説明

ベルトコンベアのローラハウジング取付構造

【課題】 ローラにハウジングを圧入し、さらにスポット溶接の技術を用いることにより、全周溶接の必要がなく、製造容易なベルトコンベアのローラハウジング取付構造を提供すること。
【解決手段】 ローラ開口端部にハウジング外周部を固定し、該ハウジング内周部とローラ中心軸との間にボールベアリングを装着するベルトコンベアのローラハウジング取付構造であって、上記ハウジングは、環状金属板の外周を屈曲形成することにより外周縁部を形成し、該環状金属板の内周に筒状部を形成することにより形成され、該ハウジングの上記外周縁部をローラの開口端部に圧入することにより該ハウジングを上記ローラに固定し、上記ローラ外周方向に沿った複数箇所において、上記ローラ開口端部と上記ハウジングの外周縁部とをスポット溶接により固定し、上記ハウジングの上記筒状部と上記中心軸との間にボールベアリングを装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアのローラハウジングの取付構造に関し、圧入とスポット溶接の技術を用いて、ローラにハウジングを強固かつ正確に取り付けるための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトコンベアのローラとハウジングの取付は、ローラの端部内周に拡径段部を機械加工し、当該拡径段部にハウジングの外周を当接し、ハウジングの外周と上記ローラの拡径段部内周とを全周に亙って溶接する、いわゆる全周溶接の手法により行われていた(特許文献1)。
【0003】
また、鋳造により構成されたハウジングをローラの端部に圧入し、ローラ端部外周の複数箇所を縮径方向にかしめることによりハウジングをローラに固定する技術が提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−91536号
【特許文献2】特開2007−223687号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の全周溶接の技術は、ローラ端部内周に機械加工が必要であり、製造工程が増加すると共に、アーク溶接等によってハウジングの全周に亙る溶接が必要なので、溶接作業に多くの時間と手間を要するし、エネルギー消費が大きいとの課題がある。
【0006】
また、上記溶接作業時に多くのガスが発生するため、環境面でのコストが高くなるとの課題がある。
【0007】
さらに、全周溶接の場合は、ハウジング外周とローラ内面に遊びが生じ、ローラの真円が出し難いし、回転むらの発生が懸念された。
【0008】
また鋳造によるハウジング(特許文献2)とは別に、従来公知の金属板(鋼板)から成形されたハウジングを用いて、従来に比べて簡易にベルトコンベアのローラを構成し得る技術が望まれている。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、ローラに金属板で成形されたハウジングを圧入し、さらにスポット溶接の技術を用いることにより、全周溶接の必要がなく、製造容易なベルトコンベアのローラハウジング取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、ローラ開口端部にハウジング外周部を固定し、該ハウジング内周部とローラ中心軸との間にボールベアリングを装着することにより構成されるベルトコンベアのローラハウジング取付構造であって、上記ハウジングは、環状金属板の外周を屈曲成形することにより外周縁部を形成し、該環状金属板の内周に筒状部を成形することにより形成されており、該ハウジングの上記外周縁部をローラの開口端部に圧入することにより該ハウジングを上記ローラに固定すると共に、上記ローラ外周方向に沿った120度置きの3箇所において、上記ローラ開口端部の外周部と上記ハウジングの外周縁部とをスポット溶接により固定し、かつ上記ハウジングの上記筒状部と上記中心軸との間にボールベアリングを装着したものであることを特徴とするベルトコンベアのローラハウジング取付構造により構成される。
【0011】
従って、環状金属板から成形されたハウジングを用いながら、圧入とスポット溶接により、容易にハウジングをローラ開口端部に固定することができるものである。また、スポット溶接によるため、溶接作業が簡易であり、ガスの発生もなく、環境コストを低減することができる。
【0012】
第2に、上記ローラ開口端部の外周部を、その全周に亙り、上記ハウジングの外周縁部共々縮径方向にかしめたものであることを特徴とする上記第1記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造により構成される。
