通り、10分が経過したところで、ほとんどの臭いが消失している。更には20分後には、ほぼ100%の消臭状態となっている。
【0107】
このように、ベチバーの根の粉末を含む化粧料を使用することで、中高年男性にとって気になる加齢臭が予防されることになる。加齢臭が予防されることで、中高年男性が、周囲と接しやすくなるメリットもある。
【0108】
例えば、ベチバーの根の粉末を含む石鹸や洗髪化粧剤で身体や頭を洗浄することで、このベチバーの根の粉末の有する加齢臭を消失させる効果を、使用者は得ることができる。使用者の使用負担も少なく、簡便であって便利である。
【0109】
(抗酸化作用)
【0110】
また、発明者は、ベチバーの根の粉末に、抗酸化作用が含まれることも検出した。
【0111】
抗酸化作用は、人体の衰え(肌の衰えや細胞・内臓などの人体そのものにおける衰えなど)を防止する効果を有するといわれている。例えば、加齢に伴って衰える肌質や細胞レベルでの強靭さに、抗酸化作用は作用して、これらの衰えを低減する働きがあるといわれている。抗酸化作用を得ることで、動脈硬化や心臓病などの病気が予防されるといわれている。
【0112】
発明者は、ベチバーの根の粉末を、化粧料に適用する発明をするに当たって、ベチバーの根の粉末が、この抗酸化作用を有するかを実験した。ベチバーの根の粉末の抗酸化作用を測定するために、酸化における阻害率を測定した。測定結果を図1に示す。
【0113】
図1は、本発明の実施の形態1におけるベチバーの根の粉末が有する抗酸化作用を示すグラフである。
【0114】
図1に示されるとおり、ベチバーの根の粉末の濃度が数10%程度になることで、酸化の阻害率が上昇している。図1に示されるように20%以上の阻害率があり、グラフは、かつこの阻害率が上昇する傾向を有することから、ベチバーの根の粉末は、抗酸化作用を有することが分かる。
【0115】
ベチバーの根の粉末が抗酸化作用を有することで、ベチバーの根の粉末を含む化粧料は、抗酸化作用を有する。
【0116】
例えば、石鹸や洗顔化粧剤のような身体を洗浄する化粧料を、使用者が用いる場合には、この洗浄の過程でベチバーの根の粉末の抗酸化作用が身体に働きかける。あるいは、肌用クリームや肌用化粧剤などの化粧料を、肌に使用することで、使用者はベチバーの根の粉末が有する抗酸化作用を得ることができる。
【0117】
このように、ベチバーの根の粉末は抗酸化作用を有しており、ベチバーの根の粉末を含む化粧料を化粧品や洗浄剤としての目的で使用するだけで、抗酸化作用というプラスの効果をも享受できる。これは、ペットに使用する場合でも同じである。
【0118】
(肌へのなじみ)
【0119】
人間の身体には、弱酸性の化粧料が適しているといわれている。これは、人の肌の特性に依存するものである。
【0120】
このため、ベチバーの根の粉末を含む化粧料も、弱酸性であることが好ましい。弱酸性を有していれば、ベチバーの根の粉末を含む化粧料が、肌用クリームや肌用化粧剤をはじめとして、石鹸や入浴剤に用いられることは、適切であるからである。発明者は、ベチバーの根の粉末のPH(ペーハー)実験を行った。図2は、本発明の実施の形態1におけるPH実験の実験結果の一覧図である。
【0121】
実験では、34.4℃の水と18.0℃の水のそれぞれに、ベチバーの根の粉末を混合させる前と混合させた後でのPH値を測定した。図2は、このPH値の測定結果を示している。
【0122】
図2より明らかな通り、冷たい水である18.0℃の場合もぬるま湯である33.4℃の水の場合にも、ベチバーの根の粉末を混ぜることで、PH値が値「6」程度になっている。この値は、弱酸性を示すので、ベチバーの根の粉末を混合することで、液体は弱酸性を示すことがわかる。
【0123】
水にベチバーの根の粉末を混合することで、弱酸性になるということは、ベチバーの根の粉末を含む化粧料も、弱酸性を示すということである。弱酸性であることで、化粧料は、肌に優しい効果を生む。
【0124】
(防虫効果)
【0125】
ベチバーの根の粉末は、防虫効果を有する。
【0126】
