説明

ベルト成型装置及び側端当接部

【課題】側端当接部を扱う際の作業効率を向上させるとともに、ベルトの製造不良を確実に軽減できるベルト成型装置、及び、このベルト成型装置に用いられる側端当接部を提供する。
【解決手段】ベルト成型装置は、帯状のベルトが成型される前の成型前ベルトBを加硫することによってベルトを成型する。耳金の少なくとも一部には、孔部が形成される。耳金は、孔部を覆う蓋部を有する。蓋部によって覆われた孔部には、耳金の外部と連通し、孔部よりも小さい連通孔部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア装置などに使用される帯状のベルトが加硫される前の成型前ベルトを加硫することによって、当該ベルトを成型するベルト成型装置、及び、このベルト成型装置に用いられる側端当接部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンベア装置などに使用される帯状のベルトは、一般的に、ベルト搬送機構によってベルト成型装置に搬送され、ベルト成型装置によって所定の長さづつ加硫されることによって成型される。
【0003】
このようなベルト成型装置は、ベルトが成型される前の成型前ベルトを載置する下側モールドと、下側モールドに載置された成型前ベルトを下側モールド側に向けて押圧する上側モールドと、成型前ベルトの側端を押圧する一対の側端当接部(いわゆる、耳金)と、耳金を成型前ベルトの側端に向けて移動させる一対のサイドモールドとを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
耳金は、サイドモールドと成型前ベルトの側端との間に配置され、ベルト搬送方向(すなわち、成型前ベルトの側端)に沿った棒状の金属により形成される。耳金は、ベルトの厚さやベルトの幅に対応するために、様々なサイズ(例えば、太さ)がある。
【0005】
具体的には、耳金は、下側モールドと上側モールドとの間に配置されることによって、下側モールドと上側モールドとの間隔を規制する。このため、ベルト成型装置は、耳金のサイズや一対のサイドモールド間に配置される本数によって、様々なサイズのベルトに対応できる。
【0006】
ところで、耳金が下側モールド、上側モールド及び一対のサイドモールドに挟まれているため、ベルトのサイズに合わせて耳金の大きさや本数等を変更する場合、各モールド間において耳金の出し入れ、すなわち、耳金を引き出すことや、各モールド間に耳金を挿入する必要がある。
【0007】
耳金の大きさや本数等を変更する場合、機械的な構成によって各モールド間において耳金を出し入れすることが難しく、作業者が各モールド間において耳金を出し入れしている。
【特許文献1】特開平9−272615号公報(第4−5頁、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術には、次のような問題があった。すなわち、耳金が棒状の金属によって形成されるため、耳金が重く、作業者が耳金を扱う際の作業効率が悪いという問題があった。
【0009】
これに対し、耳金に孔等を形成することによって、耳金を軽量化することが考えられる。しかし、耳金に孔等が形成された場合、耳金の強度が低下してしまい、下側モールドと上側モールドとの押圧力(プレス圧力)によって変形してしまう。
【0010】
また、耳金に孔等が形成された場合、成型前ベルトが加硫されている最中に、ベルトを構成するゴムの一部が孔等に入り込んでしまうことがある。孔等に入り込んだゴムの一部は、次に加硫成型される成型前ベルトに付着し、ベルトの製造不良が発生しまうことがある。
【0011】
そこで、本発明は、側端当接部を扱う際の作業効率を向上させるとともに、ベルトの製造不良を確実に軽減できるベルト成型装置、及び、このベルト成型装置に用いられる側端当接部の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、帯状のベルトが成型される前の成型前ベルト(成型前ベルトB)の一面(例えば、下側面B1)に当接する第1モールド(下側モールド10)と、前記成型前ベルトの他面(例えば、上側面B2)に当接する第2モールド(上側モールド20)と、前記成型前ベルトの側端(側端B3)に沿って設けられ、前記第1モールドと前記第2モールドとの間において前記側端に当接する棒状の側端当接部(耳金100)とを備え、前記成型前ベルトを加硫することによって前記ベルトを成型するベルト成型装置であって、前記側端当接部の少なくとも一部には、孔部(孔部110)が形成され、前記側端当接部は、前記孔部を覆う蓋部(蓋部120)を有し、前記蓋部によって覆われた前記孔部には、前記側端当接部の外部と連通し、前記孔部よりも小さい連通孔部(連通孔部130)が形成されることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、側端当接部の少なくとも一部に孔部が形成されることによって、側端当接部に孔部が形成されていない場合と比べて、耳金を軽量化できる。このため、作業者が耳金を扱う際の作業効率や安全性が向上する。
