説明

ベルトフィルターのためのフィルター織布

本発明はベルトフィルターのためのフィルター織布に関し、その際、該フィルター織布は、100l/(分*dm)〜350l/(分*dm)の通気度を有し、そしてそのフィルター織布の繊維は25μm〜35μmの繊維厚を有し、そして50重量%〜100重量%のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含有する。そのフィルター織布は、1cm当たり25〜35本の縦糸(3)及び15〜25本の横糸(2)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、水熱酸再生時に使用するための、ベルトフィルターのためのフィルター織布に関する。
【0002】
水熱酸再生の際、鉄酸化物、特にFeは、約170℃の温度で75%濃度の水性FeCl溶液から沈殿し、そしてろ別される。
【0003】
水熱酸再生では、金属加工の際、特に金属ストリップの酸洗浄後に、FeClで汚染された塩酸の再生が重要である。その際に、次の方法工程が行われる。
(1) FeCl含有の塩酸が濃縮される。
(2) FeClをOで、150℃及び7バールでFeClに酸化させる。
2FeCl + 2HCl + 1/2O → 2FeCl + H
(3) Feが、170℃及び大気圧での加水分解で沈殿する。再使用可能な18%〜30%塩酸が得られる。
2FeCl + 3HO → Fe↓ + 6HCl↑
【0004】
Feは、工業生産において、ベルトフィルターによって溶液から分離される。工業生産においては、液体からの固形物質の分離にはベルトフィルターが非常に有用である。ろ過される液体は、フィルター不織布(Filtervlies)−ウェブ上へ案内される。固体粒子がそのフィルター不織布上に留まる。浄化された液体は貯蔵タンク中へ流れ、そして再利用のために元の場所に又は廃棄物処理のためにそこから排出することができる。その不織布上に残された残留物はろ過ケーキを形成する。そのろ過ケーキの密度が液体の最適な流出を妨げる場合、そのろ過ケーキは不織布と一緒に自動的に廃棄物タンク中へ輸送される。液体流が中断されることなく、その全過程は連続的にかつ全自動で行われる。
【0005】
公知のろ布が真空ベルトフィルターでの使用に適していないことが明らかにされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、真空下で酸性の高温溶液から鉄酸化物を分離するためのベルトフィルターの耐性及び性能についての要求を満たす、ベルトフィルターのためのフィルター織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、ベルトフィルターのためのフィルター織布によって解決され、その際、該フィルター織布は、100l/(分*dm)〜350l/(分*dm)の通気度を有し、そして該フィルター織布の繊維が、25μm〜35μmの繊維厚を有し、そして50重量%〜100重量%のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含有する。
【0008】
本発明の意味において、通気度とは、分単位の時間当たりかつdm単位の面積当たりのリットル単位の空気の体積、l/分/dmを意味し、l/(分*dm)として与えられる。
【0009】
本発明のろ布(Filtertuch)は、その耐性及び性能に基づいて、真空下において酸性の高温溶液から鉄酸化物を分離するためのベルトフィルターに適している。
【0010】
パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)は、完全にフッ素化されたポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリ(パーフルオロビニルメチルエーテル)からのコポリマーである。PFAは、例えば、射出成形又はポリマー溶接によって熱可塑的に加工可能である。PFAは、低い強度及び硬度を有する。
【0011】
本発明の好ましい形態は、ベルトフィルターのためのフィルター織布であり、その際、その繊維が28μm〜32μmの繊維厚を有する。この繊維厚の範囲において、非常に良好な結果が達成される。真空ベルトフィルターのために、非常に好ましく良好な結果は、少なくとも約30μmの太さを有するPFAからのモノフィラメントによって達成される。本発明の好ましい形態は、フィルター織布の繊維が、90重量%〜100重量%PFAを含有する、ベルトフィルターのためのフィルター織布である。最良の成果は、90重量%〜100重量%の範囲でPFAを含有する繊維で達成される。
【0012】
本発明の好ましい形態は、フィルター織布が100l/(分*dm)〜200l/(分*dm)の通気度を有する、ベルトフィルターのためのフィルター織布である。この範囲において非常に良好なろ過結果が達成される。
【0013】
本発明の好ましい形態は、フィルター織布が1cm当たり25〜35本の縦糸及び15〜25本の横糸を有する、ベルトフィルターのためのフィルター織布である。縦糸及び横糸のこの範囲においてフィルター織布に関して良好な結果が達成される。
【0014】
本発明の好ましい形態は、フィルター織布が、7000mmを超える長さ、好ましくは7000mm〜8000mmの長さ及び700mm〜1,800mmの幅を有する、ベルトフィルターのためのフィルター織布である。ベルトフィルターは、この寸法で特に良好に適していて、良好に使用可能である。
【0015】
本発明の更なる局面は、100l/(分*dm)〜350l/(分*dm)の通気度を有するベルトフィルターのためのフィルター織布の製造方法であり、その際、25μm〜35μmの繊維厚及び50重量%〜100重量%PFAを有する繊維が、1cm当たり25〜35本の縦糸及び15〜25本の横糸を有するフィルター織布に織られる。
【0016】
本発明の更なる局面は、特に、水熱酸再生時における、酸性の高温水性FeCl溶液から固体の鉄酸化物、特にFeを分離するためのベルトフィルターのための、本発明によるフィルター織布の使用である。
【0017】
本発明を、図面及び例に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明によるフィルター織布の透視上面図である。
【図2】図2は、カバーを有する吸引器(Nutsche)の透視分解図である。
【図3】図3は、フィルター織布を試験するための実験装置の透視図である。
【0019】
図1に示すフィルター織布1は、約27μmの太さを有するPFAモノフィラメント標準繊維で製造されていて、100l/(分*dm)、200l/(分*dm)及び350l/(分*dm)の通気度を有する。その際に、横糸2及び縦糸3は、1cm当たり31本の縦糸及び20本の横糸を有する8000mm長×800mm幅のフィルター織布に織られる。その製織の後、そのフィルター織布1は、通気度を調節するために3回カレンダー加工される。熱間圧延及び冷間圧延によって、熱及び圧力がその織物にかけられる。その際に、該織物は、約10%縮んで、0.7cm当たり31本の繊維、そして7000mm長並びに700mm幅になる。
【0020】
図2に示されている吸引器4は、カバー5と共にフィルター織布1を試験するための実験装置の重要な部分を表している。フィルター織布1は吸引器4上に置かれ、そして吸引器4にカバー5がねじ留めされる。吸引器4は、その下方領域に吸引ノズル6を有する。その吸引ノズル6には真空ホース9が連結される。
【0021】
図3には、フィルター織布を試験するための実験装置全体が示されている。真空ホース9は、吸引器4の吸引ノズル6から均圧器7へ通じている。均圧器7には、真空ポンプ10に直通する第二の真空ホース8が連結されている。
【実施例】
【0022】
本発明のフィルター織布1の有効性の評価を可能にするべく、異なる材料で構造が同じである3種のフィルターを製造した。本発明によるパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)の他に、次のポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を試験した。3種のフィルター織布の特性は表1から明らかになる。
【0023】
【表1】

