説明

ベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物

【課題】ベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物の提供。
【解決手段】主に本発明は一種の新規化合物及びその用途に関わり、特に一種のベニクスノキタケ抽出物中より分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(4-hydroxy-2,3-dimethoxy-6-methy-5(3,7,11-trimethyl-dodeca-2,6,10-trienyl)-cyclohex-2-enone)及びその腫瘍細胞生長抑制における応用に係る。本発明中の前記化合物はベニクスノキタケ中において新発見され、乳癌、肝癌、前立腺癌腫瘍細胞の生長抑制に応用可能で、同時に前記腫瘍細胞生長を抑制する医薬組成物の成分とすることができ、或いはさらにその抗酸化活性により心血管疾病の予防に応用可能で、或いは健康飲食品中に添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の新規化合物に関する。特に一種のベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物中から分離し純化した化合物及び腫瘍細胞生長抑制に応用するベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物に係る。
【背景技術】
【0002】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)は台湾では牛樟芝、樟芝、牛樟キノコ、紅樟、紅樟芝、樟菰、樟窟内菰等と呼称され、台湾固有の真菌である。ベニクスノキタケは台湾の海抜450〜2000mに生育する牛樟樹(Cinnamoum kanehirai Hay)の中空の腐敗心材内壁にのみ生長し、樹幹内面より子実体を生長させる。牛樟樹は現在主に桃園、南投等の山地に分布する。台湾でも極めて希少な保護樹でありながら、不法伐採の問題もあるため、牛樟樹中に寄生する野生ベニクスノキタケはさらに希少である。しかもその生長は非常に緩慢で、生長期は六月から十月の間に限られるため、非常に高価である。
【0003】
ベニクスノキタケの子実体は多年生、無柄で、木栓質(スベリン)から木質を呈し、板状、鐘状、馬蹄形、塔状等その外形は様々である。初期は扁平型を呈し木の表面に密着し、後にその前縁がやや捲曲し、板塊状(層紋板状)或いは鐘乳石状を呈する。ベニクスノキタケの頂部表面は褐色から黒褐色を呈し、不明瞭なしわを備え、光沢があり、辺縁は平らで緩やかである。その腹面は緋色或いは局部が黄色で、多くの細孔を備える。
【0004】
この他、ベニクスノキタケは強烈なサッサフラス香があり、乾燥後は退色し土黄白色となり、味は極めて苦く、民間療法では解毒、肝臓の保健薬、抗癌薬として用いられる。ベニクスノキタケは一般の生薬とされるキノコ類同様に、多糖体(polysaccharides,β-グルコースなど)、トリテルペノイド(triterpenoids)、スーパーオキサイドディスムターゼ(superoxide dismutase, SOD)、アデノシン(adenosine)、タンパク質(免疫グロブリンを含む)、ビタミン(ビタミンB、ナイアシン等)、微量元素(カルシウム、リン、ゲルマニウム等)、核酸、凝集素、アミノ酸、ステロール類、リグニン及び血圧安定物質(antodia acid等)等の既知の生理活性成分である多くの複雑な成分を備える。これら生理活性成分は抗腫瘍、免疫能力強化、抗過敏、血小板凝集抑制、抗ウィルス、抗細菌、抗高血圧、血糖値低下、コレステロール低下及び肝臓保護等の機能を備えると考えられている。