特に、ベチバーの根の粉末を含む化粧料が、ペット用洗浄剤などペットに用いられる場合には、防虫効果は好適である。
【0127】
発明者は、ゴキブリおよびダニの忌避効果を実験した。ゴキブリの忌避効果は、20匹のゴキブリを、ベチバーの根の粉末を配置した区間とそうではない区間とに投入し、ゴキブリがこのベチバーの根の粉末を配置した区間を忌避するかを実験した。実験結果としては、忌避率は100%であった。
【0128】
同様に、シャーレの中に、ベチバーの根の粉末とダニの餌を配置し、ダニがベチバーの根の粉末をどの程度忌避するかを測定した。測定結果としては、66〜87%の忌避率であった。
【0129】
これらの結果から、ゴキブリやダニを寄せ付けにくい効果が分かり、ベチバーの根の粉末を含むペット用化粧剤やペット用洗浄剤は、ペットの管理に好適である。
【0130】
(主観評価)
【0131】
次に、実際に発明者が製作したベチバーの根の粉末を含む化粧料について、モニターを用いて行った主観評価について説明する。
【0132】
(入浴剤での主観評価)
【0133】
まず、ベチバーの根の粉末を含む入浴剤を用いた主観評価を行った。ベチバーの根の粉末は、非常に細かな粒度を有しているので、パウダー状の入浴剤でも液体状の入浴剤であっても、満遍なくなじんで混合される。このため、入浴剤にベチバーの根の粉末を混合させて、ベチバーの根の粉末の効能を入浴時に得ることは容易である。モニター評価では、入浴剤そのもの(ベチバーの根の粉末を含まない入浴剤)の効能による主観評価の精度低下を防止するために、ベチバーの根の粉末だけを浴槽に投入することを行った。
【0134】
モニターの手順は、次の通りである。
【0135】
(1)女性30名が、水道水だけのお湯(約200L)を張った浴槽に1週間入浴する(比較例)。
【0136】
(2)(1)の1週間のあとで、同じ女性30名が、2gのベチバーの根の粉末を水道水のお湯(約200L)に混ぜた浴槽に入浴する(実施例)。
【0137】
30名の女性に「入浴で得られた印象」についてそれぞれアンケートに答えてもらった。
【0138】
入浴で得られた印象については、次の通りの点数配分を行った。
実施例の方がかなり良い :+2点
実施例の方がやや良い :+1点
差がない :0点
実施例の方は余りよくない :−1点
実施例はよくない :−2点
【0139】
これらの点数配分に基づいて、30名のモニターには、次の5項目について点数を付けてもらった。
【0140】
1 体臭の低減
2 肌荒れの改善
3 湯あたり感
4 肌の張り具合
5 使用感
【0141】
以上の、モニター評価の結果を、表3に示す。上記の点数配分とモニターの人数との関係から、最高点は、値「+60」であり、最低点は値「−60」である。
【表3】

【0142】
表3に示されるとおり、「体臭の低減」については、値「+40」点と、非常に高得点である。表1、表2に示すように、ノネナールをはじめとする体臭の原因物質に対して、ベチバーの根の粉末が効果を有することが、主観評価でも裏付けられたものと思われる。
【0143】
また、「肌荒れの改善」については、値「+25」点とこちらも十分な点数で評価された。ベチバーの根の粉末の主たる効果は、防臭、防虫、芳香であると考えられるが、肌荒れにも効果的であることが分かり、入浴剤は言うに及ばず、肌用クリーム、肌用化粧剤、石鹸、洗髪洗浄剤などに、ベチバーの根の粉末を適用することは効果的であることが分かる。すなわち、ベチバーの根の粉末を含む化粧料は、身体や肌質改善に用いられる種々の態様に適用されることが適切であることが分かる。
【0144】
また、「湯あたり感」については、値「+33」点であり、こちらも非常に高評価である。消費者が入浴剤を用いる際の基準として、湯あたり感を得られることが重要であるが、このモニター評価の結果からも、ベチバーの根の粉末を含む入浴剤が、防臭、防虫といった、通常の入浴剤では得られない効果を発揮しつつも、消費者に受け入れられやすい製品となることが分かる。
【0145】
