説明

ベルトコンベヤ蛇行防止装置

【課題】上流ベルトコンベヤの端部から下流ベルトコンベヤに積荷を落下して移載する場合に、板などに非接触で積荷の落下位置を調整することにより故障や積荷落下点変化の問題を回避することが可能なベルトコンベヤ蛇行防止装置を提供する。
【解決手段】下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量を蛇行センサ5で検出し、検出された下流ベルト4の蛇行量に基づいて上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を制御装置6で制御する。その際、下流ベルト4が上流ベルトコンベヤ1の積荷搬送方向先方側に蛇行している場合に上流ベルト3の速度を大きくし、積荷搬送方向手前側に蛇行している場合に上流ベルト3の速度を小さくすることにより、下流ベルト4の蛇行量に応じて上流ベルト3の速度を自動制御することができる。また、上流ベルト3の速度は所定の速度変化率で変更することにより、積荷の落下位置が乱れにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベヤ蛇行防止装置に関し、特に上流のベルトコンベヤと下流のベルトコンベヤを交差させ、上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下して移載する場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄業においては、鉄鉱石、石炭などの粉粒塊状物が船舶によって輸送されてくる。これらの原料はアンローダなどの設備によって陸揚げされ、原料ヤードまでベルトコンベヤで搬送される。これらの粉粒塊状物を目的の位置まで連続搬送するベルトコンベヤは、長いもので1000m程度あり、積載される粉粒塊状物の積荷の重心がベルトコンベヤの搬送方向と直交方向(以下、幅方向とも記す)に偏るとベルトが蛇行し、ベルト蛇行によるトラブルが発生するおそれがある。
【0003】
上流のベルトコンベヤから下流のベルトコンベヤに積荷を移載する方式としては、上流のベルトコンベヤの搬送方向と下流のベルトコンベヤの搬送方向を同じにして上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下させる方式と、上流のベルトコンベヤと下流のベルトコンベヤを交差させて上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下させる方式があり、後者の方式ではベルトの幅方向に積荷の重心の偏りが発生しやすく、結果的にベルトが蛇行しやすい。
【0004】
このようなベルトの蛇行対策として、従来は上流のベルトコンベヤを積荷搬送方向、つまり下流のベルトコンベヤの幅方向に移動可能な所謂シャトルコンベヤとし、上流側のベルトコンベヤを下流のベルトコンベヤの幅方向に移動させて下流のベルトコンベヤのベルト上の積荷の重心を調整する方式がある。しかしながら、このシャトルコンベヤ方式は、上流のベルトコンベヤを移動するための設備、つまりレールや駆動装置などが必要となり、構造が大がかりでコストもかかる。
【0005】
これに対し、例えば下記特許文献1に記載される方式では、上流のベルトコンベヤの積荷落下端部の搬送方向先方に落下位置規制板を設け、下流のベルトコンベヤのベルトの端部にテーパ状ローラを設け、このテーパ状ローラの回転速度からベルトの蛇行量を検出し、その蛇行量に応じて落下位置規制番の位置を制御することで下流のベルトコンベヤのベルト上の積荷の重心を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−213431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるベルトコンベヤ蛇行防止装置では、落下位置調整板の積荷が衝突するため、粉塵が飛散しやすく、可動部に粉塵が付着して不動となり、故障するという問題がある。また、落下位置調整板に積荷が付着して板厚が変化し、その結果、積荷の落下点が変化してしまうという問題もある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、板などに非接触で積荷の落下位置を調整することにより故障や積荷落下点変化の問題を回避することが可能なベルトコンベヤ蛇行防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のベルトコンベヤ蛇行防止装置は、上流のベルトコンベヤと下流のベルトコンベヤとを交差させて前記上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下して移載する場合に下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行を防止するベルトコンベヤ蛇行防止装置であって、下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出手段と、前記蛇行量検出手段で検出された下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量に基づいて上流のベルトコンベヤのベルトの速度を制御する上流ベルト速度制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向先方側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を大きくし、前記下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向手前側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を小さくすることを特徴とするものである。
また、前記上流のベルトコンベヤのベルトの速度の変更は予め設定された所定の速度変化率で行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
而して、本発明のベルトコンベヤ蛇行防止装置によれば、上流のベルトコンベヤと下流のベルトコンベヤとを交差させて上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下して移載する場合に、下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量を蛇行量検出手段で検出し、検出された下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量に基づいて上流のベルトコンベヤのベルトの速度を上流ベルト速度制御手段で制御する構成としたため、板などに非接触で積荷の落下位置を調整することができ、その結果、故障や積荷落下点変化の問題を回避することができる。
