説明

ベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物

【課題】本発明は、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物中から分離純化した化合物であり腫瘍細胞生長の抑制に応用する新化合物を提案する。
【解決手段】本発明は、新しい化合物及びその用途に関するものであり、特に、ベニクスノキタケ抽出物から分離させたアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)についての発明で、腫瘍細胞生長を効果的に抑制するものである。本発明の前述化合物は、ベニクスノキタケ中から初めて発見されたものであり、乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌の腫瘍細胞生長の抑制に応用可能で、同時に、前述の腫瘍細胞生長を抑制する医薬組成物成分となり得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新化合物に関するものであり、特に、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)抽出物中から分離純化した化合物で、腫瘍細胞生長の抑制に応用するものである。
【背景技術】
【0002】
ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)は、樟芝、牛樟芝、樟芝茸とも呼ばれ、ヒダナシタケ目(Aphyllophorales)、多孔菌科(Polyporaceae)の多年生キノコ菌類、台湾特有の真菌であり、ただ台湾の保護樹木である紅楠(Cinnamoum kanehirai Hay)の空洞部の腐朽した芯材内壁上にのみ生長するものである。紅楠の分布量は極めて少なく、加えて人による盗伐もある故、その中に寄生してこそ生長できる野生のベニクスノキタケの数量は非常に希少である。また、その子実体の生長は非常に緩慢で、生長期は6月から10月の間だけである為、価格は非常に高価である。
【0003】
ベニクスノキタケの子実体は多年生、無柄で、木栓質から木質を呈し、強烈なクスノキの香を放っており、形態は、板状、鐘状、馬蹄状、塔状と変化に富む。生長初めの時は、扁平型で深紅色であるが、その後周囲に放射逆巻状が出現し、並びに、四方に広がって生長、色はまた淡紅褐色または淡黄褐色に変化し、多くの細孔を有し、これはベニクスノキタケの薬用価値の最も豊富な部位である。
【0004】
台湾の民間医学において、ベニクスノキタケは、解毒、腹下し症状軽減、消炎、肝臟関連疾病の治療、抗癌等効用があるとされている。ベニクスノキタケは、一般食用・薬用のキノコ類と同様、多くの複雑な成分を有し、生理活性成分中には、トリテルペノイド化合物(triterpenoids)、多糖体(polysaccharides、例えばβ−D−グルカン)、アデノシン(adenosine)、ビタミン(例えばビタミンB、ニコチン酸)、タンパク質(免疫球タンパクを含む)、スーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase, SOD)、微量元素(例えば:カルシウム、リン、ゲルマニウム)、核酸、ステロール、血圧安定物質(例えばアントジア酸(antodia acid)等が含まれていることは周知のとおりであり、これらの生理活性成分には、抗腫瘍、免疫力向上、抗アレルギー、抗病菌、抗高血圧、血糖低下、コレステロール低下等多種効果があるとみなされている。
【0005】
ベニクスノキタケの多くの成分においては、トリテルペノイド化合物の研究が最も多い。該トリテルペノイド化合物は、30個の炭素元素が結合して六角形または五角形を形成する天然化合物の総称であり、ベニクスノキタケが持つ苦味は、主にトリテルペノイドの成分から来ている。1995年、Cherng氏等が、ベニクスノキタケ子実体抽出物中に、三種の新しいエルゴスタン(ergostane)を骨格とするトリテルペノイド化合物であるアントシンA(antcin A)、アントシンB(antcin B)、アントシンC(antcin C)を発見した(引用文献1)。Chen氏等は、エチルアルコールで樟芝の子実体を抽出した後、ジャンクイ酸A(zhankuic acid A)、ジャンクイ酸B(zhankuic acid B)、ジャンクイ酸C(zhankuic acid C)等三種のトリテルペノイド化合物を発見した(引用文献2)。この他、Chiang氏等は、1995年に、子実体抽出物中から別の三種、セスキテルペン・ラクトン(sesquiterpene lactone)と二種のビスフェノール誘導体である新トリテルペノイド化合物を発見した。これは即ち、アントロシン(antrocin)、4,7−ジメトキシ−5−メチル−1,3−ベンゾジオキソール(4,7−dimethoxy−5−methy−1,3− benzodioxole)、2,2',5,5'−テラメトオキシ−3,4,3',4'−ビ−メチレンジオキシ−6,6'−ジメチルビフェニル(2,2',5,5'−teramethoxy−3,4,3',4'−bi− methylenedioxy−6,6'− dimethylbiphenyl)である(引用文献3)。1996年になって、Cherng氏等は、同様の分析方法を使って再度、四種の新トリテルペノイド化合物を発見した。即ち、アントシンE(antcin E)、アントシンF(antcin F)、メチルアントシネートG(methyl antcinate G)、メチルアントシネートH(methyl antcinate H)である(引用文献4)。また、Yang氏等は、二種のエルゴスタンを骨格とする新化合物zhankuic acid D、zhankuic acid E、及び、三種のラノスタン(lanostane)を骨格とする新化合物を発見した。即ち、15 α −アセチル−デヒドロスルフレン酸(15 α −acetyl−dehydrosulphurenic acid)、デヒドロエブリコ酸(dehydroeburicoic acid)、デヒドラサルフレン酸(dehydrasulphurenic acid)である(引用文献5)。
【0006】