【0005】
ベニクスノキタケの多種の成分の内、トリテルペノイドに対する研究が最も進んでいる。トリテルペノイドは三十個の炭元素が六角形或いは五角形に結合した天然化合物の総称である。ベニクスノキタケが具える苦味は、主にトリテルペノイドが成分である。1995年、Cherng氏等はベニクスノキタケ子実体の抽出物中に三種の新しいエルゴスタン(ergostane)を骨格とするトリテルペノイド:antcin A、antcin Bとantcin C(引用文献1)が含まれることを発見した。Chen氏等はエタノールにより樟芝子実体を抽出後、zhankuic acid A、zhankuic acid B 及びzhankuic acid C等三種のトリテルペノイドを発見した(引用文献2)。
【0006】
この他、Chiang氏等は1995年、子実体抽出物中より別の三種のセスキテルペンラクトン(sesquiterpene lactone)と二種のビスフェノール類派生物である新しいトリテルペノイドを発見した。これがすなわち、antrocin, 4,7-ジメトキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジオキソール(4,7-dimethoxy-5-methyl-1,3- benzodioxole)と2,2',5,5'-テラメトキシ-3,4,3',4'-ビ-メチルレネジオキシ-6,6'-ジメチルビフィニール(2,2',5,5'-teramethoxy-3,4,3',4'-bi- methylenedioxy-6,6'- dimethylbiphenyl)(引用文献3)である。
【0007】
1996年になって、Cherng氏等は同様の分析方法により再度四種の新しいトリテルペノイド:antcin E、antcin F、methyl antcinate G、methyl antcinate H(引用文献4)を発見した。またYang氏等は二種のエルゴスタンを骨格とする新化合物zhankuic acid D、zhankuic acid Eと三種のラノスタン(lanostane)を骨格とする新化合物:15α-アセチル-デハイドロサルファレニック酸(15α-acetyl-dehydrosulphurenic acid)、デハイドロエブリコイック酸(dehydroeburicoic acid)とデハイドラサルファレニック酸(dehydrasulphurenic acid)(引用文献5)を発見した。
【0008】
現在では様々な実験により、ベニクスノキタケ抽出物が癌抑制効果を備えることが知られているが(引用文献2参照)、どの種の有効成分が腫瘍細胞抑制効果を達成可能であるかの研究は、現在もなお試験段階にあり、具体的な有効成分は未だ発表されていない。よって該抽出物をさらに純化分析し、その真の癌抑制有効成分を探し出すことは、癌の治療に対して大いなる益がある。
【0009】
[引用文献1] Cherng, I. H., and Chiang, H. C. 1995. Three new triterpenoids from Antrodia cinnamomea. J. Nat. Prod. 58:365-371

