説明

ベルト型使い捨ておむつ

【課題】ベルト型の使い捨ておむつにおいて,ウエストベルトに弾性伸縮材を配設してフィット性を向上させつつも,このウエストベルトに,着用者の肌に対して刺激を与えないような柔軟性とクッション性を持たせる。
【解決手段】ウエストベルト4を構成する2つのシート層間41,42にウエスト伸縮材44を配置してフィット性を向上させつつも,2つのシート層間にクッション機能を果たす空間Sを形成することにより,ウエストベルトが着用者の肌に対して与える刺激を低下させるという知見に基づく。着用者の肌に接するシート部とウエスト伸縮材の間に,さらにクッション形成シート部43を配置し,着用者の肌に接するシート部とクッション形成シート部を間欠的に接合することで,クッション機能を果たす空間を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,着用者の股下に装着され,尿などの液体を吸収し保持するための使い捨ておむつに関する。具体的に説明すると,本発明は,使い捨ておむつの前身頃や後身頃にウエストベルトを備えたベルト型の使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,使い捨ておむつの前身頃や後身頃にウエストベルトを備えたベルト型の使い捨ておむつが知られている(例えば特許文献1)。ベルト型の使い捨ておむつは,主として介護用に使用されるものであり,介護者が着用者に対して使い捨ておむつを着脱させる作業を比較的容易に行うことができる点に特徴がある。
【0003】
例えば,特許文献1に開示された使い捨ておむつを着用させるに際し,介護者は,まず,着用者を立たせた状態で,使い捨ておむつの後身頃から延在したウエストベルトを着用者の腰周りに巻きつけて,おむつの位置合わせを行う。そして,着用者の腰周りに保持されているウエストベルトに対し,使い捨ておむつの前身頃を結合させることにより,着用者の股下に,使い捨ておむつをあてがう。このように,介護者は,比較的楽な作業で,ベルト型の使い捨ておむつを着用者に装着させることができる。
【0004】
また,特許文献1に開示されたベルト型の使い捨ておむつは,ウエストベルトに,吸収体を配設し,ウエストベルト部分においても,尿などの液体を吸収できるように構成されている。このように,特許文献1の使い捨ておむつは,ウエストベルト部分にも液体吸収機能を持たせることにより,尿などの液体が使い捨ておむつの外側へ漏れ出す事態を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141535公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来のベルト型の使い捨ておむつは,ウエストベルトに,ゴム糸等の弾性伸縮材が配置されておらず,伸縮性を有しないものであった。ウエストベルトが伸縮性を有しないと,使い捨ておむつ全体のフィット性が低下し,使い捨ておむつが着用者の身体からずれ下がるという不具合が生じる。また,使い捨ておむつのフィット性が低下すると,使い捨ておむつと着用者の肌の間に生じた隙間から,尿などの液体が漏出する恐れもあった。
【0007】
この点,上記従来の問題点を解消するために,ウエストベルトの端縁に沿って,弾性伸縮材を配置し,ウエストベルトに伸縮性を持たせることが考えられる。しかし,上述したとおり,ウエストベルトは,着用者の肌の広範な範囲に直接接するものである。また,ウエストベルトは,使い捨ておむつ全体のずれ下がりを防止するために,ある程度の力で,着用者の腰周りを締め付ける。さらに,弾性伸縮材が収縮すると,ウエストベルトの肌当接面側に皺が生じることとなる。このため,ウエストベルトに伸縮性を持たせるために弾性伸縮材を配置した場合,ウエストベルトに生じた皺が,着用者の肌に直接擦れることとなり,着用者に対して皮膚刺激を与え,結果として,使い捨ておむつ全体の快適性を損なうもこととなっていた。
【0008】
このため,現在では,ベルト型の使い捨ておむつのウエストベルトに弾性伸縮材を配設してフィット性を向上させつつも,このウエストベルトに,着用者の肌に対して刺激を与えないような柔軟性とクッション性を持たせることができる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで,本発明の発明者は,上記の従来の問題点を解決する手段について鋭意検討した結果,ウエストベルトを構成する2つのシート層間にウエスト伸縮材を配置してフィット性を向上させつつも,2つのシート層間にクッション機能を果たす空間を形成することにより,ウエストベルトが着用者の肌に対して与える刺激を低下させることができるという知見を得た。そして,本発明者は,着用者の肌に接するシート部とウエスト伸縮材の間に,さらにクッション形成シート部を配置し,着用者の肌に接するシート部とクッション形成シート部を間欠的に接合することで,クッション機能を果たす空間を形成することができることに想到し,本発明を完成させた。
具体的に本発明は,以下の構成を有する。
【0010】
本発明は,ウエストベルトを備えたベルト型の使い捨ておむつに関する。
本発明の使い捨ておむつは,前身頃1と,後身頃2と,前身頃1と後身頃2の間に位置する股下部3を有する。
また,前身頃1又は後身頃2いずれか一方の両側方には,ウエストベルト(4)が延在している。
このため,本発明の使い捨ておむつは,ウエストベルト4を着用者のウエスト周りに取り付け,前身頃1又は後身頃2いずれか他方を,ウエストベルト4に結合することにより装着することができるようになっている。
また,ウエストベルト4は,着用者の肌に当接する内側シート部41と,内側シート部41の肌非当接面側に位置する外側シート部42を有している。
さらに,内側シート41と外側シート部42の間には,クッション形成シート部43が配置されている。
この外側シート部42とクッション形成シート部43の間には,ウエストベルト4のウエスト周り端縁に沿う方向に,複数のウエスト伸縮材44が,伸長状態で固定されている。
そして,クッション形成シート43は,内側シート部41の内向面に対し,ウエストベルト4のウエスト周り端縁に沿う方向に,接合部と非接合部が連続するよう間欠的に接合されている。
【0011】
上記構成のように,ウエストベルト4に,外側シート部42とクッション形成シート部43の間にウエスト伸縮材44を挟み込んで固定し,クッション形成シート部43と内側シート部41を間欠的に接合することにより,このクッション形成シート部43と内側シート部41の間には,クッション機能を果たす空間が形成されることとなる。このような空間が形成されると,着用者の肌に直接接する内側シート部41が柔軟になり,ウエストベルト4が,着用者の肌に対して与える刺激を低下させることができる。