現在多くの実験からベニクスノキタケ抽出物には癌抑制効果がある(例えば引用文献2)ことが知られているが、一体どの有効成分に腫瘍細胞抑制効果があるのかという研究は、現在においてはまだ試験段階であり、具体的な有効成分は発表されていない。よって、該抽出物に更に一歩進んだ純化分析が行われ、癌抑制の真正有効成分が見つけ出されれば、ヒトの癌治療に莫大な利益が与えられることだろう。
【0007】
[引用文献1] Cherng, I. H., and Chiang, H. C. 1995. Three new triterpenoids from Antrodia cinnamomea. J. Nat. Prod. 58:365−371 [引用文献2] Chen, C. H., and Yang, S. W. 1995. New steroid acids from Antrodia cinnamomea, −a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. J. Nat. Prod. 58:1655−1661
[引用文献3] Chiang, H. C., Wu, D. P., Cherng, I. W., and Ueng, C. H. 1995. A sesquiterpene lactone, phenyl and biphenyl compounds from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 39:613−616
[引用文献4] Cherng, I. H., Wu, D. P., and Chiang, H. C. 1996. Triteroenoids from Antrodia cinnamomea. Phytochemistry. 41:263−267
[引用文献5] Yang, S. W., Shen, Y. C., and Chen, C. H. 1996. Steroids and triterpenoids of Antrodia cinnamomea−a fungus parasitic on Cinnamomum micranthum. Phytochemistry. 41:1389−1392
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベニクスノキタケ抽出物中の一体どんな成分が癌抑制効果を持つのかを明瞭にする為、本発明では、ベニクスノキタケ抽出物から下の構造式のような新化合物を分離純化した。
【化1】

式(1)構造式の化合物において、Xは、水酸基(OH)またはメトキシ基(OCH3)である。
【0009】
式(1)構造式の化合物において、Xが水酸基(OH)である時、その構造式は次のとおりである。
【化2】

式(2)構造式の化合物では、その化学名はアントロキノノールB(Antroquinonol B)、分子式はC24H38O5、分子量は406である。
【0010】
式(1)構造式の化合物において、Xがメトキシ基(OCH3)である時、その構造式は次のとおりである。
【化3】

式(3)構造式の化合物では、その化学名はアントロキノノールC(Antroquinonol C)、分子式はC25H40O5、分子量は420である。
【0011】
本発明中のアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の化合物はベニクスノキタケ水抽出物または有機溶剤抽出物を分離純化したものであり、該有機溶剤には、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール)、エステル類(例えば酢酸エチル)、アルカン類(例えばヘキサン)、ハロアルカン(例えば塩化メチル、塩化エチル)より分離純化したものであるが、これに制限されるものではなく、その内良好なのはアルコール類、更に良好なのはエチルアルコールである。
【0012】
前述の化合物により、本発明は、それを腫瘍細胞生長の抑制上に応用し、一歩進めて癌治療の医薬組成分中に応用することができ、癌の治療効果を高めることができる。本発明の化合物が得られる応用範囲は、乳癌腫瘍細胞、肺癌腫瘍細胞、肝臓癌腫瘍細胞、前立腺癌腫瘍細胞等の細胞生長産生抑制効果を含み、それら腫瘍細胞の迅速生長を不可能にし、更に腫瘍増殖を抑制し、腫瘍悪化を緩慢化する。よって、更に、乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等の癌治療に利用することができる。
【0013】
また、本発明中の式(2)または式(3)、式(2)と式(3)の化合物を乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等を治療する医薬組成物の成分として利用することにより、それら腫瘍細胞の生長を抑制することができる。前述の医薬組成物は、有効使用量のアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)を含む化合物の他、薬学上受け入れ可能な担体を含む。該担体は、賦形剤(例えば水)、充填剤(例えば蔗糖や澱粉)、粘着剤(例えば纖維素誘導体)、希釈剤、崩壊剤、吸收促進剤、甘味剤とすることも可能であるが、これに制限されるものではない。本発明の医薬組成物は、公知の薬学の加工方法に基づいて生産製造される。アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の有効成分使用量と一種類以上の担体相を混合し、必要な剤形に加工する。この剤形には、錠剤、粉剤、粒剤、カプセル、その他液体製剤を含むが、これに制限されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、下記構造式の化合物において、
【化4】

