説明

ベルト搬送装置及び画像記録装置

【課題】無端ベルト表面の清掃のために設けられる複数の清掃ローラの圧着及び解除を同時に行うことができると共に、簡単な構造で、それら複数の清掃ローラの解除量を等しくすることができるベルト搬送装置及び画像記録装置を提供すること。
【解決手段】複数のベルト張架ローラ21に亘って架け渡され、被搬送物を上面に載置して搬送する無端ベルト23と、無端ベルト23の搬送方向に沿って間隔をおいて並設されると共に、無端ベルト23の幅方向に亘ってそれぞれ当接可能に設けられ、無端ベルト23表面の清掃を行うための複数の清掃ローラ42,43と、複数の清掃ローラ42,43の両端部をそれぞれ支持し、複数の清掃ローラ42,43の無端ベルト23表面に対する圧着及び解除を同時に行うリンク機構5とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト搬送装置及び画像記録装置に関し、詳しくは、無端ベルト表面を清掃するための複数の清掃ローラの圧着及び解除動作を同時に行うことのできるベルト搬送装置及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙、布帛等の種々の記録媒体に対して高精細な画像を記録する装置として、インクジェット方式による画像記録装置が広く普及している。特に、記録媒体が長尺ウェブ状である場合には、無端ベルトを有するベルト搬送装置を使用し、記録媒体を無端ベルト上に密着させて搬送することが行われている。
【0003】
その際、記録媒体のミスフィードやいわゆる縁なし印刷、インクの裏抜け等のために、記録ヘッドから吐出されたインクが無端ベルトに付着する場合があり、無端ベルトに付着したインクが無端ベルト上に新たに供給されてきた記録媒体に転移して記録媒体を汚してしまう等のトラブルが生じる。
【0004】
また、記録媒体は、その種類によって紙粉や糸くず、前処理剤等の汚染物質を発生する場合があり、これらが無端ベルト上のインクと混合して異物として付着してしまう場合がある。
【0005】
無端ベルトに付着した異物を放置した場合、これが新たに供給される記録媒体の裏面に付着して製品品質を低下させたり、無端ベルトと記録媒体との間の摩擦に影響を与えて記録媒体の搬送を不安定化させたりする問題が生じる。
【0006】
そのため、通常、このようなベルト搬送装置又は画像記録装置には、無端ベルトの表面に付着した異物を、清掃ローラを当接させてクリーニングするためのベルトクリーニング装置が設けられている。
【0007】
このようなベルトクリーニング装置では、清掃ローラによる清掃を効率的に行うため、ブラシローラやスポンジローラ等からなる清掃ローラの一部を清掃液に浸漬させ、ローラの回転によって清掃液を無端ベルト表面に付着させて清掃を行うものが一般的である。
【0008】
ところで、清掃ローラは、無端ベルトの表面に記録媒体を粘性によって密着させるための地張り剤を塗布する際や清掃ローラのメンテナンスを行う際等は、該清掃ローラを無端ベルトの表面から離反させ、当接状態を解除するようにしている。
【0009】
従来、無端ベルトの搬送方向に沿って複数の清掃ローラとこれら清掃ローラを収容する水受け皿を備え、シリンダの駆動によって水受け皿ごと上下動させる構成が知られている(特許文献1)。
【0010】
しかし、シリンダを用いる構成では高コストとなる問題があり、より簡素で低コストに実施できる構造が望まれている。
【0011】
そこで、本発明者は、清掃ローラを支持する支持体を、一つの回動軸を中心に回動可能に設け、この支持体を回動操作することによって、清掃ローラを無端ベルト表面から離反させる構成を提案している(特許文献2)。
【0012】
この構成を図4に示す。
【0013】
図中、100は無端ベルト、200は無端ベルト100の表面を清掃するための清掃ローラ、201は清掃ローラ200を回転可能に支持する支持体、202は支持体201の回動軸、300は清掃液が貯水された清掃桶である。
【0014】
図4(a)は、清掃ローラ200が無端ベルト100の表面に対して圧着して清掃を行っている状態である。この状態から清掃ローラ200の圧着を解除するべく、図4(b)に示すように、支持体201を回動軸202を中心に下方向に回動させると、その回動量に応じて清掃ローラ200も下動し、無端ベルト100の表面から離反して圧着は解除される。
【0015】
この特許文献2記載のように、清掃ローラを支持する支持体を一つの回動軸を中心に回動可能に設ける構成によれば、支持体を回動させるだけで清掃ローラの圧着及び解除を行うことができるため、シリンダ等の駆動機構を付加する必要なく、構造簡単に構成することができる上に、圧着及び解除のための操作も、必要に応じてオペレータが手動操作するだけで容易に行うことができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平11−192694号公報
