説明

ベルト取付治具

【課題】複数のプーリの間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻掛ける作業を補助するベルト取付治具を使用するに際し、プーリの径長が異なるいずれのプーリに対しても装着することが可能なベルト取付治具を提供することにある。
【解決手段】ベルト取付治具9は、クランクプーリ2の外周面に当接されるベルト導入部10と、ベルト導入部10の側面10aに設けられたベルトガイド板11と、クランクプーリ2の回転軸回りに回転可能に取り付けられる治具本体12と、治具本体12に設けられたレール13と、ベルトガイド板11に固定され、レール13に沿って移動可能なスライド台16とを備えている。そして、レール13に沿ってスライド台16を摺動させることにより、ベルト導入部10をクランクプーリ2の径内外方向Nに伸縮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト取付治具に関する。詳しくは、第一プーリと第二プーリの間へのベルトの巻掛け技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数のプーリにベルトを巻掛けてなるベルト伝動機構では、プーリ間で確実に動力を伝達させるために装着対象であるプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長を短くしてベルトに強い張力がかかるようになっている。
【0003】
このようにプーリ間のレイアウト周長よりもベルト周長が短いベルトをプーリに巻掛ける作業は手間がかかることがある。この手間を軽減させるために、特許文献1〜特許文献4には、ベルトを周方向に伸長させてプーリ外周に巻掛ける作業を補助する治具が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献4に開示されたベルト取付治具1は、ベルト2を伸長させて二段掛けプーリ3の手前側プーリ3aを乗り越えさせ、奥側プーリ3bに取り付けるためのものであり、手前側プーリ3aよりも手前側を通るベルト2を二段掛けプーリ3の外周側に導入する導入部5と、手前側プーリの外周側を覆い導入部5から導いたベルト2を奥側プーリ溝4bまで案内する差渡しガイド6と、奥側プーリ溝4bに挿通したベルト2の浮き上がりを押さえる押え片7と、導入部5、差渡しガイド6及び押え片7を二段掛けプーリ3の側面に取り付けるための取付部8とを備えている。ここで、取付部8は、ベルトの取付時にベルトからの反力によって取付治具がプーリ3から外れるのを防止する役割を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−8115号公報
【特許文献2】特許第4171517号公報
【特許文献3】特許第3990277号公報
【特許文献4】特許第4444907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
もっとも、上記ベルト取付治具1は、プーリの径長が規定されているプーリ3に取り付ける際には十分使用できるが、プーリの径長が規定のものと異なる場合には流用できない。とすれば、プーリの径長に合わせたベルト取付治具1を新たに用意する必要があるが不経済である。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のプーリの間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻掛ける作業を補助するベルト取付治具を使用するに際し、プーリの径長が異なるいずれのプーリに対しても装着することが可能なベルト取付治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま巻掛けるに際し、前記第一プーリに装着して使用するベルト取付治具であって、前記第一プーリの外周面に沿って当接されるベルト導入部と、前記ベルト導入部に設けられ、前記第一プーリの側面から前記ベルト導入部上を交差して前記第一プーリの外周に導入される前記ベルトを屈曲して前記第一プーリの外周に案内するベルトガイド板と、前記第一プーリの回転軸回りに回転可能に取り付けられる治具本体と、前記治具本体が前記第一プーリの回転軸回りに回転可能に取り付けられた状態で、前記第一プーリの回転軸付近から径外方向に延びるように前記治具本体に設けられたレールと、前記ベルトガイド板に固定され、前記レールに沿って移動可能なスライド台と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、ベルト取付治具を第一プーリに装着するに際して、レールに沿ってスライド台を摺動させることにより、ベルト導入部を第一プーリの径内外方向に伸縮させることができる。