説明

ベルトコンベア式搬送装置

【課題】搬送経路の途中で搬送方向が屈曲する搬送路を、単一の無端状ベルトで形成することができ、もって同期運転の必要が無く作動制御を可及的に簡易に行い得るベルトコンベア式搬送装置を提供する。
【解決手段】上流側搬送路62の終端部前方下側に搬送方向が所定角度転換された下流側搬送路64を配置し、上流側搬送路の終端部を形成する終端ローラ70の下側後方にベルト4を待避させる待避ローラ72,74を設け、下流側搬送路の鉛直下にベルトに捻転を加え始める捻転開始ローラ76を待避ローラと平行に設け、捻転開始ローラの鉛直上の下流側搬送路の下側には、捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて捻転を所定角度に止める捻転停止ローラ78を下流側搬送路の幅方向に沿わさせて設ける。上流側搬送路終端の側方には、捻転停止ローラに巻回されるベルトを終端の前方下側を通過後に反転させて下流側搬送路の始端部を形成する始端ローラを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトコンベア式搬送装置に係わり、特に、単一の無端状ベルトで形成する搬送路の途中に当該搬送路を所定角度で屈曲させる屈曲部を設けて、被搬送物の搬送方向を転換して搬送し得るようにしたベルトコンベア式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を搬送する手段として、ベルトコンベア式の搬送装置が多用されているが、従来の通常のベルトコンベア式搬送装置にあっては、その搬送方向を大きく屈曲させることができない。このため、搬送方向を屈曲させる必要がある場合には、複数台のベルトコンベア式搬送装置を相互に屈曲させて接続して、当該屈曲部で被搬送物を上流側から下流側に配置したべルトコンベア式搬送装置に載り移らせてその搬送方向を転換させるようにしている。
【0003】
ここで、例えば地下鉄などのトンネル掘削工事にあっては、並設される上下線のトンネルを単一のシールド掘進機をUターンさせて往復掘削する場合が多々あるが、このような場合には、復路で排出する土砂は往路の掘削済みのトンネル内に設置済みのベルトコンベア式搬送装置を利用することが一般的に行われており、このようなケースでは、排土用の搬送路は複数のべルトコンベア式搬送装置によってU字状に屈曲形成されることになる。
【0004】
そして、このようなシールド掘進機に付設される排土用のベルトコンベア式搬送装置として、特開2002−68444号公報にて開示されているように、往路のトンネル内に設置してある延伸式のベルトコンベア装置をそのまま復路のトンネル内にまで延伸させて持ち込んで往路と復路とで単一の装置を利用可能とする技術が提案されている。
【0005】
即ち、当該公報のベルトコンベア式搬送装置は、往路と復路とを繋ぐ湾曲部において、その延伸式ベルトコンベア装置の搬送側と戻り側との双方の水平ベルト部を90度捻転させるための一対の捻転用プーリーを往路終了地点の湾曲開始点と復路開始地点の湾曲終了点とに設けて、当該湾曲部間では延伸式ベルトコンベアの搬送側と戻り側とのベルトを共に鉛直姿勢にして往路側から復路側へと導き、その湾曲開始点と終了点との間は別途に当該湾曲部に沿わせて設けた複数のベルトコンベヤで繋ぐようにしたものである。
【0006】
そして、この延伸式ベルトコンベヤによれば、往路部内と復路部内とを単一の装置を利用して土砂を搬送することが可能なので、復路側の掘削にあたって当該復路側に新たに延伸式ベルトコンベアを設置する必要が無く、当該延伸式ベルトコンベアを設置するための費用軽減化と工期の短縮化とが図れる。
【特許文献1】特開2002−68444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のベルトコンベア式搬送装置では、搬送路を屈曲あるいは湾曲形成するにあたっては、いずれにしろ複数台のベルトコンベア式搬送装置を相互に屈曲させて繋いで、その搬送方向を転換させていくものであるため、その起動や停止及び搬送速度の調整等を行うにあたっては、その複数台のベルトコンベア式搬送装置同士の同期を取りながら個々にそれらの作動を制御しなければならなくなる。このとき、個々のベルトコンベア式搬送装置はその全長が異なったものとなったり、また個々にその積載荷重負荷が相違した状態となったりするので、個々のベルトコンベア式搬送装置が定常運転状態や停止状態に至るまでに要する時間がまちまちになる。このため、被搬送物の搬送を安定的に行わせるためには、それら複数のベルトコンベア式搬送装置に対して単純な電源のON−OFF等の同期運転を行う訳にはいかず、その作動制御が煩雑なのもとなってしまうという課題あった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送経路の途中で当該搬送路を所定角度で屈曲形成する必要がある場合に、その屈曲した搬送路を単一の無端状ベルトで形成することができ、もって運転時の作動制御を可及的に簡易に行い得るベルトコンベア式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に係るベルトコンベア式搬送装置にあっては、単一の無端状ベルトで形成する搬送路の途中に該搬送路を所定角度屈曲させる屈曲部を設けて、