説明

ベルトの品質判定方法

【課題】コンベアベルトなどのベルトの品質を簡易に判定することが可能なベルトの品質判定方法を提供する。
【解決手段】上部ゴム層1と最上層の強化部との間、下部ゴム層2と最下層の強化部との間、及び各強化部間の少なくともいずれか一箇所の層間を、所定長さだけ物理的にはく離させ、そのはく離後の強化部表面への帆布4の露出割合によってベルトの品質を判定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベルトの品質を判定する方法に係り、例えば高炉へ原料の鉱石を運搬するためのベルトコンベアのコンベアベルト用ベルトとして、要求される仕様に十分耐えられるだけの接着強度を有しているか否かなど、ベルトの品質を判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉱石の運搬などで使用されるベルトコンベア用のベルトは、図1に示す幅方向断面のように、上部ゴム層1と下部ゴム層2との間に強化層3が配置され、各層同士が加硫接着されて形成される。上記強化層3は、芯材4を被覆ゴムでコーティングした布状の強化部を複数層(図1では5層を例示)積層し、層間を加硫接着して形成されてなるゴムベルトである。
【0003】上記芯材4は、ベルトの引張強度を高めるためのもので、通常、帆布、アラミド繊維、スチールコード等の金属線材の平織り等が使用される。また、上部ゴム層1や下部ゴム層2を構成するゴムや芯材4をコーティングするゴムは、搬送物による摩耗を抑えたり、芯材4を保護する役割を有し、天然ゴムやSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)などが使用される。もっとも、プーリや搬送物などに接触する上部ゴム層1や下部ゴム層2のゴムには、ベルトの使用用途に応じて、超耐摩耗性ゴム、耐摩耗性ゴム、普通ゴム、難燃性ゴムなどが使用される。
【0004】なお、ゴム部分については、芯材4の幅方向両側端位置よりも各々40mm程度だけ幅方向に張り出した範囲をカバーするように形成されて、ベルトの両側端部は、それぞれ芯材4が存在しないゴムだけの部分(図1中のA部)となっている。そして、上記構成のベルトについて、順次、先端部と後端部とを接合して長くしていき、最終的に無端にすることで、コンベアベルトとする。
【0005】上記ベルト間の接合部(エンドレス加工部とも言われる)は、図2に示すように、互いの端部を厚さ方向且つ長手方向に沿って階段状にはく離し、対向する強化部をそれぞれ貼り合わせ、また、最上部位置のはく離した強化部、及び最下部位置のはく離した強化部に生ゴム8を貼り合わせた後に、加熱及びプレスすることで加硫を行い、上記階段状に加工したベルトの端部同士を接着して接合される。 図3は、図2のBにおける強化部間の接合部の状態を示し、符号7が強化部を、符号5が芯材にコーティング(接着)したゴムを、符号6が強化部7間を接合する接着ゴムをそれぞれ示す。
【0006】ここで、上記加工部の各長さLは、ベルトの種類によって規定されている。また、上記加硫は、例えば、150〜160℃の温度で高圧プレスすることで行われる。なお、上記エンドレス加工部の接着力はJISには規定されておらず、一般的な実測値では、本体部(エンドレス加工部以外のベルト部分)と同等の値に設定される。なお、ベルト接合部の品質試験としては、例えば、JIS−K6256に規定するような、布と加硫ゴムとのはく離試験の適用が考えられる。この場合には、短冊状の試験片をサンプリングし、例えば、強化部間を物理的にはく離させて、そのはく離強さを測定し、該はく離強さでベルト接合部の接着強度を判定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ここで、コスト低減の観点から、コンベアベルト用のベルトも、様々なメーカから調達したものが使用されるケースがあり、この場合に、ベルトの品質が安定していない場合も想定される。そして、ベルトの品質が悪い場合には、エンドレス加工部の接着力がベルト本体部の強度と同等レベル未満のものが発生して、使用途中で当該エンドレス加工部が外れてしまったりする。また、ベルト間の接合部に所要の接着強度が確保されても、使用途中で本体部位置で層間のはく離等が生じ当該本体部のゴムに引き裂きなどが生じたりするという問題が発生する可能性がある。