【特許文献2】特開2009−242018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、清掃ローラの圧着及び解除について本発明者が更に検討したところ、次のような新たな課題が見出された。
【0018】
すなわち、図5に示すように、クリーニング効率を向上させるために無端ベルト100の搬送方向に沿って複数の清掃ローラ200A、200Bを並設した場合、圧着及び解除のための操作を簡略化するために、これら複数の清掃ローラ200A、200Bを同時に圧着及び解除させるようにするには、支持体201によって、これら複数の清掃ローラ200A、200Bを共通に支持して一体に回動させる必要がある。このため、無端ベルト100の搬送方向に沿う支持体201の長さは、清掃ローラ200A、200Bの並設長さの分だけ長くなる。
【0019】
このように支持体201が長くなると、図5(a)に示す圧着状態から、一つの回動軸202を中心として回動させて解除状態とした場合、図5(b)に示すように、各清掃ローラ200A、200Bで、回動軸202からの離間距離によって解除量、すなわち無端ベルト100の表面からの離間距離が異なってしまう。
【0020】
この場合、回動軸201に近い側の清掃ローラ200Bの解除量は、遠い側の清掃ローラ200Aの解除量よりも小さくなるため、メンテナンス時のアクセスが困難となり、メンテナンス性が悪いという問題があった。
【0021】
また、図示するように、清掃ローラ200A、200Bの下方に、一部浸漬するように清掃液を貯水する清掃桶300が設けられる場合、この清掃桶300は、内部の清掃液がこぼれることのないように、清掃ローラ200A、200Bの圧着及び解除動作時には動かないように配置されているが、回動軸202に近い側の清掃ローラ200Bのアクセスを容易にするために支持体201の回動量を大きくして解除量を大きくとると、回動軸202に遠い側の清掃ローラ200Aが清掃桶内に大きく沈み込むようになるため、清掃液が溢れ出てしまうおそれがあり、解除量を大きくとることができない問題があった。
【0022】
そこで、本発明は、無端ベルト表面の清掃のために設けられる複数の清掃ローラの圧着及び解除を同時に行うことができると共に、簡単な構造で、それら複数の清掃ローラの解除量を等しくすることができるベルト搬送装置及び画像記録装置を提供することを課題とする。
【0023】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0025】
請求項1記載の発明は、複数のベルト張架ローラに亘って架け渡され、被搬送物を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトの搬送方向に沿って間隔をおいて並設されると共に、前記無端ベルトの幅方向に亘ってそれぞれ当接可能に設けられ、前記無端ベルト表面の清掃を行うための複数の清掃ローラと、
前記複数の清掃ローラの両端部をそれぞれ支持し、前記複数の清掃ローラの前記無端ベルト表面に対する圧着及び解除を同時に行うリンク機構とを有することを特徴とするベルト搬送装置である。
【0026】
請求項2記載の発明は、前記リンク機構は、前記清掃ローラ毎に設けられた支持プレートと、前記各支持プレートを共通に支持し、前記無端ベルト表面に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能に設けられたリンクプレートと、前記リンクプレートを移動操作するための操作レバーとを有し、
前記各支持プレートは、それぞれ独立した固定支点を挟んで一端部が前記各清掃ローラの軸部を回転可能にそれぞれ支持し、他端部が前記リンクプレートの一端部に共通に回動可能に支持され、前記操作レバーによって操作される前記リンクプレートの移動によって前記各固定支点を中心に回動することで、該各支持プレートの一端部側が前記無端ベルト表面に対して近接又は離反動作し、近接動作時に前記各清掃ローラを前記無端ベルト表面に同時に圧着させ、離反動作時に前記各清掃ローラを前記無端ベルト表面から同時に解除させることを特徴とする請求項1記載のベルト搬送装置である。
【0027】
請求項3記載の発明は、前記複数の清掃ローラがそれぞれ接液する清掃液を貯水し、前記無端ベルト表面に対して位置不動に設けられた清掃桶を有することを特徴とする請求項1又は2記載のベルト搬送装置である。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載のベルト搬送装置と、
