説明

ベルトクリーニング装置および連続炉

【課題】洗浄水を必要とせずにメッシュベルトの汚れを除去することができるベルトクリーニング装置を提供する。
【解決手段】ベルトクリーニング装置200は、無端状に形成され、被処理物Wを搭載して搬送するためのメッシュベルト210をクリーニングする。また、ベルトクリーニング装置200は、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230を備える。第1円柱ブラシ部材220は、被処理物Wが搭載されない領域に配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面に摺接する。第2円柱ブラシ部材230は、第1円柱ブラシ部材220に対向して配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面に摺接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュベルトの汚れを除去するためのベルトクリーニング装置およびこのベルトクリーニング装置を備える連続炉に関する。
【背景技術】
【0002】
連続熱処理炉は、被処理物の搬送方法により熱処理炉のタイプが分類され、一例としてメッシュベルト式の熱処理炉があげられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
メッシュベルト式の熱処理炉は、メッシュベルト上に被処理物を搭載して、加熱室、冷却室を経て出口まで搬送する構成である。したがって、メッシュベルトは、メッシュベルトの摩耗粉、被処理物からの発生成分およびメッシュベルトの酸化スケール等の汚れが付着する。
【0004】
そこで、メッシュベルトの汚れを除去するために、洗浄水槽内の洗浄水にメッシュベルトを通過させて超音波洗浄を行う技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−014227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、メッシュベルトを超音波洗浄する場合には、洗浄水の給排水が必要であるが、工場の設備の関係で、それが不可能な場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題に鑑み、洗浄水を必要とせずにメッシュベルトの汚れを除去することができるベルトクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のベルトクリーニング装置は、無端状に形成され、被処理物を搭載して搬送するためのメッシュベルトをクリーニングする。また、本発明のベルトクリーニング装置は、第1ブラシ部材および第2ブラシ部材を備える。第1ブラシ部材は、被処理物が搭載されない領域に配置され、メッシュベルトにおける被処理物の搭載面に摺接する。第2ブラシ部材は、第1ブラシ部材に対向して配置され、メッシュベルトにおける被処理物の非搭載面に摺接する。
【0009】
この構成では、第1ブラシ部材をメッシュベルトにおける被処理物の搭載面に摺接させ、第2ブラシ部材をメッシュベルトにおける被処理物の非搭載面に摺接させるだけで、メッシュベルトの汚れを除去することができる。したがって、洗浄水を必要とせずにメッシュベルトの汚れを除去することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明におけるベルトクリーニング装置は、洗浄水を必要とせずにメッシュベルトの汚れを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るベルトクリーニング装置を備える連続炉の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るベルトクリーニング装置の構成を示す図である。
【図3】図2の変形例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るベルトクリーニング装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るベルトクリーニング装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るベルトクリーニング装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の複数の実施形態を組み合わせたベルトクリーニング装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るベルトクリーニング装置を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
最初に、本発明の第1実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係るベルトクリーニング装置200を備える連続炉100の構成を示す図である。
【0015】
連続炉100は、加熱室110、冷却室120、テーブルローラ130,140、フリーローラ150、ベルト駆動機構160、ベルトクリーニング装置200およびメッシュベルト210を備える。
【0016】
加熱室110は、室内を900度程度に維持することで、被処理物Wに対して加熱処理を施し、被処理物Wを熱処理する。冷却室120は、水冷または空冷されており、その内部は中性雰囲気から構成されている。冷却室120は、加熱室110によって加熱処理された被処理物Wを冷却する。
【0017】
テーブルローラ130,140は、無端状のメッシュベルト210を張架している。フリーローラ150は、メッシュベルト210の回転に従動して回転し、後述するプッシャーローラ163との間に、メッシュベルト210の遊び211を形成している。
【0018】
ベルト駆動機構160は、駆動ドラム161、プッシャーローラ162,163、チェーン164および駆動モータ165を有する。駆動ドラム161は、その外周部分にメッシュベルト210を巻きつけ、駆動モータ165によって駆動回転されることにより、メッシュベルト210を回転させる。プッシャーローラ162は、メッシュベルト210にテンションをかけつつ、メッシュベルト210を駆動ドラム161に導く。
【0019】
