説明

ベルトコンベアのベルト脱落防止装置およびベルト脱落防止方法

【課題】ベルトコンベアにおいて、搬送時には搬送物を遮ることがなく、搬送物が積載されていないときに、ベルトが搬送ローラから外れてコンベアのフレーム外に脱落するのを防止する。
【解決手段】ベルトコンベア1の搬送方向に回転可能で、回転軸方向の長さがベルトコンベア1の幅方向に亘る押さえローラ11が、ベルトコンベア1の搬送側におけるベルト6の上方に、高さ方向の位置が可変となるように設けられている。搬送時には押さえローラ11を上方へ退避させ、搬送物が載っていないときに、押さえローラ11によって、浮き上がったベルト6を搬送ローラ7の直上まで下ろして、ベルト6の浮き上がりを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアのベルトの一部が搬送ローラから浮き上がってフレームから脱落するのを防止するためのベルト脱落防止装置およびベルト脱落防止方法に関し、主にベルトに搬送物が載っていないときのベルトの脱落を防止するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば船から下ろした製鉄用原料や燃料等の搬送物を、ベルトコンベアで搬送してヤード等に積み込んだり、ヤードに積まれた搬送物を地上に払い出す際に、スタッカやスタックリクレーマが用いられる。このような装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
スタッカに設けられたベルトコンベアには、水平に搬送物を搬送する地上コンベアに連続して、搬送物を斜め上方に持ち上げるトリッパ部が形成されている。
【0004】
このようなトリッパ部を有するベルトコンベアのベルトには張力がかけられており、この張力によって、図3に示すように、ベルトコンベア1の水平部2からトリッパ部3への境界4の角度が180°よりも小さくなる搬送側のベルト6が、6aとして示すように搬送ローラ7から浮き上がることがある。特に、搬送物がベルト6上に積載されていないときには、ベルト6を搬送ローラ7に向けて押さえ付ける力がないため、ベルトの張力の影響により浮き上がりやすい。さらに、強風時には、搬送ローラ7と浮き上がったベルト6aの間に強風が吹き込み、ベルト6aが振られて搬送ローラ7からベルト全体が外れ、ベルトコンベアのフレーム外に脱落する。その際に、搬送ローラ7やベルト6が破損することがある。このため、外れたベルト6aを元の位置に戻すために、損傷部を修復したり、更には搬送ローラ7を交換することが必要になる場合もあり、メンテナンス性に問題があるうえ、作業効率が大幅に低下する。
【0005】
そのため、従来、台風接近時等には、チェーンブロック等でベルト6を搬送ローラ7に固定していたが、極めて手間がかかるうえ、突然の強風には対応できなかった。また、チェーンブロックでは、ベルト6を損傷させることがあった。
【0006】
また、例えば特許文献2には、ベルトコンベアのキャリアベルトの浮き上がりを防止するキャリア部と、リターンベルトの浮き上がりを防止するリターン部と、搬送物をキャリアベルトの中央に誘導する当て板部を有するベルトコンベア装置が開示されている。さらに、特許文献3には、ベルトの側方端部を押さえ付けるローラを設けることにより、ベルトのローリングや蛇行を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−236933号公報
【特許文献2】特開2005−132507号公報
【特許文献3】特開2007−137670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献2は、キャリアベルト及びリターンベルトを浮き上がり防止用の車輪で常に押さえ付けていることから、ベルトの摩耗が促進される。また、搬送物をキャリアベルトの中央に誘導する当て板部を有しているため、搬送物の積載量や幅寸法に制限があり、ベルトの輸送能力を低下させることがある。また、当て板部をキャリアベルトの形状に合わせているため、個々のベルトコンベアに合わせた形状に製作する必要がある。また、特許文献3は、水平方向にカーブしたベルトコンベアの蛇行を抑制するものであり、高さ方向に傾斜したベルトの浮き上がりは、十分に防止できない。
【0009】