【0008】従来のように、ベルト本体部の一部をピース採取してベルト本体部の接着力をラボで事前に評価する方法では、エンドレス加工時の加工条件やプレス加硫条件に差があるため、エンドレス加工部の接着力を十分に評価できないという問題がある。また、試験片で評価する方法についても、その都度引張試験機を使用しなければならず、そのときそのときのエンドレス加工部の接着力をすばやく且つ簡易に判定することは不可能である。
【0009】また、接合部の接着力を十分に確保したとしても、ベルト自体の強度が不十分であれば、上述のように使用途中で本体部のゴムに引き裂きが生じたりするおそれがある。一方、コンベアベルトに要求される品質は、使用用途や使用場所によって異なり、ベルトが切れると大きな損失に繋がる箇所には、品質の良いものが要求される。
【0010】本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、コンベアベルトなどのベルトの品質を簡易に判定することが可能なベルトの品質判定方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、上部ゴム層と下部ゴム層との間に強化層が配置されて各層間が加硫接着され、上記強化層は、芯材にゴムをコーティングしてなる強化部を1枚又は複数枚積層し積層間を加硫接着してなるベルトの品質判定方法であって、上記上部ゴム層と最上層の強化部との間、下部ゴム層と最下層の強化部との間、及び各強化部間の少なくともいずれか一箇所の層間を、所定長さだけ物理的にはく離させ、そのはく離後の強化部表面への芯材の露出割合によってベルトの品質を判定することを特徴とするものである。
【0012】次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記はく離した強化部表面に対する芯材の非露出部であるゴム付着部の面積の割合と接着力との関係を予め求めておき、当該関係に基づき、実際にはく離させた部分の強化部表面に対するゴム付着面積の割合から接着力を推定して、ベルト全体の品質を判定することを特徴とするものである。次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対し、上記芯材が、帆布もしくはアラミド繊維からなり、上記ゴムの付着面積の割合をA(%)、接着力をF(N/mm)とした場合に、下記(1)式に基づき接着力を推定することを特徴とするものである。
【0013】
A≧50%の場合は、F=0.09×A +1.5 A<50%の場合は、F=0.2×A −4.0 ・・・・(1)
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載した構成に対し、上記はく離する部分は、他のベルトとの接合部となる長手方向端部であることを特徴とするものである。
【0014】ここで、上記「物理的にはく離」とは、手や掴み具などによってはく離部の端を把持して、引っ張って引き剥がすことをいう。発明者らは、エンドレス加工時の際に、ベルト端部の強化部間を物理的にはく離させたときに、芯材の露出具合とベルトの接着強度と間に一定の相関があることを見出し、本発明をなしたものである。本発明によれば、ベルト接合の際などに、強化部間などを物理的にはく離するだけで、特別な試験機を使用することなく、しかも簡易にベルトの接着強度等の品質が判定される。
【0015】特に、芯材が帆布やアラミド繊維からなる場合には、はく離によるゴム付着面積の割合と接着強度との関係について(1)式の結果を実験によって得たため、請求項3の発明の限定を行っている。ここで、基準となる強化部表面の面積は、平面視において、幅方向両端部に位置するゴムだけの部分を除いた部分である。つまり、芯材の面積に相当する。また、請求項4においては、ベルト同士を接合して、エンドレスベルトなど所定長さのベルトを形成する作業のときに、併せてベルトの品質を判定することができる。
【0016】ここで、ベルトの端部をはく離して得た接着強度は、通常本体部でも同じであり、ベルト全体の品質を現していると考えて問題はない。また、上記ゴム付着面積の割合で強度が推定できるのは、次の理由により、この理由を見出したことによって、上述のようにゴム付着面積の割合で強度を簡便に判別できるようになったものである。すなわち、一般に、帆布等の芯材には、ゴムの付着を良くして接着力を得るために、薬品の含浸処理が施される。しかしながら、何らかの原因で含浸処理が十分でないと、エンドレス加工の帆布間はく離作業時に、図4に示す如く、ゴムが芯材表面からはく離し、はく離後の強化部表面に芯材が露出してしまう(図4中のD部が露出部)。一旦芯材が露出してしまうと、芯材表面に接着剤や接着ゴムを使用してプレス加硫しても十分な接着力が得られないことを、実験や調査などによって突き止めた。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、主として製銑原料地区や製鋼地区で使用されるベルトコンベア用のコンベアベルトを例に説明する。ベルトの構成は、上記従来例で説明したものと同じであり、本実施形態では、強化層3の芯材4として帆布が使用されているとする。