これによれば、第一プーリの径長が異なるいずれの第一プーリに対してもベルト取付治具を装着することが可能となる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明に係るベルト取付治具において、前記スライド台には、前記第一プーリの径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせて前記ベルト導入部の位置を調整可能な調整用螺孔が設けられており、螺子を前記調整用螺孔を介して前記ベルトガイド板に螺合することを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、螺子を、第一プーリの径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせてベルト導入部の位置を調整可能な調整用螺孔を介してベルトガイド板に螺合することができる。これによれば、第一プーリの外周の曲率が異なる場合であっても、その外周に合わせてベルト導入部を当接させることが可能となる。
【0012】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明に係るベルト取付治具において、前記ベルト導入部は、前記ベルトガイド板が位置する側面に、前記第一プーリの側面に当接する当接部を有していることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、ベルト導入部を第一プーリの径内外方向に伸縮させた際に、当接部を第一プーリの側面に当接することにより第一プーリの外周上でのベルト取付治具の姿勢を安定させることができる。また、当接部はベルト導入部のベルトガイド板が位置する側面にのみ設けられていることから、第一プーリの外周幅が変わっても第一プーリに装着可能である。
【0014】
また、第4の発明は、第1又は第2の発明に係るベルト取付治具において、前記ベルト導入部は、その両側面に前記第一プーリの両側面に当接する2つの当接部を有していることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、ベルト導入部を第一プーリの径内外方向に伸縮させた際に、2つの当接部を第一プーリの両側面に当接することにより第一プーリの外周上でのベルト取付治具の姿勢をより安定させることができる。
【0016】
また、第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明に係るベルト取付治具において、前記治具本体には、貫通穴が設けられており、前記貫通穴には、前記第一プーリの回転軸に挿着する回転用工具が挿入されることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、貫通穴に回転用工具を挿入したうえで第一プーリの回転軸に挿着して、ベルト導入部を第一プーリの径内外方向に伸縮させると、ベルト導入部を第一プーリの外周上に姿勢よく安定して取り付けることができる。
【発明の効果】
【0018】
複数のプーリの間に周長方向に伸縮可能なベルトを巻掛ける作業を補助するベルト取付治具を使用するに際し、プーリの径長が異なるいずれのプーリに対しても装着することが可能なベルト取付治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るベルト取付治具の斜視図である。
【図2】本実施形態に係るエンジン本体の斜視図である。
【図3】本実施形態に係るクランクプーリの断面図である。
【図4】本実施形態に係るベルト取付治具の六面図である。
【図5】スライド台をレールに沿って摺動させた状態を示した説明図である。
【図6】本実施形態に係る調整用螺孔群の説明図である。
【図7】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の第一説明図である。
【図8】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の第二説明図である。
【図9】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の第三説明図である。