【0014】
また、側端当接部が孔部を覆う蓋部を有していることによって、成型前ベルトが加硫されている最中(加硫時)に、ベルトを構成するゴムの一部が孔部入り込むことを防止できる。このため、ベルトの製造不良を確実に軽減できる。
【0015】
さらに、蓋部によって覆われた孔部に連通孔部が形成されていることによって、蓋部によって覆われた孔部が密閉されることなく、加硫時に当該孔部内の空気が膨張した場合であっても、膨張した空気を側端当接部の外部に逃がすことができる。このため、加硫時に孔部から蓋部が外れることを防止できる。
【0016】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記側端当接部を前記側端に向けて移動させる第3モールド(サイドモールド30)と、前記第3モールドを移動させることによって前記側端当接部を前記側端に当接させる移動部(左右移動シリンダー40)とをさらに備えることを要旨とする。
【0017】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は2の特徴に係り、前記側端当接部は、前記第1モールドと当接する第1平面(底面100A)と、前記第1平面と対向し、前記第2モールドと当接する第2平面(上面100B)と、前記側端と接する側端平面(端側面100C)と、前記側端平面と対向し、前記側端平面の反対側に位置する非側端平面(非端側面100D)とを有し、前記孔部は、第1平面又は第2平面、非側端平面の何れかに設けられ、前記蓋部は、前記孔部が形成された第1平面又は第2平面、非側端平面の何れかを覆うことを要旨とする。
【0018】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、前記孔部は、前記第1平面から前記第2平面にかけて貫通し、前記蓋部は、前記第1平面を覆う第1蓋部(底面側蓋部121)と、前記第2平面を覆う第2蓋部(上面側蓋部122)とを有することを要旨とする。
【0019】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至4の特徴に係り、前記連通孔部は、前記蓋部に形成されることを要旨とする。
【0020】
本発明の第6の特徴は、帯状のベルトが成型される前の成型前ベルトを加硫することによって前記ベルトを成型するベルト成型装置に用いられるとともに、前記成型前ベルトの側端に沿って設けられ、前記側端に当接する側端当接部であって、前記側端当接部の少なくとも一部には、孔部が形成され、前記側端当接部は、前記孔部を覆う蓋部を有し、前記蓋部によって覆われた前記孔部には、前記側端当接部の外部と連通し、前記孔部よりも小さい連通孔部が形成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特徴によれば、側端当接部を扱う際の作業効率を向上させるとともに、ベルトの製造不良を確実に軽減できるベルト成型装置、及び、このベルト成型装置に用いられる側端当接部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明に係るベルト成型装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)ベルト成型装置の構成、(2)耳金の構成、(3)孔部の設定、(4)作用・効果、(5)変更例、(6)その他の実施形態、(7)比較評価について、説明する。
【0023】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0024】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
(1)ベルト成型装置の構成
まず、本実施形態に係るベルト成型装置1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るベルト成型装置1を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、ベルト成型装置1は、コンベア装置などに使用される帯状のベルトが成型される前の成型前ベルトBを加硫することによって、当該ベルトを成型する。なお、ベルトは、ベルト搬送機構(不図示)によってベルト成型装置1に搬送され、ベルト成型装置1によって所定の長さづつ加硫されることによって成型される。