プッシャーローラ163は、フリーローラ150との間に、メッシュベルト210の遊び211を形成している。チェーン164は、一例として金属から構成されており、駆動ドラム161と駆動モータ165とを張架する。駆動モータ165は、チェーン164を介して駆動ドラム161を駆動させる。駆動モータ165は、チェーン164を矢印166方向に回転させることで、メッシュベルト210を矢印212方向に回転させる。したがって、メッシュベルト210に搭載された被処理物Wは、矢印170方向へ、すなわち、加熱室110から冷却室120へ移動する。
【0020】
ベルトクリーニング装置200は、加熱室110および冷却室120を通過した無端状のメッシュベルト210をクリーニングするための装置である。その詳細については後述する。
【0021】
メッシュベルト210は、一例として耐腐食性および耐熱性の高い金属から構成されている。前述したように、メッシュベルト210は、被処理物Wを搭載し、高温に維持された加熱室110を通過する必要があるからである。メッシュベルト210は、無端状に形成され、被処理物Wを搭載して搬送するためのベルトである。
【0022】
前述したように、メッシュベルト210は、フリーローラ150とプッシャーローラ163との間に遊び211を形成している。メッシュベルト210は、高温に維持された加熱室110を通過し、その後冷却室120を通過するため、メッシュベルト210自身が伸縮する。したがって、遊び211を形成することにより、メッシュベルト210の伸縮に対応させている。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態に係るベルトクリーニング装置200の構成を示す図である。
【0024】
ベルトクリーニング装置200は、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230を備える。
【0025】
第1円柱ブラシ部材220は、被処理物Wが搭載されない領域に配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面に摺接する。第2円柱ブラシ部材230は、第1円柱ブラシ部材230に対向して配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面に摺接する。なお、被処理物Wが搭載されない領域とは、図1に示す領域180のことである。
【0026】
本実施形態では、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230は、中心軸が固定された状態で使用される。すなわち、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230は、固定ブラシとして使用される。固定ブラシを円柱形状とすると、メッシュベルト210との摺接面が劣化してきた場合に、円柱形状の他の部分を摺接面にもってこればよいため、固定ブラシとして長期間の使用が可能である。
【0027】
なお、図3に示すように、固定ブラシとして平面ブラシを用いてもよい。すなわち、第1平面ブラシ部材220Aは、被処理物Wが搭載されない領域に配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面に摺接し、また、第2平面ブラシ部材230Aは、第1平面ブラシ部材220Aに対向して配置され、メッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面に摺接する。
【0028】
この構成では、第1円柱ブラシ部材220(第1平面ブラシ部材220A)をメッシュベルト210における被処理物Wの搭載面に摺接させ、第2円柱ブラシ部材230(第2平面ブラシ部材230A)をメッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面に摺接させるだけで、メッシュベルト210の汚れを除去することができる。したがって、洗浄水を必要とせずにメッシュベルト210の汚れを除去することができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降の各実施形態においては、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態に係るベルトクリーニング装置200の構成を示す図である。
【0031】
本実施形態の第1円柱ブラシ部材221および第2円柱ブラシ部材231は、回転自在に構成されている。ベルトクリーニング装置200は、第1円柱ブラシ部材221および第2円柱ブラシ部材231をその中心軸周りに回転駆動するための駆動機構240をさらに備える。
【0032】
駆動機構240は、チェーン241および駆動モータ242を有する。チェーン241は、無端状に形成され、一例として金属から構成されている。チェーン241は、駆動モータ242のスプロケット242A、第1円柱ブラシ部材221のスプロケット222および第2円柱ブラシ部材231のスプロケット232に張架され、かつ、スプロケット242A、スプロケット222およびスプロケット232と噛合している。駆動モータ242は、チェーン241を介して第1円柱ブラシ部材221および第2円柱ブラシ部材231に駆動力を伝達する。
【0033】
本実施形態では、チェーン241は、駆動モータ242からの駆動力を受けて、矢印243方向に回転する。したがって、第1円柱ブラシ部材221は、矢印223方向に回転し、第2円柱ブラシ部材231は、矢印233方向に回転する。すなわち、駆動機構240は、第1円柱ブラシ部材221と第2円柱ブラシ部材231とを同方向に回転させることで第1円柱ブラシ部材221および第2円柱ブラシ部材231の外周面をメッシュベルト210に摺動させる。
【0034】
また、メッシュベルト210は、矢印212方向に移動するため、第1円柱ブラシ部材221は、メッシュベルト210との摺接面においてメッシュベルト210の移動方向と反対方向に回転し、第2円柱ブラシ部材231は、メッシュベルト210との摺接面においてメッシュベルト210の移動方向と同方向に回転する。なお、第2円柱ブラシ部材231の周速とメッシュベルト210の移動速度とは異なる。
【0035】
メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面は、メッシュベルトの摩耗粉、被処理物Wからの発生成分およびメッシュベルトの酸化スケール等の汚れが付着しやすい。したがって、第1円柱ブラシ部材221は、メッシュベルト210との摺接面においてメッシュベルト210の移動方向と反対方向に回転するため、メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面を効率的にクリーニングすることができる。
【0036】
