説明

ベルト張力調整装置

【課題】ベルトコンベヤのベルトを容易に着脱することができるベルト張力調整装置を提供する。
【解決手段】ベルト張力調整装置1は、駆動ローラ3と、一対のスナップローラ2a、2bと、該一対のスナップローラ2a、2bを一方の端部に有する一対の円弧状のアーム4a、4bと、該アーム4a、4bの他方の端部に配設された支持歯車5a、5bと、該支持歯車5a、5bの一方に配設されたギヤボックスと、該ギヤボックスに連結されたレバー7とを備えてなり、ベルト12は、一対のスナップローラ2a、2bと駆動ローラ3とに掛け渡され、アーム4a、4bは、レバー7の動作に伴い、ギヤボックスを介して一対の支持歯車5a、5bが同時に動くことで開閉するものであり、アーム4a、4bの開閉によりスナップローラ2a、2bがベルト12を駆動ローラ3に向けて付勢する力を調整することでベルト12の張力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルトコンベヤのベルトの着脱に用いるベルト張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にベルトコンベヤは、テンションローラにより張力を加えられた無端ベルトを駆動プーリに接触させ、駆動しているので、ベルトの交換や洗浄を行なう時には少なくとも駆動部の支持機構や関連する連結部を分解した上でベルトを取外す必要がある。特に、食品や医薬品の搬送ラインでは、ベルトの表面、裏面およびローラに付着、堆積した微細なごみや粉塵が製品内や包装品内に混入しないよう取除き、清潔に保つ必要がある。そのため、目に見えるごみや粉塵の付着が認めらなくても少なくとも作業の終了時に毎日1回、ごみや粉塵の付着がある場合はその都度コンベヤからベルトを外して清掃、水洗いをする必要性がある。コンベヤの分解に際し、コンベヤの脚を片持ち式にすること、下面のベルトを支持するリタンローラを落しこみ式にすること等により、リタンローラの着脱は容易に行なえるようになっている。
【0003】
しかし、ベルトの着脱にはベルトが接触している他のプーリやローラ等を分解した上で、ベルトを取り外さなくてはならず、各部を洗浄した後に、全ての分解箇所を再組立してコンベヤを復旧しているので、コンベヤの清掃のためのベルトの着脱作業に多大の労力と時間の投入を余儀なくされている。
【0004】
コンベヤのベルトの着脱作業を軽減するために、例えば、キャッチクリップにより容易にコンベヤフレームに対して着脱することができる駆動ローラユニットを用いた小型ベルトコンベヤが知られている(特許文献1参照)。また、駆動プーリ、テークアップ付き絞りプーリ及び緩め絞りプーリからなる駆動ユニットを取付けたベルトコンベヤにおいて、駆動ユニットの左右側板にキャッチクリップを固着して緩め絞りプーリの軸端に掛け止めるようにしたベルトコンベヤが知られている(特許文献2参照)。これはボルト、ナットを使用せずに、駆動ユニットの側板に設けた切欠き(長穴、窓孔、落とし込み等を含む)に絞りプーリ軸と緩め絞りプーリ軸をそれぞれ差込み設け、切欠きから突出する緩め絞りプーリ軸端を側板に固着したキャッチクリップ(パッチン錠)で係止することにより、絞りプーリと緩め絞りプーリの着脱操作を容易としたベルトコンベヤである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−80717号公報
【特許文献2】特開2005−212918号公報(段落0005、段落0006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では駆動ローラユニットをコンベヤフレームに対して着脱することでベルト自体の着脱は容易になるものの、駆動ローラや駆動用モータユニット、板ばね、収納フレームを搭載したローラユニット全体をコンベヤフレームから分離するにはローラユニット全体が、キャッチクリップでコンベヤフレームに対して着脱可能な軽量小型であることが必要であり、この技術は小型ベルトコンベヤに適用が限定されるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の技術ではキャッチクリップ(パッチン錠)で係止する対象が、駆動ローラユニット全体ではなく、絞りプーリまたは緩め絞りプーリであるので、大型機にも適用可能である。しかし、ベルトの着脱に際しベルトを緩めることができる範囲は、キャッチクリップの作動範囲に限定されるため、着脱に十分なベルトの緩みを得られないおそれがある。また、絞りプーリまたは緩め絞りプーリをキャッチクリップ(パッチン錠)で係止するため、運転時にキャッチクリップの張力がベルトに常時負荷されることになり、ベルトが短寿命となるおそれがある。