【0027】
ベルト成型装置1は、フレームF内において、下側モールド10(第1モールド)と、上側モールド20(第2モールド)と,サイドモールド30(第3モールド)と、耳金100(側端当接部)とを備える。
【0028】
下側モールド10は、ベルト搬送機構によって搬送される成型前ベルトBを載置する。つまり、下側モールド10は、成型前ベルトBの下側面B1(一面)に当接する。
【0029】
上側モールド20は、下側モールド10に載置された成型前ベルトBを下側モールド10側に向けて押圧する。つまり、上側モールド20は、成型前ベルトBの上側面B2(他面)に当接する。なお、上側モールド20は、油圧又は空気圧式などの上下移動シリンダー(不図示)によって下側モールド10側に向けて移動する。
【0030】
サイドモールド30は、耳金100を成型前ベルトBの側端B3に向けて移動させる。つまり、サイドモールド30は、後述する耳金100の非端側面100Dに当接する。なお、サイドモールド30は、油圧又は空気圧式などの左右移動シリンダー40によって耳金100を側端B3側に向けて移動する。なお、左右移動シリンダー40は、側端B3に沿って所定間隔を置いて複数設けられる。
【0031】
(2)耳金の構成
次に、本発明の特徴である耳金100の構成について、図1〜図4を参照しながら説明する。なお、図2は、本実施形態に係る耳金100を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る耳金100を示す上面図(図2のA矢視図)である。図4は、本実施形態に係る耳金100を示す断面図(図3のB−B断面図)である。
【0032】
図1に示すように、耳金100は、成型前ベルトBの側端B3に沿って設けられ、棒状の角柱によって形成される。耳金100は、サイドモールド30によって側端B3側に押圧されることによって、下側モールド10と上側モールド20との間において側端B3に当接する。
【0033】
耳金100は、厚さ(太さ)によって、ベルトの厚さ(すなわち、成型前ベルトBの厚さ)を規定する。また、耳金100は、一対のサイドモールド30間に配置される本数によって、ベルトの幅(すなわち、成型前ベルトBの幅)を規定する。
【0034】
耳金100は、金属製であることが好ましい。例えば、耳金100としては、炭素鋼(SS材やSM材、HT材、BT鋼材、IF鋼鈑、SC材など)、ステンレス鋼、ステンレス合金、耐熱鋼、耐熱鋼合金、鋳鉄、鋳鋼、焼結合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、鉛、鉛合金、スズ、スズ合金、モリブデン、モリブデン合金、ベリリウム、ベリリウム合金、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、金、金合金、銀、銀合金、白金、白金合金などが挙げられる。
【0035】
耳金100の少なくとも一部には、複数の孔部110が形成される。耳金100は、複数の孔部110を覆う複数の蓋部120を有する。蓋部120によって覆われた孔部110には、孔部110よりも小さい連通孔部130が形成される。
【0036】
具体的には、図2〜図4に示すように、耳金100は、下側モールド10と当接する底面100A(第1平面)と、前記第1平面と対向し、上側モールド20と当接する上面100B(第2平面)と、側端B3と接する端側面100C(側端平面)と、前記側端平面と対向し、前記側端平面の反対側に位置する非端側面100D(非側端平面)とを有する。
【0037】
孔部110は、上述した何れかの面に設けられていればよく、底面100A又は上面100B、非端側面100Dの何れかに設けられることが好ましい。本実施形態では、孔部110は、底面100Aから上面100Bにかけて貫通する。
【0038】
孔部110は、円柱状に形成される。孔部110の底面100A側には、後述する底面側蓋部121が底面100Aと連なるように形成される底面側切欠部111が設けられる。孔部110の上面100B側には、後述する上面側蓋部122が上面100Bと連なるように形成される上面側切欠部112が設けられる。
【0039】
蓋部120は、孔部110が形成された底面100A又は上面100B、非端側面100Dの何れかを覆う。本実施形態では、蓋部120は、底面100Aを覆う底面側蓋部121(第1蓋部)と、上面100Bを覆う上面側蓋部122(第2蓋部)とを有する。