Xは水酸基(OH)またはメトキシ基(OCH3)であることことを特徴とするベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項2の発明は、前記化合物はベニクスノキタケから分離したものであることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項3の発明は、前記Xが水酸基(OH)である時、該化合物はアントロキノノールB(Antroquinonol B)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項4の発明は、前記化合物アントロキノノールB(Antroquinonol B)はベニクスノキタケから分離したことを特徴とする請求項3記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項5の発明は、前記Xがメトキシ基(OCH3)である時、該化合物はアントロキノノールC(Antroquinonol C)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項6の発明は、前記化合物アントロキノノールC(Antroquinonol C)はベニクスノキタケから分離したことを特徴とする請求項5記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物としている。
請求項7の発明は、前記腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする請求項3記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項8の発明は、前記乳癌細胞はMCF−7またはMDA−MB−231細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項9の発明は、前記肝臓癌細胞はHep 3BまたはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項10の発明は、前記前立腺癌細胞はLNCaPまたはDU145細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項11の発明は、腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物において、それは最低、請求項3で示した有効使用量の化合物、及び医学上受け入れ可能な担体を含み、該腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物としている。
請求項12の発明は、前記腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする請求項5記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項13の発明は、前記乳癌細胞はMCF−7またはMDA−MB−231細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項14の発明は、前記肝臓癌細胞はHep 3BまたはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項15の発明は、前記前立腺癌細胞はLNCaPまたはDU145細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物としている。
請求項16の発明は、腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物において、それは最低、請求項5で示した有効使用量の化合物、及び医学上受け入れ可能な担体を含み、該腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物としている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の化合物は、乳癌腫瘍細胞、肺癌腫瘍細胞、肝臓癌腫瘍細胞、前立腺癌腫瘍細胞等の細胞生長抑制効果を有するものであり、よって、それを腫瘍細胞生長の抑制上に応用でき、また更には癌治療の医薬組成分中に応用することができることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、ベニクスノキタケ(Antrodia camphorata)菌絲体、子実体または二者の混合物において、公知の抽出方法で、水または有機溶剤を使い抽出を行う。これにより、ベニクスノキタケ水抽出物または有機溶剤抽出物を獲得できる。該有機溶剤には、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール)、エステル類(例えば酢酸エチル)、アルカン類(例えばヘキサン)、ハロアルカン(例えば塩化メチル、塩化エチル)を含んでいるが、これに制限されるものではない。その内良好なのはアルコール類、更に良好なのはエチルアルコールである。
【0017】
抽出後のベニクスノキタケ水抽出物または有機溶剤抽出物は、更に一歩進めて、高速液体クロマトグラフィーによって分離純化を行い、その後、各分液(fraction)に対して癌抑制効果テストを行う。最後に、癌抑制効果を有する分液を成分分析し、癌抑制効果を生じさせる可能性のある成分について、更にそれぞれ、異なる癌腫瘍細胞の抑制効果テストを行った。結果、本発明のアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物が、乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等の癌腫瘍細胞の生長抑制に効果を有することが発見された。また、公知の文献を調べたところ、該化合物は嘗てベニクスノキタケ中に発見されたことはないことが確認された故、新らしい化合物であることがわかった。
【0018】
