ベルト取付治具と、このベルト取付治具を用いたベルト取付方法
【課題】コンパクトなベルト取付治具を提供する。
【解決手段】ベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧される、プーリ押圧部7と、このプーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4aを引っ掛けて保持する、ベルト保持部8と、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4bをクランクプーリ2の外周に対して押圧する、ベルト押さえ部9と、を備える。
【解決手段】ベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧される、プーリ押圧部7と、このプーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4aを引っ掛けて保持する、ベルト保持部8と、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4bをクランクプーリ2の外周に対して押圧する、ベルト押さえ部9と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト取付治具と、このベルト取付治具を用いたベルト取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1は、手前側プーリと奥側プーリとがプーリ軸の軸方向に並設された二段掛けプーリのうち、奥側プーリのプーリ溝に周長方向に伸縮可能なベルトを取り付けるためのベルト取付治具であって、手前側プーリフランジの更に手前側でベルトの内側を引っ掛ける導入部と、手前側プーリの外周側を覆い前記導入部から導いたベルトを奥側プーリのプーリ溝まで案内する差渡しガイドと、ベルトの浮き上がりを押さえる押さえ片と、を備え、これらの導入部、差渡しガイド、押さえ片を二段掛けプーリに取り付けるための取付部を設けた構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種の技術分野では、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を如何にして実現するかがポイントとなってくる。この点、上記文献1では、取付部がプーリに対して連結されることで、上記の姿勢の安定が極めて高いレベルで実現されるようになっており、従って、この取付部は欠かすことのできないものとして扱われている。
【0005】
しかし、上記文献1の構成では、取付部の存在により、ベルト取付治具自体が著しく大きくなってしまい、コンパクト化への改善が望まれていた。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記の取付部のない、コンパクトなベルト取付治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、本願発明者らは、上記の取付部を取り除いても、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を実現できるアイデアを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
本願発明の観点によれば、第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するに際し、前記第一プーリの外周に設置して使用する、ベルト取付治具は、以下のように構成される。即ち、ベルト取付治具は、前記第一プーリの外周上に配置され、上記ベルトが掛けられて、このベルトの張力によって前記第一プーリの外周に対して押圧される、プーリ押圧部と、このプーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上から外れている部分を引っ掛けて保持する、ベルト保持部と、前記第一プーリの外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上に沿わせている部分を前記第一プーリの外周に対して押圧する、ベルト押さえ部と、を備える。
【0009】
上記のベルト取付治具は、以下のようにして用いる。即ち、先ず、上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周上に設置する。次に、前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。すると、前記ベルトには、伸張されることにより高い張力が発生する。この張力は、上記ベルトが前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側を通過しているので前記プーリ押圧部を前記第一プーリの外周に対して押圧する押圧作用として働く。継続して前記第一プーリを同一方向に回転させると、前記ベルト保持部に引っ掛けられている上記ベルトが前記ベルト保持部を離れて前記第一プーリの外周上へと移動する。この移動後、前記ベルト取付治具を回収する。
【0010】
このように、前記のプーリ押圧部は、上記ベルトの高い張力を利用して前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周に対して強力に固定する機能を発揮する。また、前記ベルト保持部と前記ベルト押さえ部の存在により上記ベルトは問題なく前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側に位置することとなるので、前記ベルト保持部と前記ベルト押さえ部は、上記の前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周に対して強力に固定する機能を安定して発揮させる役割を担っている。
【0011】
以上のアイデアによれば、コンパクトなベルト取付治具を提供することができる。
【0012】
なお、上記文献1のベルト取付治具では、取付部がプーリに対して連結されることでプーリに対するベルト取付治具の固定が実現されている。これに対し、本願のベルト取付治具では、前記のプーリ押圧部とベルト保持部、ベルト押さえ部の協同によってプーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定が図られている。このように、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を実現するためのコンセプトは両者で全く異なるが、本願のベルト取付治具は、上記文献1のベルト取付治具によって実現されるのと同程度の姿勢の安定が達成できる。
【0013】
付言するならば、上記文献1に係るベルト取付治具は、差渡しガイドにベルトが掛けられた状態でも、ボス部とアームの存在により、差渡しガイドはプーリの外周に対して全く押圧されない。この点、上記文献1に係るベルト取付治具は、本願発明の技術的範囲には含まれない。
【0014】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材を有する。以上の構成によれば、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力が向上するので、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0015】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記第一プーリが外周に有するプーリ溝に対して嵌合する嵌合突起を有する。以上の構成によれば、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0016】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリは、プーリ溝と、このプーリ溝よりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジと、を外周に有する。前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジと当接可能なフランジ当接部を有する。以上の構成によれば、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具のプーリ軸方向における位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0017】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記フランジ当接部は、折り曲げ加工により形成される。以上の構成によれば、前記フランジ当接部を低コストで形成することができる。
【0018】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリの各側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた。以上の構成によれば、前記第一プーリの外周に対する前記ベルト取付治具の位置決めが高いレベルで実現される。
【0019】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリの片側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた。以上の構成によれば、一対の当接部が、前記第一プーリの片側面に対して当接することで、前記第一プーリの外周に対する前記ベルト取付治具の前記第一プーリ軸方向における位置決めが実現される。また、一対の当接部が、前記第一プーリの片側面にだけ当接するように構成されている。このため、本願のベルト取付治具は、前記第一プーリの前記第一プーリ軸方向の幅が前記プーリ押圧部及び前記ベルト押さえ部の前記第一プーリ軸方向の幅よりもある程度大きいものでも利用が可能となる。即ち、ベルト取付治具の汎用性を高めることができる。
【0020】
本願発明の他の観点によれば、第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するベルト取付は、以下のような方法で行われる。即ち、上記のベルト取付治具を以下のように用いる。(a)上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具を前記第一プーリの外周に設置する。(b)前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。以上の方法によれば、上記文献1の構成で要求される取付部の取り付け作業のような難解な作業をすることなく、前記の第一プーリと第二プーリの間に前記ベルトを掛巻できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エンジン本体の部分斜視図
【図2】第一プーリの断面図
【図3】ベルト取付治具の斜視図
【図4】ベルト取付治具の六面図
【図5】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図6】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置された状態を、図5と別の角度から示す図
【図7】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置され、ベルトがセットされた状態を示す図
【図8】ベルト取付治具の使用方法の第一説明図
【図9】図8の9線矢視図であって、ベルト取付治具の使用方法の第二説明図
【図10】ベルト取付治具の使用方法の第三説明図
【図11】ベルト取付治具の使用方法の第四説明図
【図12】ベルト取付治具の使用方法の第五説明図
【図13】図12の13線矢視図であって、ベルト取付治具の使用方法の第六説明図
【図14】ベルト取付治具の使用方法の第七説明図
【図15】図7(b)に類似する図であって、本願発明の第二実施形態を示す図
【図16】図7(b)に類似する図であって、本願発明の第三実施形態を示す図
【図17】本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図18】第一プーリの外周に本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図19】第一プーリの外周に本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具が設置され、ベルトがセットされた状態を示す図
【図20】本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図
【図21】本願発明の第五実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図22】第一プーリの外周に本願発明の第五実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図23】本願発明の第六実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図24】第一プーリの外周に本願発明の第六実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図25】本願発明の第七実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図26】第一プーリの外周に本願発明の第七実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図27】本願発明の第八実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図28】第一プーリの外周に本願発明の第八実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の第一実施形態を説明する。本実施形態に係るベルト取付治具は、クランクプーリとオルタネータのオルタネータプーリとの間にVリブドベルトを掛巻するのに用いている。先ず、図1を参照しつつ、クランクプーリとオルタネータプーリに対するVリブドベルトの掛巻を説明し、図2を参照しつつ、クランクプーリの構造を説明する。
【0023】