本発明の目的は、搬送時には搬送物を遮ることがなく、搬送物が積載されていないときに、ベルトが搬送ローラから外れてコンベアのフレーム外に脱落するのを防止するベルトコンベアのベルト脱落防止装置およびベルト脱落防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、ベルトコンベアの搬送方向に回転可能で、回転軸方向の長さが前記ベルトコンベアの幅方向に亘る押さえローラが、前記ベルトコンベアの搬送側におけるベルトの上方に、高さ方向の位置が可変となるように設けられていることを特徴とするベルトコンベアのベルト脱落防止装置を提供する。
【0011】
前記ベルトコンベアは水平部とトリッパ部とを有し、前記トリッパ部の立ち上がり直後のベルトの上方に、前記押さえローラが設けられていることが好ましい。また、前記水平部と前記トリッパ部の境界の前後の位置に、それぞれ前記押さえローラが設けられてもよい。
【0012】
また、本発明は、ベルトコンベアの搬送方向に回転可能で、回転軸方向の長さが前記ベルトコンベアの幅方向に亘る押さえローラを、前記ベルトコンベアの搬送側におけるベルトの上方に、高さ方向の位置が可変となるように設け、 前記ベルトコンベアが搬送物を搬送しているときには、前記押さえローラを前記ベルトの上方に退避させ、前記ベルト上に前記搬送物が載っていないときに、前記押さえローラによって、浮き上がったベルトを前記ベルトの搬送ローラの直上まで下ろすことを特徴とするベルトコンベアのベルト脱落防止方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトコンベアのベルト上に搬送物が積載されていないときに、押さえローラによって、浮き上がったベルトを搬送ローラの直上まで下ろしておくことにより、ベルトが浮上してコンベアのフレーム外に脱落するのを防止することができる。しかも、搬送時には押さえローラを上方へ上げておくことにより、搬送物を遮らない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1のA−A方向から見た正面図の拡大図である。
【図3】ベルトが浮き上がる様子を説明するベルトコンベアの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態の一例を示す。トリッパ部3を有するベルトコンベア1の水平部2とトリッパ部3との境界4の前後に、それぞれベルト脱落防止装置5が設けられている。
【0017】
ベルト脱落防止装置5は、押さえローラ11、押さえローラ11を支持するアーム12、架台13、および、押さえローラ11を上下移動させる機構部21を有する。
【0018】
押さえローラ11は、図2に示すように、回転軸11a方向の長さが、ベルトコンベア1の幅方向全体とほぼ同じであり、ベルトコンベア1の搬送方向に回転可能である。押さえローラ11の回転軸11aの両端は、アーム12の先端部で支持されている。アーム12の基端は、水平方向に延びるアーム支持材14に固定されている。アーム支持材14の一端は、ギア15を介して機構部21に接続されている。
【0019】
図1および図2に示す機構部21は、押さえローラ11を上下移動させる機構の実施形態の一例である。鉛直方向の角度が可変となるように設置されたシリンダ22の先端が、クランク23に連結され、シリンダ22の先端を伸縮させることにより、クランク23が、回転軸24を中心として回転する。クランク23の回転軸24は、ギア15に連結され、クランク23の回転がギア15に伝達される。さらに、ギア15を介してアーム支持材14に回転が伝達される。これにより、クランク23の回転に連動して、アーム支持材14が回転し、アーム支持材14の回転に伴い、図1に示すように、アーム12がアーム支持材14を中心として回転する。これにより、アーム12の先端に支持された押さえローラ11が円弧状に上下移動する。
【0020】
ベルトコンベア1のベルト6は、通常、ばら物等の搬送物を脱落させずに搬送するために、図2に示すように中央部をへこませているが、押さえローラ11は、ベルト6がコンベアフレームから脱落するのを防止すればよく、ベルト6の搬送時の形状に沿って押さえ付けなくてもよい。したがって、図2に示すように、押さえローラ11を、搬送物の搬送が無くなってベルト6を停止した後、浮き上がったベルト6aを搬送ローラ7の左右両端部の直上近傍、すなわち、搬送物を搬送している最中におけるベルト6の両端の高さよりも少し上方の位置まで押し下げておけば、十分にベルト6の脱落防止効果がある。そのため、ベルトコンベア毎に大きさや形状を変える必要がない。また、押さえローラ11は、ベルトコンベア1の幅全体に亘る長さを有していることが好ましいが、ベルトコンベア1全体の幅と厳密に同寸法でなくても構わない。さらに、押さえローラ11の位置を厳密に制御する必要もないので、簡易な機構で実施できる。