前記被搬送物として記録媒体を用い、前記無端ベルトの上面に載置された前記記録媒体上に画像データに基づいてインクを吐出して記録を行う記録手段とを備えることを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、無端ベルト表面の清掃のために設けられる複数の清掃ローラの圧着及び解除を同時に行うことができると共に、簡単な構造で、それら複数の清掃ローラの解除量を等しくすることができるベルト搬送装置及び画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図
【図2】清掃ローラの圧着及び解除を行うリンク機構を示す概略図であり、清掃ローラの圧着状態を示す側面図
【図3】清掃ローラの圧着及び解除を行うリンク機構を示す概略図であり、清掃ローラの解除状態を示す側面図
【図4】従来の清掃ローラの圧着及び解除機構の説明図
【図5】従来の清掃ローラの圧着及び解除機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る画像記録装置の一例を示す概略構成図であり、図中、1は画像記録装置であり、この画像記録装置1は、ベルト搬送装置2、記録ヘッド3、ベルトクリーニング装置4を備えている。
【0033】
ベルト搬送装置2は、所定の間隔をおいて平行に配置された複数(図示の例では2つ)のベルト張架ローラ21、22に亘って所定幅の無端ベルト23が張架されている。これらベルト張架ローラ21、22間に架け渡された無端ベルト23の上面は、被搬送物である記録媒体Pを密着させて載置する載置面とされている。
【0034】
一方のベルト張架ローラ21は図示しない副走査モータに対して駆動力を伝達可能に接続された駆動ローラ、他方のベルト張架ローラ22は従動ローラであり、駆動ローラ21が副走査モータの回転駆動によって、図1において反時計回りに所定の速度で回転することにより、従動ローラ22との間に架け渡された無端ベルト23を回転移動させ、その上面に載置される記録媒体Pを副走査方向である図中のA方向に向けて搬送するようになっている。
【0035】
記録媒体Pには、例えば、紙、布帛、プラスチックフィルム、ガラス板等、インクジェット記録に通常使用される記録媒体を使用することができる。記録媒体Pは所定サイズに裁断されたシート状であってもよいし、ロール状に巻回された元巻から連続して繰り出される長尺状であってもよい。特に、布帛は、インクが裏抜けし易いため、無端ベルト23の表面にインクが付着するおそれが高く、後述するベルトクリーニング装置4を備えることによって特に顕著な効果が得られるために好ましい。
【0036】
記録ヘッド3は、無端ベルト23上の記録媒体Pが載置される面の上方に所定の間隔をおいて配設されており、その下面に設けられた多数のノズル(図示せず)からインク滴を吐出することにより、間欠的に搬送される記録媒体P上に所望の画像を記録するインクジェットヘッドである。この記録ヘッド3は、図示しないキャリッジに搭載されて、画像記録時に記録媒体Pの搬送方向と直交する主査方向に往復移動するシャトル型の記録ヘッドであってもよいし、無端ベルト23の幅方向に亘って固定状に架け渡され、連続的に搬送される記録媒体P上にインク滴を吐出することによって画像を記録するライン型の記録ヘッドであってもよい。
【0037】
ベルトクリーニング装置4は、本発明において駆動ローラ21の近傍に配置されており、無端ベルト23の搬送方向に沿って順に配設される散水パイプ41、ブラシローラ42、吸液ローラ43を有している。
【0038】
散水パイプ41は、無端ベルト23の全幅に亘る長さを有し、該無端ベルト23の表面に対向する部位に、長さ方向に沿って多数の散水ノズル(図示せず)が配列されてなり、清掃液を供給ポンプ41aの駆動によって無端ベルト23の表面に向けて噴射することにより、該無端ベルト23の表面に付着したインクや糸くず等を含む異物を洗浄する。
【0039】
ブラシローラ42は、無端ベルト23の表面を清掃するための第1の清掃ローラであり、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲にブラシ毛が植毛されてローラ状に形成されている。清掃時は、ブラシ毛の先端は、散水パイプ41による散水位置よりも無端ベルト23の搬送方向下流側において無端ベルト23の表面に当接状態にあり、不図示の駆動モータによって無端ベルト23の搬送方向と逆方向に回転することにより、該無端ベルト23の表面を摺擦し、上流側の散水パイプ41による清掃液の散水によって洗浄された異物を無端ベルト23の表面から除去する。
【0040】