図1に示されるように、エンジン本体1には、エンジンのクランク軸に連結されるクランクプーリ2(第一プーリ)と、オルタネータの入力軸に連結されるオルタネータプーリ3(第二プーリ)と、が所定の軸間距離を隔てて回転自在に支持される。このクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間には、実線と破線で示すVリブドベルト4が掛巻され、もって、クランク軸の動力が、クランクプーリ2、Vリブドベルト4、オルタネータプーリ3を順に介してオルタネータの入力軸に伝動されるようになっている。本実施形態では、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間の軸間距離は変更不能とされ、また、図示するように、Vリブドベルト4に対して張力を付与する所謂オートテンショナ(張力付与手段)は搭載しない。
【0024】
図2に示すように、クランクプーリ2は、Vリブドベルト4の内周に形成されるリブと嵌合可能なプーリ溝2aを有し、このプーリ溝2aをプーリ軸方向で挟む一対のプーリフランジ2bを備えている。このプーリフランジ2bは、図2の断面視で、上記プーリ溝2aよりプーリ径方向外側へ若干、突出して形成されている。また、クランクプーリ2のボス部5には、エンジンの図示しないクランク軸が挿入される。符号2cは、クランクプーリ2の側面を示す。なお、上記のVリブドベルト4は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。
【0025】
なお、図1の太線矢印はVリブドベルト4の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト4が走行するときのクランクプーリ2の回転方向を第一回転方向Aと、この第一回転方向Aと反対の方向を第二回転方向Bと、定義する。
【0026】
次に、図3〜6を参照しつつ、本実施形態に係るベルト取付治具の構成を説明する。図3(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具6を異なる方向から見た斜視図である。図4(a)はベルト取付治具6の正面図である。図4(b)はベルト取付治具6の平面図である。図4(c)はベルト取付治具6の底面図である。図4(d)はベルト取付治具6の左側面図である。図4(e)はベルト取付治具6の右側面図である。図4(f)はベルト取付治具6の背面図である。このように図3〜4には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具6が様々な方向から描かれている。
【0027】
図5〜6に示されるように、このベルト取付治具6は、プーリ押圧部7と、ベルト保持部8と、ベルト押さえ部9と、を主たる構成として備える。このベルト取付治具6は、更に、第一当接部10(当接部)と、第二当接部11(当接部)と、を備える。このベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周に設置して使用するものであって、図5に示すように、ベルト保持部8がプーリ押圧部7よりも第一回転方向A側となりベルト押さえ部9がプーリ押圧部7よりも第二回転方向B側となるように向きを定めて用いる。以下、説明の便宜上、図1で定義した第一回転方向Aと第二回転方向Bを適宜に用いて説明を行う。即ち、図5〜6における符号A、Bは、図1に示されるクランクプーリ2の第一回転方向A、第二回転方向Bに夫々、対応している。
【0028】
上記のプーリ押圧部7やベルト保持部8、ベルト押さえ部9は、図5に示すように、プーリ周方向に延びる連結部12によって相互に連結されている。この連結部12は、プーリ径方向においてクランクプーリ2とは重複せず、プーリ軸方向においてクランクプーリ2と隣接する位置で円弧状に板金形成されて成る。なお、図5の状態にベルトを追加したものを図7(a)に示すので、以降にVリブドベルト4に関する記述が出てきたときは、適宜、図7(a)も併せて参照されたい。
【0029】
上記のプーリ押圧部7は、クランクプーリ2の外周(プーリ溝2aに相当する。以下同様。)上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧されるものである。このプーリ押圧部7は、図6(b)に示すように、上記の連結部12と一体的に形成された板部7aと、この板部7aのクランクプーリ2側に設けられ、プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材7bと、を備えて構成される。摩擦部材7bは、板部7aに対して溶接固定されており、クランクプーリ2の外周に対する接触面積を十分に確保すべく円弧状に形成され、その内周面は平坦とされ、プーリ溝2aの幅に相当する幅を有する(図7(b)も併せて参照。)。この摩擦部材7bは、例えば、適宜の表面処理が施された金属材料や、ゴム、ポリウレタン等のエラストマー、ポリエチレンやポリアミド等の合成樹脂で形成されるのが好ましい。
【0030】
上記のベルト保持部8は、上記のプーリ押圧部7に掛けられたVリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4a(図7(a)参照)を引っ掛けて保持するものである。このベルト保持部8は、図5に示すように連結部12の第一回転方向A側端部に配置され、連結部12と一体的に形成されている。このベルト保持部8の更に第一回転方向A側端部には、上述した第一当接部10がベルト保持部8と一体的に形成されている。そして、ベルト保持部8と第一当接部10は、プーリ軸方向からみたとき、クランクプーリ2の外周から内周へ向かって半円の円弧を描くように湾曲しており、この湾曲は第一回転方向A方向に向かって凸となっている。
【0031】
上記のベルト押さえ部9は、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4b(図7(a)参照)をクランクプーリ2の外周に対して押圧するものである。このベルト押さえ部9は、図5に示すように連結部12の第二回転方向B側端部に配置されており、図6(a)に示すように、連結部12と一体的に形成された板部9aと、この板部9aのクランクプーリ2側に設けられる肉盛り部9bと、を備えて構成される。肉盛り部9bは、板部9aに溶接固定されており、プーリ幅に相当する幅を有する。また、図6(a)に示すように、ベルト押さえ部9(肉盛り部9b)とクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。本実施形態において間隙Sは、図6(b)に示すようにプーリ押圧部7の摩擦部材7bをクランクプーリ2の外周に密着させた状態でVリブドベルト4のベルト厚みよりも若干薄くなるように調整されており、もって、ベルト取付治具6の使用時、ベルト押さえ部9はVリブドベルト4をクランクプーリ2の外周に対して強力に押圧するようになっている。また、図5に示すように、プーリ押圧部7とベルト押さえ部9の間には間隙Uが確保されており、もって、図7に示すように、プーリ押圧部7のプーリ径方向外側に掛けられたVリブドベルト4はベルト押さえ部9のプーリ径方向内側に潜り込むことができるようになっている。また、このベルト押さえ部9の連結部12と反対側の端部には、図6(b)に示すように、上記の第二当接部11が形成されている。この第二当接部11は、ベルト押さえ部9の板部9aと一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部9の板部9aに対して直角の関係となっている。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態では、第一当接部10とベルト保持部8、連結部12、プーリ押圧部7の板部7a、ベルト押さえ部9の板部9a、第二当接部11は、鉄鋼板材を板金加工によって一体的に形成しており、そこに、プーリ押圧部7の摩擦部材7bやベルト押さえ部9の肉盛り部9bが溶接されることでベルト取付治具6が構成されている。
【0033】
また、上記の説明では、ベルト保持部8と第一当接部10を別部材として取り扱ったが、両者の明確な境界線は特に存在しないことに留意されたい。
【0034】
また、図6(a)及び(b)に示すように、第一当接部10と第二当接部11は、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第一当接部10と第二当接部11がクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具6のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0035】
また、図6(b)に示すように、ベルト取付治具6をプーリ径方向でみたとき、プーリ押圧部7と連結部12、ベルト押さえ部9によってプーリ軸方向に開口するU字形状が認められる。以降の説明において、このU字形状の底に該当する連結部12の縁は、符号12aを付して称することとする。図7に示すように、この縁12aは、クランクプーリ2の外周からプーリ軸方向にズレた位置にあるVリブドベルト4をクランクプーリ2の外周へと導くようになっており、従って、Vリブドベルト4は連結部12の縁12aに対して高い圧力で当接することとなる。
【0036】
<使用方法>
次に、図7〜図14を参照しつつ、上記のベルト取付治具6の使用方法を説明する。先ず、図8及び図9に示されるように、クランクプーリ2のボス部5にレンチ13の円筒形状である連結部13aを連結し、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにしておく。
【0037】
<手順(a)>
次に、図8及び図9に示すように、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、図7(a)に示すように、プーリ押圧部7のプーリ径方向外側からベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に設置する。このとき、図7(b)に示すように、前記の摩擦部材7bは、プーリ径方向においてはプーリ溝2aと当接し、プーリ軸方向においては一対のプーリフランジ2bに挟まれる関係とする。摩擦部材7bがプーリ軸方向において一対のプーリフランジ2bに挟まれるという上記関係は、ベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置決めと位置ズレ防止に寄与する。なお、このとき、レンチ13の柄がベルト取付治具6とクランクプーリ2の中心を挟んで反対側に位置するようにすると上記の作業がやり易い。
【0038】
上記の状態で、Vリブドベルト4は、図7に示すように、ベルト保持部8からプーリ押圧部7を介してベルト押さえ部9に至るに際し、プーリ径方向で見てクランクプーリ2の外周とは平行でない斜めの経路を採る。また、図9に示すように、Vリブドベルト4は、クランクプーリ2の側面2cに対して符号pで示す二箇所で当接する。
【0039】
<手順(b)>
次に、図10に示すように、クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が直接的に掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、レンチ13を用いてクランクプーリ2を第一回転方向Aに回転させる。
【0040】
すると、Vリブドベルト4には、図7(a)に示すように、伸張されることにより高い張力Tが発生する。この張力Tは、上記Vリブドベルト4が図示の通りプーリ押圧部7のプーリ径方向外側を通過しているので、図7(b)において白抜き矢印で示すように、プーリ押圧部7をクランクプーリ2の外周に対して強力に押圧する押圧作用として働く。
【0041】
継続してクランクプーリ2を同一方向に回転させると、Vリブドベルト4とクランクプーリ2の側面2cとの上述した当接関係がベルト保持部8によって強制的に解除され、図11において破線と実線で示すように、ベルト保持部8に引っ掛けられて保持されていた上記Vリブドベルト4は、自己の張力によってベルト保持部8を離れ、クランクプーリ2の外周上へと自発的に移動する。
【0042】
更にクランクプーリ2を同一方向に回転させると、図12及び図13に示すように、プーリ押圧部7がVリブドベルト4とクランクプーリ2の外周によって挟持される関係が消失し、例えば図13に示すように、ベルト取付治具6はクランクプーリ2の外周から離脱可能となる。更にクランクプーリ2を同一方向に回転させると、ベルト取付治具6は、図14に示すように、Vリブドベルト4にぶら下がった状態でクランクプーリ2からオルタネータプーリ3へ向かって吐き出される。ベルト取付治具6は、このとき回収すればよい。
【0043】
(まとめ)
(請求項1)
以上説明したように、本実施形態に係るベルト取付治具6は、以下のように構成される。即ち、ベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧される、プーリ押圧部7と、このプーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4aを引っ掛けて保持する、ベルト保持部8と、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4bをクランクプーリ2の外周に対して押圧する、ベルト押さえ部9と、を備える。
【0044】
上記のベルト取付治具6は、説明が重複するが、以下のようにして用いる。即ち、先ず、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周上に設置する。次に、クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、クランクプーリ2を回転させる。すると、前記Vリブドベルト4には、伸張されることにより高い張力Tが発生する。この張力Tは、上記Vリブドベルト4が前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側を通過しているので前記プーリ押圧部7をクランクプーリ2の外周に対して押圧する押圧作用として働く。継続してクランクプーリ2を同一方向に回転させると、前記ベルト保持部8に引っ掛けられている上記Vリブドベルト4が前記ベルト保持部8を離れてクランクプーリ2の外周上へと移動する。この移動後、前記ベルト取付治具6を回収する。
【0045】
このように、前記のプーリ押圧部7は、上記Vリブドベルト4の高い張力Tを利用して前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に対して強力に固定する機能を発揮する。また、前記ベルト保持部8と前記ベルト押さえ部9の存在により上記Vリブドベルト4は問題なく前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側に位置することとなるので、前記ベルト保持部8と前記ベルト押さえ部9は、上記の前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に対して強力に固定する機能を安定して発揮させる役割を担っている。