[引用文献2] Chen, C. H., and Yang, S. W. 1995. New steroid acids from Antrodia cinnamomea, −a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. J. Nat. Prod. 58:1655-1661

[引用文献3] Chiang, H. C., Wu, D. P., Cherng, I. W., and Ueng, C. H. 1995. A sesquiterpene lactone, phenyl and biphenyl compounds from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 39:613-616

[引用文献4] Cherng, I. H., Wu, D. P., and Chiang, H. C. 1996. Triteroenoids from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 41:263-267
[引用文献5] Yang, S. W., Shen, Y. C., and Chen, C. H. 1996. Steroids and triterpenoids of Antrodia cinnamomea−a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. Phytochemistry. 41:1389-1392

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は下記のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物を提供する。それは主にベニクスノキタケ抽出物中のどの成分が癌抑制効果を備えるかを明確にするため、本発明はベニクスノキタケ抽出物中から式(1)を備える新規化合物を分離純化する。
【化1】

【0011】
内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)である。R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2)m-CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3で、m=1〜12;n=1〜12である。
【0012】
式(1)の化合物中において、以下に示す式(2)の化合物が最適である。
【化2】

【0013】
式(2)の化合物の化学名は4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(4-hydroxy-2,3-dimethoxy-6-methy-5(3,7,11-trimethyl-dodeca-2,6,10-trienyl)-cyclohex-2-enone)で、分子式はC24H38O4で、外観は淡黄色粉末状で、分子量は390である。
【0014】
本発明中式(1)、式(2)の化合物はベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物より分離純化し、有機溶剤はアルコール類(メタノール、エタノール或いはプロパノール等)、エステル類(アセチジン等)、アルケン類(ヘキサン等)或いはハロセン(クロロメタン、エチルクロライド等)を含むが、これらに限定しない。内、アルコール類が最適で、エタノールがより最適である。
【0015】
前記化合物により、本発明はそれを腫瘍細胞の生長抑制に応用し、さらに癌を治療する医薬組成分中に応用し、癌の治療効果を増強する。本発明化合物が応用可能な範囲は乳癌腫瘍細胞、肝癌腫瘍細胞、前立腺癌腫瘍細胞を含み、これら細胞の生長に対して抑制効果を生じ、これにより該各腫瘍細胞は迅速に生長することができず、腫瘍の増殖を抑制し、腫瘍の悪化を抑えるため、乳癌、肝癌と前立腺癌等癌の治療に利用することができる。
【0016】
また、本発明中では式(1)或いは式(2)の化合物を乳癌、肝癌と前立腺癌等を治療する医薬組成物の成分中に利用し、これにより該各腫瘍細胞的生長を抑制する。前記医薬組成物は有効剤量の式(1)或いは式(2)の化合物を含む他に、薬学上受け入れ可能なキャリアを含むことができる。キャリアは賦形剤(水など)、充填剤(蔗糖或いはでんぷん)、接着剤(セルロース派生物など)、希釈剤、崩解剤、吸收促進剤或いは甘味剤であるが、これに限定するものではない。本発明医薬組成物は一般公知の薬学の製作準備方法により製造することができ、式(1)或いは式(2)の有効成分剤量と一種以上のキャリアを相互に混合し、必要な剤型を製作準備する。この剤型は錠剤、粉剤、粒剤、カプセル剤或いはその他液体製剤であるが、これに限定するものではない。
【0017】
この他、本発明中の化合物は同時に抗酸化活性を備えるため、保健食品、飲食品、医薬品、化粧品中に添加することができ、その抗酸化能力により心血管疾病を予防し、或いは細胞の突然変異を防止する等の効用を達成し、これにより人体の健康に有益であることを特徴とするベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、化合物であり、以下の構造式を有し、
【化3】

