説明

ベルトコンベヤ装置

【課題】 トンネル工事において直線区間と曲線区間が連続する1本の無端のコンベヤベルトで掘削したズリを坑外へ排出するベルトコンベヤ装置において、曲線区間に使用される部材を直線区間の部材とできるだけ共通にして低コストで実施できるようにする。
【解決手段】 キャリヤローラ2を直線区間用と曲線区間用が略同じ幅のローラフレーム3に軸支し、そのローラフレーム3を直線区間用と曲線区間用が共通の左右一対のサイドフレーム4に架設し、そのサイドフレーム4を架台5に載せて直線及び曲線に沿って複数連設し、連設したサイドフレーム4の前後端同士を連結具で連結し、サイドフレーム4間又は架台5にリターンローラ6を軸支し、しかも連結具はサイドフレーム4の幅より拡幅の断面凹状とし、曲線区間ではサイドフレーム4と連結具との間に形成される隙間で複数のサイドフレーム4を多段的に折曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において直線区間と曲線区間が連続する1本の無端のコンベヤベルトで掘削したズリを坑外へ排出するベルトコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事においては、掘削したズリをベルトコンベヤ装置で切羽から坑外へ搬送して排出しており、これに用いられるベルトコンベヤ装置が特許文献1に開示されている。この技術は、1本の無端のコンベヤベルトを用いて直線区間と曲線区間が連続する構造にし、キャリヤローラは小幅のものを左右方向に複数設け、左右端のキャリヤローラを内側へ傾けてコンベヤベルトを断面略U字状に変形させ、ズリが落下しないように安定して搬送できるようにしている。
【0003】
ところで、前記技術では、直線区間に使用されるフレーム部材は汎用のものが使用されているが、曲線区間に使用されるフレーム部材は工事の度に特注で製作されており、高コストとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3557496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、曲線区間に使用される部材を直線区間の部材とできるだけ共通にして低コストで実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) トンネル工事において直線区間と曲線区間が連続する1本の無端のコンベヤベルトで掘削したズリを坑外へ排出するベルトコンベヤ装置であって、コンベヤベルトの途中の支持構造が、キャリヤローラを直線区間用と曲線区間用が略同じ幅のローラフレームに軸支し、そのローラフレームを直線区間用と曲線区間用が共通の左右一対のサイドフレームに架設し、その左右一対のサイドフレームを架台に載せて直線及び曲線に沿って複数連設し、連設したサイドフレームの前後端同士を連結具で連結し、左右一対のサイドフレーム間又は架台にリターンローラを軸支した構造であって、しかも連結具はサイドフレームの幅より拡幅の断面凹状とし、曲線区間ではサイドフレームと連結具との間に形成される隙間により複数のサイドフレームを多段的に折曲させて連設したことを特徴とする、ベルトコンベヤ装置
2) 曲線区間のリターンローラが、垂直に軸支又は曲線内側が上向きとなるように斜めに軸支したものである、前記1)記載のベルトコンベヤ装置
3) 曲線区間の架台が、上下に分離した構造で、上部架台が下部架台に対して左右方向の傾きを調整できるようにしたものである、前記1)又は2)記載のベルトコンベヤ装置
4) 前記1)〜3)いずれか記載のベルトコンベヤ装置が、コンベヤベルトの余剰分を予め蓄積して搬送距離の延長に応じて繰り出せるベルトストレージ装置を設け、切羽の後方位置にテールプーリを備えた自走可能なテールピース台車を配置し、掘進に応じてベルトストレージ装置からコンベヤベルトを繰り出しながらテールピース台車を前進させてズリの搬送距離を延伸できるようにした、ベルトコンベヤ装置