【0013】
このように構成すると、ローラ開口端部とハウジングとの固定をより強固にすることができる。
【0014】
第3に、上記スポット溶接の位置は、上記120度置きの3箇所に代えて、ローラ外周方向に沿った等間隔置きの2箇所〜8箇所の何れかの複数箇所であることを特徴とする上記第1又は2記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造により構成される。
【0015】
溶接箇所は好ましくは、3箇所であるが、2箇所から8箇所の範囲において、何れかの複数箇所とすることができる。
【0016】
第4に、上記ハウジングの筒状部と上記中心軸との間における上記ボールベアリング装着位置からローラ開口端部寄りの位置にラビリンスシール部を装着したものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造により構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したので、ローラとハウジングとを圧入により固定すると共に、ローラとハウジングとをスポット溶接により2箇所以上の複数箇所において固定するので、全周溶接を行うことなく、簡易な工程により、ローラとハウジングとを強固に固定することができるという効果を奏するものである。
【0018】
また、スポット溶接によったので、全周溶接に比べて作業が簡易であり、ガスの発生もないので、環境コストも低減でき、省エネルギーに資するものである。
【0019】
また、ハウジングをローラ開口端部に圧入することにより、ローラ開口端部の真円を出し易いという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るベルトコンベアローラのハウジング取付構造について詳細に説明する。
【0021】
図1は上記ハウジング取付構造を示すローラの側面断面図であり、同図において、1は円筒形のローラ本体(ローラ)であり、その開口端部1aは両側に開口しており、その端部内面1bは何ら加工を施されておらず、両端部1aまで同一平面を形成している。
【0022】
2は上記ローラ1の中心軸であり、両端部近傍に抜け止めリング2a,2bが嵌合装着されており、これら抜け止めリング2a,2b間の上記中心軸2にハウジング3の装着されたボールベアリングB(ラジアル軸受)、及びラビリンスシール部Rが固定されている。
【0023】
上記ハウジング3は、所定厚の円盤状の環状金属板(鋼板)をプレス加工により略リング状に加工形成したものであり、中心p方向に対向するように折曲形成された中央開口部3aと、該中央開口部3aから引き続く筒状部(内周部)3bと、それに引き続く平面部3cと、該平面部3cの外周方向に形成された後方折曲部3dと、該後方折曲部3dの外周方向に形成され、当該ハウジング3の外周縁を構成する水平方向の外周縁部(外周部)3eとにより構成されている。
【0024】
尚、以下の説明において、便宜上、ローラ1の開口方向を「前」、ローラ1の奥部方向を「後」とする。
【0025】
上記後方折曲部3dの後面側の外周縁には湾曲部3d’が形成されており、当該ハウジング3をその後方側から上記ローラ1開口端部1aに圧入する際、上記ローラ1開口端部1aに円滑にハウジング3が係合、挿入し得るように構成されている。
【0026】
上記ハウジング3の上記外周縁部3eの直径は上記ローラ1の端部1aの内径と略同一又は若干大きく構成されており、上記外周縁部3eを上記ローラ開口端部1aに圧入装着し得るように構成している。そして、図2、図3に示すように、上記ハウジング3を圧入した後、上記ハウジング3の外周縁部3eと上記ローラ開口端部1aとを、その外周に沿った120度の等間隔を置いた3箇所の溶接箇所S1,S2,S3において、スポット溶接により固定する。
【0027】
このスポット溶接は、図2に示すように、上記ローラ開口端部1aの外周部1a’と上記ハウジング3の外周縁部3eの内周部3e’に、電極6a,6bを対向配置し、電極6aから電極6bに所定の電流値の溶接電流を流して、上記ローラ開口端部1aと上記ハウジング3の外周縁部3eとの圧着部を局部的に溶融S’させ(図4)、ローラ開口端部1aとハウジング3の外周縁部3eとをスポット的に溶接固定するものである。
【0028】