【0021】
本発明のベルト脱落防止装置5は、押さえローラ11をベルト6の直上まで下げたときの位置が、ベルトコンベア1の水平部2とトリッパ部3との境界4の前後になるように設置することが好ましい。図3に示すように、搬送物がベルト6上に積載されていないときには、6aとして示すようにベルト6が浮き上がる場合があるが、本発明の押さえローラ11で浮き上がったベルト6を押さえ付けることにより、図の6bで示すように浮き上がり部分が極めて少なくなり、強風等の影響でベルトがコンベアフレーム外に脱落するのを効果的に防止することができる。そして、本発明のベルト脱落防止装置1は、ベルトコンベア1が搬送物を搬送しているときには、押さえローラ11を上方に退避させ、搬送物が通過し終わったときや、ベルトコンベア1を稼働していないときに、ベルト6の直上まで下げておく。したがって、搬送時には、搬送物の通過を邪魔することがない。また、押さえローラ11は、ベルトコンベア1の搬送方向に回転可能なので、ベルト6の端部に接触した状態でベルト6が前後方向(搬送方向)及び左右方向(ベルト幅方向)に動いても、ベルト6の移動を妨げたり、ベルト6を摩耗させたり傷付けたりすることがない。
【0022】
なお、図3に示すように、トリッパ部3を有するベルトコンベア1は、ベルト6に張力がかけられていることにより、搬送側は図の6aで示すようにベルトが浮き上がりやすいが、リターン側(下面側)のベルト6は張力がかけられた状態で搬送ローラ7から浮き上がることはないので、本発明のベルト脱落防止装置5は、ベルトコンベア1の搬送側のみに設置すればよい。
【0023】
図1の例では、ベルトコンベア1の水平部2とトリッパ部3との境界4の前後にそれぞれベルト脱落防止装置5を設けたが、トリッパ部3の立ち上がり直後に1個所だけ設けてもよい。ただし、図1に示すように2個所設けることにより、ベルト6が脱落したときにそれぞれの押さえローラ11が負担する荷重が分散されるので、小型のベルト脱落防止装置5で十分な効果を得ることができる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、押さえローラを上下移動させる方法は、シリンダおよびクランクによる機構には限らない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ベルトコンベアの未使用時や搬送物が通過し終わった部分のベルトの脱落防止装置として適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ベルトコンベア
2 水平部
3 トリッパ部
4 境界
5 ベルト脱落防止装置
6 ベルト
7 搬送ローラ
11 押さえローラ
12 アーム
13 架台
14 アーム支持材
15 ギア
22 シリンダ
23 クランク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアの搬送方向に回転可能で、回転軸方向の長さが前記ベルトコンベアの幅方向に亘る押さえローラが、前記ベルトコンベアの搬送側におけるベルトの上方に、高さ方向の位置が可変となるように設けられていることを特徴とする、ベルトコンベアのベルト脱落防止装置。
【請求項2】
前記ベルトコンベアは水平部とトリッパ部とを有し、前記トリッパ部の立ち上がり直後のベルトの上方に、前記押さえローラが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のベルトコンベアのベルト脱落防止装置。
【請求項3】
前記水平部と前記トリッパ部の境界の前後の位置に、それぞれ前記押さえローラが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のベルトコンベアのベルト脱落防止装置。
【請求項4】
ベルトコンベアの搬送方向に回転可能で、回転軸方向の長さが前記ベルトコンベアの幅方向に亘る押さえローラを、前記ベルトコンベアの搬送側におけるベルトの上方に、高さ方向の位置が可変となるように設け、
前記ベルトコンベアが搬送物を搬送しているときには、前記押さえローラを前記ベルトの上方に退避させ、前記ベルト上に前記搬送物が載っていないときに、前記押さえローラによって、浮き上がったベルトを前記ベルトの搬送ローラの直上まで下ろすことを特徴とする、ベルトコンベアのベルト脱落防止方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate