説明

ベルト搬送システム用コンベヤ・ベルト

【課題】相互連結された各部分の端部の領域における弾性が向上したコンベヤ・ベルト。
【解決手段】コンベヤ・ベルトは、ゴムまたはゴム状のプラスチック材料で形成され、長手方向に互いに平行に延びるスチール・ケーブル2によって補強される。相互連結される部分から組み立てられる。スチール・ケーブル2は、ケーブル・コア21と、それを螺旋状に取り囲む撚り線22とを有し、各部分の端部領域において、一方で互いに突き合わせられ、他方で互いに重なり合うように配置される。上記スチール・ケーブルの各グループに属する端部は、コンベヤ・ベルトの長手方向で互いから隔置される。少なくとも過半数のスチール・ケーブルにおいて、各スチール・ケーブルのケーブル・コアを取り囲む撚り線はケーブル・コアの端部から様々な隔置距離で終端し、スチール・ケーブルの断面がその端部の方向に向かって小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト搬送システム用コンベヤ・ベルトに関する。このコンベヤ・ベルトは、ゴムまたはゴム状のプラスチック材料で製造され、ベルトの長手方向で互いに少なくとも略平行に延びるスチール・ケーブルで補強される。このコンベヤ・ベルトは相互連結される個々の部分とスチール・ケーブルとから製造される。スチール・ケーブルは、内側のケーブル・コアとそれを螺旋状に取り囲む撚り線とを備え、各部分の端部領域において一方で互いに突き合わせられ、他方で互いに重なり合うように配置される。さらに、スチール・ケーブルの各グループの端部はコンベヤ・ベルトの長手方向で互いから隔置される。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、合衆国法典第35巻第119条に基づき、2010年8月23日に出願されたオーストリア特許出願第A1407/2010号の優先権を主張する。この先行出願の全体は参照によりここに取り入れられる。
【背景技術】
【0003】
ベルト搬送システムは任意の所望の長さにすることができ、システムに配置されるコンベヤ・ベルトにもその長さが適用される。ただし、コンベヤ・ベルトは、特にそれがスチール・ケーブルを含んだ補強構造を用いて設計されることからも、その重量が非常に大きいため、製造、輸送可能な長さは限られる。したがって、ベルト搬送システムに必要なコンベヤ・ベルトを部分に分けて製造し、その各部分をベルト搬送システムの建造場所まで輸送し、その場所で個々の部分を連結して、連続したコンベヤ・ベルトを形成する必要がある。
【0004】
コンベヤ・ベルトの各部分は、コンベヤ・ベルトに配置されるスチール・ケーブルが各部分の連続する端部のところで露出されることと、連続する各部分の第1の本数のスチール・ケーブルの端部が互いに連続し突き合わせられて接合されることと、連続する各部分の第2の本数のスチール・ケーブルの端部領域が並んで配置され重なり合うことと、で連結される。その結果、コンベヤ・ベルトの連続する2つの部分は、加硫処理されたゴム・プレートおよびゴム材料により連結される。
【0005】
複数の部分から製造されるコンベヤ・ベルトに要求される動的引張り強度を確保するために、部分間の連結領域で、スチール・ケーブルが、互いに隔置された端部ごとに複数のグループへと分けられることが知られている。したがって、例えばスチール・ケーブルは、長手方向に互いに隔置された端部を含んだ3つのグループへとさらに分けられる。コンベヤ・ベルトの長手方向にほぼ等間隔に終端する2つのグループに属するスチール・ケーブルは、互いに当接することによって連続する。これらのスチール・ケーブルは、その側方に横に並んで設けられた他のスチール・ケーブルを有し、それらの他のスチール・ケーブルは、当接箇所より先に延び、スチール・ケーブル同士が当接して連続するのではなく、隣接するスチール・ケーブルの端部領域と重なり合う。かかる連結方法を3段であると呼ぶ。また、複数の当接箇所がコンベヤ・ベルトの長手方向に互いにずれている場合には、かかる連結を複数段であると呼ぶ。
【0006】
ただし、コンベヤ・ベルトの部分間のこの周知の連結は、スチール・ケーブルの端部領域が重なり合うためにコンベヤ・ベルトが非常に高い剪断応力を受けることから、動作要件を満たさない。こういった端部領域では、他の領域に対して鋼鉄による補強の比率が大きく、ゴム材料の比率が小さくなることから、剪断応力が大きくなる。このため、コンベヤ・ベルトの弾性ひいてはその動的引張り強度が、これらの端部領域で低減する。したがって、このコンベヤ・ベルトの端部領域内で、動作中に最初の亀裂および破断が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、上述した従来周知の一般的なタイプの装置および方法における不利な点を克服し、相互連結された各部分の端部の領域における弾性が向上したコンベヤ・ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の、およびその他の目的を考慮すると、本発明により、ベルト搬送システム用コンベヤ・ベルトであって、前記コンベヤ・ベルトを一緒に形成する、相互連結される複数の部分を備え、上記部分が、ゴムまたはプラスチック材料からなるベルト本体と、複数の補強スチール・ケーブルと、で形成され、前記スチール・ケーブルが、上記コンベヤ・ベルトの長手方向で互いに対してほぼ平行に延び、内側ケーブル・コアと、該ケーブル・コアを螺旋状に取り囲む撚り線と、を有し、上記スチール・ケーブルの端部が上記部分の端部領域から突出し、上記スチール・ケーブルのうちの数本が互いに当接し、上記スチール・ケーブルのうちの数本が互いに重なり合い、少なくとも上記スチール・ケーブルの過半数で、個々の上記スチール・ケーブルの上記螺旋状に取り囲む撚り線が、上記ケーブル・コアの端部から様々な隔置距離のところで終端し、上記スチール・ケーブルの断面が上記端部の方向に向かって小さくなる、コンベヤ・ベルトが提供される。
【0009】
上記スチール・ケーブルの各グループに属する端部は、上記コンベヤ・ベルトの長手方向で互いから隔置される。
【0010】
つまり、本発明の目的は、少なくとも過半数のスチール・ケーブルにおいて、各スチール・ケーブルのケーブル・コアを取り囲む撚り線がケーブル・コアの端部から様々な間隔で終端し、その結果スチール・ケーブルの断面がその端部の方向に向かって小さくなることから達成される。
【0011】
つまり、相互連結領域で、スチール補強の比率は低減され、ゴムまたはゴム状材料の比率が高まる。
【0012】
上記スチール・ケーブルの各グループに属する端部が、上記コンベヤ・ベルトの長手方向で少なくともほぼ等間隔に互いから隔置されると好ましく、上記スチール・ケーブルの約10%〜約50%からなるグループが、上記コンベヤ・ベルトの少なくともほぼ同じ横断面で終端する。
【0013】
上記スチール・ケーブルの約50%〜約90%が、スチール・ケーブル同士を当接することによって連続すると好ましく、上記スチール・ケーブルの約50%〜10%が、互いに当接することで連続せず、隣接する上記スチール・ケーブルの端部領域が重なり合うような長さになっていると好ましい。さらに、1つのグループの個々の上記スチール・ケーブルが、上記コンベヤ・ベルトの幅全体にわたって少なくともほぼ等間隔に分散され、そのほぼ1つの横断面に配置された端部を有することが可能である。
【0014】
本発明の他の好ましい実施形態によると、1つのケーブル・コアを取り囲む上記撚り線の各グループに属する端部が、互いに少なくともほぼ等間隔に隔置される。さらに、1つのケーブル・コアを取り囲む上記撚り線の約10%〜約30%からなるグループが、少なくとも上記ケーブル・コアのほぼ同じ断面で終端することができる。さらに、上記ケーブル・コアのほぼ同じ断面で終端する上記撚り線からなるグループがそれぞれ、上記ケーブル・コアの周囲に少なくともほぼ等間隔に分散されると好ましい。
【0015】
さらに、上記個々の撚り線または撚り線のグループの端部が、上記スチール・ケーブルの直径の半分から、最大で上記スチール・ケーブルの直径の10倍までに対応する隔置距離に存在すると好ましい。
【0016】
本発明の特徴と見なされるその他の特徴については、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0017】
本明細書は、本発明がベルト搬送システム用コンベヤ・ベルトで実施されるものとして例示、説明する。しかしながら、本発明は、その趣旨から逸脱することなく特許請求の範囲の均等物の趣旨および範囲内で様々な改変および構造的変更ができることから、記載の詳細事項に限定されるものではない。
【0018】
ただし、本発明の構造および操作方法については、その追加の目的および利点と共に、添付の図面に併せて読めば以下の特定の実施形態の説明から最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるコンベヤ・ベルトの概略斜視図である。
【図2】図1によるコンベヤ・ベルトの2つの部分の接合された端部の斜視図である。
【図3】図2のコンベヤ・ベルトを拡大してその細部を示した、図2と同様の斜視図である。
【図4】(a)(b)は本発明によるスチール・ケーブルの端部領域の斜視図である。
【図5】本発明によるスチール・ケーブルを備える図2によるコンベヤ・ベルトの詳細を示した、図2の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面の各図を詳細に、まず特にその図1を参照すると、コンベヤ・ベルト1を備える搬送システムが示されている。このベルトは、搬送システムの端部において偏向ドラム10とも呼ばれる反転ドラム10により案内される連続したエンドレス・ベルトである。かかる搬送システムのコンベヤ・ベルト1は、例えば15km〜20kmにわたって延びることができ、その端部で互いに連結された多数の部分11〜16を備える。この個々の部分は、200m〜1000mの長さになり得る。コンベヤ・ベルト1の幅は0.4m〜3.5mである。コンベヤ・ベルト1は、厚みが約2cm〜約5cmの、ゴムまたはゴム状のプラスチック材料からなる基礎ベルト本体を有する。ベルト1は、多数のスチール・ケーブルによって補強される。多数のスチール・ケーブルは互いに並んで配設されて、そのベルト1の長手方向に延び、例えば6mm〜20mmの直径を有する。
【0021】
スチール・ケーブルは、多数のワイヤを含んだケーブル・コアと、多数のワイヤを同様に含んでケーブル・コアを螺旋状に取り囲む複数の撚り線(strand)と、を有する。
【0022】
図2、図3に示されているように、スチール・ケーブル2の端部領域は、2つの部分11と12との間の連結位置で露出している。これらの端部領域は、一方で互いに重なり合うように、他方で互いに突き合わせられ連続するように配置される。ここで、スチール・ケーブル2は、互いに隔置された端部ごとにグループに分けることが可能である。スチール・ケーブル2の各端部が位置するコンベヤ・ベルト1の横断面の数に応じて、こういった連結は、1段、2段、3段、それ以上の段であると呼ばれる。
【0023】
図2、図3には、3段の連結が示されている。
【0024】
従来技術のコンベヤ・ベルト1の場合、2つの部分11と12の間における連結領域において、スチール・ケーブル2の端部領域が重なり合うと、ゴムまたはゴム状の材料に対する鋼鉄挿入物の比率が、コンベヤ・ベルト1の連結部と連結部の間の領域における比率よりかなり高いこととなる。このため、こういったコンベヤ・ベルト1では、連結領域における弾性やその動的な引張り強度が他の領域よりもかなり小さくなる。
【0025】
図4(a)(b)に示されているように、スチール・ケーブル2は、多数のワイヤを含むケーブル・コア21と、多数のワイヤを同様に含んでケーブル・コア21を螺旋状に取り囲む多数の撚り線22と、を有する。本発明によると、各撚り線22は、ケーブル・コア21の端部から様々な間隔のところで終端する。これは、部分間の連結領域において、スチール挿入物の比率が低くなり、かつ/またはゴムまたはエラストマー材料の比率が高くなることを意味する。これにより、部分間の連結領域におけるコンベヤ・ベルト1の弾性が向上する。さらに、その領域では剪断応力が低減する。
【0026】
図5からも分かるように、撚り線22がケーブル・コア21の端部から様々な間隔で終端する結果として、スチール・ケーブル2の、互いに重なり合うように配置された端部領域と、互いに突き合わせられ連続するように配置された端部領域の両方が、端部の方向に向かって小さくなる断面を有する。
【0027】
この場合、螺旋状に延びる撚り線22は、スチール・ケーブル2の同じ断面で終端する端部ごとのグループに組み合わせることができる。これらのグループの各撚り線22は、並べて配置されてもよく、スチール・ケーブル2の周囲に分散されてもよい。
