説明

ベルトのずれ矯正装置

【課題】本発明の課題は、簡単な構造を用いて、ベルトのずれをより確実に矯正することができるベルト矯正装置を提供することにある。
【解決手段】ベルトのずれを矯正する装置1であって、クラウン付きプーリ10と、動作機構20,30とを備える。クラウン付きプーリ10は、ベルト60が掛けられる部材であって、回転可能にかつ回転軸方向にスライド可能に支持されている。動作機構20,30は、ベルト60のずれに連動して、クラウン付きプーリ10を回転軸方向にスライドさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトのずれを矯正する装置に関し、特に搬送装置のベルトの蛇行や偏行によるベルトのずれを矯正する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動倉庫や工場等では、物品をベルト上に載せて搬送する搬送装置が多く用いられている。搬送装置では、ベルトの蛇行や偏行によるベルトのずれが問題となる。そこで、ベルトのずれを矯正する様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、クラウン付きプーリ、桟付きプーリ、傾きを有するプーリ等を用いてベルトのずれを矯正する技術が知られている。また、特許文献1に開示されたベルトの矯正装置は、プーリに掛けられたベルトの蛇行を検出するセンサと、プーリの取付角度を変更可能なモータとを有している。この矯正装置では、センサがベルトの蛇行を検出すると、その検出結果に応じてモータが駆動される。その結果、プーリの取り付け角度を変更され、ベルトの蛇行を矯正する。
【特許文献1】実開平1−58517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クラウン付きプーリ、桟付きプーリ、傾きを有するプーリ等は、ベルトのずれを矯正する手段として一定の効果はあるが、ずれを確実に矯正するものではない。また、特許文献1のようにプーリ自体の角度を変えるための構造を採用している場合は、全体の構造が複雑になり、コストがかかるというデメリットがある。
【0005】
本発明の課題は、簡単な構造を用いて、ベルトのずれをより確実に矯正することができるベルト矯正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るベルトのずれ矯正装置は、クラウン付きプーリと、動作機構と、を備える。クラウン付きプーリは、ベルトが掛けられる部材であって、回転可能にかつ回転軸方向にスライド可能に支持されている。動作機構は、ベルトのずれに連動して、クラウン付きプーリを回転軸方向にスライドさせる。
【0007】
この装置では、クラウン付きプーリは、ベルトのずれに連動して回転軸方向にスライドする。これにより、本発明に係るベルトのずれ矯正装置は、簡単な構造でより確実にベルトのずれを矯正できる。
【0008】
好ましくは、本発明に係るベルトのずれ矯正装置の動作機構は、ガイド部材と、リンク機構と、を有する。ガイド部材は、ベルトの側方に設けられ、ベルトの移動をガイドする。リンク機構は、クラウン付きプーリとガイド部材とを連結し、ベルトのずれによりガイド部材に対しベルトの一幅方向の力が作用したとき、クラウン付きプーリをその一幅方向とは逆の方向にスライドさせる。
【0009】
この装置では、ベルトが一幅方向にずれると、ガイド部材がベルトに押されて同方向に移動する。すると、リンク機構がクラウン付きプーリを逆方向に移動させる。その結果、ベルトはクラウン付きプーリ側に移動していき、それにより、ベルトのずれは矯正される。なお、ベルトの矯正時の移動に伴ってクラウン付きプーリも元の位置に向かって移動し、さらにガイド部材もリンク機構によって元の位置に向かって移動する。
【0010】
更に好ましくは、本発明に係るベルトのずれ矯正装置は、次の構成を有する。クラウン付きプーリには、環状溝部が形成されている。ガイド部材は、ベルトの両側方に配置された一対のガイドローラである。リンク機構は、ガイドローラ支持部材と、リンク部材と、ガイド突部とを有する。ガイドローラ支持部材は、一対のガイドローラを連結支持し、ベルトのずれによりガイドローラに対しベルトの幅方向の力が作用したとき幅方向に移動可能である。リンク部材は、ガイドローラ支持部材に一端を固定されている。ガイド突部は、リンク部材の他端に設けられ、クラウン付きプーリの環状溝部に係合している。
【0011】
