説明

ベルトの脱落防止機構、及び紙葉類取扱装置

【課題】紙葉類搬送用のベルトを巻き掛けて走行させるために使用されるローラ部材からベルトが脱落することを確実に防止するばかりでなく、位置ずれしたベルトのローラ部材周面への自己復帰を促進することができるベルトの脱落防止機構、及び紙葉類取扱装置を提供する。
【解決手段】軸部材2の外周面に配置した軸受部材3によって回転自在に支持されたローラ部材5と、ローラ部材の軸方向両端部より外側の軸部材外周面に固定配置されてローラ部材外周面に巻掛けられたベルトの脱落を防止する脱落防止部材15と、を備え、各脱落防止部材は、ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片16を備え、少なくとも一つのベルト係止片の内壁16aにはその周方向に沿ってベルト端縁を係止可能な係止部30が少なくとも一つ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣等の紙葉類を搬送する機構を備えた紙葉類取扱装置において紙葉類搬送用のベルトを巻き掛けて走行させるために使用されるローラ部材からベルトが脱落することを防止する脱落防止機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
各種自動販売機、入出金装置、両替機、パチンコ遊技場で使用される台間機等の紙幣取扱装置は、入金された紙幣を装置内部に搬送するための紙葉類搬送機構を備えている。紙葉類搬送機構は、所定の経路に沿って配設されたエンドレスなベルトを複数のローラに巻き掛けた構成を備え、ローラの一つをモータにより回転駆動することによってベルトを走行させて紙幣を搬送する。
ところで、紙幣の折れ癖や紙詰まり等により、搬送方向とは異なる方向への力がベルトに対して加わると、この力によりベルトがローラから位置ずれしたり、最悪の場合にはベルトが脱落することがある。このような不具合の発生を防止するためにローラの軸方向中央部を外径方向に膨出させた樽形状とすることが有効である。このように構成することで、ベルトがずれた場合でもベルトがローラの中央部に自己復帰するよう動作することが知られている。
更に、大きな外力が加わった場合でも、ベルトが外れないよう特許文献1のような構造が提案されている。
特許文献1には、中央が凸状のプーリの軸方向両側に溝を介してベルト外れ防止用のフランジを一体化した構成が開示されており、このフランジは大きな外力によってベルトがプーリから位置ずれした場合にベルト端縁を内壁で係止して脱落を防止し、ベルトの自己復帰を促す機能を有する。
しかし、フランジ内壁は回転軸と直交する方向へ延びる平坦面であるためプーリ外周面から幅方向へ位置ずれしたベルトの端縁がフランジ内壁との間で滑りを起こして十分に係止できず、溝の内奥部にベルトが落ち込み易くなる。その結果、プーリの回転によるベルトの自己復帰効果が低下する。
なお、上記の如き問題は、紙幣取扱装置のみならず、各種紙葉類を搬送する機構を備えた紙葉類取扱装置一般に装備されるローラ部材支持機構において同様に生じる問題である。
【特許文献1】特開平8−226529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のように、ベルトを巻掛けるプーリの軸方向両側に所定のギャップを介してベルトの脱落を防止するフランジを配置した従来の脱落防止機構においては、フランジ内壁が駆動軸と直交する方向へ延びる平坦面であるため、ベルト端縁との間で滑りが発生して係止力が低下する虞があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、紙葉類取扱装置において紙葉類搬送用のベルトを巻き掛けて走行させるために使用されるローラ部材からベルトが脱落することを確実に防止するばかりでなく、位置ずれしたベルトのローラ部材周面への自己復帰を促進することができるベルトの脱落防止機構、及び紙葉類取扱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため請求項1の発明に係るベルトの脱落防止機構は、軸部材に配置した軸受部材と、該軸受部材を介して該軸部材によって内周面を回転自在に支持されたローラ部材と、該ローラ部材の軸方向両端部より外側の前記軸部材外周面に固定配置されて前記ローラ部材外周面に巻掛けられたベルトの脱落を防止する脱落防止部材と、を備え、前記各脱落防止部材は、前記ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片を備え、少なくとも一つの前記ベルト係止片の内壁にはその周方向に沿って前記ベルト端縁を係止可能な係止部が少なくとも一つ形成されていることを特徴とする。