その搬送方向を屈曲させて被搬送物を搬送するベルトコンベア式搬送装置であって、該屈曲部における上流側搬送路の終端部の前方下側に、搬送方向が所定角度転換されて設けられた下流側搬送路が位置し、該上流側搬送路の終端部を形成する終端ローラの下側後方には、該終端ローラに巻回されるベルトを該上流側搬送路の後方に向けて待避させてから下方に案内する待避ローラが該終端ローラと平行に設けられ、該待避ローラの下方には、該下流側搬送路の鉛直下に位置されて、該待避ローラに巻回されるベルトを該下流側搬送路の鉛直下に導いて上方に案内するとともに該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラが該待避ローラと平行に設けられ、該捻転開始ローラの鉛直上に位置されて該下流側搬送路の下側には、該捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて、上記ベルトの捻転を所定角度に止めるための捻転停止ローラがその軸芯を該下流側搬送路の幅方向に沿わされて設けられ、該上流側搬送路終端の側方には、該捻転停止ローラに巻回されるベルトを該終端の前方下側を通過させて反転させることで該下流側搬送路の始端部を形成する始端ローラが設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
ここで、請求項2に示すように、前記請求項1において、前記屈曲部が3箇所以上に設けられて環状の搬送路に形成されている構成となし得る。
【0011】
あるいは、請求項3に示すように、前記請求項1において、前記搬送路に沿ってその下側にはベルトの戻り側走行路が設けられ、該戻り側走行路における前記屈曲部の上流側には、前記下流側搬送路の捻転停止ローラに平行に設けられ、該戻り側上流走行路のベルトを下方に導くと共に該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラと、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラの鉛直下に位置されて設けられると共に該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が平行面内で所定角度捩られて配置され、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させる戻り側上流走行路の捻転停止ローラと、が備えられ、かつ、該戻り側走行路における前記屈曲部の下流側には、該戻り側上流走行路の捻転停止ローラに対面して軸芯が平行に配置されて設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されるベルトに捻転を加え始めるための戻り側下流走行路の捻転開始ローラと、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラの鉛直上に位置されると共に、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて前記上流側搬送路の終端ローラと平行に設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて案内されるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための戻り側上流走行路の捻転停止ローラと、が備えられている構成となし得る。
【0012】
また、請求項4に示すように、前記搬送路の途中に前記屈曲部が2箇所に設けられて、該搬送路が上流部搬送路と中流部搬送路と下流部搬送路とからなるU字状に屈曲形成されている構成となし得る。
【0013】
また、請求項5に示すように、前記上流部搬送路がシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けられると共に、前記下流部搬送路が往路側トンネル内に設けられ、かつ中流部搬送路が該シールド掘進機を往路から復路に反転移動される立坑内に設けられる構成となし得る。
【0014】
また、請求項6に示すように、前記請求項1において、前記搬送路の途中に前記屈曲部が2箇所に設けられて、該搬送路が上流部搬送路と中流部搬送路と下流部搬送路とからなるU字状に屈曲形成されており、該上流部搬送路と該下流部搬送路とにはそれらに沿ってその下側に戻り側走行路がそれぞれの屈曲部の近傍まで延設され、該下流部搬送路の下側に位置する戻り側上流走行路には、該屈曲部に近接して設けられて、該ベルトを下方に案内すると共に該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラと、該捻転開始ローラの鉛直下に位置して該捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて配置され、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための捻転停止ローラと、が備えられ、かつ、該上流部搬送路の下側に位置する戻り側下流走行路には、該戻り側上流走行路の捻転停止ローラに対面して軸芯が平行に配置されて設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて導かれるベルトに捻転を加え始めるための戻り側下流走行路の捻転開始ローラと、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラの鉛直上に位置されると共に、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて前記上流側搬送路の終端ローラと平行に設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための戻り側下流走行路の捻転停止ローラと、が備えられ、該戻り側上流走行路と該戻り側下流走行路とを結ぶ戻り側中流走行路が、前記中流部搬送路の側方に設けられている構成とすることもできる。
