説明

ベルト搬送装置およびベルト組立調整方法

【課題】ベルトの組立性を向上し、蛇行調整を容易に行う。
【解決手段】ベース2と、被搬送物を搭載して搬送するベルト3と、該ベルト3に張力を付与するローラ4と、該ローラ4のシャフト5をベース2に位置調整可能に取り付ける取付機構6とを備え、取付機構6が、ローラ4のシャフト5の両端部に固定され、移動方向に延びる長孔12bを有するブラケット12と、該ブラケット12の長孔12bを介して該ブラケット12をベース2に固定する締結手段9,13とを備え、ベルト3に張力がかかった状態でシャフト5を突き当てる突当面8aがベース2に設けられているベルト搬送装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト搬送装置およびベルト組立調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のベルト搬送装置として、例えば、特許文献1に開示されているものが知られている。
このベルト搬送装置は、ローラに掛け渡されるベルトの両側縁近傍に蛇行を検出するセンサと、該センサの出力に基づいてローラの角度を変化させる駆動手段とを備えている。また、この特許文献1には、その従来技術として、ガイドレールに対して長孔により移動可能に設けられたブラケットにローラのシャフトの両端を支持させ、2つのブラケットを押しネジで押圧することにより、ベルトに張力を付与する蛇行調整機構が開示されている。
【特許文献1】特開平8−67373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、センサを用いる方法では、ベルトの蛇行調整を自動的に行うため、電力が必要となりランニングコストが高く付くという問題がある。また、このベルト搬送装置では、部品点数が多く機構が複雑であるために製品コストが高いという問題もある。特に、一旦調整されてしまえば、その後調整する必要のない装置に対しては、蛇行調整を自動的に行う装置の優位性はない。
【0004】
また、特許文献1の押しネジでベルトの張力を調整する従来の蛇行調整機構は、上記問題点はない。しかし、ローラの両端に固定されたブラケットを、それぞれ4本の固定用ビスにより長孔を介して固定するものであり、組立時にローラの位置が一義的に決定できず、組立性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ベルトの組立性を向上し、蛇行調整を容易に行うことができるベルト搬送機構およびベルト組立調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
ベースと、被搬送物を搭載して搬送するベルトと、該ベルトに張力を付与するローラと、該ローラのシャフトをベースに位置調整可能に取り付ける取付機構とを備え、前記取付機構が、前記ローラのシャフトの両端部に固定され、移動方向に延びる長孔を有するブラケットと、該ブラケットの長孔を介して該ブラケットを前記ベースに固定する締結手段とを備え、前記ベルトに張力がかかった状態で前記シャフトを突き当てる突当面が前記ベースに設けられているベルト搬送装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、ベルトに微小の張力をかけた状態でローラに掛け渡すことにより、ローラのシャフトがベースに設けられた突当面に突き当てられる。ベースに設ける突当面は機械加工により精度よく設けることができる。したがって、組立時にシャフトが突当面に突き当てられることにより、ベルトを掛け渡したローラがベースに精度よく位置決めされた状態に組み付けられることになる。そして、この状態から、ブラケットをベースに対して移動させ、ブラケットの長孔を介して締結手段を締結することにより、ブラケットをベースに固定する。一旦精度よく位置決めされたローラを移動させてベルトの張力を調整することにより、ベルトを蛇行しないように組み付けることができる。従来、どこにも突き当てられない中間的な位置に一旦組み付けてからベルトに張力を付与していく場合と比較すると、組立性を大幅に向上し、その後の張力調整作業を容易にすることができる。
【0008】
上記発明においては、前記ベースに、前記シャフトを貫通させる長孔状の案内孔が設けられ、前記突当面が、前記案内孔の端面により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、シャフトは長孔状の案内孔により一方向に移動可能に案内されるとともに、案内孔の端面により構成された突当面に突き当てられる。突当面を案内孔の端面により構成することで、突当面を簡易に精度よく形成することができる。そして、組立時にベルトに張力をかけることにより、シャフトが案内孔の端面に突き当てられるので、ベルトを掛け渡したローラを、ベースに精度よく位置決め状態に組み付けることができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記ベースに、前記シャフトの端部を挿入させる長孔状の案内溝が設けられ、前記突当面が前記案内溝の端面により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、案内孔と同様にして、ベルトを掛け渡したローラを、ベースに精度よく位置決め状態に組み付けることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記ベースに、前記ベルトの張力を増大させる方向に前記シャフトを移動させる張力調整機構が設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、張力調整機構の作動により、シャフトがベルトの張力を増大させる方向に移動させられ、ベルトの張力が調整される。この場合に、シャフトを突当面に突き当てて精度よく組み付けてから張力調整機構を作動させることにより、より簡易かつ確実に、ベルトの蛇行を防止しつつ張力を調整することができる。