【0046】
以上のアイデアによれば、コンパクトなベルト取付治具6を提供することができる。
【0047】
(請求項2)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、前記プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材7bを有する。以上の構成によれば、前記プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力が向上するので、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0048】
なお、図7(b)に示した前述の押圧作用は、上記の摩擦力をダイレクトに増大させる機能も発揮している。
【0049】
(請求項6)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2の各側面2cに対して当接する一対の当接部(第一当接部10、第二当接部11)を更に備えた。以上の構成によれば、クランクプーリ2の外周に対する前記ベルト取付治具6の位置決めが高いレベルで実現される。
【0050】
(請求項8)
また、上記のベルト取付治具6は、以下のようにして用いる。(a)上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に設置する。(b)クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、クランクプーリ2を回転させる。以上の方法によれば、上記文献1の構成で要求される取付部の取り付け作業のような難解な作業をすることなく、前記のクランクプーリ2とオルタネータプーリ3の間に前記Vリブドベルト4を掛巻できる。
【0051】
(第二実施形態)
次に、図15を参照しつつ、本願発明の第二実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0052】
即ち、上記第一実施形態では、板部7aのクランクプーリ2側に、内周面が平坦な摩擦部材7bを設けることとした。しかし、この摩擦部材7bに代えて、クランクプーリ2のプーリ溝2aに対して嵌合可能な嵌合突起7cを設けてもよい。
【0053】
(まとめ)
(請求項3)
以上説明したように上記実施形態において上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、クランクプーリ2が外周に有するプーリ溝2aに対して嵌合する嵌合突起7cを有する。以上の構成によれば、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。特に、クランクプーリ2に対するベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置ズレを極めて高いレベルで抑制することができる。
【0054】
(第三実施形態)
次に、図16を参照しつつ、本願発明の第三実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0055】
即ち、上記第一実施形態では、板部7aのクランクプーリ2側に、摩擦部材7bを設けることとしたが、これに代えて、図16(a)や(b)に示すように、プーリ軸方向においてプーリフランジ2bと当接可能なフランジ当接部7dを設けることとしてもよい。そして、このフランジ当接部7dは、折り曲げ加工によって、板部7aと一体的に形成することが好ましい。このフランジ当接部7d(及び板部7a)の厚みは、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さhと等しくなっており、従って、フランジ当接部7dは、プーリ溝2aと一対のプーリフランジ2bによって区画される空間にちょうど収容され、プーリ溝2aとプーリフランジ2bに対して接触する。
【0056】
(まとめ)
(請求項4)
以上説明したように本実施形態において、ベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2は、プーリ溝2aと、このプーリ溝2aよりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジ2bと、を外周に有する。前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジ2bと当接可能なフランジ当接部7dを有する。以上の構成によれば、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0057】
(請求項5)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記フランジ当接部7dは、折り曲げ加工により形成される。以上の構成によれば、前記フランジ当接部7dを低コストで形成することができる。
【0058】
(第四実施形態)
次に、図17〜20を参照しつつ、第四実施形態に係るベルト取付治具206の構成を説明する。なお、第一実施形態と同様の箇所は説明を省略して説明する。図17(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具206を異なる方向から見た斜視図である。このように図17には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具206が様々な方向から描かれている。図18は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具206が設置された状態を示す図である。図19は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具206が設置され、Vリブドベルト4がセットされた状態を示す図である。図20は、ベルト取付治具206の使用方法の説明図である。
【0059】
図17〜18に示されるように、このベルト取付治具206は、プーリ押圧部207と、ベルト保持部208と、ベルト押さえ部209と、を主たる構成として備える。このベルト取付治具206は、更に、第三当接部210(当接部)と、第四当接部211(当接部)と、を備える。このベルト取付治具206は、クランクプーリ2の外周に設置して使用するものであって、図18に示すように、ベルト保持部208がプーリ押圧部207よりも第一回転方向A側となりベルト押さえ部209がプーリ押圧部207よりも第二回転方向B側となるように向きを定めて用いる。以下、第一実施形態と同様に図1で定義した第一回転方向Aと第二回転方向Bを適宜に用いて説明を行う。
【0060】
上記のプーリ押圧部207やベルト保持部208、ベルト押さえ部209は、図17〜18に示すように、プーリ周方向に延びる連結部212によって相互に連結されている。この連結部212は、プーリ径方向においてクランクプーリ2とは重複せず、プーリ軸方向においてクランクプーリ2と隣接する位置で円弧状に板金形成されて成る。なお、図18の状態にベルトを追加したものを図19に示すので、以降にVリブドベルト4に関する記述が出てきたときは、適宜、図19も併せて参照されたい。
【0061】
上記のプーリ押圧部207は、クランクプーリ2の外周(プーリ溝2aに相当する。以下同様。)上に配置され、Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧されるものである。このプーリ押圧部207は、連結部212と一体的に形成されている。
【0062】
上記のベルト保持部208は、プーリ押圧部207に掛けられたVリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4a(図19参照)を引っ掛けて保持するものである。このベルト保持部208は、連結部212の第一回転方向A側端部に配置され、連結部212と一体的に形成されている。このベルト保持部208の更に第一回転方向A側端部には、上述した第三当接部210がベルト保持部208と一体的に形成されている。そして、ベルト保持部208と第三当接部210は、プーリ軸方向からみたとき、連結部212に対してクランクプーリ2の内側方向に折り曲がった形状をしている。また、第三当接部210の側面210aは、クランクプーリ2の側面2cと面接触している。
【0063】
上記のベルト押さえ部209は、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部207に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4b(図19参照)をクランクプーリ2の外周に対して押圧するものである。このベルト押さえ部209は、図18に示すように連結部212の第二回転方向B側に配置されており、連結部212と一体的に形成されている。また、ベルト押さえ部209とクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。また、図18に示すように、プーリ押圧部207とベルト押さえ部209の間には間隙Uが確保されている。これにより、図19に示すように、プーリ押圧部207のプーリ径方向外側に掛けられたVリブドベルト4はベルト押さえ部209のプーリ径方向内側に潜り込むことができるようになっている。
【0064】
また、上記の第四当接部211は、連結部212の第二回転方向B側端部に配置され、連結部212と一体的に形成されている。そして、第四当接部211は、プーリ軸方向からみたとき、連結部212に対してクランクプーリ2の内側方向に折り曲がった形状をしている。また、この第四当接部211の側面211aは、クランクプーリ2の側面2cと面接触している。なお、第四当接部211の中央付近には穴230が開けられている。この穴230には紐231を通すことが可能である。そして、この穴230に通された紐231をレンチ13に結びつけることにより、ベルト取付治具6がレンチ13から落下するのを防止することができる。
【0065】
<使用方法>
次に、図19〜図20を参照しつつ、上記のベルト取付治具206の使用方法を説明する。先ず、図20に示されるように、クランクプーリ2のボス部5にレンチ13の円筒形状である連結部13aを連結し、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにしておく。
【0066】
次に、図19及び図20に示すように、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、図19に示すように、プーリ押圧部207のプーリ径方向外側からベルト押さえ部209のプーリ径方向内側を通過し、更に、ベルト保持部208に引っ掛けられた状態となるように、ベルト取付治具206をクランクプーリ2の外周に設置する。
【0067】
上記の状態で、Vリブドベルト4は、図19に示すように、ベルト保持部208からプーリ押圧部207を介してベルト押さえ部209に至るに際し、プーリ径方向で見てクランクプーリ2の外周とは平行でない斜めの経路を採る。この後の手順は第一実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0068】
以上に説明したように、第四実施形態では、第三当接部210とベルト保持部208、連結部212、プーリ押圧部207、ベルト押さえ部209、第四当接部211は、鉄鋼板材を板金加工によって一体的に形成することでベルト取付治具206が構成されている。
【0069】
また、上記の説明では、ベルト保持部208と第三当接部210を別部材として取り扱ったが、両者の明確な境界線は特に存在しないことに留意されたい。
【0070】
(まとめ)
(請求項7)
上記のベルト取付治具206は、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2の片側面2cに対して当接する一対の当接部(第三当接部210、第四当接部211)を更に備えている。以上の構成によれば、図18に示すように、第三当接部210の側面210aと第四当接部211の側面211aは、クランクプーリ2の片側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具206のプーリ軸方向における位置決めが実現される。また、第一実施形態とは異なり、第三当接部210の側面210aと第四当接部211の側面211aとが、クランクプーリ2の片側面2cにだけ当接するように構成されている。このため、第四実施形態に係るベルト取付治具206は、クランクプーリ2のプーリ軸方向の幅がプーリ押圧部207及びベルト押さえ部209のプーリ軸方向の幅よりもある程度大きいものでも利用が可能となる。即ち、ベルト取付治具206の汎用性を高めることができる。
【0071】
(第五実施形態)
次に、図21〜22を参照しつつ、第五実施形態に係るベルト取付治具306の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図21(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具306を異なる方向から見た斜視図である。このように図21には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具306が様々な方向から描かれている。図22は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具306が設置された状態を示す図である。
【0072】
図21〜22に示されるように、このベルト取付治具306は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部307と、ベルト保持部308と、ベルト押さえ部309と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部307やベルト保持部308、ベルト押さえ部309は、図22に示すように、プーリ周方向に延びる連結部312によって相互に連結されている。このベルト取付治具306は、更に、第三当接部310(当接部)と、第四当接部311(当接部)と、を備える。
【0073】