内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)で、R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2)m-CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3,m=1〜12で、n=1〜12であることを特徴とするベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項2の発明は、前記化合物はベニクスノキタケから分離することを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項3の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中から分離することを特徴とする請求項2記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項4の発明は、前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項3記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項5の発明は、前記アルコール類はエタノールであることを特徴とする請求項4記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項6の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項2記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項7の発明は、前記化合物は4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(4-hydroxy-2,3-dimethoxy-6-methy-5(3,7,11- trimethyl-dodeca-2,6,10-trienyl)-cyclohex-2-enone)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項8の発明は、請求項1或いは請求項7記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項9の発明は、前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項8記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項10の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項9記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項11の発明は、前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項10記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項12の発明は、前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項11記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項13の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項9記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項14の発明は、前記乳癌腫瘍細胞はMCF-7或いはMDA-MB-231細胞系であることを特徴とする請求項8記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項15の発明は、請求項1或いは請求項7記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項16の発明は、前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項15記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項17の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項16記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項18の発明は、前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項17記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項19の発明は、前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項18記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項20の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項16記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項21の発明は、前記肝癌腫瘍細胞はHep 3B或いはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項15記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項22の発明は、請求項1或いは請求項7記載の化合物を前立腺癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項23の発明は、前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項22記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項24の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項23記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項25の発明は、前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項24記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項26の発明は、前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項25記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項27の発明は、前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項23記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項28の発明は、前記前立腺癌腫瘍細胞はLNCaP或いはDU145細胞系であることを特徴とする請求項22記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用としている。
請求項29の発明は、前記化合物は抗酸化活性を備えることを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項30の発明は、有効剤量の請求項1記載の化合物及び薬学上受け入れ可能なキャリアを含み、腫瘍細胞は乳癌、肝癌或いは前立腺癌の腫瘍細胞であることを特徴とする腫瘍細胞の生長抑制に利用する医薬組成物であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