ローラ部材が軸部材に対して相対回転すると共に、脱落防止部材が軸部材と一体化されたタイプにおいて、単にベルトの位置ずれを規制するためのベルト係止片を設けるだけでなく、ベルト係止片の内壁にベルト端縁を係止する係止部を設けることにより、ローラ部材外周面から軸方向へ位置ずれして端縁をベルト係止片内壁に接触させたベルトをいち早く係止してそれ以上の位置ずれを阻止すると共に、ローラ部材の回転による自己復帰をいち早く実現することができる。
【0005】
請求項2の発明に係るベルトの脱落防止機構は、軸部材の外周面に固定、又は回転自在に軸支したローラ部材と、該ローラ部材の軸方向両側方に一体化されて前記ローラ部材外周面に巻掛けられたベルトの脱落を防止する脱落防止部材と、を備え、前記各脱落防止部材は、前記ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片を備え、少なくとも一つの前記ベルト係止片の内壁にはその周方向に沿って前記ベルト端縁を係止可能な係止部が少なくとも一つ形成されていることを特徴とする。
ローラ部材と脱落防止部材が一体化された状態で軸部材に対して一体化されるか、或いは一体化されたローラ部材と脱落防止部材が軸部材によって相対回転可能に支持されたタイプにおいて、単にベルト係止片を設けるだけでなく、ベルト係止片の内壁に係止部を設けることにより、ローラ部材外周面から軸方向へ位置ずれして端縁をベルト係止片内壁に接触させたベルトをいち早く係止してそれ以上の位置ずれを阻止すると共に、ローラ部材の回転による自己復帰をいち早く実現することができる。
【0006】
請求項3の発明に係るベルトの脱落防止機構は、請求項1、又は2において、前記係止部は、係止溝、或いは係止突起であることを特徴とする。
係止部をベルト係止片内壁に設けた係止溝とすることにより溝内にてベルト端縁を係止することができる。また、係止部をベルト係止片内壁に設けた係止突起とすることにより係止突起上にてベルト端縁を係止することができる
請求項4の発明に係るベルトの脱落防止機構は、請求項1、2、又は3において、前記係止部は、前記内壁に同心円状に複数本形成されていることを特徴とする。
係止部はベルト係止片の内壁の周方向に沿って円形に配置し、しかも複数本配置することにより、ベルト端縁がどのような角度でベルト係止片内壁に接触してきたとしても直ちに捕捉、係止することができる。
請求項5の発明に係るベルトの脱落防止機構は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記ベルト係止片の内壁は、外径側から内径側へ向って前記ローラ部材側へ接近するテーパー形状、或いは湾曲形状を有していることを特徴とする。
ベルト係止片内壁が軸部材の軸方向と直交する平坦面ではなく、ローラ部材側へ向かってテーパー状、或いは湾曲状となっていることにより、位置ずれしたベルト端縁がギャップ内奥部に入りにくくなり、内壁によっていち早く係止される。この内壁に前記係止部を設ければ、更に効果が高まる。
請求項6の発明に係る紙葉類取扱装置は、請求項1乃至5の何れか一項に記載のベルトの脱落防止機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、脱落防止部材は、ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片を備え、少なくとも一つのベルト係止片の内壁にはその周方向に沿ってベルト端縁を係止可能な係止部が少なくとも一つ形成されているため、ローラ部材外周面から軸方向へ位置ずれして端縁をベルト係止片内壁に接触させたベルトをいち早く係止してそれ以上の位置ずれを阻止すると共に、ローラ部材の回転による自己復帰をいち早く実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を添付図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るベルトの脱落防止機構を示す斜視図、及び縦断面図である。