【0015】
さらに、請求項7に示すように、前記請求項6において、前記上流部搬送路がシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けられると共に、前記下流部搬送路が往路側トンネル内に設けられ、かつ中流部搬送路と戻り側中流走行路とが該シールド掘進機を往路から復路に反転移動させる立坑内に設けられる構成ともなし得る。
【発明の効果】
【0016】
上述のように構成される本発明のベルトコンベア式搬送装置によれば、搬送経路の途中で当該搬送路を所定角度で屈曲形成する必要がある場合に、その屈曲した搬送路を単一の無端状ベルトで形成することができる。このため、運転時おいて起動、停止、速度調整等の作動制御は当該単一の無端状ベルトを駆動する原動機に対してのみ行えば良く、もってその作動制御を可及的に簡易に行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態例について添付図面に基づいて詳述する。図1〜図4は本発明に係るベルトコンベア式搬送路の第1の実施形態を示すものであり、図1は平面図、図2は図1における左側面図、図3は図1における正面図、図4はベルトのローラーへの掛け回し状態を概略的に示す斜視図である。
【0018】
これらの図に示すように、このベルトコンベア式搬送装置2は、単一の無端状ベルト4で形成されており、当該ベルト4で形成する搬送路6aの途中には、当該搬送路6aを所定角度屈曲させる屈曲部8が設けられていて、この屈曲部8で被搬送物の搬送方向が転換されて搬送されるようになっている。
【0019】
即ち、単一の無端状のベルト4は全搬送経路の始端を形成する始端ローラ10と終端を形成する終端ローラ12とに掛け回されて搬送路6aを形成しており、その途中に搬送路6aの搬送方向を複数のローラによって所定角度転換させる屈曲部8が設けられており、図示例では90度屈曲させるようになっている。
【0020】
この屈曲部8においては、当該屈曲部8よりも上流側の搬送路をなす上流側搬送路62の終端部の前方下側に、下流側の搬送路をなす下流側搬送路64が位置されており、上流側搬送路62上から下流側搬送路64上に被搬送物が投下されて載り移るようになっている。
【0021】
上流側搬送路62の終端部にはベルトが巻回されて当該上流側搬送路62の終端部を形成する終端ローラ70が設けられていて、この終端ローラ70の下側後方には、終端ローラ70に巻回されるベルト4を上流側搬送路64の後方に向けて待避させてから下方に導くための第1待避ローラ72が当該終端ローラ70と軸芯を平行にして設けられている。
【0022】
そして、第1待避ローラ72の鉛直下方には、その第1待避ローラ72に巻回されるベルト4を鉛直方向に導いて水平方向に案内する第2待避ローラ74が設けられ、この第2待避ローラ74の側方には、下流側搬送路64の鉛直下に位置されて、第2待避ローラ74に巻回されるベルト4を上方に案内するとともに当該ベルト4に捻転を加え始めるための捻転開始ローラ76が設けられている。つまり、終端ローラ70と第1,第2待避ローラ72,74及び捻転開始ローラ76は互いに軸芯が平行になって同一の鉛直面に対して垂直に配置されている。
【0023】
また、捻転開始ローラ76の鉛直上に位置されて下流側搬送路64の下側には、捻転開始ローラ76に対して軸芯が所定角度捩られて、上記ベルト4の捻転を所定角度に止めるための捻転停止ローラ78がその軸芯を下流側搬送路64の幅方向に沿わされて設けられている。
【0024】
そして、上流側搬送路62の終端側方には、捻転停止ローラ78に巻回されるベルト4を当該上流側搬送路62の終端の前方においてその下側を通過させてから反転させて搬送経路の終端ローラ12に向けて導くことで下流側搬送路64の始端部を形成する始端ローラ80が設けられている。
【0025】
即ち、上記第1,第2待避ローラ72,74は上流側搬送路62の終端から捻転開始ローラ76にベルト4を案内するにあたって、下流側搬送路64を形成しているベルト部との干渉を防ぐために設けられている。なお、当該部位でのベルト同士の干渉を防げれば第2待避ローラ74は必ずしも必要ではなく、省略しても良い。つまり、第1待避ローラ72からこれに巻回されるベルトを下流側搬送路の鉛直下の捻転開始ローラ76に直接導いて上方に案内するとともにその上方へのベルト4に捻転を加え始めるようにしても良い。
【0026】
また、上記搬送路6aに沿ってその下側にはベルト4の戻り側走行路6bが設けられている。そして、この戻り側走行路6aにおける上記屈曲部8の上流側には、上記下流側搬送路64の捻転停止ローラ78に近接されてこれと平行に、当該戻り側上流走行路66のベルト4を下方に導くと共に当該部位のベルト4に捻転を加え始めるための捻転開始ローラ82が設けられている。