請求項31の発明は、有効剤量の請求項7記載の化合物及び薬学上受け入れ可能なキャリアを含み、腫瘍細胞は乳癌、肝癌或いは前立腺癌の腫瘍細胞であることを特徴とする腫瘍細胞の生長抑制に利用する医薬組成物であることを特徴とする請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物としている。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明中の化合物はベニクスノキタケ中において新発見され、乳癌、肝癌、前立腺癌腫瘍細胞の生長抑制に応用可能で、同時に前記腫瘍細胞生長を抑制する医薬組成物の成分とすることができ、或いはさらにその抗酸化活性により心血管疾病の予防に応用可能で、或いは健康飲食品中に添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
先ず、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)菌糸体、子実体或いは二者の混合物を取り、公知の抽出方式を利用し、水或いは有機溶剤により抽出し、ベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物を取得する。内、有機溶剤はアルコール類(メタノール、エタノール或いはプロパノール等)、エステル類(アセチジン等)、アルケン類(ヘキサン等)或いはハロセン(クロロメタン、エチルクロライド等)を含むが、これらに限定しない。内、アルコール類が最適で、エタノールがより最適である。
【0021】
抽出後のベニクスノキタケ水抽出物或いは有機溶剤抽出物は、さらに高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography、HPLC)により分離純化し、各一分液(fraction)に対して癌抑制効果テストを行う。最後に、癌抑制効果を備える分液に対して成分分析を行い、癌抑制効果を生じる可能性のある成分に対してさらにそれぞれ異なる癌腫瘍細胞の抑制効果テストを行う。こうして最終的に、本発明中の式(1)/式(2)の化合物は異なる癌腫瘍細胞生長を抑制する効果を備え、しかも該化合物は公知の文献と比較対照したところ、ベニクスノキタケ中にはこれまで発見されておらず、新規の化合物であることが発見された。
【0022】
本発明の説明の便のために、以下に式(2)の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン化合物について説明する。この他、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン化合物が腫瘍細胞に対して生じる抑制効果について、本発明中ではMTT分析法により、米国国家癌研究所(National Cancer Institute, NCI)抗腫瘍薬物検査方式に基づき、乳癌、肝癌と前立腺癌を含む腫瘍細胞に対して細胞生存率のテストを行う。該テストにより、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは乳癌腫瘍細胞(MCF-7とMDA-MB-231を含む)、肝癌腫瘍細胞(Hep 3BとHep G2を含む)と前立腺癌腫瘍細胞(LNCaPとDU-145を含む)に対してすべてその生存率を低下させ、同時に成長半抑制率に必要な濃度(すなわち、IC50値)を低下させるることが実証された。そのため、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは乳癌、肝癌、前立腺癌を含む腫瘍細胞の生長抑制上に応用することができ、乳癌、肝癌、前立腺癌等癌の治療に利用することができる。前記実施方式に対して以下に詳細に説明する。
【0023】
実施例1、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンの分離。
【0024】
100グラム前後のベニクスノキタケ菌糸体、子実体或いは二者の混合物を、フラスコ中に入れ、適当な割合の水とアルコール類(70%〜100%アルコール類水溶液)を加え、20〜25℃で少なくとも1時間以上撹拌抽出し、この後、濾紙及び0.45 mフィルターにより濾過し抽出液を集める。
【0025】
前記收集したベニクスノキタケ抽出液を、高速液体クロマトグラフィー (High Performance Liquid chromatography)を利用し、RP18のコラム(column)により分析を行い、メタノール(A)及び0.1%〜0.5%の酢酸水溶液(B)をモバイルフェーズ(mobile phase)とし(その溶液比率は:0〜10分間、B比率は95% 〜20%;10〜20分間、B比率は20%〜10%;20〜35分間、B比率は10%〜10%; 35〜40分間、B比率は10%〜95%)、毎分1mlの速度で溶出し、同時に紫外線-可視光線全波長探知器により分析する。
【0026】
25分間から30分間の溶出液收集濃縮により、淡黄色粉末状の固体産物を得ることができる。これが4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンである。分析により、その分子式はC24H38O4で、分子量は390、熔点(m.p.)は48℃〜52℃であることが分かる。核磁気共鳴(NMR)分析値は以下に示す。1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.51、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.07と5.14。13C-NMR(CDCl3)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、39.71、39.81、4.027、43.34、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、131.32、135.35、135.92、138.05、160.45と197.12。
【0027】
4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンと化学式データベースを比較対照後、前記と相同の化合物構造は発見されなかったため、この化合物は新規で、しかも未発見の化合物であることが分かる。
【0028】
実施例2、体外抗乳癌腫瘍細胞の活性テスト。
【0029】
実施例1中で発見された化合物の腫瘍細胞に対する抑制効果をさらにテストするため、本実施例では米国国家癌研究所(National Cancer Institute, NCI)抗腫瘍薬物検査方式により、先ず実施例1中で分離された4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン化合物を、MCF-7とMDA-MB-231ヒト腫瘍細胞培養液中に加え、腫瘍細胞生存性テストを行う。細胞生存性のテストは公知のMTT分析法により分析可能で、MCF-7とMDA-MB-231は共にヒトの乳癌腫瘍細胞系である。
【0030】
MTT分析法は細胞増殖(cell proliferation)、生存率(percent of viable cells)及び細胞毒性(cytotoxicity)の分析にしばしば用いられる分析方法である。内、MTT(3-[4,5- dimethylthiazol-2-yl]2,5-diphenyltetrazolium bromide)は黄色染色剤で、活細胞に吸收され、粒腺体中のコハク酸塩テトラゾリウム還元酵素(succinate tetrazolium reductase)により還原され不溶水性となり、しかも青紫色のformazanを呈する。よってformazan形成の有無により、細胞の生存率を判断及び計算することができる。
【0031】
先ず、ヒト乳癌細胞MCF-7とMDA-MB-231をそれぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養する。増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせ、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。テスト時には、それぞれ各一孔内に30、10、3、1、0.3、0.1、0.03μg/mlのベニクスノキタケエタノール抽出物(対照組。純化分離を未経過の総抽出物)及び4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後さらに各一孔内に100 μlのlysis bufferを加え、反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、その生長半抑制率の必要な濃度(すなわちIC50値)を推算する。その結果は表1に示す。
【0032】
表1、体外乳癌腫瘍細胞に対するテスト結果。
【表1】