ベルトの脱落防止機構1は、固定軸(軸部材)2と、固定軸2の外周面に配置した軸受部材3と、軸受部材3を介して固定軸2によって内周面を回転自在に支持され且つ軸受部材3の軸方向両側にオーバーハングした張出し部5aを備えたローラ部材5と、ローラ部材5の軸方向両端部よりも外側の固定軸外周面に固定配置されてローラ部材外周面に巻掛けられたベルト10の脱落を防止する脱落防止部材15と、を備えている。
軸受部材3は、固定軸2の外周に固定された内側環状片(固定部品)3aと、内側環状片3aの外径側に配置された外側環状片(可動部品)3bと、両環状片3a、3b間に転動自在に保持されたボールベアリング(可動部品)3cとから構成されており、外側環状片3bはボールベアリング3cが転動することによって内側環状片3aに対して回転する。
【0009】
ローラ部材5は中空体であり、その内周面中央部に外側環状片3bの外周面を固定することにより固定軸2に対して回転自在となっている。両張出し部5aと固定軸2の外周面との間には空間が形成されている。また、ローラ部材の外周面は円弧状(クラウニング部)となっているため、ローラ部材外周面の中央部に巻掛けられていたベルトが軸方向に位置ずれを起こした場合に、ローラ部材の回転によるクラウン効果によって正規の位置に自己復帰することができる。但し、ベルトの位置ずれの幅が大きい場合にはローラ部材から脱落する虞があるので、本発明では脱落防止部材15を設けてベルト端縁を係止し、ベルトの位置ずれがローラ部材からの脱落に進行することを阻止するように構成している。
各脱落防止部材15は、ローラ部材5の両側端面との間にギャップGを介して対向配置されたベルト係止片16と、各ベルト係止片16の内径部から夫々軸受部材3に向けて突設されて先端部の突起17aを軸受部材の内側環状片(固定部品)3aに当接させた防塵片17と、を備えている。脱落防止部材15は、Eリング25を用いて固定軸2上に固定されている。
【0010】
ベルト係止片(フランジ)16の内壁16aには、その周方向に沿ってベルト端縁を係止可能な係止部30が少なくとも一つ形成されている。本例では、係止部30は円周方向へ延びる係止溝31であり、径方向位置の異なる複数本の係止溝31を同心円状にベルト係止片の内壁に配置しているため、図1(b)中に破線で示したようにローラ部材5の外周面から軸方向(ベルトの幅方向)にベルト10が位置ずれを起こしたとしても、何れかの係止溝31によって確実にベルト端縁をいち早く捕捉して係止し、ベルト10が係止された係止溝を越えて更に内径方向(固定軸方向)へ入り込むことがないように機能する。仮に係止溝31が一本しか存在しない場合には、位置ずれを起こしたベルトの湾曲状態によってはベルト端縁が当該一本の係止溝よりも内径側の内壁部位に直接当接することもあり、この場合にはベルトの位置ずれがギャップ内を更に内径方向へ向けて更に進行することもある。また、当該一本の係止溝より外径側の内壁部位にベルト端縁が最初に当接した場合にはベルト端縁が更に係止溝内に落ち込むまで位置ずれが進行するため、ローラ部材の回転によるクラウン効果の発生が遅延する。このため、ベルト係止片16の内壁16aの外径側から内径側に向けて複数本の係止溝31を同心円状に任意のピッチにて配置することが好ましい。なお、係止溝31の断面形状は本例では矩形としたが、後述するように種々の変形パターンを適用することができる。また、係止溝31の径方向幅は、使用するベルト10の端部を受入れ、或いは係止可能な程度に設定する。また、係止溝31は、周方向に連続していることが好ましいが、断続的に設けてもよい。また、係止溝31の周方向形状は固定軸と同心円状の円形であることが好ましいが、波線、或いはジグザグ線からなる概略円形としてもよい。
【0011】
また、ベルト係止片16の径方向高さは、ローラ部材の外周面と同等か、僅かに低く設定する。ベルト係止片16の突出長がローラ部材を越えると、ベルトにより搬送される紙葉類と干渉する虞があるからである。