ブラシローラ42の下部には、内部に清掃液が貯水された清掃桶44が配置されている。清掃桶44は無端ベルト23の表面に対する位置が固定されている。ブラシローラ42は、この清掃桶44内の清掃液に一部浸漬しており、回転時に清掃液を掻き上げることにより、異物の除去効果を高めている。
【0041】
なお、散水パイプ41は、散水チューブ41bによってこの清掃桶44の内部と連通しており、清掃桶44内の清掃液を供給ポンプ41aの駆動によって噴射し、無端ベルト23の表面から滴下した清掃液が再び清掃桶44に収容されて再利用されるようになっている。
【0042】
吸液ローラ43は、無端ベルト23の表面を清掃するための第2の清掃ローラであり、無端ベルト23の全幅に亘って架け渡された回転軸の周囲に、例えばスポンジ等の吸液性の高い多孔質体が巻回されてローラ状に形成されている。清掃時は、その表面が、ブラシローラ42による当接位置よりも無端ベルト23の搬送方向下流側において無端ベルト23の表面に当接状態にあり、無端ベルト23の回転移動に従動して回転することにより、該無端ベルト23の表面に付着した清掃液を吸収し、該無端ベルト23の表面から除去する。
【0043】
吸液ローラ43の下部には、内部に清掃液が貯水された清掃桶45が配置されている。清掃桶45は無端ベルト23の表面に対する位置が固定されている。吸液ローラ43は、この清掃桶45内の清掃液に一部浸漬しており、従動回転によって常に洗浄されようになっている。
【0044】
次に、これらブラシローラ42及び吸液ローラ43の圧着及び解除機構の一例について、図2、図3を用いて説明する。
【0045】
図2は、ブラシローラ42及び吸液ローラ43の圧着及び解除を行うリンク機構を示す概略図であり、ブラシローラ42及び吸液ローラ43の圧着状態を示す側面図、図3は、その解除状態を示す側面図である。
【0046】
なお、リンク機構は、ブラシローラ42及び吸液ローラ43の両端部側にそれぞれ設けられるが、いずれも同一構成であるため、ここでは一方の端部に設けられたリンク機構について説明する。また、図2、図3では散水パイプ41、供給ポンプ41a、散水チューブ41bを図示省略している。
【0047】
リンク機構5は、ブラシローラ42を支持する支持プレート51Aと、吸液ローラ43を支持する支持プレート51Bと、各支持プレート51A、51Bを共通に支持する1つのリンクプレート52と、このリンクプレート52を移動操作するための操作レバー53を有している。
【0048】
支持プレート51Aは、細長状のプレートによって形成され、そのほぼ中央部が、ベルト搬送装置2の側板6に回動軸(固定支点)511Aによって回転可能に軸支され、その一端部においてブラシローラ42の軸部421を回転可能に支持している。
【0049】
支持プレート51Bは、細長状のプレートによって形成され、そのほぼ中央部が、ベルト搬送装置2の側板6に回動軸(固定支点)511Bによって回転可能に軸支され、その一端部において吸液ローラ43の軸部431を回転可能に支持している。
【0050】
これら支持プレート51A、51Bの他端部は、一つの回動軸(自由支点)521に回動可能に支持されており、この回動軸521に、リンクプレート52の一端部が接続されている。
【0051】
リンクプレート52は、細長状のプレートによって形成され、図示上方に位置する一端部の回動軸521と、図示下方に位置する他端部の回動軸(自由支点)522とが、無端ベルト23の表面に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能となるように取り付けられている。具体的には、リンクプレート52は、ブラシローラ42と吸液ローラ43との間に対して接離する方向に移動するように取り付けられることで、無端ベルト23の表面に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能とされている。
【0052】
操作レバー53は、細長状のプレートによって形成され、リンクプレート52の長さ方向に対してL字状をなすように配置され、そのほぼ中央部において回動軸(固定支点)531によって側板6に対して回動可能に軸支されている。操作レバー53の一端部近傍は、リンクプレート52の図示下方の回動軸522に対して回動可能に取り付けられている。
【0053】
この回動軸522よりも更に操作レバー53の端部532には、側板6から突設する突部61との間に、引っ張りバネからなる付勢バネ533が取り付けられており、該端部532を突部61側に向けて常時付勢することにより、リンク機構5のガタつきを防止するようになっている。
【0054】