【0008】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、工具を使わず、ベルトコンベヤのベルトを容易に着脱することができるベルト張力調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のベルト張力調整装置は、ベルトコンベヤに装着され、ベルトコンベヤのベルトの張力を調整するベルト張力調整装置であって、駆動ローラと、上記ベルトを上記駆動ローラに向けて付勢する一対のスナップローラと、該一対のスナップローラを一方の端部に有する一対の円弧状のアームと、該アームの他方の端部に配設され、該アームを回転自在に支持する一対の支持歯車と、該支持歯車の一方に配設されたギヤボックスと、該ギヤボックスに連結されたレバーとを備えてなり、上記ベルトは、上記一対のスナップローラと上記駆動ローラとに掛け渡され、上記一対の円弧状のアームは、上記レバーの動作に伴い、上記ギヤボックスを介して上記一対の支持歯車が同時に動くことで開閉するものであり、上記レバーの動作に伴うアームの開閉により、上記一対のスナップローラが上記ベルトを上記駆動ローラに向けて付勢する力を調整することで、上記ベルトの張力を調整することを特徴とする。
【0010】
上記ベルト張力調整装置は、上記アームを所定の位置で固定するカムレバーを備えてなることを特徴とする。また、上記レバーの作動角度は30°以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記ベルトの裏面にV桟を溶着し、上記駆動ローラにV溝を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のベルト張力調整装置は、駆動ローラと、一対のスナップローラと、該一対のスナップローラを一方の端部に有する一対の円弧状のアームと、該アームの他方の端部に配設された一対の支持歯車と、該支持歯車の一方に配設されたギヤボックスと、該ギヤボックスに連結されたレバーとを備えてなり、上記ベルトが一対のスナップローラと駆動ローラとに掛け渡され、上記アームは、レバーの動作に伴いギヤボックスを介して一対の支持歯車が同時に動くことで開閉するものであり、該アームの開閉によりスナップローラがベルトを駆動ローラに向けて付勢する力を調整することでベルトの張力を調整するので、駆動ローラを含む付属設備を分解することなく、ワンタッチ操作で、ベルトをスナップローラおよび駆動ローラの拘束から解放させることができ、ベルトをベルトコンベヤから容易に着脱することができる。
【0013】
また、ベルト張力調整装置は、上記アームを所定の位置で固定するカムレバーを備えてなるので、該カムレバーでアームを固定することで、ベルト駆動時においてアーム位置が変動することがない。また、上記レバーの作動角度は30°以下であるので、レバーを容易に操作することができる。
【0014】
また、上記ベルトの裏面にV桟を溶着し、上記駆動ローラにV溝を設けるので、ベルトを装着する場合の装着位置の目安にすることができるとともに、ベルトを装着後のベルトの蛇行の発生を抑制する効果を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のベルト張力調整装置を備えるベルトコンベヤ全体概要図である。
【図2】本発明のベルト張力調整装置を示す正面図である。
【図3】本発明のベルト張力調整装置を示す側面図である。
【図4】本発明のベルト張力調整装置の作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のベルト張力調整装置を図面に基づいて説明する。図1は本発明のベルト張力調整装置を備えるベルトコンベヤ全体概要図である。図1に示すように、本発明のベルト張力調整装置1は、ベルトコンベヤ11の中央に配設され、ベルト12は、ヘッドプーリ11a、一方のスナップローラ2b、駆動ローラ3、他方のスナップローラ2a、およびテールプーリ11bの順に掛け渡されている。これらのスナップローラ2a、2bは、ベルト張力調整装置1により所定の位置に保持され、ベルト12に所定の張力を付与し、駆動ローラ3に押し付ける。駆動ローラ3に押し付けられたベルト12は、駆動ローラ3の駆動により走行する。