「肌の張り具合」については、値「+20」点であり、肌荒れの改善と同様に、ベチバーの根の粉末を含む入浴剤を用いることで、肌質改善に効果があることが分かる。なお、このモニター評価では、ベチバーの根の粉末だけを浴槽に投入しており、市販の入浴剤にベチバーの根の粉末を混合させる場合には、肌の張り具合や肌荒れの改善効果は更に高まるものと考えられる。加えて、市販の入浴剤では得られない、防臭(特に加齢臭)、防虫、芳香といった効果を得ることができる。
【0146】
また、「使用感」についても、値「+20」点と、十分な評価が得られており、ベチバーの根の粉末を浴槽に投入することでの、使用上での不快感は、ほとんどないことが分かる。粉末であるので、お湯の中にざらざら感が残っている場合には、使用感は低くなると考えられるが、使用感が高いとの評価結果から、ベチバーの根の粉末は、お湯に溶け込んでいると考えられる。このことは、ベチバーの根の粉末が、化粧料に十分になじむことを示しており、ベチバーの根の粉末を含む化粧料は、人体やペットに用いることに適している。
【0147】
(石鹸での主観評価)
【0148】
次に、ベチバーの根の粉末を含む石鹸について、同様の主観評価を行った。
【0149】
(1)ベチバーの根の粉末を含まない石鹸を、30名の女性に1週間使用してもらう(比較例)。
(2)ベチバーの根の粉末を含む石鹸を、(1)と同じ30名の女性に1週間使用してもらう(実施例)。
【0150】
この使用において、効果の差を、次の点数配分で、30名の女性に評価してもらった。
実施例の方がかなり良い :+2点
実施例の方がやや良い :+1点
差がない :0点
実施例の方は余りよくない :−1点
実施例はよくない :−2点
【0151】
この点数配分に従って、「体臭の低減」、「肌荒れの改善」、「全体的な使用感」の3つについて、30名の女性が、主観評価を行った。評価結果を、表4に示す。
【表4】

【0152】
表4から明らかな通り、「体臭の低減」については、「+35点」と高評価である。入浴剤に限らず、石鹸のように短時間だけ肌に触れるものであっても、身体の臭いを防止する効果があることが分かる。近年問題となっている加齢臭は、ベチバーの根の粉末を含む石鹸で、手や顔を洗浄するだけでも、防止できる。
【0153】
「肌荒れの改善」および「全体的な使用感」も、それぞれ高評価であった。
【0154】
この結果より、ベチバーの根の粉末を含む石鹸を使用することで、従来の石鹸を使用することに比較して違和感が無く、使用者は、石鹸としての洗浄効果を得つつも、通常の石鹸では得られない防臭や防虫効果も得ることができる。
【0155】
(デオドラントパウダーでの主観評価)
【0156】
次に、デオドラントパウダーについても、主観評価を行った。
(1)デオドラントパウダーを使わない(比較例)。
(2)1週間にわたってベチバーの根の粉末を脇の下や胴体、首回り、耳の後ろなどに刷り込んでもらう(実施例)。
【0157】
同じように、30名の女性に、(1)の比較例と(2)の実施例とを行っていただき、違いを主観評価してもらった。評価における点数配分は、他の主観評価の場合と同じである。
【0158】
実施例の方がかなり良い :+2点
実施例の方がやや良い :+1点
差がない :0点
実施例の方は余りよくない :−1点
実施例はよくない :−2点
【0159】
この点数配分に従って、「臭いの低減」、「さらさら感」、「使用感」のそれぞれについて、30名の女性に、評点を行ってもらった。評価結果を表5に示す。
【表5】

【0160】
表5より明らかな通り、「臭いの低減」については、値「+45点」と非常に高評価である。デオドラントパウダーの主たる役割は、臭いの低減であるが、ベチバーの根の粉末は、この主たる役割を果たしている。当然ながら、従来のデオドラントパウダーでは不十分である加齢臭やその他の不快臭にも効果的である。
【0161】
加えて、「さらさら感」や「使用感」といった点でも高評価であり、ベチバーの根の粉末をデオドラントパウダーに用いることは、使用者にとって不快なものであったり負担であったりしない。
【0162】