操作レバー53の他端部には、この操作レバー53を圧着状態に固定し、固定を解除することによってブラシローラ42と吸液ローラ43の解除を行うための係止部54が設けられている。この係止部54は、操作レバー53の他端部に設けられた回動軸541に回動可能に取り付けられた摘み片542と、この摘み片542における回動軸541よりも先端寄りに回動可能に取り付けられた係止リング543とを有している。
【0055】
側板6において、この操作レバー53の他端部の上方に位置する部位には、フック取付け部62が突設されており、このフック取付け部62には、係止リング543が係止されるフック55が設けられている。
【0056】
従って、係止リング543をこのフック55に係止させ、摘み片542を図示下方向に回動させると、係止リング543がフック55を下方向に引っ張るように作用し、操作レバー53は固定されて回動不能状態となる。この状態では、図2に示すように、リンクプレート52は、各支持プレート51A、51Bを下方向に引っ張った状態となるため、各支持プレート51A、51Bは、回動軸511A、511Bを中心にして、その一端部同士が互いに近接する方向に移動する。これにより、ブラシローラ42と吸液ローラ43は、無端ベルト23の表面にそれぞれ圧着した状態に維持される。
【0057】
この圧着状態から、摘み片542を回動操作して、図3に示すように、係止リング543とフック55との係止状態を解除し、回動軸531を中心にして操作レバー53の係止部54側を図示反時計方向に回動させると、操作レバー53の一端部側が上方に移動し、回動軸522を上方に押し上げる。
【0058】
この回動軸522の上方への押し上げによって、リンクプレート52は、ブラシローラ42と吸液ローラ43との間に向けて無端ベルト23の表面に向けて近接するように上方に移動する。すると、リンクプレート52の上方の回動軸521に共通に支持されている支持プレート51A、51Bは、それぞれの回動軸511A、511Bを中心にしてその一端部同士が互いに離反する方向に同時に回動する。この支持プレート51A、51Bの回動によって、その一端部は無端ベルト23の表面に対して離反する方向に移動し、該一端部に軸部421、431が回転可能に支持されているブラシローラ42及び吸液ローラ43を無端ベルト23の表面から離反する方向に移動させる。これにより、ブラシローラ42及び吸液ローラ43は、圧着状態が同時に解除される。
【0059】
この解除動作時、操作レバー53の端部532は、突部61との間に設けられた付勢バネ533によって常時下方向に付勢されるため、リンク機構5のガタつきは生じず、スムーズに解除される。
【0060】
操作レバー53が所定の解除位置まで回動したら、例えば側板6に出没可能に設けた保持突起63を突出状態にし、操作レバー53の回動軸531よりも係止部54よりの上部と当接させることによって時計方向への回動を防止することにより、解除状態を維持するようにすればよい。
【0061】
このようにリング機構5によってブラシローラ42と吸液ローラ43の解除を行うことにより、これらブラシローラ42及び吸液ローラ43と同時に解除されると共に、無端ベルト23の表面からの解除量(離反距離)を等しくすることができる。このため、メンテナンス時のアクセスのし易さを、ブラシローラ42と吸液ローラ43とで同程度にすることができ、配置場所によって解除量が異なってしまう従来の問題は生じない。
【0062】
また、本実施形態において、ブラシローラ42は、駆動ローラ21に架け渡されている部分の無端ベルト23の表面に対して圧着及び解除されるように配置され、吸液ローラ43は、この駆動ローラ21から離れた無端ベルト23の表面に対して圧着及び解除されるように配置されているため、無端ベルト23の表面から等しい距離で離反させる場合、図3に示すように、ブラシローラ42の離反時の移動方向d1と吸液ローラ43の離反時の移動方向d2とは平行とはならない。
【0063】
しかし、一つのリンクプレート52によって2つの支持プレート51A、51BをY字状にリンクさせ、その一つのリンクプレート52によって各支持プレート51A、51Bの一端部を互いに近接又は離反する方向に回動させる構成としたことにより、ブラシローラ42と吸液ローラ43の離反方向d1、d2が平行でなくても、両者の離反距離を容易に等しくすることができる。
【0064】
特に、ブラシローラ42及び吸液ローラ43はそれぞれ清掃桶44、45内の清掃液と一部浸漬しているが、いずれの解除量を等しくできるので、一方が他方に対して清掃液に大きく浸漬してしまう不具合は生じないため、清掃液が溢れ出る問題は回避できる。
【0065】
この離反距離(解除量)は、支持プレート51A、52Bの長さ、回動軸511A、511Bの位置、リンクプレート52の移動量及び移動方向を適宜調整することによって容易に調整することができる。
【0066】