【0011】
また、下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向先方側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を大きくし、下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向手前側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を小さくすることにより、下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行の方向と蛇行量に応じて当該下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行を抑制するように上流のベルトコンベヤのベルトの速度を自動制御することができる。
また、上流のベルトコンベヤのベルトの速度の変更は予め設定された所定の速度変化率で行うことにより、積荷の下流のベルトコンベヤへの落下位置が乱れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のベルトコンベヤ蛇行防止装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のベルトコンベヤ蛇行防止装置の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のベルトコンベヤ蛇行防止装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のベルトコンベヤ蛇行防止装置の概略構成図である。このベルトコンベヤ搬送システムは、例えば(スタック)リクレーマと呼ばれ、アンローダにより船舶から陸揚げされた積荷をベルトコンベヤに次々に移載して、最終的に原料ヤードに搬送するものである。図には、上下流3つのベルトコンベヤが記載されているだけであるが、実際には更に多くの、或いは更に長いベルトコンベヤが配置されている。
【0014】
図では、最上流ベルトコンベヤ10から上流ベルトコンベヤ1、下流ベルトコンベヤ2の順に積荷が移載される。最上流ベルトコンベヤ10と上流ベルトコンベヤ1は積荷の搬送方向が同一方向であるが、上流ベルトコンベヤ1と下流ベルトコンベヤ2は積荷の搬送方向が交差(直交)している。前述のように、上下のベルトコンベヤの積荷の搬送方向が交差している場合に上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに落下して移載される積荷の重心がベルトコンベヤの幅方向(積荷搬送方向直交方向)に偏りやすくなり、下流のベルトコンベヤのベルトが蛇行しやすくなるため、本実施形態では下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行を抑制すべく、上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を制御する。
【0015】
具体的には、トラフ状の下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量を蛇行センサ5で検出する。蛇行センサ5には、例えば光学式スイッチを下流ベルト4の幅方向端部に当該ベルト幅方向に並べて配設したり、下流ベルト4の幅方向端部の位置を画像処理で検出したり、下流ベルト4の幅方向端部に当接するローラやガイドの位置をポテンショメータで検出したりする周知の方式が用いられる。なお、蛇行量には、下流ベルト4の蛇行の方向も含まれる。蛇行センサ5で検出された下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量は制御装置6に入力される。制御装置6は、例えばホストコンピュータなどの演算処理装置を備え、蛇行量に応じた回転速度で上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の駆動モータ7を制御することにより、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行を是正する。
【0016】
上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を変化させると、図2に示すように、上流ベルトコンベヤ1の端部から落下する積荷の落下軌跡が変化する。具体的に、上流ベルト3の速度が大きければ積荷はより遠くまで飛ぶように落下するし、上流ベルト3の速度が小さければ積荷は直ぐ近くに落下する。周知のように、トラフ型ベルトコンベヤのベルトは、積荷の重心変動でベルトが蛇行する。例えば図2の下流ベルト4の場合、積荷の重心が図の左側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向手前側にあると、下流ベルト4は図の右側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向先方側に蛇行する。逆に、積荷の重心が図の右側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向先方側にあると、下流ベルト4は図の左側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向手前側に蛇行する。積荷の重心を下流ベルト4の幅方向中央部に是正すれば下流ベルト4の蛇行も是正されるので、下流ベルト4が図2の右側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向先方側に蛇行している場合には上流ベルト3の速度を大きくし、下流ベルト4が図の左側、つまり上流ベルト3の積荷搬送方向手前側に蛇行している場合には上流ベルト3の速度を小さくすればよい。なお、上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度が変化すると、上流ベルト3上の積荷の層の厚さも変化する。具体的に、上流ベルト3の速度が大きければ積荷の厚さは小さくなり、上流ベルト3の速度が小さければ積荷の厚さは大きくなる。これは、最上流ベルト10から上流ベルト1に移載される積荷の単位時間当たりの容量はほぼ一定であるためである。