さらに,ウエストベルト4に空間を形成することで,ウエストベルト全体の通気性が向上するため,ウエストベルト4が着用者の肌に長時間接している場合であっても,着用者の肌が蒸れにくくなる。
【0012】
本発明において,内側シート部41は,外側シート部42に相当するアウターシート40を,肌当接面側に折り返すことにより形成されたものであることが好ましい。
【0013】
上記構成のように,内側シート部41を,ウエストベルト4を構成するアウターシート40を折り返した折返部に相当するものとすることにより,内側シート部41と外側シート部42を一枚のシート材から構成することができる。従って,ウエストベルト4の製造が容易になる。また,ウエストベルト4の内側シート部41と外側シート部42の接合が強固になり,ウエストベルト4全体の強度向上に繋がる。
【0014】
本発明において,ウエストベルト4は,股下部3側の端縁の少なくとも一部が,股下部3が存在する方向に向かって膨出する円弧状となっていることが好ましい。そして,この場合において,複数のウエスト伸縮材44の少なくとも一部は,股下部3側の端縁の円弧に沿う方向に湾曲して,外側シート部42とクッション形成シート部43の間に固定されていることが好ましい。
【0015】
上記構成のように,ウエスト伸縮材44をウエストベルト4の形状に沿って湾曲させることにより,ウエストベルト4のフィット性が向上し,使い捨ておむつのずり下がりを防止できる。
【0016】
本発明のベルト型使い捨ておむつに用いられるウエストベルト4の形態には,例えば,使い捨ておむつの前身頃又は後身頃の両側縁から左右方向外側に向かって延在しウエストベルトの両端部が予め接合された状態にない帯状ウエストベルト4aがある。
帯状ウエストベルト4aは,ウエストベルトを着用者の背部又は腹部にあてがった状態で,ウエストベルトの両端部同士を結合させることにより,着用者の腰周りに取付けられる。従って,帯状ウエストベルト4aは,着用者の腹周りの身体的特性に合わせて,その装着位置や締め付けの強さを細かく調節することができる。また,帯状ウエストベルト4aは,着用者が寝たままであっても使い捨ておむつの交換が可能であるため,おむつの交換作業が容易になるという利点がある。
【0017】
本発明のベルト型使い捨ておむつに用いられるウエストベルト4の形態には,その他,後身頃又は前身頃の両側側縁から延在した帯状のウエストベルトが一箇所又は二箇所以上の接着部位において予め接合され環状となった環状ウエストベルト4bがある。
環状ウエストベルト4bは,着用者の頭部と両腕部を通って腰周りに取付けられるか,着用者の両脚部を通って腰周りに取付けられる。
本発明の環状ウエストベルト4bには伸縮性があり,ウエストベルトの締め付け具合を調整しなくても,ある程度の寸法変化に対応できるため,予め環状にすることができる。環状ウエストベルト4bは,立ったまま片足ずつ上げてウエストベルトを履くことができる者であれば,上述した帯状ウエストベルト4aのようにウエストベルト位置を合わせる作業が不要であるため,おつむの交換作業がスムーズになるという利点がある。
【0018】
上記環状ウエストベルト4bは,着用者の腹部側に位置する腹部区域5と,着用者の背部側に位置する背部区域6に区分される。
そして,この腹部区域5には,環状ウエストベルト4bを,ウエスト周り端縁から股下部3側の端縁に至るまで切断可能な,切断誘導部51が形成されていることが好ましい。
【0019】
上記構成のように,環状ウエストベルト4bの腹部区域5に切断誘導部51を設けることにより,使い捨ておむつを着用者の身体から取り外す際に,切断誘導部51に沿って環状ウエストベルト4bを破断させるという作業だけで,簡単に取り外すことができるようになる。
【0020】
ウエストベルト4が,環状ウエストベルト4bである場合において,腹部区域5の肌非当接面側には,調節シート52が設けられていることが好ましい。
調節シート52は,その一端部が,腹部区域5の肌非当接面側に接合されている。
この調節シート52の一端部を腹部区域5に接合する調節シート接合部53は,切断誘導部51に沿う方向に,切断誘導部51に隣接して設けられている
そして,調節シート52は,その他端部に,調節シート52を腹部区域5の肌非当接面側に係合するための第1の係合手段54を有することが好ましい。
【0021】
上記構成のように,調節シート52を設けることにより,環状ウエストベルト4bであっても,着用者の身体的特性に併せて,環状ウエストベルト4bの締め付け力や,環状ウエストベルト4bの取り付け位置を微調整することができるようになる。
すなわち,環状ウエストベルト4bの状態を微調整するためには,まず,切断誘導部51に沿って環状ウエストベルト4bを破断させる。そして,調節シート52を摘持し,第1の係合手段54が設けられた先端部(他端部)を取り付ける位置を調節することにより,環状ウエストベルト4bの締め付け力や取り付け位置を微調整することが可能である。
また,環状ウエストベルト4bに切断誘導部51と調節シート52を設けることにより,ウエストベルトが環状であっても切断誘導部51沿って破断して,着用者の腹回りに合わせて装着位置や締め付けの強さを微調整することができるため,例えば立ったまま片足ずつ上げて環状のウエストベルトを履くことができない者であっても,対応可能になる。
【0022】
また,上記構成において,腹部区域5の肌非当接面側には,腹部区域5の肌非当接面側を調節シート52の内向面に係合するための第2の係合手段55が設けられていることが好ましい。
【0023】
このように,調節シート52の先端部に設けられた第1の係合手段54の他に,腹部区域5の肌非当接面側にも第2の係合手段55を設けることにより,調節シート52と部区域5の肌非当接面側との係合力が向上する。また,係合手段が2つ設けられていることで,例えば,まず第2の係合手段55を取り付け,その後第1の係合手段54を取り付けるといったようにすれば,環状ウエストベルト4bの状態を微調整する作業が容易になる。
また,環状ウエストベルト4bが,第1の係合手段54と第2の係合手段55を両方持つ場合,腹回りのベルトの寸法は,第1の係合手段54の係合位置によって調整される。そして,第2の係合手段55を調節シート52の内向面に係合することにより,環状ウエストベルト55の腹部区域5における第1の係合手段54の係合位置と第2の係合手段55の間の領域が,自由に動き回らないように固定することができる。また,この際,第1の係合手段54と第2の係合手段55の係合位置を調節することにより,その間の領域におけるウエスト伸縮材44の伸長状態を調節することができる。例えば,第1の係合手段54と第2の係合手段55の間隔を調節し,ウエスト伸縮材44がやや弛緩した状態でとなるように,固定することで,クッション形成シート43によって形成される空間がより広がり易くなり,環状ウエストベルト4bの腹部に当たる箇所の柔らかさが向上し,快適に着用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は,第1の実施形態に係るベルト型使い捨ておむつの展開図である。
