説明

ベルトコンベヤ

【課題】含水比が高い掘削土砂や浚渫土砂を搬送中に減容化及び軽量化する。
【解決手段】本発明に係るベルトコンベヤ1は、機首側に配置されたヘッドプーリ2と、尾端側に配置されたテールプーリ3とに無端状のベルト4を掛けて構成してあるが、断面図でよくわかるように、ベルト4は、ベルト本体5の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層6を被覆して構成してある。また、本発明に係るベルトコンベヤ1は、テールプーリ3の近傍に加熱手段としてのヒータ8を備えてあり、尾端側において高熱温度環境を形成することができるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水比の高い搬送材料を搬送するベルトコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
泥土圧シールド工法において、シールドマシンのチャンバー内に取り込まれた掘削土砂は、排泥ポンプ、スクリューコンベヤ、ベルトコンベヤ等によって地上に搬出され、土砂ピットに貯留される。
【0003】
ここで、泥土圧シールドは、泥土圧によって切羽の安定を図っている関係上、掘削土砂の含水比が高く、それゆえ産業廃棄物扱いとなって処分費用が高くなる。加えて、土粒子の間隙に多くの水を含むため、単位体積当たりの重量が大きく、運搬費用も高くなる。さらには、トンネル掘削であるため、掘削土砂の発生量は膨大である。
【0004】
そのため、掘削土砂の減容化・軽量化を図る試みが従来からなされてきた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−291419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、天日干し等の方法で掘削土砂を乾燥させれば、含水比が低下し、一般残土としての利用も可能ではあるが、天日干しのための広大な敷地を都市部に確保することは現実的ではない。また、石灰等のセメント系材料を添加することで含水比の低下と強度の改善とを図れば、建設資材としての再利用も可能であるが、発生土が膨大であるため、セメント系材料の材料コストや添加のための作業コストが高くなり、処理用地の確保とも相まって、やはり経済性の面で適用が困難となる。また、セメント系材料の添加によってpHが大きくなるため、一般残土としての処分が困難になる場合がある。
【0007】
このように、泥土圧シールド工法において発生する掘削土砂の減容化や軽量化を行う従来の方法にはいずれも改善の余地があり、あらたな技術開発が望まれていた。また、含水比が高いその他の掘削土砂や浚渫土砂の取り扱いについても、泥土圧シールドと同様の問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、搬送中において含水比が高い掘削土砂や浚渫土砂の減容化及び軽量化が可能なベルトコンベヤを提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るベルトコンベヤは請求項1に記載したように、機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、前記ベルトを、ベルト本体の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層を被覆して構成したものである。
【0010】
また、本発明に係るベルトコンベヤは請求項2に記載したように、機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、透水性材料を母材とし該母材に感温吸排水性保水剤が混入されてなる吸排水層をベルト本体の搬送面に被覆して前記ベルトを構成したものである。
【0011】
また、本発明に係るベルトコンベヤは請求項3に記載したように、機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成したものである。
【0012】
また、本発明に係るベルトコンベヤは請求項4に記載したように、機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、不透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入するとともに、該感温吸排水性保水剤のうち、少なくとも一部が搬送面に露出するように形成してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成したものである。
【0013】
また、本発明に係るベルトコンベヤは、前記感温吸排水性保水剤が排水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を冷却する冷却手段を備えてなるものである。
【0014】
また、本発明に係るベルトコンベヤは、前記感温吸排水性保水剤が吸水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を加熱する加熱手段を備えてなるものである。