圧着状態に復帰させる場合は、保持突起63を退没させ、操作レバー53を、付勢バネ533の付勢力によって、あるいはオペレータによる上方への回動操作によって回動させ、リンクプレート52をガイド穴61、62に沿って無端ベルト23から離反する方向に向けて下動させる。すると、リンクプレート52の上方の回動軸521に共通に支持されている支持プレート51A、51Bは、それぞれの回動軸511A、511Bを中心にしてその一端部同士が互いに近接する方向に同時に回動する。この支持プレート51A、51Bの回動によって、その一端部は無端ベルト23の表面に対して近接する方向に移動し、該一端部に軸部421、431が回転可能に支持されているブラシローラ42及び吸液ローラ43を無端ベルト23の表面に近接する方向に移動させ、ついには圧着させる。これにより、ブラシローラ42及び吸液ローラ43は、同時に圧着状態とされる。
【0067】
その後、係止部54の係止リング543をフック55に係止させ、摘み片542を下方向に回動させることで、操作レバー53は固定され、ブラシローラ42及び吸液ローラ43の圧着状態が保持される。
【符号の説明】
【0068】
1:画像記録装置
2:ベルト搬送装置
21:駆動ローラ(ベルト張架ローラ)
22:従動ローラ(ベルト張架ローラ)
23:無端ベルト
3:記録ヘッド
4:ベルトクリーニング装置
41:散水パイプ
41a:供給ポンプ
41b:散水チューブ
42:ブラシローラ(清掃ローラ)
421:軸部
43:吸液ローラ(清掃ローラ)
431:軸部
44、45:清掃桶
5:リンク機構
51A、51B:支持プレート
511A、511B:回動軸(固定支点)
52:リンクプレート
521:回動軸(自由支点)
522:回動軸(自由支点)
53:操作レバー
531:回動軸(固定支点)
532:端部
533:付勢バネ
54:係止部
541:回動軸
542:摘み片
543:係止リング
55:フック
6:側板
61:突部
62:フック取付け部
63:保持突起
P:記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベルト張架ローラに亘って架け渡され、被搬送物を上面に載置して搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトの搬送方向に沿って間隔をおいて並設されると共に、前記無端ベルトの幅方向に亘ってそれぞれ当接可能に設けられ、前記無端ベルト表面の清掃を行うための複数の清掃ローラと、
前記複数の清掃ローラの両端部をそれぞれ支持し、前記複数の清掃ローラの前記無端ベルト表面に対する圧着及び解除を同時に行うリンク機構とを有することを特徴とするベルト搬送装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記清掃ローラ毎に設けられた支持プレートと、前記各支持プレートを共通に支持し、前記無端ベルト表面に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能に設けられたリンクプレートと、前記リンクプレートを移動操作するための操作レバーとを有し、
前記各支持プレートは、それぞれ独立した固定支点を挟んで一端部が前記各清掃ローラの軸部を回転可能にそれぞれ支持し、他端部が前記リンクプレートの一端部に共通に回動可能に支持され、前記操作レバーによって操作される前記リンクプレートの移動によって前記各固定支点を中心に回動することで、該各支持プレートの一端部側が前記無端ベルト表面に対して近接又は離反動作し、近接動作時に前記各清掃ローラを前記無端ベルト表面に同時に圧着させ、離反動作時に前記各清掃ローラを前記無端ベルト表面から同時に解除させることを特徴とする請求項1記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
前記複数の清掃ローラがそれぞれ接液する清掃液を貯水し、前記無端ベルト表面に対して位置不動に設けられた清掃桶を有することを特徴とする請求項1又は2記載のベルト搬送装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のベルト搬送装置と、
前記被搬送物として記録媒体を用い、前記無端ベルトの上面に載置された前記記録媒体上に画像データに基づいてインクを吐出して記録を行う記録手段とを備えることを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116618(P2012−116618A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267868(P2010−267868)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】