そして、第四実施形態とは異なり、ベルト押さえ部309の連結部312と反対側の端部には、図21〜22に示すように、第六当接部316が形成されている。この第六当接部316は、ベルト押さえ部309と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部309に対して直角の関係となっている。
【0074】
以上に説明したように、第五実施形態では、図21及び図22に示すように、ベルト押さえ部309に第六当接部316が形成されているところに特徴がある。この第六当接部316と第三当接部310及び第四当接部311とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、この第六当接部316と第三当接部310及び第四当接部311とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具306のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0075】
(第六実施形態)
次に、図23〜24を参照しつつ、第六実施形態に係るベルト取付治具406の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図23(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具406を異なる方向から見た斜視図である。このように図23には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具406が様々な方向から描かれている。図24は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具406が設置された状態を示す図である。
【0076】
図23〜24に示されるように、このベルト取付治具406は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部407と、ベルト保持部408と、ベルト押さえ部409と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部407やベルト保持部408、ベルト押さえ部409は、図24に示すように、プーリ周方向に延びる連結部412によって相互に連結されている。このベルト取付治具406は、更に、第三当接部410(当接部)と、第四当接部411(当接部)と、を備える。
【0077】
そして、第四実施形態とは異なり、プーリ押圧部407は、図23に示すように、クランクプーリ2の外周と接するようにクランクプーリ2側に2箇所の折り目407a・407bに沿って折り曲げられた形状をしている。即ち、プーリ押圧部407の内周面407cが、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分だけクランクプーリ2の外周に接近した状態になる。そして、プーリ押圧部407の内周面407cとクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上させるために、プーリ押圧部407はクランクプーリ2の外周に対する接触面積を十分に確保すべく円弧状に形成され、その内周面407cは平坦とされ、プーリ溝2aの幅に相当する幅を有する。
【0078】
また、ベルト押さえ部409も、図23に示すように、クランクプーリ2側に2箇所の折り目409a・409bに沿って折り曲げられた形状をしている。また、ベルト押さえ部409の内周面409cとクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。なお、ベルト押さえ部409の内周面409cは、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分から間隙S分を引いた距離だけクランクプーリ2の外周に接近した状態になっている。
【0079】
以上に説明したように、第六実施形態では、図23及び図24に示すように、プーリ押圧部407及びベルト押さえ部409が、クランクプーリ2側に2箇所の折り目407a・407b(折り目409a・409b)に沿って折り曲げられた形状をしているところに特徴がある。以上の構成によれば、図2に示すように、クランクプーリ2のプーリ溝2aとプーリフランジ2bとの間に段差がある場合でも、プーリ押圧部407の2箇所の折り目407a・407bをプーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分だけ折り曲げることで、プーリ押圧部407の内周面407cをクランクプーリ2の外周に当接させることができる。即ち、プーリ押圧部407とクランクプーリ2の外周とが当接するので、クランクプーリ2にベルト取付治具406を安定的に設置することができる。また、同様に、ベルト押さえ部409の2箇所の折り目409a・409bを折り曲げることで、ベルト押さえ部409の内周面409cをVリブドベルト4bに当接させることができる。即ち、ベルト押さえ部409とクランクプーリ2の外周に沿わせたVリブドベルト4bとが当接するので、クランクプーリ2にベルト取付治具406を安定的に設置することができる。
【0080】
(第七実施形態)
次に、図25〜26を参照しつつ、第七実施形態に係るベルト取付治具506の構成を説明する。なお、第六実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図25(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具506を異なる方向から見た斜視図である。このように図25には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具506が様々な方向から描かれている。図26は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具506が設置された状態を示す図である。
【0081】
図25〜26に示されるように、このベルト取付治具506は、第六実施形態と同様に、プーリ押圧部507と、ベルト保持部508と、ベルト押さえ部509と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部507やベルト保持部508、ベルト押さえ部509は、図25に示すように、プーリ周方向に延びる連結部512によって相互に連結されている。このベルト取付治具506は、更に、第三当接部510(当接部)と、第四当接部511(当接部)と、を備える。また、プーリ押圧部507は、図25に示すように、クランクプーリ2の外周と接するようにクランクプーリ2側に2箇所の折り目507a・507bに沿って折り曲げられた形状をしている。また、ベルト押さえ部509も、図25に示すように、クランクプーリ2側に2箇所の折り目509a・509bに沿って折り曲げられた形状をしている。
【0082】
そして、第六実施形態とは異なり、プーリ押圧部507の連結部512と反対側の端部には、図25〜26に示すように、第五当接部515が形成されている。この第五当接部515は、プーリ押圧部507と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにプーリ押圧部507に対して直角の関係となっている。また、ベルト押さえ部509の連結部512と反対側の端部には、図25〜26に示すように、第六当接部516が形成されている。この第六当接部516は、ベルト押さえ部509と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部509に対して直角の関係となっている。
【0083】
以上に説明したように、第七実施形態では、図25及び図26に示すように、プーリ押圧部507及びベルト押さえ部509にそれぞれ第五当接部515及び第六当接部516が形成されているところに特徴がある。この第五当接部515及び第六当接部516と第三当接部510及び第四当接部511とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第五当接部515及び第六当接部516と第三当接部510及び第四当接部511とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具506のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0084】
(第八実施形態)
次に、図27〜28を参照しつつ、第八実施形態に係るベルト取付治具606の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図27(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具606を異なる方向から見た斜視図である。このように図27には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具606が様々な方向から描かれている。図28は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具606が設置された状態を示す図である。
【0085】
図27〜28に示されるように、このベルト取付治具606は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部607と、ベルト保持部608と、ベルト押さえ部609と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部607やベルト保持部608、ベルト押さえ部609は、図27に示すように、プーリ周方向に延びる連結部612によって相互に連結されている。
【0086】
そして、このベルト取付治具606は、第四実施形態と異なり、第三当接部610(当接部)だけを備える。また、第四実施形態とは異なり、ベルト押さえ部609の連結部612と反対側の端部には、図27〜28に示すように、第六当接部616が形成されている。この第六当接部616は、ベルト押さえ部609と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部609に対して直角の関係となっている。
【0087】
以上に説明したように、第八実施形態では、図27及び図28に示すように、クランクプーリ2の各側面2cに対して当接する一対の当接部としての第三当接部610と第六当接部616とを備えたところに特徴がある。この第三当接部610と第六当接部616とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第三当接部610と第六当接部616とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具606のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0088】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、以下のようにして変更して実施することができる。
【0089】
即ち、第一実施形態において、図6(a)に示されるベルト押さえ部9の肉盛り部9bや、図6(b)に示されるプーリ押圧部7の摩擦部材7bは省略してもよい。
【0090】
また、第一実施形態において摩擦部材7bを、第二実施形態において嵌合突起7cを、第三実施形態においてフランジ当接部7dを、夫々説明したが、これら7b〜7dの特長は、適宜に組み合わせて実施することができる。即ち、例えば、嵌合突起7cやフランジ当接部7dに、クランクプーリ2の外周に対する摩擦力を向上する表面処理を施してもよい。また、摩擦部材7bやフランジ当接部7dに、クランクプーリ2のプーリ溝2aと嵌合可能な突起を設けてもよい。また、既に図7(b)や図15で示したように、摩擦部材7bや嵌合突起7cに、プーリ軸方向においてプーリフランジ2bと当接する幾何学的関係を導入してもよい。
【符号の説明】
【0091】
2 クランクプーリ
3 オルタネータプーリ
4 Vリブドベルト
6 ベルト取付治具
7 プーリ押圧部
8 ベルト保持部
9 ベルト押さえ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト取付治具と、このベルト取付治具を用いたベルト取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1は、手前側プーリと奥側プーリとがプーリ軸の軸方向に並設された二段掛けプーリのうち、奥側プーリのプーリ溝に周長方向に伸縮可能なベルトを取り付けるためのベルト取付治具であって、手前側プーリフランジの更に手前側でベルトの内側を引っ掛ける導入部と、手前側プーリの外周側を覆い前記導入部から導いたベルトを奥側プーリのプーリ溝まで案内する差渡しガイドと、ベルトの浮き上がりを押さえる押さえ片と、を備え、これらの導入部、差渡しガイド、押さえ片を二段掛けプーリに取り付けるための取付部を設けた構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種の技術分野では、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を如何にして実現するかがポイントとなってくる。この点、上記文献1では、取付部がプーリに対して連結されることで、上記の姿勢の安定が極めて高いレベルで実現されるようになっており、従って、この取付部は欠かすことのできないものとして扱われている。
【0005】
しかし、上記文献1の構成では、取付部の存在により、ベルト取付治具自体が著しく大きくなってしまい、コンパクト化への改善が望まれていた。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記の取付部のない、コンパクトなベルト取付治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、本願発明者らは、上記の取付部を取り除いても、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を実現できるアイデアを見出し、以下の発明を完成させた。
【0008】
本願発明の観点によれば、第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するに際し、前記第一プーリの外周に設置して使用する、ベルト取付治具は、以下のように構成される。即ち、ベルト取付治具は、前記第一プーリの外周上に配置され、上記ベルトが掛けられて、このベルトの張力によって前記第一プーリの外周に対して押圧される、プーリ押圧部と、このプーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上から外れている部分を引っ掛けて保持する、ベルト保持部と、前記第一プーリの外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上に沿わせている部分を前記第一プーリの外周に対して押圧する、ベルト押さえ部と、を備える。