【図2】図2は,ベルト型使い捨ておむつの着用方法の例を示す説明図である。
【図3】図3は,図1のA−Aの線分において,使い捨ておむつを切断した状態を示す断面図である。
【図4】図4は,本発明のフルート構造の例を示す概念図である。
【図5】図5は,図4のB−Bの線分において,ウエストベルトを切断した状態を示す断面図である。
【図6】図6は,ウエストベルトの接合部の形態の例を示す図である。
【図7】図7は,図1のC−Cの線分において,使い捨ておむつを切断した状態を示す断面図である。
【図8】図8は,第2の実施形態に係るベルト型使い捨ておむつの展開図である。
【図9】図9は,第2の実施形態に係るベルト型使い捨ておむつの展開図である。
【図10】図10は,図8のD−Dの線分において,ウエストベルトを切断した状態を示す断面図である。
【図11】図11は,他の形態に係るベルト型使い捨ておむつのウエストベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願明細書において,「使い捨ておむつの前後方向」というときは,使い捨ておむつの前身頃と後身頃を結ぶ方向(図1における上下方向)を意味する。また,「使い捨ておむつの左右方向」というときは,前後方向と直交する方向(図1における左右方向)を意味する。
【0026】
(1.第1の実施形態)
図1は,本発明の第1の実施形態に係るベルト型使い捨ておむつ100の展開図である。本発明の第1の実施形態は,ウエストベルト4として,帯状ウエストベルト4aが用いられたベルト型の使い捨ておむつである。帯状ウエストベルト4aとは,ウエストベルトが,使い捨ておむつの前身頃又は後身頃の両側縁から左右方向外側に向かって延在しており,ウエストベルトの両端部が,予め接合された状態にないものを意味する。帯状ウエストベルト4aは,ウエストベルトを着用者の背部又は腹部にあてがった状態で,ウエストベルトの両端部同士を結合させることにより,着用者の腰周りに取付けられる。
【0027】
ウエストベルト4の形態には,例えば,上記した帯状ウエストベルト4aと,後述する環状ウエストベルト4bがある。両者は,外形に多少の違いはあるものの(この点については後述する),基本的に同様の構成を有している。このため,特に断りのない限り,帯状ウエストベルト4aについての説明は,環状ウエストベルト4bについての説明として引用することができる。
なお,本願明細書において,単にウエストベルト4というときは,帯状ウエストベルト4aであるか環状ウエストベルト4bであるかを限定せずに説明しているものとする。
【0028】
ウエストベルト4は,使い捨ておむつの前身頃1又は後身頃2のいずれの側方に延在するものであってもよいが,例えば,図1に示されるように,使い捨ておむつの後身頃2側の両側縁から延在するものであることが好ましい。
例えば,着用者は,立ったまま使い捨ておむつを交換することはできるが,腰が曲がっており背部側から交換したほうが着用者にも交換者にも楽なような場合に,ウエストベルト4を後身頃2側に設けることにより,比較的スムーズにウエストベルト4を着用者の腰周りに巻きつけることができるようになる。また,その場合,たとえば補助パッドを交換する際も着用者の背部側から作業を行うことができ,着用者と交換者の負担を軽減することができる。
【0029】
図1は,着者の股下に配され尿などの液体を吸収するための吸収性本体30と,着用者の腰周りに取付けられるウエストベルト4が別途構成され,ウエストベルト4の肌当接面側に,吸収性本体3が固定された例を示している。このように,ウエストベルト4の肌当接面側に吸収性本体3を固定することで,使い捨ておむつを装着した際の面圧が高まるため,使い捨ておむつのフィット性が向上し,尿漏れを防止できる。
【0030】
ただし,図示は省略するが,吸収性本体30は,ウエストベルト4の肌非当接面側に固定されるものであってもよい。この場合,ウエストベルト4と着用者の肌の密着性が高まるため,使い捨ておむつと着用者の身体との間に隙間が生じにくくなり,尿漏れを防止することができる。
【0031】
また,図には,帯状ウエストベルト4aが吸収性本体30と別体に構成された例が示されているが,帯状4aは,吸収性本体30と一体的に形成されたものであってもよい。
【0032】
帯状ウエストベルト4aの左右方向における一方の端部には,ベルト係合手段45が設けられている。ベルト係合手段45は,帯状ウエストベルト4aの肌非当接面側に係合可能になっている。ベルト係合手段45は,例えば,粘着剤や粘着テープにより固定を行うものであってもよいし,帯状ウエストベルト4aの肌非当接面に機械的に結合される面状ファスナーであってもよい。ベルト係合手段45と帯状ウエストベルト4aの肌非当接面
と固定するファスニング機構としては,フック材(雄部材)とループ材(雌部材)の機械的結合により固定を行う面状ファスナー用いることが特に好ましい。面状ファスナーとしては,例えば,表面に多数の突起(鉤状,きのこ状等)が形成されたフック材と,表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される公知のものを採用できる。
【0033】
また,吸収性本体30の前身頃1には,肌当接面の端部側に,本体係合手段31が設けられている。本体係合手段31は,ウエストベルト4の肌非当接面側に係合可能になっている。本体係合手段31は,例えば,粘着剤や粘着テープにより固定を行うものであってもよいし,ウエストベルト4の肌非当接面に機械的に結合される面状ファスナーであってもよい。
【0034】
図2は,帯状ウエストベルト4aを備えた使い捨ておむつ100を着用者の身体に装着する手順の例を説明するための説明図である。まず,帯状ウエストベルト4aを着用者の腹部又は背部にあてがう。そして,図2(a)に示されるように,帯状ウエストベルト4aの一方端に設けられたベルト係合手段45を,帯状ウエストベルト4aの反対側の肌非当接面側に係合させて,帯状ウエストベルト4aを着用者の腰周りに巻きつける。これにより,帯状ウエストベルト4aは,着用者の腰周りに取付けられる。この際,帯状ウエストベルト4aのベルト係合手段45を係合させる位置を調節することにより,使い捨ておむつを装着させる位置を決定する。また,この際,帯状ウエストベルト4aの締め付けの強さについても調節することもできる。このように,帯状ウエストベルト4aは,着用者の腹周りの身体的特性に合わせて,その装着位置や締め付けの強さを細かく調節することができる。