また、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の腫瘍細胞生長抑制効果を実証する為、本発明中においては、MTT分析法により、アメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute, NCI)抗腫瘍薬物スクリーニング検査に基づいた、乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等を含む腫瘍細胞に対する細胞生存率テストを行った。これらのテストにより、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の乳癌腫瘍細胞(MCF−7、MDA−MB−231を含む)、肺癌腫瘍細胞(A549を含む)、肝臓癌腫瘍細胞(Hep 3B、Hep G2を含む)、前立腺癌腫瘍細胞(LNCaP、DU−145を含む) 等の生存率を低下させ、これに対し同時に、50%阻害濃度(即ちIC50値)をも低下させることが実証された。よって、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)を乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等を含む腫瘍細胞の生長抑制上に応用することができ、更に、乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等の治療に利用することが可能である。前述した実施例の詳細説明は次のとおりである。
【0019】
実施例1:アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の分離。
100グラム前後のベニクスノキタケ菌絲体、子実体または二者の混合物を、三角フラスコ中に入れ、適当な比率の水とアルコール類(70%〜100%アルコール類水溶液)を加え、20〜25℃の温度の下、最低1時間以上攪拌抽出し、その後、濾紙及び0.45 μmの濾過膜で濾過し、抽出液を収集する。
【0020】
前述において收集したベニクスノキタケ抽出液は、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid chromatography)を用い、RP18のカラム(column)で分析を行う。並びに、メチルアルコール(A)及び0.1%〜0.5%醋酸水溶液(B)を移動相(mobile phase)とする。(その溶液比率は、0〜10分、B比率は95% 〜20%、10〜20分、B比率は20%〜10%、20〜35分、B比率は10%〜90%、 35〜40分、B比率は10%〜95%である。)1分1 mlの速度で溶離し、同時に、紫外可視光線全波長帯測器で分析する。
【0021】
21.2分から21.4分の溶離液を收集濃縮すると淡黄色の液体産生物が得られる。これは即ち、アントロキノノールB(Antroquinonol B)である。分析した結果、該化合物の分子式はC24H38O5、分子量406である。核磁気共鳴(NMR)分析値は次に示すとおりである。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.21、1.36、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.71、5.56。13C−NMR(CDCl3)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、30.10、40.27、43.34、59.22、60.59、71.8、120.97、123.84、124.30、131.32、134.61、135.92、138.05、160.45、197.11。
【0022】
23.7分から24.0分の溶離液を收集濃縮すると淡黄色の液体産生物が得られる。これは即ち、アントロキノノールC(Antroquinonol C)である。分析した結果、該化合物の分子式はC25H40O5、分子量420である。核磁気共鳴(NMR)分析値は次に示すとおりである。
1H−NMR(CDCl3)δ(ppm):1.21、1.36、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.24、3.68、4.05、5.12、5.50、5.61。13C−NMR(CDCl3)δ(ppm):12.31、16.1、16.12、17.67、24.44、26.44、26.74、27.00、37.81、39.81、4.027、43.34、49.00、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、135.92、138.05、160.45、197.12。
【0023】
アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)を化学式データと照合した後、前述と同様の化合物構造は発見されなかった。よって、これらの化合物は新しく過去に発見されたことのない化合物となる。
【0024】
実施例2:抗乳癌腫瘍細胞の体外活性テスト。実施例1にて発見された化合物の腫瘍細胞抑制効果を更にテストする為に、本実施例はアメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute, NCI)の抗腫瘍薬物スクリーニング検査に基づき、まず、実施例1中で分離されたアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物を、ヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7とMDA−MB−231を含む培養液中に加え、腫瘍細胞生存率をテストする。細胞生存率テストは、公知のMTT分析法により分析を行うものであり、MCF−7とMDA−MB−231はどちらもヒト乳癌腫瘍細胞系である。該MCF−7は、原発性乳癌または早期乳癌の癌細胞であり、それはエストロゲンに対して高度過敏性である故、エストロゲン依存性(estrogen−dependent)乳癌細胞と呼ばれる。MDA−MB−231はエストロゲンの影響を受けない非エストロゲン依存性(estrogen−independent)乳癌細胞であり、それは臨床医学上の治療が極めて難しく治癒率も非常に低い。
【0025】
MTT分析法は細胞増殖(cell proliferation)、生存率(percent of viable cells)、細胞毒性(cytotoxicity)の分析によく使われる分析方法である。該MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]2,5−diphenyltetrazolium bromide)は黄色染色剤を用いるものであり、それは生細胞によって吸收され、並びに、ミトコンドリア中のコハク酸塩テトラゾリウム還元酵素(succinate tetrazolium reductase)によって非水溶性且つ青紫色をなすホルマザン色素(formazan)に還元される。よって、ホルマザン(formazan)形成がされるか否かから、細胞の生存率を判断及び計算することができる。