【0033】
表1から分かるように、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンの作用により、MCF-7ヒト乳癌腫瘍細胞のIC50値は0.852 μg/mlとなり、MDA-MB-231ヒト乳癌腫瘍細胞のIC50値は1.031μg/mlとなる。これに対して、ベニクスノキタケ抽出混合物において測定されたIC50値は非常に低い。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に乳癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。
【0034】
実施例3、体外乳癌腫瘍細胞補助治療に対する活性テスト。
【0035】
本テストは同様に米国国家癌研究所的体外検査方式に基づき行う。先ず、ヒト乳癌細胞MCF-7とMDA-MB-231を取り、それぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養した後、増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせる。テスト前に、先に0.0017μg/mlのタキソール(Taxol)を加え細胞を72時間処理し、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。この後、それぞれ各孔内に0μg/ml (対照組)と30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlの実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後、各一孔内に100μlのlysis bufferを加え反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570 nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、その生長半抑制に必要な濃度(すなわちIC50値)を推算する。その結果は表2に示す。
【0036】
表2、体外乳癌腫瘍細胞に対するタキソール補助治療後の抑制のテスト結果。
【表2】

【0037】
表2から分かるように、タキソールとの協同作用を通して、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンによりMCF-7ヒト乳癌腫瘍細胞のIC50値は0.009 μg/mlに低下し、MDA-MB-231ヒト乳癌腫瘍細胞のIC50値は約0.011 μg/ml低下した。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に乳癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。しかもタキソールとの協同作用において、さらに優れた抑制効果があることが実証された。
【0038】
実施例4、体外抗肝癌腫瘍細胞の活性テスト。
【0039】
本テストもまた米国国家癌研究所抗腫瘍薬物検査方式に基づき行う。実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン化合物をHep 3BとHep G2ヒト肝癌腫瘍細胞培養液中に加え培養を行い、これにより腫瘍細胞生存性のテストを行う。
【0040】
先ず、ヒト肝癌細胞Hep 3BとHep G2をそれぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養する。増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせ、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。テスト時、それぞれ各一孔内に30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlのベニクスノキタケエタノール抽出物(対照組、純化分離を未経過の総抽出物)及び30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlの4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5%CO2 で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後さらに各一孔内に100 μlのlysis bufferを加え、反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570 nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、そのIC50値を推算する。その結果は表3に示す。
【0041】
表3、体外肝癌腫瘍細胞抑制に対するテスト結果。
【表3】

【0042】
表3から分かるように、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンの作用により、Hep 3Bヒト肝癌腫瘍細胞のIC50値は0.005 μg/mlに低下し、Hep G2ヒト肝癌腫瘍細胞のIC50値は1.679 μg/mlに低下した。これに対して、ベニクスノキタケ抽出混合物において測定されたIC50値は非常に低い。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に肝癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。
【0043】
実施例5、体外肝癌腫瘍細胞補助治療に対する活性テスト。
【0044】
本テストは同様に米国国家癌研究所的体外検査方式に基づきテストを行う。先ず、ヒト肝癌細胞Hep 3BとHep G2を取り、それぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養後、増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせる。テスト前、先にHep 3B細胞株試験において0.0043 μg/ml のLovastatinを加え、Hep G2細胞株試験において0.0017 μg/mlのタキソール(Taxol)を加え、細胞を72時間処理し、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。その後、それぞれ各孔内に0 μg/ml (対照組)と30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlの実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5% CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後各一孔内に100 μlのlysis bufferを加え反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570 nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、そのIC50値を推算する。その結果は表4に示す。
【0045】
表4、体外肝癌腫瘍細胞のタキソール補助治療経過後の抑制に対するテスト結果。
【表4】

【0046】
表4から分かるように、Lovastatin及びタキソールとの協同作用を通して、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンによりHep 3Bヒト肝癌腫瘍細胞のIC50値は0.002μg/mlに低下し、Hep G2ヒト肝癌腫瘍細胞のIC50値は約0.008μg/mlに低下した。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に肝癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。しかもタキソールとの協同作用において、さらに優れた抑制効果があることが実証された。
【0047】
実施例6、体外抗前立腺癌腫瘍細胞の活性テスト。
【0048】
本テストもまた米国国家癌研究所抗腫瘍薬物検査方式に基づき行う。実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン化合物をLNCaPとDU-145ヒト前立腺癌腫瘍細胞培養液中に加え培養を行う。これにより腫瘍細胞生存性のテストを行う。
【0049】
先ず、ヒト前立腺癌細胞LNCaPとDU-145をそれぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養する。増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10 mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせ、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。テスト時、それぞれ各一孔内に30、10、3、1、0.3 μg/mlのベニクスノキタケエタノール抽出物(対照組、純化分離を未経過の総抽出物)及び30、10、3、1、0.3 μg/mlの実施例1で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5% CO2 で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後さらに各一孔内に100 μlのlysis bufferを加え、反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570 nm 吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、そのIC50値を推算する。その結果は表5に示す。
【0050】
表5、体外前立腺癌腫瘍細胞抑制に対するテスト結果。
【表5】