【0035】
帯状ウエストベルト4aを着用者の腰周りに取り付けた後,図2(a)に示されるように,吸収体本体30が着用者の股下をくぐるようにして,吸収性本体30の前身頃側端部に設けられた本体係合手段31を,帯状ウエストベルト4aの肌非当接面側に係合させる。吸収性本体30の本体係合手段31が,帯状ウエストベルト4aの肌非当接面側に係合した状態が,図2(b)に示されている。このように,ベルト型の使い捨ておむつは,簡単な手順で,着用者の身体に装着することができる。特に,ベルト型の使い捨ておむつは,ある者が,他の者の身体におむつを装着させる作業を容易にする。また,このような帯状ウエストベルト4aは,着用者が寝たままであっても使い捨ておむつの交換が可能であるため,おむつの交換作業が容易になるという利点がある。
【0036】
(1−1.ウエストベルト)
次に,図3〜図6を参照して,ウエストベルト4の構造について説明する。本発明の使い捨ておむつのウエストベルトには,いわゆるフルート構造が採用されている。フルート構造とは,ウエストベルトを構成するシート層間に空間を形成し,ウエストベルトの柔軟性とクッション性を向上させるための構造である。以下,具体的に説明する。
【0037】
図3は,図2に示されたA−Aの線分において,使い捨ておむつを切断した状態を示す断面図である。図3においては,図中右側が着用者の肌が存在する肌当接面側であり,図中左側が肌非当接面側となっている。なお,通常,使い捨ておむつを形成する各種シート材の厚さは非常に薄いものであるが,図3においては,概念的に各種シート材に厚みをもたせて描画している。
【0038】
(1−1−1.内側シート部,外側シート部)
図3に示されるように,ウエストベルト4は,アウターシート20を有している。アウターシート10は,肌当接面側に折り返されて,当該折返部40aが,ウエストベルト4のウエスト周り端縁となる。アウターシート10は,折返線40aを基準として,肌当接面側に位置する内側シート部41と,肌非当接面側に位置する外側シート部42を有している。
【0039】
アウターシート10は,液透過性材料で構成されていても良いし,液不透過性材料で構成されていてもよい。液透過性材料の例は,織布,不織布,多孔性フィルである。特に,液透過性材料としては,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
また,液不透過性材料の例は,ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルムである。特に,液不透過性材料としては,微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0040】
なお,ウエストベルト4の内側シート部41と外側シート部42は,別個独立したシート材で形成されていてもよい。また,内側シート部41と外側シート部42が別個のシート材である場合,両者は異なる材料で構成されたものであってもよい。
【0041】
なお,内側シート部41と外側シート部42は,必ずしもウエストベルト4の最外層に位置するものでなくてもよい。例えば,内側シート部41の肌当接面側に,さらに他のシート材が配置されていてもよい。また,外側シート部42の肌非当接面側に,さらに他のシート材が配置されていてもよい。
【0042】
(1−1−2.クッション形成シート部)
図3に示されるように,内側シート部41と外側シート部42の層間には,クッション形成シート部43が位置している。クッション形成シート部43は,内側シート41の内向面と間欠的に接合され,内側シート41との間に空間を形成するためのものである。この点については後述する。
【0043】
図3に示された例において,クッション形成シート部43は,内側シート部41と外側シート部42部とは別個に形成されたものであるが,内側シート部41と外側シート部42と一体的に形成されたものであってもよい。例えば,クッション形成シート部43は,内側シート部41を肌非当接面側に折り返すことにより形成されたものであってもよい。
【0044】
クッション形成シート30は,例えば不織布で形成されることが好ましい。クッション形成シート30の不織布は,親水性不織布であってもよいし,撥水性不織布であってもよい。
【0045】
(1−1−3.ウエスト伸縮材)
図3に示されるように,外側シート部42とクッション形成シート部43の間には,複数のウエスト伸縮材44が配置されている。ウエスト伸縮材44は,図1に示されるように,ウエストベルト4のウエスト周り端縁に沿う方向に延びている。ウエスト伸縮材44は,外側シート部42とクッション形成シート部43の間に挟まれるようにして伸長状態で固定されている。
【0046】
ウエスト伸縮材44は,外側シート部42とクッション形成シート部43の間に,例えば,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた接着方法により接着されてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により接着されていてもよい。
【0047】
また,複数のウエスト伸縮材44は,ウエストベルト4の形状に応じて湾曲した状態で,固定されるものであってもよい。例えば,図1に示された例において,ウエストベルト4は,ウエスト周り端縁は,直線状に形成されている。このため,ウエストベルト4のウエスト周り端縁近傍に位置するウエスト伸縮材44は,ウエスト周り端縁に沿うようにして,直線的な状態で固定されている。一方,ウエストベルト4は,股下部側の端縁の一部が,股下部が存在する方向に向かって膨出した円弧状となっている。このため,ウエストベルト4の股下部側端縁近傍に位置するウエスト伸縮材44は,股下部側端縁の形状に沿うようにして,湾曲している。このように,複数のウエスト伸縮材44の一部を,湾曲した形状とすることにより,ウエストベルト4のフィット性を向上させることができる。
【0048】
また,ウエストベルト4の肌当接面側に吸収体3が位置する場合,ウエストベルト4に設けられたウエスト伸縮材44は,吸収体3が固定される箇所において,伸縮性が発言しないように構成されていることが好ましい。例えば,ウエストベルト4と吸収体4が重畳する箇所においては,ウエスト伸縮材44を配置しないか,ウエスト伸縮材をカットすることが好ましい。これにより,ウエスト伸縮材44の収縮力により吸収体3が歪んでしまうという不具合を解消でき,吸収体3と着用者の肌のフィット性を高めることができる。
【0049】
ウエスト伸縮材44の素材としては,通常,糸状弾性ゴムが用いられる。このようなゴム材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,又はポリエステル等の公知の素材を用いることができる。