また、メッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面は、被処理物Wからの発生成分およびメッシュベルトの酸化スケール等の汚れが、被処理物Wの搭載面ほど付着しない。したがって、第2円柱ブラシ部材231は、メッシュベルト210との摺接面においてメッシュベルト210の移動方向と同方向に回転するため、メッシュベルト210における被処理物Wの非搭載面を適切にクリーニングすることができ、かつ、第1円柱ブラシ部材221の劣化よりも第2円柱ブラシ部材231の劣化を抑えることができる。
【0037】
すなわち、この構成では、メッシュベルト210の汚れやすさに応じて、効率的にメッシュベルト210をクリーニングすることができる。
【0038】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、第2実施形態と重複する説明は省略する。
【0039】
図5は、本発明の第3実施形態に係るベルトクリーニング装置200の構成を示す図である。
【0040】
本実施形態では、第1円柱ブラシ部材221のスプロケット222と第2円柱ブラシ部材231のスプロケット234との径の大きさが異なる。具体的には、スプロケット222の径のほうがスプロケット234の径よりも小さい。したがって、この構成において、駆動機構240は、第1円柱ブラシ部材221を第2円柱ブラシ部材231よりも高速回転させる。
【0041】
この構成では、第1円柱ブラシ部材221は、メッシュベルト210との摺接面においてメッシュベルト210の移動方向と反対方向に高速回転するため、メッシュベルト210における被処理物Wの搭載面をさらに効率的にクリーニングすることができる。
【0042】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0043】
図6は、本発明の第4実施形態に係るベルトクリーニング装置200の構成を示す図である。
【0044】
ベルトクリーニング装置200は、ケース250および吸引部260を備える。
【0045】
ケース250は、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230を覆う。吸引部260は、ケース250内の粉塵を吸引する。
【0046】
吸引部260は、吸引ブロア261、ダクト262および集塵フィルター263を有する。吸引ブロア261は、吸引力を発生させる装置である。ダクト262は、ケース250と吸引ブロア261とを連結する。集塵フィルター263は、ダクト262内に設けられ、ケース250から吸引ブロア261へ移動する粉塵を集塵する。
【0047】
この構成では、ケース250が第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230を覆うことで、第1円柱ブラシ部材220および第2円柱ブラシ部材230によって除去されたメッシュベルト210の粉塵が周囲に飛散することを防止できる。また、吸引部260がケース250内の粉塵を吸引することで、ケース250内に粉塵が溜まることを防止できる。
【0048】
ここまで、本発明の構成について第1実施形態から第4実施形態まで説明してきたが、本発明の構成は、第1実施形態から第4実施形態のそれぞれに限定されることはない。例えば、図7に示すように、複数の実施形態を組み合わせて本発明を適用することができる。
【0049】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
W−被処理物
100 −連続炉
110 −加熱室
120 −冷却室
200 −ベルトクリーニング装置
210 −メッシュベルト
220 −第1円柱ブラシ部材
220A−第1平面ブラシ部材
221 −第1円柱ブラシ部材
230 −第2円柱ブラシ部材
230A−第2平面ブラシ部材
231 −第2円柱ブラシ部材
240 −駆動機構
250 −ケース
260 −吸引部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に形成され、被処理物を搭載して搬送するためのメッシュベルトをクリーニングするためのベルトクリーニング装置であって、
前記被処理物が搭載されない領域に配置され、前記メッシュベルトにおける前記被処理物の搭載面に摺接する第1ブラシ部材と、
前記第1ブラシ部材に対向して配置され、前記メッシュベルトにおける前記被処理物の非搭載面に摺接する第2ブラシ部材と、
を備えるベルトクリーニング装置。
【請求項2】
前記第1ブラシ部材および前記第2ブラシ部材は、円柱状をなし、
前記第1ブラシ部材および前記第2ブラシ部材をその中心軸周りに回転駆動するための駆動機構
をさらに備え、
前記駆動機構は、前記第1ブラシ部材と前記第2ブラシ部材とを同方向に回転させることで前記第1ブラシ部材および前記第2ブラシ部材の外周面を前記メッシュベルトに摺動させる
請求項1に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項3】
前記第1ブラシ部材は、前記駆動機構によって前記メッシュベルトの移動方向と反対方向に回転する
請求項2に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記第1ブラシ部材を前記第2ブラシ部材よりも高速回転させる
請求項2または3に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項5】
前記第1ブラシ部材および前記第2ブラシ部材を覆うケースと、
前記ケース内の粉塵を吸引する吸引部と、
をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項6】
無端状に形成され、被処理物を搭載して搬送するためのメッシュベルトと、
前記被処理物に対して加熱処理を施すための加熱室と、
前記加熱室を通過した前記被処理物を冷却するための冷却室と、
前記加熱室および前記冷却室を通過した前記メッシュベルトをクリーニングするための請求項1〜5のいずれか1項に記載のベルトクリーニング装置と、
を備える連続炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246063(P2012−246063A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116458(P2011−116458)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】