【0009】
上記のベルト取付治具は、以下のようにして用いる。即ち、先ず、上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周上に設置する。次に、前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。すると、前記ベルトには、伸張されることにより高い張力が発生する。この張力は、上記ベルトが前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側を通過しているので前記プーリ押圧部を前記第一プーリの外周に対して押圧する押圧作用として働く。継続して前記第一プーリを同一方向に回転させると、前記ベルト保持部に引っ掛けられている上記ベルトが前記ベルト保持部を離れて前記第一プーリの外周上へと移動する。この移動後、前記ベルト取付治具を回収する。
【0010】
このように、前記のプーリ押圧部は、上記ベルトの高い張力を利用して前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周に対して強力に固定する機能を発揮する。また、前記ベルト保持部と前記ベルト押さえ部の存在により上記ベルトは問題なく前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側に位置することとなるので、前記ベルト保持部と前記ベルト押さえ部は、上記の前記ベルト取付治具を前記第一プーリの外周に対して強力に固定する機能を安定して発揮させる役割を担っている。
【0011】
以上のアイデアによれば、コンパクトなベルト取付治具を提供することができる。
【0012】
なお、上記文献1のベルト取付治具では、取付部がプーリに対して連結されることでプーリに対するベルト取付治具の固定が実現されている。これに対し、本願のベルト取付治具では、前記のプーリ押圧部とベルト保持部、ベルト押さえ部の協同によってプーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定が図られている。このように、プーリに対するベルト取付治具の姿勢の安定を実現するためのコンセプトは両者で全く異なるが、本願のベルト取付治具は、上記文献1のベルト取付治具によって実現されるのと同程度の姿勢の安定が達成できる。
【0013】
付言するならば、上記文献1に係るベルト取付治具は、差渡しガイドにベルトが掛けられた状態でも、ボス部とアームの存在により、差渡しガイドはプーリの外周に対して全く押圧されない。この点、上記文献1に係るベルト取付治具は、本願発明の技術的範囲には含まれない。
【0014】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材を有する。以上の構成によれば、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力が向上するので、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0015】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記第一プーリが外周に有するプーリ溝に対して嵌合する嵌合突起を有する。以上の構成によれば、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0016】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリは、プーリ溝と、このプーリ溝よりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジと、を外周に有する。前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジと当接可能なフランジ当接部を有する。以上の構成によれば、前記第一プーリに対する前記ベルト取付治具のプーリ軸方向における位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0017】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記フランジ当接部は、折り曲げ加工により形成される。以上の構成によれば、前記フランジ当接部を低コストで形成することができる。
【0018】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリの各側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた。以上の構成によれば、前記第一プーリの外周に対する前記ベルト取付治具の位置決めが高いレベルで実現される。
【0019】
本願のベルト取付治具は、更に、以下のように構成される。即ち、前記第一プーリの片側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた。以上の構成によれば、一対の当接部が、前記第一プーリの片側面に対して当接することで、前記第一プーリの外周に対する前記ベルト取付治具の前記第一プーリ軸方向における位置決めが実現される。また、一対の当接部が、前記第一プーリの片側面にだけ当接するように構成されている。このため、本願のベルト取付治具は、前記第一プーリの前記第一プーリ軸方向の幅が前記プーリ押圧部及び前記ベルト押さえ部の前記第一プーリ軸方向の幅よりもある程度大きいものでも利用が可能となる。即ち、ベルト取付治具の汎用性を高めることができる。
【0020】
本願発明の他の観点によれば、第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するベルト取付は、以下のような方法で行われる。即ち、上記のベルト取付治具を以下のように用いる。(a)上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具を前記第一プーリの外周に設置する。(b)前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。以上の方法によれば、上記文献1の構成で要求される取付部の取り付け作業のような難解な作業をすることなく、前記の第一プーリと第二プーリの間に前記ベルトを掛巻できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エンジン本体の部分斜視図
【図2】第一プーリの断面図
【図3】ベルト取付治具の斜視図
【図4】ベルト取付治具の六面図
【図5】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図6】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置された状態を、図5と別の角度から示す図
【図7】第一プーリの外周にベルト取付治具が設置され、ベルトがセットされた状態を示す図
【図8】ベルト取付治具の使用方法の第一説明図
【図9】図8の9線矢視図であって、ベルト取付治具の使用方法の第二説明図
【図10】ベルト取付治具の使用方法の第三説明図
【図11】ベルト取付治具の使用方法の第四説明図
【図12】ベルト取付治具の使用方法の第五説明図
【図13】図12の13線矢視図であって、ベルト取付治具の使用方法の第六説明図
【図14】ベルト取付治具の使用方法の第七説明図
【図15】図7(b)に類似する図であって、本願発明の第二実施形態を示す図
【図16】図7(b)に類似する図であって、本願発明の第三実施形態を示す図
【図17】本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図18】第一プーリの外周に本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図19】第一プーリの外周に本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具が設置され、ベルトがセットされた状態を示す図
【図20】本願発明の第四実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の説明図
【図21】本願発明の第五実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図22】第一プーリの外周に本願発明の第五実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図23】本願発明の第六実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図24】第一プーリの外周に本願発明の第六実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図25】本願発明の第七実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図26】第一プーリの外周に本願発明の第七実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【図27】本願発明の第八実施形態に係るベルト取付治具の斜視図
【図28】第一プーリの外周に本願発明の第八実施形態に係るベルト取付治具が設置された状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の第一実施形態を説明する。本実施形態に係るベルト取付治具は、クランクプーリとオルタネータのオルタネータプーリとの間にVリブドベルトを掛巻するのに用いている。先ず、図1を参照しつつ、クランクプーリとオルタネータプーリに対するVリブドベルトの掛巻を説明し、図2を参照しつつ、クランクプーリの構造を説明する。
【0023】
図1に示されるように、エンジン本体1には、エンジンのクランク軸に連結されるクランクプーリ2(第一プーリ)と、オルタネータの入力軸に連結されるオルタネータプーリ3(第二プーリ)と、が所定の軸間距離を隔てて回転自在に支持される。このクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間には、実線と破線で示すVリブドベルト4が掛巻され、もって、クランク軸の動力が、クランクプーリ2、Vリブドベルト4、オルタネータプーリ3を順に介してオルタネータの入力軸に伝動されるようになっている。本実施形態では、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間の軸間距離は変更不能とされ、また、図示するように、Vリブドベルト4に対して張力を付与する所謂オートテンショナ(張力付与手段)は搭載しない。
【0024】
図2に示すように、クランクプーリ2は、Vリブドベルト4の内周に形成されるリブと嵌合可能なプーリ溝2aを有し、このプーリ溝2aをプーリ軸方向で挟む一対のプーリフランジ2bを備えている。このプーリフランジ2bは、図2の断面視で、上記プーリ溝2aよりプーリ径方向外側へ若干、突出して形成されている。また、クランクプーリ2のボス部5には、エンジンの図示しないクランク軸が挿入される。符号2cは、クランクプーリ2の側面を示す。なお、上記のVリブドベルト4は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。
【0025】
なお、図1の太線矢印はVリブドベルト4の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト4が走行するときのクランクプーリ2の回転方向を第一回転方向Aと、この第一回転方向Aと反対の方向を第二回転方向Bと、定義する。
【0026】
次に、図3〜6を参照しつつ、本実施形態に係るベルト取付治具の構成を説明する。図3(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具6を異なる方向から見た斜視図である。図4(a)はベルト取付治具6の正面図である。図4(b)はベルト取付治具6の平面図である。図4(c)はベルト取付治具6の底面図である。図4(d)はベルト取付治具6の左側面図である。図4(e)はベルト取付治具6の右側面図である。図4(f)はベルト取付治具6の背面図である。このように図3〜4には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具6が様々な方向から描かれている。
【0027】
図5〜6に示されるように、このベルト取付治具6は、プーリ押圧部7と、ベルト保持部8と、ベルト押さえ部9と、を主たる構成として備える。このベルト取付治具6は、更に、第一当接部10(当接部)と、第二当接部11(当接部)と、を備える。このベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周に設置して使用するものであって、図5に示すように、ベルト保持部8がプーリ押圧部7よりも第一回転方向A側となりベルト押さえ部9がプーリ押圧部7よりも第二回転方向B側となるように向きを定めて用いる。以下、説明の便宜上、図1で定義した第一回転方向Aと第二回転方向Bを適宜に用いて説明を行う。即ち、図5〜6における符号A、Bは、図1に示されるクランクプーリ2の第一回転方向A、第二回転方向Bに夫々、対応している。
【0028】
上記のプーリ押圧部7やベルト保持部8、ベルト押さえ部9は、図5に示すように、プーリ周方向に延びる連結部12によって相互に連結されている。この連結部12は、プーリ径方向においてクランクプーリ2とは重複せず、プーリ軸方向においてクランクプーリ2と隣接する位置で円弧状に板金形成されて成る。なお、図5の状態にベルトを追加したものを図7(a)に示すので、以降にVリブドベルト4に関する記述が出てきたときは、適宜、図7(a)も併せて参照されたい。
【0029】