【図10】本実施形態に係るベルト取付治具の使用方法の第四説明図である。
【図11】2つの当接部を備えたベルト取付治具の斜視図である。
【図12】変形例1に係るベルト取付治具の斜視図である。
【図13】変形例1に係るベルト取付治具の六面図である。
【図14】変形例2に係るベルト取付治具の斜視図である。
【図15】変形例2に係るベルト取付治具の六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。図1に示す本実施形態に係るベルト取付治具9は、図2に示すクランクプーリ2とオルタネータのオルタネータプーリ3との間にVリブドベルト4を巻掛けするのに用いる。先ず、図2を参照しつつ、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3に対するVリブドベルト4の巻掛けを説明し、図3を参照しつつ、クランクプーリ2の構造を説明する。
【0021】
図2に示されるように、エンジン本体1には、エンジンのクランク軸に連結されるクランクプーリ2(第一プーリ)と、オルタネータの入力軸に連結されるオルタネータプーリ3(第二プーリ)と、が所定の軸間距離を隔てて回転自在に支持される。このクランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間には、実線と破線で示すVリブドベルト4が巻掛けされ、もって、クランク軸の動力が、クランクプーリ2、Vリブドベルト4、オルタネータプーリ3を順に介してオルタネータの入力軸に伝動されるようになっている。本実施形態では、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間の軸間距離は変更不能とされ、また、図示するように、Vリブドベルト4に対して張力を付与する所謂オートテンショナ(張力付与手段)は搭載しない。
【0022】
(クランクプーリ2の構造)
図3に示すように、クランクプーリ2は、Vリブドベルト4の内周に形成されるリブ4aと嵌合可能な5つのプーリ溝2aを有し、この5つのプーリ溝2aをプーリ軸方向で挟む一対のプーリフランジ2b(第一プーリの縁)を備えている。このプーリフランジ2bは、図3の断面視で、上記プーリ溝2aよりプーリ径方向外側へ若干、突出して形成されている。また、クランクプーリ2のボス部5には、エンジンの図示しないクランク軸が挿入される。符号2cは、クランクプーリ2の側面を示す。なお、上記のVリブドベルト4は、その周長方向において若干伸縮可能な所謂低モジュラスベルトである。低モジュラスベルトは、心線にポリアミド繊維を用いることで、弾性率を比較的低くしたものであり、高弾性率のもの(所謂高モジュラスベルト)と比較して急激な張力低下が抑制される。
【0023】
なお、図2の太線矢印はVリブドベルト4の走行方向を示し、この走行方向にVリブドベルト4が走行するときのクランクプーリ2の回転方向を第一回転方向Aと、この第一回転方向Aと反対の方向を第二回転方向Bと、定義する。
【0024】
(ベルト取付治具9の構成)
次に、図1及び図4〜6を参照しつつ、本実施形態に係るベルト取付治具9の構成を説明する。図1は、ベルト取付治具9の斜視図である。図4は、ベルト取付治具9の六面図である。図5は、スライド台16をレール13に沿って摺動させた状態を示した説明図である。図6は、調整用螺孔群40の説明図である。
【0025】
図1に示されるように、ベルト取付治具9は、クランクプーリ2の外周面に沿って当接されるベルト導入部10と、ベルト導入部10の側面10aに設けられたベルトガイド板11と、クランクプーリ2の回転軸回りに回転可能に取り付けられる治具本体12と、治具本体12に設けられたレール13と、ベルトガイド板11に固定されておりレール13に沿って移動可能なスライド台16とを主たる構成として備える。このベルト取付治具9は、クランクプーリ2幅に略等しく、クランクプーリ2の外周に当接して使用するものであって、ベルトガイド板11が図2に示されるクランクプーリ2の側面2c上方に位置するように向きを定めて用いる。
【0026】
ベルト導入部10は、図8に示すようにベルト取付治具9がクランクプーリ2の外周に当接された状態で、プーリ溝2a(外周)を覆う。このベルト導入部10は、クランクプーリ2のプーリ溝2aに沿うように円弧状に湾曲され、少なくともVリブドベルト4のベルト幅4w以上の幅を有している。
【0027】
なお、ベルト導入部10の裏側に、クランクプーリ2のプーリ溝2aと嵌合可能なリブを設けても良い。