【0040】
蓋部120は、円盤状に形成され、一定の厚み(例えば、2.3mm)を有する。底面側蓋部121は、底面側切欠部111に嵌合することによって底面100Aと連なる。一方、上面側蓋部122は、上面側切欠部112に嵌合することによって上面100Bと連なる。
【0041】
蓋部120(底面側蓋部121及び上面側蓋部122)は、孔部110に溶接によって固定される。蓋部120は、耳金100と同一の金属によって形成されることが好ましいが、耳金100と異なる金属であっても勿論よい。
【0042】
連通孔部130は、耳金100の外部と連通する。連通孔部130は、蓋部120に形成される。本実施形態では、連通孔部130は、底面側蓋部121に形成される底面側孔部131と、上面側蓋部122に形成される上面側孔部132とによって構成される。
【0043】
ここで、孔部110は、必ずしも円柱状に形成される必要はなく、例えば、図5〜図7に示すように、角柱状に形成されていてもよい。この場合、蓋部120は、四角の板状に形成される。
【0044】
(3)孔部の設定
次に、孔部110の大きさや間隔、減肉率などについて、図6及び図7を参照しながら説明する。なお、孔部110の大きさや間隔、減肉率を分かり易く説明するために、孔部110が角柱状に形成されるものを例に説明する。
【0045】
耳金100は、下側モールド10と上側モールド20との間において、上側モールド20によって下側モールド10側に押圧(プレス)される。このため、耳金100は、下側モールド10と上側モールド20とのプレス圧力に耐えられる強度が必要である。
【0046】
従って、耳金100に対する孔部110の比率(減肉率)は、0.5〜95.0%であることが好ましい。特に、減肉率は、65〜90%であることが好ましい。減肉率は、
(減肉部位重量)/(減肉前耳金重量)×100
で算出される。なお、減肉部位重量とは、孔部110が形成される際の孔部110に対応する部位の重量を示す。減肉前耳金重量とは、耳金100に孔部110が形成される前の耳金100の重量を示す。
【0047】
具体的には、耳金100は、「耳金100の厚さ方向の耐力」、「耳金100の幅方向の耐力」、「耳金100の撓み量」を算出される。
【0048】
なお、耳金100の使用耐力は、
(プレスの使用最低圧力)×(断面積)
によって演算される。なお、耳金100の使用耐力とベルトの耐力とが同等となる地点を「SF(安全係数)=1」とする。
【0049】
(3−1)耳金100の厚さ方向の耐力
耳金100の厚さ方向(つまり、上下方向)の耐力は、
(厚さ方向におけるプレスの使用最低作用力)/{(w×p)−(I1×I2)} ・・・(式1)
によって演算される。なお、作用力とは、単位面積あたりの圧力を示す。また、図6に示すように、「w」は、耳金100の幅を示す。「p」は、孔部110の中心から隣接する孔部110の中心までのピッチを示す。「I1」は、耳金100の短手方向における孔部110の幅を示す。「I2」は、耳金100の長手方向における孔部110の幅を示す。
【0050】
この耳金100の厚さ方向の耐力については、機械工学便覧 デザイン偏 β2 日本機械学会編 page β2−44 表2−4に記載されている。
【0051】
(3−2)耳金100の幅方向の耐力
耳金100の幅方向(つまり、横方向)の耐力は、
(幅方向におけるプレスの使用最低作用力)/(n1×t) ・・・(式2)
によって演算される。なお、図6及び図7に示すように、「n1」は、孔部110の側端から隣接する孔部110の側端までの間隔を示す。「t」は、耳金100の厚さを示す。
【0052】
この耳金100の幅方向の耐力については、機械工学便覧 デザイン偏 β2 日本機械学会編 page β2−44 表2−4に記載されている。
【0053】
(3−3)耳金100の撓み量
耳金100の撓み量は、応力と比例する。
【0054】
具体的には、耳金100の断面係数は、
(耳金100の幅)×(耳金100の厚さ)/6 ・・・(式3−1)
によって演算される。
【0055】
耳金100のモーメントは、
(幅方向におけるプレスの使用均一加重)/(p/8)・・・(式3−2)
によって演算される。
【0056】
応力は、
(耳金100のモーメント)/(耳金100の断面係数)・・・(式3−3)
によって演算される。
【0057】
この耳金100の撓み量については、機械工学便覧 基礎偏 α3 頁α3−21〜 表3−21 No12モデルに記載されている。
【0058】