【0015】
また、本発明に係るベルトコンベヤは、掘削土砂又は浚渫土砂を搬送材料とするものである。
【0016】
本願発明に係るベルトコンベヤにおいては、ベルト本体の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層を被覆してベルトを構成し、透水性材料を母材とし該母材に感温吸排水性保水剤が混入されてなる吸排水層をベルト本体の搬送面に被覆してベルトを構成し、透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成し、又は不透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入するとともに、該感温吸排水性保水剤のうち、少なくとも一部が搬送面に露出するように形成してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成してある。
【0017】
感温吸排水性保水剤とは、感温点以下では水を吸水保持し、感温点を上回ると、水を排出する機能を有する保水剤である。
【0018】
かかる感温吸排水性保水剤を上述のように構成しておき、搬送材料がベルトに載置される搬送区間を除く所定の区間で感温点を上回る高熱環境が形成され、かつ高熱環境が形成される区間を除くすべての区間で感温点以下の低熱環境が形成されるようにする。
【0019】
このようにすると、低熱環境が形成されている区間においては、搬送材料に含まれていた水分を感温吸排水性保水剤が吸水若しくは保持し、又は感温吸排水性保水剤が吸水可能な状態に維持される。一方、高熱環境が形成されている区間においては、感温吸排水性保水剤に保持されていた水分が感温吸排水性保水剤から排出される。
【0020】
換言すれば、感温吸排水性保水剤は、低熱環境にて搬送材料に含まれていた水分を吸水し、これを保持したまま、高熱環境にて該水分を排出する役目を担うこととなり、かくして、搬送材料は、低熱環境で感温吸排水性保水剤に吸水される形で、搬送材料から脱水され、含水比が低下する。
【0021】
なお、感温吸排水性保水剤から排出された水については、必要に応じてピット等の集水手段を設け、適宜回収すればよい。
【0022】
感温吸排水性保水剤は、例えば、「サーモゲル」の商品名で株式会社興人から市販されているものを利用することができる。かかる「サーモゲル」は、「吸水ポリマーに新たな機能をつけた新素材」、「設定した温度になると自動的に吸った水を排出する感温吸排水性樹脂」であるとともに、「感温点は15℃〜60℃の間で、用途に応じ任意に設定」でき、「 標準グレードとして20、25、30、35、40℃」があり、「感温点以下の温度での吸収倍率は自重の100〜150倍」、「サーモゲルの感温吸排水特性は可逆的で、10,000回以上吸排水を繰り返しても吸排水特性は変化」しないものである(以上、http://www.kohjin.co.jp/newbiz/projectgreen/thermogel.htmlから引用)。
【0023】
上述したように高熱環境が形成される区間とは、感温吸排水性保水剤がその感温点を上回る温度環境に維持される区間、低熱環境が形成される区間とは、感温吸排水性保水剤がその感温点以下の温度環境に維持される区間であり、ベルトに含有されている感温吸排水性保水剤は、ベルトとともにヘッドプーリとテールプーリの間を循環しながら、これらいずれかの温度環境におかれる。
【0024】
なお、低熱環境や高熱環境は、クーラー等の冷却手段あるいはヒータ等の加熱手段を用いた能動的な温度操作によって形成される場合のみを指すものではなく、外気による受動的な温度環境をも包摂する概念である。
【0025】
ここで、冷却手段を備える場合においては、感温吸排水性保水剤が排水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を冷却できるように設置する。同様に、加熱手段を備える場合においては、感温吸排水性保水剤が吸水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を加熱できる設置する。
【0026】
透水性材料である母材は、多孔質系材料、例えばスポンジで構成することができる。
【0027】
透水性ゴムは、ゴム材料やプラスチック材料を発泡させてなるものであり、透水性を高めるためには、独立気泡よりも連続気泡の含有割合を高めておくのが望ましい。
【0028】
不透水性ゴムは、通常使用される一般的なゴム材料で形成されるものであり、感温吸排水性保水剤のうち、少なくとも一部が搬送面に露出するように形成するには、例えば一般的なゴム材料に感温吸排水性保水剤を添加混合し、該感温吸排水性保水剤ができるだけ均一に分散するように硬化形成した後、搬送面となる側を表面研磨するようにすればよい。
【0029】