【0051】
表5から分かるように、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンの作用により、LNCaPヒト前立腺癌腫瘍細胞のIC50値は2.378μg/mlに低下し、DU-145ヒト前立腺癌腫瘍細胞のIC50値は1.812μg/mlに低下した。これに対して、ベニクスノキタケ抽出混合物において測定されたIC50値は非常に低い。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に前立腺癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。
【0052】
実施例7、体外前立腺癌腫瘍細胞補助治療に対する活性テスト。
【0053】
本テストは同様に米国国家癌研究所的体外検査方式に基づきテストを行う。先ず、ヒト前立腺癌細胞LNCaPとDU-145を取り、それぞれウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養後、増殖後の細胞をPBSにより一度洗浄し、2倍のトリプシン酵素-EDTAにより細胞を処理し、続いて1,200 rpmで5分間遠心分離を行い、細胞を沈殿させ上澄み液を廃棄する。この後、10mlの新培養液を加え、軽く揺すり、細胞を再び浮き上がらせる。テスト前、先にLNCaP細胞株試験において0.0017μg/mlのタキソールを加え、DU-145胞株試験において0.0043μg/mlのタキソールを加え、それぞれ細胞を72時間処理し、さらに細胞を96孔マイクロプレート内に分けて入れる。その後、それぞれ各孔内に0μg/ml (対照組)と30、10、3、1、0.3、0.1、0.03μg/mlの実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を加え、37℃、5% CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境下で、各一孔内に2.5mg/mlのMTTを加え、4時間の反応後各一孔内に100μlのlysis bufferを加え反応を終了させる。最後に酵素免疫分析器により、570nm吸光波長においてその吸光値を測定し、細胞の生存率を計算し、そのIC50値を推算する。その結果は表6に示す。
【0054】
表6、体外前立腺癌腫瘍細胞のタキソール補助治療経過後抑制に対するテスト結果。
【表6】

【0055】
表6から分かるように、タキソールとの協同作用を通して、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンによりLNCaPヒト前立腺癌腫瘍細胞のIC50値は0.961 μg/mlに低下し、DU-145ヒト前立腺癌腫瘍細胞のIC50値もまた約0.515 μg/mlに低下した。これに対して、ベニクスノキタケ抽出混合物において測定されたIC50値は非常に低い。よってベニクスノキタケ抽出物中の4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは確実に前立腺癌腫瘍細胞生長の抑制に利用可能であることが実証された。しかもタキソールとの協同作用において、さらに優れた抑制効果があることが実証された。
【0056】
実施例8、体外抗酸化活性の試験。
【0057】
一般抗酸化活性のテストはヒト低密度リポプロテイン(human low density lipoprotein,LDL)に対して、銅イオン(Cu2+)を加え、テストサンプルに対して酸化反応を行い、LDL上ジエンの反応結果を測定し、その後、ビタミンE の水溶性類似物Troloxにより対照し(Trolox濃度が2Mである時、その効力値を標準値1.0とする)、テストサンプルの抗酸化活性を算出する。
【0058】
先ず、二次純水(制御組)を準備し、5 Mmのリン酸ナトリウム緩衝溶液(sodium phosphate buffer,SPB)、1Mと2MのTrolox (対照組)及び40 μg/mlの実施例1中で分離した4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(試験組)を用意する。酵素法を利用し、低密度コレステロール濃度(LDL-C)を測定後、5 mM SPBを利用しLDLを0.10〜0.25 mg/mlまで希釈する。96孔の石英マイクロプレートを用い、その中に先に100lのLDLを加え、さらにそれぞれ前記予定濃度のTrolox及び実施例1中で分離した化合物を加える。その後、さらにそれぞれCuSO4溶液を加え、酸化反応を起こし(各250μl孔中の銅(II)濃度は5.0μM)、最後に該マイクロプレートをELISA reader中に入れ測定を行う。酵素免疫マイクロプレート分析器(ELISA reader)の測定波長を232nmに設定し、温度を37℃に設定し、測定時間を12時間に設定し、サンプル採取間隔時間を15分間に設定する。その結果は表7に示す。
【0059】
表7、体外抗酸化に対するテスト結果。
【表7】