上記のプーリ押圧部7は、クランクプーリ2の外周(プーリ溝2aに相当する。以下同様。)上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧されるものである。このプーリ押圧部7は、図6(b)に示すように、上記の連結部12と一体的に形成された板部7aと、この板部7aのクランクプーリ2側に設けられ、プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材7bと、を備えて構成される。摩擦部材7bは、板部7aに対して溶接固定されており、クランクプーリ2の外周に対する接触面積を十分に確保すべく円弧状に形成され、その内周面は平坦とされ、プーリ溝2aの幅に相当する幅を有する(図7(b)も併せて参照。)。この摩擦部材7bは、例えば、適宜の表面処理が施された金属材料や、ゴム、ポリウレタン等のエラストマー、ポリエチレンやポリアミド等の合成樹脂で形成されるのが好ましい。
【0030】
上記のベルト保持部8は、上記のプーリ押圧部7に掛けられたVリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4a(図7(a)参照)を引っ掛けて保持するものである。このベルト保持部8は、図5に示すように連結部12の第一回転方向A側端部に配置され、連結部12と一体的に形成されている。このベルト保持部8の更に第一回転方向A側端部には、上述した第一当接部10がベルト保持部8と一体的に形成されている。そして、ベルト保持部8と第一当接部10は、プーリ軸方向からみたとき、クランクプーリ2の外周から内周へ向かって半円の円弧を描くように湾曲しており、この湾曲は第一回転方向A方向に向かって凸となっている。
【0031】
上記のベルト押さえ部9は、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4b(図7(a)参照)をクランクプーリ2の外周に対して押圧するものである。このベルト押さえ部9は、図5に示すように連結部12の第二回転方向B側端部に配置されており、図6(a)に示すように、連結部12と一体的に形成された板部9aと、この板部9aのクランクプーリ2側に設けられる肉盛り部9bと、を備えて構成される。肉盛り部9bは、板部9aに溶接固定されており、プーリ幅に相当する幅を有する。また、図6(a)に示すように、ベルト押さえ部9(肉盛り部9b)とクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。本実施形態において間隙Sは、図6(b)に示すようにプーリ押圧部7の摩擦部材7bをクランクプーリ2の外周に密着させた状態でVリブドベルト4のベルト厚みよりも若干薄くなるように調整されており、もって、ベルト取付治具6の使用時、ベルト押さえ部9はVリブドベルト4をクランクプーリ2の外周に対して強力に押圧するようになっている。また、図5に示すように、プーリ押圧部7とベルト押さえ部9の間には間隙Uが確保されており、もって、図7に示すように、プーリ押圧部7のプーリ径方向外側に掛けられたVリブドベルト4はベルト押さえ部9のプーリ径方向内側に潜り込むことができるようになっている。また、このベルト押さえ部9の連結部12と反対側の端部には、図6(b)に示すように、上記の第二当接部11が形成されている。この第二当接部11は、ベルト押さえ部9の板部9aと一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部9の板部9aに対して直角の関係となっている。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態では、第一当接部10とベルト保持部8、連結部12、プーリ押圧部7の板部7a、ベルト押さえ部9の板部9a、第二当接部11は、鉄鋼板材を板金加工によって一体的に形成しており、そこに、プーリ押圧部7の摩擦部材7bやベルト押さえ部9の肉盛り部9bが溶接されることでベルト取付治具6が構成されている。
【0033】
また、上記の説明では、ベルト保持部8と第一当接部10を別部材として取り扱ったが、両者の明確な境界線は特に存在しないことに留意されたい。
【0034】
また、図6(a)及び(b)に示すように、第一当接部10と第二当接部11は、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第一当接部10と第二当接部11がクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具6のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0035】
また、図6(b)に示すように、ベルト取付治具6をプーリ径方向でみたとき、プーリ押圧部7と連結部12、ベルト押さえ部9によってプーリ軸方向に開口するU字形状が認められる。以降の説明において、このU字形状の底に該当する連結部12の縁は、符号12aを付して称することとする。図7に示すように、この縁12aは、クランクプーリ2の外周からプーリ軸方向にズレた位置にあるVリブドベルト4をクランクプーリ2の外周へと導くようになっており、従って、Vリブドベルト4は連結部12の縁12aに対して高い圧力で当接することとなる。
【0036】
<使用方法>
次に、図7〜図14を参照しつつ、上記のベルト取付治具6の使用方法を説明する。先ず、図8及び図9に示されるように、クランクプーリ2のボス部5にレンチ13の円筒形状である連結部13aを連結し、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにしておく。
【0037】
<手順(a)>
次に、図8及び図9に示すように、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、図7(a)に示すように、プーリ押圧部7のプーリ径方向外側からベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に設置する。このとき、図7(b)に示すように、前記の摩擦部材7bは、プーリ径方向においてはプーリ溝2aと当接し、プーリ軸方向においては一対のプーリフランジ2bに挟まれる関係とする。摩擦部材7bがプーリ軸方向において一対のプーリフランジ2bに挟まれるという上記関係は、ベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置決めと位置ズレ防止に寄与する。なお、このとき、レンチ13の柄がベルト取付治具6とクランクプーリ2の中心を挟んで反対側に位置するようにすると上記の作業がやり易い。
【0038】
上記の状態で、Vリブドベルト4は、図7に示すように、ベルト保持部8からプーリ押圧部7を介してベルト押さえ部9に至るに際し、プーリ径方向で見てクランクプーリ2の外周とは平行でない斜めの経路を採る。また、図9に示すように、Vリブドベルト4は、クランクプーリ2の側面2cに対して符号pで示す二箇所で当接する。
【0039】
<手順(b)>
次に、図10に示すように、クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が直接的に掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、レンチ13を用いてクランクプーリ2を第一回転方向Aに回転させる。
【0040】
すると、Vリブドベルト4には、図7(a)に示すように、伸張されることにより高い張力Tが発生する。この張力Tは、上記Vリブドベルト4が図示の通りプーリ押圧部7のプーリ径方向外側を通過しているので、図7(b)において白抜き矢印で示すように、プーリ押圧部7をクランクプーリ2の外周に対して強力に押圧する押圧作用として働く。
【0041】
継続してクランクプーリ2を同一方向に回転させると、Vリブドベルト4とクランクプーリ2の側面2cとの上述した当接関係がベルト保持部8によって強制的に解除され、図11において破線と実線で示すように、ベルト保持部8に引っ掛けられて保持されていた上記Vリブドベルト4は、自己の張力によってベルト保持部8を離れ、クランクプーリ2の外周上へと自発的に移動する。
【0042】
更にクランクプーリ2を同一方向に回転させると、図12及び図13に示すように、プーリ押圧部7がVリブドベルト4とクランクプーリ2の外周によって挟持される関係が消失し、例えば図13に示すように、ベルト取付治具6はクランクプーリ2の外周から離脱可能となる。更にクランクプーリ2を同一方向に回転させると、ベルト取付治具6は、図14に示すように、Vリブドベルト4にぶら下がった状態でクランクプーリ2からオルタネータプーリ3へ向かって吐き出される。ベルト取付治具6は、このとき回収すればよい。
【0043】
(まとめ)
(請求項1)
以上説明したように、本実施形態に係るベルト取付治具6は、以下のように構成される。即ち、ベルト取付治具6は、クランクプーリ2の外周上に配置され、上記Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧される、プーリ押圧部7と、このプーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4aを引っ掛けて保持する、ベルト保持部8と、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部7に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4bをクランクプーリ2の外周に対して押圧する、ベルト押さえ部9と、を備える。
【0044】
上記のベルト取付治具6は、説明が重複するが、以下のようにして用いる。即ち、先ず、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周上に設置する。次に、クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、クランクプーリ2を回転させる。すると、前記Vリブドベルト4には、伸張されることにより高い張力Tが発生する。この張力Tは、上記Vリブドベルト4が前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側を通過しているので前記プーリ押圧部7をクランクプーリ2の外周に対して押圧する押圧作用として働く。継続してクランクプーリ2を同一方向に回転させると、前記ベルト保持部8に引っ掛けられている上記Vリブドベルト4が前記ベルト保持部8を離れてクランクプーリ2の外周上へと移動する。この移動後、前記ベルト取付治具6を回収する。
【0045】
このように、前記のプーリ押圧部7は、上記Vリブドベルト4の高い張力Tを利用して前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に対して強力に固定する機能を発揮する。また、前記ベルト保持部8と前記ベルト押さえ部9の存在により上記Vリブドベルト4は問題なく前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側に位置することとなるので、前記ベルト保持部8と前記ベルト押さえ部9は、上記の前記ベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に対して強力に固定する機能を安定して発揮させる役割を担っている。
【0046】
以上のアイデアによれば、コンパクトなベルト取付治具6を提供することができる。
【0047】
(請求項2)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、前記プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材7bを有する。以上の構成によれば、前記プーリ押圧部7とクランクプーリ2の外周との間の摩擦力が向上するので、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0048】
なお、図7(b)に示した前述の押圧作用は、上記の摩擦力をダイレクトに増大させる機能も発揮している。
【0049】
(請求項6)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2の各側面2cに対して当接する一対の当接部(第一当接部10、第二当接部11)を更に備えた。以上の構成によれば、クランクプーリ2の外周に対する前記ベルト取付治具6の位置決めが高いレベルで実現される。
【0050】
(請求項8)
また、上記のベルト取付治具6は、以下のようにして用いる。(a)上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、前記プーリ押圧部7のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部9のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部8に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具6をクランクプーリ2の外周に設置する。(b)クランクプーリ2の外周に上記Vリブドベルト4が掛巻される掛巻角度θが大きくなるように、クランクプーリ2を回転させる。以上の方法によれば、上記文献1の構成で要求される取付部の取り付け作業のような難解な作業をすることなく、前記のクランクプーリ2とオルタネータプーリ3の間に前記Vリブドベルト4を掛巻できる。
【0051】
(第二実施形態)
次に、図15を参照しつつ、本願発明の第二実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0052】
即ち、上記第一実施形態では、板部7aのクランクプーリ2側に、内周面が平坦な摩擦部材7bを設けることとした。しかし、この摩擦部材7bに代えて、クランクプーリ2のプーリ溝2aに対して嵌合可能な嵌合突起7cを設けてもよい。
【0053】
(まとめ)
(請求項3)
以上説明したように上記実施形態において上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、クランクプーリ2が外周に有するプーリ溝2aに対して嵌合する嵌合突起7cを有する。以上の構成によれば、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6の位置ズレを高いレベルで抑制することができる。特に、クランクプーリ2に対するベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置ズレを極めて高いレベルで抑制することができる。
【0054】
(第三実施形態)
次に、図16を参照しつつ、本願発明の第三実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明は適宜、割愛する。
【0055】
