説明

ベルト交換用治具

【課題】ベルトテンショナの周囲の部品レイアウトに左右されずに、アーム部材に確実に装着でき且つアーム部材を確実に揺動可能なベルト交換用治具を提供する。
【解決手段】アーム部材9の先端側部分に装着される治具本体部35と、治具本体部35に着脱自在に取り付けられる操作レバー36とを備える。そして、治具本体部35に対する操作レバー36のアイドルプーリ6の回転軸心回りの取付角度を調整可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト交換用治具に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駆動プーリと従動プーリと両プーリ間に巻き掛けられたベルトとを備え、該ベルトを介して駆動プーリの回転を従動プーリに伝達するベルト伝動システムは知られている。
【0003】
この種のベルト伝動システムでは、ベルトの張力を調整するためにベルトテンショナが使用される(例えば、特許文献1参照)。このベルトテンショナは、軸部を有する固定部材と、基端が上記固定部材の軸部に揺動可能に支持されたアーム部材とを備えている。アーム部材の先端には、ベルトを押圧するアイドルプーリが回転自在に支持されている。アーム部材は、付勢バネによって、アイドルプーリがベルトを押圧する方向に回転付勢されている。これにより、ベルトの張力変動が生じても、アーム部材が揺動してアイドルプーリが変位することによりベルトの張力が略一定に維持されるようになっている。
【0004】
このベルト伝動システムでは、ベルトを交換する際に、先ず、アーム部材を揺動させてアイドルプーリをベルトから離間させておく必要がある。このアーム部材の揺動作業には例えばスパナ等が使用される。このスパナを使用した方法では、アーム部材に設けられた突起部にスパナの頭部を嵌め込み、その状態でスパナを回転させる。このスパナの回転により、揺動アームが付勢機構による付勢方向とは逆方向へ揺動されて、この結果、アイドルプーリがベルトから離間する。そうして、ベルトの張力が緩むことで、ベルトを交換可能になる。
【0005】
この他にも、例えば、特許文献1には、アーム部材を揺動させるための治具として、回転操作される回転入力部と、回転入力部に連結された回転出力部とを備えたものが開示されている。この回転出力部は、アーム部材に突設された一対の突起に掛け止められる凹部を有しており、回転入力部が回転操作されると、その回転が上記凹部及び突起を通じてアーム部材に伝達されるようになっている。この構成によれば、回転出力部を突起に掛け止めるだけで、ベルト交換用治具をアーム部材に容易に装着できるため、比較的狭い空間内でアームの揺動作業(ベルトの交換作業)を容易に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−250286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示す治具や一般的工具であるスパナでは、アーム部材に治具を装着する際に、テンショナ周辺の他の部品が邪魔になって、治具(又は工具)をアーム部材に装着できない場合がある。また、仮に、治具をアーム部材に装着できたとしても、装着した治具を回転させる際に、治具(回転入力部又はスパナ柄)が他の部品と接触して、治具を回転操作できない場合がある。
【0008】
このため、従来の治具(又は工具)では、テンショナの周囲の部品レイアウトを考慮して、治具や工具の形状(回転入力部と回転出力部とのなす角度等)を専用に設計する必要があり、このことが治具コストを増加させる要因になっている。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトテンショナの周囲の部品レイアウトに左右されずに、アーム部材に確実に装着でき且つアーム部材を確実に揺動可能なベルト交換用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、アーム部材の先端側部分に装着される治具本体部と、治具本体部に着脱自在に取り付けられる操作レバーとを備えるとともに、治具本体部に対する操作レバーのプーリ回転軸心回りの取付角度を調整可能にした。
【0011】