【0011】
また、本発明は、被搬送物を搭載して搬送するベルトをローラに掛け渡してベースに組み付けるベルト組立調整方法であって、ベースに設けた突当面にローラのシャフトを突き当てた状態で、ローラに掛け渡したベルトに張力を付与し、その後、シャフトの両端を均等に押圧して張力を調整するベルト組立調整方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、ベースに設けた突当面にローラのシャフトを突き当てた状態で、ローラに掛け渡したベルトに張力を付与することにより、シャフトが突当面に突当状態に維持され、ベースに対してローラが精度よく位置決めされた状態に組み付けられる。その後シャフトの両端を均等に押圧することで、より簡易かつ精度よくベルトの張力を調整し、ベルトが蛇行しないように容易に組み付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトの組立性を向上し、蛇行調整を容易に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るベルト搬送装置1について、図1〜図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るベルト搬送装置1は、図1および図2に示されるように、ベース2と、ベルト3と、該ベルト3に張力を付与するローラ4と、該ローラ4のシャフト5をベース2に位置調整可能に取り付ける取付機構6とを備えている。
【0015】
ベース2には平行間隔を開けて対向する一対の平板部材7が備えられている。平板部材7には対向する位置にそれぞれ貫通する長孔状の案内孔8が設けられている。該案内孔8は、ベース2の所定位置に精度よく加工されることにより形成されている。また、平板部材7には、案内孔8を挟んで、2カ所ずつ、計4カ所のネジ孔9が設けられている。
【0016】
前記ローラ4は、ベアリング10によりシャフト5に回転自在に取り付けられている。シャフト5の両端部には、前記ベース2に設けられた案内孔8に挿入される嵌合部5aが設けられている。嵌合部5aの外径寸法は、前記ベース2の案内孔8の端面8aと略同径に形成されている。
【0017】
前記取付機構6は、ベース2の2つの平板部材7にそれぞれ固定されるL字状の固定ブラケット11と、ベース2に移動可能に取り付けられるL字状の可動ブラケット12と、ベース2のネジ孔9に締結され、これらブラケット11,12をベース2に固定するボルト13と、これらブラケット11,12間の間隔を狭める方向に押圧力を作用させる押圧用ボルト14およびナット15とを備えている。
可動ブラケット12には、前記ローラ4のシャフト5の嵌合部5aを嵌合させる嵌合孔12aと、該可動ブラケット12の移動方向に延び、前記ボルト13を貫通させる長孔12bとが設けられている。
【0018】
このように構成された本実施形態に係るベルト搬送装置1のベルト張力調整方法について、以下に説明する。
本実施形態に係るベルト搬送装置1を組み立てるには、図3(a)に示されるように、ローラ4にベルト3を掛け渡しつつ、ベース2の平板部材7に設けられた案内孔8に、ローラ4のシャフト5の嵌合部5aを挿入する。このとき、ベルト3に張力が発生するようにする。なお、他のテンショナを設けて、ローラ4にベルト3が掛け渡された後にベルト3に張力を発生させることとしてもよい。
【0019】
この状態において、ローラ4にはベルト3の張力のみが作用しているので、このようにすることで、ローラ4はベルト3の張力によって一方向に付勢され、図3(a)に示されるように、シャフト5の嵌合部5aを案内孔8の端面8aに密着させるように配置される。案内孔8は、上述したようにベース2の平板部材7に精度よく加工形成されているので、この状態でローラ4はベース2に対して精度よく位置決めされた状態に組み付けられ、かつ、ベルト3の張力によって組み付け状態に維持されることになる。
【0020】
次いで、図3(b)に示されるように、ベース2の案内孔8を貫通して反対側に突出しているシャフト5の嵌合部5aを嵌合孔12aに嵌合させるように可動ブラケット12を取り付ける。この状態で、固定ブラケット11および可動ブラケット12の対向する貫通孔11a,12cに押圧用ボルト14を挿入し、ナット15を締結する。このとき、可動ブラケット12の長孔12bを介してベース2のネジ孔9にボルト13を緩く締結しておく。
【0021】
そして、押圧用ボルト14およびナット15の締結力を増加させていくことにより、図4に示されるように、ベース2に固定された固定ブラケット11に対して、可動ブラケット12を引きつける方向に移動させ、可動ブラケット12の嵌合孔12aに嵌合しているシャフト5、ベアリング10、ローラ4およびベルト3を案内孔8に沿って移動させる。これにより、ベルト3の張力が増加する方向に移動させられる。可動ブラケット12はシャフト5の両端に設けられているので、2本の押圧用ボルト14およびナット15の締結力を均等に増大させていくことにより、ベルト3の全幅にわたってバランスよく張力を増加させていくことができ、偏りがなく、蛇行しないようにベルト3の張力を調整することができる。
【0022】
そして、ベルト3の張力が調整された状態で、ボルト13をしっかり締結することにより、可動ブラケット12をベース2に固定し、これにより、ベルト搬送装置1を組み立てることができる。