【0018】各ベルトの端部(エンドレス加工部)について、従来と同様に所定長さだけ、図2に示すように、階段状に、上部ゴム層1と強化層3との間、強化部間、強化層3と下部ゴム層2との間を、階段状にはく離するように適宜厚さ方向に切り込みを入れつつ引っ張ってはく離させる。このとき、各層の強化部毎に、はく離(はく離)させた部分のうち、強化部面積に対する露出した帆布4の露出面積、若しくは、帆布4の露出してないゴム付着面積を観察し、はく離させた全体の面積に対する、ゴム付着面積の割合を求め、その平均をとる。なお、簡便に、一箇所の強化部間だけで判定してもよい。
【0019】この処理は、図4のような状態を目視だけによる概算(帆布4の露出具合)によって判別しても良いし、方眼紙などをあてがって、帆布露出部分の面積を求めたり、はく離部分を画像処理したりして、ゴム付着の面積の割合を求めても良い。続いて、上記(1)式に基づき接着力を推定する。ここで、芯材4として帆布4を使用したゴムベルトについて、種々の実験によって、ゴム付着面積率と接着力との関係を求めたところ、図5に示すグラフを得た。そして、このグラフを関数化したのが上記(1)式である。図5中に、JIS−6322−1999の規定値の位置を記載する。また、芯材4がアラミド繊維であっても、同様な関係であることを確認している。ここで、ゴム付着面積率は、図4で示すと、「((L1×L2)−(Dの面積))/(L1×L2)×100」で表される。
【0020】そして、上記JISの規定値よりも接着力が若干強い値、すなわちゴムの付着面積の割合が40%未満のベルトは不良品(NG領域)とする。また、良品(OK領域)について、例えば接着力が9N/mm以上つまりゴムの付着面積の割合が80%以上を最良品とし、接着力が9N/mm未満つまりゴムの付着面積の割合が80%未満40%以上を通常品として、ベルトの品質を分別するようにする。なお、JISK6235では、はく離試験におけるはく離速度を50.0±5.0mmと規定しているが、(1)式の妥当性について、現場にて500±50mm程度のはく離速度でも同様な相関関係が維持されることを確認している。すなわち、接着力とゴムの付着面積の割合との間の関係は、実用的な範囲ではく離速度を変えても上記(1)式の関係で表されることを確認している。
【0021】こうして、エンドレス加工の際のはく離時に帆布4に付着するゴムの剥がれ具合によって、不良品か否かの判定や要求される品質を持ったベルトか否かが短時間で且つ容易に判定でき、これによって、確実かつ簡易に所要の品質レベルのベルトだけでコンベアベルトを形成することができる。このように、エンドレス加工時に、ベルトの品質が分かるようになり、しかも短時間で判別できるようになったので、エンドレス加工のやり直しやベルト自体の不適合のための取り替え判定(用途替え判定)が素早くでき、また、エンドレス加工後に、使用中にベルトが外れたりベルトの途中が剥がれたりというトラブルを防止できる。
【0022】以上のように、エンドレス加工部について強化部間のはく離時に帆布4へのゴム付き状態を面積率で表し、その面積率と接着力との関係を予め求めておき、ベルト同士を接合するためのはく離時に上記ゴム付着面積率をその場で求めれば、エンドレス部の接着力、さらにはベルト自体の品質が判定できるので、そのベルトの品質が目的とするベルトとして十分な品質のベルトか否かが短時間で且つ容易に判別できる。この結果、再エンドレス加工の防止や、接合するベルトの取り替え処置も速やかにできるようになった。
【0023】また、経験年数の短い作業者でも確実に目的の品質の接着力を持ったベルトか否かが判定できるようになり、確実に、所定品質レベルのベルトによってコンベアベルトを形成できるようになり、使用途中によるベルト切れが防止できる。また、ベルトの品質を段階的に分けることで、判定の結果、接着力が低いつまり、不良品ではないが、品質が低いと判定したベルトについては、速やかに非重要ベルトコンベア用のベルトへの転用ができるようになり、在庫が削減できるという効果もある。
【0024】なお、品質を段階的に等級分けする場合には、毎回接着強度を求める必要はなく、ゴムの付着面積率や芯材4の露出面積率(はく離面積が一定であれば、当該付着面積や露出面積そのもの)から品質判定をしても良い。