【0027】
さらに、この戻り側上流走行路66の捻転開始ローラ82の鉛直下に位置されて、該戻り側上流走行路66の捻転開始ローラ82に巻回されて送り出されてくるベルト4を所定角度だけ捩ってその捻転を停止させる戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84が設けられている。そして、この捻転停止ローラ84は上記戻り側上流走行路66の捻転開始ローラ82に対して軸芯が平行面内で所定角度捩られて配置されている。
【0028】
一方、戻り側走行路6bにおける屈曲部8の下流側に位置する戻り側下流走行路68には、上記戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84に対面してこれと軸芯が平行に配置されて、戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84に巻回されて送り出されるベルト4を上方に向けて案内すると共に上方へのベルト4に捻転を加え始めるための戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86が設けられている。
【0029】
また、戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86の鉛直上に位置されて、戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86に巻回されて上方に送り出されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるために戻り側下流走行路68の捻転停止ローラ88が設けられており、この捻転停止ローラ88は戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86に対して軸芯が所定角度捩られて前記上流側搬送路62の終端ローラ70と平行に配置されて設けられている。
【0030】
そして、以上のように構成されるベルトコンベア式搬送装置2にあっては、搬送経路の終端を形成する終端ローラ12に駆動源として電動モータ等が繋がれ、当該駆動源の作動によって無端状のベルト4が搬送路6aと戻り側走行路6bとを循環して連続周回移動して被搬送物を搬送し、上流側搬送路62上に載置された被搬送物はその終端の屈曲部8で下流側搬送走路64上に投下されて載り移り、搬送経路の終端まで運ばれる。
【0031】
ここで、屈曲部8に至ったベルトは上流側搬送路62の終端ローラ70で反転され、第1,第2待避ローラ72,74によってその搬送方向の後方下部(即ち、下流側搬送路64の下側方)に一旦待避されて、下流側搬送路64を避けながら当該下流側搬送路64の鉛直下に設けられた捻転開始ローラ76に導かれるので、ベルト同士が干渉することがない。また、終端ローラ70、第1,第2待避ローラ72,74、捻転開始ローラ76は全て平行配置されて、上流側搬送路62のセンターラインを通る同一の鉛直平面を基準にしてセンターが合わされて設けられているので、ベルト4は横ズレを生じることなく円滑に走行される。
【0032】
また、捻転開始ローラは76は下流側搬送路のセンターラインの鉛直下に配置され、その鉛直上にベルト4の幅方向に軸方向を指向させて所定角度(図示例では90度)捻って捻転停止ローラ78を設け、かつこの捻転停止ローラ78と下流側搬送路64の始端ローラ80とは軸方向が平行になっているので、捻転開始ローラ76と捻転停止ローラ78との間においてベルト4にその幅方向へのズレを生じさせることなく、安定して走行させながら捻転させることができ、かつ捻転させた後のベルト4を始端ローラ80で反転して、安定走行させながら下流側搬送路64に導くことができる。
【0033】
また、同様に戻り側走行路6bにおいても、その戻り側上流走行路66に鉛直方向の上下に一対で設けられる捻転開始ローラ82と捻転停止ローラ84、及び戻り側下流走行路68に鉛直方向の上下に一対で設けられる捻転開始ローラ86と捻転停止ローラ88とによって、ベルト4を安定走行させながら捻転させて屈曲部8を形成することができる。
【0034】
ここで、戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84と戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86とは対面して平行に設けられて、それぞれ戻り側上流走行路66と戻り側下流走行路68のセンターラインを通る鉛直面に対して捩られて配置されるが、その捻り角度はそれぞれの和が上流側搬送路62と下流側搬送路との挟み角に等しくなるようにすれば任意の角度で良い。また、当該捻転停止ローラ84と捻転開始ローラ86とは上下方向にズレをもたされて配置されても良い。よって、高さ方向のスペースと平面上のスペースとを考慮して屈曲部の占有スペースが可及的に小さくなるようにそれらの配設位置を決定することが望ましい。
【0035】