【0026】
まず、ヒト乳癌細胞MCF−7 (食品工業研究所より購入。細胞株番号:BCRC 60436)とMDA−MB−231(国家衛生研究院より購入。細胞株番号:CCRC 60425)をそれぞれ、ウシ胎児血清を含む培養液中にて24時間培養する。増殖後の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって一回洗浄し、並びに、倍のトリプシン−EDTA溶液によって細胞処理、その後、1,200 rpmで5分間遠心し、細胞を沈澱させて上済み液を除去する。後、10mlの新培養液を加え、軽く振り細胞を懸濁させ、更に細胞を96孔マイクロプレート内に分けて置く。テスト時は、それぞれの各孔内に、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照体、純化分離していないベニクスノキタケエチルアルコール総抽出物)及びアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)(実験体)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境の下、各孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間反応させた後、更に各孔内に100 μlの溶解バッファー(lysis buffer)を加えると反応が停止する。最後に、酵素免疫分析装置にて570 nm 吸光波長の下、その吸光値を測定し、これによって細胞生存率を算出し、並びに、その50%阻害濃度(即ちIC50値)を推測した。その結果は表1(乳癌腫瘍細胞生存率に対する体外テスト結果)に示すとおりである。
【表1】

【0027】
表1中からわかるとおり、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の作用によって、それは、エストロゲン依存性のヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7の生存率を効果的に低下させている。対照体のベニクスノキタケ粗抽出物により測定されたヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7のIC50値(11.13 μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)でヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7を処理後、そのIC50値が1.94 μg/mlにまで低下しており、対照体と比較換算して得られたIC50値低下比率は約82.56%となった。また、アントロキノノールC(Antroquinonol C)でヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7を処理後、そのIC50値が1.17 μg/mlとなり、対照体と比較換算して得られたIC50値の低下比率は約89.49%となった。これらの結果から、二つの化合物のヒト乳癌腫瘍細胞MCF−7に対する50%阻害濃度は大幅に対照体より低くなることが示され、よって、ベニクスノキタケ抽出物から分離抽出したアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は確実にエストロゲン依存性の乳癌腫瘍細胞MCF−7生長抑制に利用できることが実証された。
【0028】
また、対照体のベニクスノキタケ粗抽出物によって測定されたIC50値(25.81 μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)はどちらも、非エストロゲン依存性のヒト乳癌腫瘍細胞MDA−MB−231生長を効果的に抑制しており、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)でヒト乳癌腫瘍細胞MDA−MB−231を処理後、そのIC50値が各々、8.72 μg/ml、21.9 μg/mlまで低下し、対照体と比較換算して得られたIC50値の低下比率は各々、約66.21%、15.15%となった。この結果から、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)のヒト乳癌腫瘍細胞MDA−MB−231に対する50%阻害濃度はどちらも対照体よりかなり低くなり、その内、アントロキノノールB(Antroquinonol B)の抑制効果が最良であることが示された。よって、ベニクスノキタケ抽出物から分離抽出したアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は確実に、非エストロゲン依存性の乳癌腫瘍細胞MDA−MB−231の生長抑制に利用できることが実証された。
【0029】
実施例3:抗肺癌腫瘍細胞の体外活性テスト。本テストは、アメリカ国立癌研究所の抗腫瘍薬物スクリーニング検査を基に実施されている。実施例1で分離したアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物を、ヒト肺癌腫瘍細胞A549を含む培養液中に加え、並びに、前述したMTT分析法により分析を行い、これによって、肺癌腫瘍細胞生存率をテストした。
【0030】