ベチバーの根の粉末をそのまま使うだけでも、このような効果が得られるので、ベチバーの根の粉末を、市販のデオドラントパウダーなどに混合させれば、更なる効果を得られるものである。加えて、ベチバーの根の粉末の使用感が良いことから、市販のデオドラントパウダーに混合させたとしても、使用感が悪くなることはない。
【0163】
以上のように、主観評価からも、ベチバーの根の粉末をデオドラントパウダーをはじめとする化粧料に適用することが、効果の面からも使用感の面からも好適であることが分かる。
【0164】
(肌用クリームについての主観評価)
【0165】
次に、ベチバーの根の粉末を、肌用クリームに適用した場合の主観評価について説明する。
【0166】
(1)ベチバーの根の粉末を含まない肌用クリームを、脇の下などに1週間使用する(比較例)。
(2)ベチバーの根の粉末を含む肌用クリームを、脇の下などに1週間使用する(実施例)。
【0167】
これら(1)、(2)を30名の女性に実施してもらい、下記の通りの点数配分によって、主観評価を行ってもらった。
【0168】
実施例の方がかなり良い :+2点
実施例の方がやや良い :+1点
差がない :0点
実施例の方は余りよくない :−1点
実施例はよくない :−2点
【0169】
30名の女性は、この点数配分に従って「体臭の低減」、「肌荒れの改善」、「使用感」の3つについて、主観評価によって評点を行った。評価結果を表6に示す。
【表6】

【0170】
表6より明らかな通り、使用感については若干の低さがあるものの、体臭の低減や肌荒れの改善に高い評価が見られる。
【0171】
体臭の低減は、ベチバーの根の粉末が有する特有の効果であるが、肌用クリームに必要とされる肌荒れの改善にも高い効果を示していることから、肌用クリームなどの肌用化粧剤に、ベチバーの根の粉末を混合させることは、非常に好適であることが分かる。
【0172】
また、図1、図2を用いて説明したように、ベチバーの根の粉末は抗酸化作用を有しているので、肌用クリームには、これらの効果もある。
以上のように、実施の形態1におけるベチバーの根の粉末を含む化粧料は、防臭、防虫効果を有しており、様々な効果を得ることができる。
【0173】
また、ベチバーの根の粉末を含む化粧料は、抗菌作用を有し、この抗菌作用に基づく防臭効果を有する。発明者は、JIS L1902:2002の試験方法に基づいて、ベチバーの根の粉末の抗菌効果を測定した。この測定の際には、大腸菌に対する実験と、ブドウ球菌に対する実験とを行った。なお、社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)においては、未加工品に対する抗菌加工品の静菌活性値が2.2以上の試料を抗菌防臭効果ありとされる。
大腸菌に関する結果を表7に、ブドウ球菌に関する結果を表8に示す。表7、表8のそれぞれからわかる通り、ベチバーの根の粉末は、それぞれの菌に対して抗菌効果を有している。すなわち、防臭効果も有することが分かる。
【表7】

【表8】

(実施の形態2)
【0174】
実施の形態2は、ベチバーの根の粉末を含む化粧料の製造方法を説明する。
まず、ベチバーの根の粉末を製造し、その後、このベチバーの根の粉末が化粧料に混合される。これらの工程によって、ベチバーの根の粉末を含む化粧料が製造される。
【0175】
工程1:ベチバーの根を水洗いして、1〜2日間天日乾燥する。
【0176】
工程2:天日乾燥の後、1週間程度、風通しの良いところで陰干しを行う。
【0177】
工程3:4〜5気圧の蒸気圧による水蒸気蒸留を行う。所定時間(一例として、12〜30時間)の水蒸気蒸留を行う。この工程3によって、ベチバーの根から余分な香り成分が除去される。
【0178】
工程4:工程3の後で、27℃〜105℃、好ましくは27℃〜60℃の温風でベチバーの根を乾燥させる。乾燥によって、水分を取り除く。
【0179】
このような工程1〜4を経ることで、ベチバーの根が乾燥される。なお、工程3は、ベチバーの根が有する香り成分(ベチバーの根を精製して得られる精油は、この除去される香り成分を多く含む)を除去する工程であるが、ベチバーの根を乾燥させるだけであれば、この工程3を省略しても構わない。また、工程4では、温風を用いているが、ベチバーの根の水分を除去できれば、温風ではなく、自然乾燥を用いても良い。