このように、耳金100は、上述した「耳金100の厚さ方向の耐力」、「耳金100の幅方向の耐力」、「耳金100の撓み量」の値が全て満たすように、孔部110の大きさや間隔、減肉率が設定される。
【0059】
(4)作用・効果
本実施形態によれば、耳金100の少なくとも一部に孔部110が形成されることによって、耳金100に孔部110が形成されていない場合と比べて、耳金100を軽量化できる。特に、大型のコンベア装置に対応する大型のベルト成型装置1に伴って、耳金100が長くなった場合には有効である。このため、作業者が耳金100を扱う際の作業効率や安全性が向上する。
【0060】
ところで、耳金100を軽量化するために、耳金100の長手方向で耳金100を複数に分割することが考えられる。しかし、耳金100が複数に分割されていると、加硫成型されたベルトの側端に、耳金100の分割部分(接合部分)の跡(例えば、隙間やがたつき)が残ってしまい、ベルトの品質が低下してしまう。例えば、ベルトの側端にがたつきがある場合、ベルト成型装置1の使用時に、ベルトに対して垂直に設置されるガイドローラーなどにベルトの側端が接して、摩耗が発生してしまうとともに、ベルトが破損(亀裂)することがある。
【0061】
このため、耳金100は、成型前ベルトBの側端B3に沿って棒状(長尺)の角柱によって形成されることが一般的である。従って、上述したように、耳金100の少なくとも一部に孔部110が形成されることによって、耳金100を軽量化できる。
【0062】
また、耳金100が孔部110を覆う蓋部120を有していることによって、成型前ベルトBが加硫されている最中(加硫時)に、ベルトを構成するゴムの一部が孔部110入り込むことを防止できる。このため、次に加硫成型される成型前ベルトBにゴムの一部が付着することなく、ベルトの製造不良を確実に軽減できる。
【0063】
さらに、蓋部120によって覆われた孔部110に連通孔部130が形成されていることによって、蓋部120によって覆われた孔部110が密閉されることなく、加硫時に当該孔部110内の空気が膨張した場合であっても、膨張した空気を側端当接部の外部に逃がすことができる。このため、加硫時に孔部110から蓋部120が外れることを防止できる。
【0064】
本実施形態によれば、耳金100を側端B3に向けて移動させるサイドモールド30が設けられていることによって、左右移動シリンダー40によって直接耳金100が押される場合と比べて、耳金100が撓みにくくなる。従って、ベルトの幅をさらに均一にでき、ベルトの製造不良をさらに軽減できる。
【0065】
本実施形態によれば、孔部110が底面100A又は上面100B、非端側面100Dの何れかに設けられる(すなわち、端側面100Cに設けられない)ことや、連通孔部130が蓋部120に形成されていることによって、加硫時に、ベルトを構成するゴムの一部が孔部110入り込みにくくできる。また、孔部110や蓋部120の形状が側端B3に付いてしまうことを抑制できる。このため、ベルトの製造不良をさらに軽減できる。
【0066】
(5)変更例
上述した実施形態に係る耳金100は、以下のように変更してもよい。なお、上述した実施形態に係る耳金100と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0067】
(5−1)変更例1
まず、変更例1に係る耳金100の構成について、図面を参照しながら説明する。図8は、変更例1に係る耳金100を示す図である。
【0068】
上述した実施形態に係る耳金100に形成される複数の孔部110は、底面100Aから上面100Bにかけて貫通する。これに対して、図8に示すように、変更例1に係る耳金100に形成される複数の孔部110は、耳金100を貫通しない。
【0069】
この場合、孔部110は、耳金100の何れかの面に設けられていてもよいが、特に、底面100A又は上面100B、非端側面100Dの何れかに設けられることが好ましい。
【0070】
(5−2)
次に、変更例2に係る耳金100の構成について、図面を参照しながら説明する。図9は、変更例2に係る耳金100を示す図である。
【0071】
上述した実施形態に係る耳金100に形成される複数の孔部110は、底面100Aから上面100Bにかけて貫通する。これに対して、図9に示すように、変更例1に係る耳金100に形成される複数の孔部110は、一方の先端面100Eから他方の先端面100Eにかけて貫通する。
【0072】
この場合、蓋部120は、一方の先端面100Eを覆う前側蓋部123と、他方の先端面100Eを覆う後側蓋部124とを有する。また、連通孔部130は、前側蓋部123に形成される前側孔部133と、後側蓋部124に形成される後側孔部134とによって構成される。