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直線区間用と曲線区間用のローラフレームの幅を略同じ幅にするとともに、サイドフレームの連結具をサイドフレームの幅より拡幅の断面凹状にして連結時にサイドフレームとの間に隙間が形成されるようにしたから、曲線区間のベルトコンベヤを構築する際、直線区間に使用されるサイドフレームを複数転用し、サイドフレームと連結具との間に形成された隙間により多段的に折曲するように連設する。したがって、従来では特注で製作していたサイドフレームを共通にでき、大幅なコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例のベルトコンベヤ装置の前方の説明図である。
【図2】実施例のベルトコンベヤ装置の後方の説明図である。
【図3】実施例のベルトコンベヤ装置の直線区間の説明図である。
【図4】実施例のベルトコンベヤ装置の曲線区間の説明図である。
【図5】実施例のサイドフレームの説明図である。
【図6】実施例のベルトコンベヤ装置の延伸の説明図である。
【図7】実施例のサイドフレームの連結を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、請求項2記載の構成を具備すると、曲線区間において、リターン側のコンベヤベルトに作用する曲線内側方向への荷重が防止され、リターン側のコンベヤベルトを安定させて駆動できる。また、請求項3記載の構成を具備すると、曲線区間において、搬送路側のコンベヤベルトに作用する曲線内側方向への荷重が防止されるようにローラフレームの左右方向の傾きを調整でき、搬送路側のコンベヤベルトをより安定させて駆動できる。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0010】
図1は実施例のベルトコンベヤ装置の前方の説明図、図2は実施例のベルトコンベヤ装置の後方の説明図、図3は実施例のベルトコンベヤ装置の直線区間の説明図、図4は実施例のベルトコンベヤ装置の曲線区間の説明図、図5は実施例のサイドフレームの説明図、図6は実施例のベルトコンベヤ装置の延伸の説明図、図7は実施例のサイドフレームの連結を示す説明図である。
【0011】
図中、1はコンベヤベルト、2はキャリヤローラ、3はローラフレーム、3aは掛止部、3bはスタンド、3cはスカート、4はサイドフレーム、4aは支持部、4bボルト穴、4cは連結具、4dはボルト穴、4eはスペーサー、4fはボルト、4gは固定具、5は架台、5aは上部架台、5bは下部架台、5cは枢支部、5dはカント調整ボルト、6はリターンローラ、6aはガイドローラ、7はテールピース台車、7aはデッキ、7bはクローラ、7cはテールプーリ、7dはサポート、7eはコンベヤ、8はヘッドプーリ、9はベルトストレージ装置、10はクラッシャー、11は坑外コンベヤ、Gは地山、Tはトンネルである。
【0012】
本実施例の直線区間のローラフレーム3は、図3に示すように幅が805mmで、その左右端部にフック状の掛止部3aを備え、左右の上面にスタンド3bを取り付け、そのスタンド3bでキャリヤローラ2を内側が下向きとなるように27度の傾斜角度に軸支し、その中間部にキャリヤローラ2を水平に軸支している。キャリヤローラ2は外径が101.6mm、長さは230mmである。
【0013】
曲線区間のローラフレーム3は、図4に示すように幅が直線区間のローラフレーム3と同じ805mmで、その左右端部にフック状の掛止部3aを備え、左右の上面にスタンド3bを取り付け、そのスタンド3bでキャリヤローラ2を内側が下向きとなるように斜めに軸支している。曲線外側のキャリヤローラ2は27度の傾斜角度に軸支し、曲線内側から2つ目のキャリヤローラ2は30度の傾斜角度に軸支し、曲線内側の最端のキャリヤローラ2は75度の傾斜角度に軸支し、中間部のキャリヤローラ2は水平に軸支している。曲線外側のキャリヤローラ2には、引張りによるコンベヤベルト1の立ち上がりを抑えるスカート3cを設けてもよい。キャリヤローラ2は外径が101.6mm、長さは230mmと150mmで、両端のキャリヤローラ2は直線区間のキャリヤローラ2と共通のものを使用している。