突起17aは内側環状片3aの肉厚に見合う薄い肉厚を有しており、突起17aよりも外径側に位置する防塵片17の内側端面17bと軸受部材3の側端面との間には所定の狭いスペースS1が形成されている。更に、防塵片17は、その外周面とローラ部材の張出し部5aの内周面との間に狭い第2のスペースS2を形成している。第1のスペースS1と第2のスペースS2とは連通することにより屈曲した迷路状の狭い空間を形成している。従って、防塵片17は、軸受部材3の可動部である外側環状片3b及びボールベアリング3c、更にはローラ部材5と非接触の状態で固定軸2上に固定されることとなる。
このように、固定軸2とローラ部材の張出し部5aとの間に従来形成されていた広い空間内に脱落防止部材15の一部を構成する防塵片17を配置して迷路状の狭い空間S1、S2を形成したため、紙粉やその他の塵埃が軸受部材内部に侵入して経時的に回転不良を惹起する不具合の発生を大幅に低減することができる。また、ローラ部材の両側に配置される脱落防止部材15の一部としての防塵片17を用いて防塵用の狭い空間S1、S2を形成したため、高価なシール付きの軸受部材を用いる必要がなくなり、コストアップを防ぐことができる。
特に、空間S2部分の間隔が防塵効果に影響することが実験により確認されており、各部材の製作バラツキを加味すると、0.2mm程度に限定することが望ましい。
【0012】
次に、図2は本発明の他の実施形態の要部構成図であり、ベルト係止片16の内壁16aに係止溝31を設けると共に、図2(a)の実施形態ではベルト係止片16の内壁16aが、外径側から内径側へ向ってローラ部材側へ接近するテーパー形状を有している。図2(b)の実施形態ではベルト係止片16の内壁が凹状であり、外径側から内径側へ向ってローラ部材側へ接近する湾曲形状を有している。図2(c)の実施形態ではベルト係止片16の内壁が凸状であり、外径側から内径側へ向ってローラ部材側へ接近する湾曲形状を有している。
ベルト係止片16の内壁16aを固定軸2と直交しないテーパー面、或いは湾曲面とすることにより係止溝31なしでもローラ部材5の端縁から位置ずれしてきたベルト10の端縁が内壁16aに沿って内径側へ落ち込むことを早期に阻止してローラ部材の回転による自己復帰効果を早期に発揮させることができる。
即ち、図2(a)(b)(c)の各実施形態においては、ベルト係止片の内壁16aをテーパー面、或いは湾曲面としたことと、係止溝31を設けたことによる相乗効果によって、ベルトの位置ずれの進行を更に早期に阻止すると共に、自己復帰を更に早期に実現することが可能となる。
なお、図2には係止部30として係止溝31のみを示したが後述する係止突起を設けても良いし、内壁16aのほぼ全面に細かい凹凸を形成してベルト端縁との間の摩擦抵抗を高めても良い。
【0013】
次に、図3は本発明の他の実施形態に係るベルト係止片の構成例を示す図であり、この実施形態では係止溝の断面形状として矩形以外の構成例を示している。
図3(a)は係止溝31の断面形状を、内径側面31aが固定軸(軸部材)2の軸方向と平行な面とし、且つ外径側面31bがローラ部材に向けて上向きに傾斜(開放)した傾斜面としている。ローラ部材5の周面から外側へ位置ずれしてくるベルト端縁は斜め上方からベルト係止片の内壁16aに向けて移動してくるため、係止溝31の外径側面31bを図示のように傾斜させることによってベルト端縁を係止溝内に受け入れやすくすることができる。一方、内径側面31aが固定軸の軸方向と平行であるため、係止溝31内に入り込んだベルト端縁を係止し易くなる。また、ベルトが自己復帰する際には傾斜した外径側面31bがベルト端縁が係止溝から離脱する際の抵抗とならないので自己復帰がスムーズ化する。
なお、図3(b)のように内径側面31aを外径側面31bと同様に傾斜させてもよい。この場合には、ベルト端縁が係止溝31内に入り込み易くなる一方で、係止溝内から内径方向へずれることがなくなる。
或いは、図3(c)のように内径側面31aを外径側面31bとは逆方向に傾斜させてもよいし、(d)のように係止溝31内を円弧状としてもよい。