また、このベルトコンベア式搬送装置2によれば、搬送経路の途中で当該搬送路6aを所定角度で屈曲形成する必要がある場合に、その屈曲した搬送路6aを単一の無端状ベルト4で形成することができ、その屈曲角度は任意に設定することができる。このため、運転時おいて起動、停止、速度調整等の作動制御は当該単一の無端状ベルト4を周回駆動する駆動ローラの原動機に対してのみ行えば良く、もって複数の原動機の作動を同期させて複雑な制御を行う必要がなく、もってその作動制御を可及的に簡易に行い得る。
【0036】
また、図示はしないが、前記搬送路6aの途中に前記屈曲部8を2箇所に設けて、その搬送路6aを上流部搬送路と中流部搬送路と下流部搬送路とからなるU字状に屈曲形成する構成となし得る。
【0037】
そして、このようにU字状に屈曲形成したベルトコンベア式搬送装置は、並設される2つのトンネルを単一のシールド掘進機によって往復掘削して施工する場合において、その掘削土砂の排土用のベルトコンベア式搬送装置に採用して極めて有用なものとなる。即ち、図示はしないが、前記上流部搬送路をシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けるとともに、前記下流部搬送路を往路側トンネル内に設け、かつ中流部搬送路を該シールド掘進機を往路から復路に反転移動させる立坑内に設けるようにする。
【0038】
また、この場合にあってはシールド掘進機の前進に伴わせて上流部搬送路を延長して行く必要が生じるので、採用するベルトコンベア式搬送装置には上流部搬送路の延伸を可能にするために、ベルトのバッファー機構を付設する。図5はそのバッファー機構の概略構成を示したものであり、当該バッファー機構90は搬送経路の終端を形成する終端ローラ12に近接させて、戻り側上流走行路に設けるのが望ましい。ここで、図5に示すようにバッファー機構90は、相互に近接離間移動可能な一対のフレーム92a,92bと、この一対のフレーム92a,92bを近接離間移動させるための油圧シリンダー等からなるアクチュエータ94と、各フレーム92a,92bに同数ずつ対をなして設けられる複数のローラ96とからなる。そして、各フレーム92a,92bのローラ96間にベルト4が交互につづら折り状に巻回されてバッファー機構90が構成され、シールド掘進機の前進量に応じて両フレーム92a,92b間の離間距離を縮めていって、延伸される搬送路長と戻り側走行路長に相当するベルト長分を繰り出していく。
【0039】
なお、やはり図示はしていないが、屈曲部を複数箇所に設けてその各屈曲部の屈曲角度を小さく設定するようにすれば、トンネルの湾曲部に対しても、その湾曲形状に搬送路を円滑に沿わせて容易に湾曲形成することができる。
【0040】
また、搬送路6aの途中に上記屈曲部8を3箇所以上に設けて搬送路6aを環状に繋げば、搬送路6aが循環して戻り側走行路のないベルトコンベア式搬送装置として形成することもできる。
【0041】
図6〜図10は本発明に係るベルトコンベア式搬送路の第2の実施の形態を示す。ここで、図6は平面図、図7は図6における左側面図、図8は図6における正面図、図9は図6における右側面図、図10はベルトのローラーへの掛け回し状態を概略的に示す斜視図である。
【0042】
当該第2の実施の形態では、搬送路6aの途中に前記屈曲部8が第1屈曲部8aと第2屈曲部8bとして2箇所に設けられいて、搬送路6aが上流部搬送路62と中流部搬送路63と下流部搬送路64とからなるU字状に屈曲形成されている。
【0043】
ここで搬送路6aにおける2つの屈曲部8b,8aの構成は前出した第1の実施形態における屈曲部8と全く同じである。よって、当該搬送路6a側の第1屈曲部8a及び第2屈曲部8bの各構成部材には、第1の実施形態の符合の後にそれぞれ更にa及びbを付加して示して、その詳しい説明は省略する。
【0044】
この図示例では、上流部搬送路62と下流部搬送路64とにはそれらに沿ってその下側に戻り側走行路66,68がそれぞれの屈曲部8a,8bの近傍まで延設されている。そして、下流部搬送路64の下側に位置する戻り側上流走行路66には、搬送路6aの第2屈曲部8bに近接されて、ベルト4を下方に案内すると共に当該ベルト4に捻転を加え始めるための捻転開始ローラ82が終端ローラ12と平行に設けられている。
【0045】
また、この捻転開始ローラ82の鉛直下の位置には、当該捻転開始ローラ82に対して軸芯が所定角度(この図示例では90度)捩られた配置で当該捻転開始ローラ82と対をなす捻転停止ローラ84が設けられている。そして、この捻転停止ローラ84は上記戻り側上流走行路66の捻転開始ローラ82に巻回されて下方に案内されるベルト4を上記所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるようになっている。
【0046】
一方、上流部搬送路62の下側に位置する戻り側下流走行路68には、上記戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84に対面してその軸芯が平行に配置された捻転開始ローラ86が設けられている。この戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86は、戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84に巻回されて導かれてくるベルト4を上方に案内すると共に当該ベルト4に捻転を加え始めるためのものである。