この装置では、ガイド部材が一対のガイドローラからなるため、ベルトがどちらの幅方向にずれた場合でも、ガイド部材全体が同じ方向に移動してクラウン付きプーリを反対方向に移動させることができる。リンク機構の動作を具体的に説明すると、一対のガイドローラがベルトのずれによって一幅方向に移動すると、ガイドローラ支持部材が同じ方向に移動して、それによりリンク部材がガイド突部とクラウン付きプーリの環状溝部の係合を介してクラウン付きプーリを反対方向に移動させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るベルトのずれ矯正装置は、簡単な構造を用いて、ベルトのずれをより確実に矯正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.実施形態
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.1.装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係るベルトずれ矯正装置1を含む搬送装置の一部を、上部から見た概略構成図である。なお、見やすさのためベルト60は仮想線で示している。
【0014】
ベルトずれ矯正装置1は、クラウン付きプーリ10と、リンク機構20と、一対のガイドローラ30とを備える。リンク機構20及びガイドローラ30は、ベルト60のずれに連動して、クラウン付きプーリ10を回転軸方向にスライドさせる動作機構を構成する。
【0015】
クラウン付きプーリ10は、ベルト60のずれを矯正するための部材であり、ベルト60が掛けられている。クラウン付きプーリ10は、シャフト50に取り付けられ、シャフト50を中心にベルト60の移動に連動して回転する。クラウン付きプーリ10は、さらに、シャフト50上を回転軸方向(図1の上下方向)にスライド可能である。クラウン付きプーリ10は、その略中央が両端より大径であるクラウン部12を有する。クラウン部12の略中央には、小径の環状溝部11が形成されている。シャフト50は、その両端を所定のフレーム(図示省略)に取り付けられている。ベルト60は、クラウン付きプーリ10に適度な張力で掛けられている。
【0016】
リンク機構20は、クラウン付きプーリ10とガイドローラ30とを連結し、ベルト60のずれによりガイドローラ30に対しベルト60の一幅方向の力が作用したとき、クラウン付きプーリ10をその一幅方向とは逆の方向に移動させるための機構である。リンク機構20は、ガイド突部21と、棒状の一対の第1リンク部材25,25と、棒状の第2リンク部材26と、ガイドローラ支持部材27と、を有する。
【0017】
ガイドローラ支持部材27は、棒状の部材であり、その両端部上に一対のガイドローラ30を支持している。ガイドローラ支持部材27は、ベルト60のずれにより所定の力が加わると、装置側方(図1では上下方向)に移動する。第1リンク部材25,25の一端は、第1連結部22,22においてガイドローラ支持部材27にそれぞれ回動自在に固定されている。第1リンク部材25,25の他端は、第2リンク部材26の両端に第2連結部24,24によりそれぞれ回動自在に連結されている。更に各第1リンク部材25,25の略中央部は、棒状のリンク支持部材40上に枢着部23,23によりそれぞれ回動自在に支持されている。ガイド突部21は、第2リンク部材26の中央に設けられており、クラウン付きプーリ10の環状溝部11に係合している。なお、この係合は、クラウン付きプーリ10の回転に支障がない程度に調整されている。
【0018】
ガイドローラ30,30は、ベルト60の移動をガイドするガイド部材を構成する。ガイドローラ30,30は、ベルト60の両側方に設けられている。ガイドローラ30,30は鉛直方向に延びる回転軸を有しており、ベルト60の縁部に当接またはわずかな隙間を介して近接している。そのため、ガイドローラ30は、回転しながらベルト60を移動方向にガイドする。
【0019】
1.2.装置の動作
このように構成されるベルトずれ矯正装置1を含む搬送装置では、駆動モータ(図示せず)によりベルト60が駆動される。ベルト60が駆動されることで、クラウン付きプーリ10がシャフト50回りに回転しており、ガイドローラ30,30も回転している。このような搬送装置の動作中において、本実施形態に係るベルトずれ矯正装置1は、以下のように動作する。このベルトずれ矯正装置1の動作について、図2及び3を参照しながら説明する。
【0020】
ベルト60が移動中に蛇行や偏行を起こすと、その縁部が一方のガイドローラ30を一幅方向に押していく。図2は、ベルト60が蛇行又は偏行して一方のガイドローラ30(図2の上側のガイドローラ30)を押している状態を示す。ベルト60が接触しガイドローラ30を押すことにより、ガイドローラ支持部材27が図2のY1方向に移動する。ガイドローラ支持部材27が移動することにより、リンク機構20が枢着部23を中心に回動して、クラウン付きプーリ10をガイド突部21によりY2方向にスライドさせる。この結果、ベルトずれ矯正装置1は、図3の状態になる。
【0021】