【0028】
ベルト導入部10の側面10aには、クランクプーリ2の側面2cからベルト導入部10上を交差してクランクプーリ2の外周に導入されるVリブドベルト4を屈曲してクランクプーリ2の外周に案内するためのベルトガイド板11が設けられている。このベルトガイド板11は、Vリブドベルト4がクランクプーリ2の外周に導入される側、即ち、ベルト導入部10の側面10aの第二回転方向B側に配されている。また、ベルトガイド板11は、Vリブドベルト4をクランクプーリ2の外周に案内する際に当接する部分11aが曲面形状をしている。なお、ベルトガイド板11とベルト導入部10とは一体形成されていることが好ましい。
【0029】
また、ベルト導入部10の側面10aには、クランクプーリ2の側面2cに当接する当接部18が設けられている。当接部18は、図3に示されるクランクプーリ2の側面2cに対して当接ないし密着するよう、ベルト導入部10の側面10aからクランクプーリ2の軸に向かって延在する。当接部18においてVリブドベルト4と接触する縁には面取りがなされ曲面形状になっている。これは、巻掛け時にVリブドベルト4を損傷させないために設けている。なお、当接部18は、ベルトガイド板11を設けた側面10aと同一の側面であり、且つ、少なくともベルトガイド板11を設けた側とは反対側の側面領域に設けられていればよい。即ち、ベルト取付治具9がクランクプーリ2の外周に配置されて、当接部18がクランクプーリ2の側面2cに当接した状態で、当接部18は、Vリブドベルト4が跨ぐプーリフランジ2b部分に配置されていればよい。
【0030】
なお、図11(a)(b)に示すように、ベルト導入部10の側面10aとは反対の側面10bに、クランクプーリ2の側面2cに当接する当接部17を設けてもよい。この場合、ベルト導入部10は、その両側面10a・10bにクランクプーリ2の両側面2cに当接する2つの当接部17・18を有することになる。
【0031】
ベルト取付治具9は、クランクプーリ2の回転軸に固定する平板状の治具本体12を備えている。この治具本体12には円形状をした貫通穴19が設けられている。この貫通穴19は、図7に示すように、回転用工具20の連結部20bにレンチ固定部20aを嵌め込む際に、円筒状のレンチ固定部20aを貫通穴19に挿入することにより、回転用工具20にベルト取付治具9を取り付ける役割を果たす。
【0032】
治具本体12にはレール13が設けられている。このレール13は、治具本体12がクランクプーリ2の回転軸に固定された状態で、貫通穴19付近から径外方向に延びるようにして設けられている。また、レール13は、図1に示すように、X−X´断面視でテーパ状になっており、後述するスライダー14の案内溝14aに嵌め込まれて摺動する。
【0033】
ベルトガイド板11の側面11bには、レール13上を摺動するスライド台16が固定ネジ37・38によって螺嵌されている。スライド台16は、ベルトガイド板11の側面11bに固定ネジ37・38によって直接螺嵌される支持板15と、レール13を摺動可能に嵌め込む案内溝14aが設けられたスライダー14とから構成されており、支持板15とスライダー14はネジにより螺嵌されている。なお、案内溝14aは、図1に示すように、レール13を嵌め込めるようにX−X´断面視でテーパ状をしている。
【0034】
ここで、スライド台16は、図5(a)(b)に示すように、スライダー14の案内溝14aに嵌め込まれたレール13に沿って摺動可能に移動する。
【0035】
また、スライド台16の支持板15には、螺子孔31・33・34・35・36、三日月状孔32からなる調整用螺孔群40が設けられている。この調整用螺孔群40の中から2つの螺子孔を選択して、その選択した螺子孔を介して螺子37・38をベルトガイド板11に螺合してスライド台16を固定する。
【0036】
本実施形態では、調整用螺孔群40の中から螺子孔31と三日月状孔32を選択している。三日月状孔32は、図6(a)に示されるように、螺子孔31を中心とした三日月状の孔であり、三日月状孔32を通して螺子38が、ベルトガイド板11に設けられたネジ孔(図示せず)に螺合される。そして、ベルトガイド板11を含むベルト導入部10の位置を変えたいときには、螺子37・38をゆるめ、螺子38の頭部を指でつまんで螺子孔31を軸にして三日月状孔32に沿ってベルトガイド板11を含むベルト導入部10及び螺子38を移動させ、所望の位置で再び螺子37・38を螺合する。これにより、図6(b)に示すように、クランクプーリ2の径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせてベルトガイド板11を含むベルト導入部10の位置を微調整することができる。