【0050】
(1−1−4.フルート構造)
図4は,ウエストベルト4のフルート構造を説明するために,ウエストベルト4の一部を抽出して描画した概略図である。図4においては,図中上側が肌当接面側であり,図中下側が肌非当接面側となっている。先述したとおり,ウエストベルト4では,肌当接面側から順に,内側シート部41,クッション形成シート部43,ウエスト伸縮材44,及び外側シート部42が,配置されている。
【0051】
図4(a)は,ウエスト伸縮材44が伸長しており,内側シート部41,クッション形成シート部43,及び外側シート部42が張り詰めた状態の例を示している。図4(a)に示されるように,内側シート部41とクッション形成シート部43は,間欠的に接合されている。すなわち,内側シート部41とクッション形成シート部43の間には,ウエストベルト4のウエスト周り端縁に沿う方向(ウエスト伸縮材の伸長方向)に,接合部431と非接合部432が連続して形成されている。
また,各接合部43はドット状に形成されており,複数の接合部43が前身頃1と後身頃3を繋ぐ方向(前後方向)に列をなして形成されている。
接合部43は,ウエスト周り端縁に沿う方向における間欠性を維持しつつ,内側シート部41とクッション形成シート部43を全体的に,接合するものであることが好ましい。また,接合部43は,ウエストベルト4のウエスト周り端縁から股下部側端縁に至るまで,形成されていることが好ましい。
【0052】
図4(b)は,図4(a)に示された状態から,ウエスト伸縮材44が収縮し,外側シート部42,クッション形成シート部43,及び内側シート部41が撓んだ状態の例を示している。図4(b)に示されるように,ウエスト伸縮材44が収縮すると,内側シート部41,クッション形成シート部43,及び外側シート部42が撓む。そして,内側シート部41とクッション形成シート部43は間欠的に接合されている。このため,ウエスト伸縮材44が収縮すると,クッション形成シート部43と内側シート部41の間の非接合部432に,空間Sが形成される。このように,クッション形成シート部43と内側シート部41の間に形成された空間Sは,クッションの機能を果たし,ウエストベルト4を柔軟にする。特に,空間Sが形成されることにより,ウエスト伸縮材44の固さが,着用者の肌に直接伝わりにくくなるため,ウエストベルト4が,着用者の肌に与える刺激が低下する。従って,使い捨ておむつの着用感を良好なものとすることができる。
【0053】
図5は,図4(b)に示さえたB−Bの線分において,ウエストベルト4を切断した状態を示す断面図である。図5においては,図中上側が肌非当接面側であり,図中下側が肌当接面側となっている。図5に示されるように,内側シート部41とクッション形成シート部43の間には,ウエストベルト4のウエスト周り端縁に沿う方向(ウエスト伸縮材の伸長方向)に,接合部431と非接合部432が連続して形成されている。そして,ウエスト伸縮材44が,収縮することにより,非接合部432に空間Sが形成される。
【0054】
(1−1−5.接合部)
図6は,クッション形成シート43と内側シート部41の間の接合部431の形態の例を概略的に示した図である。図6(a)に示す形態では,一定個数(図6(a)では7個)のドット状接合部431Aが,使い捨ておむつの前後方向に向かって一列に並び,接合部群431Bを形成している。複数の接合部群431Bは,左右方向及び前後方向に,一定間隔空けて間欠的に形成されている。図6(a)に示す例では,ドット状接合部431Aの集合である接合部群431Bを前後方向に配向しているため,着用者のウエスト周りの曲線的な形状におむつを追従させ易く,フィット性と着用感に優れている。さらに,接合部群431Bが円形状のドット状接合部431Aの集合体として形成されているため,触感が柔らかくなり,接合部431Aが肌に当たったとしても,着用者は痛みを感じにくくなっている。
【0055】
また,図6(b)に示されるように,一定個数(図10(b)では8個)のドット状接合部431Aを左右方向に二列に並べ,前後方向に延びる接合部群431Bを形成することとしてもよい。このように,ドット状接合部431Aを左右方向に二列に並べることにより,接合部における通気性が低下することを防止しつつ,接合部の接合強度を向上させることができる。このため,ウエストベルト4が左右方向に強く張引された場合であっても,内側シート部41がクッション形成シート43から剥離しにくくなる。
【0056】
図6(c)は,ドット状接合部431Aを,いわゆる千鳥状の規則的なパターンで配置した例である。このような千鳥状のパターンであっても,ウエスト伸縮材44の収縮作用によって,クッション形成シート43と内側シート部41の間に空間が生じる。ドット状接合部431Aを千鳥状に配置することにより,ウエストベルト4の触感が柔らかくなり,通気性も向上する。
【0057】
図6(d)は,線状接合部431Cを,格子状に配置した例である。このように,線状接合部431Cを格子状に配置することで,線状接合部431Cに周囲を囲われた非接合箇所に空間が生じ,内側シート部41の肌当接面側が,略矩形型に盛り上がる。盛り上が凸部は,肌触りが良好であり,クッション性も非常に高くなっている。
【0058】
また,図6(e)に示されるように,線状接合部431Cを,クッション形成シート43と内側シート部41ほぼ全体にわたって形成することとしてもよい。このような形態でも,本発明の効果であるウエスト開口部近傍の柔軟性とクッション性を得ることができる。
【0059】
(1−2.吸収性本体)
次に,図7を用いて,吸収性本体30の構造について説明する。図7は,図1のC−Cの線分において,吸収性本体30を切断した状態の例を示す断面図である。図7に示されるように,吸収性本体30は,吸収体32と,トップシート33と,バックシート34と,カバーシート35と,サイドシート36と,立体ギャザー伸縮材37を基本構成としている。
【0060】
(1−2−1.吸収体)
吸収体32は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体32は,液透過性のトップシート33と,液不透過性のバックシート34の間に配置される。吸収体32は,トップシート33を透過した液体を吸収する機能を有し,吸収性材料により構成される。
【0061】
吸収体32を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用することができる。吸収性材料としては,例えば,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしても良い。また,吸収性材料には,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成され,用いられる。