【0014】
サイドフレーム4は、直線区間及び曲線区間ともに共通であって、図5に示すように長さが3048mm、幅が50mmの断面角型のパイプ状で、上面にローラフレーム3を架設するための高さ154mmの支持部4aを等間隔に4体形成し、サイドフレーム4の一方の端部にボルト穴4bを左右に形成している。連結具4cは長さが200mm、内幅が60mmの断面凹状で、前後方向に伸びる楕円状のボルト穴4dを左右に形成し、サイドフレーム4の他方の端部にスペーサー4eを介して固着している。
【0015】
架台5は、図3,4に示すように、直線区間及び曲線区間ともに共通のフレームで構成している。曲線区間に設置される架台5は、図4に示すように、上部架台5aと下部架台5bとで構成され、上部架台5aと下部架台5bの曲線外側同士を枢支し、上部架台5aの傾斜角度を水平に対して0〜6度の範囲で調整できるカント調整ボルト5dを設けている。曲線区間の架台5には、リターンローラ6を曲線内側が上向きとなるように40度の傾斜角度に軸支し、停止時のコンベヤベルト1の垂れ下がり及び稼動中の急激なベルト張力の変化に対する保護用として、リターンローラ6の両端部にガイドローラ6aを直交方向に軸支している。リターンローラ6は外径が101.6mm、長さは710mmで、直線区間及び曲線区間ともに共通のものを使用している。
【0016】
テールピース台車7は、クローラ7bで自走するデッキ7a上にテールプーリ7cを配置し、そのテールプーリ7cの両側に延伸用の左右一対のサイドフレーム4を支持するサポート7dを取り付け、テールプーリ7cの上方位置にズリをコンベヤベルト1へ搬送するコンベヤ7eを配置している。ベルトストレージ装置9は、余剰のコンベヤベルト1を折り畳んで蓄積しておき、掘進に応じてコンベヤベルト1を繰り出してベルトコンベヤ装置を延伸するためのものである。クラッシャー10は、切羽で地山Gを掘削してそのズリをテールピース台車7のコンベヤ7eへ運搬するためのものである。坑外コンベヤ11は、ベルトコンベヤ装置で排出したズリを処理場又は処理場へ運搬するトラック等へ搬送するためものである。
【0017】
本実施例では、図1,2に示すように切羽にクラッシャー10を配置し、そのクラッシャー10の後方にテールピース台車7を配置し、そのテールピース台車7のサポート7dに延伸用の左右一対のサイドフレーム4を載せ、テールピース台車7の後方にベルトストレージ装置9を配置し、トンネルTの坑外にヘッドプーリ8と坑外コンベヤ11を配置し、ベルトストレージ装置9から繰り出したコンベヤベルト1をヘッドプーリ8とテールピース台車7に備えたテールプーリ7cとの間に掛け渡す。
【0018】
坑口からテールピース台車7の後方位置までの区間に架台5をトンネルTの壁に沿って設置し、架台5に左右一対のサイドフレーム4を載せて固定具4gで固定し、そのサイドフレーム4とテールピース台車7上のサイドフレーム4の前後端同士を連結具4cとボルト4fで連結し、左右一対のサイドフレーム4の支持部4a間にローラフレーム3の掛止部3aを架設し、左右一対のサイドフレーム4間にリターンローラ6を軸支してベルトコンベヤ装置を構築する。
【0019】
ベルトコンベヤ装置を作動させ、クラッシャー10で地山Gを掘削する。掘削したズリはテールピース台車7のコンベヤ7eに投入してコンベヤベルト1へ搬送し、コンベヤベルト1で坑外へ搬送して排出し、更に坑外コンベヤ11で処理場又は処理場へ運搬するトラック等へ搬送する。
【0020】
掘削がサイドフレーム4のおよそ1本の長さ分進捗すると、図6(a)に示すように、テールピース台車7が前進しながらベルトストレージ装置9が余剰のコンベヤベルト1を繰り出す。次に、図6(b)に示すように、作業者がテールピース台車7のデッキ7aにおいてサポート7d上の左右一対のサイドフレーム4の支持部4aにローラフレーム3を架設作業する。次に、図6(c)に示すように、テールピース台車7の後方に追加の架台5を設置し、そのキャリヤローラ2とリターンローラ6で延伸したコンベヤベルト1を支持する。テールピース台車7では後の延伸用として追加のサイドフレーム4をサポート7dに載せ、前後のサイドフレーム4の前後端同士を連結具4cとボルト4fで連結しておく。これを掘進とともに繰り返す。