具体的には請求項1の発明では、軸部を有する固定部材と、基端側が上記固定部材の軸部に揺動可能に支持され、先端側にベルトを押圧するプーリが基端の揺動軸心と平行な回転軸心で回転自在に支持されたアーム部材と、上記固定部材に対し該アーム部材を上記プーリがベルトを押圧する方向に回動付勢するバネとを備えたベルトテンショナに用いられるベルト交換用治具を対象とする。
【0012】
そして、上記アーム部材の先端側部分に装着される治具本体部と、上記治具本体部に着脱自在に取り付けられ、該治具本体部を介して上記アーム部材に対し上記付勢された向きとは逆向きの操作力を付与する操作レバーとを備え、上記治具本体部には、該治具本体部に対する上記操作レバーの上記プーリの回転軸心回りの取付角度を調整するための位置調整手段が設けられているものとする。
【0013】
この構成によれば、治具本体部に設けられた位置調整手段によって、操作レバーの治具本体部に対する取付角度を調整することができる。これにより、操作レバーを、テンショナの周囲の部品に干渉しないように治具本体部に取り付けることができる。したがって、テンショナの周囲の部品レイアウトに左右されずに、操作レバーを治具本体部に確実に取り付けて回動させることができる。よって、部品レイアウトに応じて治具を専用設計する必要がなくなり、治具コストを低減することができる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記アーム部材の先端には、上記アーム部材の揺動軸心方向から見て、該揺動軸心と上記プーリの回転軸心とを通る直線上に設けられ、該直線方向のアーム外方側に突出する係合突部が形成され、上記治具本体部には、該治具本体部を上記アーム部材に装着した治具装着状態において、上記係合突部に係合する係合凹部が形成されているものとする。
【0015】
この構成によれば、治具本体部に形成された係合凹部をアーム部材に設けられた係合突部に係合させるだけで、治具本体部をアーム部材の先端側部分に容易に装着することができる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記アーム部材の先端側部分には、上記アーム部材の揺動軸心方向から見て、該揺動軸心と上記プーリの回転軸心とを通る直線に対して線対称に配置され、アーム外方側に向かって耳状に膨出する一対の膨出部が設けられ、上記治具本体部には、上記治具装着状態において、上記一対の膨出部のうちの一方を受け入れる受入れ凹部が形成され、上記受入れ凹部の側壁面は、上記治具装着状態において、上記係合突部が位置する側とは反対側寄りに位置する面部が上記一方の膨出部の周側面に当接するように形成されているものとする。
【0017】
この構成によれば、操作レバーを回動操作する際に、治具本体部に形成された受入れ凹部の側壁面のうち、上記係合突部が位置する側とは反対側寄りに位置する面部が、アーム部材に設けられた一方の膨出部の周側面に当接する。これにより、操作レバーに付与された回転操作力を、上記係合凹部と係合突部との互いの係合面のみならず、上記受入れ凹部の側壁面と膨出部の周側面との当接面を介してアーム部材に確実に伝達することができる。
【0018】
また、アーム部材の揺動軸心方向から見て、該揺動軸心とプーリの回転軸心とを通る直線上に上記係合突部を配置するとともに、上記一対の膨出部を該直線に対して線対称に配置するようにしたことで、治具本体部を表裏関係なくアーム部材に装着することができる。よって、アーム部材の汎用性をさらに高めることができる。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記位置調整手段は、上記治具装着状態において、上記プーリの回転軸心方向から見て該回転軸心を通る直線上に並ぶ一対の螺子孔を一組として、該回転軸心回りに周方向に間隔を空けて複数組配置して構成されているものとする。
【0020】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、上記操作レバーにはボルト挿通孔が形成されており、上記操作レバーは、上記ボルト挿通孔に挿通されたボルトを上記治具本体部に形成された螺子孔に螺合させることで、該治具本体部に固定されるものとする。
【0021】