まず、該ヒト肺癌腫瘍細胞A549(食品工業研究所にて購入。細胞株番号はBCRC 60074)をそれぞれ、ウシ胎児血清を含む培養液中にて24時間培養する。増殖後の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって一回洗浄し、並びに、倍のトリプシン−EDTA溶液によって細胞処理した後、1,200 rpmで5分間遠心し、細胞を沈澱させて上済み液を除去する。その後、10mlの新培養液を加え、軽く振り細胞を懸濁させ、更に細胞を96孔マイクロプレート内に分けて置く。テスト時は、それぞれの各孔内に、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照体。純化分離してないベニクスノキタケエチルアルコール総抽出物)及びアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)(実験体)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境の下、各孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間反応させた後、更に各孔内に100 μlの溶解バッファー(lysis buffer)を加えると反応が停止する。最後に、酵素免疫分析装置にて570 nm 吸光波長の下、吸光値を測定し、これによって細胞生存率を算出し、並びに、その50%阻害濃度(即ちIC50値)を推測した。その結果は表2(肺癌腫瘍細胞生存率に対する体外テスト結果)に示すとおりである。
【表2】

【0031】
表2から、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は、ヒト肺癌腫瘍細胞A549の生存率を効果的に低下させることが明らかである。対照体のベニクスノキタケ粗抽出物から測定して得られたIC50値(13.21 μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)でヒト肺癌腫瘍細胞A549を処理後、そのIC50値は、11.9μg/ml、8.21μg/mlまで各々低下し、対照体と比較換算して得られたIC50値の低下比率は、約9.92%、37.85%となった。これらの結果から、両化合物はヒト肺癌腫瘍細胞A549の50%阻害濃度はどちらも、対照体より下回っており、特に、アントロキノノールC(Antroquinonol C)の抑制効果は最良であることが明らかにされた。これにより、ベニクスノキタケ抽出物中から分離抽出されたアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)が確実に、ヒト肺癌腫瘍細胞A549の生長抑制に利用できることが実証された。
【0032】
実施例4:抗肝臓癌腫瘍細胞の体外活性テスト。本テストは、アメリカ国立癌研究所の抗腫瘍薬物スクリーニング検査を基に実施されている。実施例1で分離されたアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物を、ヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3BとHepG2を含む培養液中に加え、並びに、前述したMTT分析法により分析を行い、これによって、肝臓癌腫瘍細胞生存率をテストした。該Hep3BとHepG2はどちらもヒト肝臓癌腫瘍細胞系である。
【0033】
まず、ヒト肝臓癌細胞Hep3B(食品工業研究所より購入。細胞番号はBCRC 60434)とHepG2(食品工業研究所より購入。細胞番号はBCRC60025)をそれぞれ、ウシ胎児血清を含む培養液中にて24時間培養する。増殖後の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって一回洗浄し、並びに、倍のトリプシン−EDTA溶液によって細胞処理し、その後、1,200 rpmで5分間遠心し、細胞を沈澱させて上済み液を除去する。後、10mlの新培養液を加え、軽く振り細胞を懸濁させ、更に細胞を96孔マイクロプレート内に分けて置く。テスト時は、それぞれの各孔内に、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照体。純化分離されていないベニクスノキタケエチルアルコール総抽出物)及びアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境の下、各孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間反応させた後、更に各孔内に100 μlの溶解バッファー(lysis buffer)を加えると反応が停止する。最後に、酵素免疫分析装置にて570 nm 吸光波長の下、吸光値を測定し、これによって細胞生存率を算出し、並びに、その50%阻害濃度(即ちIC50値)を推測した。その結果は表3(肝臓癌腫瘍細胞生存率に対する体外テスト結果)に示すとおりである。
【表3】

【0034】
表3中からわかるとおり、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)の作用によって、ヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3B及びHepG2の生存率を効果的に低下させている。対照体のベニクスノキタケ粗抽出物で測定されたヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3BのIC50値(5.10 μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)処理後のIC50値は1.21 μg/mlであり、対照体と比較換算したIC50値低下比率は、約76.24%となった。また、Antroquinonol Cでヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3B処理後のIC50値は、1.32μg/mlであり、対照体と比較換算したIC50値低下比率は、約74.12%となった。これは、二つの化合物がヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3Bの50%阻害濃度が大幅に対照体より下回っていることを示している。対照体のベニクスノキタケ粗抽出物によって測定されたヒト肝臓癌腫瘍細胞HepG2のIC50値(18.63 μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)処理後のIC50値は3.32 μg/mlであり、対照体と比較換算して得られたIC50値の低下比率は約82.18%となった。また、アントロキノノールC(Antroquinonol C)でヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3Bを処理後のIC50値は、5.12 μg/mlであり、対照体と比較換算して得られたIC50値の低下比率は、約72.52%となった。これは、二つの化合物がヒト肝臓癌腫瘍細胞HepG2の50%阻害濃度が大幅に対照体より下回っていることを示している。よって、これらの結果から、ベニクスノキタケ抽出物から分離抽出したアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は、確実に、肝臓癌腫瘍細胞生長の抑制に利用できることを実証している。