【0062】
(1−2−2.トップシート)
トップシート33は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体32へ透過させるための部材である。このため,トップシート33は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート33は,吸収体32の肌当接面側を被覆するように配置される。
【0063】
トップシート33を構成する不透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0064】
(1−2−3.バックシート)
バックシート34は,トップシート33を透過し吸収体32に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート34は,液不透過性材料によって構成される。そして,バックシート34は,吸収体32の底面からの液漏れを防止するため,吸収体32を肌非当接面側から被覆する。
【0065】
バックシート34を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0066】
(1−2−4.カバーシート)
カバーシート35は,バックシート34を補強し,かつ,その手触りを良くするための部材である。カバーシート35は,バックシート34の肌当接面側に貼り合わせられる。カバーシート35を構成する材料としては,織布や不織布が用いられる。特に,カバーシート35を構成する材料として,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステルのような熱可塑性樹脂からなる不織布又は湿式不織布を用いることが好ましい。
【0067】
(1−2−5.サイドシート)
サイドシート36は,吸収体32の両側縁部に沿って,トップシート33の表面側と,カバーシート35の表面側に接合され,立体ギャザーを形成するための部材である。サイドシート36は,吸収体32に内部側の先端縁が折り返されて,折返した部分に立体ギャザー伸縮材37が伸長状態で固定される。これにより,立体ギャザー伸縮材37の収縮力を利用して,サイドシート36の吸収体内部側の先端縁が起立し第1の立体ギャザー36aが形成される。一方,サイドシート36の吸収体外側の先端部分と,カバーシート35の間にも立体ギャザー伸縮材37が伸長状態で固定されている。これにより,立体ギャザー伸縮材37の収縮力を利用して,サイドシート36の吸収体外側の先端縁が起立し第2の立体ギャザー36bが形成される。第1の立体ギャザー36a及び第2の立体ギャザー36bは,吸収体32の両側縁部に沿って起立し,着用者が排泄した尿の横漏れを防止する。
【0068】
サイドシート36は,従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば,サイドシート36を構成するシート材としては撥水性シートを採用することが好ましい。撥水性シートとしては,例えば,カードエンボスやスパンボンド等の製法により得られた不織布シートを使用することができ,特に防水性が高いSMSやSMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0069】
立体ギャザー伸縮材37には,通常,糸状弾性ゴムが用いられる。このようなゴム材としては,スチレン系ゴム,オレフィン系ゴム,ウレタン系ゴム,エステル系ゴム,ポリウレタン,ポリエチレン,ポリスチレン,スチレンブタジエン,シリコーン,ポリエステル等の素材を用いることができる。なお,伸縮材の形成材料は必ずしも,これらの材料に限定されるものではなく,例えば熱可塑性エラストマー,プラスチックシート,ゴムシート等の伸縮性を有する公知のものを用いることができる。
【0070】
(2.第2の実施形態)
次に,図8〜図10を参照して,本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るベルト型の使い捨ておむつは,環状ウエストベルト4bを備える。環状ウエストベルト4bとは,後身頃又は前身頃の両側側縁から延在した帯状のウエストベルトが,一箇所又は二箇所以上の接着部位において予め接合され,環状となったものを意味する。環状ウエストベルト4bは,着用者の頭部と両腕部を通って腰周りに取付けられるか,着用者の両脚部を通って腰周りに取付けられる。
【0071】
なお,第2の実施形態に関しては,上記した第1の実施形態異なる点を中心に説明を行い,上記した第1の実施形態と同一の部分については説明を割愛する。すなわち,第1の実施形態と第2の実施形態は,ウエストベルトが,帯状であるか環状であるかの点において異なる。一方,第1の実施形態と第2の実施形態は,ウエストベルトのフルート構造,及び吸収性本体の構造において同様の構成を有している。
【0072】
図8は,環状ウエストベルト4bを備えるベルト型の使い捨ておむつの展開図である。図8に示されるように,環状ウエストベルト4bは,着用者の腹部側に位置する腹部区域5と,着用者の背部側に位置する背部区域6を有する。腹部区域5と背部区域6は一箇所又は二箇所以上の接着部位において予め接合されることにより,環状をなしている。従って,着用者は,腹部区域5と背部区域6によって形成された環の中に,身体を通すことにより,環状ウエストベルト4bを取り付けることができる。
上述した通り,ウエストベルトにはウエスト伸縮材が配置され伸縮性を有しており,ウエストベルトの締め付け具合を調整しなくても,ある程度の寸法変化に対応できるため,予め環状に形成することができる。環状ウエストベルト4bは,立ったまま片足ずつ上げてウエストベルトを履くことができる者であれば,上述した帯状ウエストベルト4aのようにウエストベルト位置を合わせなくても良いため,おつむの交換作業がスムーズになるという利点がある。
【0073】
図8に示された例では,腹部区域5の両側縁部と背部区域6の両側縁部に,接着部57が位置している。このため,環状ウエストベルト4bの腹部区域5と背部区域6は,両側縁部の接着部56によって,剥離できないように接着されている。接着部56においては,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた接着方法により接着されてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により接着されていてもよい。
【0074】