【0047】
また、この捻転開始ローラ86の鉛直上の位置には、当該捻転開始ローラ86に対して軸芯が所定角度捩られた配置で当該捻転開始ローラ86と対をなす捻転停止ローラ88が設けられている。そして、この捻転停止ローラ88は戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86に巻回されて上方に案内されるベルト4を上記所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるようになっている。また、当該捻転停止ローラ88は上記上流部搬送路64の終端ローラ70aと平行に設けられている。
【0048】
そして、戻り側上流走行路66の捻転停止ローラ84と戻り側下流走行路68の捻転開始ローラ86とを結んで掛け渡されるベルト4が、戻り側中流走行路67を形成しており、当該戻り側中流走行路67は前記中流部搬送路63の側方に平行配置されて設けられている。
【0049】
そして、このようにして2つの屈曲部8a,8bを介してU字状に屈曲形成されたベルトコンベア式搬送装置2Aにあっても、並設される2つのトンネルを単一のシールド掘進機によって往復掘削して施工する場合において、その掘削土砂の排土用のベルトコンベア式搬送装置に採用して極めて有用なものとなる。即ち、図示はしないが、前記上流部搬送路62をシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けるとともに、前記下流部搬送路64を往路側トンネル内に設け、かつ中流部搬送路63と戻り側中流走行路67とを共に、シールド掘進機を往路から復路へと反転移動させる立坑内に設けるようにする。また、この場合にも、戻り側上流走行路66には図5に示すベルトのバッファ機構90を介在させるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るベルトコンベア式搬送路の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1における左側面図である。
【図3】図1における正面図である。
【図4】第1の実施形態におけるベルトのローラーへの掛け回し状態を概略的に示す斜視図である。
【図5】ベルトの延伸機構部を示す概略図である。
【図6】本発明に係るベルトコンベア式搬送路の第2の実施形態を示す平面図である。
【図7】図6における左側面図である。
【図8】図6における正面図である。
【図9】図6における右側面図である。
【図10】第2の実施形態におけるベルトのローラーへの掛け回し状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
2 ベルトコンベア式搬送装置
4 ベルト
6a 搬送路
6b 戻り側走行路
8 屈曲部
10 始端ローラ
12 終端ローラ
62 上流側搬送路
63 中流部搬送路
64 下流側搬送路
66 戻り側上流走行路
67 戻り側中流走行路
68 戻り側下流走行路
70 上流側搬送路の終端ローラ
72 第1待避ローラ
74 第2待避ローラ
76 捻転開始ローラ
78 捻転停止ローラ
80 下流側搬送路の始端ローラ
82 戻り側上流走行路の捻転開始ローラ
84 戻り側上流走行路の捻転停止ローラ
86 戻り側下流走行路の捻転開始ローラ
88 戻り側下流走行路の捻転停止ローラ
90 バッファ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の無端状ベルトで形成する搬送路の途中に該搬送路を所定角度屈曲させる屈曲部を設けて、その搬送方向を屈曲させて被搬送物を搬送するベルトコンベア式搬送装置であって、
該屈曲部における上流側搬送路の終端部の前方下側に、搬送方向が所定角度転換されて設けられた下流側搬送路が位置し、
該上流側搬送路の終端部を形成する終端ローラの下側後方には、該終端ローラに巻回されるベルトを該上流側搬送路の後方に向けて待避させてから下方に案内する待避ローラが該終端ローラと平行に設けられ、
該待避ローラの下方には、該下流側搬送路の鉛直下に位置されて、該待避ローラに巻回されるベルトを該下流側搬送路の鉛直下に導いて上方に案内するとともに該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラが該待避ローラと平行に設けられ、
該捻転開始ローラの鉛直上に位置されて該下流側搬送路の下側には、該捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて、上記ベルトの捻転を所定角度に止めるための捻転停止ローラがその軸芯を該下流側搬送路の幅方向に沿わされて設けられ、
該上流側搬送路終端の側方には、該捻転停止ローラに巻回されるベルトを該終端の前方下側を通過させて反転させることで該下流側搬送路の始端部を形成する始端ローラが設けられている、
ことを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。
【請求項2】
前記請求項1において、前記屈曲部が3箇所以上に設けられて環状の搬送路に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベア式搬送装置。
【請求項3】