【0037】
(ベルト取付治具9の使用方法)
次に、図7〜図10を参照しつつ、上記のベルト取付治具9の使用方法を説明する。図7は、ベルト取付治具9の使用方法の第一説明図である。図8は、ベルト取付治具9の使用方法の第二説明図である。図9は、ベルト取付治具9の使用方法の第三説明図である。図10は、ベルト取付治具9の使用方法の第四説明図である。
【0038】
<手順(a)>
先ず、図7(a)に示されるように、回転用工具20の連結部20bにレンチ固定部20aを嵌め込む。その際に、円筒状のレンチ固定部20aをベルト取付治具9の貫通穴19に挿入することにより、回転用工具20にベルト取付治具9を取り付ける。次に、クランクプーリ2の径長に合わせてスライド台16を、クランクプーリ2の径内外方向Nにレール13に沿って摺動させる。更に、クランクプーリ2の径長の違いによるクランクプーリ2の外周の曲率の違いに合わせてベルトガイド板11を含むベルト導入部10の位置を微調整する。具体的には、螺子37・38をゆるめ、螺子38の頭部を指でつまんで螺子孔31を軸にして三日月状孔32に沿ってベルトガイド板11を含むベルト導入部10及び螺子38を移動させ、所望の位置で再び螺子37・38を螺合する。なお、螺子37・38を螺合する際、完全には締結せずにあえて緩く螺合することにより、ベルトガイド板11を含むベルト導入部10がわずかに動くような遊びをもうけてもよい。
【0039】
<手順(b)>
そして、図7(b)に示すように、クランクプーリ2のボス部5に回転用工具20の連結部20bを連結し、レンチ固定部20aにレンチ50を装着して、クランクプーリ2を手動で自由に回転できるようにする。この際、ベルト取付治具9の当接部18がクランクプーリ2のプーリフランジ2bに接したうえで、ベルト導入部10がクランクプーリ2の外周に沿って配置される。
【0040】
<手順(c)>
この状態で、図8に示すように、Vリブドベルト4をオルタネータプーリ3に巻掛けすると共に、クランクプーリ2の側面2cからプーリフランジ2bをカバーした当接部18を跨いで、ベルトガイド板11で屈曲させたうえでベルト導入部10上を交差させてクランクプーリ2の外周に沿わせる。
【0041】
詳しくは、オルタネータプーリ3に巻掛けしたVリブドベルト4は、Vリブドベルト4の移動方向と反対の方向に順に、回転用工具20、ベルト取付治具9、クランクプーリ2のプーリ溝2aに対してこの順番で巻掛けする。即ち、Vリブドベルト4を、先ず、回転用工具20に巻き掛ける。次に、Vリブドベルト4をベルトガイド板11に引っ掛け、クランクプーリ2のプーリ溝2aに沿わせる。
【0042】
<手順(d)>
次に、図9に示すように、第一回転方向Aにクランクプーリ2を回転させる。詳しくは、先ず、図8の状態から図9の状態となるようにクランクプーリ2を、第一回転方向Aに回転させる。すると、Vリブドベルト4には、伸張されることにより高い張力が発生する。上記張力は、Vリブドベルト4がベルト導入部10上を交差しているのでベルト導入部10をクランクプーリ2のプーリ溝2aに対して押圧する押圧作用として働く。
【0043】
継続して、図9の状態から図10の状態となるようにクランクプーリ2を、第一回転方向Aに回転させる。すると、クランクプーリ2の側面2c上にあるVリブドベルト4がプーリフランジ2bを乗り越えて、ベルト導入部10上に移動する。
【0044】
詳しくは、クランクプーリ2を、第一回転方向Aに回転させると、クランクプーリ2のプーリ溝2aに対するVリブドベルト4の嵌合の領域が徐々に広範になる。
【0045】
更に、クランクプーリ2を、第一回転方向Aに回転させる。すると、ベルト導入部10上のVリブドベルト4がベルト導入部10を離れてクランクプーリ2の外周へと移動する。この移動後、ベルト取付治具9をクランクプーリ2から取り外す。すると、図2に示すように、クランクプーリ2とオルタネータプーリ3との間にVリブドベルト4が巻掛けされた状態になる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るベルト取付治具9は、以下のように構成される。ベルト取付治具9は、クランクプーリ2の外周面に沿って当接されるベルト導入部10と、ベルト導入部10に設けられ、クランクプーリ2の側面2cからベルト導入部10上を交差してクランクプーリ2の外周に導入されるVリブドベルト4を屈曲してクランクプーリ2の外周に案内するベルトガイド板11と、クランクプーリ2の回転軸回りに回転可能に取り付けられる治具本体12と、治具本体12がクランクプーリ2の回転軸回りに回転可能に取り付けられた状態で、クランクプーリ2の回転軸付近から径外方向に延びるように治具本体12に設けられたレール13と、ベルトガイド板11に固定され、レール13に沿って移動可能なスライド台16とを備えている。