【0035】
また、表3でわかるとおり、アントロキノノールB(Antroquinonol B)で処理後の癌細胞IC50値は、アントロキノノールC(Antroquinonol C)で処理後の癌細胞IC50値より低く、これは比較的低濃度のアントロキノノールB(Antroquinonol B)であっても効果的に半数のヒト肝臓癌腫瘍細胞Hep3BとHepG2の生長を抑制でき、よって、アントロキノノールB(Antroquinonol B)の肝臓癌細胞抑制効果は、アントロキノノールC(Antroquinonol C)より優れていることを示している。
【0036】
実施例5:抗前立腺癌腫瘍細胞の体外活性テスト。本テストは、アメリカ国立癌研究所の抗腫瘍薬物スクリーニング検査に基づいて実施され、実施例1中で分離されたアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物を、ヒト前立腺癌腫瘍細胞LNCaP、DU−145を含む培養液中に加え、並びに、前述のMTT分析法によって分析を行った前立腺癌腫瘍細胞生存率テストである。また、LNCaP、DU−145はどちらも、ヒトの前立腺癌腫瘍細胞系であり、該LNCaPは、前立腺腺体上皮細胞に起因する癌で、且つ、癌細胞生長初期は、男性ホルモンに依存しており、よって、男性ホルモン依存性前立腺癌(androgen−dependent prostate cancer)とも呼ばれる。DU−145は、再発性前立腺癌細胞であり、男性ホルモンに依存しないでも生長する故、男性ホルモン非依存性前立腺癌(androgen−independent prostate cancer)であり、この種の再発性癌は、今現在、効果的な治療法が発見されていない。
【0037】
まず、ヒト前立腺癌細胞LNCaP(国家衛生研究院より購入。細胞株番号はCCRC 60088)とDU−145(国家衛生研究院より購入。細胞株番号はCCRC 60348)をそれぞれ、ウシ胎児血清を含む培養液中において24時間培養する。増殖後の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって一回洗浄し、並びに、倍のトリプシン−EDTA溶液によって細胞処理した後、1,200 rpmで5分間遠心し、細胞を沈澱させて上済み液を除去する。その後、10mlの新鮮な培養液を加え、軽く振り細胞を再度懸濁させ、更に細胞を96孔マイクロプレート内に分けて置く。テスト時は、それぞれの各孔内に30、10、3、1、0.3、0.1、0.03 μg/mlのベニクスノキタケ粗抽出物(対照体。純化分離されていないベニクスノキタケエチルアルコール総抽出物)及びアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)(実験体)を加え、37℃、5%CO2で48時間培養する。その後、光を避けた環境の下、各孔内に2.5 mg/mlのMTTを加え、4時間反応させた後、更に各孔内に100 μlの溶解バッファー(lysis buffer)を加えると反応が停止する。最後に、酵素免疫分析装置にて570 nm 吸光波長の下、吸光値を測定し、これによって細胞生存率を算出し、並びに、その50%阻害濃度(即ちIC50値)を推測した。その結果は表4(前立腺癌腫瘍細胞生存率に対する体外テスト結果)に示すとおりである。
【表4】

【0038】
表4からわかるとおり、Antroquinonol BとAntroquinonol Cの作用によって、ヒト前立腺癌腫瘍細胞LNCaPとDU−145の生存率を効果的に低下させている。対照体のベニクスノキタケ粗抽出物において測定されたIC50値(LNCaP:11.49μg/ml、DU−145:41.39μg/ml)と比較すると、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)のヒト前立腺癌腫瘍細胞LNCaPに対するIC50値はそれぞれ、5.67 μg/mlと8.72μg/mlまで低下しており、対照体と比較換算したIC50値の低下比率はそれぞれ、50.65%、24.11%となった。また、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)のヒト前立腺癌腫瘍細胞DU−145に対するIC50値はそれぞれ、10.12μg/mlと12.21μg/mlまで低下しており、対照体と比較換算したIC50値の低下比率はそれぞれ、75.55%、70.5%となった。これは、二つの化合物がヒト前立腺癌腫瘍細胞LNCaPとDU−145の50%阻害濃度がどちらも大幅に対照体を下回っていることを示している。これらの結果より、ベニクスノキタケ抽出物から分離したアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は、確実に前立腺癌腫瘍細胞生長の抑制に利用することができることを実証している。また、表4からわかるとおり、アントロキノノールB(Antroquinonol B)処理後の癌細胞IC50値は、アントロキノノールC(Antroquinonol C)処理した後の癌細胞IC50値より極めて小さく、これは、アントロキノノールB(Antroquinonol B)の前立腺癌細胞抑制効果がアントロキノノールC(Antroquinonol C)より優れていることを示している。
【0039】