請求項4及び請求項5の発明によれば、治具本体部には、周方向に間隔を空けて複数組の螺子孔を形成するようにしたことで、操作レバーの治具本体部に対する周方向の(プーリの軸心回りの)取付角度を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のベルト交換用治具によると、アーム部材の先端側部分に装着される治具本体部と、治具本体部に着脱自在に取り付けられる操作レバーとを備えるとともに、治具本体部に対する操作レバーのプーリ回転軸心回りの取付角度を調整可能にしたことで、テンショナの周囲の部品レイアウトに左右されずに、操作レバーを治具本体部に確実に取り付けて回動させることができる。よって、部品レイアウトに応じて治具を専用設計する必要もなくなり、治具コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るベルト交換用治具が使用されるベルトテンショナを示す、アーム部材の回転軸方向から見た平面図である。
【図2】ベルトテンショナを含む、ベルト伝動システムの概略図である。
【図3】ベルトテンショナのアイドルプーリを取り外した状態を示す、アーム部材の回転軸方向から見た平面図である。
【図4】ベルト交換用治具を示す平面図であり、(a)は治具本体部を示し、(b)は操作レバーを示す。
【図5】ベルト交換作業を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るベルト交換用治具1が使用されるベルトテンショナ100を示す。このベルトテンショナ100は、図2に示すように、駆動プーリ2と従動プーリ3と伝動ベルト4とを有するベルト伝動システムS1に組み込まれて使用される。
【0026】
本実施形態では、伝動ベルト4として、経年劣化による張力低下が比較的小さい平ベルトが使用されている。尚、伝動ベルト4は、必ずしも平ベルトである必要はなく、例えば、Vリブドベルトであってもよい。
【0027】
上記ベルトテンショナ100は、詳細は後述するように、バネ5の付勢力を利用してアイドルプーリ6をベルト4に押し付けることで、ベルト4の張力を一定に維持すると共にその蛇行を防止するように構成されている。
【0028】
すなわち、ベルトテンショナ100は、図1に示すように、軸部7を有する板状の固定部材8と、基端が上記固定部材8の軸部7に揺動可能に支持され、先端にベルト4を押圧するアイドルプーリ6が回転自在に支持されたアーム部材9と、固定部材8に対しアーム部材9を上記アイドルプーリ6がベルト4を押圧する方向に回動付勢するバネ5とを備えている。
【0029】
固定部材8は金属製の板材からなり、その長手方向の中央部には固定用の取付孔8fが形成されている。上記軸部7は、本実施形態では、固定部材8とは別体で構成されている。軸部7は、固定部材8の長手方向の一端部に立設されている。尚、軸部7は固定部材8と一体成形されるものであってもよい。
【0030】
上記固定部材8の長手方向の他端部には、上記軸部7と平行な軸心を有するボス部11が立設されている。このボス部11の外周面には、バネ5の一端部に形成されたフック部5aが掛合されている。バネ5の他端部にも同様のフック部が形成されており、該フック部は、アーム部材9の背面側から突出する不図示のボス部に掛合している。
【0031】
上記アーム部材9は、図3に示すように、固定部材8の軸部7に対し滑り軸受を介して揺動可能に外嵌された筒状部15と、該筒状部15の筒軸方向の中間部から径方向外側に向かって延びる板状のアームプレート16とを有している。
【0032】
アームプレート16の先端部には、その厚さ方向に貫通する貫通孔17が形成されている。アームプレート16の先端部における厚さ方向の一側面には、この貫通孔17を囲むように円筒状の内側ボス部18及び外側ボス部19が同心状に形成されている。内側ボス部18の内周面には支持ピン21の基端部が嵌入して固定され、支持ピン21にはアイドルプーリ6が回動可能に支持されている。支持ピン21は、アーム部材9の揺動軸(軸部7)と平行に配設されていて、貫通孔17に挿通された不図示のボルトによりアーム部材9に固定されている。内側ボス部18の外周面と外側ボス部19の内周面とは、周方向に等間隔に(90°ピッチで)配置されたリブ22によって連結されている。
【0033】
アームプレート16には、軽量化を図るための一対の孔部16fが形成されている。この一対の孔部16fの間には、筒状部15と上記外側ボス部19とを連結する連結梁部23が形成されている。連結梁部23は、アーム部材9の揺動軸心方向(以下、平面視という)から見て、該揺動軸心とアイドルプーリ6の軸心とを結ぶ直線(以下、中心線という)24上に延設されている。
【0034】