即ち、上記第一実施形態では、板部7aのクランクプーリ2側に、摩擦部材7bを設けることとしたが、これに代えて、図16(a)や(b)に示すように、プーリ軸方向においてプーリフランジ2bと当接可能なフランジ当接部7dを設けることとしてもよい。そして、このフランジ当接部7dは、折り曲げ加工によって、板部7aと一体的に形成することが好ましい。このフランジ当接部7d(及び板部7a)の厚みは、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さhと等しくなっており、従って、フランジ当接部7dは、プーリ溝2aと一対のプーリフランジ2bによって区画される空間にちょうど収容され、プーリ溝2aとプーリフランジ2bに対して接触する。
【0056】
(まとめ)
(請求項4)
以上説明したように本実施形態において、ベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2は、プーリ溝2aと、このプーリ溝2aよりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジ2bと、を外周に有する。前記プーリ押圧部7は、クランクプーリ2側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジ2bと当接可能なフランジ当接部7dを有する。以上の構成によれば、クランクプーリ2に対する前記ベルト取付治具6のプーリ軸方向における位置ズレを高いレベルで抑制することができる。
【0057】
(請求項5)
上記のベルト取付治具6は、更に、以下のように構成される。即ち、前記フランジ当接部7dは、折り曲げ加工により形成される。以上の構成によれば、前記フランジ当接部7dを低コストで形成することができる。
【0058】
(第四実施形態)
次に、図17〜20を参照しつつ、第四実施形態に係るベルト取付治具206の構成を説明する。なお、第一実施形態と同様の箇所は説明を省略して説明する。図17(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具206を異なる方向から見た斜視図である。このように図17には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具206が様々な方向から描かれている。図18は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具206が設置された状態を示す図である。図19は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具206が設置され、Vリブドベルト4がセットされた状態を示す図である。図20は、ベルト取付治具206の使用方法の説明図である。
【0059】
図17〜18に示されるように、このベルト取付治具206は、プーリ押圧部207と、ベルト保持部208と、ベルト押さえ部209と、を主たる構成として備える。このベルト取付治具206は、更に、第三当接部210(当接部)と、第四当接部211(当接部)と、を備える。このベルト取付治具206は、クランクプーリ2の外周に設置して使用するものであって、図18に示すように、ベルト保持部208がプーリ押圧部207よりも第一回転方向A側となりベルト押さえ部209がプーリ押圧部207よりも第二回転方向B側となるように向きを定めて用いる。以下、第一実施形態と同様に図1で定義した第一回転方向Aと第二回転方向Bを適宜に用いて説明を行う。
【0060】
上記のプーリ押圧部207やベルト保持部208、ベルト押さえ部209は、図17〜18に示すように、プーリ周方向に延びる連結部212によって相互に連結されている。この連結部212は、プーリ径方向においてクランクプーリ2とは重複せず、プーリ軸方向においてクランクプーリ2と隣接する位置で円弧状に板金形成されて成る。なお、図18の状態にベルトを追加したものを図19に示すので、以降にVリブドベルト4に関する記述が出てきたときは、適宜、図19も併せて参照されたい。
【0061】
上記のプーリ押圧部207は、クランクプーリ2の外周(プーリ溝2aに相当する。以下同様。)上に配置され、Vリブドベルト4が掛けられて、このVリブドベルト4の張力によってクランクプーリ2の外周に対して押圧されるものである。このプーリ押圧部207は、連結部212と一体的に形成されている。
【0062】
上記のベルト保持部208は、プーリ押圧部207に掛けられたVリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上から外れている部分4a(図19参照)を引っ掛けて保持するものである。このベルト保持部208は、連結部212の第一回転方向A側端部に配置され、連結部212と一体的に形成されている。このベルト保持部208の更に第一回転方向A側端部には、上述した第三当接部210がベルト保持部208と一体的に形成されている。そして、ベルト保持部208と第三当接部210は、プーリ軸方向からみたとき、連結部212に対してクランクプーリ2の内側方向に折り曲がった形状をしている。また、第三当接部210の側面210aは、クランクプーリ2の側面2cと面接触している。
【0063】
上記のベルト押さえ部209は、クランクプーリ2の外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部207に掛けられた上記Vリブドベルト4のうちクランクプーリ2の外周上に沿わせている部分4b(図19参照)をクランクプーリ2の外周に対して押圧するものである。このベルト押さえ部209は、図18に示すように連結部212の第二回転方向B側に配置されており、連結部212と一体的に形成されている。また、ベルト押さえ部209とクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。また、図18に示すように、プーリ押圧部207とベルト押さえ部209の間には間隙Uが確保されている。これにより、図19に示すように、プーリ押圧部207のプーリ径方向外側に掛けられたVリブドベルト4はベルト押さえ部209のプーリ径方向内側に潜り込むことができるようになっている。
【0064】
また、上記の第四当接部211は、連結部212の第二回転方向B側端部に配置され、連結部212と一体的に形成されている。そして、第四当接部211は、プーリ軸方向からみたとき、連結部212に対してクランクプーリ2の内側方向に折り曲がった形状をしている。また、この第四当接部211の側面211aは、クランクプーリ2の側面2cと面接触している。なお、第四当接部211の中央付近には穴230が開けられている。この穴230には紐231を通すことが可能である。そして、この穴230に通された紐231をレンチ13に結びつけることにより、ベルト取付治具6がレンチ13から落下するのを防止することができる。
【0065】
<使用方法>
次に、図19〜図20を参照しつつ、上記のベルト取付治具206の使用方法を説明する。先ず、図20に示されるように、クランクプーリ2のボス部5にレンチ13の円筒形状である連結部13aを連結し、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにしておく。
【0066】
次に、図19及び図20に示すように、上記Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に掛巻すると共に、上記Vリブドベルト4が、図19に示すように、プーリ押圧部207のプーリ径方向外側からベルト押さえ部209のプーリ径方向内側を通過し、更に、ベルト保持部208に引っ掛けられた状態となるように、ベルト取付治具206をクランクプーリ2の外周に設置する。
【0067】
上記の状態で、Vリブドベルト4は、図19に示すように、ベルト保持部208からプーリ押圧部207を介してベルト押さえ部209に至るに際し、プーリ径方向で見てクランクプーリ2の外周とは平行でない斜めの経路を採る。この後の手順は第一実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0068】
以上に説明したように、第四実施形態では、第三当接部210とベルト保持部208、連結部212、プーリ押圧部207、ベルト押さえ部209、第四当接部211は、鉄鋼板材を板金加工によって一体的に形成することでベルト取付治具206が構成されている。
【0069】
また、上記の説明では、ベルト保持部208と第三当接部210を別部材として取り扱ったが、両者の明確な境界線は特に存在しないことに留意されたい。
【0070】
(まとめ)
(請求項7)
上記のベルト取付治具206は、以下のように構成される。即ち、クランクプーリ2の片側面2cに対して当接する一対の当接部(第三当接部210、第四当接部211)を更に備えている。以上の構成によれば、図18に示すように、第三当接部210の側面210aと第四当接部211の側面211aは、クランクプーリ2の片側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具206のプーリ軸方向における位置決めが実現される。また、第一実施形態とは異なり、第三当接部210の側面210aと第四当接部211の側面211aとが、クランクプーリ2の片側面2cにだけ当接するように構成されている。このため、第四実施形態に係るベルト取付治具206は、クランクプーリ2のプーリ軸方向の幅がプーリ押圧部207及びベルト押さえ部209のプーリ軸方向の幅よりもある程度大きいものでも利用が可能となる。即ち、ベルト取付治具206の汎用性を高めることができる。
【0071】
(第五実施形態)
次に、図21〜22を参照しつつ、第五実施形態に係るベルト取付治具306の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図21(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具306を異なる方向から見た斜視図である。このように図21には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具306が様々な方向から描かれている。図22は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具306が設置された状態を示す図である。
【0072】
図21〜22に示されるように、このベルト取付治具306は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部307と、ベルト保持部308と、ベルト押さえ部309と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部307やベルト保持部308、ベルト押さえ部309は、図22に示すように、プーリ周方向に延びる連結部312によって相互に連結されている。このベルト取付治具306は、更に、第三当接部310(当接部)と、第四当接部311(当接部)と、を備える。
【0073】
そして、第四実施形態とは異なり、ベルト押さえ部309の連結部312と反対側の端部には、図21〜22に示すように、第六当接部316が形成されている。この第六当接部316は、ベルト押さえ部309と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部309に対して直角の関係となっている。
【0074】
以上に説明したように、第五実施形態では、図21及び図22に示すように、ベルト押さえ部309に第六当接部316が形成されているところに特徴がある。この第六当接部316と第三当接部310及び第四当接部311とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、この第六当接部316と第三当接部310及び第四当接部311とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具306のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0075】
(第六実施形態)
次に、図23〜24を参照しつつ、第六実施形態に係るベルト取付治具406の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図23(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具406を異なる方向から見た斜視図である。このように図23には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具406が様々な方向から描かれている。図24は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具406が設置された状態を示す図である。
【0076】
図23〜24に示されるように、このベルト取付治具406は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部407と、ベルト保持部408と、ベルト押さえ部409と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部407やベルト保持部408、ベルト押さえ部409は、図24に示すように、プーリ周方向に延びる連結部412によって相互に連結されている。このベルト取付治具406は、更に、第三当接部410(当接部)と、第四当接部411(当接部)と、を備える。
【0077】
そして、第四実施形態とは異なり、プーリ押圧部407は、図23に示すように、クランクプーリ2の外周と接するようにクランクプーリ2側に2箇所の折り目407a・407bに沿って折り曲げられた形状をしている。即ち、プーリ押圧部407の内周面407cが、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分だけクランクプーリ2の外周に接近した状態になる。そして、プーリ押圧部407の内周面407cとクランクプーリ2の外周との間の摩擦力を向上させるために、プーリ押圧部407はクランクプーリ2の外周に対する接触面積を十分に確保すべく円弧状に形成され、その内周面407cは平坦とされ、プーリ溝2aの幅に相当する幅を有する。
【0078】
また、ベルト押さえ部409も、図23に示すように、クランクプーリ2側に2箇所の折り目409a・409bに沿って折り曲げられた形状をしている。また、ベルト押さえ部409の内周面409cとクランクプーリ2の外周との間にはVリブドベルト4の厚みに相当する間隙Sが確保されており、この間隙SにVリブドベルト4が挿入されるようになっている。なお、ベルト押さえ部409の内周面409cは、プーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分から間隙S分を引いた距離だけクランクプーリ2の外周に接近した状態になっている。