また、前述結果からわかるとおり、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)はどちらも異なる特性を持つ前立腺癌腫瘍細胞LNCaPとDU−145の生長を効果的に抑制することができ、これは、アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)が男性ホルモン依存性前立腺癌細胞LNCaP抑制に応用できるだけでなく、男性ホルモン非依存性前立腺癌細胞DU−145の生長抑制にも応用でき、これにより、前立腺癌と再発性前立腺癌の治療に役立つことを示している。
【0040】
前述をまとめると、本発明のベニクスノキタケ抽出物から分離した新化合物アントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)は乳癌、肺癌、肝臓癌、前立腺癌等ヒト腫瘍細胞の生長を抑制することが明らかであり、よって、該化合物は、前述の腫瘍細胞生長を抑制する医薬組成物の成分中に応用できるものである。該医薬組成物には、有効使用量のベニクスノキタケアントロキノノールB(Antroquinonol B)とアントロキノノールC(Antroquinonol C)化合物の他、薬学上受け入れ可能な担体も含む。該担体は、賦形剤(例えば水)、充填剤(例えば蔗糖や澱粉)、粘着剤(例えば纖維素誘導体)、希釈剤、崩壊剤、吸收促進剤、甘味剤とすることも可能であるが、これに制限されるものではない。本発明の医薬組成物は、公知の薬学の加工方法に基づいて生産製造される。有効成分使用量のベニクスノキタケ化合物と一種類以上の担体相を混合し、必要な剤形に加工する。この剤形には、錠剤、粉剤、粒剤、カプセル、その他液体製剤を含むが、これに制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式の化合物において、
【化1】

Xは水酸基(OH)またはメトキシ基(OCH3)であることことを特徴とするベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項2】
前記化合物はベニクスノキタケから分離したものであることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項3】
前記Xが水酸基(OH)である時、該化合物はアントロキノノールB(Antroquinonol B)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項4】
前記化合物アントロキノノールB(Antroquinonol B)はベニクスノキタケから分離したことを特徴とする請求項3記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項5】
前記Xがメトキシ基(OCH3)である時、該化合物はアントロキノノールC(Antroquinonol C)であることを特徴とする請求項1記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項6】
前記化合物アントロキノノールC(Antroquinonol C)はベニクスノキタケから分離したことを特徴とする請求項5記載のベニクスノキタケ抽出物から分離させた新化合物。
【請求項7】
前記腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする請求項3記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項8】
前記乳癌細胞はMCF−7またはMDA−MB−231細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項9】
前記肝臓癌細胞はHep 3BまたはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項10】
前記前立腺癌細胞はLNCaPまたはDU145細胞系であることを特徴とする請求項7記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項11】
腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物において、それは最低、請求項3で示した有効使用量の化合物、及び医学上受け入れ可能な担体を含み、該腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物。
【請求項12】
前記腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする請求項5記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項13】
前記乳癌細胞はMCF−7またはMDA−MB−231細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項14】
前記肝臓癌細胞はHep 3BまたはHep G2細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項15】
前記前立腺癌細胞はLNCaPまたはDU145細胞系であることを特徴とする請求項12記載の腫瘍細胞生長抑制に利用する化合物。
【請求項16】
腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物において、それは最低、請求項5で示した有効使用量の化合物、及び医学上受け入れ可能な担体を含み、該腫瘍細胞は乳癌細胞、肝臓癌細胞、前立腺癌細胞であることを特徴とする腫瘍細胞生長抑制の医薬組成物。

【公開番号】特開2009−102286(P2009−102286A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294479(P2007−294479)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(505364913)國鼎生物科技股▲ふん▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】