また、本願発明に係るベルトコンベヤは、搬送中に含水比を低下させたい全ての搬送材料に適用可能であり、その分野は問わないが、泥土圧シールド工事等で発生する掘削土砂や、浚渫工事で発生する浚渫土砂を搬送対象し、あるいは用途とした場合、大量に発生する掘削土砂や浚渫土砂の含水比を効率的に低下させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係るベルトコンベヤの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
図1は、本実施形態に係るベルトコンベヤを示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係るベルトコンベヤ1は、機首側に配置されたヘッドプーリ2と、尾端側に配置されたテールプーリ3とに無端状のベルト4を掛けて構成してあるが、断面図でよくわかるように、ベルト4は、ベルト本体5の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層6を被覆して構成してある。
【0032】
感温吸排水性保水剤とは、感温点以下では水を吸水保持し、感温点を上回ると、水を排出する機能を有する保水剤であり、具体的には、「サーモゲル」の商品名で株式会社興人から市販されているものを利用することができる。
【0033】
ここで、感温吸排水性保水剤からなる吸排水層6は、これをベルト本体5に被覆した状態でその上からメッシュシート等からなる透水性シート7を被せるとともに、該透水性シートの両縁を接着等によりベルト本体5の各側方縁部にそれぞれ固着してあり、かかる構成により、ベルト本体5からの剥落を防止することができる。
【0034】
透水性シート7は、例えば不織布で構成することができる。
【0035】
本実施形態に係るベルトコンベヤ1は、テールプーリ3の近傍、より具体的にはテールプーリ3を回った後のリターン側の尾端近傍位置でベルト4が輻射熱を受けるように、加熱手段としてのヒータ8を備えてある。
【0036】
本実施形態に係るベルトコンベヤ1を用いて含水比が高い搬送材料を搬送するには、図2(a)に示すように、まず、含水比が高い搬送材料11を機首側にてベルト4に載置する。
【0037】
搬送材料11は、水分を脱水除去したいのであれば、あらゆる搬送材料が対象となるが、泥土圧シールド工事で発生した掘削土砂や、浚渫工事で発生した浚渫土砂は、含水比が高いだけでなく大量に発生するため、搬送を兼ねて水分除去が可能なベルトコンベヤ1を使えば、効率的な水分除去及び搬送を行うことができる。
【0038】
ここで、外気温が10゜Cになっているものと仮定し、感温吸排水性保水剤の感温点を例えば20゜Cに設定するとともに、ヒータ8によって形成される高熱環境を30゜Cに設定する。
【0039】
このようにすると、感温点20゜Cを基準にした場合、ベルト4の感温吸排水性保水剤が受ける温度環境は同図(b)に示す通りとなり、ベルト4の循環方向に沿ったB点からA点までは、ヒータ8の影響を受けて感温点である20゜Cを上回り、この区間が高熱区間になる。また、ヒータ8による加熱区間は、高熱区間B〜A内に含まれ、B点からC点までの区間となる。一方、A点からB点までが外気温の影響を受けて感温点である20゜C以下となり、かかる区間が低熱区間となる。なお、搬送材料11が搬送される搬送区間は、a〜bとなる。
【0040】
このような温度環境で、ベルト4の上に搬送材料11を連続載置しながら、ベルトコンベヤ1のモータ(図示せず)を駆動して搬送材料11を同図矢印のベルト循環方向に搬送する。このとき、機首を含む区間A〜Bは上述したように、低熱区間となっているため、搬送材料11から滲出してくる水分は、低熱区間A〜Bと搬送区間a〜bが重複する区間a〜bにおいて吸排水層6を構成する感温吸排水性保水剤に吸水されるとともに、吸水された水分は、区間b〜Bにおいて感温吸排水性保水剤に保持される。
【0041】
すなわち、搬送材料11に含まれる水分は、搬送区間a〜bで感温吸排水性保水剤に吸水されることとなり、搬送距離(搬送時間)を有効利用した吸水が可能となる。
【0042】
一方、含水比が低下した搬送材料11は、尾端側にて次の処理工程へと流れていく。
【0043】
次に、区間b〜Bで感温吸排水性保水剤に保持されていた水分は、ベルト4がテールプーリ3を回った後、ヒータ8による加熱区間B〜Cを含む高熱区間B〜Aにおいて感温吸排水性保水剤から排水される。
【0044】
次に、A点から温度環境が高熱区間から低熱区間へと変化するため、感温吸排水性保水剤は、吸水可能な状態へと戻る。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るベルトコンベヤ1によれば、機首で載置された搬送材料11中の水分は、搬送区間a〜bにおいて、吸排水層6を構成する感温吸排水性保水剤に吸水され、感温吸排水性保水剤の吸水機能が飽和しない限り、搬送距離に応じて脱水が進行し、搬送材料11の含水比は低下していく。一方、高熱区間B〜Aにおいては、感温点以上の高熱環境となっているため、感温吸排水性保水剤に保持されていた水分は、感温吸排水性保水剤から速やかに排水される。
【0046】
かくして、温度差に依存する感温吸排水性保水剤の吸排水機能を利用し、搬送材料11の含水比を低下させて減容化・軽量化を図るとともに、含水比が低下した搬送材料11を一般残土として再利用することが可能となる。