【0060】
表7から分かるように、4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトンは1.30の効力値を備え、それは抗酸化能力の標準値0.5より非常に高く、それが非常に高い抗酸化能力を備えるろ言える。よって保健食品、飲食品、医薬品、化粧品中の成分として使用可能で、その抗酸化能力により心血管疾病を予防し、或いは細胞の突然変異を防止する等効用を達成することができ、人体健康に対して莫大な益をもたらすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であり、以下の構造式を有し、
【化1】

内、Xは酸素(O)或いはイオウ(S)で、Yは酸素(O)或いはイオウ(S)で、R1は水素(H)、メチル(CH3)或いは(CH2)m-CH3で、R2は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3で、R3は水素、メチル或いは(CH2)m-CH3,m=1〜12で、n=1〜12であることを特徴とするベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項2】
前記化合物はベニクスノキタケから分離することを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項3】
前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中から分離することを特徴とする請求項2記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項4】
前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項3記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項5】
前記アルコール類はエタノールであることを特徴とする請求項4記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項6】
前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項2記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項7】
前記化合物は4-ハイドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5(3,7,11-トリメチル-2,6,10-トリエニル)-2-シクロヘキサンケトン(4-hydroxy-2,3-dimethoxy-6-methy-5(3,7,11- trimethyl-dodeca-2,6,10-trienyl)-cyclohex-2-enone)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項8】
請求項1或いは請求項7記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項9】
前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項8記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項10】
前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項9記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項11】
前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項10記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項12】
前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項11記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項13】
前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項9記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項14】
前記乳癌腫瘍細胞はMCF-7或いはMDA-MB-231細胞系であることを特徴とする請求項8記載の化合物を乳癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項15】
請求項1或いは請求項7記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項16】
前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項15記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項17】
前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項16記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項18】
前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項17記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項19】
前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項18記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項20】
前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項16記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項21】
前記肝癌腫瘍細胞はHep 3B或いはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項15記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項22】
請求項1或いは請求項7記載の化合物を前立腺癌腫瘍細胞生長の抑制に応用することを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項23】
前記化合物はベニクスノキタケより分離することを特徴とする請求項22記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項24】
前記化合物はベニクスノキタケの有機溶剤抽出物中より分離することを特徴とする請求項23記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項25】
前記有機溶剤はエステル類、アルコール類、アルケン類或いはハロセンにより組成するグループから選択することを特徴とする請求項24記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項26】
前記有機溶剤はエタノールであることを特徴とする請求項25記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項27】
前記化合物はベニクスノキタケの水抽出物中より分離することを特徴とする請求項23記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項28】
前記前立腺癌腫瘍細胞はLNCaP或いはDU145細胞系であることを特徴とする請求項22記載の化合物を肝癌腫瘍細胞生長の抑制に対する応用。
【請求項29】
前記化合物は抗酸化活性を備えることを特徴とする請求項1或いは請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項30】
有効剤量の請求項1記載の化合物及び薬学上受け入れ可能なキャリアを含み、腫瘍細胞は乳癌、肝癌或いは前立腺癌の腫瘍細胞であることを特徴とする腫瘍細胞の生長抑制に利用する医薬組成物であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。
【請求項31】
有効剤量の請求項7記載の化合物及び薬学上受け入れ可能なキャリアを含み、腫瘍細胞は乳癌、肝癌或いは前立腺癌の腫瘍細胞であることを特徴とする腫瘍細胞の生長抑制に利用する医薬組成物であることを特徴とする請求項7記載のベニクスノキタケのシクロヘキサンケトン抽出物。

【公開番号】特開2008−169194(P2008−169194A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126866(P2007−126866)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(505364913)國鼎生物科技股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】