【0017】
図2は本発明のベルト張力調整装置を示す正面図、図3は本発明のベルト張力調整装置を示す側面図である。図2および図3に示すように、本発明のベルト張力調整装置1は、駆動ローラ3と、一対のスナップローラ2a、2bと、この一対のスナップローラ2a、2bを一方の端部に有する一対の円弧状のアーム4a、4bと、この一対の円弧状のアーム4a、4bの他方の端部に配設され、アーム4a、4bを回転自在に支持する支持歯車5a、5bと、この支持歯車5a、5bの一方に配設されたギヤボックス6と、このギヤボックス6に連結され、支持歯車5a、5bに対するスナップローラ2a、2bの作動角度(位置)を調整するレバー7と、アーム4aを所定の位置で固定するカムレバー8とから構成される。
【0018】
レバー7を動かすワンタッチ操作により、ギヤボックス6を介してレバー7に直結する支持歯車5aが所定の作動角度で動き、この支持歯車5aの動きと逆の方向へ支持歯車5bが同じ作動角度で同時に動き、2本の円弧状のアーム4a、4bを開閉させ、スナップローラ2a、2bの位置を調整できる。ベルト張力調整装置1は、レバー7の操作により、2本のスナップローラ2a、2bを介してベルト12を駆動ローラ3に向けて押し付ける(付勢する)力を調整することで、ベルト12の張力を調整することができる。
【0019】
図2に示すように、駆動ローラ3には、駆動モータプーリ9との間にチェーン10が掛け渡されている。駆動ローラ3は、駆動モータプーリ9の回転により走行するチェーン10により回転し、スナップローラ2a、2bにより付勢されたベルト12を走行させる。チェーン10の掛かっている駆動側を支点として、2本のスナッププーリ2a、2bおよび駆動ローラ3を片持ち式とし、レバー7の操作によりベルト12を緩めることにより反駆動側にベルト12を取り外すことができる。
【0020】
図4は本発明のベルト張力調整装置の作動状態を示す説明図であり、図3のA−B矢視図である。図4に示すように、本発明のベルト張力調整装置1において、ベルトを駆動ローラ3に付勢する力は、スナップローラ2a、2bの位置により調整され、スナップローラ2a、2bの位置はレバー7の作動によって調整される。レバー7の作動角度は、支持歯車5a、5bに対するスナップローラ2a、2bの作動角度に対応する角度であり、最大作動角度は30°である。作動角度0°のときは、レバー7はレバー7の位置にあり、この位置に対応するスナップローラ2a、2bの位置ではベルトに張力を付与できず、この状態でベルトを駆動ローラ3に押し付ける力がゼロとなる。作動角度30°のときは、レバー7はレバー7の位置にあり、この位置に対応するスナップローラ2a、2bの中心の位置は、支持歯車5a、5bの中心の真上に来る。このとき、ベルトを駆動ローラ3に押し付ける力が最大となる。通常は作動角度30°以下の条件でベルトに所定の張力を付与し、ベルトコンベヤ11の運転を行なうことができる。
【0021】
図1、図2および図4を参照して、本発明のベルト張力調整装置を用いるベルトコンベヤ11からベルト12を取り出す手順について説明する。ベルトコンベヤ11を停止し、ベルト12の走行停止を確認後、レバー7を作動角度0°の下限まで下方向に降ろし、スナップローラ2a、2bを介して駆動ローラ3に押し付けられていたベルト12を駆動ローラ3およびスナップローラ2a、2bの拘束から解放する。駆動ローラ3およびスナップローラ2a、2bの拘束から解放されたベルト12をベルトコンベヤ11から取り出す。このとき、ベルト駆動ローラ3を固定したままで、レバー7によるワンタッチ操作で、ベルト12を駆動ローラ3およびスナップローラ2a、2bの拘束から解放することができ、ベルトコンベヤ11からベルト12を取り出すことができる。このため、ベルト12を駆動ローラ3に摺動させる付属設備を分解する必要のある従来の方法に比べて、著しく作業が容易になる。
【0022】