【0073】
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0074】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、上側モールド20は、下側モールド10に向かって移動するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、下側モールド10が上側モールド20に向かって移動してもよく、下側モールド10と上側モールド20とが互いに近づくように移動してもよい。
【0075】
また、耳金100は、サイドモールド30によって側端B3に向けて移動するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、左右移動シリンダー40によって直接押されることによって側端B3に向けて移動してもよい。
【0076】
また、孔部110は、円柱状又は角柱状に形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、三角柱状等であってよく、形状については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0077】
また、蓋部120は、孔部110に溶接によって固定されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、蓋部120の縁に雄ネジが形成され、孔部110の縁に雌ネジが形成され、蓋部120が孔部110にねじ込まれてもよい。
【0078】
また、蓋部120は、一定の厚みを有するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、一定の厚みを有していなくてもよい。
【0079】
また、連通孔部130は、蓋部120に形成されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、耳金100における孔部110が設けられていない面に形成されていてもよく、耳金100の外部と連通していればよいことは勿論である。
【0080】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0081】
(7)比較評価
以下において、本発明の効果をさらに明確にするために、以下の比較例及び実施例に係る耳金を用いて行った試験結果について説明する。具体的には、(7−1)製造不良評価、(7−2)耐久性及び作業性評価、(7−3)総合評価について説明する。なお、耳金は、表1に示す通りである。
【表1】

【0082】
(7−1)製造不良評価
まず、比較例1及び実施例1に係る耳金を用いてベルトを成型する際に、ベルトの製造不良が発生するか否かについて評価した。製造不良では、ベルト成型装置にて、各耳金を用いてベルトを成型し、ベルトを構成するゴムの一部が孔部入り込むか否かを評価した。
【表2】

【0083】
表2に示すように、比較例1に係る耳金を用いてベルトを成型した場合、ベルトを構成するゴムの一部が孔部入り込むことがあった。このため、次に加硫成型される成型前ベルトに付着し、ベルトの製造不良が発生しまうことがある。
【0084】
一方、実施例1に係る耳金を用いてベルトを成型した場合、ベルトを構成するゴムの一部が孔部入り込まなかった。このため、ベルトの製造不良を防止できることが判った。
【0085】
(7−2)耐久性及び作業性評価
次に、比較例2,3及び実施例2〜5に係る耳金を用いた場合において、耳金の耐久性及び作業性について評価した。耐久性は、ベルト成型装置にて、各耳金にプレス圧力が加えられることによって評価した。作業性は、作業者が各耳金を扱う、すなわち、各モールド間において耳金を出し入れすることによって評価した。
【表3】

【0086】
表3に示すように、耳金の減肉量が多いほど、作業性に優れることが判る。特に、耳金が2.4kg以上であることによって、作業性に優れることが判った。しかし、耳金の減肉量が多すぎると、プレス圧力に対して耳金が変形してしまうことがある。このため、耳金の材料によって変化するが、耳金の減肉率が、0.5〜95.0%であることが好ましいことが判った。特に、耳金の減肉率が、65〜90%であることが好ましいことが判った。
【0087】
(7−3)総合評価