更に、図3(e)に示すようにベルト係止片16の内壁16aをテーパー面とした場合に直角三角形状の断面形状を有した係止溝31を複数設けて階段状に構成してもよい。このように内壁を階段状に構成すれば、位置ずれしたベルト端縁が何れかの係止溝31内に極めてスムーズに入り込んで係止溝31の内径側面31aにより係止される。また、自己復帰時にも抵抗なくローラ部材側へ移動することができる。
なお、図2(b)に示した凹状曲面の内壁16a、図2(c)に示した凸状曲面の内壁16aに図3(e)に示した階段形状の係止溝を適用してもよい。
【0014】
次に、図4は本発明の他の実施形態に係るベルト係止片の構成例を示す図であり、この実施形態では係止部30として係止溝に代えて係止突起32を採用している。即ち、係止突起32は係止片の内壁16a上に周方向に沿って少なくとも一本連続して、或いは断続的に配置される。係止突起32の周方向形状は軸部材2と同心円状の円形であることが好ましいが、ベルト端縁を係止する機能を発揮できれば、必ずしも正確な円形である必要はない。
図4(a)の係止突起32は矩形の突起であり、この矩形の係止突起32をベルト係止片16の内壁16aに外径方向から内径方向へ向けて任意の配置で突設することにより、位置ずれしたベルト端部がベルト係止片の内壁に当接する位置に関係なく直ちに捕捉、係止してそれ以上の位置ずれを阻止し、自己復帰動作を早く実現させることができる。
図4(b)に示した係止突起32はその内径側面32aが外径側に向けて傾斜しているため、内壁16aに向けて移動してくるベルト端縁を内径側に位置する他の係止突起32上に受け入れやすくなっており、更に自己復帰動作をスムーズに行うことが可能となる。また、係止突起の先端部が尖っていることによりベルト端縁の係止力が高まる。
図4(c)に示した係止突起は(b)の場合と同様にその内径側面32aが外径側に向けて傾斜しているため、内壁16aに向けて移動してくるベルト端縁を下側に位置する他の係止突起32上に受け入れやすくなっており、更に自己復帰動作をスムーズに行うことが可能となる。
或いは、図4(d)のように内径側に向かうほど係止突起の突出長が漸増するように構成してもよい。これによれば、図2、或いは図2に示したテーパー状、或いは湾曲状の内壁16aと同様の効果を奏することができる。
【0015】
次に、図5(a)は本発明のベルトの脱落防止機構の他の実施形態を示す要部拡大図である。この実施形態においては、同一寸法のローラ部材5に掛け回すベルト10の幅寸法が変更されて広幅のベルトを用いる必要が生じた場合に、ベルト幅の増大に伴ってローラ部材5とベルト係止片16との間のギャップGを拡大することを可能にしている。即ち、本実施形態では、軸受部材3を構成する内側環状片3aと防塵片17の先端の突起17aとの間に、環状のスペーサ20を介在させることによってギャップGを任意の寸法にまで拡大設定可能に構成している。
スペーサ20は内側環状片3aと同等の肉厚を有したリング部材であり、幅寸法の異なるスペーサ20を予め複数種類用意しておき、適用するベルト幅に応じてスペーサ20を使い分ける。
これによれば、異なったサイズの脱落防止部材15を予め用意して変更使用することなく、しかも防塵用のスペースS1、S2を維持しつつ、ギャップGを変更して、ベルト幅の変更に対応することができる。
スペーサ20を配置することにより、空間S1の間隔が広がることになるが、空間S2による防塵効果によりその影響は少なくなる。また、ギャップGを大きく拡げる場合には、スペーサ20として図5(b)に示すように防塵片17の先端部17a、17bと同様の先端形状を有するスペーサを用いればよい。
ベルト係止片とローラ部材との間隔、即ちギャップGの幅は、ベルトの幅の変更に応じて変更することが望ましいが、特許文献1のように両部材が一体化している場合にはその要請に応えるためにはベルト幅に合った溝幅の係止片付きローラ部材を個別に製作するしかなかった。
本発明においては、ベルト係止片16(脱落防止部材15)と、ローラ部材とを別部材としており、しかも上記の如きギャップ調整機構を備えているので、ベルト幅の変更に対して柔軟に対応してギャップ幅を変更しつつ、ベルトの位置ずれを解消することが可能となる。
【0016】
次に、図6(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るベルトの脱落防止機構を示す斜視図、及び断面図である。