【0047】
本実施形態では、ベルト4を、ベルト本体5の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層6を被覆して構成したが、これに代えて、図3に示すように、透水性材料を母材とし該母材に感温吸排水性保水剤が混入されてなる吸排水層6′をベルト本体5の搬送面に被覆して構成したベルト4′を採用してもかまわない。
【0048】
透水性材料としては、例えばスポンジ等の多孔質材料を用いることが考えられる。
【0049】
また、透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入してなる吸排水性ベルトでベルトを構成してもかまわないし、図4に示すように、不透水性ゴム42に感温吸排水性保水剤43を混入するとともに、該感温吸排水性保水剤のうち、少なくとも一部が搬送面44に露出するように形成してなる吸排水性ベルトでベルト41を構成してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、吸排水層6をベルト本体5に被覆し、その上からメッシュシート等からなる透水性シート7を被せるとともに、該透水性シートの両縁を接着等によりベルト本体5の各側方縁部にそれぞれ固着するようにしたが、ベルト本体5から吸排水層6が剥落する懸念がないのであれば、透水性シート7を省略してもかまわない。
【0051】
また、本実施形態では、テールプーリ3を回った後のリターン側の尾端近傍位置でベルト4が輻射熱を受けるように加熱手段としてのヒータ8を備えたが、これに代えて図5に示したように、ヘッドプーリ2の近傍に冷却手段としてのクーラー51を備えてもよい。
【0052】
かかる構成においては、外気温が30゜Cになっているものと仮定し、感温吸排水性保水剤の感温点を例えば20゜Cに設定するとともに、クーラー51による冷却温度を10゜Cに設定する。
【0053】
このようにすると、感温点20゜Cを基準にした場合、ベルト4の感温吸排水性保水剤が受ける温度環境は同図に示す通りとなり、ベルト4の循環方向に沿ったA点からB点までは、クーラー51の影響を受けて感温点である20゜C以下となり、この区間が低熱区間になる。また、クーラー51による冷却区間は、低熱区間A〜B内に含まれ、A点からD点までの区間となる。一方、B点からA点までが外気温の影響を受けて感温点である20゜Cを上回り、かかる区間が高熱区間となる。
【0054】
このような温度環境で、ベルト4の上に搬送材料11を連続載置しながら、ベルトコンベヤ1のモータ(図示せず)を駆動して搬送材料11を同図矢印のベルト循環方向に搬送する。このとき、区間A〜Bは上述したように、低熱区間となっているため、搬送材料11から滲出してくる水分は、低熱区間A〜Bと搬送区間a〜bが重複する区間a〜bにおいて吸排水層6を構成する感温吸排水性保水剤に吸水されるとともに、吸水された水分は、区間b〜Bにおいて感温吸排水性保水剤に保持される。
【0055】
すなわち、搬送材料11に含まれる水分は、搬送区間a〜bで感温吸排水性保水剤に吸水されることとなり、搬送距離(搬送時間)を有効利用した吸水が可能となる。
【0056】
一方、含水比が低下した搬送材料11は、尾端側にて次の処理工程へと流れていく。
【0057】
次に、区間b〜Bで感温吸排水性保水剤に保持されていた水分は、ベルト4がテールプーリ3を回った後、高熱区間B〜Aにおいて感温吸排水性保水剤から排水される。
【0058】
次に、A点から温度環境が高熱区間から低熱区間へと変化するため、感温吸排水性保水剤は、吸水可能な状態へと戻る。
【0059】
ちなみに、本実施形態の温度環境は冬期に適した設定であり、上記変形例の温度環境は夏期に適した設定であると云える。
【0060】
ここで、感温吸排水性保水剤の感温点を例えば15゜Cに設定するとともに、クーラー51による低温環境を10゜C、ヒータ8による高熱環境を20゜Cに設定することは可能であり、ヒータ8とクーラー51とを併用する場合であっても、感温点を基準にした低温環境と高温環境とが形成されることに何ら変わりはない。
【0061】
一方、加熱手段としてのヒータ8や冷却手段としてのクーラー51は必須ではなく、例えば浚渫工事において、浚渫されたばかりの泥土が水底の温度に近いことを利用して、搬送区間では例えば10゜Cの低熱環境であると考える一方、リターン側では、例えば20゜Cの高熱環境であると考え、感温吸排水性保水剤の感温点を例えば15゜Cに設定することも可能である。
【0062】
かかる例では、浚渫されたばかりの泥土が冷却手段となる。なお、浚渫された泥土だけでは低熱環境を形成することが困難である場合、ドライアイスを冷却手段として追加すればよい。かかる構成においては、浚渫泥土を本発明に係るベルトコンベヤに載置する際、ドライアイスが浚渫泥土とベルトとの間に挟まれるようにしてドライアイスを投入載置するのがよい。
【0063】