【0047】
上記の構成によれば、ベルト取付治具9をクランクプーリ2に装着するに際して、レール13に沿ってスライド台16を摺動させることにより、ベルト導入部10をクランクプーリ2の径内外方向Nに伸縮させることができる。これによれば、クランクプーリ2の径長が異なるいずれのクランクプーリ2に対してもベルト取付治具9を装着することが可能となる。
【0048】
また、ベルト取付治具9において、スライド台16の支持板15には、クランクプーリ2の径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせてベルト導入部10の位置を調整可能な調整用螺孔群40が設けられており、螺子37・38を調整用螺孔群40を介してベルトガイド板11に螺合するようになっている。
【0049】
上記の構成によれば、螺子37・38を、クランクプーリ2の径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせてベルト導入部10の位置を調整可能な調整用螺孔群40を介してベルトガイド板11に螺合することができる。これによれば、クランクプーリ2の外周の曲率が異なる場合であっても、その外周に合わせてベルト導入部10を当接させることが可能となる。
【0050】
また、ベルト取付治具9のベルト導入部10は、ベルトガイド板11が位置する側面10aに、クランクプーリ2の側面2cに当接する当接部18を有している。
【0051】
上記の構成によれば、ベルト導入部10をクランクプーリ2の径内外方向Nに伸縮させた際に、当接部18をクランクプーリ2の側面2cに当接することによりクランクプーリ2の外周上でのベルト取付治具9の姿勢を安定させることができる。また、当接部18はベルト導入部10のベルトガイド板11が位置する側面10aにのみ設けられていることから、クランクプーリ2の外周幅が変わってもクランクプーリ2に装着可能である。
【0052】
また、ベルト取付治具9において、ベルト導入部10の両側面10a・10bにクランクプーリ2の両側面2cに当接する2つの当接部17・18を有した構成にしてもよい。
【0053】
上記の構成にした場合、ベルト導入部10をクランクプーリ2の径内外方向Nに伸縮させた際に、2つの当接部17・18をクランクプーリ2の両側面2cに当接することによりクランクプーリ2の外周上でのベルト取付治具9の姿勢をより安定させることができる。
【0054】
また、ベルト取付治具9において、治具本体12には、貫通穴19が設けられており、貫通穴19には、クランクプーリ2のボス部5に挿着する回転用工具20が挿入されるようになっている。
【0055】
上記の構成によれば、貫通穴19に回転用工具20を挿入したうえでクランクプーリ2の回転軸にあたるボス部5に挿着して、ベルト導入部10をクランクプーリ2の径内外方向Nに伸縮させると、ベルト導入部10をクランクプーリ2の外周上に姿勢よく安定して取り付けることができる。
【0056】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0057】
(変形例1)
例えば、本実施形態において、スライド台16の支持板15に螺子37・38により固定されているベルトガイド板11を含むベルト導入部10は、他のものに付け替え可能である。
【0058】
具体的には、図12及び図13に示すベルト取付治具109のように、ベルトガイド板111を含むベルト導入部110を支持板15に固定してもよい。このベルト取付治具109は、ベルト導入部110と、ベルトガイド板111と、上記実施形態と同じ治具本体12と、レール13と、スライド台16と、を主たる構成として備える。このベルト取付治具109は、更に、屈曲案内曲面111aと、膨出部114と、当接部115と、ベルト導入部110の内周面に設けられ、プーリ溝2aと嵌合可能なリブ112とを備えている。
【0059】