【0025】
【実施例】コークス用ベルトコンベアのベルトであって、幅1200mm、長さ210mで、芯材4に帆布4を使用した強化部を5層積層した強化層3を有し、且つ上部ゴム層1が8.0mm、下部ゴム層2が3.0mm、引張強度が約6300N/cmのいわゆる、EP630/5 1200×5P×8.0×3.0の耐摩耗性ゴムベルト(上部ゴム層1や下部ゴム層2が耐摩耗性ゴムからなるもの)について、上記本願発明に基づき、ベルト端部でのはく離によるはく離具合と品質との関係について調査した。
【0026】上記強化部間のはく離によるゴム付着率が5層とも80〜95%となっているコンベアベルトについては、現在20年経過したが、良好に使用できていることを確認した。一方、強化部間のはく離によるゴム付着率が5層とも50〜60%の範囲のベルトについて、数回端部を切断しながらエンドレス加工をやり直したが、その付着率の値は変わらず、50〜60%の範囲の値であったため、急きょ他のベルトに用途替えをし、重要でないベルトコンベア設定位置で使用した。その後、念のために採取しておいたエンドレス加工部位置のベルト片を用いて、従来のラボによる接着力試験を行ったところ、ほぼ6.0〜7.0の値を有しており、本発明の(1)式に妥当性があることを確認した。
【0027】なお、上記ゴム付着率が5層とも50〜60%の範囲のベルトは、約1.5年使用したところで、ベルトの一部にはく離が確認されたため、補修を実施し、要監視ベルトとした。
【0028】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば、簡易にベルトの品質を判定することができる。特に、ベルト接合の際のはく離時にベルトの品質を素早く判定することができるようになるので、確実に所定品質のベルトだけを接合することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルトの幅方向断面を示す図である。
【図2】ベルト間の接合部を示す長手方向に沿った断面図である。
【図3】図2におけるB位置での、強化部間の接合部を示す図である。
【図4】強化部間をはく離したのちのイメージを示す斜視図である。
【図5】ゴム付き面積率と接着力との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 上部ゴム層
2 下部ゴム層
3 強化層
4 芯材(帆布)
5 被覆ゴム
6 接着ゴム
7 強化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上部ゴム層と下部ゴム層との間に強化層が配置されて各層間が加硫接着され、上記強化層は、芯材にゴムをコーティングしてなる強化部を1枚又は複数枚積層し積層間を加硫接着してなるベルトの品質判定方法であって、上記上部ゴム層と最上層の強化部との間、下部ゴム層と最下層の強化部との間、及び各強化部間の少なくともいずれか一箇所の層間を、所定長さだけ物理的にはく離させ、そのはく離後の強化部表面への芯材の露出割合によってベルトの品質を判定することを特徴とするベルトの品質判定方法。
【請求項2】 上記はく離した強化部表面に対する芯材の非露出部であるゴム付着部の面積の割合と接着力との関係を予め求めておき、当該関係に基づき、実際にはく離させた部分の強化部表面に対するゴム付着面積の割合から接着力を推定して、ベルト全体の品質を判定することを特徴とする請求項1に記載したベルトの品質判定方法。
【請求項3】 上記芯材が、帆布もしくはアラミド繊維からなり、上記ゴムの付着面積の割合をA(%)、接着力をF(N/mm)とした場合に、下記(1)式に基づき接着力を推定することを特徴とする請求項2に記載したベルトの品質判定方法。
A≧50%の場合は、F=0.09×A +1.5 A<50%の場合は、F=0.2×A −4.0 ・・・・(1)
【請求項4】 上記はく離する部分は、他のベルトとの接合部となる長手方向端部であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載したベルトの品質判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−136608(P2003−136608A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−335282(P2001−335282)
【出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】