図3の状態となることにより、ベルト60は、クラウン部12の作用によりY3方向に移動する。つまり、ベルト60のずれが矯正される。
【0022】
このようにベルト60のずれが矯正されると、それにしたがってベルト60からクラウン付きプーリ10にY4方向への力が作用し、クラウン付きプーリ10は元の位置の方向にスライドする。そのため、リンク機構20の作用によりガイドローラ支持部材27がY5方向に移動する。以上の結果、ベルトずれ矯正装置1は、図1の正常な状態に戻る。
【0023】
ベルト60が逆方向に蛇行や偏行した場合は、上記動作と逆方向の動作となる。
【0024】
1.3.作用効果
上記実施形態に係るベルトずれ矯正装置1は、ガイドローラ支持部材27がベルト60のずれに連動して側方に移動すると、リンク機構20の作用によりクラウン付きプーリ10が反対方向にスライドする。さらに、ベルト60がクラウン部12の作用によりずれが矯正されると、クラウン付きプーリ10も元の位置へとスライドし、リンク機構20の作用によりガイドローラ支持部材27も元の位置に戻る。このように、本実施形態に係るベルトずれ矯正装置1は、従来の装置よりも構造が簡単でありつつも確実にベルトのずれを矯正できる。
【0025】
2.その他実施形態
上記実施形態に係るベルトずれ矯正装置1では、ベルト60がガイドローラ30を押すことによりガイドローラ支持部材27を装置側方へ移動させている。これに代えて、エンコーダや光電センサを設け、ベルト60のずれを検知するようにしてもよい。また、この場合、ガイドローラ支持部材27は、センサの検知信号を受けてモータ等を駆動させ、移動させるようにしてもよい。これにより、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0026】
3.その他
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0027】
特に、使用される材料、全体又は各部品の形状、大きさ、部品間の寸法、部品の大きさの比率等は上記実施形態に限定されるものではなく、バリエーションがあることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ベルトのずれを矯正する装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルトずれ矯正装置の概略構成図。
【図2】本実施形態に係るベルトずれ矯正装置の動作を説明するための図。
【図3】本実施形態に係るベルトずれ矯正装置の動作を説明するための図。
【符号の説明】
【0030】
1 ベルトずれ矯正装置
10 クラウン付きプーリ
11 環状溝部
12 クラウン部
20 リンク機構
21 ガイド突部
22 第1連結部
23 枢着部
24 第2連結部
25 第1リンク部材
26 第2リンク部材
27 ガイドローラ支持部材
30 ガイドローラ
40 リンク支持部材
50 シャフト
60 ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトのずれ矯正装置であって、
前記ベルトが掛けられる部材であって、回転可能にかつ回転軸方向にスライド可能に支持されたクラウン付きプーリと、
前記ベルトのずれに連動して、前記クラウン付きプーリを前記回転軸方向にスライドさせる動作機構と、
を備える、ベルトのずれ矯正装置。
【請求項2】
前記動作機構は、
前記ベルトの側方に設けられ、前記ベルトの移動をガイドするガイド部材と、
前記クラウン付きプーリと前記ガイド部材とを連結し、前記ベルトのずれにより前記ガイド部材に対し前記ベルトの一幅方向の力が作用したとき、前記クラウン付きプーリを前記一幅方向とは逆の方向にスライドさせるリンク機構とを有する、請求項1に記載のベルトのずれ矯正装置。
【請求項3】
前記クラウン付きプーリには、環状溝部が形成されており、
前記ガイド部材は、前記ベルトの両側方に配置された一対のガイドローラであり、
前記リンク機構は、前記一対のガイドローラを連結支持し、前記ベルトのずれにより前記ガイドローラに対し前記ベルトの幅方向の力が作用したとき前記幅方向に移動可能であるガイドローラ支持部材と、前記ガイドローラ支持部材に一端を固定されたリンク部材と、前記リンク部材の他端に設けられ前記クラウン付きプーリの前記環状溝部に係合しているガイド突部と、を有している、請求項2に記載のベルトのずれ矯正装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−23947(P2010−23947A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184619(P2008−184619)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】