【0017】
この上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3から下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4への積荷の落下位置は、上流ベルト3から下流ベルト4への積荷の落下距離、上流ベルト3の速度によって決定する。例えば、上流ベルト3から下流ベルト4への積荷の落下時間は、落下時間=√(2×落下距離/重力加速度) で求められ、落下位置、即ち上流ベルト3の端部からの積荷の飛行距離は、飛行距離=落下時間×上流ベルト3の速度 で求められる。従って、例えば上流ベルト3の速度が1m/s、上流ベルト3から下流ベルト4への積荷の落下距離が5mである場合の落下時間は1s、飛行距離は1mとなるので、落下位置を100mm変化させるためには、上流ベルト3の速度を0.1m/s変化させればよい。
【0018】
また、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量は、積荷の種類、下流ベルト4上の積荷の重心の位置、上流ベルト3から下流ベルト4への単位時間当たりの移載量(上流ベルト3の速度が変化しても単位時間当たりの移載量はほぼ一定)によってほぼ決まる。従って、下流ベルト4の蛇行量が分かれば、上流ベルト3の速度をどの程度変化すれば蛇行が抑制されるかが得られるので、その変化させるべき速度で上流ベルト3の速度を自動制御する。
【0019】
また、上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を変更する場合には、予め設定された所定変化率以下で比較的徐々に変更する。これは、上流ベルト3の速度の変化率が大きすぎると、上流ベルト3から下流ベルト4に落下する積荷の落下位置が乱れてしまい、適正な位置に積荷を落下させることができなくなるためである。勿論、オペレータが上流ベルト3の速度を調整することも可能である。
【0020】
このように本実施形態のベルトコンベヤ蛇行防止装置では、上流ベルトコンベヤ1と下流ベルトコンベヤ2とを交差させて上流ベルトコンベヤ1の端部から下流ベルトコンベヤ2に積荷を落下して移載する場合に、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量を蛇行センサ5で検出し、検出された下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行量に基づいて上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を制御装置6で制御することにより、板などに非接触で積荷の落下位置を調整することができ、その結果、故障や積荷落下点変化の問題を回避することができる。
【0021】
また、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4が上流ベルトコンベヤ1の積荷搬送方向先方側に蛇行している場合に上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を大きくし、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4が上流ベルトコンベヤ1の積荷搬送方向手前側に蛇行している場合に上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を小さくすることにより、下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行の方向と蛇行量に応じて当該下流ベルトコンベヤ2の下流ベルト4の蛇行を抑制するように上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度を自動制御することができる。
また、上流ベルトコンベヤ1の上流ベルト3の速度の変更は予め設定された所定の速度変化率で行うことにより、積荷の下流ベルトコンベヤ2への落下位置が乱れにくい。
【符号の説明】
【0022】
1は上流ベルトコンベヤ
2は下流ベルトコンベヤ
3は上流ベルト
4は下流ベルト
5は蛇行センサ
6は制御装置
7は駆動電動モータ
10は最上流ベルトコンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流のベルトコンベヤと下流のベルトコンベヤとを交差させて前記上流のベルトコンベヤの端部から下流のベルトコンベヤに積荷を落下して移載する場合に下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行を防止するベルトコンベヤ蛇行防止装置であって、下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量を検出する蛇行量検出手段と、前記蛇行量検出手段で検出された下流のベルトコンベヤのベルトの蛇行量に基づいて上流のベルトコンベヤのベルトの速度を制御する上流ベルト速度制御手段とを備えたことを特徴とするベルトコンベヤ蛇行防止装置。
【請求項2】
前記下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向先方側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を大きくし、前記下流のベルトコンベヤのベルトが上流のベルトコンベヤの積荷搬送方向手前側に蛇行している場合に上流のベルトコンベヤのベルトの速度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載のベルトコンベヤ蛇行防止装置。
【請求項3】
前記上流のベルトコンベヤのベルトの速度の変更は予め設定された所定の速度変化率で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトコンベヤ蛇行防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−95594(P2013−95594A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243249(P2011−243249)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】