【0024】
ろ過試験を次のように行った。FeCl450gを、Fe60gと混合した。この固体混合物を、150mlの水と混合した。その懸濁液を、ガラスビーカー中で絶えず撹拌しながら170℃に加熱した。その際に、FeClが溶液になり、75%FeCl溶液が形成された。ガラスビーカーの内容物を、フィルター織布1上に急にあけた。ガラスビーカー中には残留物は全く残らなかった。まず、カバー/ビーカーキャップ5が吸引器4上に置かれ、そしてフィルター織布1の下方面に対して、吸引ノズル6で600mbarの真空度が適用された。ろ過ケーキが、10秒〜15秒内で形成された。フィルター織布1には、何の変化も認められなかった。結果及び本発明によるPFAと、PPS並びにPeekとの間の比較は表2から明らかになる。
【0025】
【表2】

【0026】
本発明のフィルター材料1のPFAは損傷を受けなかった。フィルター試験の反復時にさえ、確認できるPFAフィルター織布1の変化は全くなかった。比較フィルターのPPS及びPeekは、ろ過時に機能しなくなり、そして損傷を示した。
【0027】
本発明のフィルター1の場合のろ過ケーキの分析は、Feの粒度が10μm〜50μmであることを示した。
【0028】
試験は、200l/(分*dm)及び100l/(分*dm)を有する本発明のPFAフィルター織布1で遂行された。試験結果として、通気度を縮小しても、ろ過時間を著しく延長することなく、最も微細な粒子の保持量がより増大したことは確実であった。フィルターは、ろ過ケーキが蓄積されて初めて形成され、そして粒子サイズに介して ろ過度に影響を及ぼす。
【0029】
得られた結果は、当業者には驚くべきかつ予測しなかったものであった。
【符号の説明】
【0030】
(1) フィルター織布/ろ布/フィルター
(2) 横糸/横繊維
(3) 縦糸/縦繊維
(4) ろ過器
(5) カバー/ビーカーキャップ
(6) 吸引ノズル
(7) 冷却トラップ/均圧器
(8) 真空ホース
(9) 真空ホース
(10) 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトフィルターのためのフィルター織布であって、該フィルター織布(1)が、100l/(分*dm)〜350l/(分*dm)の通気度を有し、そして該フィルター織布(1)の繊維が、25μm〜35μmの繊維厚を有し、そして50重量%〜100重量%のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含有する、上記のフィルター織布。
【請求項2】
前記繊維が28μm〜32μmの繊維厚を有する、請求項1に記載のベルトフィルターのためのフィルター織布。
【請求項3】
フィルター織布の繊維が、90重量%〜100重量%のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を含有する、請求項1又は2に記載のベルトフィルターのためのフィルター織布。
【請求項4】
前記フィルター織布(1)が、100l/(分*dm)〜200l/(分*dm)の通気度を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布。
【請求項5】
前記フィルター織布(1)が、1cm当たり25〜35本の縦糸(3)及び15〜25本の横糸(2)を有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布。
【請求項6】
前記フィルター織布(1)が、7000mm〜8000mmの長さ及び700mm〜800mmの幅である、請求項1〜5のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布。
【請求項7】
100l/(分*dm)〜350l/(分*dm)の通気度を有する、ベルトフィルターのためのフィルター織布の製造方法であって、その際、25μm〜35μmの繊維厚、及び50重量%〜100重量%のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を有する繊維がフィルター織布(1)に織られる、上記の方法。
【請求項8】
酸性の高温溶液から金属酸化物を分離するための請求項1〜6のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布の使用。
【請求項9】
酸性の高温水性FeCl溶液から固体の鉄酸化物、特にFeを分離するための請求項1〜6のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布の使用。
【請求項10】
水熱酸再生時における固体の鉄酸化物、特にFeを分離するための請求項1〜6のいずれか一つに記載のベルトフィルターのためのフィルター織布の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526647(P2012−526647A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510155(P2012−510155)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002891
【国際公開番号】WO2010/130412
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】