このようなスポット溶接を120度毎の3箇所(S1,S2,S3)において行い、当該3箇所において、上記ローラ開口端部1aとハウジング3とを固定する。このように、ローラ開口端部1aとハウジング外周縁部3eとをスポット溶接により固定することにより、ローラ1に対するハウジング3の回り止めを確実に行うことができる。
【0029】
上記スポット溶接の箇所は、上記3箇所が好ましいが、3箇所に限らず、2箇所から8箇所の複数箇所の何れでもよく、何れも等間隔に溶接を行うことが好ましい。尚、図5(a)〜(f)にスポット溶接の箇所(2箇所、4箇所、5箇所、6箇所、7箇所、8箇所)を示す。
【0030】
上記スポット溶接用の電極6aは、図2、図3に示すように、そのローラ1への接触面6a’は上記ローラ1の外周曲面に合致するような湾曲面となっており、上記ローラ1の外周部1a’に密着し得るように構成している。上記スポット溶接の他方の電極6bもその先端形状は上記ハウジング3の外周縁部3eの周方向の湾曲面に合致するような湾曲面が形成されており、上記外周縁部3eに密着できるように構成されている。
【0031】
上記ボールベアリングBはその外周軸受部B2が上記ハウジング3の上記筒状部3bに嵌合装着されており、上記内周軸受部B1が上記中心軸2の外周に嵌合装着され、上記抜け止めリング2aにより水平方向の位置が規制されている。
【0032】
上記ラビリンスシール部Rは、その外周部R2が上記ハウジング3の上記筒状部3b前部から上記平面部3cにかけて嵌合装着され、その内周部R1が上記ボールベアリングBの前方側において、上記中心軸2に嵌合装着されており、上記抜け止めリング2bにより抜け止めされている。このラビリンスシール部Rは当該ローラ1の前面側からの埃等のボールベアリングB側への侵入を阻止するものである。
【0033】
4はリング状のダストカバーであり、その内縁折曲部4bと外縁折曲部4aとを各々上記ラビリンスシール部Rの内周部R1と上記ハウジング3の外周縁部3eに嵌合することにより、上記ハウジング3の前面側に装着されており、内縁折曲部4bが上記抜け止めリング2bにより抜け止めされた状態となっている。
【0034】
また、上記ローラ1に上記ハウジング3を装着し、上記スポット溶接S1〜S3を行った後、上記ローラ1の開口端部1aの外周部1a’をその全周に亙り上記ハウジング3の外周縁部3eと共に、縮径方向にかしめ、かしめ部1cを形成する。このように、上記ローラ1の開口端部の外周部1a’をかしめることにより、上記ローラ1の開口端部1aと上記ハウジング3の外周縁部3eとの結合をより強固なものとすることができる。尚、かかるかしめ作業は必要に応じて行えばよく、上記ローラ1に上記ハウジング3を圧入し、かしめを行わずに、ローラ開口端部1aは水平のままでも良い。
【0035】
本発明に係るベルトコンベアのローラハウジング取付構造は上述のように構成されているものであるから、上記ローラ1を組立てるには(図1参照)、先ず、成形されたハウジング3を上記ローラ1のローラ開口端部1aに圧入する。かかる状態においては、ハウジング3の外周は高い精度で真円を構成しているので、上記ローラ1へ圧入することにより、上記ローラ1の開口端部1aもきわめて高い精度の真円とすることができる。これにより、回転むらのない高精度のローラを形成することができる。
【0036】
その後、上記ローラ1の開口端部1a外周部1a’と上記ハウジングの外周縁部3eの内周部3e’との間に、スポット溶接用の電極6a,6bを配置して、両者をスポット溶接により固定する。このとき、スポット溶接は、上記ローラ1の外周に沿って120度間隔で3箇所S1,S2,S3において行う(図2)。このようにスポット溶接の作業は、一対の電極6a,6bを溶接箇所S1,S2,S3に対向対置して電流を流すという作業なので、溶接作業自体が極めて簡単であり、また2箇所乃至8箇所において溶接すれば良いので、溶接作業を短時間で終了することができる。また、溶接に当たって、ガスの発生もなく、溶接棒も必要としないので、環境コストも低廉に抑えることができる。
【0037】
次に、中心軸2に抜け止めリング2aを装着した後、ベアリングBを上記ハウジング3の筒状部3bと上記中心軸2の間に装着する。
【0038】
その後、ラビリングシール部Rを、上記ハウジング3の筒状部3bの前方部と上記中心軸2との間に、その後端部が上記ベアリングBの内外周軸受部B1,B2に当接するまで嵌合装着する。
【0039】
さらにダストカバー4を上記ハウジング3の外周縁部3eと上記中心軸2の外周間に嵌合装着し、上記中心軸2の端部に抜け止めリング2bを嵌合装着することにより、図1に示すローラを組み立てることができる。
【0040】