前記請求項1において、前記搬送路に沿ってその下側にはベルトの戻り側走行路が設けられ、
該戻り側走行路における前記屈曲部の上流側には、
前記下流側搬送路の捻転停止ローラに平行に設けられ、該戻り側上流走行路のベルトを下方に導くと共に該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラと、
該戻り側上流走行路の捻転開始ローラの鉛直下に位置されて設けられると共に該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が平行面内で所定角度捩られて配置され、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて案内されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させる戻り側上流走行路の捻転停止ローラと、
が備えられ、
かつ、該戻り側走行路における前記屈曲部の下流側には、
該戻り側上流走行路の捻転停止ローラに対面して軸芯が平行に配置されて設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されるベルトに捻転を加え始めるための戻り側下流走行路の捻転開始ローラと、
該戻り側下流走行路の捻転開始ローラの鉛直上に位置されると共に、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて前記上流側搬送路の終端ローラと平行に設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための戻り側上流走行路の捻転停止ローラと、
が備えられていることを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。
【請求項4】
前記請求項3において、前記搬送路の途中に前記屈曲部が2箇所に設けられて、該搬送路が上流部搬送路と中流部搬送路と下流部搬送路とからなるU字状に屈曲形成されていることを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。
【請求項5】
前記請求項4において、前記上流部搬送路がシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けられると共に、前記下流部搬送路が往路側トンネル内に設けられ、かつ中流部搬送路が該シールド掘進機を往路から復路に反転移動される立坑内に設けられることを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。
【請求項6】
前記請求項1において、前記搬送路の途中に前記屈曲部が2箇所に設けられて、該搬送路が上流部搬送路と中流部搬送路と下流部搬送路とからなるU字状に屈曲形成されており、
該上流部搬送路と該下流部搬送路とにはそれらに沿ってその下側に戻り側走行路がそれぞれの屈曲部の近傍まで延設され、
該下流部搬送路の下側に位置する戻り側上流走行路には、
該屈曲部に近接して設けられて、該ベルトを下方に案内すると共に該ベルトに捻転を加え始めるための捻転開始ローラと、
該捻転開始ローラの鉛直下に位置して該捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて配置され、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための捻転停止ローラと、
が備えられ、
かつ、該上流部搬送路の下側に位置する戻り側下流走行路には、
該戻り側上流走行路の捻転停止ローラに対面して軸芯が平行に配置されて設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて導かれるベルトに捻転を加え始めるための戻り側下流走行路の捻転開始ローラと、
該戻り側下流走行路の捻転開始ローラの鉛直上に位置されると共に、該戻り側下流走行路の捻転開始ローラに対して軸芯が所定角度捩られて前記上流側搬送路の終端ローラと平行に設けられ、該戻り側上流走行路の捻転開始ローラに巻回されて送り出されてくるベルトを該所定角度だけ捩ってその捻転を停止させるための戻り側下流走行路の捻転停止ローラと、
が備えられ、
該戻り側上流走行路と該戻り側下流走行路とを結ぶ戻り側中流走行路が、前記中流部搬送路の側方に設けられている、
ことを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。
【請求項7】
前記請求項6において、前記上流部搬送路がシールド掘進機によって並設して掘削形成されるシールドトンネルの復路側トンネル内に設けられると共に、前記下流部搬送路が往路側トンネル内に設けられ、かつ中流部搬送路と戻り側中流走行路とが該シールド掘進機を往路から復路に反転移動させる立坑内に設けられることを特徴とするベルトコンベア式搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−145575(P2007−145575A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345769(P2005−345769)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】