【0079】
以上に説明したように、第六実施形態では、図23及び図24に示すように、プーリ押圧部407及びベルト押さえ部409が、クランクプーリ2側に2箇所の折り目407a・407b(折り目409a・409b)に沿って折り曲げられた形状をしているところに特徴がある。以上の構成によれば、図2に示すように、クランクプーリ2のプーリ溝2aとプーリフランジ2bとの間に段差がある場合でも、プーリ押圧部407の2箇所の折り目407a・407bをプーリフランジ2bのプーリ溝2aからの突出高さ分だけ折り曲げることで、プーリ押圧部407の内周面407cをクランクプーリ2の外周に当接させることができる。即ち、プーリ押圧部407とクランクプーリ2の外周とが当接するので、クランクプーリ2にベルト取付治具406を安定的に設置することができる。また、同様に、ベルト押さえ部409の2箇所の折り目409a・409bを折り曲げることで、ベルト押さえ部409の内周面409cをVリブドベルト4bに当接させることができる。即ち、ベルト押さえ部409とクランクプーリ2の外周に沿わせたVリブドベルト4bとが当接するので、クランクプーリ2にベルト取付治具406を安定的に設置することができる。
【0080】
(第七実施形態)
次に、図25〜26を参照しつつ、第七実施形態に係るベルト取付治具506の構成を説明する。なお、第六実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図25(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具506を異なる方向から見た斜視図である。このように図25には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具506が様々な方向から描かれている。図26は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具506が設置された状態を示す図である。
【0081】
図25〜26に示されるように、このベルト取付治具506は、第六実施形態と同様に、プーリ押圧部507と、ベルト保持部508と、ベルト押さえ部509と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部507やベルト保持部508、ベルト押さえ部509は、図25に示すように、プーリ周方向に延びる連結部512によって相互に連結されている。このベルト取付治具506は、更に、第三当接部510(当接部)と、第四当接部511(当接部)と、を備える。また、プーリ押圧部507は、図25に示すように、クランクプーリ2の外周と接するようにクランクプーリ2側に2箇所の折り目507a・507bに沿って折り曲げられた形状をしている。また、ベルト押さえ部509も、図25に示すように、クランクプーリ2側に2箇所の折り目509a・509bに沿って折り曲げられた形状をしている。
【0082】
そして、第六実施形態とは異なり、プーリ押圧部507の連結部512と反対側の端部には、図25〜26に示すように、第五当接部515が形成されている。この第五当接部515は、プーリ押圧部507と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにプーリ押圧部507に対して直角の関係となっている。また、ベルト押さえ部509の連結部512と反対側の端部には、図25〜26に示すように、第六当接部516が形成されている。この第六当接部516は、ベルト押さえ部509と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部509に対して直角の関係となっている。
【0083】
以上に説明したように、第七実施形態では、図25及び図26に示すように、プーリ押圧部507及びベルト押さえ部509にそれぞれ第五当接部515及び第六当接部516が形成されているところに特徴がある。この第五当接部515及び第六当接部516と第三当接部510及び第四当接部511とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第五当接部515及び第六当接部516と第三当接部510及び第四当接部511とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具506のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0084】
(第八実施形態)
次に、図27〜28を参照しつつ、第八実施形態に係るベルト取付治具606の構成を説明する。なお、第四実施形態と同様の箇所は説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。図27(a)〜(d)は、夫々、ベルト取付治具606を異なる方向から見た斜視図である。このように図27には、コンパクトであってまとまりよく形成されたベルト取付治具606が様々な方向から描かれている。図28は、クランクプーリ2の外周にベルト取付治具606が設置された状態を示す図である。
【0085】
図27〜28に示されるように、このベルト取付治具606は、第四実施形態と同様に、プーリ押圧部607と、ベルト保持部608と、ベルト押さえ部609と、を主たる構成として備える。プーリ押圧部607やベルト保持部608、ベルト押さえ部609は、図27に示すように、プーリ周方向に延びる連結部612によって相互に連結されている。
【0086】
そして、このベルト取付治具606は、第四実施形態と異なり、第三当接部610(当接部)だけを備える。また、第四実施形態とは異なり、ベルト押さえ部609の連結部612と反対側の端部には、図27〜28に示すように、第六当接部616が形成されている。この第六当接部616は、ベルト押さえ部609と一体的に形成されており、クランクプーリ2の側面2cと面接触できるようにベルト押さえ部609に対して直角の関係となっている。
【0087】
以上に説明したように、第八実施形態では、図27及び図28に示すように、クランクプーリ2の各側面2cに対して当接する一対の当接部としての第三当接部610と第六当接部616とを備えたところに特徴がある。この第三当接部610と第六当接部616とが、クランクプーリ2をプーリ軸方向において挟み、これら第三当接部610と第六当接部616とがクランクプーリ2の各側面2cに当接することで、クランクプーリ2の外周に対するベルト取付治具606のプーリ軸方向における高度な位置決めが実現されている。
【0088】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、以下のようにして変更して実施することができる。
【0089】
即ち、第一実施形態において、図6(a)に示されるベルト押さえ部9の肉盛り部9bや、図6(b)に示されるプーリ押圧部7の摩擦部材7bは省略してもよい。
【0090】
また、第一実施形態において摩擦部材7bを、第二実施形態において嵌合突起7cを、第三実施形態においてフランジ当接部7dを、夫々説明したが、これら7b〜7dの特長は、適宜に組み合わせて実施することができる。即ち、例えば、嵌合突起7cやフランジ当接部7dに、クランクプーリ2の外周に対する摩擦力を向上する表面処理を施してもよい。また、摩擦部材7bやフランジ当接部7dに、クランクプーリ2のプーリ溝2aと嵌合可能な突起を設けてもよい。また、既に図7(b)や図15で示したように、摩擦部材7bや嵌合突起7cに、プーリ軸方向においてプーリフランジ2bと当接する幾何学的関係を導入してもよい。
【符号の説明】
【0091】
2 クランクプーリ
3 オルタネータプーリ
4 Vリブドベルト
6 ベルト取付治具
7 プーリ押圧部
8 ベルト保持部
9 ベルト押さえ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するに際し、前記第一プーリの外周に設置して使用する、ベルト取付治具であって、
前記第一プーリの外周上に配置され、上記ベルトが掛けられて、このベルトの張力によって前記第一プーリの外周に対して押圧される、プーリ押圧部と、
このプーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上から外れている部分を引っ掛けて保持する、ベルト保持部と、
前記第一プーリの外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上に沿わせている部分を前記第一プーリの外周に対して押圧する、ベルト押さえ部と、
を備えたベルト取付治具。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項3】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記第一プーリが外周に有するプーリ溝に対して嵌合する嵌合突起を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項4】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリは、プーリ溝と、このプーリ溝よりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジと、を外周に有し、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジと当接可能なフランジ当接部を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項5】
請求項4に記載のベルト取付治具であって、
前記フランジ当接部は、折り曲げ加工により形成される、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリの各側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリの片側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項8】
第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するベルト取付方法であって、
請求項1〜7の何れかに記載のベルト取付治具を以下のように用いる、
ことを特徴とする、ベルト取付方法。
(a)上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具を前記第一プーリの外周に設置する。
(b)前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。
【請求項1】
第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するに際し、前記第一プーリの外周に設置して使用する、ベルト取付治具であって、
前記第一プーリの外周上に配置され、上記ベルトが掛けられて、このベルトの張力によって前記第一プーリの外周に対して押圧される、プーリ押圧部と、
このプーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上から外れている部分を引っ掛けて保持する、ベルト保持部と、
前記第一プーリの外周に対して対向するように配置され、上記プーリ押圧部に掛けられた上記ベルトのうち前記第一プーリの外周上に沿わせている部分を前記第一プーリの外周に対して押圧する、ベルト押さえ部と、
を備えたベルト取付治具。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記プーリ押圧部と前記第一プーリの外周との間の摩擦力を向上するための摩擦部材を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項3】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、前記第一プーリが外周に有するプーリ溝に対して嵌合する嵌合突起を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項4】
請求項1に記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリは、プーリ溝と、このプーリ溝よりプーリ径方向外側へ突出するプーリフランジと、を外周に有し、
前記プーリ押圧部は、前記第一プーリ側に、プーリ軸方向において前記プーリフランジと当接可能なフランジ当接部を有する、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項5】
請求項4に記載のベルト取付治具であって、
前記フランジ当接部は、折り曲げ加工により形成される、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリの各側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のベルト取付治具であって、
前記第一プーリの片側面に対して当接する一対の当接部を更に備えた、
ことを特徴とする、ベルト取付治具。
【請求項8】
第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま掛巻するベルト取付方法であって、
請求項1〜7の何れかに記載のベルト取付治具を以下のように用いる、
ことを特徴とする、ベルト取付方法。
(a)上記ベルトを前記第二プーリに掛巻すると共に、上記ベルトが、前記プーリ押圧部のプーリ径方向外側から前記ベルト押さえ部のプーリ径方向内側を通過し、更に、前記ベルト保持部に引っ掛けられた状態となるように、上記のベルト取付治具を前記第一プーリの外周に設置する。
(b)前記第一プーリの外周に上記ベルトが掛巻される掛巻角度が大きくなるように、前記第一プーリを回転させる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2010−249312(P2010−249312A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18003(P2010−18003)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
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