アームプレート16の先端部の外周縁には、アーム外方側に向かって耳状に膨出する一対の膨出部25が形成されている。この一対の膨出部25は、アーム部材9の中心線24を挟んで線対称に配置されている。各膨出部25は、アームプレート16の先端部の外周縁からアーム外方側に向かって円弧状に膨出する半円形状に形成されている。各膨出部25の周側面25aとアームプレート16の周側面16aとは、円弧面26を介して連続的に接続されている。各膨出部25の曲率中心同士を結ぶ直線27は、上記アーム部材9の中心線24に略直交している。
【0035】
アームプレート16の先端部の外周縁にはさらに、アーム部材9の中心線24上に設けられ、該中心線方向のアーム外方側に突出する矩形板状の係合突部28が形成されている。係合突部28の周縁部を除く中央部には、軽量化のための孔部29が形成されている。
【0036】
以上のように構成されたベルトテンショナ100によると、ベルト4の張力変動に応じてアーム部材9が固定部材8に設けられた軸部7回りに揺動し、それに伴いアイドルプーリ6が変位することにより、ベルト4の張力が略一定に維持される。
【0037】
上記ベルト4は、予め設定した寿命時間を過ぎると、伝動能力が低下したり破断したりする虞があるため、新しいベルト4に交換する必要がある。ベルト4を交換する際には、ベルトテンショナ100のアイドルプーリ6の押圧力を弱めてベルト4を緩める必要がある。そのためには、アーム部材9をバネ5による付勢方向とは逆方向に揺動させる必要がある。
【0038】
従来より、この揺動作業には、一般的工具であるスパナ50等が使用される。スパナ50を使用する場合、図2に示すように、スパナ50の頭部51をアームプレート16の係合突部28に係合させ、次いで、スパナ50のレバー部52を、バネ5の付勢力が作用する側とは逆向きに回転操作する。
【0039】
ここで、スパナ50の頭部51とレバー部52とのなす角度によっては、図1の二点鎖線で示すように、スパナ50のレバー部52が従動プーリ3と干渉して、スパナ50をアーム部材9に装着できない場合がある。また、スパナ50を装着できても、図1の破線で示すように、スパナ50を回転操作する際にレバー部52が従動プーリ3に干渉して、スパナ50を回転操作できない場合がある。したがって、スパナ50を使用する場合には、予めテンショナ100周辺の部品レイアウト(プーリレイアウト等)を考慮して、スパナ50の頭部51とレバー部52との取付角度等を専用に設計する必要がある。
【0040】
これに対して、本実施形態では、プーリレイアウトに左右されずに、アーム部材9に確実に装着可能で且つアーム部材9を確実に揺動操作可能な交換治具1を使用するようにしている。
【0041】
この交換治具1は、図3及び図4に示すように、アームプレート16の先端部に装着される治具本体部35と、治具本体部35に着脱可能に構成された操作レバー36と、を備えている。
【0042】
この治具本体部35は、平面視略アーチ状をなす板状部材の内周縁部に2つの凹部37,38を形成して構成されている。
【0043】
治具本体部35の周方向の一側端部に形成される第1凹部37は、平面視において径方向内側に開放するコ字状をなしている。第1凹部37は、治具本体部35をアームプレート16に装着した治具装着状態において、アームプレート16の係合突部28に係合する。
【0044】
治具本体部35の周方向の他側端部に形成される第2凹部38は、治具装着状態において、アームプレート16に形成された一方の膨出部25を受け入れ可能に形成されている。第2凹部38の該周方向の他側の側端面38aは、治具装着状態において、該膨出部25における係合突部28が位置する側とは反対側の周側面25aに当接する曲面状に形成されている。
【0045】
また、治具本体部35には、操作レバー36を取付けるための複数の螺子孔39が形成されている。この複数の螺子孔39は、アイドルプーリ6の回転軸心方向から見て該回転軸心を通る直線42上に並ぶ一対の螺子孔39を一組として、該一組の螺子孔39を該回転軸心回りに周方向に間隔を空けて複数組(本実施形態では9組)配置して構成されている。
【0046】
上記操作レバー36は矩形板状に形成されており、操作レバー36の長手方向の一端部には、長手方向に並ぶ2つのボルト挿通孔40が形成されている(図4(b)参照)。2つのボルト挿通孔40は、操作レバー36の厚さ方向に貫通している。2つのボルト挿通孔40の間隔は、一対の螺子孔39の間隔d1に一致している。
【0047】