上記工程の終了後、必要に応じて公知のかしめ装置(図示せず)にて上記ローラの開口端部1aの外周部1a’を上記ハウジング3の外周縁部3eと共に全周に亙り縮径方向にかしめて、かしめ部1cを形成することにより、上記ローラを組立てることができる。
【0041】
このように、本発明のベルトコンベアのローラハウジング取付構造によると、ローラ1に対するハウジング3の固定を圧入により容易になし得るとともに、ローラ1とハウジング3とをスポット溶接により2箇所以上の複数箇所において固定しているので、ローラとハウジングとを極めて強固に固定し得ると共に、ローラ1の真円の精度をも向上し得て、しかも、スポット溶接によって製造工程を簡略化し得て、低コストで高精度のベルトコンベア用ローラを製造することができるという効果を奏するものである。
【0042】
また、スポット溶接によったので、全周溶接に比べて作業が簡易であり、ガスの発生もなく、溶接棒も必要ないので、環境コストも低減でき、省エネルギーに資するものである。
【0043】
また、ローラ1の開口端部1aに機械加工を施す必要がないので、製造工程を簡略化し得ると共に、ハウジングをローラ開口端部に圧入するので、ローラの真円を出し易く、回転精度の高いローラを低コストで実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るベルトコンベアのローラハウジング取付構造は、ベルトコンベアのリタンローラをはじめとして、各種のローラハウジング取付構造として、広く利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るベルトコンベアのローラハウジング取付構造を示すローラ端部の側面断面図である。
【図2】同上取付構造において、スポット溶接の状態を示すローラ端部の正面図である。
【図3】同上取付構造において、スポット溶接の状態を示すローラ開口端部周辺の拡大断面図である。
【図4】同上取付構造において、スポット溶接箇所の断面図である。
【図5】(a)乃至(f)は同上取付構造において、溶接箇所を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ローラ本体(ローラ)
1a 開口端部
1a’ 外周部
1c かしめ部
2 中心軸
3 ハウジング
3b 筒状部(内周部)
3e 外周縁部
3e’ 内周部
6a,6b 電極
B ボールベアリング
S1,S2,S3 溶接箇所
R ラビリンスシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ開口端部にハウジング外周部を固定し、該ハウジング内周部とローラ中心軸との間にボールベアリングを装着することにより構成されるベルトコンベアのローラハウジング取付構造であって、
上記ハウジングは、環状金属板の外周を屈曲形成することにより外周縁部を形成し、該環状金属板の内周に筒状部を形成することにより形成されており、
該ハウジングの上記外周縁部をローラの開口端部に圧入することにより該ハウジングを上記ローラに固定すると共に、
上記ローラ外周方向に沿った120度置きの3箇所において、上記ローラ開口端部の外周部と上記ハウジングの外周縁部とをスポット溶接により固定し、
かつ上記ハウジングの上記筒状部と上記中心軸との間にボールベアリングを装着したものであることを特徴とするベルトコンベアのローラハウジング取付構造。
【請求項2】
上記ローラ開口端部の外周部を、その全周に亙り、上記ハウジングの外周縁部共々縮径方向にかしめたものであることを特徴とする請求項1記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造。
【請求項3】
上記スポット溶接の位置は、上記120度置きの3箇所に代えて、ローラ外周方向に沿った等間隔置きの2箇所〜8箇所の何れかの複数箇所であることを特徴とする請求項1又は2記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造。
【請求項4】
上記ハウジングの筒状部と上記中心軸との間における上記ボールベアリング装着位置からローラ開口端部寄りの位置にラビリンスシール部を装着したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のベルトコンベアのローラハウジング取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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