このベルトの脱落防止機構1は、図示しないモータによって回転駆動される駆動軸(軸部材)40と、駆動軸40の外周面に固定されたローラ部材41と、ローラ部材41の軸方向両端部に対してギャップG(溝)を介して一体化されてローラ部材外周面に巻掛けられたベルト10の脱落を防止する脱落防止部材45(ベルト係止片46)と、を備えている。従って、ローラ部材41と脱落防止部材45とは一体回転する。ローラ部材41の外周面には中央部が外径方向へ膨出した円弧状部が形成されているため、ローラ部材外周面の中央部に巻掛けられていたベルト10が軸方向に位置ずれを起こした場合に、ローラ部材の回転によるクラウン効果によって正規の位置に自己復帰することができる。但し、ベルトの位置ずれの幅が大きい場合にはローラ部材から脱落する虞があるので、本発明では脱落防止部材45を設けてベルト端縁を係止し、ベルトの位置ずれがローラ部材からの脱落に進行することを阻止するように構成している。
各脱落防止部材45は、ローラ部材5の両側端面との間にギャップGを介して対向配置されたベルト係止片46を備えている。
ベルト係止片(フランジ)46の内壁46aには、その周方向に沿ってベルト端縁を係止可能な係止部(係止溝、係止突起)50が少なくとも一つ形成されている。
内壁46a、係止部50については、上記各実施形態における内壁16a、係止部30について述べた構成(図2乃至図4)をそのまま適用し、同様の効果を得ることができる。
即ち、内壁46aの形状については図示の如き平坦面であっても良いし、図2に示した如きテーパー面、或いは湾曲面であってもよい。
【0017】
また、係止部50としては図2、図3に示した如き係止溝であってもよいし、図4に示した如き係止突起であってもよい。
なお、図6の例では、ローラ部材41及び脱落防止部材45を駆動軸(軸部材)40に固定した構成を示したが、固定軸の外周にローラ部材41及び脱落防止部材(ベルト係止片)45を回転自在に支持した場合についても本発明を適用することができる。
以上のように構成したため、本発明のベルトの脱落防止機構によれば、ローラ部材5の軸方向両側にギャップGを介して配置したベルト係止片16、46の内壁16a、46aに係止部30、50を設けることにより、ローラ部材外周面から軸方向へ位置ずれして端縁をベルト係止片内壁に接触させたベルト10をいち早く係止してそれ以上の位置ずれを阻止すると共に、ローラ部材の回転による自己復帰をいち早く実現することができる。
また、係止部30、50をベルト係止片内壁に設けた係止溝とすることにより溝内にてベルト端縁を係止することができる。また、係止部をベルト係止片内壁に設けた係止突起とすることにより係止突起上にてベルト端縁を係止することができる
また、係止部はベルト係止片の内壁の周方向に沿って円形に配置し、しかも複数本配置することにより、ベルト端縁がどのような角度でベルト係止片内壁に接触してきたとしても直ちに捕捉、係止することができる。
【0018】
また、ベルト係止片内壁が軸部材の軸方向と直交する平坦面ではなく、ローラ部材側へ向かってテーパー状、或いは湾曲状となっていることにより、位置ずれしたベルト端縁がギャップ内奥部に入りにくくなり、内壁によっていち早く係止される。この内壁に前記係止部を設ければ、更に効果が高まる。
また、本発明によれば、ローラ部材5に巻掛けられるベルト10の位置ずれ脱落を防止するための脱落防止部材15の一部を利用して軸受部材3の軸方向外側に迷路状のスペースを形成するようにしたので、格別の部材を増設せずに低コストで、軸受部材に紙粉、その他の塵埃が侵入することを防止できる。このため、長期間に亘って紙粉等が軸受部材内に入り込んで回転不良を起こすことを防止できる。また、脱落防止部材の内径側の一部を延長形成して軸受部材と当接させるだけの簡単な構造の改良により上記効果を実現できる点が利点である。
また、ローラ部材5に巻掛けるベルトの幅サイズが変更する場合にスペーサ20を用いてローラ部材と脱落防止部材との間のギャップを調整できる。