以上のように、実施例1〜5に係る耳金は、比較例1〜3に係る耳金と比べて、ベルトの製造不良を防止できるとともに、耐久性及び作業性に優れていることが判った。一方、比較例2,3に係る耳金は、実施形態で説明した(式1)、(式2)、及び(式3(式3−1〜3−3))を満たしていないため、耐久性及び作業性を両立できないことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態に係るベルト成型装置1を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る耳金100を示す斜視図である(その1)。
【図3】本実施形態に係る耳金100を示す上面図(図2のA矢視図)である(その1)。
【図4】本実施形態に係る耳金100を示す断面図(図3B−B断面図)である(その1)。
【図5】本実施形態に係る耳金100を示す斜視図である(その2)。
【図6】本実施形態に係る耳金100を示す上面図(図5のC矢視図)である(その2)。
【図7】本実施形態に係る耳金100を示す断面図(図6のD−D断面図)である(その1)。
【図8】変更例1に係る耳金100を示す図である。
【図9】変更例2に係る耳金100を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1…ベルト成型装置、10…下側モールド(第1モールド)、20…上側モールド(第2モールド)、30…サイドモールド(第3モールド)、40…左右移動シリンダー40、100…耳金、100A…底面(第1平面)、100B…上面(第2平面)、100C…端側面(側端平面)、100D…非端側面(非側端平面)、100E…先端面、110…孔部、111…底面側切欠部、112…上面側切欠部、120…蓋部、121…底面側蓋部(第1蓋部)、122…上面側蓋部(第2蓋部)、123…前側蓋部、124…後側蓋部、130…連通孔部、131…底面側孔部、132…上面側孔部、133…前側孔部、134…後側孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のベルトが成型される前の成型前ベルトの一面に当接する第1モールドと、
前記成型前ベルトの他面に当接する第2モールドと、
前記成型前ベルトの側端に沿って設けられ、前記第1モールドと前記第2モールドとの間において前記側端に当接する棒状の側端当接部と
を備え、
前記成型前ベルトを加硫することによって前記ベルトを成型するベルト成型装置であって、
前記側端当接部の少なくとも一部には、孔部が形成され、
前記側端当接部は、前記孔部を覆う蓋部を有し、
前記蓋部によって覆われた前記孔部には、前記側端当接部の外部と連通し、前記孔部よりも小さい連通孔部が形成されるベルト成型装置。
【請求項2】
前記側端当接部を前記側端に向けて移動させる第3モールドと、
前記第3モールドを移動させることによって前記側端当接部を前記側端に当接させる移動部と
をさらに備える請求項1に記載のベルト成型装置。
【請求項3】
前記側端当接部は、
前記第1モールドと当接する第1平面と、
前記第1平面と対向し、前記第2モールドと当接する第2平面と、
前記側端と接する側端平面と、
前記側端平面と対向し、前記側端平面の反対側に位置する非側端平面とを有し、
前記孔部は、第1平面又は第2平面、非側端平面の何れかに設けられ、
前記蓋部は、前記孔部が形成された第1平面又は第2平面、非側端平面の何れかを覆う請求項1又は2に記載のベルト成型装置。
【請求項4】
前記孔部は、前記第1平面から前記第2平面にかけて貫通し、
前記蓋部は、
前記第1平面を覆う第1蓋部と、
前記第2平面を覆う第2蓋部とを有する請求項3に記載のベルト成型装置。
【請求項5】
前記連通孔部は、前記蓋部に形成される請求項1乃至4の何れか一項に記載のベルト成型装置。
【請求項6】
帯状のベルトが成型される前の成型前ベルトを加硫することによって前記ベルトを成型するベルト成型装置に用いられるとともに、前記成型前ベルトの側端に沿って設けられ、前記側端に当接する側端当接部であって、
前記側端当接部の少なくとも一部には、孔部が形成され、
前記側端当接部は、前記孔部を覆う蓋部を有し、
前記蓋部によって覆われた前記孔部には、前記側端当接部の外部と連通し、前記孔部よりも小さい連通孔部が形成される側端当接部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−132402(P2010−132402A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309610(P2008−309610)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】