また,図8に示されるように,環状ウエストベルト4bの腹部区域5の肌非当接面側には,調節シート52を設けることとしてもよい。調節シート52の一端部には調節シート接合部53が設けられており,この調節シート接合部52によって,調節シート52と腹部区域5の肌非当接面が剥離できないように接合されている。一方,調節シート52の他端部(先端部)には,調節シート52の外側へ向かって延出した摘み部56が形成されている。なお,以下では,調節シート52に関し,調節シート接合部53が設けられた側の端部を接合端と称し,摘み部56が設けられる側の端部を先端部と称す。
【0075】
図9は,図8に示された使い捨ておむつの調節シート52を開いた状態を示している。例えば,調節シート52の先端部に形成された摘み部56を摘持し,調節シート52の固定端部側へ移動させることにより,調節シート52は,調節シート接合部53をヒンジとして,調節シート52が開かれた状態となる。
【0076】
図9に示されるように,調節シート52が開かれた状態において,環状ウエストベルト4bの腹部区域5には,調節シート接合部53に隣接するようにして,環状ウエストベルト4bウエスト周り端縁から股下部側の端縁に至るまで切断可能な切断誘導線51が設けられている。すなわち,切断誘導線51は,調節シート52が閉じられた状態において,調節シート52の先端部が存在する側において,調節シート接合部53に隣接している。なお「隣接する」とは,例えば,調節シート接合部53と切断誘導線51の間隔が,20mm以内であることを意味する。
【0077】
切断誘導部51としては,例えば,環状ウエストベルト4bウエスト周り端縁から股下部側の端縁まで設けられたミシン目線を採用することができる。この場合,ミシン目線に沿って環状ウエストベルト4bを裂くことにより,環状ウエストベルト4bを破断させることができる。また,切断誘導部51は,剥離可能な弱粘着性の粘着剤で,剥離している2枚のシートを接合したものであってもよい。この場合,弱粘着性の粘着剤に沿って2枚のシートを再び剥離させることにより,環状ウエストベルト4bを破断させることができる。このような,切断誘導部51を設けることにより,環状ウエストベルト4bを着用者の腰周りから取り外す作業が簡易になる。
【0078】
また,図9に示されるように,調節シート52の先端部側の内向面(調節シートが閉じられた状態において腹部区域5と対向する面)には,第1の係合手段54が設けられていることが好ましい。第1の係合手段54は,腹部区域5の肌非当接面側に係合可能となっている。例えば,調節シート52の第1の係合手段54にフック材(雄部材)を設け,腹部区域5の肌非当接面側にはループ材(雌部材)を設けることにより,フック材とループ材の機械的結合により固定を行うファスニング機構を構成することとしてもよい。また,第1の係合手段54としては,その他接着剤や粘着剤を採用することもできる。
【0079】
また,図9に示されるように,腹部区域5の肌非当接面には,調節シート52の内向面に係合するための第2の係合手段55を設けることとしてもよい。第2の係合手段55は,例えば,切断誘導線51に隣接して(間隔が20mm以内となるように)設けられることが好ましい。例えば,第2の係合手段55にフック材(雄部材)を設け,調節シート52の内向面にループ材(雌部材)を設けることにより,フック材とループ材の機械的結合により固定を行うファスニング機構を構成することとしてもよい。また,第2の係合手段55としては,その他接着剤や粘着剤を採用することもできる。
【0080】
本発明の第2の実施形態は,上記構成を有することにより,環状ウエストベルト4bの調節機構を備えることができる。すなわち,通常,ウエストベルトを帯状に形成した場合,その締め付け力や取り付け位置を微調整することはできない。
そこで,本発明の第2の実施形態は,環状ウエストベルト4bに,切断誘導部51と調節シート53を設けることにより,ベルトの締め付け力や取り付け位置を微調整するこができるように構成した。
【0081】
ここで,図10を参照して,環状ウエストベルト4bの調節機構について説明する。図10は,図8に示されたD−Dの線分において,環状ウエストベルト4bを切断した状態を示す断面図である。
まず,環状ウエストベルト4bの調整作業を行うに際し,まず,切断誘導部51に沿って,環状ウエストベルト4bを破断させる。すると,図10に示されるように,環状ウエストベルト4bの一部が破断する。
このように,環状ウエストベルト4bの一部が破断した状態において,調節シート52の先端部を摘持し,調節シート52の先端部に設けられた第1の係合手段54を貼り合わせる位置を調節する。この調節シート52第1の係合手段54を張り合わせる位置によってウエストベルトの締め付け力や取り付け位置を微調整することが可能である。
また,調節シート52の張り合わせ位置を調節する際に,腹部区域5の肌非当接面に設けられた第2の係合手段55を利用することもできる。例えば,第2の係合手段55を利用して,一旦,第2の係合手段55を介して調節シート52と腹部区域5を貼りあわせ,調節シート52を仮止めし,その後,調節シート52の第1の係合手段54を利用して,調節シート52の貼り付け位置を決定することとしてもよい。
【0082】
また,環状ウエストベルト4bが,第1の係合手段54と第2の係合手段55を両方持つ場合,腹回りのベルトの寸法は,第1の係合手段54の係合位置によって調整することができる。そして,第2の係合手段55を調節シート52の内向面に係合することにより,環状ウエストベルト55の腹部区域5における第1の係合手段54の係合位置と第2の係合手段55の間の領域が,自由に動き回らないように固定することができる。
【0083】
さらに,第1の係合手段54と第2の係合手段55の係合位置を決める際,第1の係合手段54と第2の係合手段55の係合位置を調節することにより,その間の領域におけるウエスト伸縮材44の伸長状態を調節することが可能である。例えば,図10に示されるように,第1の係合手段54と第2の係合手段55の係合位置の間の領域Rは,ウエスト伸縮材44の伸長状態を調節可能な領域となる。例えば,第1の係合手段54と第2の係合手段55の間隔をやや近くなるように調節し,ウエスト伸縮材44がやや弛緩した状態でとなるように,固定することで,クッション形成シート43によって形成される空間がより広がり易くなる。従って,環状ウエストベルト4bの腹部に当たる箇所の柔らかさが向上し,快適に着用することができるようになる。
【0084】
上記した通り,本発明の第2の実施形態は,環状ウエストベルト4bの調節機構を備えている。ただし,本発明の第2の実施形態は,環状ウエストベルト4bの調節機構の他,第1の実施形態において説明したフルート構造をも備えていることはいうまでもない。
【0085】
次に,図11を参照して,環状ウエストベルト4bを備えるベルト型使い捨ておむつの他の形態について説明する。