この場合において、本実施形態に係るベルト搬送装置1によれば、組立時に、可動ブラケット12を取り付けることなくローラ4のシャフト5をベース2に設けた案内孔8の端面8aに密着させた状態に維持できる。したがって、組立の初期において、ローラ4を位置決め状態に維持できるので、その後の張力の調整作業を容易に行うことが可能となる。
【0023】
すなわち、ベース2に精度よく形成された案内孔8の端面8aを突当面としてローラ4の位置決めを行うことができる。したがって、簡易な構造で、低コストに精度の高い組立を行うことができる。また、可動ブラケット12を用いることなくローラ4を位置決めでき、組立性を向上することができる。
【0024】
また、組立の初期において可動ブラケット12をローラ4の位置決めに使用しなくて済むので、ベルト3の張力調整時に可動ブラケット12とベース2との間に摩擦力を発生させずに済む。その結果、ベルトの張力の微調整を容易に行うことができる。すなわち、摩擦力が作用する場合には、スティックスリップによって可動ブラケット12の微小移動が困難になるが、本実施形態に係るベルト搬送装置1によれば、そのような不都合はなく、ローラ4のシャフト5の両端に、精度よく均等に押圧力を加えることが可能となり、ベルト3の蛇行防止を容易に行うことができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、可動ブラケット12および固定ブラケット11をL字状に形成し、対向させた部分を押圧用ボルト14およびナット15により引っ張ることでベルト3の張力を調整することとしたが、これに代えて、図5および図6に示されるように、固定ブラケット11′および可動ブラケット12′を交差するように配置して、押圧用ボルト14′により、対向させた部分を押し広げるように押圧力を加えることで、ベルト3の張力を調整することとしてもよい。図中符号15′はロックナットである。
【0026】
また、本実施形態においては、ローラ4のシャフト5を突き当てる突当面として、案内孔8の端面8aを採用したが、これに代えて、ベース2に精度よく設けることができる突当面であれば、他の任意の突当面を採用してもよい。
また、突当面としてローラ4のシャフト5を貫通させる案内孔8の端面8aを採用したが、これに代えて、シャフト5の両端を貫通させることなく挿入する長孔状の案内溝(図示略)を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るベルト搬送装置のローラ部分を示す縦断面図である。
【図2】図1のベルト搬送装置の側面図である。
【図3】図1のベルト搬送装置の組み立て工程を説明する縦断面図であり、(a)はローラの位置決め工程、(b)は可動ブラケットの取付工程をそれぞれ示している。
【図4】図1のベルト搬送装置におけるベルトの張力調整工程を説明する縦断面図である。
【図5】図1のベルト搬送装置の変形例を示す縦断面図である。
【図6】図5のベルト搬送装置の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ベルト搬送装置
2 ベース
3 ベルト
4 ローラ
5 シャフト
6 取付機構
8 案内孔
8a 端面(突当面)
9 ネジ孔(締結手段)
12 可動ブラケット(ブラケット)
12b 長孔
13 ボルト(締結手段)
14 押圧用ボルト(張力調整機構)
15 ナット(張力調整機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
被搬送物を搭載して搬送するベルトと、
該ベルトに張力を付与するローラと、
該ローラのシャフトをベースに位置調整可能に取り付ける取付機構とを備え、
前記取付機構が、前記ローラのシャフトの両端部に固定され、移動方向に延びる長孔を有するブラケットと、該ブラケットの長孔を介して該ブラケットを前記ベースに固定する締結手段とを備え、
前記ベルトに張力がかかった状態で前記シャフトを突き当てる突当面が前記ベースに設けられているベルト搬送装置。
【請求項2】
前記ベースに、前記シャフトを貫通させる長孔状の案内孔が設けられ、前記突当面が、前記案内孔の端面により構成されている請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記ベースに、前記シャフトの端部を挿入させる長孔状の案内溝が設けられ、前記突当面が前記案内溝の端面により構成されている請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
前記ベースに、前記ベルトの張力を増大させる方向に前記シャフトを移動させる張力調整機構が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載のベルト搬送装置。
【請求項5】
被搬送物を搭載して搬送するベルトをローラに掛け渡してベースに組み付けるベルト組立調整方法であって、
ベースに設けた突当面にローラのシャフトを突き当てた状態で、ローラに掛け渡したベルトに張力を付与し、
その後、シャフトの両端を均等に押圧して張力を調整するベルト組立調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−320740(P2007−320740A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154633(P2006−154633)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】