【0021】
サイドフレーム4の連結においては、直線区間では図7(a)に示すように、サイドフレーム4と連結具4cとの間に形成された隙間にスペーサー4eを介在する。曲線区間では、図7(b)に示すように、サイドフレーム4と連結具4cとの間に形成された隙間により多段的に折曲させて曲線を形成する。このとき、曲線の内側は前後のサイドフレーム4同士を近接させるようにボルト穴4dの内側位置でボルト4fを締め、曲線の外側は前後のサイドフレーム4同士を離間させるようにボルト穴4dの外側位置でボルト4fを締め、曲線の内外の長さを調整する。これによって、サイドフレーム4は直線区間及び曲線区間ともに共用でき、従来では特注で製作していたサイドフレーム4を共通化して大幅なコストダウンを図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の技術は、トンネル工事の掘削ズリを排出する用途に利用される。
【符号の説明】
【0023】
1 コンベヤベルト
2 キャリヤローラ
3 ローラフレーム
3a 掛止部
3b スタンド
3cスカート
4 サイドフレーム
4a 支持部
4b ボルト穴
4c 連結具
4d ボルト穴
4e スペーサー
4f ボルト
4g 固定具
5 架台
5a 上部架台
5b 下部架台
5c 枢支部
5d カント調整ボルト
6 リターンローラ
6a ガイドローラ
7 テールピース台車
7a デッキ
7b クローラ
7c テールプーリ
7d サポート
7e コンベヤ
8 ヘッドプーリ
9 ベルトストレージ装置
10 クラッシャー
11 坑外コンベヤ
G 地山
T トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル工事において直線区間と曲線区間が連続する1本の無端のコンベヤベルトで掘削したズリを坑外へ排出するベルトコンベヤ装置であって、コンベヤベルトの途中の支持構造が、キャリヤローラを直線区間用と曲線区間用が略同じ幅のローラフレームに軸支し、そのローラフレームを直線区間用と曲線区間用が共通の左右一対のサイドフレームに架設し、その左右一対のサイドフレームを架台に載せて直線及び曲線に沿って複数連設し、連設したサイドフレームの前後端同士を連結具で連結し、左右一対のサイドフレーム間又は架台にリターンローラを軸支した構造であって、しかも連結具はサイドフレームの幅より拡幅の断面凹状とし、曲線区間ではサイドフレームと連結具との間に形成される隙間により複数のサイドフレームを多段的に折曲させて連設したことを特徴とする、ベルトコンベヤ装置。
【請求項2】
曲線区間のリターンローラが、垂直に軸支又は曲線内側が上向きとなるように斜めに軸支したものである、請求項1記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項3】
曲線区間の架台が、上下に分離した構造で、上部架台が下部架台に対して左右方向の傾きを調整できるようにしたものである、請求項1又は2記載のベルトコンベヤ装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載のベルトコンベヤ装置が、コンベヤベルトの余剰分を予め蓄積して搬送距離の延長に応じて繰り出せるベルトストレージ装置を設け、切羽の後方位置にテールプーリを備えた自走可能なテールピース台車を配置し、掘進に応じてベルトストレージ装置からコンベヤベルトを繰り出しながらテールピース台車を前進させてズリの搬送距離を延伸できるようにした、ベルトコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−159125(P2010−159125A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2475(P2009−2475)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】