本発明のローラ部材の支持構造は、ローラ部材5の外周面に巻き掛けたベルト10によって紙幣等の紙葉類を搬送する紙葉類搬送機構を備えた紙葉類取扱装置、例えば 各種自動販売機、入出金装置、両替機、パチンコ遊技場で使用される台間機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るベルトの脱落防止機構を示す斜視図、及び縦断面図である。
【図2】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態の要部構成図である。
【図3】(a)乃至(e)は本発明の他の実施形態に係るベルト係止片の構成例を示す図である。
【図4】(a)(b)(c)及び(d)は本発明の他の実施形態に係るベルト係止片の構成例を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明のベルトの脱落防止機構の他の実施形態を示す要部拡大図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るベルトの脱落防止機構を示す斜視図、及び断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…ベルトの脱落防止機構、2…固定軸、3…軸受部材、3a…内側環状片、3b…外側環状片、3c…ボールベアリング、5…ローラ部材、5a…張出し部、10…ベルト、15…脱落防止部材、16…ベルト係止片、16a…内壁、17…防塵片、17a…突起、17b…内側端面、20…スペーサ、25…Eリング、30…係止部、31…係止溝、31a…内径側面、31b…外径側面、32…係止突起、32a…内径側面、40…駆動軸、41…ローラ部材、45…脱落防止部材、46…ベルト係止片、46a…内壁、50…係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材に配置した軸受部材と、該軸受部材を介して該軸部材によって回転自在に支持されたローラ部材と、該ローラ部材の軸方向両端部より外側の前記軸部材外周面に固定配置されて前記ローラ部材外周面に巻掛けられたベルトの脱落を防止する脱落防止部材と、を備え、
前記各脱落防止部材は、前記ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片を備え、
少なくとも一つの前記ベルト係止片の内壁にはその周方向に沿って前記ベルト端縁を係止可能な係止部が少なくとも一つ形成されていることを特徴とするベルトの脱落防止機構。
【請求項2】
軸部材の外周面に固定、又は回転自在に軸支したローラ部材と、該ローラ部材の軸方向両側方に一体化されて前記ローラ部材外周面に巻掛けられたベルトの脱落を防止する脱落防止部材と、を備え、
前記各脱落防止部材は、前記ローラ部材の両側端面との間にギャップを介して対向配置されたベルト係止片を備え、
少なくとも一つの前記ベルト係止片の内壁にはその周方向に沿って前記ベルト端縁を係止可能な係止部が少なくとも一本形成されていることを特徴とするベルトの脱落防止機構。
【請求項3】
前記係止部は、係止溝、或いは係止突起であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のベルトの脱落防止機構。
【請求項4】
前記係止部は、前記内壁に同心円状に複数本形成されていることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のベルトの脱落防止機構。
【請求項5】
前記ベルト係止片の内壁は、外径側から内径側へ向って前記ローラ部材側へ接近するテーパー形状、或いは湾曲形状を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のベルトの脱落防止機構。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のベルトの脱落防止機構を備えたことを特徴とする紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256047(P2009−256047A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106918(P2008−106918)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】