図11は,環状ウエストベルト4bの断面形状の例を示している。図11に示された環状ウエストベルト4bは,腹部区域5に設けられた一箇所の接着部57において,帯状のウエストベルトを接着し,環状をなしたものである。この腹部区域5に設けられた接着部57は,切断誘導部51としても機能する。すなわち,接着部57においては,接着されたシート層が,剥離可能に接着されており,この接着部57においてシート層を剥離することにより,環状ウエストベルト4bを破断させることができるようになっている。接着部57は,粘着性の弱いホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた接着方法により接着されてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着によって接着されていてもよい。
【0086】
図11に示された例のように,環状ウエストベルト4bの接着部57を腹部区域5の一箇所にだけ設けることにより,接着部57を設ける箇所を減らすことができ,環状ウエストベルト4b全体の強度を向上させることができ,また,その外観が美麗なものとなる。また,接着部57を切断誘導部51としても機能させることにより,環状ウエストベルト4bにミシン目等を設ける必要がなくなるため,製造工程を減らすことができ,しかも環状ウエストベルト4b全体の強度向上に繋がる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は,ベルト型の使い捨ておむつに関するものである。このため,本発明は,介護や育児に関する産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0088】
1 前身頃
2 後身頃
3 股下部
4 ウエストベルト
4a 帯状ウエストベルト
4b 環状ウエストベルト
5 腹部区域
6 背部区域
40 アウターシート
40a 折返線
41 内側シート部
42 外側シート部
43 クッション形成シート部
431 接合部
432 非接合部
44 ウエスト伸縮材
45 ベルト係合手段
51 切断誘導部
52 調節シート
53 調節シート接合部
54 第1の係合手段
55 第2の係合手段
56 摘み部
57 接着部
30 吸収性本体
31 本体係合手段
32 吸収体
33 トップシート
34 バックシート
35 カバーシート
36 サイドシート
36a 第1の立体ギャザー
36b 第2の立体ギャザー
37 立体ギャザー伸縮材
100 使い捨ておむつ
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃(1)と,後身頃(2)と,前記前身頃(1)と前記後身頃(2)の間に位置する股下部(3)を有し,
前記前身頃(1)又は前記後身頃(2)いずれか一方の両側方に延在するウエストベルト(4)を備え,
前記ウエストベルト(4)を着用者のウエスト周りに取り付け,前記前身頃(1)又は前記後身頃(2)いずれか他方を,前記ウエストベルト(4)に結合することにより装着される使い捨ておむつであって,
前記ウエストベルト(4)は,着用者の肌に当接する内側シート部(41)と,前記内側シート部(41)の肌非当接面側に位置する外側シート部(42)を有し,
前記内側シート(41)と前記外側シート部(42)の間には,クッション形成シート部(43)が配置され,
前記外側シート部(42)と前記クッション形成シート部(43)の間には,前記ウエストベルト(4)のウエスト周り端縁に沿う方向に,複数のウエスト伸縮材(44)が,伸長状態で固定されており,
前記クッション形成シート(43)は,前記内側シート部(41)の内向面に対し,前記ウエストベルト(4)のウエスト周り端縁に沿う方向に,接合部と非接合部が連続するように,間欠的に接合されている
使い捨ておむつ。

【請求項2】
前記内側シート部(41)は,前記外側シート部(42)に相当するアウターシート(40)を,肌当接面側に折り返すことにより形成されたものである
請求項1に記載の使い捨ておむつ。

【請求項3】
前記ウエストベルト(4)は,前記股下部(3)側の端縁の少なくとも一部が,前記股下部(3)が存在する方向に向かって膨出する円弧状となっており,
前記複数のウエスト伸縮材(44)の少なくとも一部は,前記股下部(3)側の端縁の円弧に沿う方向に湾曲して,前記外側シート部(42)と前記クッション形成シート部(43)の間に固定されている
請求項1又は請求項2に記載の使い捨ておむつ。

【請求項4】
前記ウエストベルトは(4)は,前記前身頃(1)又は前記後身頃(2)いずれか一方の両側方に延在する帯状のウエストベルト(4a)である
請求項1から請求項3のいずれかに記載の使い捨ておむつ。

【請求項5】
前記ウエストベルト(4)は,予め環状に形成された環状ウエストベルト(4b)である
請求項1から請求項3のいずれかに記載の使い捨ておむつ。

【請求項6】
前記環状ウエストベルト(4b)は,着用者の腹部側に位置する腹部区域(5)と,着用者の背部側に位置する背部区域(6)に区分され,
前記腹部区域(5)には,前記環状ウエストベルト(4b)を,前記ウエスト周り端縁から前記股下部(3)側の端縁に至るまで切断可能な,切断誘導部(51)が形成されている
請求項5に記載の使い捨ておむつ。

【請求項7】
前記腹部区域(5)の肌非当接面側には,調節シート(52)が設けられ,
前記調節シート(52)は,その一端部が,前記腹部区域(5)の肌非当接面側に接合されており,
前記調節シート(52)の一端部を前記腹部区域(5)に接合する調節シート接合部(53)は,前記切断誘導部(51)に沿う方向に,前記切断誘導部(51)に隣接して設けられており,
前記調節シート(52)は,その他端部に,前記調節シート(52)を前記腹部区域(5)の肌非当接面側に係合するための第1の係合手段(54)を有する
請求項6に記載の使い捨ておむつ。

【請求項8】
前記腹部区域(5)の肌非当接面側には,前記腹部区域(5)の肌非当接面側を前記調節シート(52)の内向面に係合するための第2の係合手段(55)が設けられている
請求項7に記載の使い捨ておむつ。

【請求項9】
前記調節シート(52)の他端部には,前記調節シート(52)の外側に向かって突起した摘み部(56)が設けられている
請求項7又は請求項8に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−70711(P2013−70711A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209971(P2011−209971)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(312013310)王子ネピア株式会社 (21)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】