次に、上記ベルト交換用治具1を用いたベルト交換作業について図4及び図5を参照して説明する。先ず、操作レバー36を治具本体部35から外しておく。そして、治具本体部35の第1凹部37にアームプレート16の係合突部28を係合させるとともに、上記治具本体部35の第2凹部38の側端面38aに、アームプレート16の膨出部25の周側面25aを当接させる。こうして、アームプレート16への治具本体部35の装着が完了する。治具本体部35の装着が完了した後は、治具本体部35に設けられた複数組の螺子孔39から操作レバー36を取付けるための一組の螺子孔39を選択して、操作レバー36のボルト挿通孔40の位置をこの一組の螺子孔39の位置に合わせる。
【0048】
このとき、操作レバー36が従動プーリ等の他部品と干渉するようであれば、操作レバー36の位置を、螺子孔39の周方向のピッチ間隔に対応して、アイドルプーリ6の軸心回りに周方向に順次ずらして行き、操作レバー36が他部品と干渉しない位置で、操作レバー36を治具本体部35に固定する。操作レバー36を固定する際には、操作レバー36のボルト挿通孔40にボルト41を挿通して治具本体部35の螺子孔39に螺合させる。そうして、固定した操作レバー36を、図5の時計回り方向(図の矢印の方向)に回転操作すれば、アーム部材9が軸部7を支点として図5の時計回り方向に揺動しアイドルプーリ6がベルト4から離間する。この結果、ベルト4の張力が緩み、ベルト4の交換が可能になる。この操作レバー36の回転操作時に、操作レバー36が他部品と干渉するようであれば、操作レバー36を、一旦取り外して、アイドルプーリ6の軸心周りに周方向に移動させて、他部品と干渉しない位置で治具本体部35に固定し直せばよい。
【0049】
このように、上記実施形態では、治具本体部35に対する操作レバー36の取付角度を調整可能にしたことで、操作レバー36の位置を他部品と干渉しない位置に調整することができる。したがって、テンショナ100周辺の部品レイアウトに左右されずに、ベルト交換用治具1をアームプレート16に確実に装着して揺動させることができる。よって、テンショナ100の周囲の部品レイアウトに応じてベルト交換治具1を専用に設計する必要がなくなり、一つの治具1を様々な部品レイアウトのベルト伝動システムS1に流用することができる。よって、治具の汎用化を促進して、治具コストの低減を図ることが可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、操作レバー36を回動操作する際に、治具本体部35に形成された第2凹部38の側壁面のうち、上記係合突部28が位置する側とは反対側寄りに位置する面部(側端面38a)が、アームプレート16に設けられた一方の膨出部25の周側面25aに当接するようになっている。したがって、操作レバー36に付与された回転操作力を、上記第1凹部37と係合突部28との互いの係合面のみでなく、上記第2凹部38の側端面38aと膨出部25の周側面25aとの当接部からもアームプレート16に伝達することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、上記係合突部28を、上記アーム部材9の揺動軸心方向から見て上記アーム部材9の中心線24上に配置するとともに、上記一対の膨出部25を該中心線24に対して線対称に配置するようにしたことで、治具本体部35を表裏関係なくアームプレート16に装着することができる(図1の二点鎖線参照)。したがって、治具本体部35の表裏を反転させるだけで、操作レバー36の向きを中心線24を挟んで逆側に変更することができる。よって、操作レバー36の治具本体部35に対する取付角度のバリエーションがさらに増加するため、ベルト交換用治具1の汎用性をさらに高めることができる。
【0052】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、伝動ベルト4として平ベルトを使用するようにしているが、これに限ったものではなく、例えばVリブドベルトを使用するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、一つの駆動プーリ2と一つの従動プーリ3とを有するベルト伝動システムS1を一例として示したが、これに限ったものではなく、例えば、エンジンの出力軸の回転を補機類に伝達するためベルト伝動システムS1のように、一つの駆動プーリ2と、複数の従動プーリ3とを有するものにも適用することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、操作レバー36に一対のボルト挿通孔40を形成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、ボルト挿通孔40に代えて、操作レバー36の一端側に開放する溝(切欠孔)を設けるようにしてもよいし、操作レバー36の長手方向に延びる長孔を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ベルトテンショナのベルト交換用治具に有用であり、特に、平ベルト用のベルトテンショナのベルト交換用治具に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 ベルト伝動システムS
2 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 ベルト
5 バネ
6 アイドルプーリ
7 軸部
8 固定部材
9 アーム部材
16 アームプレート
16a 周側面
24 中心線
25 膨出部
28 係合突部
35 治具本体部
36 操作レバー
37 第1凹部(係合凹部)
38 第2凹部(受入れ凹部)
39 螺子孔
40 ボルト挿通孔
100 ベルトテンショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する固定部材と、基端側が上記固定部材の軸部に揺動可能に支持され、先端側にベルトを押圧するプーリが基端の揺動軸心と平行な回転軸心で回転自在に支持されたアーム部材と、上記固定部材に対し該アーム部材を上記プーリがベルトを押圧する方向に回動付勢するバネとを備えたベルトテンショナに用いられるベルト交換用治具であって、
上記アーム部材の先端側部分に装着される治具本体部と、
上記治具本体部に着脱自在に取り付けられ、該治具本体部を介して上記アーム部材に対し上記付勢された向きとは逆向きの操作力を付与する操作レバーとを備え、
上記治具本体部には、該治具本体部に対する上記操作レバーの上記プーリの回転軸心回りの取付角度を調整するための位置調整手段が設けられていることを特徴とするベルト交換用治具。
【請求項2】
請求項1記載のベルト交換用治具において、
上記アーム部材の先端には、上記アーム部材の揺動軸心方向から見て、該揺動軸心と上記プーリの回転軸心とを通る直線上に設けられ、該直線方向のアーム外方側に突出する係合突部が形成され、
上記治具本体部には、該治具本体部を上記アーム部材に装着した治具装着状態において、上記係合突部に係合する係合凹部が形成されていることを特徴とするベルト交換用治具。
【請求項3】
請求項2記載のベルト交換用治具において、
上記アーム部材の先端側部分には、上記アーム部材の揺動軸心方向から見て、該揺動軸心と上記プーリの回転軸心とを通る直線に対して線対称に配置され、アーム外方側に向かって耳状に膨出する一対の膨出部が設けられ、
上記治具本体部には、上記治具装着状態において、上記一対の膨出部のうちの一方を受け入れる受入れ凹部が形成され、
上記受入れ凹部の側壁面は、上記治具装着状態において、上記係合突部が位置する側とは反対側寄りに位置する面部が上記一方の膨出部の周側面に当接するように形成されていることを特徴とするベルト交換用治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のベルト交換用治具において、
上記位置調整手段は、上記治具装着状態において、上記プーリの回転軸心方向から見て該回転軸心を通る直線上に並ぶ一対の螺子孔を一組として、該回転軸心回りに周方向に間隔を空けて複数組配置して構成されていることを特徴とするベルト交換用治具。
【請求項5】
請求項4記載のベルト交換用治具において、
上記操作レバーには一対のボルト挿通孔が形成されており、
上記操作レバーは、上記ボルト挿通孔に挿通されたボルトを上記治具本体部に形成された螺子孔に螺合させることで、該治具本体部に固定されることを特徴とするベルト交換用治具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−79684(P2013−79684A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220171(P2011−220171)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】