【0180】
工程5:乾燥されたベチバーの根は、所定の長さに切断され、切断後に粉砕機にかけられて、所定の粒度に粉砕される。粉砕機は、一般に用いられる粉砕機であり、粉砕機に切断されたベチバーの根が投入されて、粉砕される。粉砕されるベチバーの根の粉末は、平均して200メッシュ以下であり、好ましくは、平均して50〜80メッシュ以下である。
【0181】
工程6:化粧料の主原料に、工程1〜5で製造されたベチバーの根の粉末が混合される。なお、ベチバーの根の粉末を混合する工程は、化粧料の種類に応じて、適切な順番において使用されれば良い。例えば、主原料を生成する工程で、ベチバーの根の粉末が混合されても良いし、主原料が生成された後において、ベチバーの根の粉末が混合されても良い。
【0182】
工程7:必要に応じて、製造された化粧料が、種々のパッケージに詰められる。
【0183】
以上の工程1〜7によって、ベチバーの根の粉末を含む化粧料が製造される。
【0184】
以上のように、実施の形態2におけるベチバーの根の粉末を含む化粧料の製造方法によって、実施の形態1で説明したような防臭、防虫といった効果を生じさせる化粧料が製造される。
【0185】
なお、実施の形態1〜2で説明されたベチバーの根の粉末を含む化粧料は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥したベチバーの根を粉砕した粉末を含む化粧料。
【請求項2】
前記粉末は、平均として200メッシュ以下であり、更に好ましくは平均として50メッシュ以上80メッシュ以下である、請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記粉末は、所定の臭いを防止する防臭機能を有する請求項1または2記載の化粧料。
【請求項4】
前記所定の臭いは、ノネナールを原因物質とする請求項3記載の化粧料。
【請求項5】
前記粉末は、害虫忌避機能を有する請求項1から4のいずれか記載の化粧料。
【請求項6】
前記粉末は、固形石鹸、液体石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、デオドラント化粧剤、肌用クリーム、肌用化粧剤、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤、ペット用洗浄パウダーおよび乳液の少なくとも一つに含まれる請求項1から5のいずれか記載の化粧料。
【請求項7】
ベチバーの根を乾燥させ、
乾燥された前記ベチバーの根を粉砕して粉末にし、
前記粉末を、固形石鹸、液体石鹸、入浴剤、入浴用化粧剤、洗顔化粧剤、洗髪化粧剤、洗浄パウダー、デオドラント化粧剤、肌用クリーム、肌用化粧剤、防虫クリーム、防虫化粧剤、ペット用化粧剤、ペット用洗浄パウダーおよび乳液の少なくとも一つに混合する、化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記ベチバーの根を乾燥した後に、前記ベチバーの根を所定の長さに切断する、請求項7記載の化粧料の製造方法。
【請求項9】
前記ベチバーの根は、105℃以下の環境下で行われる請求項7または8記載の化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記ベチバーの根を切断した後で、更に追加的に乾燥させる請求項7から9のいずれか記載の化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236174(P2011−236174A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110844(P2010−110844)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(508278767)株式会社アカル (2)
【出願人】(503156448)株式会社アルサ (2)
【Fターム(参考)】