【0028】
本発明による効果はまた、少なくとも過半数のスチール・ケーブル11の端部を、本発明に従って様々な長さに短縮した撚り線22を用いて設計しても実現される。
【0029】
ケーブル・コア21を取り囲む、個々の撚り線22の端部間、または撚り線22のグループの端部間の隔置距離は、スチール・ケーブル2の直径の半分から10倍までの値を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト搬送システム用コンベヤ・ベルトであって、
前記コンベヤ・ベルトを一緒に形成する相互連結された複数の部分を備え、
前記複数の部分が、ゴムまたはプラスチック材料からなるベルト本体と、複数の補強用スチール・ケーブルと、で形成され、
前記スチール・ケーブルが、前記コンベヤ・ベルトの長手方向で互いに略平行に延び、
前記スチール・ケーブルが、内側ケーブル・コアと、前記ケーブル・コアを螺旋状に取り囲む複数の撚り線と、を有し、
前記部分の端部領域から前記スチール・ケーブルの端部が突出し、前記スチール・ケーブルのうちの数本が互いに当接し、前記スチール・ケーブルのうちの数本が互いに重なり合い、
少なくとも過半数の前記スチール・ケーブルにおいて、個々の前記スチール・ケーブルの前記螺旋状に取り囲む複数の撚り線が、前記ケーブル・コアの端部から様々な隔置距離において終端し、前記スチール・ケーブルの断面が前記端部の方向に向かって小さくなる、コンベヤ・ベルト。
【請求項2】
前記スチール・ケーブルの各グループに属する端部が、前記コンベヤ・ベルトの長手方向で互いから隔置される、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項3】
前記スチール・ケーブルの各グループに属する端部が、前記コンベヤ・ベルトの長手方向で少なくとも略等間隔に互いから隔置される、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項4】
前記スチール・ケーブルの約10%〜50%のグループが、前記コンベヤ・ベルトの略同じ横断面で終端する、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項5】
前記スチール・ケーブルの約50%〜約90%が、前記スチール・ケーブル同士を当接することによって連続し、
前記スチール・ケーブルの約50%〜10%が、それぞれ隣接する前記スチール・ケーブルの端部領域が重なり合うような長さになっており、互いに当接することによって連続しない、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項6】
1つのグループの個々の前記スチール・ケーブルが、前記コンベヤ・ベルトの幅全体にわたって略等間隔に分散され、前記コンベヤ・ベルトの略同一横断面に配設された端部を有する、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項7】
1つのケーブル・コアを取り囲む前記撚り線のグループに属する端部が略等間隔に互いから隔置される、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項8】
1つのケーブル・コアを取り囲む前記撚り線の約10%〜約30%のグループが、前記ケーブル・コアの略同一断面で終端する、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項9】
前記ケーブル・コアの略同一断面で終端する前記撚り線の個々のグループが、前記ケーブル・コアの周囲に少なくとも略等間隔に分散される、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。
【請求項10】
前記個々の撚り線または撚り線のグループの端部が、前記スチール・ケーブルの直径の半分から前記スチール・ケーブルの直径の10倍までに対応する隔置距離で互いから隔置される、請求項1に記載のコンベヤ・ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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