上記の構成によれば、軸方向に並設される手前側プーリと奥側プーリを備える二段プーリの奥側プーリと、他のプーリとしての第二プーリと、の間に周長方向に伸縮可能なベルトを、奥側プーリと第二プーリの軸間距離を固定したまま巻掛けすることができるベルト取付治具109を提供することができる。
【0060】
(変形例2)
図14及び図15に示すベルト取付治具209のように、ベルトガイド板211を含むベルト導入部210を支持板15に固定してもよい。このベルト取付治具209は、ベルト導入部210と、ベルト導入部210の側面に設けられ、クランクプーリ2の側面2cからベルト導入部210を交差してクランクプーリ2の外周に導入されるVリブドベルト4を屈曲してクランクプーリ2の外周に沿わせるためのベルトガイド板211と、ベルト導入部210の裏面に設けられ、クランクプーリ2の外周面に設けられたプーリ溝2aに嵌合するリブ212と、上記実施形態と同じ治具本体12と、レール13と、スライド台16と、を主たる構成として備える。また、図15(b)に示すように、ベルトガイド板211は、Vリブドベルト4を屈曲させる曲面211aがベルト導入部210表面上に張り出し、L字型をしている。
【0061】
上記の構成によれば、ベルトガイド板211の強度をあげることができる。これにより、ベルトガイド板211にかかるVリブドベルト4の張力に十分に耐えることができるベルト取付治具209を提供するこができる。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン本体
2 クランクプーリ
2a プーリ溝
2b プーリフランジ
2c クランクプーリ2の側面
3 オルタネータプーリ
4 Vリブドベルト
5 ボス部
9 ベルト取付治具
10 ベルト導入部
10a ベルト導入部10の側面
11 ベルトガイド板
12 治具本体
13 レール
14 スライダー
14a 案内溝
15 支持板
16 スライド台
18 当接部
19 貫通穴
20 回転用工具
32 三日月状孔
37・38 螺子
40 調整用螺孔群
50 レンチ
A 第一回転方向
B 第二回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一プーリと第二プーリの間に、周長方向に伸縮可能なベルトを、前記第一プーリと前記第二プーリの軸間距離を固定したまま巻掛けるに際し、前記第一プーリに装着して使用するベルト取付治具であって、
前記第一プーリの外周面に沿って当接されるベルト導入部と、
前記ベルト導入部に設けられ、前記第一プーリの側面から前記ベルト導入部上を交差して前記第一プーリの外周に導入される前記ベルトを屈曲して前記第一プーリの外周に案内するベルトガイド板と、
前記第一プーリの回転軸回りに回転可能に取り付けられる治具本体と、
前記治具本体が前記第一プーリの回転軸回りに回転可能に取り付けられた状態で、前記第一プーリの回転軸付近から径外方向に延びるように前記治具本体に設けられたレールと、
前記ベルトガイド板に固定され、前記レールに沿って移動可能なスライド台と、
を備えたことを特徴とするベルト取付治具。
【請求項2】
前記スライド台には、前記第一プーリの径長の違いによる外周の曲率の違いに合わせて前記ベルト導入部の位置を調整可能な調整用螺孔が設けられており、
螺子を前記調整用螺孔を介して前記ベルトガイド板に螺合することを特徴とする請求項1に記載のベルト取付治具。
【請求項3】
前記ベルト導入部は、前記ベルトガイド板が位置する側面に、前記第一プーリの側面に当接する当接部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト取付治具。
【請求項4】
前記ベルト導入部は、その両側面に前記第一プーリの両側面に当接する2つの当接部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト取付治具。
【請求項5】
前記治具本体には、貫通穴が設けられており、
前記貫通穴には、前記第一プーリの回転軸に挿着する回転用工具が挿入されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のベルト取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2293(P2012−2293A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138538(P2010−138538)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】