本発明のベルト張力調整装置1を用いるベルトコンベヤ11にベルト12を取り付ける手順について説明する。レバー7を作動角度0°の下限まで下方向に降ろした状態で、ベルト12をベルトコンベヤ11に掛け渡し、次にレバー7を上方向に持ち上げて行き、スナップローラ2a、2bを介してベルト12を駆動ローラ3に押し付けて駆動ローラ3に摺動させる。次に、ベルトコンベヤ11を起動し、ベルト12が所定の走行状態になるようにレバー7の操作により張力を調整する。このとき、駆動ローラ3はベルト12を取り出す前の状態に固定されたままである。このため、ベルト12を駆動ローラ3に摺動させるための付属設備を組み立てる必要のある従来の方法に比べて、著しく作業が容易になる。
【0023】
ベルトのテンションストロークがスナップローラの可動範囲より長い場合は、ベルトの総長さに対しベルトの緩む割合が少ないので、ベルトの着脱を補助するために、従来用いられているヘッド部を持ち上げるベルト緩め装置を併用することが好ましい。これを併用することで、ベルトの総長さに対しベルトの緩む割合が少ない場合もベルトの着脱を容易に行なうことができる。
【0024】
ベルトを装着する場合、装着位置によっては、ベルトの蛇行が発生する場合もあり、蛇行抑制効果を持たせるとともに、ベルトの装着位置目安とするために、ベルト裏面にV桟を溶着し、駆動ローラ、ヘッドプーリおよびスリ板部にV溝を施すことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のベルト張力調整装置は、ワンタッチ操作で、ベルトをスナップローラおよび駆動ローラの拘束から解放させることができ、駆動ローラを含む付属設備を分解することなく、ベルトをベルトコンベヤから容易に着脱することができる。このため、産業界で用いられる大型または小型の各種ベルトコンベヤのベルト張力調整装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ベルト張力調整装置
2a、2b スナップローラ
3 駆動ローラ
4a、4b アーム
5a、5b 支持歯車
6 ギヤボックス
7 レバー
8 カムレバー
9 駆動モータ
10 チェーン
11 ベルトコンベヤ
12 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベヤに装着され、ベルトコンベヤのベルトの張力を調整するベルト張力調整装置であって、
該ベルト張力調整装置は、駆動ローラと、前記ベルトを前記駆動ローラに向けて付勢する一対のスナップローラと、該一対のスナップローラを一方の端部に有する一対の円弧状のアームと、該アームの他方の端部に配設され、該アームを回転自在に支持する一対の支持歯車と、該支持歯車の一方に配設されたギヤボックスと、該ギヤボックスに連結されたレバーとを備えてなり、
前記ベルトは、前記一対のスナップローラと前記駆動ローラとに掛け渡され、
前記一対の円弧状のアームは、前記レバーの動作に伴い、前記ギヤボックスを介して前記一対の支持歯車が同時に動くことで開閉するものであり、
前記レバーの動作に伴うアームの開閉により、前記一対のスナップローラが前記ベルトを前記駆動ローラに向けて付勢する力を調整することで、前記ベルトの張力を調整することを特徴とするベルト張力調整装置。
【請求項2】
前記ベルト張力調整装置は、前記アームを所定の位置で固定するカムレバーを備えてなることを特徴とする請求項1記載のベルト張力調整装置。
【請求項3】
前記レバーの作動角度は30°以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のベルト張力調整装置。
【請求項4】
前記ベルトの裏面にV桟を溶着し、前記駆動ローラにV溝を設けることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のベルト張力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285227(P2010−285227A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137969(P2009−137969)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(594159456)株式会社マキテック (21)
【Fターム(参考)】