図6は、低熱環境の設定温度Tmin、高熱環境の設定温度Tmax及び感温点T0と、外気温Tとの相対的な温度関係を示したものであり、(a)から(e)に移行するにしたがって外気温が相対的に上昇している様子を描いたものである。これらの図でわかるように、ケース(a)、(b)では外気温が相対的に低いため、冷却手段は不要となるが、ケース(a)では加熱手段の負担はかなり大きくなり、逆にケース(d)、(e)では外気温が相対的に高いため、加熱手段は不要となるが、ケース(e)では冷却手段の負担はかなり大きくなり、ケース(a)、(e)は、いずれも熱効率がよくない。
【0064】
一方、ケース(c)では外気温が感温点T0に近いため、加熱手段及び冷却手段の両方が必要となるが、熱効率は悪くない。
【0065】
要すれば、イニシャルコストとランニングコストを勘案しながら、ケース(b)〜ケース(d)の3つを適宜選択するのが望ましい。
【0066】
上述した記載でわかるように、本発明を実施するにあたり、ベルトの循環経路に沿ったすべての箇所で外気温が一定である場合においては、搬送材料自体の熱エネルギーを利用する場合も含め、加熱手段及び冷却手段の少なくともいずれかと併用することが必要となる。
【0067】
しかしながら、ベルトの循環経路に沿った区間で外気温が異なる場合にはこの限りではない。
【0068】
具体的には泥土圧シールド工事において、搬送区間が長いために機首側と尾端側で外気温が異なり、機首側では地中温度の影響を受けて外気温が例えば10゜Cになり、尾端側では立坑を介した地上温度の影響を受けて外気温が例えば30゜Cになる場合、感温吸排水性保水剤の感温点を20゜Cに設定すれば、加熱手段及び冷却手段の両方を省略しても、感温吸排水性保水剤の吸排水機能を利用した搬送中の脱水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係るベルトコンベヤ1の図であり、(a)は全体側面図、(b)はE−E線に沿う詳細断面図。
【図2】本実施形態に係るベルトコンベヤ1の作用を示した図であり、(a)は搬送材料11の脱水を行っている様子を示した図、(b)は温度環境を示した図。
【図3】変形例に係るベルト4′を示した断面図。
【図4】変形例に係るベルト41を示した断面図。
【図5】変形例に係るベルトコンベヤを用いた場合の温度環境を示した図。
【図6】低熱環境の設定温度Tmin、高熱環境の設定温度Tmax及び感温点T0と、外気温Tとの相対的な温度関係を示した図。
【符号の説明】
【0070】
1 ベルトコンベヤ
4,4′ ベルト
5 ベルト本体
6,6′ 吸排水層
8 ヒータ(加熱手段)
11 搬送材料
42 不透水性ゴム
43 感温吸排水性保水剤
51 クーラー(冷却手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、前記ベルトを、ベルト本体の搬送面に感温吸排水性保水剤からなる吸排水層を被覆して構成したことを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項2】
機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、透水性材料を母材とし該母材に感温吸排水性保水剤が混入されてなる吸排水層をベルト本体の搬送面に被覆して前記ベルトを構成したことを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項3】
機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成したことを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項4】
機首側に配置されたヘッドプーリと尾端側に配置されたテールプーリとに無端状のベルトを掛けて構成したベルトコンベヤであって、不透水性ゴムに感温吸排水性保水剤を混入するとともに、該感温吸排水性保水剤のうち、少なくとも一部が搬送面に露出するように形成してなる吸排水性ベルトで前記ベルトを構成したことを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項5】
前記感温吸排水性保水剤が排水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を冷却する冷却手段を備えてなる請求項1乃至請求項4のいずれか一記載のベルトコンベヤ。
【請求項6】
前記感温吸排水性保水剤が吸水状態にあるときに該感温吸排水性保水剤を加熱する加熱手段を備えてなる請求項1乃至請求項4のいずれか一記載のベルトコンベヤ。
【請求項7】
掘削土砂又は浚渫土砂を搬送材料とする請求項1乃至請求項6のいずれか一記載のベルトコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−302462(P2007−302462A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135107(P2006−135107)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】